【文献】
片上直人,頸動脈エコー法の臨床 撮り方と読み方 超音波後方散乱(IBS),モダンフィジシャン,日本,株式会社 新興医学出版社,2007年10月15日,Vol.27 No.10,P.1402-1405
【文献】
嶋田裕史,Integrated Backscatter 解析を用いた頸動脈プラークの定量的超音波輝度解析,Neurosonology,日本,日本脳神経超音波学会,2005年 7月,vol 18 no 1 July 2005,P.24-28
【文献】
金永進,超音波integrated backscatterを用いた頸動脈狭窄病変の組織性状診断,脳卒中の外科,日本,日本脳卒中の外科学会,2001年11月30日,第29巻6号,P.402-407
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1から3のいずれか一に記載の頸動脈プラークのエコー画像生成方法であって、該エコー画像が動脈硬化に関する情報を含むことを特徴とするエコー画像生成方法。
請求項1から3のいずれか一に記載の頸動脈プラークのエコー画像生成方法であって、該エコー画像が頸動脈プラークに関する薬剤の効用に関する情報を含むことを特徴とするエコー画像生成方法。
頸動脈エコーのIBS法で得られた頸動脈プラークのエコー画像の撮像時に得られたエコー信号の原信号を、該エコー画像を構成する基準領域毎に取得する取得手段(10)と、
予め原信号の取り得る範囲が複数の色分け範囲に区分され、各区分に異なる色が割り当てられた対応関係を保持する記憶手段(40)と、
エコー画像に含まれる各基準領域について、前記記憶手段(40)を参照して、該基準領域の原信号が属する区分を判別し、さらに該区分に割り当てられた色に、該エコー画像の基準領域を着色する着色手段(22)と、
前記着色手段(22)で着色されたエコー画像を表示させる表示部(30)と、
前記表示部(30)に表示されたエコー画像上の任意の領域を指定する操作手段(50)と、
前記操作手段(50)で指定された領域のエコー信号から導き出される深度毎のIB値の分布を示すヒストグラムを用いて、前記ヒストグラムの極大値が原信号の最大値になるように設定し、又は極小値が原信号の最小値になるように設定する補正手段と、
を備え、
前記原信号を区分する色分け範囲の内、高輝度の色分け範囲が赤色に着色され、低輝度の色分け範囲が緑色又は青色に着色されるように、前記記憶手段(40)に、色分け範囲に割り当てられた色の対応関係が保持されてなることを特徴とする頸動脈プラークの評価装置。
【背景技術】
【0002】
頸動脈プラークの性状を診断することは、脳卒中のリスクが判るだけでなく、心臓の虚血イベントの予測や、スタチン系脂質異常症治療剤の治療効果の判定に利用可能である。特に糖尿病患者においては、患者の予後やQOLを決定する重要な診断項目である。
【0003】
現在、侵襲的なプラーク性状の診断には、血管内超音波検査(IVUS:intravascular ultrasound)が行われているが、カテーテル型の超音波探索子(プローブ)を血管内に挿入するカテーテル検査が必要であり、誰にでも施行できるものではなく、入院が必要になる等、繰り返し行うことは困難であった。
【0004】
これに対して、非侵襲的な性状の診断には、CTやMRIが用いられる。しかしながら、CTには放射線被曝の問題があり、MRIは解像度が良くないといった問題がある。また、CTもMRIも大がかりな装置を必要とするため、一般診療所や外来で気軽に行える検査ではない。
【0005】
その一方で、エコーを用いて、頸動脈中に存在するプラークの性状を検査する頸動脈エコー検査も行われている。頸動脈エコー検査では、プラークのエコー性状から組織性状診断が可能であるとされている。一般的には、血液の輝度に近い低輝度プラークは粥腫や血腫、内中膜や筋肉に近い等輝度プラークは線維性変化、骨に近い高輝度プラークは石灰化病変を反映すると言われている。このような輝度の高低に基づいて、プラークの診断を行うことで、脳血管系の梗塞リスクを予測すると共に、心臓冠動脈に関する梗塞リスクを予測することができる。この頸動脈エコー検査は、外来ですぐにできる非侵襲的な検査である。
【0006】
このような頸動脈プラークのエコー輝度は、動脈硬化の病変組織所見を反映すると考えられている(非特許文献3)。一般に、エコー画像中に含まれるエコー輝度の低いプラークは脂質やマクロファージが豊富で、不安定プラークと呼ばれる。またエコー輝度の高いプラークは、線維化や石灰化が進んだプラークで、安定プラークと呼ばれる。
図1に、冠動脈障害(イベント)が数十年間に発生した頻度を、頸動脈プラークのエコー画像中に、低エコー輝度のプラークが含まれているかどうかで比較したグラフを示す。この図が示すように、頸動脈に低エコー輝度プラークが存在する方が、高エコー輝度プラークが存在する場合よりもイベントが発生し易いことが報告されている。すなわち、頸動脈の低エコー輝度プラークが多く存在する程、冠動脈の脆弱性、不安定性を示すと言われている(非特許文献4)。
【0007】
しかしながら、このような頸動脈エコー検査では定量的でない、定性的な判定となるため、施術者の技術によって検査評価が異なり、同じプラークでも検者や機器により診断が異なる可能性があり、プラーク性状の的確な評価が難しいという問題があった(非特許文献1)。特に、エコー装置(超音波診断装置)で撮像したエコー画像はグレースケール画像であり、上述の通り頸動脈エコー検査におけるプラーク性状の評価は、グレースケールのエコー画像を肉眼で識別し評価することとなる。しかしながら、グレースケールで表示されるエコー輝度に基づいて、肉眼でプラークの性状を分類しようとしても、輝度の高低の基準が曖昧で定量的な評価が困難であった。例えば評価者が独自の判断や嗜好に基づいて、エコー画像のゲインや濃淡の輝度、コントラストを調整するため、同じエコー装置で同じ患者のエコー画像を撮像しても、人によって輝度が異なってしまう。この結果、画像間の対比が困難となり、同一患者の経時的な変化の追跡や、他の患者との症例の比較が適切に行えないという問題があった。さらに、高度石灰化病変や、内頸動脈などの高位病変、血管蛇行等では、プラークの性状評価が困難であった。
【0008】
また、プラークのエコー輝度は、エコー装置のゲイン調整や画像調整機能により変化する。例えば
図17に示すように、エコー装置のゲインを45、50、66に設定すると、
図17A、
図17B、
図17Cに示すようにプラークのエコー輝度も変化する。このため、同じ対象を撮像したエコー画像でもエコー輝度が異なることとなり、エコー輝度に基づいて定量的な判別を行うことが困難なことが判る。
【0009】
加えて、従来のエコー画像におけるグレースケールの表現は、エコー画像を構成する各ピクセルの輝度値である。しかしながら、エコー画像の生成過程で多くのフィルタリング処理が加えられるため、エコーを測定したエコー装置の差によっても輝度値が異なっている。例えば、
図18に示すように、超音波プローブで測定された生データ(RAWデータ)である超音波反射信号(エコー信号)のRF信号波形を、増幅し、整流化し、検波し、パルス圧縮し、さらに増幅して輝度値に変換するといった処理が行われている。このようなフィルタリング処理は、エコー装置毎に異なるため、同じRF信号であっても、生成されるエコー画像のグレースケールは異なってしまうという問題もあった。
【0010】
