特許第5765982号(P5765982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5765982
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】けい酸カルシウム材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/18 20060101AFI20150730BHJP
   C04B 14/02 20060101ALI20150730BHJP
   C04B 14/38 20060101ALI20150730BHJP
   C04B 14/42 20060101ALI20150730BHJP
   C04B 16/02 20060101ALI20150730BHJP
   C04B 16/06 20060101ALI20150730BHJP
   C04B 18/24 20060101ALI20150730BHJP
   C04B 18/16 20060101ALI20150730BHJP
   B28B 1/52 20060101ALI20150730BHJP
   B28B 3/02 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   C04B28/18ZAB
   C04B14/02 A
   C04B14/38 A
   C04B14/38 C
   C04B14/38 Z
   C04B14/42 Z
   C04B16/02 Z
   C04B16/06 A
   C04B18/24 Z
   C04B18/16
   B28B1/52
   B28B3/02 D
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-63717(P2011-63717)
(22)【出願日】2011年3月23日
(65)【公開番号】特開2012-197206(P2012-197206A)
(43)【公開日】2012年10月18日
【審査請求日】2013年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000126609
【氏名又は名称】株式会社エーアンドエーマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100068700
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 三幸
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】小田 正章
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼橋 拓
【審査官】 相田 悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−104769(JP,A)
【文献】 特開2004−322546(JP,A)
【文献】 特開2008−155500(JP,A)
【文献】 特開昭63−144158(JP,A)
【文献】 特開2004−123409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00〜28/36
B28B 1/00〜1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1200℃における加熱残存収縮率が4%以下であるけい酸カルシウム材の製造方法であって、以下の原料(A)から(E)を含有し、原料(D)に占めるCaO成分と原料(E)に占めるSiO2成分とのCaO/SiO2モル比が0.9〜1.2である原料を必須原料とし、前記原料に水を添加して湿式混合し、抄造法又はプレス脱水法により脱水成形して生板を得、得られた生板をオートクレーブ養生し硬化させることを特徴とするけい酸カルシウム材の製造方法。
(A)アスペクト比3〜20の針状ワラストナイトを30〜60質量%含有し、かつ1200℃における加熱残存収縮率が5%以下であるけい酸カルシウム材の廃材の粉末であって、目開き150μmのフルイで90質量%以上通過するように粒度を調整した廃材粉末 5〜15質量%、
(B)アスペクト比3〜20の針状ワラストナイト 30〜60質量%、
(C)セルロースパルプ、耐アルカリガラス繊維、炭素繊維、炭化珪素繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維及びポリエチレンパルプから選択される1種又は2種以上からなる補強繊維 1〜10質量%、
(D)石灰質原料 14〜35質量%、及び
(E)けい酸質原料 10〜29質量%。
【請求項2】
原料としてさらに着色剤を1質量%以下の範囲で用いることを特徴とする請求項1記載のけい酸カルシウム材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、けい酸カルシウム材の廃材を原料の一部として使用しリサイクルした高い耐熱性能を有するけい酸カルシウム材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
