(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5765816
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】杭の載荷試験方法
(51)【国際特許分類】
E02D 33/00 20060101AFI20150730BHJP
E02D 1/02 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
E02D33/00
E02D1/02
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-39719(P2012-39719)
(22)【出願日】2012年2月27日
(65)【公開番号】特開2013-174096(P2013-174096A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2014年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】堀井 良浩
(72)【発明者】
【氏名】小室 努
(72)【発明者】
【氏名】藤山 淳司
(72)【発明者】
【氏名】岩田 曉洋
(72)【発明者】
【氏名】小田 幸弘
【審査官】
富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−019973(JP,A)
【文献】
特開2011−047687(JP,A)
【文献】
特開2007−270542(JP,A)
【文献】
特開昭62−137530(JP,A)
【文献】
米国特許第04554819(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 33/00
E02D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層まで到達して先端部と杭本体とに二分割された試験杭と、前記先端部と前記杭本体との間に設けられた先端側加力装置と、前記試験杭の周囲に構築された反力部材と、当該反力部材に支持されて前記試験杭に加力する杭頭側加力装置と、当該杭頭側加力装置から下方に延びて前記杭本体に連結される棒状の連結部材と、を備える載荷試験装置を用いる載荷試験方法であって、
前記試験杭の杭本体による周面摩擦抵抗が、前記先端部による先端抵抗よりも大きい場合に、
前記先端側加力装置により前記杭本体に反力をとって前記先端部を押圧することで、当該先端部の先端抵抗を測定する載荷試験と、
前記先端側加力装置により前記先端部に反力をとって前記杭本体を押圧するとともに、前記杭頭側加力装置により前記反力部材に反力をとって前記連結部材を上方に引っ張ることで、前記杭本体の周面摩擦抵抗を測定する載荷試験と、を実施することを特徴とする杭の載荷試験方法。
【請求項2】
前記連結部材は、前記杭頭側加力装置から下方に延びて前記杭本体を貫通し、当該杭本体の下端部に連結することを特徴とする請求項1に記載の杭の載荷試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭の載荷試験
方法に関する。詳しくは、試験杭の載荷試験を行う杭の載荷試験
方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の杭の耐力を予測するため、建物を構築する前に、杭の載荷試験が行われることが多い。
この杭の載荷試験では、試験杭を構築し、この試験杭の支持力を構成する周面摩擦抵抗および先端抵抗を求めるが、これら周面摩擦抵抗および先端抵抗を高い精度で求めること重要である。
その理由は、次の通りである。すなわち、試験杭の杭径を実際の杭の杭径と同程度とすると、載荷試験で加える荷重が大きくなり、載荷試験装置が大型化してしまうため、試験杭の杭径を実際に使用する杭の杭径よりも小さくすることが多い。実際の杭よりも小さい試験杭の載荷試験結果を杭の設計に反映させるためには、杭の周面摩擦抵抗および先端抵抗を正確に把握することが必要となるからである。
【0003】
ここで、杭の載荷試験としては、押込み試験と、先端載荷試験と、補助反力併用方式の先端載荷試験と、が提案されている。
【0004】
押込み試験では、
図4に示すように、試験杭110と、試験杭110の周囲に構築された反力杭130と、この反力杭130の杭頭間に架設された載荷桁140と、この載荷桁140と試験杭110との間に設けられた杭頭側加力装置160と、を備える載荷試験装置100を用いる(非特許文献1参照)。
試験杭110の地表面2から所定深さまでの部分は、建物の地下躯体に相当する部分あるいは試験で測定する必要がない部分であり、例えば円筒状の二重鋼管170で囲まれて、フリクションカットが施されている。
