【実施例】
【0059】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
実施例及び比較例に記載の表面抵抗率及びポリアミド酸の固形分濃度は、以下のようにして測定した。
[表面抵抗率]
表面抵抗率は、23℃、55%RH環境下で、円形電極(例えば、三菱化学(株)製ハイレスターUPの「URSプローブ」)又は四探針電極(例えば、三菱化学(株)製ロレスタ)を用い、荷重2.0kg、電圧10V、チャージ時間10秒の条件で測定した。ベルト周方向に等間隔に4点、軸方向に等間隔に4点、計16点を測定し、その平均値として表した。
[ポリアミド酸溶液の固形分濃度]
カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の固形分濃度は、次のように算出された値である。試料を金属カップ等の耐熱性容器で精秤しこの時の試料の重量をA(g)とする。試料を入れた耐熱性容器を電気オーブンに入れて、120℃×15分、180℃×15分、260℃×30分、及び280℃×30分で順次昇温しながら加熱、乾燥し、得られる固形分の重量(固形分重量)をB(g)とする。同一試料について5個のサンプルのA及びBの値を測定し(n=5)、次式にあてはめて固形分濃度を求めた。その5個のサンプルの平均値を、固形分濃度として採用した。
【0061】
固形分濃度=B/A×100(%)
実施例1
3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとの当量をN−メチルピロリドン溶媒中で常温にて重合反応して得られたポリアミド酸溶液に、更に溶媒のN,N−ジメチルアセトアミドを混合し、稀釈した。次に、この中に100℃で2時間乾燥したDBP(ジブチルフタレート)吸油量が100ml/100gのカーボンブラック(三菱カーボンMA−100、三菱化学(株)製)を添加し、ボールミルで1時間(25℃)十分混合した。得られたスラリー状液体の組成は、ポリアミド酸固形分15重量%、カーボンブラック18.0重量%(対ポリアミド酸固形分)、その他が溶媒量であり、溶液粘度は800cps(25℃)であった。
【0062】
これを、内面を鏡面仕上げした金属製回転ドラム(幅400mm内径82mm;両サイドに幅20mmの枠を有する)の内面に、ゆっくりと回転しつつ注入し全量注入した。徐々に回転をスピードアップし、最後には340回/分にして30分間回転を続行した。そして、この状態を維持して、該ドラムを加熱し150℃に到達させ、更にその温度で80分間回転を続けて溶媒を蒸発させて乾燥した。これにより、半乾燥状態である、厚さ50±4μm、幅380mmのポリアミド酸のチューブ状シームレスベルトを得た。これを該ドラムから取り出した。
【0063】
そして、前記ポリアミド酸ベルトを金属製マンドレルに被嵌して、全部を熱風乾燥機中に入れ徐々に昇温した。まず、300℃に到達したらその温度で20分間加熱し、更に昇温して400℃に到達したらその温度で20分間加熱した。この加熱により厚さ65±5μm、内径60mm、幅320mmのポリイミドベルトを得た。この内層となるベルトの表面抵抗率は1×10
7(Ω/□)であった。
【0064】
エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(テフゼル290、三井デュポンフルオロケミカル(株)製)を、φ40mm単軸押出機(シリンダー温度:280〜320℃)を用いて環状ダイにて外径53mmφ、厚み55±5μmの円筒状のチューブを製膜した。
【0065】
別途、外径60mm、長さが400mmのアルミニウム製円筒状芯体の外周面に離型材としてシリコーン系離型剤を塗布し、380℃で1時間焼成した。この円筒状芯体に、前記作製した導電性ポリイミドベルトを被覆し、さらにエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体チューブを被覆した。これを、加熱炉において200℃で1時間、その後300℃で1時間焼成することにより、チューブをベルト上に融着被覆した。その後、芯体から樹脂ベルトを取り外し、幅300mmにカットし、総膜厚120μm(外層55μm、内層65μm)、内層表面抵抗率1×10
