(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のプレート部材を係止する前記上部係止片及び前記下部係止片について、該複数のプレート部材の各々をケンドン式で抱え得るように、該上部係止片と金属基板による該各プレート部材の上部の抱持可能な深さ寸法を、該下部係止片と金属基板による該各プレート部材の各々の下部の抱持可能な深さ寸法を越える深さ寸法に構成した請求項1のトンネルの壁面用複合パネル。
前記複数のプレート部材を係止する前記上部係止片及び前記下部係止片について、各対となる該上部係止片の上部張出片と該下部係止片の下部張出片との間隔を、該プレート部材を側方からスライド装入可能でありつつ、装入したプレート部材を緩みなく抱え得る間隔寸法に設定した請求項1のトンネルの壁面用複合パネル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、先に述べた使用例の複合パネルや特許文献1のパネルのように、トンネル内の悪環境下で短期間で進む接着剤の経年劣化等によりタイル等のプレート部材の剥離落下の生じるおそれのある問題を解決し、タイル等の剥離落下の容易に生じないトンネルの壁面用複合パネルを提供することを解決の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1は、方形板状のパネル本体と、
前記パネル本体の前面に固設する
複数の開口部を開口させた金属基板であって、その前面に配列する複数のプレート部材の寸法形状及び配列に対応させて該各プレート部材の上部及び下部を係止する上部係止片及び下部係止片を配した金属基板と、
前記金属基板の前面に、前記上部係止片及び前記下部係止片に係止させて配列保持する前記複数のプレート部材と、
で構成したトンネルの壁面用複合パネルである。
【0011】
本発明の
2は、本発明の
1のトンネルの壁面用複合パネルにおいて、
前記複数のプレート部材を係止する前記上部係止片及び前記下部係止片について、該複数のプレート部材の各々をケンドン式で抱え得るように、該上部係止片と金属基板による該各プレート部材の上部の抱持可能な深さ寸法を、該下部係止片と金属基板による該各プレート部材の各々の下部の抱持可能な深さ寸法を越える深さ寸法に構成したものである。
【0012】
本発明の
3は、本発明の
1のトンネルの壁面用複合パネルにおいて、
前記複数のプレート部材を係止する前記上部係止片及び前記下部係止片について、各対となる該上部係止片の上部張出片と該下部係止片の下部張出片との間隔を、該プレート部材を側方からスライド装入可能でありつつ、装入したプレート部材を緩みなく抱え得る間隔寸法に設定したものである。
【0013】
本発明の
4、本発明の
1乃至3の何れか一のトンネルの壁面用複合パネルにおいて、
前記金属基板を防錆性及び防食性の一方又は双方の性質を備えた金属で構成したものである。
【0014】
本発明の
5は、本発明の
1乃至4の何れか一のトンネルの壁面用複合パネルにおいて、
前記金属基板にパネル本体との結合のための結合突片を構成したものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の1のトンネルの壁面用複合パネルによれば、これをトンネル内の壁面に、後記の種々の取付手段を利用して取り付ければ、該複合パネルに配されている個々のタイルは金属基板に上部係止片及び下部係止片を介して確実に取り付けられており、接着剤のみで接着接合されているものではないので、取付後の長期間の経過によっても容易に劣化せず、該複合パネルからのタイル等のプレート部材の剥落のおそれは殆ど生じない。なお、金属基板は、コンクリート、モルタルまたは目地材に埋設状態になるため、外気に触れず、その強度を長期にわたって保持できる。
【0016】
