(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
耕耘軸に取り付けられる取付基部と、該取付基部に連続する縦刃部と、該縦刃部に連続する横刃部とを有し、前記縦刃部から前記横刃部にかけて回転方向と逆向きに湾曲されているとともに、前記横刃部が前記縦刃部との境界である折曲開始線から一側方に折曲された耕耘爪であって、
前記耕耘爪を前記耕耘軸に取り付けた状態で前記折曲開始線と刃縁部との交点がほぼ最下端位置となるように配置したときの耕耘軸心方向の側面視において、
前記折曲開始線は、前記取付基部と反対側に向かって所定の傾きを有し、
耕耘軸心方向において前記取付基部の他側方面から前記横刃部の先端までの距離は、刃縁部の先端部と前記交点との垂直距離の約2倍の関係にあり、
前記横刃部の折曲部分の曲率半径は、前記耕耘軸心と前記交点との水平距離の1/2から2/3程度としたことを特徴とする耕耘爪。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような耕耘爪によれば、縦刃部の刃縁部によっての土の縦切り深さを充分に確保しつつ側方力を確実に支持して横刃部におけるすくい面での土の抱き込みと放擲を確実にし、耕耘振動および消費馬力の節減ができるものと考えられる。
【0006】
しかしながら、耕耘爪は使用とともに土砂等による摩耗により徐々に劣化するものであり、例えば上記のような耕耘爪では、
図3(b)に示すように横刃部の湾曲部分がくびれて摩耗してしまう。これは、横刃部の湾曲部分において土砂の流れが変化しているためと考えられる。このように一部分だけが特に摩耗してくびれてしまうと(以下、「くびれ摩耗」という)、当初の形状に比べ各部分の比率が大きく変わることになるため、耕耘性能が低下してしまう虞がある。
【0007】
また、単にくびれ摩耗を防止させるのであれば、横刃部の折曲の曲率半径を大きくすれば良いと考えられるが、この場合、所定の切削幅を確保するためには縦刃部を小さくしなければならないため、従来品より耕耘性能が低下してしまう虞がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題を一例として、使用により摩耗しても耕耘性能が低下し難い耕耘爪を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するため、本発明に係る耕耘爪は、耕耘軸に取り付けられる取付基部と、該取付基部に連続する縦刃部と、該縦刃部に連続する横刃部とを有し、前記縦刃部から前記横刃部にかけて回転方向と逆向きに湾曲されているとともに、前記横刃部が前記縦刃部との境界である折曲開始線から一側方に折曲され
た耕耘爪であって、
前記耕耘爪を前記耕耘軸に取り付けた状態で前記折曲開始線と刃縁部との交点がほぼ最下端位置となるように配置したときの耕耘軸心方向の側面視において、
前記折曲開始線は、前記取付基部と反対側に向かって所定の傾きを有し、
耕耘軸心方向において前記取付基部の他側方面から前記横刃部の先端までの距離は
、刃縁部の先端部と前記交点との垂直距離の約2倍の関係にあ
り、前記横刃部の折曲部分の曲率半径は、前記耕耘軸心と前記交点との水平距離の1/2から2/3程度としたことを特徴とする。
また、
前記耕耘軸心と前記交点との水平距離は、前記刃縁部の先端部と前記耕耘軸心との水平距離の略1/2から2/3程度としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、折曲開始線が刃先側に向かって傾くことで切削角が小さくなり、これに加え、刃縁部の先端部の高さが切削幅の半分程度に押さえられていることにより、土砂が横刃部の全面に対して流れて移動する。そのため、横刃部の一部分だけが他の部分に比し特に摩耗されることがないため、くびれ摩耗を起こし難くなっている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。便宜上、同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。なお、本実施の形態では耕耘爪としてホルダータイプとフランジタイプについて説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、ホルダータイプの耕耘爪1が回動自在の耕耘軸(爪軸)3に取り付けられた状態における耕耘軸心方向の側面図である(耕耘軸3については耕耘軸心3aのみ図示する)。板状に形成されている耕耘爪1は、耕耘軸3に取り付けられる取付基部10と、該取付基部10に連続して設けられる縦刃部20と、該縦刃部20に連続して設けられる横刃部30とを有し、取付基部10に対して縦刃部20及び横刃部30が回転方向(