7(Ω/□)のインクジェット用搬送ベルトを作製した。
【0066】
実施例2
3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)との当量をN−メチルピロリドン溶媒中で常温にて重合反応して得られたポリアミド酸溶液に、更に溶媒のN,N−ジメチルアセトアミドを混合し、稀釈した。次に、この中に100℃で2時間乾燥したDBP(ジブチルフタレート)吸油量が100ml/100gのカーボンブラック(三菱カーボンMA−100、三菱化学(株)製)を添加し、ボールミルで1時間(25℃)十分混合した。得られたスラリー状液体の組成は、ポリアミド酸固形分15重量%、カーボンブラック18.5重量%(対ポリアミド酸固形分)、その他が溶媒量であり、溶液粘度は800cps(25℃)であった。
【0067】
これを、内面を鏡面仕上げした金属製回転ドラム(幅400mm内径82mm;両サイドに幅20mmの枠を有する)の内面に、ゆっくりと回転しつつ注入し全量注入した。徐々に回転をスピードアップし、最後には340回/分にして30分間回転を続行した。そして、この状態を維持して、該ドラムを加熱し180℃に到達させ、更にその温度で80分間回転を続けて溶媒を蒸発させて乾燥した。これにより、半乾燥状態である、厚さ50±4μm、幅380mmのポリアミド酸のチューブ状シームレスベルトを得た。これを該ドラムから取り出した。
【0068】
そして、前記ポリアミド酸ベルトを金属製マンドレルに被嵌して、全部を熱風乾燥機中に入れ徐々に昇温した。まず、300℃に到達したらその温度で20分間加熱し、更に昇温して400℃に到達したらその温度で20分間加熱した。この加熱により厚さ65±5μm、内径60mm、幅320mmのポリイミドベルトを得た。この内層となるベルトの表面抵抗率は1×10
7(Ω/□)であった。
【0069】
エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(フルオンLM-ETFE AH-2000、旭硝子(株)製)を、φ40単軸押出機(シリンダー温度:260〜320℃)を用いて環状ダイにて外径53mmφ、厚み55±5μmの円筒状のチューブを製膜した。
【0070】
別途、外径60mm、長さが400mmのアルミニウム製円筒状芯体の外周面に離型材としてシリコーン系離型剤を塗布し、380℃で1時間焼成した。この円筒状芯体に、前記作製した導電性ポリイミドベルトを被覆し、さらにエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体チューブを被覆した。これを、加熱炉において200℃で1時間、その後300℃で1時間焼成することにより、チューブをベルト上に融着被覆した。その後、芯体から樹脂ベルトを取り外し、幅300mmにカットし、総膜厚120μm(外層55μm、内層65μm)、内層表面抵抗率1×10
7(Ω/□)のインクジェット用搬送ベルトを作製した。
【0071】
比較例1
3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとの当量をN−メチルピロリドン溶媒中で常温にて重合反応して得られたポリアミド酸溶液に、更に溶媒のN,N−ジメチルアセトアミドを混合し、稀釈した。次に、この中に100℃で2時間乾燥したDBP吸油量が100ml/100gのカーボンブラック(三菱カーボンMA−100、三菱化学(株)製)を添加し、ボールミルで1時間(25℃)十分混合した。得られたスラリー状液体の組成は、ポリアミド酸固形分15重量%、カーボンブラック18.0重量%(対ポリアミド酸固形分)、その他が溶媒量であり、溶液粘度は800cps(25℃)であった。
【0072】
これを、内面を鏡面仕上げした金属製回転ドラム(幅400mm内径82mm;両サイドに幅20mmの枠を有する)の内面に、ゆっくりと回転しつつ注入し全量注入した。その後、徐々に回転をスピードアップし、最後には340回/分にして30分間回転を続行した。そして、この状態を維持して、該ドラムを加熱し150℃に到達させ、更にその温度で80分間回転を続けて溶媒を蒸発させて乾燥した。これにより、半乾燥状態である、厚さ50±4μm、幅380mmのポリアミド酸のチューブ状シームレスベルトを得た。これを該ドラムから取り出した。
