(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1被着材と第2被着材とが接着により接合された接合体を備えた可動体を、回転運動及び往復運動の少なくとも一方を含む所定の運動形式で駆動させる駆動装置であって、
前記第1被着材の第1接着面と前記第2被着材の第2接着面との間に形成された、第1塗布剤による第1塗布層と、
前記第1接着面と前記第2接着面との間に形成された、前記第1塗布剤と物性の異なる第2塗布剤による第2塗布層と、を有する
ことを特徴とする駆動装置。
前記第1被着材である円板状のディスクと前記第2被着材である回転体を備えたエンコーダを有し、前記ディスクと前記回転体とが接着により接合された前記接合体を備えた前記可動体であるシャフトを回転運動させるサーボモータである
ことを特徴とする請求項9に記載の駆動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンコーダの製造工程では、回転ディスクとハブが同芯となるように位置合わせされた上で固定され、その後に他の処理等が行われる。ここで、上記従来技術では、回転ディスクとハブが1種類の接着剤で固定される。このため、当該接着剤の物性(硬化時間や接着強度等)に起因して接着後に行われる処理等が制限され、製造工程を自由に組むことができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、製造工程の自由度を向上することが可能なエンコーダ及びエンコーダ製造方法、並びに、駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、円板状のディスクと、
上記ディスクが端面に接着された回転体と、
上記ディスクと上記端面との間に形成された、第1塗布剤による第1塗布層と、
上記ディスクと上記端面との間に形成された、上記第1塗布剤と物性の異なる第2塗布剤による第2塗布層と、を有するエンコーダが提供される。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、円板状のディスクが回転体の端面に接着されたエンコーダを製造するためのエンコーダ製造方法であって、
上記ディスク又は上記端面に第1塗布剤を塗布する第1手順と、
上記ディスク又は上記端面に上記第1塗布剤と物性の異なる第2塗布剤を塗布する第2手順と、
上記第1塗布剤と上記第2塗布剤が塗布された状態で、上記ディスクを上記端面に取り付ける第3手順と、を有するエンコーダ製造方法が適用される。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明のさらに別の観点によれば、第1被着材と第2被着材とが接着により接合された接合体を備えた可動体を、回転運動及び往復運動の少なくとも一方を含む所定の運動形式で駆動させる駆動装置であって、
上記第1被着材の第1接着面と上記第2被着材の第2接着面との間に形成された、第1塗布剤による第1塗布層と、
上記第1接着面と上記第2接着面との間に形成された、上記第1塗布剤と物性の異なる第2塗布剤による第2塗布層と、を有する駆動装置が適用される。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、製造工程の自由度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係るエンコーダを備えたサーボモータの概略構成について説明するための説明図である。
【
図2】本実施形態に係るエンコーダの概略構成について説明するための説明図である。
【
図3】本実施形態に係るエンコーダのディスク及びハブの構成を抽出して示す、ディスク側から見た図である。
【
図4】本実施形態に係るエンコーダのディスク及びハブの構成を抽出して一部断面で示す、側面図である。
【
図5】本実施形態に係るエンコーダの製造方法を表すフローチャートである。
【
図6】ハブの外周側に第2塗布層を形成した比較例の構成を一部断面で示す、側面図である。
【
図7】第1塗布層と第2塗布層の間に溝を設ける変形例に係るエンコーダのディスク及びハブの構成を抽出して示す、ディスク側から見た図である。
【
図8】第1塗布層と第2塗布層の間に溝を設ける変形例に係るエンコーダのディスク及びハブの構成を抽出して一部断面で示す、側面図である。