けい酸カルシウム材は、成形した原料をオートクレーブ養生し、原料中の石灰質原料とけい酸質原料とを反応させ、マトリックスであるけい酸カルシウム水和物を生成させることにより硬化させた材料である。このようなけい酸カルシウム材は、軽量、高強度、寸法安定性、耐火性等の特性を有するため、建材等の分野で広く使用されている。また、トンネル内装等に使用するため、特に高い耐火性及び耐熱性を有し、1200℃における加熱残存収縮率が5%以下であるという優れた要求特性を満たすけい酸カルシウム材も提案されている(特許文献1、特許文献2)。これらのけい酸カルシウム材は、原料として針状ワラストナイトを多量に使用することを特徴としている。また、けい酸カルシウム材の廃材について、新たに製造するけい酸カルシウム材の原料の一部として再利用することによりリサイクルさせる技術も提案されている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−104769号公報
【特許文献2】特開2004−292224号公報
【特許文献3】特開2009−227537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、原料として針状ワラストナイトを多量に使用した1200℃における加熱残存収縮率が5%以下であるけい酸カルシウム材については、けい酸カルシウム材の廃材を原料の一部として再利用すると、マトリックスを形成するための石灰質原料とけい酸質原料の比率が低下しすぎてしまい、強度等の物性の低下を招く危険性があるため、けい酸カルシウム材の廃材を原料として再利用するには問題があった。
【0005】
従って、本発明の課題は、原料として針状ワラストナイトを多量に使用したけい酸カルシウム材において、物性を低下させることなく、その廃材を原料の一部として再利用した、耐火性及び耐熱性に優れたけい酸カルシウム材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、前記課題を解決すべく種々検討した結果、針状ワラストナイトを多量に含むけい酸カルシウム材の廃材のリサイクルに関して種々検討した結果、原料のワラストナイト、補強繊維、石灰質原料及びけい酸質原料の使用量だけでなく、当該廃材中の針状ワラストナイト含有量、粒度及びその使用量を調整することにより、リサイクル原料として用いたけい酸カルシウム廃材よりもさらに耐火性、耐熱性に優れた、1200℃における加熱残存収縮率4%以下という優れたけい酸カルシウム材が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、1200℃における加熱残存収縮率が4%以下であるけい酸カルシウム材の製造方法であって、以下の原料(A)から(E)を含有し、原料(D)に占めるCaO成分と原料(E)に占めるSiO2成分とのCaO/SiO2モル比が0.9〜1.2である原料を必須原料とし、前記原料に水を添加して湿式混合し、抄造法又はプレス脱水法により脱水成形して生板を得、得られた生板をオートクレーブ養生し硬化させることを特徴とするけい酸カルシウム材の製造方法を提供するものである。
(A)針状ワラストナイトを30〜60質量%含有し、かつ1200℃における加熱残存収縮率が5%以下であるけい酸カルシウム材の廃材の粉末であって、目開き150μmのフルイで90質量%以上通過するように粒度を調整した廃材粉末 5〜15質量%、
(B)針状ワラストナイト 30〜60質量%、
(C)セルロースパルプ、ガラス繊維、耐アルカリガラス繊維、炭素繊維、炭化珪素繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維及びポリエチレンパルプから選択される1種又は2種以上からなる補強繊維 1〜10質量%、
(D)石灰質原料 14〜35質量%、及び
(E)けい酸質原料 10〜29質量%。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、けい酸カルシウム材の廃材を原料として再利用できるので、リサイクル技術として有用である。また、本発明によれば、原料としてマトリックスであるけい酸カルシウム水和物の形成に寄与しない針状ワラストナイトを原料として多量に使用し、さらにけい酸カルシウム材の廃材も原料として使用しているにもかかわらず、強度等の物性を低下させることなく1200℃における加熱残存収縮率が4%以下という高い耐熱性を有するけい酸カルシウム材を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の特徴の一つは、針状ワラストナイト、補強繊維、石灰質原料及びけい酸質原料を必須原料として得られる(A)針状ワラストナイトを30〜60質量%含有し、かつ1200℃における加熱残存収縮率が5%以下であるけい酸カルシウム材の廃材を、新たなけい酸カルシウム材を製造するための原料として5〜15質量%使用することである。本発明に使用する前記けい酸カルシウム材の廃材には、本発明を用いて製造されたけい酸カルシウム材の廃材も含まれる。けい酸カルシウム材の廃材は、必要に応じて研磨した場合の研磨粉、所定の寸法に切断した後の切断屑、あるいは使用場所から取り外された廃材として発生する。(A)けい酸カルシウム材の廃材の配合比率が15質量%を上回ると、マトリックスを形成するための原料の配合比率が低くなり、得られたけい酸カルシウム材の硬化が不十分となり、搬送時あるいは切断時の角欠けが発生するおそれがあるため好ましくない。また、5質量%を下回ると、製造上及び物性上問題を生じるわけではないが、けい酸カルシウム材の廃材を原料として再利用しリサイクルを図るという本発明の趣旨にそぐわない。なお、より好ましい(A)廃材の配合比率は、5〜13質量%であり、さらに好ましくは5〜10質量%である。
