【実施例】
【0040】
(実施例1)
[伝導度測定用サンプル作製]
まず、8つの電極を一面上に設けた平面視矩形状の石英基板を用意した。
これらの電極のうち4つは一辺側の平面視矩形状の電源接続部に接続されており、他の4つは他辺側の平面視矩形状の電源接続部に接続されている。
電極はいずれも2つの平面視矩形状の基板中心マーク部の間で平面視線状とされ、一辺側の電源接続部から延伸された4本と、他辺側の電源接続部から延伸された4本が互いにかみ合うように配置され、かつ、かみ合う部分で互いに平行とされている。平行とされた部分の長さ(電極幅)は2.5mmである。また、電極間隔は10μm〜250μmの間でそれぞれ異なるものとされている。これにより、基板中心マーク部の間の電極を覆うようにフィルムを形成したとき、一辺側のいずれかの電源接続部と、他辺側のいずれかの電源接続部をそれぞれ電源に接続して、フィルムに電圧を印加することにより、異なる電極間隔でフィルムの電流電圧特性を測定できる。
【0041】
次に、Feポリマー(有機/金属ハイブリッドポリマー)をエタノールに100mg/Lの濃度で分散して、混合溶液を調製した。
【0042】
次に、基板を、超音波で2分間アセトン洗浄してから、イソプロパノール洗浄して、基板の電極表面の残留水やごみを取り除いた後、窒素ガスでブローした。
その後すぐに、混合溶液を10ml、電極を覆うように基板の一面に、スピンコーティング法によりポリマーフィルムを成膜した。スピンコーティングは、最初に120秒間400rpmで回転させ、次に160秒間500rpmで回転させる条件とした。
【0043】
次に、成膜したポリマーフィルムのうち、基板中心マーク部の間のエリア以外の部分をすべて、エタノールで湿らせた綿で注意深く取り除いた。
以上により、実施例1の伝導度測定用サンプルを作製した。
図3は、本実施例で用いた電極付き基板と、それに成膜したポリマーフィルムを示す写真であって、全体写真(a)と、部分拡大写真(b)である。ポリマーフィルムは透明であるので、成膜部分を矢印で示している。
【0044】
(実施例2)
Ruポリマー(有機/金属ハイブリッドポリマー)を用い、エタノールに250mg/Lの濃度で分散して、混合溶液を調製した他は実施例1と同様にして、実施例2の伝導度測定用サンプルを作製した。
【0045】
(実施例3)
Znポリマー(有機/金属ハイブリッドポリマー)を用い、エタノールに250 mg/Lの濃度で分散して、混合溶液を調製した他は実施例1と同様にして、実施例3の伝導度測定用サンプルを作製した。
【0046】
(実施例4)
Coポリマー(有機/金属ハイブリッドポリマー)を用い、エタノールに100mg/Lの濃度で分散して、混合溶液を調製した他は実施例1と同様にして、実施例4の伝導度測定用サンプルを作製した。
【0047】
(実施例5)
Niポリマー(有機/金属ハイブリッドポリマー)を用い、エタノールに100mg/Lの濃度で分散して、混合溶液を調製した他は実施例1と同様にして、実施例5の伝導度測定用サンプルを作製した。
各伝導度測定用サンプルは、それぞれの測定を行うまで、また、条件を変更して各測定を行う間は、閉鎖系コンテナ(チャンバー)内で貯蔵した。
【0048】
[厚さ測定]
各ポリマーフィルムの厚さは、エリプソメーター(ellipsometer)により測定した。
まず、500mg/Lの濃度でキャストして、各ポリマーフィルムの膜厚が厚いリファレンス・サンプルを作成し、各ポリマーフィルムの光学定数(optical constants)を決定した。
次に、これらの光学定数の値を用い、一般的なオシレーターモデルでデータフィットして、各ポリマーフィルムの厚さを算出した。
Fe、Ru、Zn、Co、Niの各ポリマーフィルムの厚さは、それぞれ4.5nm、6.8nm、20.0nm、6.4nm、6.1nmと算出された。
【0049】
[伝導度測定]
ポリマーフィルムの伝導度は、ソラートロン1287(Solartron 1287:ポテンシオスタット(potentiostat)と周波数反応分析システム(1260 frequency response analyzer system)からなる)を用いて測定した。
「周波数範囲50Hz〜5MHz、振幅10mVのac又は1.0Vのdcバイアス」の条件で、インピーダンスプロット(ナイキストプロット)からポリマーフィルム抵抗値を算出した。求めた抵抗値から、以下の式を用いてポリマーのプロトン導電性を算出した。
