特許第5765883号(P5765883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5765883
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】ケトキシムからのアミドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 231/10 20060101AFI20150730BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20150730BHJP
   C07C 233/65 20060101ALI20150730BHJP
   C07D 201/04 20060101ALI20150730BHJP
   C07D 225/02 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   C07C231/10
   C07B61/00 300
   C07C233/65
   C07D201/04
   C07D225/02
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2009-507019(P2009-507019)
(86)(22)【出願日】2007年4月3日
(65)【公表番号】特表2009-535317(P2009-535317A)
(43)【公表日】2009年10月1日
(86)【国際出願番号】EP2007053239
(87)【国際公開番号】WO2007125002
(87)【国際公開日】20071108
【審査請求日】2010年3月24日
【審判番号】不服2013-12356(P2013-12356/J1)
【審判請求日】2013年6月28日
(31)【優先権主張番号】102006019769.0
(32)【優先日】2006年4月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ロース
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー シャウホフ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン トラゲザー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ペーター クリマー
【合議体】
【審判長】 井上 雅博
【審判官】 氏原 康宏
【審判官】 木村 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭46−23740(JP,B1)
【文献】 Journal of American Chemical Society,2005年,Vol.127,11240−11241頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C231/00-233/92
C07D201/04
C07D225/00-225/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化シアヌルの存在下でのケトキシムの加熱による対応するケトキシムからのアミドの製造方法において、非極性有機溶媒中で反応が行われ、少なくとも一つのケトキシムは、少なくとも一つの、環サイズ6〜12を有する環式ケトキシムであり、前記非極性有機溶媒が、n−オクタン、シクロオクタン、ヒドロクメン及びシクロドデカンからなる群から選ばれる溶媒であり、前記反応がケトキシムを基準として、選択された溶媒がn−オクタンの場合は、2.1〜30モル%の量の塩化シアヌルの存在下で行われ、選択された溶媒がシクロオクタンの場合は、2.7〜30モル%の量の塩化シアヌルの存在下で行われ、選択された溶媒がヒドロクメンの場合は、1.9〜30モル%の量の塩化シアヌルの存在下で行われ、選択された溶媒がシクロドデカンの場合は、2.1〜30モル%の量の塩化シアヌルの存在下で行われることを特徴とする、塩化シアヌルの存在下でのケトキシムの加熱による対応するケトキシムからのアミドの製造方法。
【請求項2】
