特許第5765741号(P5765741)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ビー・ケミカル株式会社の特許一覧 ▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5765741-高意匠複層塗膜形成方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5765741
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】高意匠複層塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 5/06 20060101AFI20150730BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20150730BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20150730BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20150730BHJP
   C09D 5/29 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   B05D5/06 101A
   B05D1/36 B
   C09D7/12
   C09D201/00
   C09D5/29
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-187709(P2012-187709)
(22)【出願日】2012年8月28日
(65)【公開番号】特開2014-42891(P2014-42891A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2014年10月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100126789
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 裕子
(72)【発明者】
【氏名】藤井 弘明
(72)【発明者】
【氏名】青木 良子
(72)【発明者】
【氏名】久保田 寛
(72)【発明者】
【氏名】篠田 雅史
(72)【発明者】
【氏名】常岡 辰夫
(72)【発明者】
【氏名】平野 文美
(72)【発明者】
【氏名】中野 さくら
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−167720(JP,A)
【文献】 特開2002−086057(JP,A)
【文献】 特開2008−302286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00−7/26
C09D 5/29、7/12、201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗装物表面に対して、着色顔料および光輝材を含有するメタリックベース塗料を塗布してメタリックベース塗膜を得る工程(1)、前記工程(1)で得られたメタリックベース塗膜上に着色顔料を含有し、光輝材を含有しない着色ベース塗料を塗布して着色ベース塗膜を形成する工程(2)、前記工程(2)で得られた着色ベース塗膜上にクリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜を形成する工程(3)、および、前記工程(1)、(2)および(3)で得られたメタリックベース塗膜、着色ベース塗膜およびクリヤー塗膜を、加熱硬化して複層塗膜を形成する工程(4)を含む複層塗膜形成方法であって、
前記工程(1)で得られるメタリックベース塗膜を単独膜として加熱硬化して得られる単独メタリックベース塗膜の光線反射率が、波長650〜700nmにおいて45〜50%、かつ、波長410〜440nmおよび510〜590nmにおいて20%以下であり、および
前記工程(2)で得られる着色ベース塗膜を単独膜として加熱硬化して得られる単独着色ベース塗膜の光線透過率が、波長400〜700nmにおいて50〜70%、波長650〜700nmにおいて88〜92%、かつ、波長410〜440nmおよび510〜590nmにおいて20〜60%である、高意匠複層塗膜形成方法。
【請求項2】
前記メタリックベース塗料に含まれる着色顔料と、前記着色ベース塗料に含まれる着色顔料が同一の着色顔料である請求項1に記載の高意匠複層塗膜形成方法。
【請求項3】
前記着色顔料がペリレン系顔料である請求項2に記載の高意匠複層塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層塗膜形成方法、特に高意匠の複層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車車体用塗膜として、光輝材を含んだメタリックベース塗膜上に着色顔料を含んだカラークリヤー塗膜を積層した高彩度、高明度および色の深み感に優れた意匠性の高い複層塗膜が知られており、いわゆる「キャンディーカラー」塗膜と呼ばれている。
