(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スラット板の前記前縁が、前記船底外板部における最大傾斜箇所よりも船首側となる位置に、前記スラット板を設けることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の船尾船底スラット。
前記スラット板の前記前縁が、前記船底外板部に沿う前記船底流れが2次元剥離を起こす箇所よりも船首側となる位置に、前記スラット板を設けることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の船尾船底スラット。
前記取付手段が、二つの前記船尾部及び/又は前記船底外板部に前記スラット板を固定して設ける固定取付構造であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の船尾船底スラット。
【背景技術】
【0002】
二つの船尾部を有する船舶(以下双船尾船と称す)は2軸船の一種である。双船尾船に関しては、既に多くの研究が行われ、一部には実船として採用されてもいるが、就航隻数はごく限られている。
1軸船では一つのプロペラが負担する推力(プロペラ荷重度)が過大になりキャビテーションが生じる不都合がある。
プロペラを2軸にする最大の目的は、2軸にすることで推力を分散し、上記プロペラ荷重度を下げることにより、プロペラ効率を向上させることにある。しかしながら、1軸船で最大限に利用している伴流が通常の2軸船では半減し、いわゆるプロペラ船後効率の悪化により、総合推進効率では1軸船より劣ることになる。
【0003】
ここで、
図14に1軸船の要部側面図、
図15に1軸船の要部断面図、
図16に通常の2軸船の要部側面図、
図17に通常の2軸船の要部断面図、
図18に1軸船と通常の2軸船における伴流の等速線図を示す。
1軸船では、
図14及び
図15に示すように、船体110の船尾部111に一つのプロペラ115が設けられている。船尾部111及びプロペラ115は、船体中心線120上に設けられている。
これに対して、通常の2軸船では、
図16及び
図17に示すように、船体110の船尾部111を挟んで二つのプロペラ115が設けられている。船尾部111は、船体中心線120上に設けられ、プロペラ115は、船体中心線120に対して対称に設けられている。
上記の構成による1軸船及び通常の2軸船における伴流は、
図18に示すように船体中心線120に近いほど大きく、船体中心線120から離れると小さくなる。
1軸船では、
図18(a)に示すように、大きな伴流の位置にプロペラ115が配置されているので、伴流を最大限に利用している。
これに対して、通常の2軸船では、
図18(b)に示すように、大きな伴流の位置にプロペラ115が配置されないため、伴流を十分に利用することができない。
そこで、2軸船において、伴流を利用してプロペラ船後効率の改善を図るため、船尾部を左右一対とした双船尾船が提案されている。
【0004】
しかしながら双船尾船では、船型が複雑になることで浸水表面積が増加して摩擦抵抗が増加するという宿命的な短所のほかに、双船尾間の流れが意外に速く、1軸船並みの伴流が得られないのが一般的である。
このようなことから、双船尾船は船の幅が極端に広い、あるいは喫水が浅くて大きなプロペラが装備できないなどの特殊な条件にある船を除いて採用されていない。
近年になって、船内から推進軸を船尾側に出してプロペラを装備する通常のプロペラに替わって、船尾に吊すように装備するPOD推進器が使えるようになり、双船尾で最も総合推進効率の良くなる場所にPODを装備しようという動きがあり、研究レベルでは成果が上がっている。
【0005】
なお、本出願人は、船尾部の船底下面が船尾端に向かって緩やかに上昇するように傾斜した船舶において、船尾部の後部から水中に垂下したポッドプロペラを備え、水平な船底下面から傾斜した船底下面に移行する部分で、航行時に水の流れが剥離を起こさずにプロペラに流入するように、傾斜した船底下面の前端部にフィンを装着したものを提案している(特許文献1)。
また、特許文献2では、ポッド推進装置の前方における船尾フレームに、中央部が幅の狭い垂直部を持たせ、この垂直部の左右両側に整流フィンを取り付けたものを提案している。
