特許第5765811号(P5765811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5765811リン酸鉄リチウム系正極活物質の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5765811
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】リン酸鉄リチウム系正極活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20150730BHJP
   C01B 25/45 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   H01M4/58
   C01B25/45 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-276702(P2011-276702)
(22)【出願日】2011年12月19日
(65)【公開番号】特開2013-127897(P2013-127897A)
(43)【公開日】2013年6月27日
【審査請求日】2014年8月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】公立大学法人首都大学東京
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】花田 晶子
(72)【発明者】
【氏名】大神 剛章
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 務
(72)【発明者】
【氏名】金村 聖志
【審査官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−060181(JP,A)
【文献】 特開2003−323892(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/131095(WO,A1)
【文献】 特表2006−516172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム化合物と、リン酸化合物と、2価の鉄化合物と、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム及びフッ化カリウムから選ばれるフッ素化合物と、の混合物を水熱反応することを特徴とする、化学組成LiFePO4で示される結晶を有するリン酸鉄リチウム系正極活物質の製造法。
【請求項2】
リチウム化合物、リン酸化合物、前記フッ素化合物及び水を混合し、次いで2価の鉄化合物を添加して水熱反応を行う請求項1記載の製造法。
【請求項3】
水熱反応が、耐圧容器中で120〜220℃の条件で行われるものある請求項1又は2記載の製造法。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項記載の製造法により得られた、化学組成LiFePO4で示される結晶を有するリン酸鉄リチウム系正極活物質。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項記載の製造法により得られた、化学組成LiFePO4で示される結晶を有するリン酸鉄リチウム系正極活物質を正極材料として含有するリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の正極材料として有用なリン酸鉄リチウム系正極活物質の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電子機器、ハイブリッド自動車、電気自動車等に用いられる二次電池の開発が行われており、特にリチウムイオン二次電池が広く知られている。当該リチウムイオン電池は、基本的に正極、負極、非水電解質及びセパレータからなり、正極材料としてはLiCoO2が広く用いられ、さらにLiNiO2、LiMn24などが開発されている。しかし、これらのリチウム系金属酸化物は、高電圧ではあるが容量が低いという問題がある。
【0003】
これらに対し、最近になって、オリビン構造を有するリン酸鉄リチウム等のリン酸化合物を正極に用いることが提案されている(特許文献1)。しかしながら、このリン酸鉄リチウムの合成法は固相法であり、不活性ガス雰囲気下で焼成と粉砕を行う必要があり、操作が複雑であった。
【0004】
そこで、リン酸鉄リチウムを水熱反応で製造する試みがなされている(特許文献2及び3、非特許文献1)。これらの方法は、リチウム化合物、鉄化合物、リン酸化合物を耐圧容器内で水熱反応させるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−171827号公報
【特許文献2】特開2002−151082号公報
【特許文献3】特開2004−95385号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Electrochemistry Communications 3(2001)505−508