【0003】
キャンディーカラー塗膜は自動車車体の外観として注目を浴びつつあるが、複雑な自動車車体全体において均質な意匠を出すためには、塗装時の膜厚変動を抑制する等の厳しい塗装条件の管理が求められる。塗装条件の管理ができないと、色ムラ等が発生しやすく意匠が均質にならない。また、塗装時の膜厚変動を厳格に抑制しなければならない為、生産性も悪い。
【0004】
特開2001−314807号公報(特許文献1)には、光輝材を含んだ第1塗料を塗布して第1塗膜を形成し、第1塗膜を焼付硬化せずに着色成分を含有する第2塗料を塗布して第2塗膜を形成し、その上にクリヤー塗膜を形成した上で全体を焼付硬化する複層塗膜の形成方法であって、第2塗料の着色成分の含有量を樹脂固形分に対して0.01〜1重量%にすることを特徴とする複層塗膜の形成方法が開示されている。この技術は、カラークリヤーを用いた場合の欠点を、第2塗膜の着色ベース塗料の顔料の含有量を制御することにより解消し、塗膜の色ムラや色落ちを防止するものである。しかしながら、この技術を用いても、キャンディーカラー塗膜を得ようとする場合、色ムラが生じやすく、均一な塗色、均質な意匠の発現が難しく、また、塗装時の膜厚変動を厳格に抑制しなくてはならず、生産性も向上しない。
【0005】
特開2007−167720号公報(特許文献2)には、光輝性顔料を含むメタリックベース塗料を塗布してメタリックベース塗膜を形成し、その上に着色顔料を含む着色ベース塗料を塗布して着色ベース塗膜を形成し、さらにクリヤー塗膜を最上層に形成したのち全体を硬化する複層塗膜の形成方法であって、メタリックベース塗膜の明度L値を60以下とし、着色ベース塗膜の400nm以上700nm以下の光線透過率を30〜50%にすることを特徴とする複層塗膜の形成方法が開示されている。この技術は、キャンディーカラー塗膜の膜厚のバラツキによる色ムラの発生を小さくすることも記載されている。しかしながら、この方法でも生産性の向上は充分でなく、より深み感のあるキャンディーカラー塗膜が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−314807号公報
【特許文献2】特開2007−167720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、複層塗膜の形成方法であって、塗装時の膜厚変動を厳格に抑制しなくても塗膜に色ムラが発生しにくく得られる意匠が均質であり、彩度と明度が高く、かつ、色に深み感がある高意匠複層塗膜の形成方法を得ることを目的とする。この塗膜形成方法はいわゆるキャンディーカラー塗膜を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、被塗装物表面に対して、着色顔料および光輝材を含有するメタリックベース塗料を塗布してメタリックベース塗膜を得る工程(1)、上記工程(1)で得られたメタリックベース塗膜上に着色顔料を含有し、光輝材を含有しない着色ベース塗料を塗布して着色ベース塗膜を形成する工程(2)、上記工程(2)で得られた着色ベース塗膜上にクリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜を形成する工程(3)、および、上記工程(1)〜(3)で得られたメタリックベース塗膜、着色ベース塗膜およびクリヤー塗膜を、加熱硬化して複層塗膜を形成する工程(4)を含む複層塗膜形成方法であって、上記工程(1)で得られるメタリックベース塗膜を単独膜として加熱硬化して得られる単独メタリックベース塗膜の光線反射率が、波長650〜700nmにおいて45〜50%、かつ、波長410〜440nmおよび510〜590nmにおいて20%以下であり、および、 上記工程(2)で得られる着色ベース塗膜を単独膜として加熱硬化して得られる単独着色ベース塗膜の光線透過率が、波長400〜700nmにおいて50〜70%、波長650〜700nmにおいて88〜92%、かつ、波長410〜440nmおよび510〜590nmにおいて20〜60%である、高意匠複層塗膜形成方法を提供する。
【0009】
本発明では、上記メタリックベース塗料に含まれる着色顔料と、上記着色ベース塗料に含まれる着色顔料が同一の着色顔料であるのが好ましい。
【0010】
また、上記の着色顔料は好ましくはペリレン系顔料である。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、単独メタリックベース塗膜の光線反射率および単独着色ベース塗膜の光線透過率を規定することにより、塗装時に多少膜厚の変化があっても、高い彩度と明度で、色に深み感がある高意匠の複層塗膜が形成できる。光線反射率と光線透過率は、共に可視光領域で波長の高い領域、即ち650〜700nmの領域で反射が大きくかつ透過も大きく、その他の領域では反射も透過も低いものが選択されている。