また、特許文献3では、双船尾船において、スケグ内部の上昇流の流れでフィンを利用して前進力を得るとともに、このフィンによりスケグ内部の流れを整流してプロペラ面に流入する非対称流れを抑制して、プロペラ起振力を低減することを提案している。
また、特許文献4では、一対の外回りプロペラを有する2軸船について、各プロペラに流入する伴流の分布を改善するフィンを設けることで推進性能向上用船尾フィン付き2軸船を提案している。
また、特許文献5では、船尾部の海水浸水部に、翼型断面形状を有する船尾部フィンを設けることで船体抵抗低減を図ることを提案している。
また、特許文献6では、船側平坦部後縁近傍の後方にて、この平坦部後縁から船尾に沿い、かつ外板にほぼ平行に設けるフィンを提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、双船尾船では、通常のプロペラに替わってPOD推進器を用いても、二つの船尾部の間に配置される船底外板部の流れが意外に速く、伴流の利用が少ないという点では本質的な問題は解決されない。
本発明者は、船尾の肥大度を増加させることで船底外板部における流れを遅くできることに着目した。船尾の肥大度を増加させれば、伴流が増加して推進効率を向上できるほか、貨物の積載量も増えるという一石二鳥の効果がある。
ところが、二つの船尾部の間の伴流を大きくしようとすると、船体中央から船尾に向かう船底の傾斜を大きくすることになり、流れが途中で剥離して、いわゆる死水域が発生する二次元剥離が起こり、船体抵抗が大幅に増加し、プロペラの振動も増加することになる。
【0008】
なお、特許文献1及び特許文献2は1軸船であり、二つの船尾部の間に配置される船底外板部の流れが速いために伴流を利用できないという双船尾船における課題が生じるものではない。
これに対して特許文献3は双船尾船であり、二つの船尾部の間に設けたフィンで前進力を得るとともに、流れを整流するものであり、船尾の肥大度によって伴流増加を図るものでないために二次元剥離が生じやすいという構造でなく、フィンも二次元剥離を防止できるものではない。
また特許文献4も双船尾船であるが、フィンは伴流の分布改善を図ることができる構成であり、このフィンによっては二次元剥離を防止できない。
特許文献5における翼型断面形状を有する船尾部フィンは、前進方向成分の推力を得るためのものであり、特許文献6における外板にほぼ平行に設けるフィンは、ショルダー部の剥離を防止するものであり、また、いずれも1軸船であり、二つの船尾部の間に配置される船底外板部の流れが速いために伴流を利用できないという双船尾船における課題が生じるものではない。
【0009】
そこで、本発明は、船体中央から船尾に向けて船底が傾斜を持って立ち上がる船底外板部に、飛行機の翼に装備されるスラットに類似の付加物を装備することにより、双船尾船の船尾肥大度を従来より大きくしても、二次元剥離による船体抵抗の増加を抑え、プロペラ振動を防止して、伴流増加による推進効率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載に対応した船尾船底スラットにおいては、二つの船尾部を有し、二つの船尾部の間に配置される船底外板部が船尾に向けて傾斜を持って立ち上がる双船尾船に設ける船尾船底スラットにおいて、船底外板部に間隙を持たせて沿わせ、前縁を船底基線又は船底基線より上方に位置させて配置するスラット板と、スラット板を船尾部の間に設ける取付手段とを備え、スラット板を、平板の単板構造又は翼型断面の複板構造で構成し、船底外板部との距離が後縁で前縁より近づくように設け、かつスラット板を連続した構成として二つの船尾部にわたって設け、スラット板により船底外板部における船底流れを加速して船底外板部に沿わせて流すことにより船底流れの二次元剥離を防止することを特徴とする。請求項1に記載の本発明によれば、双船尾船の船尾肥大度を従来より大きくしても、二次元剥離による船体抵抗の増加を抑え、プロペラ振動を防止して、伴流増加による推進効率の向上を図ることができる。また、請求項1に記載の本発明によれば、スラット板の前縁を、船底基線又は船底基線より上方に位置させて配置することにより、スラット板が航行時の抵抗となることを防止できる。