(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態に係るクリック機能付きの回転式電子部品1−1の概略側断面図(
図2のA−A概略断面図)、
図2は回転式電子部品1−1の斜視図、
図3は回転式電子部品1−1の上側の部品の分解斜視図、
図4は回転式電子部品1−1の下側の部品の分解斜視図である。なお以下の説明において、「上」とは摺動子板110から回転体(以下、各実施形態において「回転つまみ」という)10を見る方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする(下記する他の実施形態においても同様)。
【0022】
これらの図に示すように回転式電子部品1−1は、回転体10と、押釦つまみ30と、ケース50と、クリック板70と、摺動子板110と、支持部材130と、取付台150と、回路基板(以下「フレキシブル回路基板」という)170と、保持部材(以下「保持板」という)190とを具備して構成されている。以下各構成部品について説明する。
【0023】
回転つまみ10は合成樹脂の成形品であり、略円板状の本体部11の中央に円形の開口部13を設けて構成されている。開口部13は、下記する押釦つまみ30の本体部31を挿通できるように本体部31の外径寸法とほぼ同じ内径寸法を有しており、且つ本体部31に設けた下記するつば部37が上方に抜けないようにつば部37の外径寸法よりも若干小さい内径寸法に形成されている。一方、本体部11の外周には下方に突出する筒状の外周側壁部16が形成され、また本体部11の下面の開口部13の周囲には筒状に突出する押釦つまみ収納部15(
図1参照)が形成され、押釦つまみ収納部15の外周を囲む位置には筒状に突出する軸部17(
図1参照)が形成されている。押釦つまみ収納部15の下端辺の180°対向する位置には、矩形凹状に切り欠かれてなる連結部挿入部14(
図3では2つの内の一方のみ示す)が形成されている。軸部17の下端辺の複数位置(下記するクリック板70の各被取付部81に対応する位置)には、この回転つまみ10にクリック板70と摺動子板110とを取り付ける図示しない小突起状の取付部が設けられている。
【0024】
押釦つまみ30は合成樹脂の成形品であり、略円板状の本体部31と、本体部31の下面中央から下方向に向かって突出する柱状の押圧部33とを具備し、本体部31の外周面の下部に薄板リング状に張り出すつば部37を設けて構成されている。
【0025】
ケース50は合成樹脂の成形品であり、円形平板状の上面部51を備え、上面部51の中央に回転つまみ10の軸部17をその内部に挿入して回動自在に軸支する円形の軸支孔53を設け、また上面部51の外周に下方向に向かって突出する筒状の側壁部55を設け、側壁部55の下端辺の複数位置に下記する取付台150に取り付けられる小突起状の取付台取付部57を設けて構成されている。軸支孔53の内周部分は下方向に筒状に突出しており、そのリング状の下端面がクリック板当接部59(
図1参照)となっている。
【0026】
クリック板70は1枚の弾性金属板(例えば厚み0.1mm程度のステンレス板)製であり、リング形状に形成された取付部71と、取付部71の中央の円形の開口73内に設置されたリング形状の弾接アーム部75とを、一対の連結部77によって連結して構成されている。一対の連結部77は、180°対向する位置において、取付部71の内周辺と弾接アーム部75の外周辺とを連結している。弾接アーム部75の180°対向する位置(連結部77より90°回転した位置)には、それぞれ下方向に向かって凸状に湾曲・突出してなるクリック弾接部79が設けられている。取付部71の外径寸法は、ケース50の軸支孔53の内径寸法よりも少し大きく構成されている。取付部71の前記回転つまみ10の各取付部(図示せず)に対向する位置には、各取付部を挿入する小孔からなる被取付部81が設けられている。
【0027】
摺動子板110は弾性金属板(例えば厚み0.1mm程度のリン青銅板)製であり、前記クリック板70の取付部71の外径寸法よりも若干小さな外径寸法を有する略円形の平板リング状に形成され、中央に開口111を設けると共に、等間隔(120°間隔)の3か所の位置(クリック板70の各被取付部81に対向する位置)に小孔からなる取付固定部113を設け、また各取付固定部113の側部から3本ずつの摺動冊子115を摺動子板110の開口111の周囲を囲むように配置して構成されている。各組の摺動冊子115中の先端近傍部分には摺動接点117が設けられている。
