(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5765690
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】引戸用緩衝閉鎖装置
(51)【国際特許分類】
E05F 1/16 20060101AFI20150730BHJP
E05F 5/02 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
E05F1/16 B
E05F5/02 E
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-97928(P2013-97928)
(22)【出願日】2013年4月15日
(65)【公開番号】特開2014-206037(P2014-206037A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2013年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】592048176
【氏名又は名称】ケージーパルテック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正
【審査官】
佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−043472(JP,A)
【文献】
特許第4319687(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドレールに嵌装されるケーシング内において適宜の領域を摺動する摺動部材に回動自在にフック部材が装着され、摺動部材がコイルスプリングを介して戸閉側に付勢され、ガイドレールに沿って走行する戸車がフック部材に係止された状態から摺動部材の摺動領域を戸閉方向に移動し、且、コイルスプリングの弾性力による移動速度を低減させる往復型ダンパが設けられた引戸用緩衝閉鎖装置において、前記ケーシングは板厚0.5〜1mmのステンレス等の高強度の金属製とすると共に、前記コイルスプリングは少なくとも2本として往復型ダンパを構成する円筒状のシリンダーと角筒状のケーシングとの間の空隙部に配置し、引戸端部の掘り込み溝に取り付けられる戸車の車輪支持部材に、前記フック部材が係合する係止段部を形成した連結部材を介して前記緩衝閉鎖装置を一体化させるようにし、戸車の車輪支持部材と連結部材との間に複数のレール巾に対応する複数のアダプターから選択したアダプターを介在させることによりガイドレールの大きさに拘わらず1種類の緩衝閉鎖装置が使用できるようにしたことを特徴とする緩衝閉鎖装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉鎖直前の引戸の速度を減速することにより静かに閉鎖できるようにした引戸用緩衝閉鎖装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】 特開2006−63767号公報
【特許文献2】 特許第4319687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来から、閉鎖直前の引戸の速度を減速することにより静かに閉鎖できるようにした引戸用ソフトクローザー等の緩衝閉鎖装置は、特開2006−63767号公報、特許第4319687号公報等に記載される通り既に公知である。
【0004】
前者の特開2006−63767号公報の発明の構成は、ガイドレールの端部箇所に装着されたケーシング内において適宜の領域を摺動する摺動部材に回動自在にフック部材が装着され、摺動部材がコイルスプリングを介して戸閉側に付勢され、ガイドレールに沿って走行するガイド走行体がフック部材に係止された状態から摺動部材の摺動領域を戸閉方向に移動するとともに、コイルスプリングの弾性力による移動速度を低減させる往復型ダンパが具備されてなることを特徴とするものであった。
【0005】
後者の特許第4319687号公報に記載される発明は、前者の発明の基本構成において、1種類の機構で左、右閉じに両用できるようにしたものであるが、このように両用できるようにするには左右のフック部材が係止される係止溝はケーシングと一体的に設けなければならないものであった。
【0006】
また、後者特許の発明にあっては、緩衝閉鎖装置と戸車とは別個に取り付けるようになっていたため、この装置を作動させるためのレールに取り付けられるトリガーの位置が決められないという問題点があった。
【0007】
更に、両者の発明にあっては、コイルスプリングは
図17のように往復型ダンパに対して並列して設けられていため、装置全体の高さが大きくなり、延いてはガイドレール自体の大きさを大きなものとしなければならないという問題点があった。
【0008】
更にまた、両者の発明にあっては、荷重によって引戸を吊り下げるガイドレールの大きさを変える場合、緩衝閉鎖装置のケーシングの大きさも変えなければ引戸が前後に揺れると誤動作する虞があり、少なくとも大、小2種類のレールに対応できるケーシングに組み込んだ緩衝閉鎖装置を用意する必要があった。
【0009】