また、船底外板部と流線が平行でない場合でも、船底流れを船底外板部の方向に導くことができ、二次元剥離を防止することができる。また、船底外板部に沿う流れを加速することで二次元剥離を防止することができる。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の船尾船底スラットにおいて、スラット板の前縁を、船尾部のプロペラ軸よりも下方に配置することを特徴とする。請求項2に記載の本発明によれば、プロペラ軸よりも下方において二次元剥離が生じやすいために、二次元剥離防止効果が高い。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の船尾船底スラットにおいて、スラット板を、
平板を曲げた曲がり板の単板構造又は翼型断面の厚さの中心線が曲線である翼型の複板構造で構成し、単板構造の凸面又は複板構造の翼型断面の厚さの中心線の凸側の面を船尾側として設けることを特徴とする。請求項3に記載の本発明によれば、船底流れを船底外板部の方向に導くことができ、二次元剥離を防止することができる。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3に記載の船尾船底スラットにおいて、スラット板の前縁が、船底外板部における最大傾斜箇所よりも船首側となる位置に、スラット板を設けることを特徴とする。請求項4に記載の本発明によれば、二次元剥離が生じやすい位置に船底流れを導くことができる。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項3に記載の船尾船底スラットにおいて、スラット板の前縁が、船底外板部に沿う船底流れが2次元剥離を起こす箇所よりも船首側となる位置に、スラット板を設けることを特徴とする。請求項5に記載の本発明によれば、二次元剥離が生じやすい位置に船底流れを導くことができる。
請求項6記載の本発明は、請求項1から請求項5に記載の船尾船底スラットにおいて、スラット板を、船底外板部に沿う船底流れの方向に、複数個設けることを特徴とする。請求項6に記載の本発明によれば、例えば船底外板部の傾斜が大きい場合や船底外板部が長い場合に、複数個のスラット板によって複数箇所で発生する二次元剥離を効果的に防止することができる。
請求項7記載の本発明は、請求項1から請求項6に記載の船尾船底スラットにおいて、取付手段が、二つの船尾部及び/又は船底外板部にスラット板を固定して設ける固定取付構造であることを特徴とする。請求項7に記載の本発明によれば、船底流れの二次元剥離を防止するためであるため、可動取付構造である必要はなく、固定取付構造によって安全性を確保して二次元剥離を効果的に防止できる。
請求項8記載に対応した船尾船底スラット付き船舶においては、請求項1から請求項7のいずれかに記載の船尾船底スラットを備えることを特徴とする。請求項8に記載の本発明によれば、船尾の肥大度を増加させることができ、伴流が増加して推進効率を向上できるほか、貨物の積載量も増える船舶を実現できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の船尾船底スラットによれば、双船尾船の船尾肥大度を従来より大きくしても、二次元剥離による船体抵抗の増加を抑え、プロペラ振動を防止して、伴流増加による推進効率の向上を図ることができる。また、スラット板の前縁を、船底基線又は船底基線より上方に位置させて配置することにより、スラット板が航行時の抵抗となることを防止できる。
なお、スラット板の前縁を、船尾部のプロペラ軸よりも下方に配置する場合には、プロペラ軸よりも下方において二次元剥離が生じやすいために、二次元剥離防止効果が高い。
また、前縁をプロペラ軸よりも下方に配置することにより、プロペラ軸上部の伴流分布の改善に役立てることができる。
また、スラット板を、曲がり板の単板構造又は翼型断面の厚さの中心線が曲線である翼型の複板構造で構成し、単板構造の凸面又は複板構造の翼型中心線の凸側の面を船尾側として設ける場合には、船底流れを船底外板部の方向に導くことができ、二次元剥離を有効に防止することができる。
また、スラット板を、平板の単板構造又は翼型断面の厚さの中心線が直線である対称翼型の複板構造で構成し、船底外板部との距離が後縁で前縁より近づくように設ける場合には、船底外板部と流線が平行でない場合でも、船底流れを船底外板部の方向に導くことができ、二次元剥離を防止することができる。
