(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
タッチパネルを用いた操作入力用装置において、操作を受け付けたことを操作者に認識させるために、タッチパネルを振動させることで操作者に触覚を提示する機能を備えた、いわゆるフォースフィードバック型タッチパネル装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、触覚を提示するためのパネルを、磁力を用いて平面に対して垂直方向に特定の周波数で振動させることを特徴とする触覚提示装置が開示されている(本願、
図7参照)。より詳細には、パネル裏面の周縁部に備えられたコイル81と、このコイル81に対向して配設されている磁石89とヨーク88からなる磁気ユニット82との間に生じる磁力を利用してパネル80を振動させるものであり、コイル81に流す電流を制御することで、所望する周波数の振動を発生させるように構成されたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フォースフィードバック型タッチパネル装置が応用されて、既に実用化されている代表的な機器として、カーナビゲーション装置が挙げられる。このようなカーナビゲーション装置は専ら自動車の社内で用いられるものであるが、走行中の自動車の社内には、その自動車に搭載されているエンジンが生じる振動、あるいは、タイヤと路面との間で生じる振動など、様々な振動が伝達されてくる。したがって、このようなカーナビゲーション装置を自動車の走行中に操作する場合、これらの自動車側から生じる振動と、フォースフィードバック型タッチパネル装置が発生させる振動とが入り混じってしまい、操作者へのフィードバックが不明瞭となる場合がある。上述の通り、走行中の自動車に生じる振動には様々な周波数の振動が含まれているため、特定の周波数を選択することによって、フィードバックを明瞭にすることは困難であると考えられる。
【0006】
この例のように外部からの様々な振動の影響を受ける環境下においても振動によるフィードバックを明瞭なものとするためには、フィードバックのための振動の振幅を従来よりも大きくして、より大きい触覚を操作者に対して提示することが有効である。
【0007】
特許文献1による従来の触覚提示装置では、パネルの四隅の近傍に弾性体からなるサスペンション92が配置されており、このサスペンション92によって所望しない周波数の振動が抑止される、とされている。しかしながら、いかなる周波数であれ、振動を抑止することはパネルの変位を抑制することに他ならず、このような制振機構を設けることは、大きな振幅を得る上での阻害要因となる。
【0008】
加えて、弾性体の変形特性は、一般的に、変位量の大きさに比例して大きな外力を必要とするものであるが、この変形特性に基づくと、このサスペンションは、フィードバックのための振動に伴うパネルの変位が大きくなればなるほど、すなわち、振動の振幅が大きくなればなるほど、パネルの変位をより強く抑制するように作用すると考えられる。このことも大きな振幅を得る上での阻害要因となる。
【0009】
また、特許文献1による従来の触覚提示装置では、タッチパネル自体を変位させることによって振動を発生させている。この他、圧電素子を用いることでタッチパネル自体を撓ませることによって振動を発生させる態様のフォースフィードバック型タッチパネル装置も公知である。これらいずれの場合も、振動を操作者に伝達するためには、必然的にタッチパネルの表面を機器の外部へ露出させる必要がある。タッチパネルの多くは基材としてガラス板を用いており、外部に露出しているタッチパネルの表面に衝撃が加わった際のガラス板の破損への対策も喫緊の課題となっている。
【0010】
本発明は、これらの課題を解決するためになされたものであり、従来のものよりも振幅の大きい振動を操作者へ提示することで、操作者に対してより明瞭なフィードバックを与えるとともに、外部から衝撃が加わった際のタッチパネルの破損を防止することができるフォースフィードバック型タッチパネル装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題を解決するために、本発明による請求項1記載のフォースフィードバック型タッチパネル装置は、ベース部材と、ベース部材に保持されている
静電容量式タッチパネルと、硬質な合成樹脂によって
、タッチパネルを覆う