【0073】
そして、前記ポリアミド酸ベルトを金属製マンドレルに被嵌して、全部を熱風乾燥機中に入れ徐々に昇温した。まず、300℃に到達したらその温度で20分間加熱し、更に昇温して400℃に到達したらその温度で20分間加熱した。この加熱により厚さ65±5μm、内径60mm、幅320mmのポリイミドベルトを得た。この内層となるベルトの表面抵抗率は1×10
7(Ω/□)であった。
【0074】
ポリフッ化ビニリデン(KFポリマー#1000、(株)クレハ製)を、φ40mm単軸押出機(シリンダー温度:180〜230℃)を用いて環状ダイにて外径60mmφ、厚み55μm±5μmの円筒状のチューブを製膜した。
【0075】
別途、外径60mm、長さが400mmのアルミニウム製円筒状芯体の外周面に離型材としてシリコーン系離型剤を塗布し、380℃で1時間焼成した。この円筒状芯体に、前記作製した導電性ポリイミドベルトを被覆し、さらにポリフッ化ビニリデンチューブを被覆した。これを、加熱炉において、100℃で1時間、その後200℃で1時間焼成することにより、チューブをベルト上に融着被覆した。その後、芯体から樹脂ベルトを取り外し、幅300mmにカットし、総膜厚120μm(外層55μm、内層65μm)、内層表面抵抗率1×10
7(Ω/□)のインクジェット用搬送ベルトを作製した。
【0076】
比較例2
3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)との当量をN−メチルピロリドン溶媒中で常温にて重合反応して得られたポリアミド酸溶液に、更に溶媒のN,N−ジメチルアセトアミドを混合し、稀釈した。次に、この中に100℃で2時間乾燥したDBP吸油量が100ml/100gのカーボンブラック(三菱カーボンMA−100、三菱化学(株)製)を添加し、ボールミルで1時間(25℃)十分混合した。得られたスラリー状液体の組成は、ポリアミド酸固形分15重量%、カーボンブラック18.5重量%(対ポリアミド酸固形分)、その他が溶媒量であり、溶液粘度は800cps(25℃)であった。
【0077】
これを、内面を鏡面仕上げした金属製回転ドラム(幅400mm内径82mm;両サイドに幅20mmの枠を有する)の内面に、ゆっくりと回転しつつ注入し全量注入した。徐々に回転をスピードアップし、最後には340回/分にして30分間回転を続行した。そして、この状態を維持して、該ドラムを加熱し180℃に到達させ、更にその温度で80分間回転を続けて溶媒を蒸発させて乾燥した。これにより、半乾燥状態である、厚さ50±4μm、幅380mmのポリアミド酸のチューブ状シームレスベルトを得た。これを該ドラムから取り出した。
【0078】
そして、前記ポリアミド酸ベルトを金属製マンドレルにこれを被嵌して、全部を熱風乾燥機中に入れ徐々に昇温した。まず、300℃に到達したらその温度で20分間加熱し、更に昇温して400℃に到達したらその温度で20分間加熱した。この加熱により厚さ65±5μm、内径60mm、幅320mmのポリイミドベルトを得た。この内層となるベルトの表面抵抗率は1×10
7(Ω/□)であった。
【0079】
テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下「FEP」と表記する)(ネオフロンFEP NP-21、ダイキン工業(株)製)を、φ40mm単軸押出機(シリンダー温度:280〜360℃)を用いて環状ダイにて外径53mmφ、厚み55μm±5μmの円筒状のチューブを製膜した。
【0080】
別途、外径60mm、長さが400mmのアルミニウム製円筒状芯体の外周面に離型材としてシリコーン系離型剤を塗布し、380℃で1時間焼成した。この円筒状芯体に、前記作製した導電性ポリイミドベルトを被覆し、さらにFEPチューブを被覆した。これを、加熱炉において200℃で1時間、その後300℃で1時間焼成することにより、チューブをベルト上に融着被覆した。その後、芯体から樹脂ベルトを取り外し、幅300mmにカットし、膜厚120μm(外層55μm、内層65μm)、内層表面抵抗率1×10
7(Ω/□)のインクジェット用搬送ベルトを作製した。
【0081】
比較例3