【
図9】第2塗布層と外縁の間に溝を設ける変形例に係るエンコーダのディスク及びハブの構成を抽出して示す、ディスク側から見た図である。
【
図10】第2塗布層と外縁の間に溝を設ける変形例に係るエンコーダのディスク及びハブの構成を抽出して一部断面で示す、側面図である。
【
図11】第2塗布層を形成するための溝を設ける変形例に係るエンコーダのディスク及びハブの構成を抽出して示す、ディスク側から見た図である。
【
図12】第2塗布層を形成するための溝を設ける変形例に係るエンコーダのディスク及びハブの構成を抽出して一部断面で示す、側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0012】
<1.サーボモータ>
まず、
図1を参照しつつ、本実施形態に係るエンコーダを備えたサーボモータの構成の概略について説明する。
図1に示すように、サーボモータSMは、エンコーダ10と、モータMとを有する。モータMは、エンコーダ10を含まない動力発生源の一例である。このモータM単体をサーボモータという場合もあるが、本実施形態では、エンコーダ10を含む構成をサーボモータSMということにする。モータMは、シャフトSHを有し、このシャフトSHを回転軸AX周りに回転させることにより、回転力を出力する。
【0013】
なお、モータMは、例えば位置データ等のようなエンコーダ10が検出するデータに基づいて制御されるモータであれば特に限定されるものではない。また、モータMは、動力源として電気を使用する電動式モータである場合に限られるものではなく、例えば、油圧式モータ、エア式モータ、蒸気式モータ等の他の動力源を使用したモータであってもよい。ただし、説明の便宜上、以下ではモータMが電動式モータである場合について説明する。
【0014】
エンコーダ10は、モータMのシャフトSHの回転力出力端とは反対側の端部に連結される。そして、エンコーダ10は、シャフトSHの位置(角度)を検出することにより、モータM(測定対象の一例)の位置(回転角度ともいう)を検出し、その位置を表す位置データを出力する。なお、エンコーダ10は、モータMの位置に加えてか又は代えて、モータMの速度(回転速度、角速度等ともいう。)及びモータMの加速度a(回転加速度、角加速度等ともいう。)の少なくとも一方を検出してもよい。この場合、モータMの速度及び加速度は、例えば、位置を時間で1又は2階微分したり検出信号を所定時間の間カウントするなどの処理により検出することが可能である。
【0015】
エンコーダ10の配置位置は、本実施形態に示す例に特に限定されるものではない。例えば、エンコーダ10は、シャフトSHの出力端側に直接連結されるように配置されてもよく、また、減速機や回転方向変換機、ブレーキなどの他の機構を介してシャフトSH等に連結されてもよい。
【0016】
<2.エンコーダ>
次に、
図2を参照しつつ、本実施形態に係るエンコーダの構成について説明する。
図2に示すように、エンコーダ10は、シャフトSHの出力端とは反対側の端部にハブ20を介して連結されたディスク30と、ディスク30と対向して配置された光学モジュール40とを有している。光学モジュール40は、プリント基板50に実装されており、プリント基板50はスペーサ51を介してエンコーダ10あるいはモータMのハウジング52に設けられている。
【0017】
ディスク30は、円板状に形成されており、ディスク中心Oが回転軸AXとほぼ一致するように配置される。すなわち、ディスク30とハブ20が同芯となるように接着により接合され、ハブ20がシャフトSHに対し同芯となるように連結される。そして、ディスク30とハブ20との接合体を備えたシャフトSHが、モータMにより回転運動するように駆動される。
【0018】
ディスク30の光学モジュール40と対向する側の表面31には、シャフトSHの位置(角度)を検出するためのスリットアレイSAが形成されている。スリットアレイSAは、ディスク中心Oを中心としたリング状に配置されたトラックとして形成される。スリットアレイSAは、トラックの全周にわたって周方向に沿って並べられた複数の反射スリットを有する。1つ1つの反射スリットは、光源41から照射された光を反射する。
【0019】