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これら従来の水熱反応によるリン酸鉄リチウムの製造法によれば固相法に比べて、粒径が均一なものが得られるものの、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した場合には、十分な充放電特性が得られないため、水熱反応時又は水熱反応終了後に炭素源を添加し、水熱反応終了後に還元条件下に数百℃で焼成する必要があった。
従って、より簡便な手段で、十分に高い充放電特性を有するリン酸鉄リチウム系正極活物質を製造する方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、水熱合成後の還元焼成工程を行なうことなく高い充放電特性を有する正極活物質を製造すべく検討した結果、リチウム化合物、リン酸化合物及び2価の鉄化合物を水熱合成させる際にフッ素化合物を添加して反応を行えば、得られたリン酸鉄リチウムはその後の還元焼成工程を省略しても十分に高い充放電特性を示し、正極活物質として有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、リチウム化合物、リン酸化合物、2価の鉄化合物、フッ素化合物及び水の混合物を水熱反応することを特徴とするリン酸鉄リチウム系正極活物質の製造法を提供するものである。
また、本発明は、上記の製造法により得られたリン酸鉄リチウム系正極活物質を提供するものである。
また、本発明は、上記の製造法により得られたリン酸鉄リチウム系正極活物質を正極材料として含有するリチウムイオン二次電池を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明方法によれば、水熱反応後の還元焼成工程を省略しても、簡便な手段で、十分に高い充放電特性を有するリン酸鉄リチウム系正極活物質が得られる。本発明方法により得られたリン酸鉄リチウム系正極活物質を正極材料として用いれば、高容量で充放電特性に優れたリチウムイオン二次電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1で得られたLiFePO4のXRDチャートを示す。
図2】実施例2で得られたLiFePO4のXRDチャートを示す。
図3】比較例1で得られたLiFePO4のXRDチャートを示す。
図4】実施例3で作製した電池の充放電特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明方法は、リチウム化合物、リン酸化合物、2価の鉄化合物及び水に加えて、フッ素化合物を添加した混合物を水熱反応する。
【0013】
原料として用いられるリチウム化合物としては、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のリチウム金属塩、水酸化リチウム、炭酸リチウム等が挙げられるが、炭酸リチウムを使用するのが安価である点で好ましい。
【0014】
リン酸化合物としては、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム等が用いられる。
【0015】
リチウム化合物及びリン酸化合物の使用量はリチウムイオン及びリン酸イオンのモル比換算で1.5:1〜3.7:1が好ましく、略2.8:1〜3.3:1とするのがより好ましい。
【0016】
用いられる2価の鉄化合物としては、フッ化鉄、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄等のハロゲン化鉄、硫酸鉄、シュウ酸鉄、酢酸鉄等が挙げられる。2価の鉄化合物の使用量は、Li/Fe=1.5〜3.7とするのが、高純度のリン酸鉄リチウムを得る点で好ましく、Li/Fe=2.8:1〜3.3:1とするのがより好ましい。
【0017】
フッ素化合物としては、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等が挙げられるが、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウムがより好ましい。フッ素化合物の使用量は、2価の鉄化合物のFeイオン1モルに対して0.1〜2.5モルが好ましく、0.2〜1.5モルがより好ましい。
【0018】
水の使用量は、原料化合物の溶解性、撹拌の容易性、合成の効率等の点から、リン酸化合物のリンイオン1モルに対して10〜50モルが好ましく、さらに13〜40モルが好ましく、特に15〜30モルが好ましい。
【0019】
本発明方法においては、混合物に窒素ガスを導入するのが好ましい。窒素ガスの導入は、反応液中の溶存酸素量を低下させ、2価の鉄化合物の酸化を防止する点、酸化防止剤の添加量を低減する点から好ましい。窒素ガスの導入量は、溶液中の溶存酸素濃度が1.0mg/L以下になるまで行うのが好ましく、特に0.5mg/L以下となるまで行うのがさらに好ましい。窒素ガスの導入手段としては、溶液中に窒素ガスをバブリングすることにより行うのが好ましい。