【0012】
この光線反射率の規定と光線透過率の規定を満たすものを、波長を横軸にし、透過率および反射率の%を縦軸にしたグラフにプロットすると図1のようになる。図1から明らかなように、波長の長い650〜700nmの領域で単独メタリックベース塗膜の光線反射率(図1中■のライン)および単独着色ベース塗膜の光線透過率(図1中◆のライン)を高く、逆に波長の短い410〜590nmの領域では単独メタリックベース塗膜の光線反射率(■)および単独着色ベース塗膜の光線透過率(◆)を低くすると、色ムラが生じることなく、彩度と明度が高く、色に深みがある高意匠複層塗膜が得られる。特に、本発明では高意匠の赤色のキャンディーカラー塗膜を複層塗膜によって発現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の高意匠複層塗膜形成方法は、被塗装物表面に対して、着色顔料および光輝材を含有するメタリックベース塗料を塗布してメタリックベース塗膜を得る工程(1)、上記工程(1)で得られたメタリックベース塗膜上に着色顔料を含有し、光輝材を含有しない着色ベース塗料を塗布して着色ベース塗膜を形成する工程(2)、上記工程(2)で得られた着色ベース塗膜上にクリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜を形成する工程(3)、および、上記工程(1)〜(3)で得られたメタリックベース塗膜、着色ベース塗膜およびクリヤー塗膜を、加熱硬化して複層塗膜を形成する工程(4)を含む複層塗膜形成方法である。
【0014】
<工程(1)>
本発明の高意匠複層塗膜形成方法における工程(1)は、上記被塗装物表面に対して、着色顔料および光輝材を含有している上記メタリックベース塗料を塗布してメタリックベース塗膜を形成するものである。このメタリックベース塗膜によって、被塗装物表面の色を隠蔽し、後述の着色ベース塗膜およびクリヤー塗膜と相まって、高い明度、彩度と透明感の意匠性を発現することができる。
【0015】
被塗装物
上記被塗装物としては、例えば、鉄、鋼、アルミニウム、スズ、亜鉛等の金属やこれらを含む合金、および、これらの金属のメッキまたは蒸着した成型物、ならびに、ガラス、プラスチックや発泡体による成型物等を挙げることができ、具体的には、自動車車体や自動車部品が挙げられる。これら被塗装物は、脱脂処理や表面処理されていることが好ましい。さらに、上記被塗装物表面には、下塗り塗膜が形成されていてもよい。
【0016】
上記下塗り塗膜は、素材表面の隠蔽性や防食性および防錆性を付与するために形成されるものであり、下塗り塗料を塗布した後、加熱硬化することで得ることができる。上記下塗り塗膜の膜厚は、例えば、乾燥膜厚で10〜50μmである。このような下塗り塗膜を形成するために用いられる下塗り塗料としては特に限定されず、具体的には、カチオン電着塗料やアニオン電着塗料等を挙げることができ、具体的には、水酸基含有樹脂およびブロック化ポリイソシアネートを含んだものや、スルホニウム基およびプロパルギル基を含有する樹脂を含んだもの等、当業者によってよく知られているものを例示することができる。これらは電着塗装された後、用いた塗料の種類に応じて加熱硬化される。
【0017】
また、上記下塗り塗膜上に、さらに、中塗り塗膜が形成されていてもよい。上記中塗り塗膜は、被塗装物表面や下塗り塗膜の隠蔽性や付着性、さらに耐チッピング性を付与するために形成されるもので、上記下塗り塗膜上に形成されるものであり、中塗り塗料を塗布することで得ることができる。上記中塗り塗膜の膜厚は、例えば、乾燥膜厚で10〜50μmである。上記中塗り塗膜を形成するために用いられる中塗り塗料は、塗膜形成成分を含んでおり、例えば、水酸基含有ポリエステル樹脂および/または水酸基含有アクリル樹脂と、メラミン樹脂および/またはブロック化ポリイソシアネートとを含んだもの等、当業者によってよく知られているものを例示することができる。これらは用いる塗料の形態に応じて、塗布された後、常温または加熱することによって、乾燥または硬化される。なお、中塗り塗膜を硬化させずに、いわゆるウェットオンウェット塗装によって上記工程(1)を実施することもできる。
【0018】
メタリックベース塗料
本発明の高意匠複層塗膜形成方法に用いられるメタリックベース塗料は、硬化型塗料であることが好ましく、塗膜形成成分と、着色顔料および光輝材とを含んでいる。
【0019】
上記塗膜形成成分は、得られる塗膜のバインダーであり、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を例示することができる。さらに、上記樹脂のうち硬化性官能基を有するものと、これらの官能基と硬化しうるアミノ樹脂や必要によりブロック化されたイソシアネート樹脂等の硬化剤とを含むことができる。
【0020】