このような問題に対して、頸動脈エコー検査の改良の一例として、イメージング剤としてヒドラジドコンジュゲート剤を使用し、プラークの性状を検出、モニタする方法が開発されている(特許文献1)。また他の方法としては、エコー装置の改良や画像処理方法の改良等が考えられるが、現在ところ成功しているとは考えられない。
【0011】
その一方で、頸動脈でなく、心臓の冠動脈検査で使用されているIVUSでは、カテーテルを血管内に挿入する侵襲的な方法ではあるものの、血管内での直接的なエコー反射波の解析であるため、良質なエコー反射波が得られ、エコー画像も良質となり、種々の画像処理方法が検討されている(特許文献2、非特許文献2)。
【0012】
しかしながら、この方法を頸動脈の非侵襲な解析に適用しようとしても、皮膚や組織を透過してのエコー照射となり、その反射波を解析することから単純な応用は困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、従来のこのような背景に鑑みて成されたものである。本発明の主な目的は、頸動脈のプラークを視覚的に容易に評価でき、しかも評価の指標を定量的にした頸動脈プラークのエコー画像生成方法、頸動脈プラークの評価装置及び評価プログラム並びにコンピュータで読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る頸動脈プラークのエコー画像生成方法によれば、頸動脈エコーのIBS法で得られた頸動脈プラークのエコー画像の撮像時に得られたエコー信号の単位時間当たりの積分量
である原信号を、該エコー画像を構成する画素毎に取得する工程と、予め積分量の取り得る範囲を複数の色分け範囲に区分すると共に、各区分に異なる色が割り当てられた対応関係を参照し、前記取得されたエコー画像に含まれる各画素について、該画素の積分量が属する区分を判別し、さらに該区分に割り当てられた色に、該エコー画像の画素を着色する工程と、前記着色されたエコー画像を表示部30に表示させる工程と
、前記表示部30に表示されたエコー画像上の任意の領域を指定する工程と、前記エコー画像で指定された領域のエコー信号から導き出される深度毎のIB値の分布を示すヒストグラムを用いて、前記ヒストグラムの極大値が原信号の最大値になるように設定し、又は極小値が原信号の最小値になるように設定して補正する工程とを含むことができる。これにより、従来は専門家でも判別が容易でなかった単なるグレースケールの濃淡画像でなく、頸動脈プラークのエコー画像を着色されたカラー画像で表示できるため、初心者でも判別が容易となる。例えば薬効の確認も視覚的に行え、患者に対するインフォームドコンセントの実施にも有用となる。
【0017】
また第2の側面に係る頸動脈プラークのエコー画像生成方法によれば、前記積分量を区分する色分け範囲を、
a)0〜−55dBの範囲、
b)−55〜−65dBの範囲、
c)−65〜−75dBの範囲、
d)−75dB以下の範囲
に区分できる。これにより、頸動脈プラークの性状を色分けして分かり易く表示できることから、プラーク組成内容の経時的な微妙な変化を捉えることが可能となる。
【0018】
さらに第3の側面に係る頸動脈プラークのエコー画像生成方法によれば、前記色分け範囲の区分に割り当てる色が、
a)0〜−55dBの範囲を赤色とし、
b)−55〜−65dBの範囲を黄色とし、
c)−65〜−75dBの範囲を緑色とし、
d)−75dB以下の範囲を青色とすることができる。
【0019】
さらにまた第4の側面に係る頸動脈プラークのエコー画像生成方法によれば、該エコー画像が動脈硬化に関する情報を含むものである。これにより、動脈硬化の早期診断を行うことができる。特に頸動脈のプラークの性状変化を明瞭にできることから、患者に対する脂質異常症治療薬の有効性評価にも活用できる。
【0020】
さらにまた第5の側面に係る頸動脈プラークのエコー画像生成方法によれば、該エコー画像が頸動脈プラークに関する薬剤の効用に関する情報を含むものである。この頸動脈プラークのエコー画像を用いて、頸動脈プラークを持つ患者に対する薬剤の効果を判定することができる。これにより、各種薬剤によるプラーク安定化の評価も可能となる。
【0021】
さらにまた第6の側面に係る頸動脈プラークのエコー画像生成方法によれば、前記薬剤をスタチン系薬剤とできる。
【0022】
さらにまた第7の側面に係る頸動脈プラークのエコー画像生成方法によれば、前記スタチン系薬剤を、アトルバスタチン、シンバスタチン、セリバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、メバスタチン、ロスバスタチン、ロバスタチンの中から選択されるいずれか一とできる。
【0023】
さらにまた第8の側面に係る頸動脈プラークの評価装置によれば、頸動脈エコーのIBS法で得られた頸動脈プラークのエコー画像の撮像時に得られたエコー信号の原信号を、該エコー画像を構成する基準領域毎に取得する取得手段10と、予め原信号の取り得る範囲が複数の色分け範囲に区分され、各区分に異なる色が割り当てられた対応関係を保持する記憶手段40と、エコー画像に含まれる各基準領域について、前記記憶手段40を参照して、該基準領域の原信号が属する区分を判別し、さらに該区分に割り当てられた色に、該エコー画像の基準領域を着色する着色手段22と、前記着色手段22で着色されたエコー画像を表示させる表示部30と
、前記表示部30に表示されたエコー画像上の任意の領域を指定する操作手段50と、前記操作手段50で指定された領域のエコー信号から導き出される深度毎のIB値の分布を示すヒストグラムを用いて、前記ヒストグラムの極大値が原信号の最大値になるように設定し、又は極小値が原信号の最小値になるように設定する補正手段とを備え、前記原信号を区分する色分け範囲の内、高輝度の色分け範囲が赤色に着色され、低輝度の色分け範囲が緑色又は青色に着色されるように、前記記憶手段40に、色分け範囲に割り当てられた色の対応関係を保持することができる。これにより、頸動脈エコーのプラーク画像を分かりやすく着色して表示し、微妙な経時的変化を判別し易くすることができる。また頸動脈エコーの画像解析に基づいて、血管系の障害を早期に診断可能となる。
【0024】
さらにまた第9の側面に係る頸動脈プラークの評価装置によれば、前記エコー画像を構成する基準領域が、エコー画像を構成する画素とできる。
【0025】
さらにまた
実施の形態に係る頸動脈プラークの評価装置によれば、前記原信号を、IBS法で得られた頸動脈プラークのエコー信号とできる。
【0026】
さらにまた第
10の側面に係る頸動脈プラークの評価装置によれば、前記原信号が、前記エコー画像における特定の部位の値を基準として補正可能であり、補正後の原信号に基づいて、前記着色手段22が前記記憶手段40に保持された対応関係に基づいて前記エコー画像を着色し前記表示部30に表示されるよう構成できる。これにより、エコー画像中から共通する部位を選択して、これを統一的な基準として原信号を補正することで、異なるエコー画像で色分けが共通化され、ばらつきの少ないより安定した診断が可能となる。
【0027】
さらにまた第
11の側面に係る頸動脈プラークの評価装置によれば、前記原信号を、前記エコー画像において血液部分に相当する値が、原信号の取り得る範囲の最小値となるように補正できる。これにより、血液部分に該当するエコー画像の原信号が最小となるように共通化して、エコー画像間の差異を低減できる。