本発明の1のトンネルの壁面用複合パネルのトンネル内の壁面への取り付けは、たとえば、その四箇所以上程度で、少なくともそのパネル本体と金属基板とを一体にして保持するようにすれば、パネル本体と金属基板との剥離のおそれを回避することが可能であり、より適切である。またこのような取り付け方は、取付箇所が特別に増加するわけでもなく不都合はないものと考える。こうして、パネル本体と金属基板との接合固設状態が確実なものとなり、他方、タイル等のプレート部材は金属基板に確実に保持されているので、本発明の1のトンネルの壁面用複合パネルからのプレート部材の剥離落下のおそれを殆どなくすることができる。
【0017】
本発明の2のトンネルの壁面用複合パネルによれば、上部係止片及び下部係止片によりタイル等のプレート部材の上下部を抱持して該プレート部材を簡単かつ確実に金属基板に取り付けることができる。それ故、タイル等のプレート部材を該金属基板を介してパネル本体に確実に取り付け得ることになる。
【0018】
本発明の3のトンネルの壁面用複合パネルによれば、タイル等のプレート部材を簡単かつ確実に金属基板に取り付け得、かつ該金属基板を介してパネル本体に確実に取り付けることができるが、更に、この複合パネルをトンネルの壁面に取り付けた後、たとえば、自動車の走行中に弾かれた砂利等によりその一部のプレート部材に損傷が生じた場合に、または自動車の一部が接触する等によりその一部のプレート部材に損傷が生じた場合に、それぞれその一部のプレート部材のみを交換することが可能であり、その全体、即ち、複合パネル単位で交換せざるを得ない場合と比較して作業が簡単でありかつ経済的である。
【0019】
このように一部のプレート部材のみを交換する場合は、具体的に述べると、対象のプレート部材の周囲の目地材を除去し、該プレート部材を動かし得る状態にした上で、該プレート部材を必要なだけ持ち上げれば、その下端を下部係止片から外すことが可能になる。下端を下部係止片の上端から外側に移動させ、即ち、下部係止片から外した上で、今度は該プレート部材を引き下げれば、その上端も上部係止片から抜け出て、該上部係止片から外れることになる。このようにして損傷の生じているプレート部材を複合パネルから取り外した後、金属基板のその位置に、新たなプレート部材を取り付ければ良い。
【0020】
ケンドン式であるから、そのやり方、即ち、プレート部材の上端側を上部係止片の内側に深く装入し、下端を下部係止片の下部抱持片の上端より上に持ち上げ、次いでその内側上方に移動させた上で、下降させ、下部張出片上に載せた状態とする。このときプレート部材の上端は上部係止片の上部張出片より下方に位置することになるが、上部抱持片の下端を下回ることはなく、該上部抱持片の内側に位置することとなり、その結果、該プレート部材は、上部係止片と下部係止片とで係止された状態となる。この後は、目地を目地材で埋めることにより、プレート部材の動きを防止し、外れを防止できるようにする。
【0021】
こうして、本発明の3のトンネルの壁面用複合パネルによれば、その内部の一部のプレート部材に損傷が生じた場合に、そのプレート部材のみの交換が可能となる。
【0022】
本発明の4のトンネルの壁面用複合パネルによれば、上部係止片と下部係止片によりプレート部材を緩みなく保持することができ、必ずしも目地に目地材を充填しなくても該プレート部材が外れるようなおそれはない。
【0023】
本発明の5のトンネルの壁面用複合パネルによれば、金属基板として、防錆性又は防食性のいずれか又はその双方の性質を有するそれを素材として用いたため、一層、プレート部材の保持が確実になるものである。
【0024】
本発明の6のトンネルの壁面用複合パネルによれば、金属基板とパネル本体との結合がより確実になるため、トンネルの壁面へのその取り付けをパネル本体のみを介して行うこととしても不都合ではなくなる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を実施するための形態を実施例に基づき図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