ディスク30は、本実施形態では例えばガラスにより形成される。そして、スリットアレイSAが有する反射スリットは、ガラスのディスク30の表面に光を反射する部材が塗布されることにより、形成可能である。なお、ディスク30の材質は、ガラスに限られるものではなく、金属や樹脂等を使用することも可能である。ただし、金属や透明でない樹脂等を使用する場合には、後述するエンコーダ10の製造工程において、ディスク30とハブ20の固定を光照射以外による接着剤の硬化(例えば加熱による硬化等)により行う必要がある。また、反射スリットは、例えば反射率の高い金属をディスク30として使用し、光を反射させない部分をスパッタリング等により粗面としたり反射率の低い材質を塗布したりすることで、反射率を低下させて、形成されてもよい。ただし、ディスク30の材質や製造方法等については特に限定されるものではない。
【0020】
光学モジュール40は、ディスク30と対向配置される基板42を有する。基板42は、プリント基板50よりも小さく構成されており、プリント基板50に配置される。そして、この基板42のディスク30と対向する側の表面には、ディスク30に向けて光を出射する光源41と、スリットアレイSAからの反射光を受光する受光アレイ(図示略)が設けられている。
【0021】
なお、
図2に示す例ではエンコーダ10を反射型エンコーダとしたが、これに限られず、光源41がディスク30をはさみ受光アレイを有する基板42と対向するように配置された、いわゆる透過型エンコーダとしてもよい。また、
図2に示す例ではディスク30をハブ20に固定するようにしたが、ハブ20が取り付けられる回転体はハブ20に限定されるものではなく、例えばモータMのシャフトであってもよいし、モータMのシャフトに連結されたエンコーダのシャフトであってもよい。ただし、以下では、ディスク30をハブ20に固定する場合について説明する。
【0022】
<3.ディスクとハブとの接合部の構成>
次に、
図3及び
図4を参照しつつ、本実施形態に係るエンコーダのディスクとハブとの接合部の構成について説明する。なお、
図4に、ディスクとハブの接合部の一部を拡大した部分拡大図を併せて示すが、説明の便宜のため、ディスク30とハブ20との間隙を誇張して図示している。
【0023】
図4に示すように、ハブ20は、シャフトSHに連結される軸部21と、軸部21よりも大径のフランジ部22を有している。ディスク30とハブ20は、ディスク30の光学モジュール40側とは反対側の表面32と、ハブ20のフランジ部22の光学モジュール40側の端面23とが接着されることにより、接合されている。ディスク30とハブ20の端面23との間には、第1塗布剤による第1塗布層101と、第1塗布剤と物性の異なる第2塗布剤による第2塗布層102とが形成されている。この例では、第1塗布層101が端面23の中央部に円形状に形成されており、第2塗布層102が第1塗布層101の周囲を囲むように円環状に形成されている。なお、上記表面32が第1接着面の一例に相当し、端面23が第2接着面の一例に相当する。
【0024】
なお、塗布層101,102の態様は上記に限定されず、例えば第1塗布層101を多角形状としてもよいし、第2塗布層102を同心円状に複数設けてもよい。また、第2塗布層102は必ずしも連続した円環状である必要はなく、例えば複数の小さな円形状の塗布層を第1塗布層101の周囲を囲むように不連続に配置した構成としてもよい。
【0025】
本実施形態では、第1塗布剤として、紫外線の照射により硬化を開始する紫外線硬化型の接着剤を用い、第1塗布剤とは物性の異なる第2塗布剤として、エポキシ樹脂系の二液混合型の接着剤を用いる。第1塗布剤に紫外線硬化型接着剤を用いることで、硬化時期を調整することが可能となるため、接着剤の硬化前の状態でディスク30とハブ20が同芯となるように位置合わせを行い、位置合わせ完了後に硬化させて固定することができる。また、第2塗布剤として使用する二液混合型の接着剤は、混合により重合・吸湿・縮合反応などを開始し、比較的長い時間をかけて硬化するため、上記位置合わせ時には硬化が進行しておらず、位置合わせを阻害することがない。その一方で、その後経時的に硬化が進行して接着剤全体がほぼ完全に硬化するため、シール機能を発揮させることが可能である。
【0026】