【0028】
さらにまた第
12の側面に係る頸動脈プラークの評価装置によれば、前記原信号を、前記エコー画像において血管部分に相当する値が、原信号の取り得る範囲の最大値となるように補正できる。これにより、血管部分に該当するエコー画像の原信号が最大となるように共通化して、エコー画像間の差異を低減できる。
【0029】
さらにまた
実施の形態に係る頸動脈プラークの評価装置によれば、前記原信号を、エコー画像の撮像時に得られたエコー信号の単位時間当たりの積分量とできる。
【0030】
さらにまた第
13の側面に係る頸動脈プラークの評価装置によれば、前記表示部30を、積分量をヒストグラムとして表示可能に構成できる。これにより、ヒストグラムで積分量を視覚的に容易に把握できる。
【0031】
さらにまた第
14の側面に係る頸動脈プラークの評価装置によれば
、前記表示部30にエコー画像を表示させた状態で、前記操作手段50により血管内腔を指定することで、該血管内腔の位置に対応する積分量を、積分量の最小値として補正可能に構成できる。これにより、プラークの存在しない血管内腔の血液に基づいて積分量を補正でき、患者毎の差が少ない頸動脈プラークの評価が可能となる。
【0032】
さらにまた第
15の側面に係る頸動脈プラークの評価装置によれば
、前記表示部30にエコー画像を表示させた状態で、前記操作手段50により血管外膜を指定することで、該血管外膜の位置に対応する積分量を、積分量の最大値として補正可能に構成できる。これにより、プラークの存在しない血管外膜の組織に基づいて積分量を補正でき、患者毎の差が少ない頸動脈プラークの評価が可能となる。
【0033】
さらにまた第
16の側面に係る頸動脈プラークの評価装置によれば、さらに前記表示部30に表示されるエコー画像上で、頸動脈プラークの範囲を指定可能な範囲指定手段を備えており、前記着色手段22は、前記範囲指定手段で指定された指定領域RIに基づいて、頸動脈プラークに対して着色表示を行うよう構成できる。これにより、着色表示したい頸動脈プラークの範囲を指定できるため、必要な部位のみを着色表示した見易い画面を構成できる。
【0034】
さらにまた第
17の側面に係る頸動脈プラークの評価装置によれば、前記範囲指定手段で複数の指定領域RIを指定可能とすると共に、各指定領域RIに識別番号を付与可能に構成できる。これにより、複数の指定領域を識別番号で区別でき、ユーザーは複数の指定領域を混同することなく確認できる。
【0035】
さらにまた第
18の側面に係る頸動脈プラークの評価装置によれば、前記着色手段22で着色された各着色領域が占める比率を、前記表示部30上にグラフで表示可能に構成できる。これにより、頸動脈プラークの種別を、例えば赤色を石灰化されたプラーク、黄色を重厚な線維状のプラーク、緑色を線維化されたプラーク、青色を脂質状のプラークとして、その比率をグラフで視覚的に比較でき、性状の評価を定量的に行える利点が得られる。
【0036】
さらにまた第
19の側面に係る頸動脈プラークの評価装置によれば、前記表示部30上において、2枚のエコー画像を一画面で表示可能な分割表示領域を設けており、エコー画像を一方の分割表示領域にそのまま表示させると共に、他方の分割表示領域に、該エコー画像を前記着色手段22で着色された着色画像を表示可能に構成できる。これにより、頸動脈プラークの着色状態を元画像と対比しながら表示させたり、あるいは経時変化を一画面で確認できるなど、視認性を高めることができる。
【0037】
さらにまた第
20の側面に係る頸動脈プラークの評価装置によれば、前記取得手段10を、外部の超音波プローブで取得されたエコー画像の原信号を保持したメモリ媒体を読み取る読取手段とできる。これにより、エコー装置で撮像したエコー画像を評価装置に取り込んで、頸動脈プラークを評価できるので、RAWデータ出力が可能な既存のエコー装置を用いた診断に適用できる利点が得られる。
【0038】
さらにまた第
21の側面に係る頸動脈プラークの評価装置によれば、前記取得手段10を、エコー画像10Bを撮像する超音波プローブとできる。これにより、エコー装置自体に頸動脈プラークの診断機能を組み込んで、撮像したエコー画像に対して表示部上で着色を行うことができる。
【0039】
さらにまた第
22の側面に係る頸動脈プラークの評価プログラムによれば、コンピュータに、頸動脈エコーのIBS法で得られた頸動脈プラークのエコー画像の撮像時に得られたエコー信号の原信号を、該エコー画像を構成する領域毎に取得する取得機能と、予め原信号の取り得る範囲が複数の色分け範囲に区分され、各区分に異なる色が割り当てられた対応関係を保持するテーブル保持機能と、エコー画像に含まれる各領域について、前記テーブル保持機能を参照して、該領域の原信号が属する区分を判別し、さらに該区分に割り当てられた色に、該エコー画像の領域を着色する着色機能と、前記着色機能で着色されたエコー画像を表示させる表示機能と
、前記表示部に表示されたエコー画像上の任意の領域を指定する指定機能と、前記指定機能された領域のエコー信号から導き出される深度毎のIB値の分布を示すヒストグラムを用いて、前記ヒストグラムの極大値が原信号の最大値になるように設定し、又は極小値が原信号の最小値になるように設定して補正する補正機能とを実現させることができる。これにより、従来は専門家でも判別が容易でなかった単なるグレースケールの濃淡画像でなく、頸動脈プラークのエコー画像を着色されたカラー画像で表示できるため、初心者でも判別が容易となる。例えば薬効の確認も視覚的に行え、患者に対するインフォームドコンセントの実施にも有用となる。
【0040】
さらにまた第
23の側面に係るコンピュータで読み取り可能な記録媒体は、前記プログラムを格納したものである。記録媒体には、CD−ROM、CD−R、CD−RWやフレキシブルディスク、磁気テープ、MO、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、Blu−ray
(登録商標)、HD DVD(AOD)等の磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリその他のプログラムを格納可能な媒体が含まれる。またプログラムには、前記記録媒体に格納されて配布されるものの他、インターネット等のネットワーク回線を通じてダウンロードによって配布される形態のものも含まれる。さらに記録媒体にはプログラムを記録可能な機器、例えば前記プログラムがソフトウエアやファームウエア等の形態で実行可能な状態に実装された汎用もしくは専用機器を含む。さらにまたプログラムに含まれる各処理や機能は、コンピュータで実行可能なプログラムソフトウエアにより実行してもよいし、各部の処理を所定のゲートアレイ(FPGA、ASIC)等のハードウエア、又はプログラムソフトウエアとハードウエアの一部の要素を実現する部分的ハードウエアモジュールとが混在する形式で実現してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための頸動脈プラークのエコー画像生成方法、頸動脈プラークの評価装置及び評価プログラム並びにコンピュータで読み取り可能な記録媒体を例示するものであって、本発明は頸動脈プラークのエコー画像生成方法、頸動脈プラークの評価装置及び評価プログラム並びにコンピュータで読み取り可能な記録媒体を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0043】
