(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜10のいずれかに記載の固定子と、回転子を備え、前記回転子は、前記固定子の前記ティース先端面との間に空隙を有するように回転可能に支持されていることを特徴とする回転機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の回転機では、結束バンドを貫通孔および凹部を通すことによって、固定子巻線の端部を端部絶縁部材に固定しているため、作業が面倒である。特に、特許文献1に記載の回転機(回転機を構成する固定子)では、固定子巻線の端部を端部絶縁部材に固定する作業を機械化するのが困難である。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、集中巻き方式で巻かれた固定子巻線の端部を端部絶縁部材に容易に固定することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の回転機は、回転子が固定子の内側に回転可能に支持される回転子内転型の回転機として、あるいは、回転子が固定子の外側に回転可能に支持される回転子外転型の回転機として構成することができる。また、電動機や発電機等の種々の形式の回転機として構成することができる。
【0006】
一つの発明は、回転機の固定子に関する。固定子は、固定子コアと固定子巻線を備えている。固定子コアは、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って延びているヨークと、ヨークから径方向に延びている複数のティースを有している。各ティースは、ヨークから径方向に沿って延びているティース基部と、ティース基部の先端側に設けられ、周方向に沿って延びているティース先端部を有している。ティース先端部には、ヨークと反対側にティース先端面が形成されている。なお、回転子は、ティース先端面との間に空隙を有している状態で、固定子に対して回転可能に支持される。
そして、固定子コアの軸方向両側には、端部絶縁部材が設けられている。各端部絶縁部材は、軸方向に直角な断面で見て、ティース先端部に対向する箇所に配置され、周方向に沿って延びている複数の第1の部材と、ヨークに対向する箇所に配置され、周方向に沿って延びている第2の部材と、ティース基部に対向する箇所に配置されているとともに径方向に沿って延びており、第1の部材と第2の部材に接続されている複数の接続部材を有している。好適には、第1の部材と第2の部材は、接続部材から軸方向に延びる壁部材として形成される。
固定子巻線は、ティースと端部絶縁部材の接続部材に集中巻き方式により巻かれている。少なくとも一方の端部絶縁部材には、固定子巻線の少なくとも一方の端部が、第1の部材と第2の部材の間に配置される。また、少なくとも一方の端部絶縁部材の第2に部材には、周方向に隣接する2つの接続部材の間に、第2の部材を径方向に貫通している第1の貫通部が形成されている。
また、固定子巻線の端部を第2の部材に固定する固定部材を備えている。固定部材としては、絶縁性を有し、固定子巻線の端部を第2の部材に締め付けることができる部材が用いられる。例えば、絶縁性を有する紐(コード)が用いられる。紐としては、例えば、ポリエステルコード(ポリエステルより紐、ポリエステル編組紐)、ノーメックスコード、PPSコード、ベクトランコード、ポリエステル・ノーメックス混合(編組)紐等が用いられる。なお、本発明の「紐」には、糸も含まれる。
さらに、固定部材が、第1の貫通部に、径方向の一方向に沿って通されることによって形成された第1の輪と第2の輪を有している。固定部材を第1の貫通部に通す方法としては、典型的には、ニードルのフック部に、一方側の端部が固定されている固定部材を引っ掛けた状態で、ニードルのフック部を、第1の貫通部に、径方向の一方向に沿って通す方法が用いられる。「径方向の一方向」は、第2の部材の、第1の部材と反対側から、第2の部材の第1の部材側に向かう方向、あるいは、第2の部材の第1の部材側から、第2の部材の、第1の部材と反対側に向かう方向が対応する。好適には、固定部材は、第2の部材の第1の部材側から、第2の部材の、第1の部材と反対側に向かう方向に通される。
そして、少なくとも一方の端部絶縁部材に配置されている、固定子巻線の少なくとも一方の端部は、第1の輪と第2の輪によって第2の部材に押し付けられている。固定子巻線の端部を第2の部材に押し付ける方法としては、好適には、固定子巻線の端部を第2の部材に縛り付ける方法が用いられる。
固定子巻線の他方の端部は、一方の端部絶縁部材あるいは他方の端部絶縁部材に配置される。固定子巻線の他方の端部が一方の端部絶縁部材に配置される場合には、固定子巻線の他方の端部は、同じ固定部材によって、固定子巻線の一方の端部とともに第2の部材に押し付けられる。固定子巻線の他方の端部が他方の端部絶縁部材に配置される場合には、他方の端部絶縁部材の第2の部材にも第1の貫通部が設けられる。そして、固定子巻線の他方の端部は、他方の端部絶縁部材の第1の部材と第2の部材の間に配置されるとともに、固定子巻線の一方の端部を固定している固定部材と異なる他の固定部材によって、第2の部材に押し付けられる。なお、固定子巻線の他方の端部は、固定部材によって固定する必要がない態様で、一方の端部絶縁部材あるいは他方の端部絶縁部材に配置されることもある。
固定子巻線の端部の処理方法は、固定子巻線の結線方法等に応じて決定される。例えば、3相(U相、V相、W相)の固定子巻線をスター結線する場合には、各相の固定子巻線の一方の端部は、外部に引き出され、他方の端部は、中性点で接続される。また、固定子巻線の一方の端部を外部に引き出す方法としては、固定子巻線の一方の端部をそのまま引出す方法と、固定子巻線の一方の端部に引出線を接続し、引出線を外部に引き出す方法が用いられる。本発明の「固定子巻線の端部」には、固定子巻線の端部に接続された引出線も包含される。
本発明の固定子では、固定部材を、第1の貫通部に、径方向の一方向に通すことによって形成される第1の輪と第2の輪を用いて、固定子巻線の端部を端部絶縁部材の第2の部材に固定しているため、固定子巻線の端部を第2の部材に容易に固定することができる。
【0007】
他の形態では、第1の輪と第2の輪は、第1の輪が、当該第1の輪に対して周方向の一方側に隣接する第2の輪の中を通り、第2の輪が、当該第2の輪に対して周方向の一方側に隣接する第1の輪の中を通るように、周方向に沿って交互に配置されている。
本形態では、第1の輪と第2の輪を容易に連結することができる。
【0008】
異なる他の形態では、
固定部材が、第1の貫通部に第1の部材側から