上記着色顔料は、上記被塗装物表面の色の隠蔽と得られる複層塗膜に彩度を与えるものであり、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、黄色酸化鉄等の無機着色顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カルバゾールバイオレット、アントラピリジン、アゾオレンジ、フラバンスロンイエロー、イソインドリンイエロー、アゾイエロー、インダスロンブルー、ジブロムアンザスロンレッド、ペリレンレッド、アゾレッド、アントラキノンレッド、キナクリドンレッド、ジケトピロロピロール等の有機着色顔料等を例示することができる。着色顔料は、彩度および明度の観点から、ペリレン系顔料、特にペリレンレッドが好ましい。
【0021】
また、上記光輝材は、得られる複層塗膜に明度を与えるものであり、所定の光線反射率を満たせば特に限定されないが、例えば、アルミニウム粉、アルミナ粉、ブロンズ粉、銅粉、スズ粉、亜鉛粉、リン化鉄、金属コーティングマイカ粉、二酸化チタンコーティングマイカ粉等を例示することができる。光輝材としては、効率的に所定の光線反射率を得られる点から、好ましくはアルミニウム粉が挙げられる。
【0022】
上記メタリックベース塗料の着色顔料の含有量としては特に限定されないが、明度および彩度の観点から、顔料質量濃度(塗料に含まれる顔料の質量/(塗料に含まれる顔料の質量と塗膜形成成分の固形分質量の和))として3〜20質量%が好ましく、より好ましくは7〜17質量%、さらに好ましくは10〜15質量%である。3質量%より少ないと、波長の低い410〜590nmの領域での光線反射率の抑制が不充分となり色ムラを防止できないおそれがあり、20質量%を超えると、彩度および明度が不足し高意匠性が得られず、塗膜品質も低下するおそれがある。
【0023】
上記メタリックベース塗料の光輝材の含有量としては、特に限定されないが、明度および彩度の観点から、顔料質量濃度として2〜20質量%が好ましく、より好ましくは3〜15質量%、さらに好ましくは5〜10質量%である。2質量%より少ないと、彩度および明度が不足し高意匠性が得られないおそれがあり、20質量%を超えると、塗膜品質が低下するおそれがある。
【0024】
上記メタリックベース塗料は、必要に応じて、体質顔料、硬化触媒、表面調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等、当業者によってよく知られているものを含むことができる。
【0025】
なお、上記メタリックベース塗料の形態としては特に限定されず、溶剤型、水分散型または水溶型のいずれであってもよい。
【0026】
ここで、本発明の高意匠複層塗膜形成方法に用いられるメタリックベース塗料は、特に塗色が赤色の色域である場合、メタリックベース塗料を単独塗装して形成された単独メタリックベース塗膜の光線反射率が、波長650〜700nmにおいて45〜50%、かつ、波長410〜440nmおよび510〜590nmにおいて20%以下であることが必要である。この波長域を外れて設定すると、得られる塗色が赤色の色域でなくなってしまう。
【0027】
光線反射率の測定は、以下のようになされる。鋼板にカチオン電着塗料および中塗り塗料を塗装し、それぞれ加熱硬化させた塗板上に、調製したメタリックベース塗料を乾燥塗膜が10μmとなるようにスプレー塗装し、140℃で20分間加熱硬化させて単独メタリックベース塗膜を作成する。「単独メタリックベース塗膜」とは、上述のように、鋼板上にカチオン電着塗膜、中塗り塗膜およびメタリックベース塗膜を有する塗装板を意味し、メタリックベース塗膜の上には別の塗膜が存在しない状態を意味する。
【0028】
光線反射率は、作成した単独メタリックベース塗膜に対してU−3310型分光光度計(日立社製)を用い、波長スキャンモードで300〜780nmの区間をスキャンスピード300nm/min、サンプリング間隔0.5nmの条件で、光源から照射された光線と、その光線が単独メタリックベース塗膜に反射する強度の割合を測定することによって求めることができる。
【0029】
上記のように測定した光線反射率が、波長650〜700nmにおいて、45〜50%、好ましくは47〜49%である。この波長域が彩度と明度とに影響を与え、光線反射率が45%未満であると得られる複層塗膜の明度が低下し、50%を上回ると得られる複層塗膜の彩度が低下する。
【0030】
さらに、光線反射率が波長410〜440nmおよび510〜590nmにおいて、20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下である。この領域の波長は、塗色が赤色の色域である場合、後述する着色ベース塗膜の光線透過率の変化が大きくなる波長域であり、意匠に対して与える影響が大きい。したがって、メタリックベース塗膜における、この波長域での入射した光の反射を抑えて発色を少なくすることによって、塗装時の膜厚変動による意匠の変化を小さくすることができる。この波長域における光線反射率が20%を上回ると塗装時の膜厚変動による意匠の変化が大きくなり、意匠性に影響を及ぼす。
【0031】