本発明の実施例において使用される頸動脈プラークの評価装置及び評価プログラムとこれに接続される操作、制御、表示、その他の処理等のためのコンピュータ、プリンタ、外部記憶装置その他の周辺機器との接続は、例えばIEEE1394、RS−232xやRS−422、RS−423、RS−485、USB等のシリアル接続、パラレル接続、あるいは10BASE−T、100BASE−TX、1000BASE−T等のネットワークを介して電気的、あるいは磁気的、光学的に接続して通信を行う。接続は有線を使った物理的な接続に限られず、IEEE802.1x等の無線LANやBluetooth(登録商標)等の電波、赤外線、光通信等を利用した無線接続等でもよい。さらにデータの交換や設定の保存等を行うための記録媒体には、メモリカードや磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が利用できる。なお本明細書において頸動脈プラークの評価装置及び評価プログラムとは、頸動脈プラークの評価装置本体のみならず、これにコンピュータ、外部記憶装置等の周辺機器を組み合わせた評価システムも含む意味で使用する。
【0044】
また、本明細書において頸動脈プラークの評価装置及び評価プログラムは、頸動脈プラークの評価を行うシステムそのもの、ならびに頸動脈プラークの評価に関連する入出力、表示、演算、通信その他の処理をハードウエア的に行う装置や方法に限定するものではない。ソフトウエア的に処理を実現する装置や方法も本発明の範囲内に包含する。例えば汎用の回路やコンピュータにソフトウエアやプログラム、プラグイン、オブジェクト、ライブラリ、アプレット、コンパイラ、モジュール、特定のプログラム上で動作するマクロ等を組み込んで画像生成そのものあるいはこれに関連する処理を可能とした装置やシステムも、本発明の頸動脈プラークの評価装置及び評価プログラムに該当する。また本明細書においてコンピュータには、汎用あるいは専用の電子計算機の他、ワークステーション、端末、携帯型電子機器その他の電子デバイスも包含する。さらに本明細書においてプログラムとは、単体で使用されるものに限られず、特定のコンピュータプログラムやソフトウエア、サービス等の一部として機能する態様や、必要時に呼び出されて機能する態様、OS等の環境においてサービスとして提供される態様、環境に常駐して動作する態様、バックグラウンドで動作する態様やその他の支援プログラムという位置付けで使用することもできる。
【0045】
なお本明細書において「頸動脈プラークの性状判定方法」とは、IBS法に基づくデータ処理により、プラークを色分けして可視化する方法を意味する。ここで「IBS(integrated backscatter)法)」とは、エコー照射の反射信号を解析する手法である。即ち、エコーの波長より充分小さな反射体から返ってくるBS(backscatter)信号には、組織内部からの微弱な超音波の反射が含まれていることから、その信号の単位時間当たりの積分を行なうことで、組織性状を反映したデータを取得する手法である(The Lipid Vol.18,53(2007))。
【0046】
また本明細書において「エコー輝度」とは、日本におけるエコー診断のガイドラインに準じるものであり、低輝度、等輝度、高輝度の3つに分類されるものである。低輝度とはB−modeのみで見え難いもの、等輝度とは筋肉または内中膜の輝度に近いもの、高輝度とは骨と同程度の輝度とされている。またエコー輝度はプラークの病理組織性状を反映するとされており、低輝度プラークは粥腫やプラーク内出血や脂質に対応し、等輝度プラークは線維性病変、高輝度プラークは石灰化病変と対応している。そこで本明細書では、IBS法のデータに基き、4段階に区分して、色分けして表記し、プラークの性状を見やすくしている。
(頸動脈プラークの評価装置)
【0047】
図19に、頸動脈プラークの評価装置のブロック図を示す。この図に示す評価装置100は、取得手段10と、演算部20と、表示部30と、記憶手段40と、操作手段50、画像メモリ12を備えている。ここでは評価装置100は、
図20に示すように、別途用意したエコー装置UD(超音波診断装置)で撮像するエコー画像の元となる超音波反射信号(エコー信号)の原信号を取得手段10から取り込み、このエコー画像上にプラークの性状に応じて演算部20で着色した着色画像を、表示部30に表示させるシステムを示している。
【0048】
ここでは頸動脈プラークの評価装置100として、頸動脈プラークの評価プログラム(後述)をインストールしたコンピュータを用いている。なお、頸動脈プラークの評価装置は、この構成に限られるものでなく、例えば専用のハードウェアで構成した評価装置を用いることもできる。または、エコー装置自体に頸動脈プログラムの評価機能を組み込むことも可能である。この方法であれば、エコー装置上でエコー画像を表示した段階で、プラークの性状を着色画像によって視覚的にリアルタイムに把握できる。
【0049】
図19の評価装置100において、取得手段10は、頸動脈プラークのエコー画像の撮像時に得られたエコー信号の原信号を、このエコー画像を構成する基準領域毎に取得する。この原信号は、好ましくはエコー信号のRF信号である。いいかえると、エコー装置などで各種のフィルタリング処理(例えば平滑化、ノイズ除去、エッジ強調、濃度変換による強調、ヒストグラム変換による強調など)を行う前の生データ(RAWデータ)である。このような生データの信号強度は、エコー装置の差や設定に影響されず、本来の生体組織性状を反映したものであるため、定量的な評価が可能となる。
【0050】
ここでは、原信号として超音波後方散乱(IBS:integrated backscatter)法で得られたRF信号を用いている。これによって、GSM(gray-scale median)のような、診断機器間の差や機器設定条件の差の影響を受けず、従来のエコー画像の輝度に基づいた低輝度、等輝度、高輝度という定性的な評価よりも、より定量的な指標での評価が可能となる。
【0051】
また原信号は、エコー信号の単位時間当たりの積分量(IB値)としている。このため、エコー信号を取得するエコー装置UD側で、このようなIB値の出力に対応することが必要となる。例えば、信号処理前の原信号をそのまま出力したり、あるいは信号処理後のデータから、原信号に逆変換する変換機能を備えた原信号出力手段81を、エコー装置UDが備えている。
図19に示すエコー装置UDは、エコー画像を撮像する超音波プローブ80と、エコー装置UDを制御するコントローラ82と、原信号出力手段81を備えている。さらに原信号出力手段81は、このような原信号を評価装置100に送るための機能、例えばメモリ媒体へのデータ書き出しや、データ通信により原信号を有線又は無線で出力する通信機能を備えることが好ましい。なお、以下の例では、エコー画像としてIB画像を示している。エコー画像はIB値から生成されて、画像メモリ12上に展開される。
(取得手段10)
【0052】
取得手段10は、