なお、第1塗布剤に用いる接着剤は、上記紫外線硬化型接着剤に限定されない。例えば、紫外線以外の光照射を含むエネルギー放射、加熱、空気中の水分等、外的要因によって硬化反応を開始する接着剤が使用可能である。また、第2塗布剤に用いる接着剤も、上記エポキシ樹脂系の接着剤に限定されず、例えばアクリル樹脂系やウレタン樹脂系等、その他の二液混合型の接着剤が使用可能である。また第2塗布剤としては、接着剤全体がほぼ完全に硬化するものであれば、二液混合型でなく一液型の接着剤を用いてもよい。さらに、第2塗布剤は必ずしも接着剤である必要はなく、例えばシリコンを主成分とする液状またはペースト状のシール剤(シリコンシーラント等)を用いてもよい。
【0027】
なお、本実施形態で第1塗布剤として用いる紫外線硬化型の接着剤が、第1接着剤の一例に相当し、第2塗布剤として用いるエポキシ樹脂系の二液混合型の接着剤が、シール剤及び第2接着剤の一例に相当する。
【0028】
<4.エンコーダの製造方法>
次に、
図5を用いて、本実施形態に係るエンコーダの製造方法について説明する。なお、ここで説明する製造方法は、図示しないエンコーダ製造装置の制御部(CPU)によって実行される。
【0029】
まずステップS10では、制御部は、図示しない塗布装置を用い、ハブ20のフランジ部22の端面23に第1塗布剤を塗布する。
図3に示す例では、第1塗布剤は端面23の中心部に円状に塗布されている。そして、ステップS20に進む。
【0030】
ステップS20では、制御部は、ステップS10と同様に図示しない塗布装置を用い、端面23に第2塗布剤を塗布する。
図3に示す例では、第2塗布剤は第1塗布剤の周囲を囲むように円環状に塗布されている。そして、ステップS30に進む。
【0031】
なお、上記では第1塗布剤、第2塗布剤の順に塗布するようにしたが、塗布の順番はこれに限定されず、反対に第2塗布剤、第1塗布剤の順に塗布してもよい。また、上記では両方の塗布剤をハブ20の端面23に塗布するようにしたが、ディスク30の表面32に塗布してもよいし、一方の塗布剤をハブ20側、他方をディスク30側というように、塗布剤ごとに塗布面を分けてもよい。
【0032】
ステップS30では、制御部は、図示しない取付装置を用い、ハブ20の端面23に第1塗布剤と第2塗布剤が塗布された状態で、ディスク30をハブ20の端面23に取り付ける。そして、ステップS40に進む。
【0033】
ステップS40では、制御部は、図示しない位置合わせ装置を用い、ディスク30とハブ20が同芯となるように位置合わせを行う。すなわち、上記ステップS30でディスク30をハブ20の端面23に取り付けた後、後述のステップS50において紫外線を照射するまでの間は、紫外線硬化型接着剤である第1塗布剤は硬化されておらず、また前述したように二液混合型接着剤である第2塗布剤の硬化も進行していないため、ディスク30はハブ20に対し第1及び第2塗布剤の表面張力により吸着はしているものの、ディスク面方向に相対移動することが可能である。このため、位置合わせ装置でディスク30とハブ20の相対位置を調整することによってそれらの同芯位置調整を行うことが可能である。そして、ステップS50に進む。
【0034】
ステップS50では、制御部は、図示しない紫外線照射装置を用い、ディスク30とハブ20の接合部に紫外線を照射する。紫外線はガラス製のディスク30を透過し、紫外線硬化型接着剤である第1塗布剤を硬化させる。なお、第2塗布剤は紫外線照射による影響を受けず、その後、経時的に硬化する。
【0035】
なお、本実施形態では第1塗布剤の一例として紫外線硬化型の接着剤を用いるため、ステップS50で紫外線を照射するようにしたが、これに限定されるものではなく、接着剤の種類に応じた処理を行えばよい。例えば、紫外線以外の光硬化型接着剤を用いる場合には当該光を照射すればよいし、熱硬化型接着剤を用いる場合には加熱すればよい。すなわち、接着剤の硬化反応を開始させる外的要因を付与すればよい。
【0036】
以上で本フローを終了する。なお、以上説明した制御手順によって接合されたディスク30とハブ20との接合体と、光学モジュール40等とを組み付けることによってエンコーダ10が製造され、さらに製造されたエンコーダ10がモータMに取り付けられてサーボモータSMが完成する。但し、この光学モジュール40等の組み付けやモータMへの取り付けに関する説明は省略する。
【0037】
なお、ディスク30が第1被着材の一例に相当し、ハブ20が回転体及び第2被着材の一例に相当し、シャフトSHが可動体の一例に相当し、サーボモータSMが駆動装置の一例に相当する。また、上記ステップS10が第1手順の一例に相当し、ステップS20が第2手順の一例に相当し、ステップS30が第3手順の一例に相当する。