また、スラット板を、船底外板部に沿う船底流れが前縁より下流側で加速するように船底外板部に対して仰角を持たせて設ける場合には、船底外板部に沿う流れを加速することで二次元剥離を防止することができる。
また、スラット板の前縁が、船底外板部における最大傾斜箇所よりも船首側となる位置に、スラット板を設ける場合には、二次元剥離が生じやすい位置に船底流れを導くことができる。
また、スラット板の前縁が、船底外板部に沿う船底流れが2次元剥離を起こす箇所よりも船首側となる位置にスラット板を設ける場合には、二次元剥離が生じやすい位置に船底流れを導くことができる。
また、スラット板を、船底外板部に沿う船底流れの方向に複数個設ける場合には、複数個のスラット板によって複数箇所で発生する二次元剥離を効果的に防止することができる。
また、スラット板を、取付手段が、二つの船尾部及び/又は船底外板部にスラット板を固定して設ける固定取付構造である場合には、船底流れの二次元剥離を防止するためであるため、可動取付構造である必要はなく、固定取付構造によって安全性を確保して二次元剥離を効果的に防止できる。
本発明の船尾船底スラット付き船舶によれば、船尾の肥大度を増加させることができ、伴流が増加して推進効率を向上できるほか、貨物の積載量も増える船舶を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の第1の実施形態による船尾船底スラットについて説明する。
図1は第1の実施形態による船尾船底スラット付き船舶を船尾側下方から見た要部斜視図、
図2は同船尾船底スラット付き船舶を船尾側から見た要部正面図、
図3は同船尾船底スラット付き船舶の船尾側の要部側面図、
図4は同船尾船底スラット付き船舶の船底外板部の肥大度を説明するための図、
図5は船底外板部の肥大度による伴流速度分布を示す説明図である。
【0014】
図1及び
図2に示すように、船体10の船尾には、二つの船尾部11a、11bを有し、二つの船尾部11a、11bの間には、船尾に向けて傾斜を持って立ち上がる船底外板部12Aが配置されている。二つの船尾部11a、11bは、水面下に平行に配置され、船尾部11a、11bの各胴部の中心軸上にプロペラ15a、15bを備えている。
船底外板部12Aにはスラット板13Aが設けられており、スラット板13Aの両端は、それぞれ船尾部11a、11bに、固定取付構造である取付手段14a、14bを差し込むことで固定されている。ここで、取付手段14a、14bには取付金具を用いるが、平板の取付金具で強度が不足する場合には、船底外板部12Aから取付金具を取ることもでき、溶接によって固定される。一対の船尾部11a、11bの間は、例えば20メートルを越える場合もあることから、スラット板13Aの両端を船尾部11a、11bに取り付けるとともに、スラット板13Aの途中で取付金具によって船底外板部12Aに固定してもよい。また、スラット板13Aの両端を船尾部11a、11bに取り付けることなく、スラット板13Aの途中で取付金具によって船底外板部12Aに固定してもよい。
なお、プロペラ15a、15bは、互いに逆方向に回転する。すなわち、
図2に示すように、船体10の後方から見た場合に、プロペラ15aは時計回り、プロペラ15bは反時計回りに回転する。このようにプロペラ15a、15bを回転させることで、二つの船尾部11a、11bの間の上向きの流れを有効に利用して推進効率を向上させることができる。
【0015】
図3及び
図4に示すように、本実施形態に適した双船尾船の船体10は、船尾肥大度を従来より大きくしている。図において、従来の一般的な船底外板部112を破線で、本実施形態による船底外板部12Aを実線で示している。
図5(a)は、本実施形態による船底外板部12Aの傾斜角によって生じる伴流速度分布を示し、
図5(b)は、従来の一般的な船底外板部112の傾斜角によって生じる伴流速度分布を示している。
図5(a)、(b)の比較から分かるように、プロペラ15a、15bの二つの船尾部11a、11bの間における伴流が
図5(a)の方が増加していることが分かる。このように本実施形態による船底外板部12Aでは伴流利得を増加することができる。