【0028】
支持部材130は合成樹脂を略矩形状に成形し、その中央に略円形の開口131を設けて構成されている。支持部材130の下面の4つの角部近傍には、開口131につながる4つの凹状の係合部135が設けられている。係合部135は下記する取付台150の係合片159を上下動自在に挿入・係合する寸法形状に形成されている。支持部材130の下面の下記する保持板190の各挿入取付部191に対向する位置(6か所)には、小突起状の取付部137が設けられている。
【0029】
取付台150は合成樹脂を略円板状に成形して構成されており、ケース50とほぼ同一の外径寸法を有している。取付台150の中央には押釦つまみ30の押圧部33を挿通して軸支する開口部151が設けられ、開口部151の周囲には上方向に向かって突出する筒状の突起からなる軸部153が設けられている。一方ケース50の各取付台取付部57に対向する複数の位置(この例では4か所の位置)には、貫通孔からなる取付部157が設けられ、また外周の所定位置(この例では各取付部157の外側の4か所の位置であって、前記支持部材130の各係合部135に対向する位置)には、半径方向外方に向かって突出する係合片159が設けられている。取付台150の下面の各取付部157の間の所定位置(各取付部157間の中間位置、下記する第2回路基板部175の各押圧スイッチ185に対向する位置)には、下方向に向かって突出する柱状の押圧部163(
図1参照)が設けられている。取付台150の上面の前記軸部153の周囲には、複数の凹凸をリング状に形成してなるクリック係合部165が設けられている。
【0030】
フレキシブル回路基板170は可撓性を有する合成樹脂フイルム上に所望の回路パターンを設けて構成されており、この例では熱可塑性のPET(ポリエチレンテレフタレート)フイルムを用いているが、他の各種熱可塑性、熱硬化性、光硬化性の合成樹脂フイルムを用いて構成してもよい(下記するフレキシブル回路基板430においても同様)。フレキシブル回路基板170は、摺接パターン179(
図1参照)が形成された第1回路基板部171と、中央スイッチ183とその周囲を囲む4つの押圧スイッチ185とが形成された第2回路基板部175とを、帯状の連結部173によって連結して構成されている。なお
図4では第1回路基板部171が上下逆向きとなっているため、摺接パターン179は見えない。
【0031】
第1回路基板部171は略円形の外形を有し、中央に取付台150の軸部153とクリック係合部165とを挿通(露出)する円形の開口部177を設け、またその下面の開口部177の周囲に摺接パターン179(
図1参照)を設けて構成されている。摺接パターン179は、スイッチパターンや抵抗体パターンなどである。第1回路基板部171の前記ケース50の各取付台取付部57に対向する4か所の位置には、貫通孔または切り欠きからなる挿通部181が設けられている。
【0032】
第2回路基板部175は第1回路基板部171とほぼ同じ大きさで略矩形状の外形を有し、その上面(摺接パターン179を設けた反対側の面)の中央に中央スイッチ183を設置し、中央スイッチ183の周囲の複数の位置(この例では同一円周上の等間隔(90°間隔)の4か所の位置)に押圧スイッチ185を設置して構成されている。両スイッチ183,185は何れも、図示しない一対のスイッチ接点上に弾性金属板をドーム形状に形成してなる反転板(可動接点板)を取り付けて構成されており、反転板を押圧してこれを反転することでスイッチがオンする構造となっている。また第2回路基板部175の前記支持部材130の取付部137(その内の3つ)に対向する位置には、貫通孔からなる挿通部187が形成されている。なお摺接パターン179と各スイッチ183,185の出力は図示しない回路パターンによって第2回路基板部175の外周に連結した帯状の引出部189に引き出されている。
【0033】