図1において矢印Yで示す)と逆向きに湾曲するように形成されており、さらに横刃部30は一側方(
図1においては手前側)に折曲されて設けられている。
【0014】
縦刃部20及び横刃部30の外周側には連続して略一定幅の刃縁部50が設けられ、この刃縁部50は片刃となっている。この刃縁部50は破線によって図示されている。なお、刃縁部50は、両刃でもよく、その場合には角度を異なるものにすることが好ましいが、等角としてもよい。耕耘爪1が矢印Y方向に回転することによる耕土への切り込みは、縦刃部20の刃縁部50から行われ、側方力(軸心方向の力)を支持すると同時に雑草等の絡みつき防止を爪自体で行うようにするため、刃縁部50は適正な排絡角をなすように形成されている。
【0015】
ここで、
図1(a)は、耕耘軸心3aと取付基部10の中心とを通る直線が垂直になるように配置されたものであり、以下この配置に基づいて各部を詳細に説明する。なお、この場合、縦刃部20から横刃部30への変わり目である折曲開始線Lsと刃縁部50との交点P1(刃縁部50における折曲開始点)がほぼ最下端位置となっている。
【0016】
取付基部10には、ボルト等の締結手段を挿通するための取付孔11が設けられており、該取付孔11によって耕耘軸1に設けられた爪ホルダ(図示省略)に取り付けられる。なお、取付孔11より耕耘軸3側(上側)がいわゆる頭13であり、取付孔11より刃縁部50の先端部である刃先31側(下側)がいわゆる首15である。図示例では頭13の長さ13Lが約25mm程度、首15の長さ15Lが約27mm程度となっている。また、
図2(a)にA−A断面図として示すように取付基部10は断面矩形状に形成されており、基部厚A1が約10mm程度、基部幅B1が約25mm程度となっている。
【0017】
縦刃部20は、取付基部10の首15に連続して形成され、取付基部10に対して回転方向Yと逆向きに湾曲している。この湾曲は、内周側(峰55側)も外周側(刃縁部50側)も先端側になるにつれて曲率半径が大きくなるようになっている。図示例における曲率半径は、内周側が曲率半径R1から始まり、より大きな曲率半径R2に切り替わっており、外周側が曲率半径R3から始まり、より大きな曲率半径R4に切り替わっている。また、曲率半径R3より曲率半径R2が大となっている。このように内周側と外周側とで曲率半径が異なり、さらに先端側になるにつれて曲率半径が大きくなっているため、
図2(b)乃至(d)に示すように先端になるにつれて断面の厚さが徐々に小となっている。図示例では取付基部10に近いB−B断面の厚さA2は約9.5mm程度であり、縦刃部20の中間付近のC−C断面では厚さA3が約7mm程度であり、縦刃部20から横刃部30への変わり目付近のD−D断面の厚さA4は約5mm程度となっている。
【0018】
横刃部30は折曲開始線Lsから刃先31側の全部分であり、全体的に手前側に折曲しているものであるが、折曲前の形状を
図1に一点鎖線で示す。横刃部30は、縦刃部20に連続して形成され、縦刃部20と同様に取付基部10に対して回転方向Yと逆向きに湾曲している。この湾曲は縦刃部20の湾曲に連続しており、図示例における曲率半径は、内周側が曲率半径R2、外周側が曲率半径R4となっている。なお、横刃部30の先端は、長辺30aと短辺30bとからなる不等辺山形に形成されている。これにより、横刃部30の質量を軽くすることとなり、消費馬力を節減できるとともに、動的振動要因を少なくしている。
【0019】