メタリックベース塗料の光線反射率の調整は、メタリックベース塗料中に含まれる着色顔料および光輝材の種類とこれらの顔料質量濃度、更には塗装時の膜厚を調整することにより行われる。特に具体的には、着色顔料がペリレンレッドであり、光輝材がアルミニウム粉であり、それぞれの顔料質量濃度が10〜15質量%および5〜10質量%である塗料で、乾燥膜厚で7〜12μmとなるように塗装することで、最終的に色ムラが発生しにくく得られる意匠が均質であり、彩度と明度が高く、かつ、色に深み感がある複層塗膜を得ることができる。
【0032】
なお、塗布されるメタリックベース塗料の固形分濃度および粘度は、有機溶剤および/または水を用いて希釈することによって適宜調整することができる。上記工程(1)における上記メタリックベース塗料の塗布方法としては、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電スプレー塗装等を例示することができるが、塗着効率の観点から、静電スプレー塗装であることが好ましい。
【0033】
さらに、上記工程(1)によって得られたメタリックベース塗膜と後述の工程(2)で得られる着色ベース塗膜との層間でのなじみや反転を抑制するために、上記工程(1)の後、続く工程(2)へ進む前に、インターバルと呼ばれる時間的間隔を開ける操作を行うことが好ましい。このインターバルによって、上記メタリックベース塗膜に含まれる有機溶剤および/または水を充分に揮発させることができ、得られる複層塗膜の外観が向上する。上記インターバルは、例えば、15秒〜15分間である。また、上記インターバル中に、メタリックベース塗膜を形成した被塗装物に対して加熱操作を行ってもよい。この加熱操作は、上記メタリックベース塗膜を硬化させるものであっても構わないが、省エネルギーの観点から、プレヒートと呼ばれる、上記メタリックベース塗膜を積極的に硬化させるものではなく、メタリックベース塗膜に含まれる有機溶剤および/または水の揮発を、短時間で効率的に行うための加熱操作であることが好ましい。上記プレヒートの条件としては、例えば、40〜80℃で2〜10分間である。上記プレヒートは、例えば、温風ヒータや赤外線ヒータを用いて行うことができる。
【0034】
<工程(2)>
本発明の高意匠複層塗膜形成方法における工程(2)は、上記工程(1)で得られたメタリックベース塗膜上に、着色顔料を含有し、光輝材を含有しない着色ベース塗料を塗布して着色ベース塗膜を形成するものである。この着色ベース塗膜によって、メタリックベース塗膜で得られた色を微調整し、さらに彩度と色の深み感を増すことができる。
【0035】
着色ベース塗料
本発明の高意匠複層塗膜形成方法に用いられる着色ベース塗料は、硬化型塗料であることが好ましく、塗膜形成成分および着色顔料を含んでいる。しかしながら、上記着色ベース塗料は、光輝材を含有していない。光輝材を含有していると下層のメタリックベース塗膜によって反射する光線が着色ベース塗膜によって弱められてしまい、かつ、色の深み感も低下してしまう。
【0036】
上記塗膜形成成分および着色顔料としては、具体的には、上記メタリックベース塗料で述べたものを挙げることができる。ここで、深みのある高い彩度および透明感の高意匠複層塗膜を得るために、この着色ベース塗料によって得られる着色ベース塗膜の色相は、上記メタリックベース塗膜の色相と同系色とすることが好ましく、同色とすることがさらに好ましい。ここで、本発明における同系色とは、マンセル表示系の色相環(色相)の色配置において、少なくとも隣り合った色をいう。メタリックベース塗料の着色顔料がペリレン系顔料が好ましいので、着色ベース塗料でもペリレン系顔料、特にペリレンレッドが好ましい。
【0037】
上記着色ベース塗料の着色顔料の含有量は、顔料質量濃度として0.1〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜3質量%であり、さらに好ましくは1〜2質量%である。上記含有量が0.1質量%未満である場合、得られる複層塗膜の彩度が向上しないおそれがあり、また、5質量%を超える場合、得られる複層塗膜の透明感が得られないおそれがある。
【0038】
上記着色ベース塗料は、必要に応じて、体質顔料、硬化触媒、表面調製剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等、当業者によってよく知られているものを含むことができる。
【0039】
なお、上記着色ベース塗料の形態としては特に限定されず、溶剤型、水分散型または水溶型のいずれであってもよい。
【0040】
ここで、本発明の高意匠複層塗膜形成方法に用いられる着色ベース塗料は、特に塗色が赤色の色域である場合、着色ベース塗料を単独塗装して形成された単独着色ベース塗膜の光線透過率が、波長400〜700nmにおいて50〜70%、波長650〜700nmにおいて88〜92%、かつ、波長410〜440nmおよび510〜590nmにおいて20〜60%であることが必要である。この波長域を外れて設定すると、塗色が赤色の色域でなくなってしまう。
【0041】
