【文献】
小川 大輔、外5名,リチウムイオン電池用Li2MnSiO4正極の放電性能におよぼす活物質の微粒子化効果,GS Yuasa Technical Report,2010年12月27日,第7巻、第2号,第12頁〜第18頁,http://www.gs-yuasa.com/jp/technic/vol7_2/pdf/007_02_012.pdf
【文献】
安富 実希、外4名,リチウムイオン電池用Li2−xM(SiO4)1−x(PO4)x(M=Fe,Mn)正極活物質の水熱反応による合成とその電気化学特性,GS Yuasa Technical Report,2009年 6月26日,第6巻、第1号,第21頁〜第26頁,http://www.gs-yuasa.com/jp/technic/vol6/pdf/006_01_021.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらのリチウム金属酸化物を用いたリチウムイオン電池の放電容量は、未だ十分満足できるものではなく、さらに大きな放電容量を示す正極活物質の開発が望まれている。
従って、本発明の課題は、さらに大きな放電容量を示す正極活物質及びこれを含むリチウムイオン電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、ケイ酸鉄リチウム又はケイ酸マンガンリチウムに種々の遷移金属を導入したシリケート化合物を合成し、これを用いたリチウムイオン電池の放電容量を検討してきたところ、水熱反応により、均質なケイ酸鉄リチウム又はケイ酸マンガンリチウムに亜鉛をドープしたオリビン型シリケート化合物が得られ、これを用いたリチウムイオン電池が大きな放電容量を示すことを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の[1]〜[6]に係るものである。
【0010】
[1]次式(1)
Li
2Fe
xMn
yZn
zSiO
4・・・(1)
(式中、x、y及びzは、0≦x<1、0≦y<1、0<z<1、x+y+z=1、及びx+y≠0を満たす数を示す)
で表される亜鉛含有オリビン型シリケート化合物。
[2]上記[1]記載の亜鉛含有オリビン型シリケート化合物を含有するリチウムイオン電池用正極活物質。
[3]上記[1]記載の亜鉛含有オリビン型シリケート化合物及び導電性材料を含有するリチウムイオン電池用正極活物質。
[4]上記[2]又は[3]記載の正極活物質を含む正極を有するリチウムイオン電池。
[5]リチウム化合物及びケイ酸化合物を含有する塩基性水分散液と、鉄化合物及びマンガン化合物から選ばれる1種以上と、亜鉛化合物とを混合し、得られた混合物を水熱反応させることを特徴とする上記[1]記載の亜鉛含有オリビン型シリケート化合物の製造法。
[6]リチウム化合物及びケイ酸化合物を含有する塩基性水分散液と、鉄化合物及びマンガン化合物から選ばれる1種以上と、亜鉛化合物とを混合し、得られた混合物を水熱反応させ、水熱反応時又は水熱反応後のいずれかの工程で導電性材料を添加し、次いで焼成することを特徴とする、上記[3]記載のリチウムイオン電池用正極活物質の製造法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の亜鉛含有オリビン型シリケート化合物を正極材料として用いたリチウムイオン電池は、優れた放電容量を有し、リチウムイオン電池用正極材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の亜鉛含有オリビン型シリケート化合物は、次式(1)
Li
2Fe
xMn
yZn
zSiO
4・・・(1)
(式中、x、y及びzは、0≦x<1、0≦y<1、0<z<1、x+y+z=1、及びx+y≠0を満たす数を示す)
で表される。
【0014】
式(1)中、x、y及びzの合計は1であり、Znは必須であり、Fe及びMnは少なくとも一方は必須である。
x及びyはいずれか一方が0であってもよいが、両方が同時に0になることはない(x+y≠0)。従って、本発明の亜鉛含有オリビン型シリケート化合物の態様としては、次の3種が含まれる。
Li
2Fe
xZn
zSiO
4・・・・・・(1a)
Li
2Mn
yZn
zSiO
4・・・・・・(1b)
Li
2Fe
xMn
yZn
zSiO
4・・・(1c)
(式中、x、y及びzは、0<x<1、0<y<1、0<z<1、及びx+y+z=1を満たす数を示す)
これらの態様のうち、放電容量の点で式(1c)のシリケート化合物がより好ましい。
【0015】
xの好ましい範囲は0.01〜0.99であるが、放電容量の点から0.1〜0.8がより好ましく、0.1〜0.6がさらに好ましい。yの好ましい範囲は0.01〜0.99であるが、放電容量の点から0.1〜0.9がより好ましく、0.3〜0.9がさらに好ましい。zの好ましい範囲は0.001〜0.9であるが、さらに0.01〜0.6が好ましく、特に0.05〜0.4が好ましい。
【0016】