取付孔11の中心を基準(原点)としたとき、縦刃部20から横刃部30への境界となっている折曲開始線Lsと刃縁部50との交点P1の水平距離である折曲開始距離Lh1は、全長の水平距離Lh2や刃縁部50の先端部である刃先31までの水平距離Lh3の半分よりやや大きくなっており、折曲開始点(交点P1)は耕耘爪1の中央より刃先31側となっている。横刃部30の折曲は、折曲開始線Lsから始まり略一定の曲率半径R5によって形成されている。この曲率半径R5は、折曲開始距離Lh1より小であるように形成される。
【0020】
折曲開始線Lsと峰55との交点P2と耕耘軸心3aとの水平距離は折曲開始距離Lh1より大きくなっており、これによって折曲開始線Lsは刃先31側(取付基部10と反対側)に傾くことになる。なお、図示例における傾きである折曲開始角αは、例えば約8°程度となっている。このように折曲開始線Lsが刃先31側に傾いて設けられることにより、横刃部30の立ち上がりの目安である切削角βが小さくなる。なお、切削角βは、刃縁部50の先端部(刃先31)と耕耘軸心3aとを結ぶ線に直交する線Mと折曲開始線Lsとのなす角であるが、
図1において折曲開始線Lsに平行な線Ls2を刃先31に描画し、この線Ls2と前記線Mとの角度として表記している。
【0021】
また、折曲開始点(交点P1)から刃先31までの垂直距離である逃げ高さHは、耕耘軸心3a方向における横刃部30の幅である切削幅W(
図1(b)参照)の略半分程度に抑えられている。すなわちH≒W/2(或いはW≒2H)の関係となっており、図示例のサイズでは許容範囲は±5mm程度である。
【0022】
従来のくびれ摩耗を起こす耕耘爪では、土砂の流れが横刃部の所定の場所で変化してしまうのに対し、上記のような構成では、切削角βが小さくなるように折曲開始線Lsを刃先31側に向かって傾かせており、これに加え、逃げ高さHが切削幅Wの半分程度に押さえられていることにより、土砂が横刃部30の全面に対して滑るように相対的に移動する。これにより、横刃部30の一部分だけが他の部分に比し特に摩耗されることがないため、くびれ摩耗を起こし難くなっている。
【0023】
さらに、横刃部30の曲率半径R5は、折曲開始距離Lh1より小さく、折曲開始距離Lh1の1/2から2/3程度となっている。これにより、折曲角γ(
図1(b)参照)が比較的大きくなり、横刃部30のすくい面の面積が小さくても土砂の抱き込みが確保され、土砂の放擲が確実になる。また、横刃部30の面積が大きくなると、土砂の抵抗が大きくなり振動等が増大する虞があるが、実施例の耕耘爪1では折曲開始距離Lh1が刃先31までの水平距離Lh3の半分より大きく略2/3となっており、この心配がない。さらに縦刃部20が長くとれることから、土の縦切り深さを確保することができる。
【0024】
また、縦刃部20及び横刃部30における刃縁部50側の所定部分(図において境界線を二点鎖線で示す)に耐摩耗性のコーティングをすることにより、より摩耗に強い耕耘爪とすることができる。
【0025】
以下、各部の寸法について具体例を示す。符号は
図1に対応したものである。長さは±5mm程度、角度は±5°程度の許容範囲を含むものである。
最大回転半径Rm : 245mm
折曲開始距離Lh1 : 110mm
全長水平距離Lh2 : 190mm
刃先水平距離Lh3 : 180mm
垂直距離Lv : 193mm
垂直距離Lv : 128mm
折曲開始角α : 8°
切削角β : 35°
折曲角γ : 60°
切削幅W : 55mm
逃げ高さH : 27mm
R1 : 45mm
R2 : 140mm
R3 : 83mm
R4 : 162mm
R5 : 65mm
【0026】
上記寸法、形状の耕耘爪1を材質SUP6で形成し、耕耘軸3と従来の耕耘爪90とをロータリ耕耘装置に装着して各部の摩耗率等を測定した。
図3の(a)に実施例の耕耘爪1の結果を、(b)に従来の耕耘爪90の結果をそれぞれ示す。破線部分が摩耗部分となっており、実施例の耕耘爪1が従来の耕耘爪90よりもくびれ摩耗し難くなっていることを確認した。このように従来品より耐久性が良くなっているため、従来と同じ厚さで形成された場合には寿命が延びることになる。また、従来と同等の寿命を求める場合には、厚さを薄くすることが可能となり、これによって軽量化を図ることができる。
【0027】
実施の形態2.