また、1200℃における加熱残存収縮率が5%を上回るけい酸カルシウム材の廃材を原料の一部として使用すると、得られたけい酸カルシウム材の1200℃における加熱残存収縮率が4%以下とならない場合があるので好ましくない。
【0010】
また、用いる(A)けい酸カルシウム材の廃材中の針状ワラストナイトの含有量が30質量%を下回ると、得られたけい酸カルシウム材の1200℃における加熱残存収縮率が4%以下とならない危険性があるので好ましくない。
一方、けい酸カルシウム材中の針状ワラストナイトの含有量が60質量%を上回ると、後述のとおり、針状ワラストナイトが均一に分散しにくくなること、および強度が低くなることから、このようなけい酸カルシウム材は使用されておらず、従って、針状ワラストナイトの含有量が60質量%を上回るけい酸カルシウム材の廃材も発生しない。
なお、(A)廃材中のより好ましい針状ワラストナイト含有量は35〜60質量%であり、さらに好ましくは40〜60質量%である。
【0011】
本発明において使用する(A)けい酸カルシウム材の廃材は粉状であることが好ましく、その粒度は、目開き150μmのフルイで90質量%以上通過することが好ましい。前記した切断屑や使用場所から取り外されたけい酸カルシウム材の廃材は、目開き150μmのフルイで90質量%以上通過となるよう粉砕して使用する。前記したこの目開きのフルイの残分を原料として使用すると、得られたけい酸カルシウム材の外観を悪化させたり、物性を低下させることがあるので好ましくない。従って、前記フルイの残分が10質量%を上回る場合は、残分を再粉砕して再度フルイ分けを行う。なお、さらに好ましい目開き150μmのフルイの通過量は92質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0012】
本発明において、(B)針状ワラストナイトは、トンネル内装等に使用するけい酸カルシウム材に必要とされる耐火性及び耐熱性を得るために重要な原料である。原料中に占める針状ワラストナイトの比率は30〜60質量%であり、好ましくは35〜60質量%であり、より好ましくは40〜60質量%である。針状ワラストナイトの配合比率が30質量%未満であると、得られたけい酸カルシウム材の1200℃における加熱残存収縮率が4%以下とならない危険性があるので好ましくない。また、針状ワラストナイトの配合比率が60質量%を上回ると、後述する原料の湿式混合において針状ワラストナイトが均一に分散しにくくなること、及びマトリックスを形成するための原料の配合比率が低くなり、得られたけい酸カルシウム材の強度が9.5N/mm2を下回る危険があることから好ましくない。また、針状ワラストナイトの繊維長としては30μm〜500μm、好ましくは50μm〜200μmが好適である。
【0013】
本発明において、(C)補強繊維は、セルロースパルプ、ガラス繊維、耐アルカリガラス繊維、炭素繊維、炭化珪素繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維及びポリエチレンパルプから選択される1種又は2種以上を使用する。補強繊維の配合比率は1〜10質量%であり、3〜8質量%が好適であり、4〜6質量%がさらに好適である。配合比率が1質量%を下回ると、後述する湿式混合した原料を成型する際に、補強繊維以外の原料が濾水とともに流れ出てしまいやすくなること、及び得られたけい酸カルシウム材の強度が9.5N/mm2を下回る危険があることから好ましくない。また、配合比率が10質量%を上回ると、後述する原料の湿式混合において補強繊維が均一に分散しにくくなるため好ましくない。
【0014】
本発明において、(D)石灰質原料は、けい酸質原料と反応させてマトリックスとして好適なトバモライト、ゾノトライト、両者の混晶等のけい酸カルシウム水和物を生成させるための原料であり、例えば消石灰、生石灰、ポルトランドセメント等からなる群から選ばれる1つ又は2つ以上を組み合わせて使用する。その配合比率は、原料に対して14〜35質量%、さらに16〜30質量%、特に20〜30質量%の範囲とすることが好ましい。配合比率が14質量%を下回ると、マトリックスであるけい酸カルシウム水和物を十分に生成させることができず、得られたけい酸カルシウム材の強度が9.5N/mm2を下回る危険があるので好ましくない。また、配合比率が35質量%を上回ると、後述するCaO/SiO2モル比(以下、C/S比と記す)の条件に基づいて、けい酸質原料の配合比率も多くする必要を生じ、その結果、(A)けい酸カルシウム材の廃材の配合比率が5質量%未満となってしまい、本発明の趣旨から外れる。