平板部と、その周囲の延在部とを有する形状に形成され、タッチパネルの平面に対する垂直方向に変位可能に保持されているカバー部材と、タッチパネルの平面に対する垂直方向に沿ってベース部材とは反対の方向へカバー部材を変位させるアクチュエータとを含むフォースフィードバック型タッチパネル装置であって、タッチパネルはカバー部材の表面への操作体の接触もしくは接近を検知可能なものであり、
ベース部材は、第一位置決め部を有し、カバー部材は、延在部に、第一位置決め部と係合する第二位置決め部を有し、第一位置決め部と第二位置決め部との相互の係合によって、ベース部材に対するカバー部材のタッチパネルの平面に沿う変位が規制されており、ベース部材とカバー部材のうちの一方に第一磁石が固定され、他方に第二磁石もしくは磁性体が第一磁石に対向し、かつ第一磁石へ吸着するように固定されており、第一磁石と、第二磁石もしくは磁性体との間の吸着力によって、カバー部材がベース部材の方向へ付勢されていることを特徴とする。
【0012】
本発明による請求項1記載の発明は、従来、用いられていた弾性体による制振機構を廃して、それに代えて、磁石あるいは磁性体による磁力でカバー部材を付勢したことを主な特徴点としている。一般に磁力は、磁石などの磁力源からの距離の2乗に反比例して減衰するとされている。このことに基づくと、本発明による上述の構成において、カバー部材がベース部材から離れる方向に変位すればするほど、磁石の間の(あるいは磁石と磁性体との間の)距離が大きくなって相互間の吸着力が減衰する。このため、従来の制振機構の場合よりも振動の振幅に対する抑制が緩和され、操作者に対してフィードバックの振動を提示するカバー部材の変位を最大限に得ることができ、より明瞭なフィードバックを操作者に与えることができる。
【0013】
さらに、硬質な合成樹脂で形成されているカバー部材によってタッチパネルの操作面を覆うとともに、カバー部材の表面への操作体の接触もしくは接近を検知可能なタッチパネルを用いたので、機器の表面にタッチパネルの操作面を直接に露出させる必要がない。したがって、従来はタッチパネルで受け止めざるを得なかった衝撃をカバー部材で受け止めることができるため、タッチパネルの破損が効果的に防止される。尚、この観点から言えば、耐衝撃性に優れる合成樹脂によってカバー部材を形成することが好ましい。
【0015】
また、カバー部材のタッチパネルの平面に沿う方向の無用な変位が規制されることで、カバー部材のガタつきを抑えることができる。
【0017】
また、タッチパネルとして静電容量式タッチパネルを用いた上で、その感度を適当に設定することによって、実質的な入力操作面となる
カバー部材の表面と、本来の入力操作面であるタッチパネルの表面とが離隔していても、
カバー部材の表面への操作体の接触もしくは接近を検知可能とすることを具現化することができる。
【0018】
本発明による請求項
2記載のフォースフィードバック型タッチパネル装置は、タッチパネルの下面側に配設される表示装置をさらに含み、タッチパネルとカバー部材とが、いずれも透光性を有するものであって、タッチパネルとカバー部材を通して、表示装置の表示が視認可能に構成されていることを特徴とする。
【0019】
本発明による請求項
2記載の発明によれば、操作者が、カバー部材とタッチパネル越しに、表示装置上に表示される操作用ボタンに対する入力操作を行う態様のフォースフィードバック型タッチパネル装置が実現される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来のタッチパネル自体を振動させるフォースフィードバック型タッチパネル装置に比べて振幅の大きい振動を操作者へ提示することで操作者に対してより明瞭なフィードバックを与えることができるとともに、外部から衝撃が加わった際のタッチパネルの破損を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施例に係るフォースフィードバック型タッチパネル装置1について、
図1ないし
図6を用いて説明する。
【0023】
図1は、本実施例の外観を示している。本実施例は、印刷配線基板2、ベース部材11、カバー部材12を順に積層させて構成されている。カバー部材12は、平面状に盛り上げて形成した平板部12aとその周囲の延在部12bとを有している。平板部12aの下には、タッチパネルとしての静電容量式タッチパネル15と、表示装置としての液晶表示デバイス16とがベース部材11によって保持されている(詳細は後述する)。カバー部材12と静電容量式タッチパネル15はいずれも透明であり、これらを透過して、液晶表示デバイス16に表示されている“SIZE”、“CH”などの文字や記号が視認可能に構成されている。
【0024】