図4に本発明の他の実施の形態であるフランジタイプの耕耘爪100を示す。なお、前記実施の形態1と同一または対応する部分には、
図1と同一の符号を用いて主に前記実施の形態1と異なる構成のみを説明する。
図4は、フランジタイプの耕耘爪100が回動自在の耕耘軸3に取り付けられた状態における耕耘軸心3a方向の側面図である。板状に形成されている耕耘爪100は、耕耘軸3に取り付けられる取付基部110と、該取付基部110に連続して設けられる縦刃部120と、該縦刃部120に連続して設けられる横刃部130とを有し、縦刃部120から横刃部130にかけて回転方向(
図4において矢印Yで示す)と逆向きに湾曲するように形成されており、さらに横刃部130は一側方(
図4においては手前側)に折曲されて設けられている。
【0028】
ここで、ホルダータイプにおける縦刃部20が取付基部10に対して湾曲しているのに対し、フランジタイプの縦刃部120はほぼ湾曲せずに取付基部110から連続して設けられるため、図示例では、耕耘爪100の峰155側の形状がホルダータイプのものと異なっている。すなわち、ホルダータイプでは、曲率半径R1で湾曲しているが、フランジタイプでは略直線状となっている。
【0029】
なお、
図4は、縦刃部120から横刃部130への変わり目である折曲開始線Ls3と刃縁部150との交点P3(刃縁部150における折曲開始点)がほぼ最下端位置となるように配置されているものである。
【0030】
取付基部110には、ボルト等の締結手段を挿通するための取付孔111,112が設けられており、該取付孔111,112に挿通されたボルト等によって耕耘軸3に設けられた図示しない取付フランジに締結される。なお、取付孔が二箇所に設けられた例を示しているが、これに限定されることはない。また、取付孔の配置もロータリ耕耘装置の種類等によって適宜変更可能である。
【0031】
各部寸法は実施の形態1に準じており、例えば最大回転半径Rmは245mmに形成されている。各部寸法で実施の形態1と異なっているのは、縦刃部110の最初の曲率半径R1と折曲開始距離である。耕耘軸心3aを基準とした場合、折曲開始距離Lh4は、刃先131までの水平距離Lh5の半分より大きく形成されており、折曲開始点P3は耕耘爪100の中央より刃先131側となっている。図示例では折曲開始距離Lh4が約120mm程度、刃先までの水平距離Lh5が約180mm程度であり、折曲開始距離Lh4が刃先131までの水平距離Lh5の半部より大きく略2/3となっている。また、横刃部130の曲率半径R6は、折曲開始距離Lh4より小さく、折曲開始距離Lh4の1/2から2/3程度となっている。フランジタイプの場合、ホルダータイプにおける基部幅[
図2(a)参照]に相当する幅を大きくできることから、より高い強度・耐久性を求められる耕耘作業機用の耕耘爪として適している。
【0032】
このように構成された耕耘爪100と従来の耕耘爪とをロータリ耕耘装置に装着して各部の摩耗率等を測定したところ、従来の耕耘爪よりもくびれ摩耗し難くなっていることを確認した。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、各部寸法、角度、形状、材料等は適宜変更することができ、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、本発明は、実施の形態に示したように、ホルダータイプであるかフランジタイプであるかを問わずに実施することが可能であり、これら以外にも様々な方式の取付方法を採用することが可能である。
【0034】
また、ホルダータイプ及びフランジタイプの耕耘爪について、横刃部の先端が長辺と短辺とからなる不等辺山形に形成されている例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば
図5に示すように、横刃部230の先端が緩やかに湾曲するアール形状に形成されていても構わない。
図5に示す例は、ホルダータイプであって取付基部210、縦刃部220及び横刃部230からなる耕耘爪200における、横刃部230の先端部の形状のみが
図1に示したホルダータイプの耕耘爪1と相違するものであり、これ以外の折曲開始線Ls、切削幅W、逃げ高さH、各曲率半径R1〜R5等については耕耘爪1と同様の形状となっている。