図20の例では、エコー装置UDで撮像されたエコー画像の原信号を保持したメモリ媒体を読み取る読取手段としている。例えばUSBメモリやSDカード(商品名)等の半導体メモリに、エコー装置UDで得たIB信号を一旦保存して、これを評価装置100に接続してデータを読み込むインターフェースを備えることができる。このような読取装置としては、半導体メモリの規格に応じたカードリーダやディスクドライブ、あるいはUSBメモリ等の場合はUSBポートなどが該当する。この構成であれば、既存のエコー装置でも、IB値などの原信号を書き出す機能さえ備えておれば、これを利用でき、特別な装置の付加や改造などを要さずに、既存の施設への適用が容易になる利点が得られる。
【0053】
あるいは、このような半導体メモリを介することなく、上述の通り有線や無線(WiFi
(登録商標)やBluetooth(登録商標)、赤外線、光通信等)でエコー装置から評価装置に直接、原信号を送出することもできる。
(演算部20)
【0054】
またエコー画像を構成する基準領域は、好ましくは画素とする。画素毎のIB値に対して、色分け処理を行う。この処理は、演算部20で行われる。演算部20は、着色手段22を備えており、また記憶手段40が演算部20と接続されている。記憶手段40は、予め原信号の取り得る範囲が複数の色分け範囲に区分され、各区分に異なる色が割り当てられた対応関係を保持している。そして着色手段22は、エコー画像に含まれる各基準領域について、記憶手段40を参照して、該基準領域の原信号が属する区分を判別し、さらに該区分に割り当てられた色に、該エコー画像の基準領域を着色する。
【0055】
ここで、記憶手段40は、ROM等の記憶素子が利用でき、原信号の値と色との対応関係を示した割り当てテーブルを保持している。例えば、IB値を以下のa)〜d)の4つの区分に分けて、さらに各区分に異なる色を割り当てている。
a)0〜−55dB:赤色(石灰化の状態を示す。)
b)−55〜−65dB:黄色(重厚な線維化の状態を示す。)
c)−65〜−75dB:緑色(線維化の状態を示す。)
d)−75dB以下:青色(脂質の状態を示す。)
【0056】
色分けとしては、見易くするものであれば特に限定するものではないが、この例では高輝度から順に赤色、黄色、緑色、青色としている。
【0057】
この対応関係に従って、着色手段22は各IB値の色を決定し、エコー画像に対して、各IB値に対応する位置の画素を、この割り当てられた色にそれぞれ着色する。なお、このような着色はエコー画像のすべてに対して行うのでなく、指定された指定領域RI内で行う。すなわち、予めプラークに対応する領域を指定領域RIとして指定しておくことで、この領域のみを着色して表示できるので、ユーザーは必要な部位のみ、すなわちプラークのみが色分けして表示された着色画像を確認でき、視認性に優れる。
【0058】
操作手段50は、このような指定領域RIを指定するための部材であり、マウスなどのポインティングデバイスが利用できる。また、指定領域RIの指定は、マウスで矩形や円形などの規定の図形を指定する方法の他、自由曲線で囲む方法、あるいはエッジ検出などの画像処理によって自動的に指定する方法などが適宜利用できる。
【0059】
また、エコー画像や着色画像は、表示手段で表示される。表示手段は、液晶ディスプレイやCRT、有機ELなどのモニタが利用できる。
【0060】
なお、頸動脈プラークの評価装置は、上述した構成に限られるものでなく、例えばエコー装置自体に組み込むことも可能である。例えば
図21に示す構成では、エコー装置と評価装置を個別の部材とせず、これらを統合した評価装置200としている。この場合は、取得手段10Bとして、エコー画像を撮像する超音波プローブを利用できる。この構成であれば、エコー装置を兼ねる評価装置200で撮像したエコー画像に対して、表示部30上で表示した段階でリアルタイムに着色を行うことができ、プラークの性状を着色画像によって視覚的にリアルタイムに把握できる利点が得られる。
(頸動脈プラークの評価プログラム)
【0061】
図22、
図23に頸動脈プラークの評価プログラムのユーザーインターフェース画面を示す。これらの図に示す評価プログラムは、
図20に示すコンピュータPC上で実行される。よって
図20においては、評価プログラムをインストールしたコンピュータPCが、頸動脈プラークの評価装置を構成する。これらの画面60において、左側にはエコー画像を表示する画像表示領域62を、右側には各種設定や解析結果の表示を行う操作領域61を、それぞれ設けている。この評価プログラムは、エコー画像に対して着色処理を行うイメージングアプリケーションである。以下、評価プログラムを用いて、エコー画像の着色を行う手順を、
図24のフローチャートに基づいて説明する。
(ステップS2401:原信号データの取得)
【0062】
まずステップS2401において、原信号データの取得を行う。具体的には、画像表示領域62に設けられた「ファイル選択」タブ63を選択し、エコー画像の原信号の入力を行う。ここでは、半導体メモリ等の外部ストレージ、あるいは既に評価装置に保存済みのデータ中から、取り込むエコー画像の画像データを選択する。
(ステップS2402:指定領域RIの選択)
【0063】
画像データが選択されると、画像表示領域62が「解析画面」タブ64に切り替えられ、エコー画像の画像データが表示される。この状態で、ユーザーは操作手段50であるマウスなどを操作して、着色処理の対象となる領域を指定する(ステップS2402)。ここでは、頸動脈プラークを指定するため、マウスで線分を連続的に指定して閉領域を指定し、指定領域RIとしている。ここで、指定領域RIは複数指定することもできる。また、各指定領域RIには指定された順に識別番号が付与される。ここでは、指定領域RIの右上に識別番号として「1」が画像表示領域62上に表示されている。例えば、各指定領域毎に、該領域を囲む枠の色を変化させると共に、この枠の色と同じ色に識別情報を着色して表示させることで、複数の指定領域の区別を視覚的に容易に行える。なお、指定領域をユーザーに指定させることなく、画像処理によって自動で対象領域を指定させたり、あるいはエコー画像の全体に対して着色処理を実行させることも可能であり、この場合は指定領域の指定を省略できることはいうまでもない。
(ステップS2403:着色処理)
【0064】
このようにして指定領域RIが指定されると、着色手段22により着色処理が実行される(ステップS2403)。着色処理の実行は、表示切替手段から行われる。ここでは表示切替手段として、ツールバーに設けられた切替ラジオボタン65で、「領域編集」から「カラーマップ」に切り替える。これによって、
図22、
図23に示すように、指定領域RI内で着色処理が行われた着色画像が、画像表示領域62に表示される。なお、切替ラジオボタン65を「元画像」に切り替えると、着色前の元画像の表示に、「領域編集」に切り替えると、指定領域RIの選択画面に、それぞれ画像表示領域62の表示モードを切り替えることができる。この構成は一例であって、例えば着色処理の実行は専用の実行ボタンを押下して行わせることもできる。
(画面分割手段)
【0065】
また
図22、
図23の例では、画像表示領域62を2画面に分割し、同じエコー画像を、左側では元画像、右側では着色画像で、それぞれ表示させている。これによって、着色状態が対比し易くなり、ユーザーは元画像と着色画像の整合性や妥当性を確認しながら、頸動脈プラークの性状を評価できる。このような2画面表示の切り替えは、画面分割手段で行われる。ここでは、ツールバーに設けられた「2画面表示」チェックボックス66をONにすることで、このような2画面表示にできる。またこのチェックボックス66をOFFにすると、1画面の表示となり、画像表示領域62全体を使ってエコー画像を大きく表示させることができる。