本実施例を機器(図示しない)に組み込む際は、上述の平板部12aを機器表面に露出させた上で、平板部12aを除く部分を機器の筐体によって内部に隠すように組み込む。このとき、カバー部材12がタッチパネルの平面に対する垂直方向に変位可能となるよう、機器の筐体と延在部12bの上面との間に若干の隙間を設けて組み込むのが好ましい。必要に応じて、スポンジなど、カバー部材12の振動を減衰させにくい弾性体を用いてこの隙間を埋めるようにしてもよい。
【0025】
図2は、本実施例においてカバー部材12を取り外した状態の外観を示している。この状態ではベース部材11と静電容量式タッチパネル15とが露出した状態となっている。ベース部材11は、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂によって枠状に形成されている。ベース部材11は、上述したカバー部材12の平板部12aに対応する形状に形成された突出部11aと、その周囲の基部11bとを有している。突出部11aの内寸は、液晶表示デバイス16と静電容量式タッチパネル15の平面視外形寸法よりも若干大きくなっており、突出部11aの内部に、液晶表示デバイス16と静電容量式タッチパネル15とが積層された状態で保持されている。
【0026】
基部11bの四隅のそれぞれには矩形の凹形状に形成された第一位置決め部11cが設けられており、それぞれの第一位置決め部11cの底面部分に対応する裏面側には、第一磁石13としてのネオジム磁石が固定されている。第一磁石13は、平面視形状が第一位置決め部11cと略等しい扁平な形状であり、厚さ方向が異極となるように着磁されている。尚、ネオジム磁石は磁力が強く、外形が小さくても強力な吸着力が得られる点で本実施例にとって好適である。
【0027】
基部11bの突出部11aを挟んだ両側には、印刷配線基板2に実装されているアクチュエータ17を収容するための二つのアクチュエータ収容部11dが設けられている。アクチュエータ収容部11dは、平面視形状がアクチュエータ17より若干大きい穴であって、基部11bの厚さ方向に貫通している。
【0028】
液晶表示デバイス16は、印刷配線基板2に実装されている表示制御手段(図示しない)から供給される所定の信号に基づいて、任意の表示を行うことが可能である。本図では一例として、左側から順に“SIZE”、“∧”、“∨”、“CH”の文字や記号を有する円形のボタンが一直線上に並んで表示されている状態を示している。尚、表示装置として、液晶表示デバイス16に代えて、例えば、EL表示デバイスなども好適に用いることができる。
【0029】
静電容量式タッチパネル15は、公知な相互容量方式のものであり、ガラス基材上に、複数の信号出力ラインと信号検出ラインが互いに直交して配設されて構成されているものである。静電容量式タッチパネル15は、印刷配線基板2と図示しない接続手段によって接続されており、印刷配線基板2上に実装されているタッチパネル制御手段(図示しない)によって制御される。この制御に基づいて、静電容量式タッチパネル15へ指などの操作体が接近した場合には、各信号ラインに生じる静電容量の変化から、静電容量式タッチパネル15面上における操作体が接近した位置を特定することができる。
【0030】
静電容量式タッチパネル15の感度は、指などの操作体が静電容量式タッチパネル15の表面に直接触れていない状態、すなわち、操作体が静電容量式タッチパネル15の表面から離れている状態であっても検知可能となるよう設定されている。
【0031】
より詳細には、上述したタッチパネル制御手段の内部には、平板部12aへの操作体の接触・近接を判断するための静電容量の変化量に関するしきい値が予め保存されている。このしきい値は、静電容量式タッチパネル15の表面から平板部12aの表面までの距離や平板部12aをなす合成樹脂の誘電率を考慮して予め定められたものであり、平板部12aの表面と操作体との距離が一定値よりも小さくなると、静電容量の変化量がしきい値を超えるように設定されている。このようにすることによって、実質的な入力操作面となる平板部12aの表面と、本来の入力操作面であるタッチパネルの表面とが離隔していても、静電容量式タッチパネル15は、平板部12aの表面への操作体の接触もしくは接近を検知することが可能となる。
【0032】
図3は、第二磁石14を含むカバー部材12の外観図であり、(a)は表側を、(b)は裏側をそれぞれ示している。カバー部材12は、透明、かつ、十分な耐衝撃強度を持つABS樹脂によって板状に形成されており、平板部12aに対して外部から衝撃が加わった場合でも容易には破損しない。尚、カバー部材12を形成する合成樹脂材料として、ABS樹脂に代えてポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂を用いてもよい。