【0015】
本発明において、(E)けい酸質原料は、石灰質原料と反応させてマトリックスであるけい酸カルシウム水和物を生成させるための原料であり、珪石微粉、シリカフューム、珪砂、マイクロシリカ、珪藻土等からなる群から選ばれる1つ又は2つ以上を組み合わせて使用する。その配合比率は、原料に対して10〜29質量%、さらに12〜27質量%、特に15〜25質量%の範囲とすることが好ましい。配合比率が10質量%を下回ると、マトリックスであるけい酸カルシウム水和物を十分に生成させることができず、得られたけい酸カルシウム材の物性が低下するので好ましくない。また、配合比率が29質量%を上回ると、後述するC/S比の条件に基づいて、石灰質原料の配合比率も多くする必要を生じ、その結果、けい酸カルシウム材の廃材の配合比率が5質量%未満となってしまい、本発明の趣旨から外れる。
【0016】
本発明において、(D)石灰質原料中のCaO成分とけい酸質原料中のSiO2成分とのモル比(C/S)比は、0.9〜1.2、特に0.9〜1.1の範囲が望ましい。C/S比がこの範囲外であると、マトリックスとして好適なトバモライト、ゾノトライト、両者の混晶等のけい酸カルシウム水和物が生成しにくくなるので好ましくない。
【0017】
本発明においては、上記した必須原料のほかに、必要に応じて鉱物顔料やカーボンブラック等の着色剤を1質量%以下の範囲で用いてもよい。けい酸カルシウム材は、通常白色であるが、使用される部位によっては白色が適していない場合もある。このような場合には、原料として着色剤を使用することにより、所望の色を有するけい酸カルシウム材を製造することができる。
【0018】
本発明方法においては、まず、上記した原料に水を添加して湿式混合し、原料スラリーを得る。次いで、抄造法又はプレス脱水法により脱水成形して生板を得、得られた生板をオートクレーブ養生し硬化することにより、けい酸カルシウム材を得る。
【0019】
原料と水は、パルパー、アジター等の混合装置を用いて均一に混合し、原料スラリーを得る。混合時間は、使用する混合装置の種類や規模、原料及び水の量等によって異なるが概ね1分〜10分である。抄造法の場合、添加する水は質量比で原料:水=1:10〜1:20程度が好適である。また、プレス脱水法の場合、添加する水は質量比で原料:水=1:1.5〜1:4.0程度が好適である。
【0020】
得られた原料スラリーは、そのまま後述する方法により脱水成形してもよいが、トンネル用として好適な、見掛け密度が0.9〜1.1g/cm3のけい酸カルシウム材を得るためには、原料スラリーを大気圧下において加熱処理して膨潤させてから後述する方法により成形するのが好適である。加熱処理は、80℃〜100℃で1.5時間〜2.5時間行うのが好適である。加熱温度が80℃を下回り、あるいは加熱処理時間が1.5時間を下回ると、得られるけい酸カルシウム材の見掛け密度が1.1g/cm3を上回る場合があり、また、脱水成形して得られた生板のハンドリング性が悪く製造効率が低下する場合がある。また、加熱処理時間が2.5時間を上回ると、得られるけい酸カルシウム材の物性に悪影響を与えることはないが、余計なエネルギーをかけるだけであり、また、製造効率も悪くなる。
【0021】
得られた原料スラリーを、所定の形状に脱水成形する。脱水成形方法には、抄造法又はプレス脱水法が好適に用いられる。抄造法は、原料スラリーを薄膜状に抄き取り、この薄膜をメーキングロールと称されるロールに所定の厚さまで巻き取る脱水成形方法であり、丸網抄造法やフローオン抄造法がある。プレス脱水法は、所定の形状のモールドに原料スラリーを投入し、加圧脱水して成形する方法である。これらの脱水成形方法で成形された未硬化状態の成形材を生板という。トンネル内装用としては、通常、平板状又は円弧をなす板状に成形される場合が多い。
【0022】
得られた生板をオートクレーブ養生し、マトリックスとなるけい酸カルシウム水和物を生成させて硬化させることによりけい酸カルシウム材を得ることができる。本発明におけるオートクレーブ養生条件は、温度が190〜210℃で、保持時間5〜15時間が好適である。マトリックスであるけい酸カルシウム水和物は、トバモライト、ゾノトライト、又はトバモライトとゾノトライトの混晶が好適であるが、温度又は保持時間が前記した範囲外であると、十分なマトリックスを形成できないことがあるため好ましくない。
【0023】
オートクレーブ養生を終了したけい酸カルシウム材はオートクレーブから取り出され、乾燥して所定の含水率に調整され、必要に応じて所定の寸法に切断されてけい酸カルシウム材製品となる。また、乾燥後に研磨が行われる場合もある。
【0024】
トンネル等の内装として使用するけい酸カルシウム材は、1200℃における加熱残存収縮率が少なくとも5%以下、好ましくは4%以下である。また、見掛け密度は0.9〜1.1g/cm3が好適である。見掛け密度が0.9未満であると、長期耐久性が低下する危険性があることから好ましくなく、見掛け密度が1.1g/cm3を上回ると材料が重くなり作業性及び施工性の低下が起こるという問題があることから好ましくない。さらに、本発明により得られるけい酸カルシウム材の強度は、9.5N/mm2以上であるのが実用に適している。本発明方法によれば、原料の一部にけい酸カルシウム材を使用し、かつ見掛け密度が0.9〜1.1g/cm3の範囲において、1200℃における加熱残存収縮率が4%のけい酸カルシウム材を得ることができる。なお、原料として針状ワラストナイトを多量に使用したけい酸カルシウム材の場合、1200℃における加熱残存収縮率によって、耐熱性と耐火性の両方を評価することができ、その値が小さいほど耐熱性及び耐火性が優れている。