【0066】
さらに操作領域61は、
図22のように「解析結果」タブ71を選択した状態では、各色分け範囲に属する領域の面積が、それぞれ表示される。ここでは、指定領域RIが1のみ指定されているので、指定領域1の色分け範囲の分布状態が操作領域61の中段に、また画像全体の色分け範囲の分布状態が上段に、それぞれ表示されている。また、ここでは表形式で表示されているが、後述する
図7等のように、円グラフ状に表示させることもできる。あるいは、
図10等のようにIB値をヒストグラム状に表示させることもできる。このように、表示形態を適宜変更して、様々な観点から頸動脈プラークの評価が可能となる。
(設定画面70)
【0067】
なお、操作領域61において「設定」タブ72を選択すると、
図23に示すように設定画面70に切り替わる。この画面では、色分け区分の設定や補正を行うことができる。
図23の例では、操作領域61の下段に、色分け範囲の割り当てが表示される色分手段73が設けられる。ここでは、0〜−20dBを赤色、−20〜−40dBを橙色、−40〜−60を黄色、−60〜−80dBを青色、−80dB以下を緑色に、それぞれ設定している。このような色分けは、冠動脈の表示で用いられている色分けに準じているが、割り当てる色は任意の色に設定できることはいうまでもない。また各色分け範囲の上限値、下限値となる各閾値は、デフォルト値とする他、ユーザーが自由に調整することもできる。例えば、各色分け範囲の右側に設けられた色選択ボタン74を押下すると、画像表示領域62上で矩形状の色指定領域CRが表示される。色指定領域CRで指定した領域が、その色分け範囲に割り当てられている色となるように、自動的に閾値が調整される。これによって、ユーザーはエコー画像上から、どの領域をどの色に着色したいかを、直接指定することができる。またこの例では、例えば赤色に割り当てられた色分け範囲に対応する色指定領域CRは赤色で、青色に割り当てられた色指定領域CRは青色に、それぞれ着色されて表示されている。これによって、複数の色指定領域をユーザーは視覚的に区別できる。このようにして色分手段73で指定された色分け範囲に基づいて、原信号と色分けの対応関係が設定あるいは修正され、記憶手段40に保持される。
【0068】
さらに操作領域61の上段には、深度に応じて生じる超音波減衰を補正するための減衰調整手段として、減衰率やIB付加値を指定する調整欄75が設けられている。
(補正手段)
【0069】
加えて評価装置は、血管内腔や血管外膜の原信号を用いて原信号の割り当てを補正する補正手段を備えている。このような補正においては、血液部分や血管部分の原信号を基準とすることができる。例えば、血管内腔の血液部分に該当するエコー画像の積分量を基準として、積分量が最小となるように補正する。あるいは、血管外膜に該当するエコー画像の積分量を基準として、積分量が最大となるように補正する。このような補正によって、エコー画像毎の差、例えば患者間の差異や同一患者の異なる撮像時期における差異を低減できる。すなわち、血液の色は一般に最も画素値が低くなり(例えば黒色)、一方血管の色は最も画素値が高くなる(例えば白色)傾向があるため、このような共通の指標を定めておくことで、測定毎のばらつきを抑制して、統一された基準でエコー画像を撮像できる。なお、このような補正は、原信号を基準値に基づいて変更する他、原信号は維持したまま、色の割り当て区分を基準値に基づいて変更する方法でも同様の結果を得ることができる。
【0070】
具体的には、
図22、
図23の評価プログラムでは補正機能として、「内腔による補正」と「血管壁による補正」のいずれかを選択する補正ラジオボタン76を設けている。例えば、補正ラジオボタン76で「内腔による補正」を選択すると、画像表示領域62中で矩形状の内腔補正領域が表示され、この内腔補正領域で指定した領域を内腔と判断して、IB値が最小値となるように補正される。内腔は血液が存在するため、エコー画像が黒く表示されると考えられるため、この領域が黒となるようにIB値を補正することで、測定対象の患者間でIB値の分布のばらつきを抑制できる。同様に補正ラジオボタン76で「血管壁による補正」を選択すると、矩形状の血管補正領域が表示され、この血管補正領域で指定した領域を血管と判断して、IB値が最大値となるように補正される。血管外膜はエコー画像が白く表示されると考えられるので、この領域が白くなるようにIB値を補正することで、同様に測定のばらつきを抑制できる。このように、プラークでない、安定的な測定が期待できる部位に基づいてIB値を調整することで、より信頼性の高い測定が行えるようになる。
【0071】
図25A〜
図26Bは、このようなIB値を補正する様子を説明した図である。これらの図に示すグラフは、エコー画像中に含まれる画素のIB値について、深度毎にIB値が分布している様子を示すヒストグラムである。
図25A、
図25Bは血管内腔のIB値による補正を示すものであり、
図25Aは元のIB値のヒストグラムを、
図25Bは補正後のIB値のヒストグラムを、それぞれ示している。これらのヒストグラムにおいて、一点鎖線で示す2つのピークは血管外壁の位置を示しており、その間に挟まれた領域は血管内腔であり、特に極小値は血液を示していると考えられる。よって、この極小値をIB値の最小値とするように補正することで、IB値の基準値を各エコー画像で共通(血液)とでき、エコー画像間の測定の誤差や検査対象のばらつきを抑制した共通の基準での診断が可能となる。
図25Aの例では、矩形状に示すように、血管内腔の極小に当たる部位を指定し、この値が最小値となるようにIB値の波形を補正することで、
図25BのようにIB値の波形がシフトされる。補正後のIB値に基づいたエコー画像は、血液部分の見え方が共通の色合いで表現されるので、このIB値補正後のエコー画像を着色処理することで、プラーク部分の診断も共通の基準にて行え、エコー画像間の比較が容易となる。
【0072】
また
図26Aと
図26Bは血管外膜のIB値による補正を示すものであり、
図26Aは元のヒストグラム、
図26Bは補正後のヒストグラムを、それぞれ示している。血管外膜のIB値は最大値になると考えられるため、
図26Aで矩形状に示すように血管外膜に相当する部位を指定させ、この値が最大値となるように補正することで、
図26BのようにIB値の波形が補正され、同様に共通の指標に基づいたエコー画像を得ることができ、対比観察をより正確に行える。
【0073】
このような補正は、ユーザーがヒストグラム上から所望の位置又は範囲を手動で指定して行うこともできるが、自動で行わせてもよい。また、血管内腔や血管外膜の指定は、上述の通りエコー画像上で行うことが好ましく、エコー画像上で指定された領域に対応するヒストグラム上の位置が、上述の通り最小値や最大値となるように、IB値の分布を補正する。ただ、
図25Aや
図26Aに示すようにヒストグラム上から、これら血管内腔や血管外膜にあたる部位を指定させるように構成してもよい。
【0074】
また、
図25A、
図25Bの例では、IB値の波形を平行移動させるように補正しており、IB波形の形状が維持されている。ただ、波形を変化させるような補正も可能である。例えば、上述した血液部分と血管部分の補正を組み合わせることで、ダイナミックレンジを効率よく利用した画像表現が可能となる。
図10A、
図10Bは、このようなIB値を補正する様子を説明した図である。