光線透過率の測定は、以下のようになされる。ポリプロピレン板上に、調製した着色ベース塗料を乾燥塗膜が12μmとなるようにスプレー塗装し、140℃で20分間加熱硬化させた後、塗膜をポリプロピレン板より剥離して単独着色ベース塗膜を作成する。「単独着色ベース塗膜」とは、上述のように、着色ベース塗膜のみを基材から剥離して得られた塗膜フィルムを意味する。
【0042】
光線透過率は、作成した単独着色ベース塗膜に対してU−3310型分光光度計(日立社製)を用い、波長スキャンモードで300〜780nmの区間をスキャンスピード300nm/min、サンプリング間隔0.5nmの条件で、入射光線が単独着色ベース塗膜を透過した際の透過光線の強度割合によって求めることができる。
【0043】
上記のように測定した光線透過率が、波長400〜700nmにおいて、50〜70%、好ましくは50〜60%、より好ましくは50〜55%である。この波長域が彩度と明度とに影響を与え、光線透過率が50%未満であると得られる複層塗膜の明度が低下し、70%を上回ると得られる複層塗膜の彩度が低下する。また、波長650〜700nmにおいて、88〜92%、好ましくは89〜91%である。この波長域が彩度と明度に影響を与え、光線透過率が88%未満であると得られる複層塗膜の明度が低下し、92%を上回ると得られる複層塗膜の彩度が低下する。
【0044】
また光線透過率は波長410〜440nmおよび510〜590nmにおいて、20〜60%、好ましくは20〜50%、より好ましくは20〜40%である。この領域の波長は、塗色が赤色の色域である場合、着色ベース塗膜の光線透過率の変化が大きくなる波長域であり、意匠に対して与える影響が大きい。したがって、着色ベース塗膜におけるこの波長域での光線透過率を特定範囲内に制限することによって、塗装時の膜厚変動による色変化を小さくすることができる。この波長域における光線透過率が20%を下回ると彩度が低下し、60%を上回ると塗装時の膜厚変動による意匠の変化が大きくなり、意匠性に影響を及ぼす。
【0045】
着色ベース塗料の光線透過率の調整は、着色ベース塗料中に含まれる着色顔料の種類と顔料質量濃度、更には塗装時の膜厚を調整することにより行われる。特に具体的には、着色顔料がペリレンレッドであり、その顔料質量濃度が1〜2質量%である塗料で、乾燥膜厚が10〜15μmとなるように塗装することが、最終的に色ムラが発生しにくく得られる意匠が均質であり、彩度と明度が高く、かつ、色に深み感がある複層塗膜を得ることができる。
【0046】
なお、上記着色ベース塗料の固形分濃度および粘度は、有機溶剤および/または水を用いて希釈することによって適宜調整することができる。
【0047】
さらに、上記工程(2)で得られた着色ベース塗膜と後述の工程(3)で得られる上記クリヤー塗膜との層間でのなじみや反転を抑制するために、上記工程(2)の後、続く工程(3)へ進む前に、上記工程(1)の後と同様に、インターバルと呼ばれる時間的間隔を開ける操作、および、上記インターバル中に、着色ベース塗膜を形成した被塗装物に対して加熱操作を行ってもよい。上記インターバルおよび加熱操作は上記工程(1)と同様にして行うことができる。
【0048】
<工程(3)>
本発明の高意匠複層塗膜形成方法における工程(3)は、さらに、上記着色ベース塗膜上に、上記クリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜を形成するものである。このクリヤー塗膜は、上記メタリックベース塗膜および着色ベース塗膜の色落ちを防止し、さらに、得られる複層塗膜に高い透明感と色の深み感を与えることができる。
【0049】
クリヤー塗料
本発明の高意匠複層塗膜形成方法に用いられるクリヤー塗料は、得られる塗膜の性能の観点から、硬化型塗料であることが好ましい。上記クリヤー塗料は、塗膜形成成分を含んでいる。上記塗膜形成成分としては、上記メタリックベース塗料で述べた樹脂と硬化剤との組合せを挙げることができるが、耐酸性の観点から、水酸基等の活性水素含有官能基を有するアクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂と、必要に応じてブロック化されたポリイソシアネート樹脂の硬化剤との組合わせや、カルボン酸基含有アクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂とエポキシ基含有アクリル樹脂との組み合わせであることが好ましい。
【0050】
さらに、上記クリヤー塗料は、表面調整剤、粘性制御剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の当業者によってよく知られている各種添加剤を含むことができる。
【0051】
また、上記クリヤー塗料は、得られる塗膜の色落ち性や耐候性および色の深み感の観点から、着色顔料および光輝材を含有しないことが好ましい。
【0052】
なお、上記クリヤー塗料の形態としては特に限定されず、溶剤型、水分散型、水溶型または粉体のいずれであってもよい。
【0053】
なお、上記工程(3)において、塗布されるクリヤー塗料が溶剤型、水分散型または水溶型である場合、その固形分濃度および粘度は、有機溶剤および/または水を用いて希釈することによって適宜調整することができる。