本発明の第1の目的は、緩衝閉鎖装置内のコイルスプリングを少なくとも2本にして復原力が劣らないようにして往復型ダンパの円筒状のシリンダーと角筒状のケーシングの隙間に配置することによりケーシングの大きさを極力小さくして引戸を吊るガイドレールの大きさを小さくできるようにした引戸用緩衝閉鎖装置を提供することにある。
【0010】
本発明の第2の目的は、引戸の端部の溝に掘り込む形式の戸車と緩衝閉鎖装置を一体化することによって緩衝閉鎖装置の取付位置の設定を必要とせず、レールに取り付けられるトリガーの取付位置の決定が簡単に行え、レールの大きさに拘わらず一種類で対応できる引戸用緩衝閉鎖装置を提供することにある。
【0011】
本発明に係る請求項1の引戸用緩衝閉鎖装置は、ガイドレールに嵌装されるケーシング内において適宜の領域を摺動する摺動部材に回動自在にフック部材が装着され、摺動部材がコイルスプリングを介して戸閉側に付勢され、ガイドレールに沿って走行する戸車がフック部材に係止された状態から摺動部材の摺動領域を戸閉、戸開方向に移動し、且、コイルスプリングの弾性力による移動速度を低減させる往復型ダンパが設けられた緩衝閉鎖装置において、前記ケーシングは板厚0.5〜1mmのステンレス等の高強度の金属製とすると共に、前記コイルスプリングは少なくとも2本として往復型ダンパを構成する円筒状のシリンダーと角筒状のケーシングとの間の空隙部に配置したことを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る請求項2の引戸用緩衝閉鎖装置は、請求項1記載の引戸において、引戸端部の掘り込み溝に取り付けられる戸車の車輪支持部材に、前記フック部材が係合する係止段部を形成した連結部材を介して前記緩衝閉鎖装置を一体化させるようにしたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る請求項3の引戸用緩衝閉鎖装置は、請求項2記載の引戸において、戸車の車輪支持部材と連結部材との間にアダプターを介在させることによりガイドレールの大きさに拘わらず1種類の緩衝閉鎖装置が使用できるようにしたことを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係る請求項1の引戸用緩衝閉鎖装置は、コイルスプリングを少なくとも2本として往復型ダンパを構成する円筒状のシリンダーと角筒状のケーシングとの間の空隙部に配置してあるので、緩衝閉鎖装置のケーシングの容積を小さくできるため、緩衝閉鎖装置を復原力が劣らないように小型化することができる。
【0015】
本発明に係る請求項2の引戸用緩衝閉鎖装置は、取付位置が決まっている戸車と緩衝閉鎖装置とが一体となっているので、レールに取り付けられるトリガーの取付位置の決定が簡単に行える。
【0016】
本発明に係る請求項3の引戸用緩衝閉鎖装置は、戸車の車輪支持部材と連結部材との間にアダプターを介在させたものであるから、緩衝閉鎖装置とは別体のアダプターをレールの大きさに対応させて製作しておくだけで一種類の緩衝閉鎖装置が共通して使用できる。
【実施例】
【0017】
図1は、引戸の左閉じ状態の正面図、
図2〜
図5は、引戸の右方向への移動状態の正面図、
図6は、引戸の右閉じ状態の正面図、
図7は、
図1の状態の要部拡大図、
図8は、
図3〜
図5の状態の要部拡大図、
図9は、
図6の状態の要部拡大図、
図10は、緩衝閉鎖装置の平面図、
図11は、
図10の要部縦断拡大図、
図12は、戸車、連結部材、フック部材の関係を表す分解斜視図、
図13は、同連結状態の斜視図、
図14は、連結部材とフック部材の関係を表す断面図、
図15は、同係合状態の断面図、
図16は、ガイドレールの大きさによる緩衝閉鎖装置の互換性を表す正面図である。
【0018】
図示において、1は、上吊式の引戸で、左右端に形成された掘り込み孔に嵌着固定される戸車2、2によってガイドレール3に吊り下げられて左右に転動されるようになっている。
【0019】
4は、一方の戸車2の車輪支持部材2−1に後述する緩衝閉鎖装置のケーシングを連結して一体化するための連結部材である。
【0020】
5は、板厚0.5〜1mmのステンレス等の高強度の金属製のケーシング5−1と、円筒状のシリンダー5aとピストンロッドとからなる緩衝ダンパ5−2と、前記シリンダーの基部端及びピストンロッド先端にそれぞれ回転自在に軸支したフック部材5−3と、対向する両フック部材間に設けられた2本の引張りスプリング5−4、5−4とから構成される緩衝閉鎖装置である。
【0021】
前記2本の引張りスプリング5−4、5−4は、対向する両フック部材5−3、5−3間に前後対称的に張設されており、円筒状のシリンダー5aと角筒状のケーシング5−1との空隙部に配置されている。
【0022】
連結部材4は、その一部4−1を戸車2の車輪支持部材2−1に形成された差し込み溝2−1aに差し込むことにより緩衝閉鎖装置5のケーシング5−1をネジ等で一体化するものであって、緩衝閉鎖装置5のフック部材5−3が係合する係止片4−2が形成され、且、ガイドレール3の戸車転動面と反対の面に当たって緩衝閉鎖装置の浮き上がりを防止するための当接片4−3が形成されている。
【0023】
6は、前記ガイドレール3に取り付けられるトリガーで、引戸の閉鎖移動中にフックが係止片から外れて引戸1が閉鎖方向に引き込まれ、逆に、引戸1の開放移動中にフック部材5−3の凹部5−3aが嵌ってスプリング5−4、5−4が引張されて同スプリングに復原力が蓄積されるようになっており、引戸1の開閉移動中にフック部材5−3の鉤部5−3bが連結部材4の係止片4−2に係合されてスプリング5−4、5−4に復原力が蓄積された状態が保持されるようになっている。