【0038】
<5.本実施形態による効果の例>
以上説明した本実施形態のエンコーダ10においては、ディスク30とハブ20の端面23との間に、第1塗布剤による第1塗布層101と、第1塗布剤と物性の異なる第2塗布剤による第2塗布層102とが、形成されている。ここで、第1塗布剤として、紫外線硬化型接着剤のように外的要因によって硬化反応を開始する接着剤を用いることで、第1塗布剤を任意のタイミングで硬化させることが可能となるので、接着後にディスク30とハブ20に対し例えば振動等を生じる処理等を行うことが可能となる。また、第2塗布剤として、硬化処理を行わなくとも経時的にほぼ完全に硬化する接着剤を用いることで、接着後にディスク30とハブ20に対し例えば高速回転させるような処理等を行うことが可能となる。このように、物性の異なる2種類の塗布剤を用いることで、接着後に行われる処理等が物性に起因して制限されることを抑制できるので、製造工程の自由度を向上させることができる。
【0039】
また、本実施形態のように第1塗布剤として紫外線硬化型の接着剤を用いる場合、上述したように完全に硬化させるのが難しく、未硬化の接着剤が多いとディスク30及びハブ20の高速回転時に接着剤が飛散することも考えうる。したがって、第2塗布層102を第1塗布層101の周囲を囲むように形成することで、接着剤の飛散する可能性を少なくし、エンコーダ10の信頼性を向上させることができる。
【0040】
なお、第1塗布層の周囲を囲むように第2塗布層を形成する構成としては、例えば
図6に示す構成が考えられる。この比較例では、第2塗布剤による第2塗布層102′が、ディスク30とハブ20の端面23との間ではなく、ハブ20のフランジ部22の半径方向外周側に、当該外周側の端面24とディスク30の表面32に接触するように形成されている。なお、第1塗布層101は上記実施形態と同様である。このようにしても、第2塗布層102′のシール機能によって未硬化の第1塗布剤の飛散の可能性を少なくできるが、次のような問題がある。すなわち、比較例の場合には、ハブ20の端面23に第1塗布剤を塗布した状態でディスク30をハブ20の端面23に取り付け、位置合わせを行い、第1塗布剤を硬化させた後に、第2塗布剤をハブ20のフランジ部22の外周側に塗布することになる。このため、塗布の際に、第2塗布剤がディスク30の表面32のスリットアレイSAに対応する位置に誤って付着するおそれがあり、その場合にはエンコーダ10の検出精度の低下を招いてしまう。これに対し、本実施形態では、第2塗布層102をディスク30とハブ20の端面23との間に形成するので、第2塗布剤がフランジ部22の外周側にはみ出すことがなく、上記のような問題を生じない。したがって、エンコーダ10の信頼性を確実に確保できる。
【0041】
また、本実施形態では特に、第2塗布剤として二液混合型の接着剤を用いる。これにより、第2塗布層102に接着機能とシール機能の両方を発揮させることができるので、第2塗布剤にシリコンシーラント等の単なるシール剤を用いる場合に比べ、ディスク30とハブ20との接着強度を高めることができる。
【0042】
また、本実施形態では特に、第1塗布剤として、紫外線照射によって硬化反応を開始する接着剤を使用する。このような接着剤を用いることで、硬化時期を調整することが可能となり、接着剤の硬化前の状態でディスク30とハブ20が同芯となるように位置合わせを行い、位置合わせ完了後に硬化を開始させて、ディスク30とハブ20とを固定することができる。また、このような固定方式とすることにより、ディスク30及びハブ20に非接触で固定を行うことができるので、固定時に位置ずれが生じるのを防止できる。
【0043】
<6.変形例等>
なお、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0044】
(6−1.第1塗布層と第2塗布層の間に溝を設ける場合)
図7及び