【0020】
また、本発明方法においては、2価の鉄化合物の酸化を防止するために、酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤の添加時期は、窒素ガスの導入と当時でもよいし、これらの操作の前でも中間でも後でもよい。酸化防止剤としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸エステル、アスコルビン酸塩、イソアスコルビン酸、アルデヒド類、水素ガス、亜硫酸塩等が挙げられる。これらの酸化防止剤の使用量は、2価の鉄化合物の鉄イオン1モルに対して0.001モル〜0.1モルが好ましく、0.005モル〜0.05モルがさらに好ましい。
【0021】
本発明方法においては、前記原料化合物の添加順序は特に限定されないが、リチウム化合物、リン酸化合物、フッ素化合物及び水を混合し、次いで2価の鉄化合物を添加するのが、副反応を防止し、反応を容易に進行させる点で好ましい。
この場合、リチウム化合物とリン酸化合物とフッ素化合物と水の添加順序は特に限定されず、またこれらの原料の混合時間も限定されない。これらの原料の混合は、室温、例えば10〜35℃で行えばよい。
【0022】
また、本発明方法においては、塩基添加によるpH調整を実施してもよい。リチウム化合物、リン酸化合物、フッ化化合物及び水の混合物に、塩基を添加して2価の鉄化合物添加後のpHを3〜6に調整する。当該塩基添加によるpHの調整により、原料として用いるリチウム化合物の量が大過剰でなくとも、高純度のリン酸鉄リチウムが効率良く得られる。
用いられる塩基としては、2価の鉄化合物添加後の混合物のpHを3〜6に調整できる塩基であればよいが、非金属系であることが必要であり、アンモニア又は有機アミンが好ましい。有機アミンとしては、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アルカノールアミン、ジアルカノールアミン、トリアルカノールアミン、ピペリジン、ピロリジン、モルホリン等の環状アミン、ピリジン等の芳香族アミン等が挙げられる。これらの塩基のうち、アンモニアが特に好ましい。
【0023】
本発明方法においては、次に前記混合物を微細で均一な粒径を有するリン酸鉄リチウムを得る点から撹拌することが好ましく、さらに30分以上混合撹拌することがより好ましい。この撹拌時間は30分以上、さらに30〜120分が好ましく、さらにまた60〜120分が好ましい。撹拌反応は、室温で行えばよく、10〜35℃で行うのが好ましい。撹拌は、通常の撹拌手段、例えばプロペラ撹拌、ポンプ循環撹拌により行うことができる。
【0024】
次に混合物を水熱反応に付す。水熱反応は、反応混合物中に水が存在するので、耐圧容器中で密封して120℃以上に加熱すればよい。より好ましい反応温度は130〜220℃であり、さらに好ましくは150〜200℃である。圧力は、耐圧容器中密封して加熱するのみでよく、理論上0.2〜2.3MPa程度になる。加熱時間は1〜15時間が好ましく、さらに2〜10時間が好ましい。なお、水熱反応中は、反応液を撹拌しておくのが好ましい。
【0025】
水熱反応終了後、生成したリン酸鉄リチウムをろ過により採取し、洗浄するのが好ましい。洗浄は、ケーキ洗浄機能を有したろ過装置を用いて水で行うのが好ましい。得られた結晶は、必要により乾燥する。乾燥手段は、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等が挙げられる。
【0026】
得られたリン酸鉄リチウム系正極活物質は、焼成する必要がない。
【0027】
本発明方法により得られるリン酸鉄リチウムは、化学組成がLiFePO4で示されるものであり、正極活物質として有用である。
【0028】
本発明方法により得られるリン酸鉄リチウム系正極活物質は、粒径が微細で均一であることから、リチウムイオン二次電池の正極材料として有用である。次に本発明方法で得られたリン酸鉄リチウム系正極活物質を正極材料として含有するリチウムイオン二次電池について説明する。
【0029】
本発明の正極材料を適用できるリチウムイオン二次電池としては、正極と負極と電解液とセパレータを必須構成とするものであれば特に限定されない。
【0030】
ここで、負極については、リチウムイオンを充電時には吸蔵し、かつ放電時には放出することができれば、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。たとえば、リチウム金属、グラファイト又は非晶質炭素等の炭素材料等である。そしてリチウムを電気化学的に吸蔵・放出し得るインターカレート材料で形成された電極、特に炭素材料を用いることが好ましい。
【0031】
電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させたものである。有機溶媒は、通常リチウムイオン二次電池の電解液の用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。
【0032】