助触媒を前記反応に添加することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応を50〜250℃の温度で実施することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応がケトキシムを基準として3〜13モル%の量の塩化シアヌルの存在下で行われることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記反応を連続工程で実施することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミドの製造方法に関する。特に、本方法は工業的規模において実施可能な方法に関し、その際、ケトキシムをベックマン転位(Beckmann rearrangement)によって環式又は非環式アミドに変換することができる。
【0002】
ベックマン転位はケトキシムから出発するアミドを製造するために使用される。特に工業的規模において重要なことは、ナイロン−6を製造するためのカプロラクタムの製造とナイロン−12のためのラウリルラクタムの製造である(Beyer Walter著、Lehrbuch der organischen Chemie [有機化学の教科書]、第22版、シュトゥットガルト1991年、第546頁)。
【0003】
この反応は典型的には高温の強酸性媒体において行われ、これにより高含量の副産物が得られるが、これに伴って、精製が複雑になり且つ収率が低下し、そしてエネルギーコストが高くなる。
【化1】
【0004】
この文献には穏やかな反応条件下で塩化シアヌルを触媒として使用するベックマン転位の更なる変形が記載されている(JACS 2005年, 127, 11240)。この方法によって、対応するケトキシムから非環式及び環式アミドを好収率で合成でき、その際、触媒量のZnClの存在下で触媒量の塩化シアヌルを添加する。
【0005】
この方法の欠点は、文献のデータによると、極性溶媒、例えばアセトニトリル及びニトロメタン中においてのみ好収率が得られる一方、非極性溶媒中ではほんのわずかな変換しか達成されないことである。例えば、9−員環ラクタムは非常に低い収率でしか得られない。
【0006】
しかしながら、工業的規模で使用するために、非極性溶媒中でオキシム前駆体が得られるので非極性溶媒中での反応が求められる。従って塩化シアヌルを用いる文献の方法を利用する場合、複雑な中間段階において溶媒を交換する必要があり、追加の溶媒コストが発生するであろう。かかる方法は工業的規模の使用において明らかな欠点がある。
【0007】
従って、本発明の課題は、ベックマン転位を利用した更なるアミドの製造方法を特定することである。この方法は、塩化シアヌルを触媒として使用するにも関わらず、かかる極性溶媒を使用せずに済ますことができる。本発明による方法は、特に工業的規模で、環境保全的及び更に経済的な観点から先行技術の方法よりも優れていなければならない。特に、目下の方法は、塩化シアヌルの使用量を著しく増やさずに、低極性溶媒又は溶媒混合物におけるケトキシムの変換を著しく損なわずに進めることが可能であろう。
【0008】
驚くことにここで、塩化シアヌルの存在下でのケトキシムの加熱による対応するケトキシムからのアミドの製造方法において、2〜14のログP値を有する非極性有機溶媒中で反応が行われる時でさえ優れた収率でアミドを得ることができ、該溶媒は塩化シアヌルの使用量が5モル%以下の時に専らトルエンから構成されてはならないことが分かった。
【0009】
これは公知の先行技術の背景から決して予期されなかった。特に、驚くべきことと考えられるのは、非極性溶媒中での塩化シアヌルの使用量がわずかに低水準で増加した事実だけで、先行技術により広まった、この反応では極性溶媒及び求核溶媒を使用するという教示を、非極性溶媒を首尾良く使用することにまで拡大解釈するのに十分であるように見えることである。
【0010】
本発明の反応において使用される物質は環式又は非環式ケトキシムのいずれかであってよい。当業者は、各場合の合成の問題に応じて塩化シアヌルの量を調整できる。使用量の釣り合わせについて考慮するべき要素には、反応速度、空時収量及び/又は副産物の形成が含まれる。
【0011】
この反応は有利にはケトキシムを基準として0.5〜30モル%の量の塩化シアヌルの存在下で行われる。
【0012】
添加された塩化シアヌルの量は、鎖状又は環式ケトキシムの変換の合成問題に関連して変化してよいことが分かった。環式ケトキシムの場合、有利にはケトキシムの量を基準として0.5〜30モル%の量の塩化シアヌルを使用してよい。更に有利には0.5〜20モル%、更に有利には1〜15モル%、特に有利には1.5〜13モル%の量の塩化シアヌルが使用される。
【0013】
非環式ケトキシムの場合、有利にはケトキシムの量を基準として0.5〜30モル%の量の塩化シアヌルを使用してよい。更に有利には0.5〜20モル%、更に有利には1〜10モル%、特に有利には2〜6モル%の量の塩化シアヌルが使用される。
【0014】