<実施例1>
この実施例1のトンネルの壁面用複合パネルは、
図1〜
図4に示すように、基本的に、方形板状のパネル本体1と、該パネル本体1の前面に固設する金属基板2と、該金属基板2の前面に、それに構成した上部係止片3、3…及び下部係止片4、4…に係止させて配列保持する複数のタイル(プレート部材)5、5…とで構成したものである。
【0028】
前記パネル本体1は、この実施例1では、公知の技術により若干屈曲可能に成分調整した縦長長方形板状のコンクリート板をそれとして採用したものである。高さ方向の寸法は、トンネルの壁面wのうち、一側の側面の高さ方向の必要な範囲を一枚のそれでカバーし得る高さ寸法とするのが好ましい。この実施例1のパネル本体1もそのように構成した。幅方向には、
図1及び
図2に示すように、二枚のタイル5、5を横方向に並べて配し得る寸法としてある。このパネル本体1は、材質形状寸法等に関して、特定のそれに限定されないが、経済的で、十分な強度を有し、耐火性、耐汚染性、耐久性、耐候性等に優れたものであるのが好ましい。
【0029】
この実施例1では、前記のように、パネル本体1は、若干屈曲可能なように材料成分を調整したものである。具体的には、繊維を混入した公知の繊維混入コンクリート板を採用した。繊維としては種々のものが採用されている。
【0030】
またこのパネル本体1は、予め板状に作成しておき、これを金属基板2と接着接合するようにしたものであるが、金属基板2を型内に配置し、その背後側にペースト状の材料を投入して成形する態様で作成することもできる。
【0031】
前記金属基板2は、
図2及び
図3(a)、(b)に示すように、前記パネル本体1に対応する概ね縦長長方形の板状部材であり、全体にわたってほぼ四辺形の開口部2a、2a…を概ね平均に多数開口してある。軽量にし、かつ接着剤を使用する場合に、これが絡んでタイル5、5…等又はこれとパネル本体1との結合をより良好なものとする趣旨である。
【0032】
前記上部係止片3、3…及び下部係止片4、4…は、係止するタイル5、5…の寸法に対応させ、かつその配列に対応させて該金属基板2に配してあるものである。
【0033】
この実施例1では、
図1及び
図2に示すように、タイル5、5…は、パネル本体1の前面側、即ち、その前面に配した金属基板2の前面に、横方向には二枚を配する態様で、多数のそれを縦方向に定間隔で配するものであり、言い換えれば、多数のタイル5、5…を縦方向2列に配列することとしたものである。そこで前記上部係止片3、3…及び前記下部係止片4、4…は、このように配列する個々のタイル5、5…の上部の二箇所及び下部の二箇所をそれらによって支持するように配したものである。云うまでもなく、各タイル5、5…の上辺を二つの上部係止片3、3で支持し、下辺を二つの下部係止片4、4で支持する。
【0034】
該二つの上部係止片3、3は、この実施例1では、それぞれタイル5、5…の上辺の一端又は他端からその長さの2/7程度の位置を支持するように位置決めし、該二つの下部係止片4、4は、それぞれタイル5、5…の下辺の一端又は他端からその長さの1/7程度の位置を支持するように位置決めしたものである。
【0035】
また以上の各上部係止片3は、この実施例1では、特に
図3(a)、(b)及び
図4(a)〜(f)に示すように、該金属基板2から前方に張り出す上部張出片3aと該上部張出片3aの先端から下方に屈曲した上部抱持片3bとで構成し、かつ以上の各下部係止片4は該金属基板2から前方に張り出す下部張出片4aと該下部張出片4aの先端から上方に屈曲した下部抱持片4bとで構成する。
【0036】
前記上部係止片3、3…の上部張出片3aは、特に