ここで、船底外板部12Aの傾斜角が20度以上では境界層の剥離が顕著になるため、従来の一般的な船底外板部112の傾斜角は20度未満としている。本実施形態では、船底外板部12Aにおける最大傾斜角を20度以上とすることで伴流増加を図るとともに、この傾斜角によって生じる二次元剥離をスラット板13Aで防止している。
【0016】
図3に示すように、スラット板13Aは、船底外板部12Aに間隙を持たせて沿わせ、前縁13fを船底基線Xにあわせて配置する。なお、スラット板13Aは、船底基線Xにあわせて配置するか、又は船底基線Xより上方に位置させて配置することで、ドック入り時だけでなく航行時にも障害物となることはない。
図3において、Yはプロペラ軸の軸心線を示しており、スラット板13Aの後縁13rはプロペラ軸の軸心線Yよりも下方に位置する。
なお、剥離箇所によってスラット板13Aの後縁13rは、プロペラ軸の軸心線Yよりも上方に位置させることも可能である。
スラット板13Aは、曲がり板の単板構造で構成し、単板構造の凸面を船尾側として設け、前縁13fよりも後縁13rを船底外板部12Aに近接させている。船底外板部12Aに沿う船底流れが、前縁13fの船底流れZaより下流側の船底流れZbで加速するように、スラット板13Aは船底外板部12Aに対して仰角θを持たせて設けている。
【0017】
本実施形態によれば、双船尾船の船尾肥大度を従来より大きくしても、二次元剥離による船体抵抗の増加を抑え、プロペラ振動を防止して、伴流増加による推進効率の向上を図ることができる。
また本実施形態によれば、単板構造の凸面を船尾側として設けることで、船底流れを船底外板部12Aの方向に導くことができ、船底外板部12Aにおける二次元剥離を防止することができる。
また本実施形態によれば、船底外板部12Aに沿う船底流れを加速することで船底外板部12Aにおける二次元剥離を防止することができる。
【0018】
次に本発明の第2の実施形態による船尾船底スラットについて説明する。
図6は同船尾船底スラット付き船舶の船尾側の要部側面図である。なお、上記実施形態と同一機能部材には同一番号を付して説明を省略する。
図6に示すように、スラット板13Bは、船底外板部12Aに間隙を持たせて沿わせ、前縁13fを船底基線Xにあわせて配置する。なお、スラット板13Bは、船底基線Xにあわせて配置するか、又は船底基線Xより上方に位置させて配置することで、ドック入り時だけでなく航行時にも障害物となることはない。
スラット板13Bは、平板の単板構造で構成し、船底外板部12Aとの距離が後縁13rで前縁13fより近づくように設けている。船底外板部12Aに沿う船底流れが、前縁13fの船底流れZaより下流側の船底流れZbで加速するように、スラット板13Bは船底外板部12Aに対して仰角θを持たせて設けている。
【0019】
本実施形態によれば、双船尾船の船尾肥大度を従来より大きくしても、二次元剥離による船体抵抗の増加を抑え、プロペラ振動を防止して、伴流増加による推進効率の向上を図ることができる。
また本実施形態によれば、船底外板部12Aとの距離が後縁13rで前縁13fより近づくように設けることで、船底流れを船底外板部12Aの方向に導くことができ、船底外板部12Aにおける二次元剥離を防止することができる。
また本実施形態によれば、船底外板部12Aに沿う船底流れを加速することで船底外板部12Aにおける二次元剥離を防止することができる。
【0020】
次に本発明の第3の実施形態による船尾船底スラットについて説明する。
図7は同船尾船底スラット付き船舶の船尾側の要部側面図である。なお、上記実施形態と同一機能部材には同一番号を付して説明を省略する。
図7に示すように、スラット板13Cは、船底外板部12Aに間隙を持たせて沿わせ、前縁13fを船底基線Xにあわせて配置する。なお、スラット板13Cは、船底基線Xにあわせて配置するか、又は船底基線Xより上方に位置させて配置することで、ドック入り時だけでなく航行時にも障害物となることはない。
スラット板13Cは、翼型断面の厚さの中心線が曲線である翼型の複板構造で構成し、複板構造の翼型中心線の凸側の面を船尾側として設けている。本実施形態においても、船底外板部12Aに沿う船底流れが、前縁13fの船底流れZaより下流側の船底流れZbで加速するように、スラット板13Cは船底外板部12Aに対して仰角を持たせて設けてもよい。