式(1a)又は式(1b)の場合、x及びyは0.01〜0.99が好ましく、0.2〜0.9がより好ましく、0.6〜0.9がさらに好ましい。zは0.001〜0.9が好ましく、0.01〜0.6がより好ましく、0.05〜0.4がさらに好ましい。
一方、式(1c)の場合、x及びyは0.01〜0.99が好ましく、0.2〜0.9がより好ましく、0.6〜0.9がさらに好ましい。zは0.001〜0.9が好ましく、0.01〜0.6がより好ましく、0.05〜0.4がさらに好ましい。
【0017】
また、リチウムイオン電池用正極活物質は、上記式(1)の亜鉛含有オリビン型シリケート化合物を含有すればよいが、さらにカーボン等の導電性材料を含有するのが好ましい。ここで正極活物質中の式(1)のシリケート化合物の含有量は3〜15質量%が好ましく、導電性材料の含有量は5〜10質量%が好ましい。
【0018】
本発明の亜鉛含有オリビン型シリケート化合物(1)は、水熱合成法により製造するのが好ましく、リチウム化合物及びケイ酸化合物を含有する塩基性水分散液と、鉄化合物及びマンガン化合物から選ばれる1種以上と、亜鉛化合物とを混合し、得られた混合物を水熱反応させることにより製造するのがより好ましい。当該水熱合成反応によれば、微細かつ均一で高純度の亜鉛含有オリビン型シリケート化合物(1)が得られる。
【0019】
本発明方法においては、副反応を抑制する点から、鉄化合物、マンガン化合物及び亜鉛化合物とは別に、リチウム化合物、ケイ酸化合物を含有する塩基性水分散液を調製しておくのが好ましい。リチウム化合物としては、水酸化リチウム(例えばLiOH・H
2O)、炭酸リチウム(Li
2CO
3)、硫酸リチウム、酢酸リチウムが挙げられるが、水酸化リチウム、炭酸リチウムが特に好ましい。
【0020】
ケイ酸化合物としては、反応性のあるシリカ化合物であれば特に限定されず、非晶質シリカ、Na
4SiO
4(例えばNa
4SiO
4・H
2O)が好ましい。このうちNa
4SiO
4を用いた場合、水分散液が塩基性になるので、より好ましい。
【0021】
さらに、この分散液には副反応を防止する点から、酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤としては、ハイドロサルファイトナトリウム(Na
2S
2O
4)、アンモニア水、亜硫酸ナトリウム等が使用できる。水分散液中の酸化防止剤の含有量は、多量に添加するとオリビン型シリケート化合物の生成を抑制してしまうため、鉄、マンガン及び亜鉛に対して等モル量以下が好ましく、鉄、マンガン及び亜鉛に対してモル比で0.5以下がさらに好ましい。
【0022】
水分散液のpHは、塩基性であればよいが、12.0〜13.5であるのが副反応(Fe
3O
4の生成)の防止、ケイ酸化合物の溶解性及び反応の進行の点で特に好ましい。該水分散液のpHの調整は、塩基、例えば、水酸化ナトリウムを添加することにより行ってもよいが、ケイ酸化合物としてNa
4SiO
4を用いるのが特に好ましい。
【0023】
該水分散液中のリチウム化合物の濃度は、0.30〜3.00mol/lが好ましく、さらに1.00〜1.50mol/lが好ましい。また、ケイ酸化合物の濃度は、0.15〜1.50mol/lが好ましく、さらに0.50〜0.75mol/lが好ましい。該水分散液の調製にあたって、リチウム化合物、ケイ酸化合物及び酸化防止剤の添加順序は特に限定されず、これら成分を水に添加してもよい。
【0024】
鉄化合物、マンガン化合物及び亜鉛化合物としては、2価の鉄化合物、2価のマンガン化合物、2価の亜鉛化合物であればよく、例えばハロゲン化鉄、ハロゲン化マンガン、ハロゲン化亜鉛等のハロゲン化物、硫酸鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛等の硫酸塩、シュウ酸鉄、酢酸鉄、酢酸マンガン、酢酸亜鉛等の有機酸塩が挙げられる。これらの遷移金属化合物の添加量は、反応混合液中0.15〜1.50mol/lとなる量が好ましく、さらに0.50〜0.75mol/lとなる量が好ましい。
【0025】
本発明においては、次に前記水分散液と前記遷移金属化合物(鉄化合物及びマンガン化合物から選ばれる1種以上と、亜鉛化合物)とを混合し、水熱反応に付す。水熱反応は、100℃以上であればよく、130〜180℃が好ましく、さらに140〜160℃が好ましい。水熱反応は耐圧容器中で行うのが好ましく、130〜180℃で反応を行う場合この時の圧力は0.3〜0.9MPaとなり、140〜160℃で反応を行う場合の圧力は0.3〜0.4MPaとなる。水熱反応時間は1〜24時間が好ましく、さらに3〜12時間が好ましい。
【0026】
当該水熱反応により、式(1)の亜鉛含有オリビン型シリケート化合物が高収率で得られる。また、得られた式(1)の亜鉛含有オリビン型シリケート化合物の平均粒径は10〜100nmとなり、その結晶度も高い。
【0027】
得られた式(1)の亜鉛含有オリビン型シリケート化合物は、ろ過後、乾燥することにより単離できる。乾燥手段は、凍結乾燥、真空乾燥が用いられる。
【0028】