図3(a)に示すように、前記金属基板2に形成した該当する開口部2aの上辺から張出状態に屈曲形成したものであり、該開口部2aはその位置が適切になるように位置及び寸法形状を定めておくものである。前記下部係止片4、4…の下部張出片4aは、同図に示すように、他の該当する開口部2aの下辺から張出し状態に屈曲形成したものであり、該開口部2aは、これもまた同様に、その位置が適切になるように位置及び寸法形状を定めておくものである。
【0037】
以上の上部係止片3、3…と下部係止片4、4…との上下の間隔は、当然、タイル5、5…の縦方向の寸法に対応させるものであるが、この実施例1では、前者の上部張出片3aと後者の下部張出片4aとの間の間隔をタイル5、5…の縦方向の寸法にその上下の目地一つ分の幅寸法を加えた寸法の間隔とし、他方、前者の上部抱持片3bの上下方向の寸法を、後者の下部抱持片4bの上下方向の寸法(目地幅より短寸法)の約2.5倍(目地幅より長寸法)に構成し、タイル5、5…の取り付けをケンドン式で行い得るようにしているものである。
【0038】
前記タイル5、5…は、この実施例1では、横長長方形のセラミック製のそれを採用した。これに代えて他の種々のタイル又は石板その他のプレート部材を採用できることは云うまでもない。
なお、前記金属基板2、前記上部係止片3、3…及び下部係止片4、4…はステンレススチールによって一体に構成したものである。
【0039】
この実施例1のトンネルの壁面用複合パネルは、前記パネル本体1の一面に前記金属基板2の背面側を接着剤を介して接着接合し、該金属基板2の前面側に、前記上部係止片3、3…及び前記下部係止片4、4…を介して前記タイル5、5…を装着した段階まで構成し、隣接するタイル5、5相互の目地には、該複合パネルをトンネル内の壁面wに取り付けた後に目地材を充填する。予め目地に目地材を充填してしまうと、トンネルの壁面wのカーブに対応させて該複合パネルを屈曲させることができなくなるからである。
【0040】
なお、タイル5、5…の装着は、ケンドン式であるから、初めにタイル5の上辺側を上部係止片3の上部抱持片3bの背後側に深く装入し、該タイル5の下辺を下部係止片4の下部抱持片4bの上端より高く持ち上げ、次いで、該下辺を該下部抱持片4bの上端を越えて背後側に移動させて下降させ、該下部係止片4の下部張出片4aの上に載置状態とする。前記のように、下部係止片4の下部抱持片4bの縦方向の長さを目地幅より短く、かつ上部係止片3の上部抱持片3bの縦方向の長さを目地幅より長く構成し、更に該上部抱持片3bの長さを該下部抱持片4bの長さの約2.5倍の長さとしてあるので、該タイル5の上辺は、上記状態で、上部抱持片3bの背後側に位置し、上部係止片3と下部係止片4とで係止された状態となる。
【0041】
この実施例1のトンネルの壁面用複合パネルは、以上のように目地を目地材で充填しない状態で用意し、トンネル内の壁面wに、直張り、浮かし張り等の種々の態様で、かつそれに対応する取付手段を用いて取り付けることができる。
【0042】
ここでは、一例として、
図5(a)、(b)を参照しながら、トンネル内の壁面wに取付手段を用いて直張りする例を説明する。
取付手段としては三種のそれと一種の補助手段を用いている。
【0043】
前記取付手段の一は左右に隣接する二つの複合パネルの隣接する上部角部を同時に支持する上部取付手段7であり、トンネルの壁面wに固定するベース金具7aと、これを壁面wに固定する偏芯プラグ7bと、クッション片7cと、両側の複合パネルの隣接する両上部角部の前面を同時に抑える抑え片7dとからなる。
【0044】
前記ベース金具7aは、
図5(b)に示すように、左右に隣接する二つの複合パネルの上部の中間部を中心として壁面wに接合する取付板7a1と、その上端から直角に屈曲した水平片7a2と、その先端から上向きに延びる取付片7a3とで構成してある。
前記偏芯プラグ7bは、
図5(b)に示すように、プラグ部7b1とビス部7b2とからなり、下穴にプラグ部7b1が埋まるまで装入し、次いでビス部7b2をねじ込んで固定できるようにしたものである。
【0045】
前記クッション片7cは上記水平片の下面に接合した板状弾性部材である。