【0024】
尚、7は、緩衝閉鎖装置5の前記戸車2と反対側のケーシング5−1に前述と同じ連結部材4を介して取り付けられたガイドローラで、戸車2とガイドローラ7の間でガイドレール3内を水平状態に保持して緩衝閉鎖装置5を移動させるようになっている。
【0025】
本発明引戸の取付方法並びに作動状態を説明すれば、先ず、緩衝閉鎖装置5のケーシング5−1の両端に連結部材4、4をネジ等で一体化しておき、この連結部材4の一部4−1を、引戸1の左右に取り付けられる一方の戸車2の車輪支持部材2−1及びガイドローラ7の車輪支持部材に形成された差し込み溝2−1aに差し込むことにより戸車2と衝閉鎖装置5及びガイドローラ7を連結部材4、4を介して一体化する。
【0026】
次に、これらセットした部品を予め緩衝閉鎖装置5のフック部材5−3を操作する2個所のトリガー6、6を取り付けておいたガイドレール3の端部から挿通して、このガイドレール3内を転動できるようになった両端の戸車2、2の本体を引戸1の左右端に形成された掘り込み孔に嵌着固定する。
【0027】
図1つまり
図7においては、緩衝閉鎖装置5のガイドローラ7側のフック部材5−3が連結部材4の係止片4−2に係合して固定状態にあり、戸車2側のフック部材5−3の凹部5−3aにはガイドレール3の一方のトリガー6が嵌った状態となっている。
【0028】
この状態から引戸1を右方向つまり矢印方向に移動させると、戸車2側つまり左側のフック部材5−3は停止しているので、引戸1の移動中にスプリング5−4が引張されて同スプリングに復原力が蓄積されつつ
図2の状態を経て
図3つまり
図8の状態となる。
【0029】
而して、この
図8の状態になるのは、
図14から
図15のように連結部材4の斜面4−3にフック部材5−3の斜面5−3bが押されてフック部材5−3が反時計方向に回転し、係止片4−2に係合して緩衝閉鎖装置5の両端のフック部材5−3、5−3が両端の連結部材4、4のそれぞれの係止片4−2、4−2に係合してスプリング5−4の引張状態つまり畜圧状態が保持された儘移動を続けて
図5の状態となる。
【0030】
この状態となったとき、他方のトリガー6に右側のフック部材5−3の斜面5−4bが押されてフック部材5−3が回転し、係合状態にあった係止片4−2との結合が解かれるため、スプリング5−4が収縮し始め、引戸1から手を離してもスプリング5−4のこの復原力によって左移動するが、緩衝ダンパ5−2の作用によって緩やかに引戸1が
図6のように閉まる。
【0031】
図6の状態から引戸1を左方向に開ける場合は、前述とは逆の順序によって
図1の状態に戻る。
【0032】
図16は、一種類の緩衝閉鎖装置で大小のガイドレールに対応できることを示す説明図であって、戸車と連結部材の間にアダプター8を介在させることにより、ガイドローラの大きさを変えるだけで緩衝閉鎖装置の大きさを変える必要がないことを示している。
【0033】
本発明の請求項1の引戸用緩衝閉鎖装置は、上記作用によって閉鎖直前の引戸の速度を減速することにより静かに閉鎖できるようにした機能については従来公知の技術ではあるが、コイルスプリングを少なくとも2本の細いものにして往復型ダンパを構成する円筒状のシリンダーと角筒状のケーシングとの間の空隙部に配置してあるので、緩衝閉鎖装置のケーシングの容積を小さくできるため、緩衝閉鎖装置を小型化することができ、このことによって緩衝閉鎖装置が摺動するガイドレールの大きさを小さくできるもので、緩衝閉鎖装置の小型化に伴う波及的経済効果が生じるものである。
【0034】
本発明の請求項2の引戸用緩衝閉鎖装置は、上記請求項1の発明の効果と合わせて、引戸端部の掘り込み孔に取り付けられる戸車の車輪支持部材に、フック部材が係合する係止段部を形成した連結部材を介して緩衝閉鎖装置を一体化させるようにしたものであるから、
▲1▼取付位置が決まっている戸車と緩衝閉鎖装置とが一体となっているので、レールに取り付けられる固定突起の取付位置の決定が簡単に行える。
▲2▼緩衝閉鎖装置とは別体の連結部材等をレールの大きさに対応させて製作しておくだけで一種類の緩衝閉鎖装置が共通して使用できる。
効果を奏し得るもので、ガイドレールの大きさは引戸の重さによって決定されるので、緩衝閉鎖装置及び連結部材を共通として巾の違う請求項3のような別体のアダプターを選択するだけで低荷重用レール、高荷重用レールの2種類にセットして販売できて誤販売が少なく、販売価格も抑えることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図5】 引戸の右方向への移動状態の正面図である。
【
図12】 戸車、連結部材、フック部材の関係を表す分解斜視図である。
【
図14】 連結部材とフック部材の関係を表す断面図である。
【
図16】 ガイドレールの大きさによる緩衝閉鎖装置の互換性を表す説明図である。
【
図17】 従来の緩衝閉鎖装置の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 引戸
2 戸車
3 ガイドレール
4 連結部材
5 緩衝閉鎖装置
6 トリガー
7 ガイドローラ