第1の部材と反対側に通されることによって、第2の部材の第1の部材と反対側に
第1の輪が形成され、さらに、
第1の輪は、第2の部材の
第1の部材と反対側から第2の部材の第1の部材側に渡されているとともに、
周方向の一方側に隣接する第2の輪の中を通っている。
固定部材が、周方向に沿って離れている2つの第1の貫通部に第1の部材側から
第1の部材と反対側に通され、また、第2の部材の第1の部材側において、
当該2つの第1の貫通部の間の固定部材が、当該2つの第1の貫通部のうち周方向の一方側の第1の貫通部に固定部材が通されることによって形成される第1の輪の中を通されることによって、第2の部材の第1の部材側に
第2の輪が形成されている。
本形態では、第1の輪と第2の輪を連続して配置することができるため、固定子巻線の端部を第2の部材に容易に固定することができる。
【0009】
さらに異なる他の形態では、第1の貫通部として、径方向に貫通している穴あるいは固定子コア側が開口しているとともに径方向に貫通している溝を用いている。
本形態では、第1の貫通部として、径方向に貫通している穴あるいは固定子コア側が開口しているとともに径方向に貫通している溝を用いているため、固定部材を第1の貫通部に径方向に容易に通すことができ、固定子巻線の端部を第2の部材に容易に固定することができる。
【0010】
さらに異なる他の形態では、第1の貫通部は、軸方向に直角な断面で見て、第1の貫通部の少なくとも一部と固定子コアの中心を通る線が、周方向に隣接する2つの接続部材それぞれに接続されている第1の部材の間を通るように設けられている。「固定子コアの中心を通る線」は、回転子が固定子に対して移動可能に配置されている状態において、回転子の軸中心を通る回転中心線が対応する。
第1の貫通部の配設位置や固定子コアの中心側から見た断面形状は、軸方向に直角な断面で見て、固定部材を第1の貫通部に径方向に沿って通す工具(例えば、ニードル)が、固定子コアの中心を通る直線に沿って第1の貫通部を通ることができればよい。例えば、第1の貫通部の周方向に沿った長さは、周方向に隣接する2つの接続部材それぞれに接続されている第1の部材の間の間隔と同じでもよく、長くてもよく、短くてもよい。また、第1の貫通部は、固定子コアの中心側から見て、周方向に隣接する2つの接続部材それぞれに接続されている第1の部材の間に設けられていてもよいし、周方向のいずれか一方側にずれて設けられていてもよい。すなわち、固定子コアの中心側から見て、第1の貫通部の少なくとも一部が、周方向に隣接する2つの接続部材それぞれに接続されている第1の部材の間に設けられていればよい。
本形態では、固定部材を第1の貫通部に径方向に沿った一方向に通すために用いる工具(例えば、鉤状のフック部を有するニードル)を、第1の貫通部に容易に挿入し、また、引出すことができる。
【0011】
さらに異なる他の形態では、少なくとも一方の端部絶縁部材の第2の部材は、周方向に隣接する2つの接続部材の間において、軸方向に沿って第1の貫通部より固定子コアから離れている箇所で第2の部材を径方向に貫通している第2の貫通部を有している。そして、第1の輪は、第2の貫通部を通って、第2の部材の、第1の部材と反対側から第1の部材側に渡されている。第2の貫通部は、好適には、軸方向に直角な断面で見て、第1の貫通部の少なくとも一部が第2の貫通部と重なるように、より好適には、第1の貫通部の周方向中心と第2の貫通部の周方向中心が重なるように形成される。
本形態では、第1の輪を第2の貫通部に位置決めすることができるため、第1の輪が、周方向にずれることがなく、固定子巻線の端部を第2の部材に確実に固定することができる。また、固定部材が、第2の部材から軸方向に飛び出ないため、固定子の軸方向の長さを小さくすることができる。
【0012】
さらに異なる他の形態では、第1の貫通部として、径方向に貫通している穴あるいは固定子コア側が開口しているとともに径方向に貫通している溝が用いられ、第2の貫通部として、固定子コアと反対側が開口しているとともに径方向に貫通している溝が用いられている。
本形態では、第1の貫通部および第2の貫通部を容易に形成することができる。また、第2の貫通部として、固定子コアと反対側が開口している溝を用いていることにより、第1の輪を、第2の貫通部の、第1の部材と反対側から、第1の部材の第1の部材側に容易に渡すことができる。また、固定部材が、第2の部材から軸方向に飛び出ないため、固定子の軸方向に沿った高さを小さくすることができる。
【0013】
さらに異なる他の形態では、第1の貫通部および第2の貫通部は、軸方向に直角な断面で見て、第1の貫通部の少なくとも一部と固定子コアの中心を通る線および第2の貫通部の少なくとも一部と固定子コアの中心を通る線が、周方向に隣接する2つの接続部材それぞれに接続されている第1の部材の間を通るように設けられている。
第1の貫通部の配設位置や固定子コアの中心側から見た断面形状は、軸方向に直角な断面で見て、固定部材を第1の貫通部に径方向に沿って通す工具(例えば、ニードル)が、固定子コアの中心を通る直線に沿って第1の貫通部を通ることができればよい。例えば、第1の貫通部の周方向に沿った長さは、周方向に隣接する2つの接続部材それぞれに接続されている第1の部材の間の間隔と同じでもよく、長くてもよく、短くてもよい。また、第1の貫通部は、固定子コアの中心側から見て、周方向に隣接する2つの接続部材それぞれに接続されている第1の部材の間に設けられていてもよいし、周方向のいずれか一方側にずれて設けられていてもよい。すなわち、固定子コアの中心側から見て、第1の貫通部の少なくとも一部が、周方向に隣接する2つの接続部材それぞれに接続されている第1の部材の間に設けられていればよい。
同様に、第2の貫通部の配設位置や固定子コアの中心側から見た断面形状は、軸方向に直角な断面で見て、第1の輪(固定部材)を第2の貫通部を通して径方向に渡す工具(例えば、ニードル)が、固定子コアの中心を通る直線に沿って第2の貫通部を通ることができればよい。例えば、第2の貫通部の周方向に沿った長さは、周方向に隣接する2つの接続部材それぞれに接続されている第1の部材の間の間隔と同じでもよく、長くてもよく、短くてもよい。また、第2の貫通部は、固定子コアの中心側から見て、周方向に隣接する2つの接続部材それぞれに接続されている第1の部材の間に設けられていてもよいし、周方向のいずれか一方側にずれて設けられていてもよい。すなわち、固定子コアの中心側から見て、第2の貫通部の少なくとも一部が、周方向に隣接する2つの接続部材それぞれに接続されている第1の部材の間に設けられていればよい。