また前記抑え片7dは、その下部が左右に隣接する両複合パネルの上部角部の前面に当接状態になって抑える板状部材7d1であり、上部が前記ベース金具7aの取付片7a3の前面に接合し、該取付片7a3にビスで固定するための固定部7d2となっている部材である。
【0046】
前記取付手段の二は左右に隣接する二つの複合パネルの隣接する下部角部を同時に支持する下部取付手段8であり、トンネルの壁面wに固定して両側の複合パネルの下部角部を同時に受ける受け金具8aと、これを壁面wに固定する偏芯プラグ8bと、クッション片8cとからなる。
該受け金具8aは、壁面wに接合する取付板8a1と、その下部から前方に延びて、隣接する両側の複合パネルの下部角部を同時に受ける受け部8a2と、該受け部8a2の前端から立ち上がる起立片8a3とで構成したものである。
該偏芯プラグ8bは、前記偏芯プラグ7bと全く同様の構成で、プラグ部8b1とビス部8b2とからなるものである。
クッション片8cは、上記受け部8a2の上に配される板状弾性部材である。
【0047】
前記取付手段の三は左右に隣接する二つの複合パネルの高さ方向中間部で隣接する側辺を同時に支持する中間取付手段9であり、隣接する二つの複合パネルの中間部の側辺を同時に支持する中間抑え部9aと、これを壁面wに固定する偏芯プラグ9bとで構成したものである。
該中間抑え部9aは、底板部9a1と、その両側から前方に延びる二つの側板部9a2、9a2と、その二つの側板部9a2、9a2の先端からそれぞれ対応する複合パネルの前面側に屈曲して延びる前面抑え片9a3、9a3とからなる。
該偏芯プラグ9bは、前記偏芯プラグ7b、8bと全く同様の構成で、プラグ部9b1とビス部9b2とからなるものである。
【0048】
前記補助手段は、複合パネルの裏面とトンネルの壁面wとの間に配するクッション板10である。
【0049】
従ってこの実施例1のトンネルの壁面用複合パネルは、
図5に示すように、以上の上部取付手段7、下部取付手段8、中間取付手段9及びクッション板10を用いてトンネルの壁面wに取り付けることができる。
【0050】
前記したように、かつ
図5(a)、(b)に示すように、複合パネルの下部は、隣接する二つの複合パネルの下部角部を下部取付手段8の受け金具8aで同時に受け、かつその取付板を偏芯プラグ8bで壁面wに固定し、これによって該下部取付手段8を壁面wに固定する。該偏芯プラグ8bは、該取付板の取付位置に対応させて背後の壁面wに開口してある二つの下穴にそれぞれそのプラグ部を埋め込み、そのビス部をねじ込むことで、該取付板を固定する。
【0051】
また該複合パネルの上部は、
図5(a)、(b)に示すように、上部取付手段7のベース金具7aを、その取付板を壁面wに偏芯プラグ7bで固定することで取り付け、該ベース金具7aの取付片にビスで抑え片7dの固定部を取り付け、該抑え片7dの下部の板状部で、左右に隣接する両複合パネルの上部角部の前面を抑える。該偏芯プラグ7bは、該取付板の背後の二箇所に開口した下穴にそのプラグ部を埋め込み、そのビス部をねじ込んで該取付板を壁面wに固定する。
【0052】
更に左右に隣接する二つの複合パネルの高さ方向中間部は、これもまた
図5(a)、(b)に示すように、中間抑え部9aの底部を該二つの複合パネルの間に配置し、該底部を前記偏芯プラグ9bで壁面wに固設し、その両側から前方に延びる両側板部の先端から側方に延びる前面抑え片で両側の複合パネルの側部前面を抑える。該偏芯プラグ9bは、該底部の背後の一箇所に開口した下穴にそのプラグ部を埋め込み、そのビス部をねじ込んで該底部を壁面wに固定する。
【0053】
なお、以上の複合パネルの背面と壁面wとの間には、
図5(a)、(b)に示すように、複数のクッション板10を適宜配置しておく。これは、壁面wの前面又は複合パネルの背面に接着剤で接着接合することにより、その位置に固定しておくことができる。
【0054】