【0054】
上記工程(3)における塗布方法としては特に限定されず、クリヤー塗料の種類および形態に応じて適宜選択することができ、具体的には、溶剤型、水分散型または水溶型の場合、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装および静電スプレー塗装等を、また、粉体の場合、粉体塗装を挙げることができる。膜厚としては特に限定されないが、通常、乾燥膜厚で30〜50μmである。
【0055】
<工程(4)>
本発明の高意匠複層塗膜形成方法における工程(4)は、上記工程(1)、(2)および(3)で得られたメタリックベース塗膜、着色ベース塗膜およびクリヤー塗膜を加熱硬化して複層塗膜を形成するものである。
【0056】
上記加熱硬化の条件は特に限定されず、例えば、所定温度にて所定時間乾燥または硬化させることによって、上記被塗装物表面に高意匠複層塗膜を得ることができる。上記所定温度および所定時間は、上記クリヤー塗料の種類に応じて適宜設定することができる。
【0057】
このようにして得られる高意匠複層塗膜は、透明感に優れ、色に深みがあり、かつ、彩度が高い意匠性を有するものであり、塗装時の膜厚変動を厳格に抑制しなくても色ムラ等の発生を抑制でき、均質な意匠を得ることができる。上記高意匠複層塗膜の乾燥膜厚は特に限定されず、例えば、30〜100μmである。
【実施例】
【0058】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0059】
製造例1 メタリックベース塗料1の調製
ステンレス容器に、日本ペイント社製アクリル樹脂(酸価20mgKOH/g、水酸基価75mgKOH/g、数平均分子量5,000、固形分60%)87.8部に、パリオゲンマルーンL3920(BASF社製ペリレンレッド、商品名)12.0部を加えて粒度が5μm以下となるように顔料分散し、次いでユーバン128(三井化学社製ブチル化メラミン樹脂、商品名、固形分60%)を47.2部、アルミペースト7640NS(東洋アルミニウム社製アルミニウム顔料、商品名)を7.0部秤量し、卓上攪拌機で攪拌して、メタリックベース塗料1を調製した。
これを塗装粘度に調整して用いた。
【0060】
得られたメタリックベース塗料1の光線反射率を以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
光線反射率の測定方法
リン酸亜鉛処理したダル鋼板に、パワーニクス110(日本ペイント社製カチオン電着塗料組成物)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間加熱硬化させて電着塗膜を得た。次に、得られた電着塗膜上に、オルガTO−H−880−3グレー(日本ペイント社製ポリエステル・メラミン樹脂系中塗り塗料)を、乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装し、140℃で20分間加熱硬化させて中塗り塗膜を得た。この中塗り塗膜は分光式色差計SE−6000(日本電色工業社製)で測定したときのL*値が48であった。この塗板上に、メタリックベース塗料1を乾燥塗膜が10μmとなるようにスプレー塗装し、熱風乾燥炉にて140℃で20分間加熱硬化させて単独メタリックベース塗膜を得た。この単独メタリックベース塗膜をU−3310型分光光度計(日立社製)を用い、波長スキャンモードで300〜780nmの区間をスキャンスピード300nm/min、サンプリング間隔0.5nmの条件で測定することによって、各波長領域での単独メタリックベース塗膜の光線反射率を求めた。
【0061】
製造例2〜5 メタリックベース塗料2〜5の調製
表1に記載の成分と配合量を用いて、製造例1と同様にメタリックベース塗料2〜5を調製した。また、製造例1と同様にして、得られたメタリック塗料2〜5の光線反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0062】
製造例6 着色ベース塗料1の調製
ステンレス容器に、日本ペイント社製アクリル樹脂(酸価20mgKOH/g、水酸基価75mgKOH/g、数平均分子量5,000、固形分60%)213.4部に、パリオゲンマルーンL3920(BASF社製ペリレンレッド、商品名)を3.0部加えて、粒度が5μm以下となるように顔料分散し、次いでユーバン128(三井化学社製ブチル化メラミン樹脂、商品名、固形分60%)を114.9部秤量し、卓上攪拌機で攪拌して、着色ベース塗料1を調製した。
これを塗装粘度に調整して用いた。
【0063】
得られた着色ベース塗料1の光線透過率を以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0064】
光線透過率の測定方法