本形態では、固定部材を第1の貫通部に径方向に沿った一方向に通すために用いる工具(例えば、鉤状のフック部を有するニードル)を、第1の貫通部および第2の貫通部に容易に挿入、あるいは、取り出すことができる。
【0014】
さらに異なる他の形態では、第2の輪が第1の輪の間を通っている箇所が、接続部材に対向する領域に配置されている。
本形態では、固定子巻線の端部を第2の部材に容易に固定することができる。
【0015】
さらに異なる他の箇所では、第2の輪が第1の輪の間を通っている箇所が、周方向に隣接する2つの接続部材の間の領域に配置されている。
本形態では、固定子巻線の端部を第2の部材に強固に固定することができる。
【0016】
他の発明は、回転機に関する。回転機は、前述したいずれかの固定子と、回転子を備え、回転子は、固定子のティース先端面との間に空隙を有するように回転可能に支持されている。
本発明の回転機は、前述した固定子と同様の効果を有している。これにより、回転機運転時の振動等によって固定子巻線の端部がずれるのを防止することができる回転機を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の回転機の固定子あるいは回転機では、1つの固定部材を、端部絶縁部材の第2の部材の第1の貫通部に径方向の一方向に沿って通す作業を連続的に行うことができ、固定子巻線の端部を端部絶縁部材に固定することができる。あるいは、1つの固定部材を、端部絶縁部材の第2の部材の第1の貫通部に径方向の一方向に沿って通す作業と、第2の貫通部に径方向の他方向に沿って通す作業を連続的に行うことができ、固定子巻線の端部を端部絶縁部材に固定することができる。これにより、集中巻き方式で巻かれた固定子巻線の端部を端部絶縁部材に容易に固定することができるとともに、固定する時間を大幅に短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下では、固定子巻線が集中巻き方式でティースに巻かれている固定子と、固定子の内側に回転可能に支持されている回転子により構成される回転子内転型の電動機について説明する。
勿論、本発明は、回転子が固定子の外側に回転可能に支持されている回転子外転型の電動機として構成することもできる。また、本発明は、電動機に限定されず、発電機等の種々の回転機として構成することができる。
【0020】
第1の実施の形態の回転機の固定子10を、
図1〜5を参照して説明する。なお、
図1は、第1の実施の形態の回転機の固定子10の斜視図であるが、固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32b(
図3参照)、固定部材100は図示されていない。
図2は、固定子コア20の部分断面図である。
図3は、第1の実施の形態の回転機の固定子10を、軸方向の一方側(端部絶縁部材40側)から見た平面図であり、
図4は、
図3のIV線矢視図(内側から見た図)であり、
図5は、
図3のV線矢視図(外側から見た図)である。
なお、本明細書では、「軸方向」は、回転子が固定子10に対して回転可能に支持されている状態において、回転子の中心を通る線(
図1に示されている回転中心線P)の方向を示す。また、「周方向」は、回転子が固定子10に対して回転可能に支持されている状態において、軸方向(回転中心線Pの方向)に直角な断面でみて、回転中心線Pを中心とする円周方向を示す。また、「径方向」は、回転子が固定子10に対して回転可能に支持されている状態において、軸方向(回転中心線Pの方向)に直角な断面でみて、回転中心線Pを通る方向を示す。
【0021】
本実施の形態の回転機は、固定子10と、回転子(図示省略)により構成されている。
固定子10は、固定子コア20と、固定子巻線30と、端部絶縁部材40および50と、固定部材100(
図1には示されていない)により構成されている。
固定子コア20は、
図2に示されているように、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って延びているヨーク21と、周方向に間隔を空けて、ヨーク21から径方向に沿って延びている複数のティース22を有している。本実施の形態では、固定子コア20は、複数の薄板状の電磁鋼板を軸方向に積層し、オートクランプ等で一体化した積層体により構成されている。また、ヨーク21は、環状(略環状を含む)に形成されている。各ティース22は、軸方向に直角な断面で見て、ヨーク21から径方向内側(回転中心線P側)に延びているティース基部22aと、ティース基部22aの先端側に設けられ、周方向に沿って延びているティース先端部22bを有している。ティース先端部22bには、ヨーク21と反対側にティース先端面22cが形成されている。ティース先端面22cは、回転中心線Pを中心とする円弧形状に形成されている。
本実施の形態の回転機では、回転子は、固定子10の内側の回転子収容空間内に、ティース先端面22cとの間に空隙(ギャップ)を有している状態で回転可能に支持されている。
ヨーク21と、周方向に隣接する2つのティース22とによって、スロット23が形成されている。スロット23は、周方向に隣接する2つのティース22のティース先端部の間にスロット開口部23aを有している。
固定子コア10は、軸方向両側に軸方向端面を有している。本実施の形態では、固定子コア20は、円筒状(略円筒状を含む)に形成されている。
スロット23内には、スロット絶縁部材60が設けられている。スロット絶縁部材60としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等により、弾性を有するシート状(フィルム状)に形成された絶縁部材が用いられる。そして、スロット絶縁部材60が配置されている状態で、固定子巻線30がスロット23内に挿入される。
【0022】
端部絶縁部材40、50は、固定子コア20の軸方向両側(軸方向端面に対向する位置)に設けられる。端部絶縁部材40、50は、例えば、ポリエチレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、液晶ポリマー(LCP)等により形成される。
なお、本実施の形態の回転機では、端部絶縁部材40および50は、穴42a、溝42b、補助部材42c(詳細は後述する)を除いて同じ構成であるため、以下では、端部絶縁部材40の構成について説明する。
端部絶縁部材40は、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って延びている複数の第1の部材41と、周方向に沿って延びている第2の部材42と、径方向に沿って延びており、第1の部材41と第2の部材42を接続する複数の接続部材43(