【0021】
本実施形態によれば、双船尾船の船尾肥大度を従来より大きくしても、二次元剥離による船体抵抗の増加を抑え、プロペラ振動を防止して、伴流増加による推進効率の向上を図ることができる。
また本実施形態によれば、複板構造の翼型中心線の凸側の面を船尾側として設けることで、船底流れを船底外板部12Aの方向に導くことができ、船底外板部12Aにおける二次元剥離を防止することができる。
また本実施形態によれば、船底外板部12Aに沿う船底流れを加速することで船底外板部12Aにおける二次元剥離を防止することができる。
【0022】
次に本発明の第4の実施形態による船尾船底スラットについて説明する。
図8は同船尾船底スラット付き船舶の船尾側の要部側面図である。なお、上記実施形態と同一機能部材には同一番号を付して説明を省略する。
図8に示すように、スラット板13Dは、船底外板部12Aに間隙を持たせて沿わせ、前縁13fを船底基線Xにあわせて配置する。なお、スラット板13Dは、船底基線Xにあわせて配置するか、又は船底基線Xより上方に位置させて配置することで、ドック入り時だけでなく航行時にも障害物となることはない。
スラット板13Dは、翼型断面の厚さの中心線が直線である対称翼型の複板構造で構成し、船底外板部12Aとの距離が後縁13rで前縁13fより近づくように設けている。船底外板部12Aに沿う船底流れが、前縁13fの船底流れZaより下流側の船底流れZbで加速するように、スラット板13Dは船底外板部12Aに対して仰角θを持たせて設けている。
【0023】
本実施形態によれば、双船尾船の船尾肥大度を従来より大きくしても、二次元剥離による船体抵抗の増加を抑え、プロペラ振動を防止して、伴流増加による推進効率の向上を図ることができる。
また本実施形態によれば、船底外板部12Aとの距離が後縁13rで前縁13fより近づくように設けることで、船底流れを船底外板部12Aの方向に導くことができ、船底外板部12Aにおける二次元剥離を防止することができる。
また本実施形態によれば、船底外板部12Aに沿う船底流れを加速することで船底外板部12Aにおける二次元剥離を防止することができる。
【0024】
次に本発明の第5の実施形態による船尾船底スラットについて説明する。
図9は同船尾船底スラット付き船舶の船尾側の要部側面図である。なお、上記実施形態と同一機能部材には同一番号を付して説明を省略する。
図9に示すように、スラット板13Aは、船底外板部12Bに間隙を持たせて沿わせ、スラット板13Aの前縁13fが、船底外板部12Bにおける最大傾斜箇所Mよりも船首側となる位置に配置する。なお、スラット板13Aは、スラット板13Aの前縁13fを、船尾部11aのプロペラ軸の軸心線Yよりも下方に位置するように配置している。また、スラット板13Aの前縁13fを船底基線Xより上方に位置させて配置することで、ドック入り時だけでなく航行時にも障害物となることはない。
スラット板13Aは、曲がり板の単板構造で構成し、単板構造の凸面を船尾側として設け、前縁13fよりも後縁13rを船底外板部12Bに近接させている。船底外板部12Bに沿う船底流れが、前縁13fの船底流れZaより下流側の船底流れZbで加速するように、スラット板13Aは船底外板部12Bに対して仰角θを持たせて設けている。 なお、最大傾斜箇所Mがプロペラ軸の軸心線Yよりも上方に位置する場合には、スラット板13Aの前縁13fを船尾部11aのプロペラ軸の軸心線Yよりも上方に位置するように配置することもできる。
【0025】
本実施形態によれば、双船尾船の船尾肥大度を従来より大きくしても、二次元剥離による船体抵抗の増加を抑え、プロペラ振動を防止して、伴流増加による推進効率の向上を図ることができる。
また本実施形態によれば、単板構造の凸面を船尾側として設けることで、船底流れを船底外板部12Bの方向に導くことができ、船底外板部12Bにおける二次元剥離を防止することができる。
また本実施形態によれば、船底外板部12Bに沿う船底流れを加速することで船底外板部12Bにおける二次元剥離を防止することができる。
また、前縁13fをプロペラ軸心線Yよりも下方に配置することにより、プロペラ軸上部の伴流分布の改善に役立てることができる。
【0026】
次に本発明の第6の実施形態による船尾船底スラットについて説明する。