3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとの当量をN−メチルピロリドン溶媒中で常温にて重合反応して得られたポリアミド酸溶液に、更に溶媒のN,N−ジメチルアセトアミドを混合し、稀釈した。次に、この中に100℃で2時間乾燥したDBP吸油量が100ml/100gのカーボンブラック(三菱カーボンMA−100、三菱化学(株)製)を添加し、ボールミルで1時間(25℃)十分混合した。得られたスラリー状液体の組成は、ポリアミド酸固形分15重量%、カーボンブラック18.0重量%(対ポリアミド酸固形分)、その他が溶媒量であり、溶液粘度は800cps(25℃)であった。
【0082】
これを、内面を鏡面仕上げした金属製回転ドラム(幅400mm内径82mm;両サイドに幅20mmの枠を有する)の内面に、ゆっくりと回転しつつ注入し全量注入した。徐々にスピードアップし、最後には340回/分にして30分間回転を続行した。そして、この状態を維持して、該ドラムを加熱し150℃に到達させ、更にその温度で80分間回転を続けて溶媒を蒸発させて乾燥した。これにより、半乾燥状態である、厚さ50±4μm、幅380mmのポリアミド酸のチューブ状シームレスベルトを得た。これを該ドラムから取り出した。
【0083】
そして、前記ポリアミド酸ベルトを金属製マンドレルにこれを被嵌して、全部を熱風乾燥機中に入れ徐々に昇温した。まず、300℃に到達したらその温度で20分間加熱し、更に昇温して400℃に到達したらその温度で20分間加熱した。この加熱により厚さ65±5μm、内径60mm、幅320mmのポリイミドベルトを得た。
この内層となるベルトの表面抵抗率は1×10
7(Ω/□)であった。
【0084】
テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下「PFA」と表記する)(テフロン(登録商標)350J、三井デュポンフルオロケミカル(株)製)を、φ40単軸押出機(シリンダー温度:280〜420℃)を用いて環状ダイにて外径53mmφ、厚み55μm±5μmの円筒状のチューブを製膜した。
【0085】
別途、外径60mm、長さが400mmのアルミニウム製円筒状芯体の外周面に離型材としてシリコーン系離型剤を塗布し、380℃で1時間焼成した。この円筒状芯体に、前記作製した導電性ポリイミドベルトを被覆し、さらにPFAチューブを被覆した。これを、加熱炉において、300℃、4時間で熱融着処理を施した。その後、芯体から樹脂ベルトを取り外し、幅300mmにカットし、総膜厚120μm(外層55μm、内層65μm)、内層表面抵抗率1×10
7(Ω/□)のインクジェット用搬送ベルトを作製した。
【0086】
比較例4
実施例1と同様にして、内層となるポリイミドベルトを得た。得られたポリイミドベルトは厚さ65μ±5μ、内径60mm、幅320mmであった。また、ベルトの表面抵抗率は1×10
7Ω/□であった。
【0087】
一方、外層となるポリイミドチューブは以下の要領で作成した。熱可塑性ポリイミド(オーラムPL450C、三井化学(株)製)を、φ40単軸押出機(シリンダー温度:370〜420℃)を用いて環状ダイにて外径60mmφ、厚み55μm±5μmの円筒状のチューブを製膜した。
【0088】
別途、外径60mm、長さが400mmのアルミニウム製円筒状芯体の外周面に離型材としてシリコーン系離型剤を塗布し、380℃で1時間焼成した。この円筒状芯体に、前記作製した導電性ポリイミドベルトを被覆し、さらに熱可塑性ポリイミドチューブを被覆した。これを、加熱炉において、390℃、2時間で熱融着処理を施した。その後、芯体から樹脂ベルトを取り外し、幅300mmにカットし、総膜厚120μm(外層55μm、内層65μm)、内層表面抵抗率1×10
7(Ω/□)のインクジェット用搬送ベルトを作製した。
【0089】
比較例5
エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(フルオンETFE C−55AXB、旭硝子(株)製)80重量%及びカーボンブラック(三菱カーボンMA-100、三菱化学(株)製)20重量%を配合した後、2軸スクリュー押出機に投入し(シリンダー温度295〜340℃)、ペレット状原料Aを作製した。
【0090】