図10A、
図10Bは血管内腔のIB値による補正を示すものであり、
図10Aは元のIB値のヒストグラムを、
図10Bは補正後のIB値のヒストグラムを、それぞれ示している。上述の通り、血管内腔のIB値の極小は血液にあたると考えられるため、
図10Aで矩形状に示すように、極小の部位を指定し、この値が最小値となるように補正することで、
図10BのようにIB値の波形を調整できる。
【0075】
また
図10Cと
図10Dは血管外膜のIB値による補正を示すものであり、
図10Cは元のヒストグラム、
図10Dは補正後のヒストグラムを、それぞれ示している。血管外膜のIB値は最大値になると考えられるため、
図10Cで矩形状に示すように血管外膜に相当する部位を指定させ、この値が最大値となるように補正することで、
図10DのようにIB値のダイナミックレンジを効率よく利用できる。
【0076】
以上のようにして、頸動脈プラークのエコー画像に対し、従来、専門家でも判別が容易でなかった単なるグレースケールの濃淡画像のみならず、カラーに着色された着色画像でも表示できるため、初心者でも判別が容易となる。例えば、患者に対するインフォームドコンセントの実施にも有用となる。また、経時的な変化も2画面で対比して表示させ、さらに着色画像を併用することで、症状の改善や薬効の確認も視覚的に行えるようになり、患者への訴求効果も高められる。また、このような微妙な経時的変化の判別が容易になることで、血管系の障害が早期に診断可能となり、医療現場への貢献が期待できる。
(実施例1:スタチン系薬剤の有効性の確認)
【0077】
以下、本発明の実施例について説明する。まず、スタチン系薬剤の有効性の確認に本発明を適用した例を説明する。ここでは、スタチン系薬剤の投与前後での頸動脈プラークの性状変化を経時的に評価し、薬剤の有効性の確認に本発明が適用できることを評価した。具体的には、頸動脈にプラークのある患者にスタチンを投与し、1ヶ月後のプラークの形状変化を確認した。
【0078】
なお本明細書において「薬剤」とは、頸動脈のプラークの性状を改善できるものであれば特に限定されるものではない。即ち、脂質異常症治療薬として使用されるものであれば特に限定されるものではない。例えばスタチン系薬剤、フィブラート系薬剤、EPA製剤、小腸コレステロール吸収阻害剤、陰イオン交換樹脂、ニコチン酸系薬剤等の脂質異常症治療薬として使用されているものを使用できる。
【0079】
また本明細書において「スタチン系薬剤」とは、HMG−CoA還元酵素阻害薬を意味し、例えばアトルバスタチン、シンバスタチン、セリバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、メバスタチン、ロスバスタチン、ロバスタチンが挙げられる。さらに、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬であるエゼチミブ(ゼチーア)等の他の作用を持つ薬剤と併用することもできる。
【0080】
さらに本明細書において「評価方法」とは、頸動脈エコー判定方法を使用して、頸動脈プラークの性状変化を確認、評価する方法を意味する。例えば、通常のエコーでは、
図11で示すように、スタチン系薬剤の効果があったか否かが明確ではないが、本発明の評価方法では、
図12で示すように、効果があったことが視覚的に確認できる。さらに、色分けされた部分の面積を集約することによって、
図13に示すように、スタチン系薬剤の治療によるプラークの性状変化を的確に表わすことができる。
(頸動脈プラークの形状の確認、評価試験)
(対象患者)
【0081】
ここでは、頸動脈にプラークが検出された55才男性患者にスタチン(ピタバスタチン2mg/日)を1ヶ月間投与した。
(判定方法)
【0082】
頸動脈エコー法として、12MHzリニア型プローブ(GE社製M12L)とエコー装置(GE社製LOGITEC7)を用いて、IBS法により頸動脈プラークの超音波後方散乱信号を測定した。プローブを通して得られるエコー信号の相対強度を、評価プログラムにより変換し、低輝度は青く、高輝度になるに従い、緑色、黄色、赤色と変化するよう設計した。
(結果)
【0083】
上記患者のスタチン投与前と1ヶ月間投与後の頸動脈エコーの結果を
図2〜
図5に示す。これら図において、
図2A及び2Cはスタチン投与前のエコー画像、
図2B及び2Dはスタチン投与1ヶ月後のエコー画像を、それぞれ示している。これら
図2A、
図2Bに示すように、従来のグレースケールの表示方法では、プラークの性状変化が非常に分かり難い。特にグレースケール画像では、プラークの周りを白い線で囲んで見ると、1ヵ月後のプラークの体積は変化していないことは分かるものの、それ以上のことは判別できなかった。
【0084】
そこで、上記評価プログラムを用いて、頸動脈プラークの低エコー輝度の部分は青く、輝度が高くなるにつれて順次、前述の閾値に従って色が変わるように、
図2A及び2Bにそれぞれ着色を行なった。この結果を
図2C及び2Dに示す。これらの図に示すように、着色処理によってプラークの性状が明確となって、判断し易くできる。また、同様に他のエコー画像に着色処理を行った結果を
図3〜5に示す。これらの
図2において、
図2A及び2BがIBS法によるエコー画像のグレースケール表示であり、
図2C及び2Dが本発明の判定方法を使用した結果である。すなわち、
図3A〜5Aがエコー画像、
図3B〜5Bがそれぞれ、
図3A〜5Aのエコー画像に本発明を適用した着色画像である。なお
図3A〜4Bは頸動脈に沿った縦断面、
図5A〜5Bは頸動脈の横断面を、それぞれ示している。これら
図3B〜5Bに示すように、着色によってプラークの性状が非常に見易くなり、性状を判断し易くなっていることが確認できた。特に、頸動脈の縦断面(
図3と
図4)と横断面(
図5)を評価することにより、頸動脈のプラークの全体的な形状と性状(不安定プラークなのか安定プラークなのか)がより的確に判断できるようなった。
【0085】
また、頸動脈内膜剥離術(CEA)で採取した標本の組織像と、本発明の判定方法(術前のIB値)との比較を行った。本発明の判定方法では、脂質に富むと予想されたプラークは、採取されたサンプルでも同様の所見がみられた。一方、線維成分が多く、安定型と予想されたプラークは、組織標本でも脂質が少なく炎症細胞浸潤も少なかった。
【0086】
このように、本発明の判定方法はプラークの形状と性状を明確に表示する方法として、従来のエコー画像よりも優れていることが示された。グレースケールでもプラーク性状をある程度判断することは可能であるが、従来は長年の経験が必要とされていた。これに対し、本発明の判定方法を用いることにより、初心者でも良好な再現性で、プラークの性状の客観的評価ができるようになった。
(実施例2:頸動脈プラークの性状評価)
【0087】
次に、本発明の判定方法を用いて頸動脈プラークの性状評価を行った例を説明する。ここでは、プラークの輝度分布が異なる3種類の頸動脈エコーを測定し、本発明方法を用いて比較対比した。今回の例では、頸動脈に低輝度のプラークを持つ患者(57才女性)、等輝度のプラークを持つ患者(51才男性)、高輝度のプラークを持つ患者(73才男性)について、頸動脈エコーを撮り、本発明の判定方法で評価した。この結果を
図6及び
図7に示す。これらの図において、