図6参照)を有している。端部絶縁部材40が固定子コア20の軸方向一方側の端面に対向するように配置された状態において、第1の部材41は、ティース22のティース先端部22bに対向する位置に配置され、第2の部材は、ヨーク21に対向する位置に配置され、接続部材43は、ティース22のティース基部22aに対向する位置に配置される(
図6参照)。「ティース基部22aに対向する位置に配置される」構成は、軸方向に直角な断面で見て、少なくとも一部がティース基部22aと重なるように配置される態様を含む。また、第1の部材41および第2の部材42は、軸方向に沿って延びている。すなわち、第1の部材41および第2の部材42は、内側壁部材および外側壁部材を形成している。
なお、端部絶縁部材40が固定子コア20の軸方向一方側の端面に対向するように配置された状態において、第1の部材41の回転子側の面(本実施の形態では、径方向内側の面(内周面))41aが、ティース先端面22cより回転子側(本実施の形態は、径方向内側)に飛び出ないように構成するのが好ましい。端部絶縁部材40の接続部材43は、固定子巻線30をティース22に集中巻き方式で巻く際に用いられる。
【0023】
なお、本実施の形態では、固定子コア20と端部絶縁部材40との境界部で絶縁不良が発生するのを防止するために、スロット絶縁部材60は、固定子コア20の軸方向端面から軸方向に飛び出ている。スロット絶縁部材60の飛び出し長さは、固定子巻線30と固定子コア20との絶縁距離を考慮して、2mm〜4mmの範囲内に設定される。
【0024】
また、本実施の形態では、スロット23内に挿入された、周方向に隣接する固定子巻線30間を絶縁するために、相間絶縁部材70がスロット23内に挿入されている。相間絶縁部材70としては、スロット絶縁部材60と同様に、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等により、弾性を有するシート状(フィルム状)に形成された絶縁部材が用いられる。本実施の形態では、
図2に示されているように、シート状の絶縁部材を折り曲げて形成され、軸方向に直角な断面で見て、V字状(略V字状を含む)を有する巻線絶縁部材70が用いられている。なお、
図2は、簡略化して示されている。
【0025】
ここで、
図3、
図4に示されているように、ティース22と端部絶縁部材40あるいは50の接続部材43に直接巻き付けられた固定子巻線30は、一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bを有している。固定子巻線30の各端部は、固定子巻線30の結線方法に応じて処理される。例えば、スター結線される場合には、3相(U相、V相、W相)の固定子巻線の一方の端部は、外部に引き出され、他方の端部は、中性点で接続される。本実施の形態では、4つのスター結線された固定子巻線が並列に接続されている。
図3、
図4では、固定子巻線30の一方の端部31a、31b、31cは、それぞれ、U相、V相、W相の4つの固定子巻線30の一方の端部が各相で束ねられたものとして示され、他方の端部32a、32bは、それぞれ、U相、V相、W相の固定子巻線30の他方の端部が、2つのスター結線された固定子巻線毎に束ねられたものとして示されている。中性点に接続される他方の端部32a、32bは、通常、接続点保護部材によって覆われる。
本実施の形態では、固定子巻線30の一方の端部31a〜31cは、一方の端部絶縁部材40の第1の部材41と第2の部材42の間に配置され、そして、外部に引き出されている。固定子巻線30の端部31a〜31cを外部に引き出す方法としては、固定子巻線30の端部31a〜31cをそのまま引き出す方法や、固定子巻線30の端部31a〜31cを引き出し線に接続し、引き出し線を外部に引き出す方法を用いることができる。本実施の形態では、固定子巻線30の端部31a〜31cをそのまま引出している。なお、本発明の「固定子巻線の端部」には、固定子巻線の端部自体だけでなく、固定子巻線の端部に接続された引き出し線も包含される。
また、本実施の形態では、固定子巻線30の他方の端部32a、32bは、一方の端部絶縁部材40の第1の部材41と第2の部材42の間に配置されている。
なお、固定子巻線の結線方法、並列に接続する固定子巻線の数、固定子巻線の端部を外部に引き出す方法は、適宜選択可能である。
【0026】
本実施の形態では、固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bが、一方の端部絶縁部材40の第1の部材41と第2の部材42の間に配置されているため、固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bが回転機運転中に移動しないように、端部絶縁部材40に固定する必要がある。
本実施の形態では、固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bが、回転子側(本実施の形態では、径方向中心側)に飛び出るのを防止するために、固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bを、絶縁性を有する紐(「コード」ともいう)100を用いて端部絶縁部材40の第2の部材42(第2の部材42の第1の部材41側)に固定している。紐100としては、例えば、ポリエステルコード(ポリエステルより紐、ポリエステル編組紐)、ノーメックスコード、PPSコード、ベクトランコード、ポリエステル・ノーメックス混合(編組)紐等が用いられる。
なお、固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bを端部絶縁部材40の第2の部材42に固定する固定部材は、一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bを第2の部材42に縛り付けることができればよく、糸等を用いることもできる。
【0027】
また、絶縁性を有する紐100を用いて固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bを端部絶縁部材40の第2の部材42に容易に固定することができるようにするために、第2の部材42に、第2の部材42を径方向に貫通している穴42aと溝42bを形成している。穴42aおよび溝42bは、
図4、
図6および
図15に示されているように、周方向に隣接する2つの接続部材43の間に形成されている。また、溝42bは、穴42aより固定子コア20から離れている箇所に形成されている。また、溝42bは、固定子コア20と反対側が開口している。