【0005】
この載荷試験装置100では、杭頭側加力装置160により、載荷桁140を介して反力杭130に反力をとって、試験杭110を下方に押し込む。そして、試験杭110の杭体内の複数箇所のひずみ量を測定し、この測定したひずみ量に杭体のヤング率および断面積を乗じて、周面摩擦抵抗および先端抵抗を算定する。これにより、反力杭130には、
図4中矢印で示すように、上向きの引抜き力が作用することになる。
【0006】
この載荷試験装置100によれば、実際の建物の荷重条件を模擬できるため、実際の杭の支持力特性に近い試験結果を得ることができる。
しかしながら、以上の載荷試験装置100では、以下のような問題点があった。
第1に、載荷試験装置100の設置や撤去にかなりの手間がかかる、という問題があった。すなわち、杭の引抜き抵抗は杭の押し込み抵抗よりも小さいため、載荷試験に必要な反力を確保するためには、複数本の反力杭が必要となる。さらに、載荷試験装置100の安定性を考慮すると、反力杭の本数は、2本、4本、8本などのようにバランス良く配置する必要がある。また、試験杭の杭経が大きくなると、反力杭の本数も増やす必要がある。このように反力杭を複数本構築する必要があるため、かなりの手間がかかってしまうのである。
【0007】
第2に、周面摩擦抵抗および先端抵抗を精度よく求めることが難しい、という問題があった。すなわち、ひずみ分布が一つの断面内で一定にならない、コンクリートのヤング率が深さ方向に一定にならない、ひずみの大きさによってコンクリートのヤング率が変化する、などの理由で、各測定深度での軸力算定が難しいためである。
【0008】
以上の押込み試験における問題点を解決するため、先端載荷試験が知られている(非特許文献2参照)。
先端載荷試験では、
図5に示すように、試験杭110と、試験杭110の先端側に設けられた先端側加力装置210と、を備える載荷試験装置200を用いる。
すなわち、試験杭110を先端側で二分割して、試験杭110を先端部111と杭本体112とし、先端部111と杭本体112との間に先端側加力装置210を設ける。
この載荷試験装置200によれば、
図5中矢印で示すように、先端側加力装置210により、先端部111と杭本体112とが離れる方向に力を加えて、先端側加力装置210の上下面のひずみ量を測定することで、先端部111の先端抵抗と杭本体112の周面摩擦抵抗とを別々に高精度で算定することができる。
また、反力杭を設けないので、載荷試験装置200の設置や撤去にかかる手間を低減できる。
【0009】
しかしながら、この先端載荷試験では、周面摩擦抵抗および先端抵抗のいずれか小さい方の値しか測定できない、という問題があった。これは、周面摩擦抵抗および先端抵抗のいずれか小さい方の値を超えると、載荷試験装置200の反力をとれなくなるからである。
【0010】
したがって、例えば、先端抵抗を算定したい場合には、杭本体112の杭長を長くして周面摩擦抵抗を増大させるか、先端側加力装置210の加力面積を小さくして先端抵抗を低減させる必要がある。一方、周面摩擦抵抗を算定したい場合には、先端部111の杭長を長くするか、杭先端を拡底して先端抵抗を増大させる必要がある。
【0011】
以上の先端載荷試験における問題点を解決するため、押込み試験と先端載荷試験とを組み合わせた補助反力併用方式の先端載荷試験が提案されている((非特許文献2、特許文献1参照)。
補助反力併用方式の先端載荷試験では、
図6に示すように、試験杭110と、試験杭110の先端側に設けられた先端側加力装置210と、試験杭110の周囲に構築された反力杭130と、この反力杭130の杭頭間に架設された載荷桁140と、この載荷桁140と試験杭110との間に設けられた杭頭側加力装置160と、を備える載荷試験装置300を用いる。
【0012】
この載荷試験装置300によれば、周面摩擦抵抗を先端抵抗よりも小さくしておき、周面摩擦抵抗を測定する場合には、先端側加力装置210により、先端部111に反力をとって杭本体を上方に押圧する。
一方、先端抵抗を測定する場合には、
図6中矢印で示すように、先端側加力装置210により、杭本体112に反力をとって先端部111を下方に押圧する。このとき、杭本体112の反力が不足し、先端抵抗を測定するのに十分な押圧力を確保できないため、杭頭側加力装置160により、載荷桁140を介して反力杭130に反力をとって杭本体112を下方に押圧し、これにより反力を補う。
【0013】
以上より、補助反力併用方式の先端載荷試験によれば、周面摩擦抵抗および先端抵抗の両方を精度良く測定できる。
また、先端側加力装置210により杭本体112に反力をとるため、その分だけ、押込み試験よりも、反力杭の本数を削減したり、反力杭のサイズ(杭径や杭長など)を小さくしたりできる。よって、載荷試験装置300の設置や撤去にかかる手間を低減できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】地盤工学会基準(JGS 1811−2002) 杭の押込み試験方法 地盤工学会