この後、各複合パネルの各隣接するタイル5、5間の目地に目地材を充填する。この実施例1では、この複合パネルを設置した壁面wが曲面となっていないので、複合パネルは屈曲状態となっていない。従ってこの実施例1では、予めタイル5、5間の目地に目地材を充填しておいても不都合はないが、この実施例1のように、種々の場合に対応できるように、目地材は、複合パネルをトンネルの壁面wに設置してから行うのが適当である。
【0055】
こうしてこの実施例1のトンネルの壁面用複合パネルは、簡単かつ確実にトンネルの壁面wに取り付けることができる。そしてこの実施例1のトンネルの壁面用複合パネルのこの取り付け方によれば、上部両側の角部、下部両側の角部及び両側の高さ方向中間部の六箇所と背後の複数箇所(クッション板10の配してある位置)との間で、パネル本体1及び金属基板2(該金属基板2は該当する部位のタイル5を介して)を同時に抱えたような状態で、トンネルの壁面wに支持固定されていることになる。
【0056】
従ってこの実施例1のトンネルの壁面用複合パネルは、以上のように、トンネル内の壁面wに取り付ければ、パネル本体1と金属基板2との剥離のおそれもない。しかもこのような取り付け方は取付箇所を特別に増加させるわけでもない。こうして、パネル本体1と金属基板2との固設状態が確実になり、他方、タイル5、5…は前記金属基板2に確実に保持されているので、この実施例1のトンネルの壁面用複合パネルからのタイル5、5…の剥離落下のおそれは殆どない。
【0057】
またこの実施例1のトンネルの壁面用複合パネルによれば、この複合パネルをトンネル内の壁面wに取り付けた後、自動車の走行中に弾かれた砂利等により又は自動車の一部が接触する等によりその一部のタイル5に損傷が生じた場合に、それぞれその一部のタイル5のみの交換が可能である。それ故、一部のタイル5の交換が不可能で、その全体を取り外して交換せざるを得ない場合と比較して作業が簡単でありかつ経済的である。
【0058】
このように一部のタイル5のみを交換する場合は、対象のタイル5の周囲の目地材を除去し、該タイル5を動かすことを可能にした上で、これを必要なだけ持ち上げれば、その下端を下部係止片4の下部抱持片4bの上端より高く引き上げ、その上端を越えて外部に引き出すことが可能になる。下端を該下部抱持片4bの上端を越えて外部に引き出した後に、該タイル5を引き下げれば、その上端も上部係止片3の上部抱持片3bの下端より下方に引き下げ得、該上部係止片3から損傷の生じている対象のタイル5を外すことができる。
【0059】
対象のタイル5の損傷が甚だしく、多数に割れているような場合は、複合パネル中に残存しているタイル5の破片を除し、かつその周囲の目地材を除去する。
【0060】
このようにして損傷の生じているタイル5を複合パネルから取り外した後、金属基板2のその位置に、新たなタイル5を取り付ける。ケンドン式であるから、その手順で、即ち、新たなタイル5の上端側を上部係止片3の上部抱持片3bの背後側に深く装入し、下端を下部係止片4の下部抱持片4bの上端より上に持ち上げ、次いで、該下部抱持片4bの内側上方に移動させた上で、下降させ、下端を該下部抱持片4の内側に装入し、下部張出片4a上に載せた状態とする。
【0061】
このとき、該タイル5の上端は上部係止片3の上部張出片3aより下方に位置することとなるが、上部抱持片3bの内側には位置することとなり、上部係止片3と下部係止片4とで係止された状態となる。この後は、再度目地を目地材で埋めることにより、設置した新たなタイル5の動きを防止し、外れを防止できるようにする。
【0062】
<実施例2>
この実施例2のトンネルの壁面用複合パネルは、実施例1の金属基板2と異なる金属基板12を用いる点のみが異なり、かつ金属基板12は結合突片11を備えている点のみが金属基板2と異なる。従って以下にはこの点及びこの点の違いによる実施例2の複合パネルの作用効果の違いに関してのみ述べる。
【0063】