紐100が本発明の「固定部材」に対応し、穴42aが本発明の「第1の貫通部」に対応し、溝42bが本発明の「第2の貫通部」に対応する。
穴42aの形成位置や回転子中心線P側から見た(周方向に沿った)断面形状は、軸方向に直角な断面で見て、紐100を穴42aに径方向に沿って通す工具(例えば、後述するニードル200)が、回転中心線Pを通る直線に沿って穴42aを通ることができればよい。例えば、穴42aの周方向に沿った長さは、周方向に隣接する2つの接続部材43それぞれに接続されている第1の部材41の間の間隔と同じでもよく、長くてもよく、短くてもよい。また、穴42aは、回転中心線P側から見て、周方向に隣接する2つの接続部材43それぞれに接続されている第1の部材41の間に設けられていてもよいし、周方向のいずれか一方の方向にずれて設けられていてもよい。すなわち、回転子中心線P側から見て、穴42aの少なくとも一部が、周方向に隣接する2つの接続部材43それぞれに接続されている第1の部材41の間に設けられていればよい。
同様に、溝42bの形成位置や回転子中心線P側から見た(周方向に沿った)断面形状は、軸方向に直角な断面で見て、後述する第1の輪110(紐100)を溝42bを通して径方向に渡す工具(例えば、後述するニードル200)が、回転中心線Pを通る直線に沿って溝42bを通ることができればよい。例えば、溝42bの周方向に沿った長さは、周方向に隣接する2つの接続部材43それぞれに接続されている第1の部材41の間の間隔と同じでもよく、長くてもよく、短くてもよい。また、溝42bは、回転中心線P側から見て、周方向に隣接する2つの接続部材43それぞれに接続されている第1の部材41の間に設けられていてもよいし、周方向のいずれか一方の方向にずれて設けられていてもよい。すなわち、回転子中心線P側から見て、溝42bの少なくとも一部が、周方向に隣接する2つの接続部材43それぞれに接続されている第1の部材41の間に設けられていればよい。
さらに、穴42aと溝42bの形成位置は、回転中心線P側から見て、重なっていてもよいし、周方向のいずれか一方にずれていてもよい。好適には、軸方向に直角な断面で見て、穴42aの少なくとも一部が溝42bと重なるように、より好適には、穴42aの周方向中心と溝42bの周方向中心が重なるように、穴42aと溝42bの形状および形成位置が設定される。
【0028】
なお、端部絶縁部材40の第2の部材42の、第1の部材41と反対側で、穴42aの固定子コア20側に形成されている補助部材42cは、穴42aを有する端部絶縁部材40を、樹脂型を用いて樹脂により一体成型するためのものである。補助部材42cを有することにより、樹脂型から端部絶縁部材40を取り出す際に、端部絶縁部材40が、収縮によって歪むのを防止することができる。補助部材42cは省略することもできる。
【0029】
次に、紐100を用いて固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bを端部絶縁部材40の第2の部材42の内側に固定する(レーシングする)動作を、
図6〜16を参照して説明する。
図6〜14は、端部絶縁部材40側から見た図であり、
図15、16は、周方向に直角な方向から見た図である。なお、本実施の形態では、紐100によって、固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bが同時に第2の部材42に固定されるが、説明を簡単にするために、
図6〜14には、固定子巻線30の他方の端部32a、32bの図示を省略している。したがって、以下では、固定子巻線30の一方の端部31a〜31cを固定する動作について説明する。
以下で説明するレーシング動作は、紐100の一方側の端部を固定した状態で、紐100の他方側の引っ張り力を調整することによって行われる。例えば、
図6〜16に示されている紐100の下方側の端部を端部絶縁部材40に縛り付け、紐100を上方側から繰り出すことによって行われる。
また、紐100を用いて固定子巻線30の端部31a〜31cを端部絶縁部材40の第2の部材42に縛り付ける(固定する)工具(レーシング工具)としてニードル200を用いている。ニードル200は、本体部201と、本体部201の先端側に設けられた鉤状のフック部202を有している。
なお、以下の説明では、便宜的に、第2の部材42の、第1の部材41と反対側(
図6〜16では、第2の部材42の左側)を「外側」といい、第2の部材42の、第1の部材41側(
図6〜16では、第2の部材42の右側)を「内側」という。また、第2の部材42を、第1の部材41と反対側から第1の部材41側に通る方向を「外側から内側の方向」といい、第2の部材42を、第1の部材側41から第1の部材41と反対側に通る方向を「内側から外側の方向」という。
また、
図6〜16において、穴42a(1)、穴42a(2)、溝42b(1)、42b(2)、第1の輪110(1)、110(2)、第2の輪120(1)等に付されている括弧付きの数字は、単に、説明を簡単にするためのものである。
また、
図6〜14において、回転中心を中心とする反時計方向を「周方向に沿った一方向」とい、時計方向を「周方向に沿った他方向」という。
【0030】
[ステップ1]
ニードル200のフック部202を、穴42a(1)に、外側から内側に通し、フック部202に、繰り出し側の紐100を引っ掛ける。[
図6の(1)、
図15の(1)]
[ステップ2]
紐100を引っ掛けた状態で、フック部202を、穴42a(1)に、内側から外側に通す。これにより、紐100(フック部202で引っ掛けられた箇所を挟んで両側の部分)が、穴42a(1)に、内側から外側に通され、第2の部材42の外側に第1の輪110(1)が形成される。[
図7の(2)、
図15の(2)]
[ステップ3]
次に、紐100を引っ掛けている状態で、フック部202を、穴42a(1)から、穴42a(1)に対応する溝42b(1)の方向(固定子コア20と反対側)に移動させる。これにより、第2の部材42の外側に形成された第1の輪110(1)は、穴42a(1)から溝42b(1)の方向に伸びる。[
図15の(3)]
【0031】
[ステップ4]
次に、ニードル200を、ニードル200の中心軸を中心に回転させ、紐100(第1の輪110(1)を形成している部分)をフック部202から外しながら、溝42b(1)の外側から内側に通す。そして、この状態で、フック部202を、第1の輪110(1)の間を通し、フック部202に、繰り出し側の紐100を引っ掛ける。[
図8の(4)、
図15の(4)]
[ステップ5]