【非特許文献2】地盤工学会基準(JGS 1812−2002) 杭の先端載荷試験方法 地盤工学会
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第3264740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、近年、載荷試験装置の設置や撤去にかかる手間をさらに低減するため、反力杭の本数をさらに削減したり、反力杭のサイズをさらに小型化したりすることが要請されている。
【0017】
本発明は、設置や撤去にかかる手間を低減しつつ、周面摩擦抵抗および先端抵抗の両方を精度良く測定できる載荷試験
方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1に記載の杭の
載荷試験方法では、載荷試験装置(例えば、後述の載荷試験装置1)は、先端部(例えば、後述の先端部11)と杭本体(例えば、後述の杭本体12)とに二分割された試験杭(例えば、後述の試験杭10)と、前記先端部と前記杭本体との間に設けられた先端側加力装置(例えば、後述の先端側ジャッキ20)と、前記試験杭の周囲に構築された反力部材(例えば、後述の反力杭30)と、当該反力部材に支持されて前記試験杭に加力する杭頭側加力装置(例えば、後述の杭頭側ジャッキ60)と、を備え、前記先端側加力装置は、前記先端部に反力をとって前記杭本体を押圧する、あるいは、前記杭本体に反力をとって前記先端部を押圧することが可能であり、前記杭頭側加力装置は、前記反力部材に反力をとって、前記試験杭を上方に引っ張ることが可能であることを特徴とする。
【0019】
請求項
1に記載の杭の載荷試験
方法は、前記先端側加力装置により前記杭本体に反力をとって前記先端部を押圧することで、当該先端部の先端抵抗を測定することを特徴とする。
【0020】
請求項
1に記載の杭の載荷試験
方法は、前記先端側加力装置により前記先端部に反力をとって前記杭本体を押圧するとともに、前記杭頭側加力装置により前記反力部材に反力をとって前記杭本体を上方に引っ張ることで、前記杭本体の周面摩擦抵抗を測定することを特徴とする。
【0021】
ここで、反力部材としては、反力杭のほか、フーチン状の鉄筋コンクリート躯体が挙げられる。
この発明によれば、杭本体の周面摩擦抵抗を先端部の先端抵抗よりも大きくしておき、周面摩擦抵抗を測定する場合には、杭頭側加力装置により、杭本体に反力をとって先端部を下方に押圧する。
一方、周面摩擦抵抗を測定する場合には、先端側加力装置により、先端部に反力をとって杭本体を上方に押圧する。このとき、先端部の反力が不足し、周面摩擦抵抗を測定するのに十分な押圧力を確保できないため、杭頭側加力装置により、反力部材に反力をとって杭本体を上方に引っ張り上げて、これにより反力を補う。
【0022】
よって、上述の押込み試験に比べて、反力杭の本数を低減したり、反力杭の杭径を小さくしたりして、反力杭の容積を小さくできるから、載荷試験装置の設置にかかる手間を低減できる。また、周面摩擦抵抗および先端抵抗の両方を精度良く測定できる。
【0023】
杭に押し込み方向の力をかけた場合、引抜き方向の力をかけた場合に比べて、杭先端面の抵抗の分だけ大きな抵抗を得ることができる。そこで、この発明では、反力部材に押込み力が加わるように反力をとったので、上述の補助反力併用方式の先端載荷試験のように反力部材に引抜き力が作用する構造とした場合に比べて、反力杭の杭径や深さ寸法を小さくできる。よって、載荷試験装置の設置や撤去にかかる手間を低減できる。
【0024】
請求項
1に記載の杭の載荷試験
方法は、前記試験杭は、所定深さ(例えば、深さP)以深に構築され、地表面から下方に延びて前記杭本体の上端部に連結される棒状の連結部材(例えば、後述の鋼棒54)を備え、前記杭頭側加力装置は、前記連結部材を上方に引っ張ること
が好ましい。
【0025】
上述の補助反力併用方式の先端載荷試験では、試験杭に押込み力を加えるため、地表面付近まで剛性の高い鉄筋コンクリート構造の杭体を構築して試験杭の座屈破壊を防止する必要がある。さらに、実際の建物に地下躯体を設ける場合には、地下躯体に相当する部分の周面摩擦抵抗が発生しないため、この部分の周面摩擦抵抗を除去する必要がある。
よって、地表面付近まで試験杭の杭体を構築するとともに、地下躯体に相当する部分の周面摩擦抵抗を低減するフリクションカットを行っており、試験杭の構築や解体に手間がかかっていた。
【0026】
本発明では、試験杭に押込み力ではなく引抜き力を加えるため、上述の補助反力併用方式の先端載荷試験のように、地表面付近まで試験杭の剛性の高い杭体を構築する必要がない。