この実施例2の金属基板12は、
図6(a)〜(d)に示すように、その上端直下の開口部12aの内の六箇所のそれの上辺から各々結合突片11を突出させてあり、かつ下端直上の開口部12aの内の四箇所のそれの下辺から各々結合突片11を突出させてある。これらの各結合突片11は、パネル本体1の厚さに対応する突出寸法で張り出す張出部11aと該張出部11aの先端からパネル本体1の背後側に屈曲延長する係合片11bとで構成したものである。該係合片11bは、云うまでもなく、金属基板12の上端直下のそれらは、下向きであり、下端直上のそれらは、上向きである。
【0064】
従って実施例2のトンネルの壁面用複合パネルによれば、
図6(c)、(d)に示すように、結合突片11、11…によってパネル本体1の上端及び下端が抱えられることになるため、パネル本体1と金属基板12との結合が確実になる。そのため、トンネルの壁面wにこの複合パネルを取り付ける際に、パネル本体1のみと結合する取付手段を採用しても、パネル本体1から金属基板12が脱落する虞のないものとなる。
【0065】
なお、この実施例2では、結合突片11として、パネル本体1の上下端を抱えるタイプのそれのみを示したが、パネル本体1を予め板状に成形しておいてこれを金属基板12と接合固定するのではなく、金属基板12の背後にペースト状の素材を配してこれを硬化させて構成するものとする場合には、その中に埋設状態となって金属基板12とパネル本体1との結合を図るタイプのそれに構成することもできる。
【0066】
<実施例3>
この実施例3のトンネルの壁面用複合パネルは、
図7〜
図10に示すように、基本的に、方形板状のパネル本体1と、該パネル本体1の前面に固設する金属基板22と、該金属基板22の前面に、それに構成した上部係止片23、23…及び下部係止片24、24…に係止させて配列保持する複数のタイル(プレート部材)5、5…とで構成したものである。
【0067】
この実施例3の複合パネルは、実施例1の複合パネルで用いられている金属基板2と異なる金属基板22を用いている点のみが異なるものである。従って、特に必要がない限り、この点(上部係止片23、23…及び下部係止片を含む金属基板22の構成)及びその作用効果についてのみ述べる。
【0068】
前記金属基板22は、特に
図9及び
図10(a)〜(f)に示すように、前記パネル本体1に対応する縦長長方形の板状部材であり、全体にわたってほぼ四辺形の開口部22a、22a…を概ね平均に多数開口してある。多数の開口部22a、22a…を形成したのはその全体の軽量化を図る趣旨及び接着剤を使用する場合に、これが絡んでタイル5、5…等又はこれとパネル本体1との結合をより良好なものとする趣旨である。
【0069】
前記上部係止片23、23…及び下部係止片24、24…は、係止するタイル5、5…の寸法に対応させ、かつその配列に対応させて該金属基板22に配してあるものである。
【0070】
この実施例3では、
図7及び
図8に示すように、タイル5、5…は、パネル本体1の前面側、即ち、金属基板22の前面に、横方向には二枚を配する態様で、多数のそれを縦方向に定間隔で配するものであり、言い換えれば、タイル5、5…を縦方向2列に配列することとしたものである。そこで前記上部係止片23、23…及び前記下部係止片24、24…は、このように配列する個々のタイル5、5…の上部の二箇所及び下部の二箇所をそれらによって支持するように配したものである。云うまでもなく、各タイル5、5…の上辺を二つの上部係止片23、23で支持し、下辺を二つの下部係止片24、24で支持する。
【0071】
該二つの上部係止片23、23は、この実施例3では、それぞれタイル5、5…の上辺の一端又は他端から該上辺の長さの1/7程度の位置を支持するように位置決めし、該二つの下部係止片24、24も、それぞれタイル5、5…の下辺の一端又は他端から該下辺の長さの1/7程度の位置を支持するように位置決めしたものである。