支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、LiPF6、LiBF4、LiClO4及びLiAsF6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO3CF3、LiC(SO3CF32及びLiN(SO3CF32、LiN(SO2252及びLiN(SO2CF3)(SO249)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
【0033】
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすもので
ある。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリ
プロピレン)の多孔膜を用いればよい。
【実施例】
【0034】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
実施例1
Li2CO3 19.9g、H3PO4 17.6g及び水60.0gを混合した。これにNH4F 0.76gを加え、次いで窒素ガスをバブリングし、溶存酸素濃度が0.1mg/L未満になったことを確認した。これにFeSO4・7H2O 50.0gを混合し、23±2℃でプロペラ式撹拌装置で60分間撹拌した。
60分間撹拌した混合物をオートクレーブに入れ、200℃で3時間加熱した。加熱中も撹拌を続けた。オートクレーブの内圧は1.5MPaであった。生成した結晶をろ過し、次いで水により洗浄した。結晶を60℃、1Torrの条件で真空乾燥し、リン酸鉄リチウムの微細粉末を得た。得られた粉末のXRDチャートを図1に示す。
【0036】
実施例2
Li2CO3 19.9g、H3PO4 17.6g及び水60.0gを混合した。これにNH4F 2.67gを加え、次いで窒素ガスをバブリングし、溶存酸素濃度が0.1mg/L未満になったことを確認した。これにFeSO4・7H2O 50.0gを混合し、23±2℃でプロペラ式撹拌装置で60分間撹拌した。
60分間撹拌した混合物をオートクレーブに入れ、200℃で3時間加熱した。加熱中も撹拌を続けた。オートクレーブの内圧は1.5MPaであった。生成した結晶をろ過し、次いで水により洗浄した。結晶を60℃、1Torrの条件で真空乾燥し、リン酸鉄リチウムの微細粉末を得た。得られた粉末のXRDチャートを図2に示す。
【0037】
比較例1
Li2CO3 19.9g、H3PO4 17.6g及び水60.0gを混合した。次いで窒素ガスをバブリングし、溶存酸素濃度が0.1mg/L未満になったことを確認した。これにFeSO4・7H2O 50.0gを混合し、23±2℃でプロペラ式撹拌装置で60分間撹拌した。
60分間撹拌した混合物をオートクレーブに入れ、200℃で3時間加熱した。加熱中も撹拌を続けた。オートクレーブの内圧は1.5MPaであった。生成した結晶をろ過し、次いで水により洗浄した。結晶を60℃、1Torrの条件で真空乾燥し、リン酸鉄リチウムの微細粉末を得た。得られた粉末のXRDチャートを図3に示す。
【0038】
実施例3
実施例1、2及び比較例1で得られた材料を正極材料に用いて電池を作製した。
実施例1、2及び比較例1で得られた焼成物、ケッチェンブラック(導電剤)、ポリフッ化ビニリデン(粘結剤)を重量比75:15:10の配合割合で混合し、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えて充分混練し、正極スラリーを調製した。正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、正極とした。
次いで、上記の正極を用いてコイン型リチウムイオン二次電池を構築した。負極には、φ15mmに打ち抜いたリチウム箔を用いた。電解液には、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比1:1の割合で混合した混合溶媒に、LIPF6を1mol/lの濃度で溶解したものを用いた。セパレータには、ポリプロピレンなどの高分子多孔フィルムなど、公知のものを用いた。これらの電池部品を露点が−50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型リチウム二次電池(CR−2032)を製造した。
製造したリチウムイオン二次電池を用いて定電流密度での充放電試験を行った。このときの充電条件は電流0.1CA(17mA/g)、電圧4.2Vの定電流充電とし、放電条件は電流0.1CA、終止電圧2.0Vの定電流放電とした。温度は全て30℃とした。
充放電試験の結果の中から放電特性を図4に示す。その結果、実施例1及び2の正極材料を用いた電池は優れた充放電容量を示したが、比較例1の材料を用いた電池の充放電容量は十分でなかった。
以上の結果より、本発明方法によれば、水熱反応後焼成工程を終ることなく高い充放電容量を有するリン酸鉄リチウム系正極活物質が得られる。また、得られたリン酸鉄リチウム系正極活物質を用いれば優れた充放電容量を示すリチウムイオン二次電池が得られる。
図1
図2
図3
図4