そこで、実際の杭の施工深度に合わせて、試験杭を所定深さ(例えば、深さP)以深に構築し、さらに地表面から下方に延びて杭本体の上端部に連結される棒状の連結部材を設け、杭頭側加力装置により、この連結部材を上方に引っ張ることとした。
よって、試験杭の躯体容積を低減できるうえに、フリクションカットも不要となるから、試験杭の構築や解体にかかる手間を低減できる。
【0027】
請求項
2に記載の杭の載荷試験
方法は、前記試験杭は、所定深さ以深に構築され、地表面から下方に延びて前記杭本体を貫通し、当該杭本体の下端部に連結される棒状の連結部材(例えば、後述の鋼棒54A)を備え、前記杭頭側加力装置は、前記連結部材を上方に引っ張ること
が好ましい。
【0028】
ここで、連結部材の周面を杭本体との付着抵抗を低減する構造(アンボンド)としておく。
【0029】
この発明によれば、実際の杭の施工深度に合わせて、試験杭を所定深さ以深に構築し、さらに地表面から下方に延びて杭本体を貫通し、この杭本体の下端部に連結される棒状の連結部材を設け、杭頭側加力装置によりこの連結部材を上方に引っ張ることとした。
よって、試験杭の躯体容積を低減できるうえに、フリクションカットも不要となるから、試験杭の構築や解体にかかる手間を低減できる。
【0030】
また、周面摩擦抵抗を測定する場合、杭頭側加力装置により反力部材に反力をとって杭本体の下端部を上方に引っ張り上げるので、杭本体に引張力が作用しないから、杭本体の杭体の引張りひび割れの発生を防止して、杭本体の周面摩擦抵抗の分布を正確に測定できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、上述の押込み試験に比べて、反力杭の本数を低減したり、反力杭の杭径を小さくしたりして、反力杭の容積を小さくできるから、載荷試験装置の設置にかかる手間を低減できる。また、周面摩擦抵抗および先端抵抗の両方を精度良く測定できる。また、反力杭に押込み力が加わるように反力をとったので、上述の補助反力併用方式の先端載荷試験のように反力杭に引抜き力が作用する構造とした場合に比べて、反力杭の杭径や深さ寸法を小さくできる。よって、載荷試験装置の設置や撤去にかかる手間を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る載荷試験装置の側面図である。
【
図2】前記実施形態に係る載荷試験装置の動作を説明するための側面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る載荷試験装置の側面図である。
【
図4】本発明の第1の従来例に係る載荷試験装置の側面図である。
【
図5】本発明の第2の従来例に係る載荷試験装置の側面図である。
【
図6】本発明の第3の従来例に係る載荷試験装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る載荷試験装置1の断面図である。
この載荷試験装置1は、地表面2から所定深さ以深に設けられた試験杭10と、試験杭10の先端側に設けられた先端側加力装置としての先端側ジャッキ20と、試験杭10の周囲に構築された複数の反力部材としての反力杭30と、地表面2上でこれら反力杭30の杭頭間に架設された載荷桁40と、載荷桁40上に設けられて伝達機構50を介して地中の試験杭10に加力する杭頭側加力装置としての杭頭側ジャッキ60と、を備える。
【0034】
地表面2から深さPまでの部分は、建物の地下躯体に相当する部分あるいは試験で測定する必要がない部分であり、試験杭10は、この深さP以深に構築されている。
この試験杭10は、円柱状であり、支持層3まで到達している。この試験杭10は、先端側で先端部11と杭本体12とに二分割されており、杭本体12による周面摩擦抵抗が先端部11による先端抵抗よりも大きくなっている。
【0035】
先端側ジャッキ20は、支圧面が上下に位置するように、先端部11と杭本体12との間に設けられている。よって、この先端側ジャッキ20の上側の支圧面は、杭本体12の下端面に当接し、下側の支圧面は、先端部11の上端面に当接している。
この先端側ジャッキ20は、先端部11の上端面と杭本体12の下端面とが離間する方向に加力し、これにより、先端部11に反力をとって杭本体12を上方に押圧する、あるいは、杭本体12に反力をとって先端部11を下方に押圧することが可能となっている。
【0036】
載荷桁40は、試験杭10を跨ぐように、反力杭30間に架設されている。
杭頭側ジャッキ60は、支圧面が上下に位置するように、載荷桁40上でかつ試験杭10の直上の位置に配置されている。よって、杭頭側ジャッキ60の下側の支圧面は、載荷桁40の上面に当接し、杭頭側ジャッキ60は、載荷桁40を介して反力杭30に支持されることになる。