【0033】
延在部12bの四隅のそれぞれには、裏面側へ向けた矩形の凸形状に形成された第二位置決め部12cが設けられている。第二位置決め部12cの平面視形状は、第一位置決め部11cの平面視形状とほぼ等しいが、その寸法は第一位置決め部11cよりも若干小さくなっており、カバー部材12をベース部材11上に載置した際には、第一位置決め部11cと第二位置決め部12cとが相互に係合する。これによって、カバー部材12はベース部材11に対して、タッチパネルの平面に沿う方向の変位が規制された状態で、かつ、タッチパネルの平面に対する垂直方向に沿う方向の変位が可能な状態で保持される。
【0034】
第二位置決め部12cを表面側から見ると矩形の凹形状に形成されており、その内部には、第二磁石14としてのネオジム磁石が固定されている。固定の方法について詳述すると、第二位置決め部12cに対応する凹形状の平面視寸法は第二磁石14の平面視寸法よりも若干小さく形成されており、凹形状部分に第二磁石14を圧入することによって固定している。
【0035】
第二磁石14は、平面視形状が第二位置決め部12cに対応する凹形状と略等しい扁平な形状であって、第一磁石13と同様に厚さ方向が異極となるように着磁されており、第一磁石13と互いに吸着し合う磁極方向となるようにカバー部材12に固定されている。カバー部材12をベース部材11上に載置した際には、第一位置決め部11cの下に固定されている第一磁石13と、第二位置決め部12cの内部に固定されている第二磁石14とが対向し、相互間に磁力による十分な吸着力が生じる。尚、本実施例では、第二磁石14として、第一磁石13よりも外形が小さいネオジム磁石を使用しているが、相互間に十分な吸着力を発揮する磁石であれば、磁石の外形は任意でよい。
【0036】
図4は、
図1に示すA−A線に沿った断面図であり、アクチュエータ収容部11d周辺の断面を示している。アクチュエータ収容部11dに収容されているアクチュエータ17の上面は基部11bの上面とほぼ一致しており、ベース部材11にカバー部材12を載置した状態では、アクチュエータ17の上面と、カバー部材12の延在部12bの対向する面とが当接するように構成されている。このため、後述するように、アクチュエータ17がタッチパネル平面に対して垂直な方向に沿って変位を生じた場合、その変位がカバー部材12へと伝達される。
【0037】
第一位置決め部11cと第二位置決め部12cは、上述した通り、互いに係合して、ベース部材11に対してカバー部材12を保持している。第一位置決め部11cの深さ、および、第二位置決め部12cの突出高さは、アクチュエータ17が生じうる変位量に対して十分な大きさであり、アクチュエータ17によるカバー部材12の変位が最大となった場合でも、これら相互の係合が外れることはない。また、これら相互が係合していることによって、カバー部材12のタッチパネルの平面に沿う方向の無用な変位が規制され、カバー部材12の無用なガタつきが抑えられる。
【0038】
図5は、本実施例に用いられているアクチュエータ17の外観を示している。図示しているのは、アクチュエータ17が変位を生じる前の初期状態である。尚、
図5に示している印刷配線基板2の外形は簡略化しており、
図1などに示されている印刷配線基板2の外形と必ずしも一致していない。
【0039】
アクチュエータ17は、可動部材171、固定部材172、二つの端子金具173、形状記憶合金線174からなる。可動部材171と固定部材172は、共に絶縁性の硬質な材料によって形成されている。可動部材171の下面と固定部材172の上面は、互いに対応する波状の凹凸をなす面に形成されており、この互いの凹凸面の間に形状記憶合金線174が配設されている。尚、可動部材171と固定部材172を導電性金属材料などによって形成してもよいが、この場合は、可動部材171と固定部材172それぞれの表面に絶縁膜を施すなど、二つの端子金具173の間の短絡を防ぐ処置が必要となる。
【0040】
形状記憶合金線174は、固定部材172の両端で端子金具173によって固定されている。本実施例における形状記憶合金線174は、ニッケル−チタン合金であって、導電性で、比較的低い抵抗値を持ち、線径が極めて細く、常温程度の環境下ではしなやかな糸状を呈している。この形状記憶合金線174に電流を流すことで、形状記憶合金線174自身が発熱し、この熱によって、硬化・収縮する。尚、形状記憶合金線174はニッケル−チタン合金に限定されず、同様な特性を示すものであれば、他の金属や合金であってよい。