このペレット状原料Aを内層用50mmφ単軸押出機(シリンダー温度:280〜320℃)に投入し、またエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(テフゼル290、三井デュポンフルオロケミカル(株)製)を、外層用φ40mmφ単軸押出機(シリンダー温度:280〜320℃)に投入し、2層押出成形用のサーキュラーマンドレルダイを上記2台の押出機が合流する吐出口の先端にセットした。該ダイスのノズル幅を外層用及び内層用各々調整して共押出成形を行い、外径60mmφ、総厚み150±10μm(外層50μm、内層100μm)、内層表面抵抗率1×10
7(Ω/□)のインクジェット用搬送ベルトを作製した。
【0091】
比較例6
3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとの当量をN−メチルピロリドン溶媒中で常温にて重合反応して得られたポリアミド酸溶液に、更に溶媒のN,N−ジメチルアセトアミドを混合し、稀釈した。次に、この中に100℃で2時間乾燥したDBP(ジブチルフタレート)吸油量が100ml/100gのカーボンブラック(三菱カーボンMA−100、三菱化成(株)製)を添加し、ボールミルで1時間(25℃)十分混合した。得られたスラリー状液体の組成は、ポリアミド酸固形分15重量%、カーボンブラック14.0重量%(対ポリアミド酸固形分)、その他が溶媒量であり、溶液粘度は800cps(25℃)であった。
【0092】
これを、内面を鏡面仕上げした金属製回転ドラム(幅400mm内径82mm;両サイドに幅20mmの枠を有する)の内面に、ゆっくりと回転しつつ注入し全量注入した。徐々に回転をスピードアップし、最後には340回/分にして30分間回転を続行した。そして、この状態を維持して、該ドラムを加熱し150℃に到達させ、更にその温度で80分間回転を続けて溶媒を蒸発させて乾燥した。これにより、半乾燥状態である、厚さ50±4μm、幅380mmのポリアミド酸のチューブ状シームレスベルトを得た。これを該ドラムから取り出した。
【0093】
そして、前記ポリアミド酸ベルトを金属製マンドレルに被嵌して、全部を熱風乾燥機中に入れ徐々に昇温した。まず、300℃に到達したらその温度で20分間加熱し、更に昇温して400℃に到達したらその温度で20分間加熱した。この加熱により厚さ65±5μm、内径60mm、幅320mmのポリイミドベルトを得た。この内層となるベルトの表面抵抗率は2×10
10(Ω/□)であった。
【0094】
エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(テフゼル290、三井デュポンフルオロケミカル(株)製)を、φ40単軸押出機(シリンダー温度:280〜320℃)を用いて環状ダイにて外径53mmφ、厚み55±5μmの円筒状のチューブを製膜した。
【0095】
別途、外径60mm、長さが400mmのアルミニウム製円筒状芯体の外周面に離型材としてシリコーン系離型剤を塗布し、380℃で1時間焼成した。この円筒状芯体に、前記作製した導電性ポリイミドベルトを被覆し、さらにエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体チューブを被覆した。これを、加熱炉において200℃で1時間、その後300℃で1時間焼成することにより、チューブをベルト上に融着被覆した。その後、芯体から樹脂ベルトを取り外し、幅300mmにカットし、総膜厚120μm(外層55μm、内層65μm)、内層表面抵抗率2×10
10(Ω/□)のインクジェット用搬送ベルトを作製した。
【0096】
比較例7
3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとの当量をN−メチルピロリドン溶媒中で常温にて重合反応して得られたポリアミド酸溶液に、更に溶媒のN,N−ジメチルアセトアミドを混合し、稀釈した。次に、この中に100℃で2時間乾燥したDBP吸油量が360ml/100gのケッチンブラックックEC(ライオン(株)製)を添加し、ボールミルで1時間(25℃)十分混合しスラリー状の液体を得た。得られたスラリー状液体の組成は、ポリアミド酸固形分13%(重量)、カーボンブラック8.0%(重量)対ポリアミド酸固形分、その他が溶媒量であり、溶液粘度は500cps(25℃)であった。