【0037】
伝達機構50は、杭頭側ジャッキ60の上側の支圧面に略水平に設けられた第1水平部材51と、載荷桁40と地表面2との間で略水平に設けられた第2水平部材52と、第1水平部材51から下方に延びて第2水平部材52に連結される棒状の鋼棒53と、第2水平部材52から下方に延びて杭本体12の上端部に連結される棒状の連結部材としての鋼棒54と、を備える。
【0038】
杭頭側ジャッキ60は、載荷桁40と第1水平部材51とが離間する方向に加力し、これにより、載荷桁40を介して反力杭に反力をとって、杭本体12を上方に引っ張ることが可能となっている。
【0039】
載荷試験装置1による先端抵抗および周面摩擦抵抗の測定方法は、以下のようになる。
先端部11による先端抵抗を測定する場合には、
図1中矢印で示すように、先端側ジャッキ20により、杭本体12に反力をとって先端部11を下方に押圧する。
一方、周面摩擦抵抗を測定する場合には、
図2中矢印で示すように、先端側ジャッキ20により、先端部11に反力をとって杭本体12を押圧する。ここで、杭本体12に加える押圧力が不足するため、杭頭側ジャッキ60により、反力杭30に反力をとって杭本体12を上方に引っ張る。これにより、反力杭30には押込み力が作用し、鋼棒53および鋼棒54には引張力が作用する。
【0040】
以上の載荷試験装置1は、以下の手順で構築される。
まず、試験杭10および反力杭30を構築する。この試験杭10を構築する際、試験杭10の先端側に先端側ジャッキ20を取り付けるとともに、試験杭10の杭頭には鋼棒54を取り付けて、鋼棒54の上端側を地表面2から露出させておく。
試験杭10および反力杭30のコンクリートの養生期間を経過させた後、載荷桁40および杭頭側ジャッキ60を設置する。
次に、第1水平部材51、鋼棒53、第2水平部材52を取り付けて、地表面2から露出した鋼棒54を第2水平部材52に連結する。
【0041】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)押込み試験に比べて、反力杭の本数を低減したり、反力杭の杭径を小さくしたりできる。反力杭30には押込み力が作用するので、反力杭30の容積を小さくできるから、載荷試験装置1の設置にかかる手間を低減できる。また、周面摩擦抵抗および先端抵抗の両方を精度良く測定できる。
【0042】
杭に押し込み方向の力をかけた場合、引抜き方向の力をかけた場合に比べて、杭先端面の抵抗の分だけ大きな抵抗を得ることができる。そこで、この載荷試験装置1によれば、反力杭30に押込み力が加わるように反力をとったので、補助反力併用方式の先端載荷試験のように反力杭に引抜き力が作用する構造とした場合に比べて、反力杭30の杭径や深さ寸法を小さくできる。よって、載荷試験装置1の設置や撤去にかかる手間を低減できる。
【0043】
(2)実際の杭の施工深度に合わせて、試験杭10を所定深さP以深に構築し、さらに地表面2から下方に延びて杭本体12の上端部に連結される棒状の鋼棒54を設け、杭頭側ジャッキ60により、この鋼棒54を上方に引っ張ることとした。
よって、試験杭10の躯体容積を低減できるうえに、フリクションカットも不要となるから、試験杭10の構築や解体にかかる手間を低減できる。
【0044】
〔第2実施形態〕
図3は、本発明の第2実施形態に係る載荷試験装置1Aの側面図である。
本実施形態では、連結部材としての鋼棒54Aが、地表面2から下方に延びて杭本体12を貫通し、この杭本体12の下端部に連結される点が、第1実施形態と異なる。
この鋼棒54Aの周面は、杭本体12との付着抵抗を低減する構造(アンボンド)となっている。
【0045】
本実施形態によれば、上述の(1)、(2)に加えて、以下のような効果がある。
(3)周面摩擦抵抗を測定する場合、杭頭側ジャッキ60により反力杭30に反力をとって杭本体12の下端部を上方に引っ張り上げるので、杭本体12に引張力が作用しないから、杭本体12の引張りひび割れの発生を防止して、杭本体12の周面摩擦抵抗の分布を正確に測定できる。
【0046】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
1、1A…載荷試験装置
2…地表面
3…支持層
10…試験杭
11…先端部
12…杭本体
20…先端側ジャッキ(先端側加力装置)
30…反力杭(反力部材)
40…載荷桁
50…伝達機構
51…第1水平部材
52…第2水平部材
53…鋼棒
54、54A…鋼棒(連結部材)
60…杭頭側ジャッキ(杭頭側加力装置)
100、200、300…従来の載荷試験装置
110…試験杭
111…先端部
112…杭本体
130…反力杭
140…載荷桁
160…杭頭側加力装置
170…鋼管
210…先端側加力装置
P…所定深さ