図10は同船尾船底スラット付き船舶の船尾側の要部側面図である。なお、上記実施形態と同一機能部材には同一番号を付して説明を省略する。
図10に示すように、スラット板13Bは、船底外板部12Bに間隙を持たせて沿わせ、スラット板13Bの前縁13fが、船底外板部12Bにおける最大傾斜箇所Mよりも船首側となる位置に配置する。なお、スラット板13Bは、スラット板13Bの前縁13fを、船底基線Xより上方に位置させて配置することで、ドック入り時だけでなく航行時にも障害物となることはない。
スラット板13Bは、平板の単板構造で構成し、船底外板部12Bとの距離が後縁13rで前縁13fより近づくように設けている。船底外板部12Bに沿う船底流れが、前縁13fの船底流れZaより下流側の船底流れZbで加速するように、スラット板13Bは船底外板部12Bに対して仰角θを持たせて設けている。
【0027】
本実施形態によれば、双船尾船の船尾肥大度を従来より大きくしても、二次元剥離による船体抵抗の増加を抑え、プロペラ振動を防止して、伴流増加による推進効率の向上を図ることができる。
また本実施形態によれば、船底外板部12Bとの距離が後縁13rで前縁13fより近づくように設けることで、船底流れを船底外板部12Bの方向に導くことができ、船底外板部12Bにおける二次元剥離を防止することができる。
また本実施形態によれば、船底外板部12Bに沿う船底流れを加速することで船底外板部12Bにおける二次元剥離を防止することができる。
【0028】
次に本発明の第7の実施形態による船尾船底スラットについて説明する。
図11は同船尾船底スラット付き船舶の船尾側の要部側面図である。なお、上記実施形態と同一機能部材には同一番号を付して説明を省略する。
図11に示すように、スラット板13Cは、船底外板部12Bに間隙を持たせて沿わせ、スラット板13Cの前縁13fが、船底外板部12Bにおける最大傾斜箇所Mよりも船首側となる位置に配置する。なお、スラット板13Cは、スラット板13Cの前縁13fを、船底基線Xより上方に位置させて配置することで、ドック入り時だけでなく航行時にも障害物となることはない。
スラット板13Cは、翼型断面の厚さの中心線が曲線である翼型の複板構造で構成し、複板構造の翼型中心線の凸側の面を船尾側として設けている。本実施形態においても、船底外板部12Bに沿う船底流れが、前縁13fの船底流れZaより下流側の船底流れZbで加速するように、スラット板13Cは船底外板部12Bに対して仰角を持たせて設けてもよい。
【0029】
本実施形態によれば、双船尾船の船尾肥大度を従来より大きくしても、二次元剥離による船体抵抗の増加を抑え、プロペラ振動を防止して、伴流増加による推進効率の向上を図ることができる。
また本実施形態によれば、複板構造の翼型中心線の凸側の面を船尾側として設けることで、船底流れを船底外板部12Bの方向に導くことができ、船底外板部12Bにおける二次元剥離を防止することができる。
また本実施形態によれば、船底外板部12Bに沿う船底流れを加速することで船底外板部12Bにおける二次元剥離を防止することができる。
【0030】
次に本発明の第8の実施形態による船尾船底スラットについて説明する。
図12は同船尾船底スラット付き船舶の船尾側の要部側面図である。なお、上記実施形態と同一機能部材には同一番号を付して説明を省略する。
図12に示すように、スラット板13Dは、船底外板部12Bに間隙を持たせて沿わせ、スラット板13Dの前縁13fが、船底外板部12Bにおける最大傾斜箇所Mよりも船首側となる位置に配置する。なお、スラット板13Dは、スラット板13Dの前縁13fを、船底基線Xより上方に位置させて配置することで、ドック入り時だけでなく航行時にも障害物となることはない。
スラット板13Dは、翼型断面の厚さの中心線が直線である対称翼型の複板構造で構成し、船底外板部12Bとの距離が後縁13rで前縁13fより近づくように設けている。船底外板部12Bに沿う船底流れが、前縁13fの船底流れZaより下流側の船底流れZbで加速するように、スラット板13Dは船底外板部12Bに対して仰角θを持たせて設けている。
【0031】
本実施形態によれば、双船尾船の船尾肥大度を従来より大きくしても、二次元剥離による船体抵抗の増加を抑え、プロペラ振動を防止して、伴流増加による推進効率の向上を図ることができる。