ポリマーのプロトン導電性(σ)/Scm
−1 =(1/R)×(l/A)
ここで、
R=ナイキストプロットから求めた抵抗値、
l=電極間距離、
A=ポリマー膜の断面積(ポリマーの膜厚から算出)である。
【0050】
[実施例1のFeポリマーフィルムの伝導度]
図4Aから
図4Dは、Feポリマーフィルムのインピーダンスプロット(ナイキストプロット)である。95%RH条件下のプロットである。
図4AはZ
real×10
5が0〜4の範囲のプロットである。Raw(生データ)は、塗りつぶした四角で示しており、Fitting(フィッティングデータ)は、塗りつぶさない四角で示している。以下同様に、塗りつぶしたマークは生データを示し、塗りつぶさないマークはフィッティングデータを示す。
図4Bは、Z
real×10
5が0〜0.6の範囲のプロットである。
また、
図4Cは0.1Vから2.0Vまで異なるdcバイアスを印加した時のZ
real×10
5が0〜45の範囲のプロットである。dcバイアス0.1Vが四角、0.5Vが丸、1.0Vが三角、1.5Vがひし形、2.0Vが星型を示す(以下、同様)。
図4Dは、Z
real×10
5が0〜1.0の範囲のプロットである。
図5は、58%RH、室温条件下のFeポリマーフィルムのナイキストプロットである。
【0051】
[実施例2のRuポリマーフィルムの伝導度]
図6Aから
図6Cは、Ruポリマーフィルムのナイキストプロットである。
図6Aは95%RH条件下のナイキストプロットである。
図6Bは、異なるdcバイアスでのナイキストプロットであり、
図6Cは、Z
real×10
6が0〜0.15の範囲のプロットである。
【0052】
[実施例3のZnポリマーフィルムの伝導度]
図7Aから
図7Cは、Znポリマーフィルムのナイキストプロットである。
図7Aは95%RH条件下のZnポリマーフィルムのナイキストプロットである。
図7Bは異なるdcバイアスでのZnポリマーフィルムのナイキストプロットであり、
図7Cは、Z
real×10
6が0〜0.11の範囲のプロットである。
【0053】
[実施例4のCoポリマーフィルムの伝導度]
図8は、Coポリマーフィルムのナイキストプロットである。95%RH条件下のCoポリマーフィルムのナイキストプロットである。
【0054】
[実施例5のNiポリマーフィルムの伝導度]
図9は、Niポリマーフィルムのナイキストプロットである。95%RH条件下のNiポリマーフィルムのナイキストプロットである。
【0055】
[I-V特性測定]
ポリマーフィルムのI-V特性測定には、標準的な半導体特性評価システムであるKeithley 4200−SCSを用いた。
得られたI−Vデータからポリマーフィルムの平均漏れ電流(leakage current)を抽出した。
図10は、測定された漏れ電流の一例を示すグラフである。
【0056】
[実施例1のFeポリマーフィルムのI-V特性]
図11は、95%RHでのFeポリマーフィルムのI-V特性である。
図12は、減圧下と大気中(28%RH)のFeポリマーフィルムのI-V特性である。
【0057】
図13は、95%RHの実験後、大気中(28%RH)のFeポリマーフィルムのI-V特性である。スイープは−3.0Vから3.0Vまで行き、再び−3.0Vに戻る。
図14は、95%RHの実験後、大気中(28%RH)のFeポリマーフィルムのI-V特性である。スイープは−5.0Vから5.0Vまで行き、再び−5.0Vに戻る。
両方向で電流がプラスとなった。
【0058】
図15は、Feポリマーフィルムのスイープ速度1s遅延(a)、5s遅延(b)、20s遅延(c)でのI-V特性である。
すべての実験は95%RH中の実験後、大気中(28%RH)で実施した。
電流はスイープ速度の増加とともに増加した。
【0059】
[実施例2のRuポリマーフィルムのI-V特性]
図16は、95%RHの実験後、大気中(28%RH)のRuポリマーフィルムのI-V特性である。
電流変化がみられなかった。
【0060】
図17Aおよび
図17Bは、RuポリマーフィルムのI-V特性を示すグラフである。
図17Aは、減圧下と大気中(28%RH)のRuポリマーフィルムのI-V特性である。スイープ方向は−2.0Vから2.0Vである。
図17Bは95%RH中のRuポリマーフィルムのI-V特性である。
【0061】
[実施例3のZnポリマーフィルムのI-V特性]
図18は、95%RHでのZnポリマーフィルムのI-V特性である。