得られた式(1)の亜鉛含有オリビン型シリケート化合物は、そのままリチウムイオン電池用正極活物質とすることもできるが、前記のように式(1)のシリケート化合物に導電性化合物を含有させてリチウムイオン電池用正極活物質とするのが好ましい。式(1)のシリケート化合物と導電性材料を含有する正極活物質を得るには、水熱反応時又は水熱反応後のいずれかの工程で導電性材料を添加し、次いで焼成することにより、式(1)のシリケート化合物に導電性材料を担持させるのが好ましい。用いられる導電性材料としてはカーボンが好ましく、当該炭素源としては、グルコース、フルクトース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、サッカロース、デンプン、デキストリン、クエン酸等が挙げられる。水熱反応後の導電性材料担持は、例えば前記の炭素源及び水を添加し、次いで焼成すればよい。焼成条件は、不活性ガス雰囲気下又は還元条件下に400℃以上、好ましくは400〜800℃で10分〜3時間、好ましくは0.5〜1.5時間行うのが好ましい。かかる処理により式(1)の亜鉛含有オリビン型シリケート化合物表面にカーボン等の導電性材料が担持された正極活物質とすることができる。炭素源の使用量は、式(1)の亜鉛含有オリビン型シリケート化合物100質量部に対し、炭素源に含まれる炭素として3〜15質量部が好ましく、炭素源に含まれる炭素として5〜10質量部がさらに好ましい。
【0029】
得られた正極活物質は、放電容量の点で優れており、リチウムイオン電池の正極材料として有用である。本発明の正極活物質を適用できるリチウムイオン電池としては、リチウムイオン二次電池であればよく、正極と負極と電解液とセパレータを必須構成とするものであれば特に限定されない。
【0030】
ここで、負極については、リチウムイオンを充電時には吸蔵し、かつ放電時には放出することができれば、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。たとえば、リチウム金属、グラファイト又は非晶質炭素等の炭素材料等である。そしてリチウムを電気化学的に吸蔵・放出し得るインターカレート材料で形成された電極、特に炭素材料を用いることが好ましい。
【0031】
電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させたものである。有機溶媒は、通常リチウム二次電池の電解液の用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。
【0032】
支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4及びLiAsF
6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO
3CF
3、LiC(SO
3CF
3)
2及びLiN(SO
3CF
3)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2及びLiN(SO
2CF
3)(SO
2C
4F
9)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
【0033】
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。
【実施例】
【0034】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0035】
実施例1(Li
2Fe
0.45Mn
0.45Zn
0.05SiO
4の合成)
LiOH・H
2O 4.20g(0.1mol)、Na
4SiO
4・nH
2O 13.98g(0.05mol)に超純水75cm
3を加えて混合した(この時のpHは約13)。この水分散液にFeSO
4・7H
2O 6.26g(0.0225mol)、MnSO
4・5H
2O 5.42g(0.0225mol)、ZnSO
4・7H
2O 1.31g(0.005mol)を添加し、混合した。得られた混合液をオートクレーブに投入し、150℃で12hr水熱反応を行った。反応液をろ過後、凍結乾燥した。凍結乾燥(約12時間)して得られた粉末8.4gにグルコース(炭素濃度として10%)及び超純水10cm
3を加え還元雰囲気下で600℃で1hr焼成した。
【0036】
実施例2(Li
2Fe
0.5Zn
0.5SiO
4の合成)
LiOH・H
2O 4.20g(0.1mol)、Na
4SiO
4・nH
2O 13.98g(0.05mol)に超純水75cm
3を加えて混合した(この時のpHは約13)。この水分散液にFeSO
4・7H
2O 6.95g(0.025mol)、ZnSO
4・7H
2O 6.57g(0.025mol)を添加し、混合した。得られた混合液をオートクレーブに投入し、150℃で12hr水熱反応を行った。反応液をろ過後、凍結乾燥した。凍結乾燥(約12時間)して得られた粉末8.4gにグルコース(炭素濃度として10%)及び超純水10cm
3を加え、還元雰囲気下で600℃で1hr焼成した。
【0037】
実施例3(Li
2Mn
0.5Zn
0.5SiO