また本実施形態によれば、船底外板部12Bとの距離が後縁13rで前縁13fより近づくように設けることで、船底流れを船底外板部12Bの方向に導くことができ、船底外板部12Bにおける二次元剥離を防止することができる。
また本実施形態によれば、船底外板部12Bに沿う船底流れを加速することで船底外板部12Bにおける二次元剥離を防止することができる。
【0032】
次に本発明の第9の実施形態による船尾船底スラットについて説明する。
図13は同船尾船底スラット付き船舶の船尾側の要部側面図である。なお、上記実施形態と同一機能部材には同一番号を付して説明を省略する。
図13に示すように、2枚のスラット板13Aを、船底外板部12Aに間隙を持たせて沿わせている。
上流側に配置するスラット板13Aは、前縁13fを船底基線Xにあわせて配置する。なお、上流側に配置するスラット板13Aは、船底基線Xにあわせて配置するか、又は船底基線Xより上方に位置させて配置することで、ドック入り時だけでなく航行時にも障害物となることはない。
下流側に配置するスラット板13Aは、上流側に配置するスラット板13Aの後縁13rよりも、下流側に配置するスラット板13Aの前縁13fを、船底外板部12Aよりも間隙を大きくし、上流側に配置するスラット板13Aによって船底外板部12Aに導かれる船底流れZaだけでなく、上流側に配置するスラット板13Aの外方流れも船底外板部12Aに導くことで、下流側に配置するスラット板13Aの下流側の船底流れZbを加速させている。
二つのスラット板13Aは、曲がり板の単板構造で構成し、単板構造の凸面を船尾側として設け、前縁13fよりも後縁13rを船底外板部12Aに近接させている。船底外板部12Aに沿う船底流れが、前縁13fの船底流れZaより下流側の船底流れZbで加速するように、スラット板13Aは船底外板部12Aに対して仰角を持たせて設けている。
【0033】
本実施形態によれば、双船尾船の船尾肥大度を従来より大きくしても、二次元剥離による船体抵抗の増加を抑え、プロペラ振動を防止して、伴流増加による推進効率の向上を図ることができる。
また本実施形態によれば、単板構造の凸面を船尾側として設けることで、船底流れを船底外板部12Aの方向に導くことができ、船底外板部12Aにおける二次元剥離を防止することができる。
また本実施形態によれば、船底外板部12Aに沿う船底流れを加速することで船底外板部12Aにおける二次元剥離を防止することができる。
なお、本実施形態では、二つのスラット板13Aを、船底外板部12Aに沿う船底流れの方向に設ける場合を示したが、3つ以上の複数のスラット板13Aを、船底外板部12Aに沿う船底流れの方向に設けてもよい。
また、本実施形態では、曲がり板の単板構造で構成したスラット板13Aを用いたが、平板の単板構造で構成したスラット板13B、翼型断面の厚さの中心線が曲線である翼型の複板構造で構成したスラット板13C、翼型断面の厚さの中心線が直線である対称翼型の複板構造で構成したスラット板13Dを、スラット板13Aに代えて用いてもよい。また、これらスラット板13A、スラット板13B、スラット板13C、スラット板13Dを組み合わせて用いてもよい。
【0034】
第5の実施形態から第8の実施形態では、船底外板部12Bにおける最大傾斜箇所Mにおいて剥離が生じやすいことを前提として、スラット板13A、スラット板13B、スラット板13C、スラット板13Dにおける前縁13fを、船底外板部12Bにおける最大傾斜箇所Mよりも船首側となる位置に配置したが、あらかじめ実験やシミュレーションによって二次元剥離を生じる位置を求め、スラット板13A、スラット板13B、スラット板13C、スラット板13Dにおける前縁13fが、船底外板部12A、12Bに沿う船底流れが2次元剥離を起こす箇所よりも船首側となる位置に、スラット板13A、スラット板13B、スラット板13C、スラット板13Dを設けることも有効である。
また、固定取付構造である取付手段14a、14bの断面形状は、スラット板13Aを用いる場合には曲がり板の断面形状、スラット板13Bを用いる場合には平板の断面形状、スラット板13Cを用いる場合には翼型断面の厚さの中心線が曲線である翼型形状、スラット板13Dを用いる場合には翼型断面の厚さの中心線が直線である対称翼型形状とすることが好ましい。