非極性溶媒の選択は、本発明の文脈では当業者に委ねられる。溶媒の極性はいわゆるログP値によって規定してよい。これは、オクタノール水中での物質の分配係数Pの十進法の対数として定義される(文献:J. Phys. Chem. Ref. Data、第18巻、No.3、1989年)。有利な実施態様においては、溶媒のログP値は2〜10、更に有利には2.5〜8そして非常に有利には3〜7である。
【0015】
特に、反応において有用な溶媒は、シクロデカン、シクロオクタン、シクロヘプタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、n−ノナン、n−オクタン、n−ヘプタン、n−ヘキサン、n−ペンタン、イソオクタン、ヒドロクメン、トルエン、ベンゼン、及び類似物からなる群からの溶媒又は溶媒混合物であることが判明した。この文脈においてはシクロドデカン、シクロオクタン及びヒドロクメン又はそれらの混合物の使用が特に非常に有利である。
【0016】
助触媒の使用が本実験において必要であることが見出されなかったにも関わらず、ある物質をこの反応に添加することはある合成問題にとって好都合な場合がある。有用な助触媒は特にルイス酸又はブレンステッド酸である。かかる酸はZnCl、FeCl、CoCl、PbCl、SnCl、TiCl、ZrCl、又はHCl、HSO、HPO、HNO、p−トルエンスルホン酸、メチルスルホン酸、及び類似物からなる群から選択してよい。弱いルイス酸、例えば、塩化亜鉛、塩化鉄、塩化コバルト、又はブレンステッド酸、例えば、HCl、HSO、p−トルエンスルホン酸を使用することが特に非常に有利である。
【0017】
当業者は、彼らの知見に従って助触媒の使用量を選択できる。目下の場合、可能な使用量はケトキシムを基準として0.5〜20モル%、有利には0.5〜10モル%、そして最も有利には1〜4モル%である。
【0018】
この反応は有利には、まず基質を非極性溶媒中に装入し塩化シアヌルを混合物に添加して行われる。その後、50〜250℃の温度を維持するために、この反応混合物を加熱する。反応の温度は有利には80〜120℃、最も有利には100〜115℃である。
【0019】
反応が完了すると、これを上述の温度で、一般的には少なくとも3時間以内、有利には2時間以内、更に有利には1時間より短い、更に特に15分より短い時間で終了させた。この混合物は当業者が定めた通りに後処理してよい。このために、溶液を有利には冷却し、ラクタムを結晶化させて濾別し;適切であれば生成物を再結晶により更に精製してよい。
【0020】
85%を上回るアミドの収率で非環式ケトキシムを反応させるために5モル%の塩化シアヌルを使用することが有利である。文献データとは異なり、これは極性溶媒と非極性溶媒の両方の場合である。低濃度は通常、低変換をもたらすが;高濃度はオキシムの100%変換をもたらし、副生物形成のリスクが高まる。
【0021】
反応に用いられた環式ケトキシムは、有利には6〜12、更に有利には7〜12、そして更に有利には7〜9又は更に有利には10〜12の環サイズを有する。
【0022】
10〜12の環サイズを有する環式ケトキシムは、有利にはヒドロクメン又はシクロオクタンに変換してよく、100%の変換率及び90%を上回る収率の場合には2〜3モル%の塩化シアヌルを用いて得られる。極性溶媒、例えばアセトニトリルの場合、完全変換にはたった1モル%の塩化シアヌル濃度だけで十分である。前駆体からの未変換のケトンは反応を妨害しない。
【0023】
小さい環(環サイズ6〜9、有利には7〜9)の変換のために、有利には3〜13モル%の塩化シアヌル濃度が使用される。これも同様に85%を上回る変換率が適切な時間枠内で達成されることを可能にする。
【0024】
この反応は、攪拌槽でバッチ式に進めるか又は管形反応器、攪拌槽又は攪拌槽バッテリで連続式に進めてよい。
【0025】
興味深いことに、本発明は、引用先行技術から得られた教示とは異なり、非極性溶媒中でさえも非常に高収率で塩化シアヌルを用いた触媒的なベックマン転位を達成することが完全に可能であることを示す。ここで溶媒としてのトルエンはたった8%の収率しかもたらさないので、特にJACS刊行物の表1、エントリ11の例によって、当業者は目下の反応において非極性溶媒を使用することをやめたであろう。しかしながら、この場合、塩化シアヌル濃度のわずかな増加が生成物の収率を驚くほど大幅に高めることが示された。これが本明細書に記載された製法の変形を好ましくは特に工業的規模で例外的に使用できる理由である。しかしながら、これは目下の先行技術によって全く明らかにされていない。9員環のラクタムも本発明による方法によって経済的に有利な収率で製造できることが特に強調されるべきである。
【0026】