次に、ニードル200を、ニードル200の中心軸を中心に回転させ、紐100を引っ掛けている状態で、フック部202を、第1の輪110(1)の中を、内側から外側に通す。これにより、第2の部材42の内側に、第1の輪110(1)の中を通る第2の輪120(1)が形成される。なお、
図9には、第2の輪120(1)が第1の輪110(1)の中を通っている箇所が鎖線で囲まれ、Qで示されている。[
図9の(5)、
図15の(5)]
[ステップ6]
この状態で、固定子コア20および端部絶縁部材40を、回転中心線Pを中心に回転させる。本実施の形態では、
図10に示されているように、固定子コア20および端部絶縁部材40を、回転中心線Pを中心に反時計方向(周方向に沿った一方向)に回転させている。これにより、第2の輪120(1)は、第1の部材41と第2の部材42の間において、時計方向(周方向に沿った他方向)に伸びる。この時、第2の輪120(1)は、穴42a(1)(あるいは溝42b(1))に対応する箇所から、穴42a(1)(溝42b(1))に対して時計方向(周方向に沿った他方向)に隣接する穴42a(2)(あるいは溝42b(2))に対応する箇所まで、すなわち、ほぼ1スロットピッチ伸ばす。
なお、本実施の形態では、同時に、第1の輪110(1)も、第1の部材41と第2の部材42の間において、時計方向に沿って伸ばしている。すなわち、第2の輪120(1)が第1の輪110(1)の中を通る箇所Qが、時計方向に沿って移動する。第1の輪110(1)が時計方向に沿って伸びる長さ(Qの位置)は、例えば、繰り出し側の紐100を引っ張る力を調整することによって調整することできる。本実施の形態では、第2の輪120(1)が第1の輪110(1)の中を通る箇所Qは、第1の輪110(1)を形成するために紐100が通された穴41a(1)に対して時計方向(周方向に沿った他方向)に隣接する接続部材43に対向する領域に設定されるように構成されている。[
図10の(6)]
【0032】
[ステップ7]
次に、紐100を引っ掛けている状態で、フック202を、溝42b(2)に、内側から外側に通す。これにより、第2の輪120(1)は、溝42b(2)を通って、内側から外側に伸びる。[
図11の(7)、
図16の(7)]
[ステップ8]
さらに、紐100を引っ掛けている状態で、フック202を、溝42b(2)から、溝42b(2)に対応する穴42a(2)の方向(固定子コア20側)に移動させる。これにより、第2の輪120(1)は、さらに、溝42b(2)から穴42a(2)の方向に伸びる。[
図11の(8)、
図16の(8)]
【0033】
[ステップ9]
次に、ニードル200を、ニードル200の中心軸を中心に回転させ、紐100(第2の輪120(1)を形成している部分)をフック部202から外しながら、穴42a(2)の外側から内側に通す。そして、フック部202を、第2の輪120(1)の中を通すとともに、フック部202に、繰り出し側の紐100を引っ掛ける。[
図12の(9)、
図16の(9)]
なお、ステップ9の動作は、フック部202を第2の輪120の中を通していることを除いて、ステップ1と同じ動作である。
[ステップ10]
次に、ニードル200を、ニードル200の中心軸を中心に回転させ、紐100を引っ掛けている状態で、フック部202を、穴42a(2)に、内側から外側に通すとともに、第2の輪120(1)の中を通す。これにより、第2の輪120(1)の中を通る第1の輪110(2)が形成される。なお、
図13には、第2の輪110(2)が第2の輪120(1)の中を通っている箇所が破線で囲まれ、Rで示されている。第1の輪110が第2の輪120の中を通る箇所Rは、適宜設定することができるが、好適には、穴42a(2)(あるいは、穴42a(2)に対応する溝42b(2))に対応する領域に設定される。これにより、固定子巻線30の端部は、第1の部材41側から見て交差状に配置されている第1の輪110と第2の輪120によって、第2の部材42に固定される。
[
図13の(10)、
図16の(10)]
なお、ステップ10の動作は、第1の輪110を第2の輪120の中を通していることを除いて、ステップ2と同じ動作である。
【0034】
[ステップ11]
ステップ11では、ステップ3と同様の動作を行う。(ステップ11の動作は、図示を省略している。)
すなわち、紐100を引っ掛けている状態で、フック部202を、穴42a(2)から、穴42a(2)に対応する溝42b(2)の方向(固定子コア20と反対側)に移動させた後、溝42b(2)に、外側から内側に通す。これにより、第2の部材42の外側に形成された第1の輪110(2)は、穴42a(2)から溝42b(2)の方向に伸び、さらに、溝42b(2)を通って、第2の部材42の外側から内側に伸びる。
[ステップ12]
ステップ12では、ステップ4と同様のステップ12の動作を行う。
すなわち、ニードル200を、ニードル200の中心軸を中心に回転させ、紐100(第1の輪110(2)を形成している部分)をフック部202から外しながら、溝42b(2)の外側から内側に通す。そして、この状態で、フック部202を、第1の輪110(2)の間を通し、フック部202に、繰り出し側の紐100を引っ掛ける。[
図14の(12)]
以下、ステップ5〜12の動作を繰り返し、第1の輪110と第2の輪120を周方向に沿って交互に配置する。
【0035】
本実施の形態の回転機では、
図3および
図4に示されているように、固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bは、端部絶縁部材40の第1の部材41と第2の部材42の間に配置されているとともに、紐100によって形成された第1の輪110と第2の輪120によって第2の部材42に縛り付けられている。すなわち、固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bは、第1の輪110と第2の輪120によって第2の部材42に押し付けられている(固定されている)。