【0097】
これを、内面を鏡面仕上げした金属製回転ドラム(幅400mm内径82mm;両サイドに幅20mmの枠を有する)の内面に、ゆっくりと回転しつつ注入し全量注入した。徐々に回転をスピードアップし、最後には340回/分にして30分間回転を続行した。そして、この状態を維持して、該ドラムを加熱し150℃に到達させ、更にその温度で80分間回転を続けて溶媒を蒸発させて乾燥した。これにより、半乾燥状態である、厚さ50±4μm、幅380mmのポリアミド酸のチューブ状シームレスベルトを得た。これを該ドラムから取り出した。
【0098】
そして、前記ポリアミド酸ベルトを金属製マンドレルに被嵌して、全部を熱風乾燥機中に入れ徐々に昇温した。まず、300℃に到達したらその温度で20分間加熱し、更に昇温して400℃に到達したらその温度で20分間加熱した。この加熱により厚さ65±5μm、内径60mm、幅320mmのポリイミドベルトを得た。この内層となるベルトの表面抵抗率は5×10
3(Ω/□)であった。
【0099】
エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(テフゼル290、三井デュポンフルオロケミカル(株)製)を、φ40単軸押出機(シリンダー温度:280〜320℃)を用いて環状ダイにて外径53mmφ、厚み55±5μmの円筒状のチューブを製膜した。
【0100】
別途、外径60mm、長さが400mmのアルミニウム製円筒状芯体の外周面に離型材としてシリコーン系離型剤を塗布し、380℃で1時間焼成した。この円筒状芯体に、前記作製した導電性ポリイミドベルトを被覆し、さらにエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体チューブを被覆した。これを、加熱炉において200℃で1時間、その後300℃で1時間焼成することにより、チューブをベルト上に融着被覆した。その後、芯体から樹脂ベルトを取り外し、幅300mmにカットし、総膜厚120μm(外層55μm 内層65μm)、内層表面抵抗率5×10
3(Ω/□)のインクジェット用搬送ベルトを作製した。
【0101】
試験例1
上記実施例及び比較例で得られたインクジェット用搬送ベルトについて、耐久性(耐屈曲性)、搬送性、吸着性(誘電率)、耐摩耗性、クリーニング性、及び搬送ベルト運転時の吸着性の評価及びベルト表面汚れについて評価した。その結果を表1及び表2に示す。評価方法は以下の通りである。
[耐久性の評価]
MIT試験
内層および外層の接着性の確認、およびベルトのワレを評価するため、耐屈曲性試験を行った。耐屈曲性が低いとベルト端部からベルトが破断する。
【0102】
使用機器:(株)東洋精機製作所製MIT試験機
測定方法:ASTM D-2176準拠 折曲角度135°、折曲スピード175cpm、荷重300g
評価基準は下記の通り。
【0103】
MIT試験回数;
A:30,000以上
B:10,000以上〜30,000未満
C:10,000未満
引張弾性率
引張弾性率が高い搬送ベルトを用いた場合、該ベルトを駆動させた際の応力による周長変化および環境変化による寸法変動を抑えることができる。
【0104】
引張弾性率は、(株)島津製作所製オートグラフを用いて、JIS K-7127に準拠(試験スピード50mm/min、25mmx25mm短冊試験片)して評価した。
【0105】
引張弾性率;
A:5.0GPa以上
B:2.0GPa以上5.0GPa未満
C:2.0GPa未満
[搬送性(平面性)の評価]
26℃環境下
紙の搬送は静電吸着にて行うため、ベルトの平面性が必要であり、凹凸が大きいと用紙との接触面積が減少するため搬送力が低下し、画像不良につながる恐れがある。
【0106】
26℃環境下における搬送性(平面性)は、次のようにして評価した。ベルトの幅方向の長さより長い2本の30φの金属性シャフトをベルトに通し、該2本の金属製シャフトの両端がベルトの幅方向に出るように配置する。一方のシャフトを固定し、他方のシャフトの両端に2.0kgの錘をつけてベルトを張架した(