更に、アミド及びラクタムの製造において非極性溶媒から極性溶媒への溶媒の交換を従って避けることができるため、非極性溶媒の使用は、本明細書で使用された前駆体も同じく非極性溶媒で製造されたことを背景にプロセスの経済的理由で特に有利である。
【0027】
本発明の反応に使用されるべきオキシムは当業者に公知の方法によって得られる(Organikum, VEB Deutscher Verlag der Wissenschaften、ベルリン1986年、第16版、第394頁以降を参照のこと)。
【0028】
実施例:
この反応は全て、異なる量の塩化シアヌルを触媒として添加して各場合において4mlの溶媒中で2ミリモルの特定のオキシムを用いて実行された。全ての溶媒を分析用に使用した。反応はGCを用いて監視され、変換率と収率は面積パーセンテージから求められた。収率はそれぞれ使用されたオキシムの量を基準にしている。
【0029】
実施例1
1モル%のCYCを用いてACN中でアセトフェノンオキシムを還流下で60分間反応させた。変換率61%、ラクタムの収率61%。
【0030】
実施例2
5モル%のCYCを用いてACN中でアセトフェノンオキシムを還流下で60分間反応させた。変換率99%、ラクタムの収率99%。
【0031】
実施例3
10モル%のCYCを用いてトルエン中でアセトフェノンオキシムを還流下で60分間反応させた。変換率98%、ラクタムの収率60%。
【0032】
実施例4
1モル%のCYCを用いてシクロオクタン中でアセトフェノンオキシムを113℃で60分間反応させた。変換率5%、ラクタムの収率5%。
【0033】
実施例5
5モル%のCYCを用いてシクロオクタン中でアセトフェノンオキシムを113℃で60分間反応させた。変換率99%、ラクタムの収率90%。
【0034】
実施例6
10モル%のCYCを用いてシクロオクタン中でアセトフェノンオキシムを113℃で60分間反応させた。変換率99%、ラクタムの収率60%。
【0035】
実施例7
1.1モル%のCYCを用いてACN中でCDONを還流下で60分間反応させた。変換率100%、ラクタムの収率100%。
【0036】
実施例8
1.6モル%のCYCを用いてACN中でCDONを還流下で60分間反応させた。変換率100%、ラクタムの収率100%。
【0037】
実施例9
2.2モル%のCYCを用いてACN中でCDONを還流下で120分間反応させた。変換率100%、ラクタムの収率100%。
【0038】
実施例10
1.6モル%のCYCを用いてトルエン中でCDONを還流下で60分間反応させた。変換率18%、ラクタムの収率18%。
【0039】
実施例11
4.3モル%のCYCを用いてトルエン中でCDONを還流下で60分間反応させた。変換率98%、ラクタムの収率98%。
【0040】
実施例12
0.7モル%のCYCを用いてヒドロクメン中でCDONを113℃で60分間反応させた。変換率4%、ラクタムの収率4%。
【0041】
実施例13
1.7モル%のCYCを用いてヒドロクメン中でCDONを113℃で60分間反応させた。変換率27%、ラクタムの収率27%。
【0042】
実施例14
1.9モル%のCYCを用いてヒドロクメン中でCDONを113℃で60分間反応させた。変換率97%、ラクタムの収率97%。
【0043】
実施例15
2.1モル%のCYCを用いてヒドロクメン中でCDONを113℃で60分間反応させた。変換率100%、ラクタムの収率100%。
【0044】
実施例16
2.6モル%のCYCを用いてヒドロクメン中でCDONを113℃で10分間反応させた。変換率100%、ラクタムの収率100%。
【0045】
実施例17
2.1モル%のCYCを用いてヒドロクメン中でCDONを113℃で15分間反応させ且つ2.5%のシクロドデカンを添加した。変換率100%、ラクタムの収率100%。
【0046】
実施例18
1.6モル%のCYCを用いてシクロオクタン中でCDONを113℃で150分間反応させた。変換率28%、ラクタムの収率28%。
【0047】
実施例19
2.7モル%のCYCを用いてシクロオクタン中でCDONを113℃で20分間反応させた。変換率100%、ラクタムの収率100%。
【0048】
実施例20
2.1モル%のCYCを用いてシクロドデカン中でCDONを113℃で30分間反応させた。変換率100%、ラクタムの収率100%。
【0049】
実施例21
2.1モル%のCYCを用いて1:1の容積比のヒドロクメンとシクロオクタンとの混合物中でCDONを113℃で30分間反応させた。変換率100%、ラクタムの収率100%。
【0050】
実施例22