本実施の形態では、紐100を、穴42aに、内側から外側に通すことによって、第2の部材42の外側に第1の輪110が形成され、第2の部材42の内側に第2の輪120が形成されている。第1の輪110は、さらに、第2の部材42bを外側から内側に通されることによって、第2の部材42の内側に渡されている。さらに、第1の輪110と第2の輪120は、周方向に沿って交互に配置されるとともに、第1の輪110が、第2の部材の内側において、第1の輪110に対して周方向に沿った一方向(本実施の形態では、反時計方向)に隣接する第2の輪120の中を通り、第2の輪120が、第2の輪120に対して周方向に沿った一方向に隣接する第1の輪110の中を通るように形成されている。また、本実施の形態では、第2の輪120が第1の輪110の中を通っている箇所Qは、第1の輪110を形成する際に紐100が通される穴42a(あるいは穴42aに対応する溝42b)に対して周方向に沿った一方向に隣接する接続部材43に対向する領域に設定され、第1の輪110が第2の輪120の中を通っている箇所Rは、第1の輪110を形成する際に紐100が通される穴42a(あるいは穴42aに対応する溝42b)の近傍の領域に設定されている。これにより、固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bは、交差状に配置されている第1の輪110と第2の輪120によって第2の部材42に固定される。
本実施の形態では、紐100を、穴42aおよび溝42bに径方向に沿った方向に通す操作、端部絶縁部40(固定子コア20)を回転させる操作を行うことによって固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bを第2の部材40に固定することができるため、固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bを端部絶縁部材40の第2の部材42に容易に固定することができる。特に、本実施の形態では、1本(1つ)の紐100を用いて、周方向に沿って交互に連続して編み込んだ第1の輪と第2の輪を形成し、そして、この第1の輪と第2の輪によって、固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bを端部絶縁部材40の第2の部材42に押し付け(縛り付け)、固定している。このため、固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bを端部絶縁部材40の第2の部材42に固定する作業を機械化することができる。したがって、固定子あるいは回転機を、容易に、短時間で製造することができ、作業効率が向上する。
【0036】
第1の実施の形態では、第2の輪120が第1の輪110の中を通る箇所Qを、接続部材43に対向する領域に設定したが、第2の輪120が第1の輪110の中を通る箇所Qは適宜の位置に設定することができる。
第2の実施の形態の回転機の固定子10を、
図17〜19を参照して説明する。なお、
図17は、第2の実施の形態の回転機の固定子10を、軸方向の一方側(端部絶縁部材40側)から見た平面図であり、
図18は、
図17のXVIII線矢視図(内側から見た図)であり、
図19は、
図17のXIX線矢視図(外側から見た図)である。
第2の実施の形態の回転機の固定子10は、第2の輪120が第1の輪110の中を通る箇所Qが、周方向に隣接する2つの接続部材43の間の領域、好適には、2つの接続部材43の間の中央(略中央を含む)に設定されている点が第1の実施の形態の回転機の固定子10と異なっているだけで、他の構成は同じである。したがって、以下では、第2の輪120が第1の輪110の中を通る箇所Qについてのみ説明する。
【0037】
また、固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bを端部絶縁部材40の第2の部材42に固定する動作は、第2の輪120が第1の輪110の中を通る箇所Qが穴42a(あるいは溝42b)の近傍に設定されていることを除いて、第1の実施の形態と同様である。すなわち、第1の実施の形態のステップ6を除いて、第1の実施の形態のレーシング動作と同様である。
第1の実施の形態の
図10に対応する動作が
図20に示されており、第1の実施の形態の
図14に対応する動作が
図21に示されている。
図20および21に示されているように、本実施の形態では、第2の輪120(1)が第1の輪110(1)の中を取っている箇所Qが、第1の輪110(1)を形成する際に紐100が通される穴42a(1)(あるいは、穴42a(1)に対応する溝42b(1))の近傍の領域に設定されている。第2の輪120(1)が第1の輪110(1)の中を取っている箇所Qを、穴42a(1)(あるいは溝42b(1))の近傍の領域に設定する方法としては、例えば、繰り出される紐100を引っ張る力を調整する方法を用いることができる。
【0038】
第2の実施の形態の回転機では、
図17よび
図18に示されているように、第1の実施の形態の回転機と同様に、固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bは、端部絶縁部材40の第1の部材41と第2の部材42の間に配置されているとともに、紐100によって形成された第1の輪110と第2の輪120によって第2の部材42に縛り付けられている。
また、紐100を、穴42aに、内側から外側に通すことによって第2の部材42の外側に形成され、さらに、溝42bを通すことによって第2の部材42の外側から内側に渡されている第1の輪110と、紐100を、穴42aに、内側から外側に通すことによって第2の部材42の内側に形成された第2の輪120が周方向に交互に配置されている。第1の輪110は、第1の輪110に対して周方向に沿った一方向(本実施の形態では、反時計方向)に隣接する第2の輪120の中を通り、第2の輪120は、第2の輪120に対して周方向に沿った一方向に隣接する第1の輪110の中を通るように形成されている。また、本実施の形態では、第2の輪120が第1の輪110の中を通っている箇所Qは、第1の輪110を形成する際に紐100が通される穴42aに対して周方向両側に隣接する2つの接続部材43の間の領域に設定され、第1の輪110が第2の輪120の中を通っている箇所Rは、第1の輪110を形成する際に紐100が通される穴42a(あるいは穴42aに対応する溝42b)の近傍の領域に設定されている。これにより、固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bは、周方向に隣接する穴42aの近傍において、第2の部材42に強固に固定される。
第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、紐100を、穴42aおよび溝42bに径方向に沿った方向に通す操作、端部絶縁部40(固定子コア20)を回転させる操作を行うことによって固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bを第2の部材40に固定することができるため、固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bを端部絶縁部材40の第2の部材42に容易に固定することができる。