【0025】
本発明の製造方法を用いれば、けい酸カルシウム材の廃材を原料として再利用して、1200℃における加熱残存収縮率が4%以下という耐熱性に優れたけい酸カルシウム材を製造することができる。けい酸カルシウム材の廃材を原料の一部として使用しているにもかかわらず、このような優れた物性を得ることができる理由は明らかではないが、本発明者らは、原料の一部として使用するけい酸カルシウム材の廃材の粉末が、所定の粒度を有することにより、新たに生成するけい酸カルシウム水和物とともにマトリックスを形成する、又はマトリックスの形成を促進することによると推定している。
【実施例】
【0026】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
実施例1〜16、参考例及び比較例1〜9
【0028】
原料の配合条件を表1〜表5に示すとおりとし、原料に対して質量比で3.5倍の水を加えてアジターにより2分間混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを90〜100℃で2時間加熱し膨潤させた。膨潤させた原料スラリーをモールドに投入しプレス脱水成形して平板状の生板を得た。この生板に対して200℃で7.5時間のオートクレーブ養生を行って硬化させ、平板状のけい酸カルシウム材を得た。得られたけい酸カルシウム材について、見掛け密度、曲げ強度及び1200℃における加熱残存収縮率を測定した。測定方法は以下のとおりである。
【0029】
(1)見掛け密度
長さ150mm×幅80mm×厚み20mmに切断した試験片を105℃雰囲気で24時間乾燥を行い、その後デシケーター中で常温まで除冷した。この試験片の重量、長さ、幅及び厚みを測定し、体積法で算出した。
【0030】
(2)曲げ強度
長さ150mm×幅(b)80mm×厚み(t)20mmに切断した試験片を105℃雰囲気で24時間乾燥を行い、その後デシケーター中で常温まで除冷した。スパン(L)120mm、試験速度1mm/分で試験体に荷重を加え、最大荷重(F)を測定する。曲げ強度は次の式で求める。
σ=3FL/2bt2
【0031】
(3)1200℃における加熱残存収縮率
長さ150mm×幅40mm×厚み20mmに切断した試験片を1200℃の電気炉に3時間保持した後電気炉から取り出し、デシケータ中で常温まで徐冷した。加熱前の長さl1と加熱後の長さl2を測定し、(l1−l2)/l1×100(%)で求めた。
【0032】
[原料]
シリカフューム:EFACOシリカフューム(巴工業株式会社)純度94.3%
珪石:珪石微粉A(株式会社五島鉱山)SiO2純度99.8%
消石灰:消石灰特号(古手川産業株式会社)CaO純度73.68%
針状ワラストナイト:KTP−H02(関西マテック株式会社)(アスペクト比3〜20)
パルプ:晒クラフトパルプ(丸紅株式会社)
廃材粉末1:針状ワラストナイト51質量%含有、1200℃における加熱残存収縮率2.5%であるけい酸カルシウムの廃材粉末、目開き150μmフルイ95質量%通過品
原則的に廃材粉末はこの原料を使用
廃材粉末2:針状ワラストナイト51質量%含有、1200℃における加熱残存収縮率2.5%であるけい酸カルシウムの廃材粉末、目開き150μmフルイ85質量%通過品
廃材粉末3:針状ワラストナイト15質量%含有、1200℃における加熱残存収縮率6.5%であるけい酸カルシウムの廃材粉末、目開き150μmフルイ95質量%通過品
カーボンブラック:三菱カーボンブラック(三菱化学株式会社)
炭素繊維:ユニオン化成CF−6N(ユニオン化成株式会社)
ガラス繊維:ACS13H−103(日本電気硝子株式会社)
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
得られたけい酸カルシウム材の評価結果を表6〜表10に示す。
【0039】
【表6】
【0040】
【表7】
【0041】
【表8】
【0042】
【表9】
【0043】
【表10】
【0044】
表6〜表10から明らかなように、本発明の原料(A)〜(E)を用い、前記C/S比を0.9〜1.2とした原料を用いて得られたけい酸カルシウム材は、見掛け密度が0.9〜1.1であり、曲げ強度が9.5N/mm2以上であり、搬送、切断時に欠けがなく、かつ1200℃における加熱残存収縮率が4%以下という優れた耐火性、耐熱性を有していた。これに対し、本発明のこれらの要件のいずれかを満たさない原料を用いて得られたけい酸カルシウム材は、これらの要求特性のいずれかを満たさないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、けい酸カルシウムの廃材を原料として再利用でき、かつ得られるけい酸カルシウム材が耐火性、耐熱性に優れるのでリサイクル技術として有用である。