【0072】
以上の各上部係止片23は、この実施例3では、特に
図9(a)、(b)及び
図10(a)〜(f)に示すように、該金属基板22から前方に張り出す上部張出片23aと該上部張出片23aの先端から下方に屈曲した上部抱持片23bとで構成し、かつ以上の各下部係止片24は該金属基板22から前方に張り出す下部張出片24aと該下部張出片24aの先端から上方に屈曲した下部抱持片24bとで構成する。
【0073】
前記上部係止片23、23…の上部張出片23aは、特に
図10(e)、(f)に示すように、前記金属基板22に形成した該当する開口部22aの上辺から張出状態に屈曲形成したものであり、該開口部22aはその位置が適切になるように位置及び寸法形状を定めておく。前記下部係止片24、24…の下部張出片24aは、
図10(f)に示すように、他の直下の開口部22aの下辺から張出し状態に屈曲形成したものであり、その開口部22aは、これもまた同様に、その位置が適切になるように位置及び寸法形状を定めておくものである。
【0074】
以上の上部係止片23、23…と下部係止片24、24…との上下の間隔は、当然、タイル5、5…の縦方向の寸法に対応させるものであるが、この実施例3では、前者の上部張出片23aと後者の下部張出片24aとの間隔を、該タイル5、5…の縦方向の寸法を僅かに越える寸法とし、これらの上部張出片23aと下部張出片24aの間に側方から該タイル5、5…をスライド自在に装入可能であり、かつ装入されたタイル5、5…がほぼ緩みなくその間に保持されるようにする。
【0075】
なお、前記金属基板22、前記上部係止片23、23…及び下部係止片24、24…はステンレススチールによって一体に構成したものである。
【0076】
この実施例3のトンネルの壁面用複合パネルは、実施例1のそれと同様に、前記パネル本体1の一面に前記金属基板22の背面側を接着剤を介して接着接合し、該金属基板22の前面側に、前記上部係止片23、23…及び前記下部係止片24、24…を介して前記タイル5、5…を装着した段階まで構成し、隣接するタイル5、5相互の目地には、該複合パネルをトンネル内の壁面wに取り付けた後に目地材を充填する。先に述べたように、予め目地に目地材を充填してしまうと、トンネルの壁面wのカーブに対応させて屈曲させることができなくなるからである。
【0077】
タイル5、5…の装着は、先に述べたように、各対応する上部係止片23、23…の上部張出片23a、23a…と下部係止片24、24…の下部張出片24a、24a…との間に側方から装入することで行う。こうして該タイル5、5…を、それぞれ該上部張出片23a、23a…と該下部張出片24a、24a…の間にスライド状態で進入させ、前記したように、それぞれのタイル5において、左右側部から横方向の長さの概ね1/7の位置に上部係止片23、23及び下部係止片24、24が位置することとなったところで、そのスライド進入動作を停止させる。該タイル5、5…は、こうしてこの位置、即ち、
図7及び
図8に示した位置に保持された状態になる。
【0078】
この実施例3のトンネルの壁面用複合パネルは、以上のように目地を目地材で充填しない状態で用意しておき、トンネル内の壁面wに、直張り、浮かし張り等の種々の態様で、かつそれに対応する取付手段を用いて取り付けることができる。そして取付後に目地に目地材を充填する。これは取付手段も含めて実施例1のそれと全く同様である。もっともこの実施例3では、目地材を充填していなくても、タイル5、5…は、上部係止片23、23…及び下部係止片24、24…で脱落不能に保持されているので、地震等の振動や揺動を受けてもタイル5、5…の脱落の虞はない。従って、他の条件からそれが可能な場合は、目地を目地材で充填しないこととすることも可能である。なお、この実施例3の場合は、一部のタイル5に損傷が生じた場合に、それのみの交換を行うことは困難であり、一部のタイル5の損傷の生じている複合パネルを交換することになる。