図1を参照)。この状態で、26℃環境下でベルト平面より垂直方向に取り付けたレーザー変位計(LK−030、(株)キーエンス製)にてベルト表面を走査し、凹凸の絶対値を測定した。評価基準は下記の通り。
【0107】
凹凸の絶対値;
A:0.2mm以下
B:0.2mm超〜0.3mm以下
C:0.3mm超(吸着不良を起こす)
80℃熱風下
近年の環境への意識の高まりから、インクには水性の顔料及び染料インクが主に使用されている。しかしこれらインクは水性であるため印刷速度向上のためには乾燥工程が必要になり、ベルトには耐熱性が必要とされる。ベルトの耐熱性が低いと熱膨張による変形を起こしベルト平面性が悪化する。これによりベルトへの用紙の吸着性が劣るため搬送不良となり画像不良につながる。
【0108】
80℃熱風下における搬送性(平面性)は、次のようにして評価した。ベルトの幅方向の長さより長い2本の30φの金属性シャフトをベルトに通し、該2本の金属製シャフトの両端がベルトの幅方向に出るように配置する。一方のシャフトを固定し、他方のシャフトの両端に2.0kgの錘をつけてベルトを張架した(
図1を参照)。この状態で、ベルト表面に対して垂直方向から80℃の熱風を10秒間あてた後、垂直方向に取り付けたレーザー変位計(LK−030、(株)キーエンス製)にてベルト表面を走査し、ベルト平面の凹凸の悪化の程度を凹凸の絶対値として測定した。
【0109】
凹凸の絶対値(80℃熱風下);
A:0.2mm以下
B:0.2mm超〜0.3mm以下
C:0.3mm超(吸着不良を起こす)
[吸着性の評価]
用紙を静電吸着させるため、静電容量(C)が大きい程、吸着力が強い。静電吸着力は静電容量に比例し、静電容量は下記(式1)の通り誘電率に比例する。
【0110】
C=εS/d
(C:静電容量{F}、ε:誘電率、S:面積{m
2}、d:厚み{m})・・・(式1)
そのため、外層の誘電率が高いほど静電吸着力が強い。
【0111】
誘電率は、JIS K6911相互誘電ブリッジ法を用いて測定した。評価基準は下記の通り。
【0112】
誘電率(23℃、1kHz);
A:5.0以上
B:2.5以上5.0未満
C:2.5未満
[耐摩耗性の評価]
ベルトが用紙に対し耐摩耗性が高いと、ベルト表面の削れが少なくなり長期にわたる運転においても十分な用紙搬送力を有する。
【0113】
耐摩耗性は次のようにして評価した。ベルトに0.2kg/cm
2の圧力でA4用紙に密着させた状態で、ベルトを用紙の縦方向280mmに310mm/secにて1000回スライドさせ、スライド前後におけるベルトの重量差を測定し、この重量差を磨耗量とした。評価基準は下記の通り。
【0114】
重量差;
A:1mg未満
B:1mg以上5mg未満
C:5mg以上
[インククリーニング性の評価]
インククリーニング性が劣ると、ベルト表面にインクが残り、用紙への裏移りなどを発生させ、画像不良となる。クリーニング性の観点からベルト表面はインクに対して離型性が高くなければならない。インククリーニング性は次にようにして評価した。
【0115】
インクカートリッジLCO9BK(ブラザー工業株式会社製)を用いて、各種外層に対する接触角を測定した。測定装置は接触角計CA-S(協和界面化学株式会社製)を用いて23℃、55%RH環境下にて測定を行った。評価基準は下記の通り。
【0116】
接触角;
A:60°以上
B:60°未満
[搬送ベルト運転時の評価]
用紙吸着性:
実施例及び比較例のインクジェット用搬送ベルトをインクジェット画像形成装置に装着して画像を形成し、インクジェット用搬送ベルトの表面に対する用紙の吸着性を観察し、100枚印字後の用紙吸着性を評価した。結果を下記表2に示す。なお、表中の「A」は吸着性が十分であることを意味し、「B」は、吸着性が不十分であり剥離が発生することを意味する。
【0117】
表面汚れ:
100枚印字後の表面汚れ(インク残、紙粉、裏面汚れ)についてベルトにテープを貼り、汚れをテープに転写させて、表面汚れについて評価を行った。結果を下記表2に示す。なお、表中の「A」は目視でも殆ど汚れがないことを意味し、「B」は、部分的な紙粉及び外層削れと考えられる樹脂粉が見られることを意味し「C」は、テープ上にインク汚れが全面に見られることを意味する。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】