4の合成)
LiOH・H
2O 4.20g(0.1mol)、Na
4SiO
4・nH
2O 13.98g(0.05mol)に超純水75cm
3を加えて混合した(この時のpHは約13)。この水分散液にMnSO
4・5H
2O 6.03g(0.025mol)、ZnSO
4・7H
2O 6.57g(0.025mol)を添加し、混合した。得られた混合液をオートクレーブに投入し、150℃で12hr水熱反応を行った。反応液をろ過後、凍結乾燥した。凍結乾燥(約12時間)して得られた粉末8.4gにグルコース(炭素濃度として10%)及び超純水10cm
3を加え、還元雰囲気下で600℃で1hr焼成した。
【0038】
比較例1(Li
2Fe
0.5Mn
0.5SiO
4の合成)
LiOH・H
2O 4.20g(0.1mol)、Na
4SiO
4・nH
2O 13.98g(0.05mol)に超純水75cm
3を加えて混合した(この時のpHは約13)。この水分散液にFeSO
4・7H
2O 6.95g(0.025mol)、MnSO
4・5H
2O 6.03g(0.025mol)を添加し、混合した。得られた混合液をオートクレーブに投入し、150℃で12hr水熱反応を行った。反応液をろ過後、凍結乾燥した。凍結乾燥(約12時間)して得られた粉末8.4gにグルコース(炭素濃度として10%)及び超純水10cm
3を加え、還元雰囲気下で600℃で1hr焼成した。
【0039】
比較例2(Li
2FeSiO
4の合成)
LiOH・H
2O 4.20g(0.1mol)、Na
4SiO
4・nH
2O 13.98g(0.05mol)に超純水75cm
3を加えて混合した(この時のpHは約13)。この水分散液にFeSO
4・7H
2O 13.90g(0.05mol)を添加し、混合した。得られた混合液をオートクレーブに投入し、150℃で12hr水熱反応を行った。反応液をろ過後、凍結乾燥した。凍結乾燥(約12時間)して得られた粉末8.4gにグルコース(炭素濃度として10%)及び超純水10cm
3を加え、還元雰囲気下で600℃で1hr焼成した。
【0040】
比較例3(Li
2MnSiO
4の合成)
LiOH・H
2O 4.20g(0.1mol)、Na
4SiO
4・nH
2O 13.98g(0.05mol)に超純水75cm
3を加えて混合した(この時のpHは約13)。この水分散液にMnSO
4・5H
2O 12.05g(0.05mol)を添加し、混合した。得られた混合液をオートクレーブに投入し、150℃で12hr水熱反応を行った。反応液をろ過後、凍結乾燥した。凍結乾燥(約12時間)して得られた粉末8.4gにグルコース(炭素濃度として10%)及び超純水10cm
3を加え、還元雰囲気下で600℃で1hr焼成した。
【0041】
試験例1
実施例1及び比較例1〜3で得られた凍結乾燥粉末のX線回折を行った。得られたX線回折図を
図1〜
図4に示す。
図1〜
図4から明らかなように、実施例1及び比較例1〜3で得られた粉末はオリビン型シリケート化合物の単一相であり、高純度であることが判明した。
【0042】
試験例2
実施例1及び比較例1〜3で得られた焼成物のSEM像を
図5〜
図8に示す。得られた焼成物は、粒子径が小さく、均一であることがわかる。
【0043】
試験例3
実施例1及び比較例1〜3で得られた焼成物を用い、リチウムイオン二次電池の正極を作製した。実施例1及び比較例1〜3で得られた焼成物、ケッチェンブラック(導電剤)、ポリフッ化ビニリデン(粘結剤)を重量比75:15:10の配合割合で混合し、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えて充分混練し、正極スラリーを調製した。正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、正極とした。
次いで、上記の正極を用いてコイン型リチウムイオン二次電池を構築した。負極には、φ15mmに打ち抜いたリチウム箔を用いた。電解液には、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比1:1の割合で混合した混合溶媒に、LiPF
6を1mol/lの濃度で溶解したものを用いた。セパレータには、ポリプロピレンなどの高分子多孔フィルムなど、公知のものを用いた。これらの電池部品を露点が−50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型リチウム二次電池(CR−2032)を製造した。
製造したリチウムイオン二次電池を用いて定電流密度での充放電を4サイクル行った。このときの充電条件は電流0.1CA(33mA/g)、電圧4.5Vの定電流定電圧充電とし、放電条件は電流0.1CA、終止電圧1.5Vの定電流放電とした。温度は全て30℃とした。
実施例1及び比較例1〜3の正極材で構築した電池の充放電曲線を
図9〜
図12に示す。
図9〜
図12より、本発明の正極材料を用いたリチウムイオン電池は、比較例1〜3の正極材料を用いたリチウムイオン電池に比べて優れた電池特性を有することがわかる。