図6A〜6Cは、プラークの輝度分布が、いわゆる低輝度、等輝度、高輝度と呼ばれる3種類のプラークについて、着色画像とその詳細データをそれぞれ表示している。また
図7A〜7Cは、これら
図6A〜6Cと対応する着色画像について、プラークの分布を示す円グラフと共にそれぞれ示している。これらの図に示すように、通常のエコー画像では、低輝度と等輝度の識別は困難であるが、本発明の判定方法では、明瞭に区別ができた。しかも、
図7に示すように、色分けされた面積を集約合計することにより、それぞれのプラークの性状を解析し、明示できる。この例では、低輝度プラークでは、線維化の部分は17%、脂質の部分が83%であった。また等輝度プラークでは、石灰化の部分が4%、重厚な線維化の部分が23%、線維化の部分が45%、脂質の部分が27%であった。さらに高輝度プラークでは、石灰化の部分が9%、重厚な線維化の部分が33%、線維化の部分が49%、脂質の部分が9%であった。このように、本実施の形態によれば、
図6に示すように、3種類のエコー画像を、カラー画像によって明確に識別できると共に、
図7に示すように、プラークの性状が定量的に判定できる。
(実施例3:着色画像による解析結果と臨床的な現実の組織像との比較対比)
【0088】
また、本発明の判定方法で示されるプラーク性状の解析結果が、現実の病理組織像と一致しているか否かを検証するため、CEA症例の患者における、本発明方法によるプラークの性状解析と実際の切除組織との比較を行った。ここでは、頸動脈に高度の狭窄があり、CEA症例に該当する患者(61才男性、79才男性)について、本発明の頸動脈エコー判定方法によるCEA施行前のデータと、CEA施行後に得られた頸動脈のエコー該当部分の切除標本(HE染色)とを対比した。その結果を
図8(61才男性の結果)〜9(79才男性の結果)に示す。これらの図において、
図8AはCEA症例の着色画像を、
図8Bは
図8Aと対応する部位の切除標本をHE染色した画像を、それぞれ示している。また
図9AはCEA症例のエコー画像、
図9Bは
図9Aに対する着色画像、
図9Cはこれらと対応する部位の切除標本をHE染色した画像を、それぞれ示している。
【0089】
これらの図に示すように、脂質豊富なプラークが集中している部位と、線維化されたプラークが集中している部位とが、いずれも本発明で得られる着色画像の性状解析と実際の切除組織像とでよく対応しており、本発明の妥当性が確認された。具体的には、本発明の判定方法で脂質が多いと判断される部分は、実際の血管組織の切除標本と対比しても、その通りであることが確認できた。また、本発明の判定方法で線維化が進んでいると判断される部分は、同じく切除標本でも線維化が進んできることが判明した。このように、本発明の判定方法による頸動脈プラークの解析評価の結果と、該当部分の実際の組織切除標本とは、非常によく対応しており、本発明の判定方法は、実際のプラークの性状をよく反映していることが明らかとなった。
【0090】
また本発明の評価方法は、頸動脈プラークのみならず冠動脈のプラーク病変とも密接に関係し、相似の関係にあることが臨床の血管サンプルの評価からも支持されている。
(実施例4:動脈硬化の患者に対する薬剤の効果の判別評価試験)
(1)軽度の頸動脈狭窄の患者
【0091】
まず、脂質異常症で喫煙癖のある51才男性患者に対して、アトルバスタチン10mg/日を6ヶ月間投与した。薬剤投与前後の頸動脈エコーの結果を
図11に示す。これらの図において、
図11Aは薬剤投与前、
図11Bは薬剤投与後を示している。これらの図に示すように、通常のエコー画像からでは、アトルバスタチンが患者に有効であったのか、そうでなかったのかを判断することは困難であった。
【0092】
一方、本発明の判定方法で
図11の薬剤投与前後の頸動脈エコーに着色した結果を、
図12に示す。
図12Aは
図11A、
図12Bは
図11Bの着色画像を、それぞれ示している。これらの図からは、アトルバスタチンが患者に有効であったことが一目瞭然に分かる。しかも、色分けされた部分を集約合計することにより、プラークの性状の解析が可能となった。また
図13A、Bは、
図12A、Bの着色画像におけるプラークの区分けを示す円グラフである。これらの図では、
図12の着色画像の色分けした部分を合計して、治療前後でプラークの性状(組成内容)がどのように変化したかを対比して示している。これらの図に示すように、アトルバスタチンの6ヶ月間の投与により、プラークの脂質が半減したことが明確に確認できた。このように、本発明の判定方法を用いることにより、患者に対する薬剤の効果を的確に判定できることが確認できた。
(2)高度の頸動脈狭窄の患者
【0093】
次に、約50%の高度頸動脈狭窄の55才男性患者に対して、ピタバスタチン2mg/日を3ヶ月間投与した。治療前のLDL−C値は138、HDL−C値は64、TG値が94であったが、治療により、LDL−C値は106、HDL−C値は68、TG値が67となった。さらに、LDL−C値を下げて、頸動脈エコーの変化を見るため、ピタバスタチン2mg/日とエゼチミブ10mg/日を3ヶ月間投与した。その結果、LDL−C値は57、HDL−C値は75、TG値が76になり、LDL−C値が大きく低下した。
【0094】
図14A、Bは、ピタバスタチンの投与前のエコー画像であり、
図15A、Bは、6ヶ月投与後のエコー画像である。これらの図において、
図14A、
図15Aは通常のエコー画像、
図14B、
図15Bはこれらの着色画像を、それぞれ示している。治療前と治療後の結果を比較すると、通常の頸動脈エコーの結果では、ピタバスタチンの投与前のエコー(
図14A)と6ヶ月間投与後のエコー(
図15A)を対比しても、明確な変化は見られなかった。
【0095】
これに対し、本発明の頸動脈エコー判定方法によれば、プラークの大きさには変化が見えないものの、治療前と治療後には、プラークの性状に明確な違いが見られた。即ち、治療前の頸動脈エコー(
図14B)は、治療後には
図15Bに変化している。また治療前後でエコーの色分けされた部分の集約合計を比較するため、
図16Aに
図14Bのプラーク性状の比率、
図16Bに
図15Bのプラーク性状の比率を、それぞれ示す。この図に示すように、治療によりプラークの線維化が進行し、脂質の占める割合が半減していることが確認できた。このように、本発明の頸動脈エコー判定方法は、プラークの性状の変化を明確に追跡できることから、スタチン系薬剤の効果を判断評価する方法として使用できることが明らかとなった。
【0096】
このように、本発明の頸動脈プラークの性状判定方法によれば、頸動脈プラークの性状、すなわち安定プラークか不安定プラークかの判断と性状変化の確認を的確に行うことが可能となる。この結果、不安定プラークを有すると判断された患者に対してスタチン系薬剤を服用させる等により、血中のLDL−C値を低下させ、早期にプラークの性状を安定化させることが可能となる。さらにこれらの早期治療により、心筋梗塞や脳梗塞の発症率を大きく低減させることが期待される。
【0097】
さらに本発明の方法は、多くの病院で汎用される頸動脈エコーに使用されるものであるため、利便性が高く、多くの患者を診断するための検査方法として有用である。加えて本発明方法によりスタチン系薬剤の効果を評価することが可能になり、患者にあったスタチン系薬剤を選択することも可能となる。また動脈硬化の進行や改善も的確に評価することができ、臨床的にも利用し易く大変有用な頸動脈エコーの検査方法が提供される。