特に、本実施の形態では、固定子巻線30の一方の端部31a〜31cと他方の端部32a、32bを、1本(1つ)の紐100を用いて周方向に沿って交互に形成した第1の輪と第2の輪によって、端部絶縁部材40の第2の部材42に固定する操作を機械化することができる。したがって、固定子あるいは回転機を、容易に、短時間で製造することができ、作業効率が向上する。
【0039】
本発明の固定子あるいは回転機は、実施の形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
回転子が固定子の内側に回転可能に支持される回転子内転型の電動機について説明したが、回転子が固定子の外側に回転可能に支持される回転子外転型の電動機として構成することもできる。回転子外転型の電動機では、端部絶縁部材は、外側に第1の部材が設けられ、内側に第2の部材が設けられる。また、好適には、紐(固定部材)は、第2の部材の穴(第1の貫通部)に、内側から外側に通され、第1の輪は、溝(第2の貫通部)に、外側から内側に通される。
電動機について説明したが、電動機に限定されず、発電機等として構成することもできる。
第2の部材に穴を形成したが、第1の貫通部としては、穴に限定されず、固定子コア側が開口している溝を用いることもできる。また、第2の部材に溝を形成したが、第2の貫通部としては、固定子コアと反対側が開口している溝を用いることができる。さらに、第2の部材に、固定子コアと反対側が開口している溝を形成し、この溝を第1の貫通部および第2の貫通部として用いることもできる。
紐(固定部材)を、第2の部材の第1の貫通部および第2の貫通部に径方向に沿った一方向に通す方向としては、外側から内側の方向や内側から外側の方向を用いることができる。
固定子巻線の端部を端部絶縁部材の第2の部材に固定する固定部材としては、紐に限定されず、糸等の種々固定部材を用いることができる。
固定子巻線の一方の端部と他方の端部を軸方向一方側の端部絶縁部材に配置したが、固定子巻線の一方の端部を軸方向一方側の端部絶縁部材に配置し、固定子巻線の他方の端部を軸方向他方側の端部絶縁部材に配置することもできる。この場合には、軸方向一方側の端部絶縁部材および軸方向他方側の端部絶縁部材に穴(第1の貫通部)と溝(第2の貫通部)を形成し、固定子巻線の一方の端部を第1の固定部材により軸方向一方側の端部絶縁部材の第2の部材に固定し、固定子巻線の他方の端部を第2の固定部材により軸方向他方側の端部絶縁部材の第2の部材に固定する。すなわち、本発明では、少なくとも一方の端部絶縁部材に固定子巻線の少なくとも一方の端部が配置されているとともに、固定子巻線の少なくとも一方の端部が少なくとも一方の端部絶縁部材の第2の部材に固定されている。
また、固定子巻線の一方の端部のみを外部に引き出したが、固定子巻線の両方の端部を外部に引き出してもよい。
第2の部材に第1の貫通部および第2の貫通部を設けたが、第2の貫通部は省略することもできる。
端部絶縁部材の構成は、実施の形態で説明した構成に限定されない。
紐(固定部材)を用いて、固定子巻線の端部を端部絶縁部材の第2の部材に固定する操作は、作業員が行ってもよいし機械を用いて行ってもよい。
本発明の固定子は、固定子巻線の大部分が前述した方法で形成された第1の輪と第2の輪で固定されていれば良く、固定子巻線の端部の一部(例えば、レーシングの開始部分や終了部分)が、前述した方法で形成された第1の輪と第2の輪によって固定されていない固定子も含まれる。
【0040】
本発明は、固定子巻線の端部を固定する方法として構成することもできる。
例えば、
「(態様1)
固定子コアと、固定子巻線と、前記固定子コアの軸方向両側に設けられている端部絶縁部材を備え、
前記固定子コアは、軸方向に直角な断面で見て、
周方向に沿って延びているヨークと、
前記ヨークから径方向に沿って延びているティース基部と、前記ティース基部の先端側に設けられ、周方向に沿って延びているとともに前記ヨークと反対側にティース先端面が形成されているティース先端部を有する複数のティースを有しており、
前記各端部絶縁部材は、軸方向に直角な断面で見て、
前記ティースのティース先端部に対向する箇所に配置され、周方向に沿って延びている複数の第1の部材と、
前記ヨークに対向する箇所に配置され、周方向に沿って延びている第2の部材と、
前記ティースのティース基部に対向する箇所に配置され、径方向に沿って延びている、前記第1の部材と前記第2の部材に接続されている複数の接続部材を有しており、
前記固定子巻線は、前記ティースおよび前記接続部材に集中巻き方式により巻かれている固定子における、前記固定子巻線の端部を固定する方法であって、
少なくとも一方の前記端部絶縁部材として、周方向に隣接する2つの前記接続部材の間において前記第2の部材を径方向に貫通している複数の第1の貫通部を有する端部絶縁部材を用い、
一端側が固定され、他端側が繰り出される固定部材を引っ掛けて、前記第1の貫通部に、前記第1の部材側から通すことによって、前記第2の部材の、前記第1の部材と反対側に第1の輪を形成し、当該第1の輪を、前記第2の部材の、前記第1の部材と反対側から、前記第2の部材の前記第1の部材側に渡すとともに、当該第1の輪に対して周方向の一方側に隣接する第2の輪の中を通す第1のステップと、
前記固定部材を引っ掛けて、前記第2の部材の前記第1の部材側において、前記第1の輪の中を通すことによって、前記第2の部材の前記第1の部材側に、当該第1の輪に対して周方向の他方側に隣接する第2の輪を形成する第2のステップを備え、
前記第1のステップと第2のステップを繰り返すことによって周方向に沿って交互に形成された前記第1の輪と第2の輪により、前記固定子巻線の端部を前記少なくとも一方の端部絶縁部材の前記第2の部材に固定することを特徴とする固定子巻線の端部を固定する方法。」として構成することができる。
あるいは、
「(態様2)
態様1の固定子巻線の端部を固定する方法であって、
前記少なくとも一方の端部絶縁部材として、周方向に隣接する2つの前記接続部材の間において、軸方向に沿って前記第1の貫通部より前記固定子コアから離れている箇所で前記第2の部材を径方向に貫通している複数の第2の貫通部を有する端部絶縁部材を用い、
前記第1ステップでは、前記第1の輪を、前記第2の貫通部を通って、前記第2の部材の、前記第1の部材と反対側から、前記第2の部材の前記第1の部材側に渡すことを特徴とする固定子。」として構成することができる。
態様1および2の固定子巻線の端部を固定する方法を用いることによって、集中巻き方式で巻かれた固定子巻線の端部を端部絶縁部材に容易に固定することができる。