図8に示すように、ハブ20の端面23における第1塗布層101と第2塗布層102との間の位置に、凹状の溝25を形成してもよい。これにより、ディスク30とハブ20との接着時に、溝25が第1塗布剤と第2塗布剤の逃げ溝となり、ディスク30の表面32とハブ20の端面23とをより密着させて不要な隙間をなくすことができると共に、それらが接触する(混ざり合う)のを防止できる。その結果、第1塗布剤による機能(接着機能)や第2塗布剤による機能(シール機能)を互いに阻害することなく効果的に発揮させることが可能となり、エンコーダ10の信頼性を向上させることができる。なお、溝25が第1溝の一例に相当する。
【0045】
(6−2.第2塗布層と外縁の間に溝を設ける場合)
図9及び
図10に示すように、上述した溝25に加え、ハブ20の端面23における外縁(端面24)と第2塗布層102との間の位置に、凹状の溝26を形成してもよい。これにより、ディスク30とハブ20との接着時に、溝26が第2塗布剤の逃げ溝となり、第2塗布剤がディスク30とハブ20との接合部分より外周側にはみ出すのを確実に防止できる。その結果、前述の比較例で述べた問題が生じるのを確実に防止でき、エンコーダ10の信頼性を確保できる。また、上述の溝25と同様に、ディスク30の表面32とハブ20の端面23とをより密着させて不要な隙間をなくす効果もある。なお、溝26が第2溝の一例に相当する。
【0046】
なお、
図9及び
図10に示す例では、溝25,26の両方を設けた場合を一例として説明したが、溝26のみ設けてもよいのは言うまでもない。
【0047】
(6−3.第2塗布層を形成するための溝を設ける場合)
図11及び
図12に示すように、ハブ20の端面23における第2塗布層102に対応する位置に凹状の溝27を形成しておき、当該溝27に第2塗布剤を充填して第2塗布層102を形成してもよい。これにより、第2塗布層102とハブ20との接触面積を増大させることができるので、第2塗布層102によるシール機能を増大させると共に、ディスク30とハブ20との接着強度を高めることができる。
【0048】
なお、紫外線硬化型の接着剤による第1塗布層101については、紫外線が届くように薄く形成する必要があるため、上述のような溝に充填する構造は好ましくない。但し、二液混合型の接着剤を用いる第2塗布剤については、混合による化学反応によって硬化するため、厚く形成してもほぼ完全に硬化することが可能であり、また溶媒の減損が無いため体積変化が小さく、欠落部の充填肉盛り等に好適である。したがって、本変形例のように、溝27に充填する構造とすることが可能である。
【0049】
(6−4.その他)
上記実施形態では、物性の異なる2種類の塗布剤を用いる場合を一例として説明したが、物性の異なる3種類以上の塗布剤を用いてもよい。例えば、3種類の接着剤を塗布したり、2種類の接着剤と1種類のシール剤を塗布する等でもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、駆動装置の一例として、ディスク30とハブ20とが接着により接合された接合体を備えたシャフトSHを回転運動により駆動させるサーボモータSMに適用した場合を説明したが、これに限らない。すなわち、複数の被着材が接着により接合され、当該接合体を備えた可動体が、回転運動及び往復運動の少なくとも一方を含む所定の運動形式で駆動される駆動装置であれば、様々な駆動装置に適用可能である。特に、可動体が高加速度で駆動される駆動装置の場合、未硬化の接着剤が飛散する可能性が高まるため、好適である。このような駆動装置としては、例えば、リニアモータによりスライダをX軸及びY軸方向に往復運動するように駆動させるXYステージ装置等が挙げられる。このようなXYステージ装置では、X軸方向及びY軸方向の位置検出に、固定子に設けられたスケールと可動子に設けられた検出ヘッドから構成される位置検出装置が用いられるが、スケールと固定子が接着により接合される場合がある。この場合、一方の軸に対応する可動子上に搭載された、他方の軸に対応する固定子とスケールとの接合部に適用される。
【0051】
なお、この場合において、固定子とスケールが第1被着材と第2被着材の一例に相当し、接合された固定子とスケールが接合体の一例に相当し、当該接合体が搭載された可動子が可動体の一例に相当し、XYステージ装置が駆動装置の一例に相当する。
【0052】
以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。その他、一々例示はしないが、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。