2.1モル%のCYCを用いて1:1の容積比のヒドロクメンとシクロドデカンとの混合物中でCDONを113℃で30分間反応させた。変換率100%、ラクタムの収率100%。
【0051】
実施例23
2.1モル%のCYCを用いて20質量%のシクロデカンと80質量%のシクロオクタンとの混合物中でCDONを113℃で30分間反応させた。変換率100%、ラクタムの収率100%。
【0052】
実施例24
2.1モル%のCYCを用いてn−オクタン中でCDONを113℃で60分間反応させた。変換率100%、ラクタムの収率100%。
【0053】
実施例25
1.6モル%のCYC及び1.0モル%の硫酸を用いてシクロオクタン中でCDONを113℃で30分間反応させた。変換率50%、ラクタムの収率20%。
【0054】
実施例26
3.1モル%のCYCを用いてシクロオクタン中でc−オクタノンオキシムを113℃で30分間反応させた。変換率10%、ラクタムの収率10%。
【0055】
実施例27
12.5モル%のCYCを用いてシクロオクタン中でc−オクタノンオキシムを113℃で30分間反応させた。変換率95%、ラクタムの収率95%。
【0056】
実施例28
6.3モル%のCYC(オキシムの総量を基準として)を用いてシクロオクタン中でc−オクタノンオキシムとCDONとの混合物(58/42モル%)を113℃で30分間反応させた。C−オキシムの変換率100%、C12−オキシムの変換率100%、C8/C12ラクタムの収率100%/100%。
【0057】
実施例29
12.5モル%のCYC(オキシムの総量を基準として)を用いてシクロオクタン中でc−オクタノンオキシムとCDONとの混合物(58/42モル%)を113℃で30分間反応させた。C−オキシムの変換率100%、C12−オキシムの変換率100%、C8/C12ラクタムの収率50%/100%。
【0058】
実施例30
5.9モル%のCYC(オキシムの総量を基準として)を用いてヒドロクメン中でc−ヘキサノンオキシムとCDONとの混合物(63/37モル%)を113℃で95分間反応させた。C−オキシムの変換率90%、C12−オキシムの変換率90%、C6/C12ラクタムの収率20%/50%。
【0059】
実施例31
1.6モル%のCYC及び4.1モル%の塩化亜鉛を用いてシクロオクタン中でCDONを113℃で60分間反応させた。変換率100%、ラクタムの収率100%。
【0060】
工業的規模での且つ連続合成方式を用いた更なる実施例。
【0061】
実施例1.1
ヒドロクメン75gとCDON25g(0.126モル、分子量197.3)との混合物100gを、115℃の浴温度において80℃で塩化シアヌル0.50g(0.00271モル、分子量184.4)と混合し、30分間攪拌する。この過程において、最高150℃までの発熱を2〜3分後に設定し、6〜7分後に終了させた。その後、混合物を引き続き110〜115℃で反応させる。
【0062】
GC分析:0.4面積%のCDONと98.6面積%のラウリルラクタム
約10℃に冷却して沈殿物を濾別し、減圧下において70℃で乾燥させる。
単離収率:23.3g、ラウリルラクタム=理論の93.2%、分子量197.3
【0063】
実施例1.2
最初にCDON19.8gを約80℃(浴温度115℃)でシクロオクタン100mlに装入し、塩化シアヌル0.50gを添加する。4分以降に、最高130℃に発熱を設定し、8分後に再び減じる。反応を15分後に終了させて冷却を開始する。
【0064】
GC分析:0.06面積%のCDONと99.6面積%のラウリルラクタム
単離収率:19.1g、ラウリルラクタム=理論の96.5%、分子量197.3
【0065】
実施例1.3
シクロオクタン中の25質量%のCDONの溶液(温度80℃)[溶液A]とシクロオクタン中の10質量%の塩化シアヌルの溶液(温度40℃)[溶液B]を、10l/時間のゾルA及び0.6l/時間のゾルBの一定流速でポンプを用いて、同時に115℃の熱した反応コイル、DN25、長さ5.6m、及び100℃に熱した下流に続く反応ゾーン、DN25、長さ2.8m中に計量供給する。次に得られた反応溶液を冷却して生成物を単離し、必要であれば精製する。
【0066】
これは反応ゾーンにおいて約15分そして連続した反応において約8分の平均滞留時間をもたらし、これは完全な変換に十分である。
【0067】
得られた反応溶液のガスクロマトグラフィ分析は、0.08面積%のCDONと99.2面積%のラウリルラクタムを示す。
【0068】
単離収率:1lの反応溶液から、238gの粗原料、乾燥ラウリルラクタムが得られた。これは理論の95.2%に相当する。
【0069】
略語:
CYC=塩化シアヌル
ACN=アセトニトリル
CDON=シクロドデカノンオキシム