【0041】
端子金具173は、形状記憶合金線174の端部を伴って固定部材172の両端に嵌入されており、形状記憶合金線174が緩むことのない十分な強度で形状記憶合金線174の端部を固定している。端子金具173は導電性金属で形成されており、印刷配線基板2上に設けられている所定の形状のランド(図示しない)にハンダ付けされている。これにより、固定部材172が印刷配線基板2上に固定された状態となっている。
【0042】
このアクチュエータ17の動作について、
図6を参照して説明する。
図6(a)は、形状記憶合金線174に通電されていない状態、すなわち、変位を生じる前の状態を示している。この状態では、形状記憶合金線174は柔らかく、しなやかな状態にあり、上述した第一磁石13と第二磁石14との間の吸着力によって、形状記憶合金線174を挟持しながら可動部材171と固定部材172とが近接した状態となっている。
【0043】
図6(b)は、形状記憶合金線174に通電されている状態、すなわち、アクチュエータ17が変位を生じた後の状態を示している。この状態では、形状記憶合金線174は収縮し、これに伴って、第一磁石13と第二磁石14との間の吸着力に抗しながら、可動部材171がタッチパネルの平面に対する垂直方向に沿って、固定部材172とは反対の方向へ変位している。可動部材171の変位に伴って、可動部材171の上に載置されているカバー部材12も同方向へ、すなわち、ベース部材11と反対の方向へと変位する。
【0044】
このとき、この変位に伴って第一磁石13と第二磁石14との間の距離が大きくなり、相互間の磁力は、この距離の2乗に反比例して減衰する。すなわち、カバー部材12がベース部材11から離れるに伴って第一磁石13と第二磁石14との間の相互間の吸着力が弱くなり、カバー部材12の変位に対する抑制が緩和されることになるため、カバー部材12の変位を最大限に得ることができる。
【0045】
図6(b)に示す状態から、形状記憶合金線174への通電を停止すると、形状記憶合金は雰囲気との温度差、および、可動部材171、固定部材172、端子金具173それぞれへ向けての放熱によって冷却されて非通電状態の長さに戻るとともに、第一磁石13と第二磁石14との間の吸着力の作用によって、速やかに
図6(a)に示す状態に戻り、これに伴って、カバー部材12も変位が生じる前の位置に戻る。
【0046】
このように、形状記憶合金へ周期的に電流を供給したり停止したりすることで、可動部材171の変位が繰り返される。このアクチュエータ17の周期的な変位によって、カバー部材12に振動を与えることができる。
【0047】
以上のように構成された本実施例の動作について説明する。
【0048】
操作者が、例えば、本実施例の液晶表示デバイス16に表示されている“CH”ボタンの部分に指を接近させると、静電容量式タッチパネル15の表面と指との距離が近づくにつれて、静電容量式タッチパネル15で検出される静電容量の変化量が大きくなる。指が平板部12aの表面に接触すると(あるいは、十分に接近すると)、静電容量の変化量がしきい値を超えるため、これによって、何らかの操作が生じたことが検知される。この後、静電容量式タッチパネル15のスキャンが行われて操作位置が特定され、“CH”ボタンに対する操作が行われたことが特定され、操作者の操作が受け付けられる。このとき、操作者による操作を受け付けたことを示すフィードバックとして、アクチュエータ17に所定の周期で電流を通電したり、通電を停止したりすることで、カバー部材12に所定の振動が与えられて操作者に提示される。平板部12aに指を接触させている操作者は、指先を介してこの振動を知覚し、操作が受け付けられたことを認識することができる。このとき、液晶表示デバイス16に表示されている“CH”ボタンの色調を変えて、操作者の視覚にも訴えるようにするとさらに好ましい。
【0049】
本実施例では第一磁石と第二磁石ともにネオジム磁石を用いているが、これに限定されない。変形例を挙げると、第一磁石、第二磁石のうちのいずれかを、例えば鉄などの磁性体に置き換えてもよいし、また、第一磁石、第二磁石のいずれか、あるいは、両方を電磁石に置き換えてもよい。
【0050】
また、本実施例では形状記憶合金線を用いたアクチュエータを例示したが、従来例のようにコイルと磁気ユニットとを組み合わせたものや、電磁ソレノイドを応用したものなど、第一磁石と第二磁石との間の吸着力に抗してカバー部材の変位を生じさせ得るものであれば、様々な方式のアクチュエータを応用することができる。