ポリプロピレン板上に、着色ベース塗料1を乾燥塗膜が12μmとなるようにスプレー塗装し、熱風乾燥炉にて140℃で20分間加熱硬化させた後、形成した塗膜をポリプロピレン板より剥離して単独着色ベース塗膜を得た。この単独着色ベース塗膜をU−3310型分光光度計(日立社製)を用い、波長スキャンモードで300〜780nmの区間をスキャンスピード300nm/min、サンプリング間隔0.5nmの条件で測定した上で、各波長領域での単独着色ベース塗膜の光線透過率を求めた。
【0065】
製造例7および8 着色ベース塗料2および3の調製
表1に記載の成分と配合量を用いて、製造例6と同様に着色ベース塗料2および3を調製した。また、製造例6と同様にして、得られた塗料の光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
クリヤー塗料の調製
マックフローO−1800クリヤー(日本ペイント社製酸・エポキシ硬化系クリヤー塗料、商品名)を、塗装粘度に調整して用いた。
【0068】
製造例9 被塗装物の調製
リン酸亜鉛処理したダル鋼板に、パワーニクス110(日本ペイント社製カチオン電着塗料組成物)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間加熱硬化し電着塗膜を得た。次に、得られた電着塗膜上に、オルガTO−H−880−3グレー(日本ペイント社製ポリエステル・メラミン樹脂系中塗り塗料)を、乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装し、140℃で20分間加熱硬化させて、中塗り塗膜が形成された被塗装物を作成した。
【0069】
実施例1
製造例9で得られた中塗り塗膜を有する被塗装物上に、製造例2で得られたメタリックベース塗料1を、乾燥膜厚が10μmとなるようにメタベルにより塗装した。2分間のセッティングの後、着色ベース塗料1を、乾燥膜厚が12μmとなるようにメタベルにより塗装した。4分間のセッティングの後、クリヤー塗料を、乾燥塗膜が35μmとなるようにμμ(マイクロマイクロ)ベルにより塗装した。さらに10分間のセッティングの後、140℃で20分間焼付硬化させて高意匠複層塗膜を得た。
【0070】
得られた高意匠複層塗膜の彩度と色の深み感、明度および色ムラを下記方法で測定し、結果を表2に示す。尚、表2にはメタリックベース塗料の各波長域の光線反射率と着色ベース塗料の各波長域の光線透過率も記載した。
【0071】
彩度と色の深み感
得られた各高意匠複層塗膜の彩度と色の深み感を目視にて観察することにより意匠性を評価した。評価基準を以下に示した。
○:彩度が高く、色の深み感に優れている
×:彩度が低い、もしくは色の深み感がない
【0072】
明度
得られた各高意匠複層塗膜の明度を分光測色計MA−68II(X−Rite社製)で測定し、15°L*値で評価した。評価基準を以下に示した。
○:45以上
×:45未満
【0073】
色ムラ
得られた各高意匠複層塗膜の色ムラを目視にて観察することにより意匠性を評価した。評価基準を以下に示した。
○:塗膜全体が均一な色を有し、顕著な色ムラの発生がない
×:塗膜に色ムラが顕著に発生している
【0074】
実施例2および比較例1〜5
実施例1と同様に、製造例9で得られた中塗り塗膜を有する被塗装物上に、表2に記載のメタリックベース塗料、着色ベース塗料およびクリヤー塗料を塗装しかつ硬化して、高意匠複層塗膜を得た。得られた複層塗膜について、実施例1と同様に彩度と色の深み感、明度および色ムラを評価し、表2に結果を記載した。
【0075】
【表2】
【0076】
実施例では、メタリックベース塗膜の光線反射率および着色ベース塗膜の光線透過率が本発明の範囲内にあるもので、彩度と色の深み感、明度および色ムラに欠陥は見あたらない。一方、比較例1および2では、メタリックベース塗料3および4を用いるもので、メタリックベース塗膜の光線反射率が、本発明の範囲の上限を超えるものであり、色ムラが発生する。比較例3はメタリックベース塗料5を用いているもので、多くの部分で本発明の範囲内であるが、メタリックベース塗膜の650〜700nmの波長域だけが光線反射率42%と低く、彩度と色の深み感および明度が悪くなっている。比較例4および5では、メタリックベース塗膜は本発明の範囲内を占めるメタリックベース塗料1であるが、着色ベース塗料2および3をそれぞれ用いるものであり、着色ベース塗膜の光線透過率が本発明の範囲から外れる例である。比較例4および5では、彩度と色の深み感が良くない。比較例4では明度も悪い結果が出ている。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の高意匠複層塗膜形成方法は、いわゆるキャンディーカラー塗膜を自動車などの広い塗布面積を有する被塗装物に色ムラ無く塗装する方法を提供するものであり、さまざまな物品にキャンディーカラー塗膜を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1】本発明の高意匠複層塗膜形成方法において得られるメタリックベース塗膜および着色ベース塗膜について、波長を横軸にし、単独メタリックベース塗膜の光線反射率と単独着色ベース塗膜の光線透過率とを縦軸にしてプロットしたグラフである。
図1