保持板190は硬質板で構成され、この例では金属板(ステンレス板)を用いているが、合成樹脂板などの他の材質を用いてもよい。保持板190は略矩形状であり、第2回路基板部175を載置する寸法形状に形成され、前記支持部材130の各取付部137(6つ)に対向する位置に貫通孔からなる挿入取付部191を設けるとともに、それら以外の位置に2つの取付孔193を設けて構成されている。
【0034】
次に回転式電子部品1−1の組立方法を説明する。まず回転つまみ10の開口部13の押釦つまみ収納部15の下側から押釦つまみ30の本体部31を挿入し、その上面を開口部13から回転つまみ10の上面側に露出させる。次にこの回転つまみ10の下側にケース50を設置し、その際ケース50の軸支孔53内に回転つまみ10の軸部17を挿入することでケース50の上部に回転つまみ10を回動自在に設置する。
【0035】
次にケース50の下面側にクリック板70を設置し、その際押釦つまみ30の押圧部33をクリック板70の弾接アーム部75の中央の孔に挿通させながらクリック板70の一対の連結部77を回転つまみ10の連結部挿入部14に挿入することで、弾接アーム部75を押釦つまみ収納部15内に収納すると同時に、クリック板70の取付部71を回転つまみ10の軸部17の下端辺上に当接し、その際軸部17の下端辺に設けた図示しない各取付部を被取付部81に挿通する。次にクリック板70の下面側にこれに重ねるように摺動子板110を設置し、その際回転つまみ10の前記図示しない各取付部を摺動子板110の各取付固定部113に挿入して回転つまみ10の各取付部の先端を熱かしめすることで潰し、これによって重ね合わせたクリック板70と摺動子板110によって構成される重合板200を、回転つまみ10の軸部17の下端辺上に一体に固定する。このときクリック板70の取付部71はその外周近傍部分がケース50のクリック板当接部59に当接しており、従って軸部17は軸支孔53から抜けることはなく、回転つまみ10と重合板200はケース50を挟んでその上下に位置し、ケース50に対して一体に回動自在となる。なお押釦つまみ収納部15はクリック板70の弾接アーム部75によって一部が塞がれるので、押釦つまみ30の本体部31は押釦つまみ収納部15内から抜け出ることはない。
【0036】
図5は重合板200のみを単独で下側から示す斜視図である。同図に示すように重合板200は、摺動子板110の摺動接点117を、この摺動子板110のクリック板70を重ね合わせる面の反対面側に向かって突出させ、一方クリック板70のクリック弾接部79を、このクリック板79を摺動子板110と重ね合わせた際に、摺動子板110の開口111を貫通して前記摺動接点117が突出している側に向けて突出させる構成としている。
【0037】
次に
図4に示すフレキシブル回路基板170の第1回路基板部171をその下面を上に向けた状態で取付台150上に載置し、その際第1回路基板部171の開口部177に取付台150の軸部153及びクリック係合部165を挿通し、これらを回転つまみ10等を取り付けたケース50の下側に設置する。その際ケース50の各取付台取付部57を第1回路基板部171の各挿通部181と取付台150の各取付部157に挿入し、取付台150の下面から突出する各取付台取付部57の先端を熱かしめして固定する。このとき押釦つまみ30の押圧部33は取付台150の軸部153の内部(開口部151内)に挿入され押圧部33の下端は取付台150の下面に露出する。次に連結部173を折り曲げることで第2回路基板部175を取付台150の下面側に設置し、さらに第2回路基板部175の下面側に保持板190を設置した上で、回転つまみ10の上部から被せるように支持部材130を第2回路基板部175上に載置する。このとき支持部材130の開口131内に前記ケース50や取付台150等が設置され、また支持部材130の各係合部135内に取付台150の各係合片159が上下動自在に挿入され、さらに支持部材130の各取付部137が第2回路基板部175の各挿通部187と保持板190の各挿通部191に挿入される。そして保持板190の下面から突出する各取付部137の先端を熱かしめすれば、回転式電子部品1−1の組み立てが完了する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない(下記する他の例においても同様)。
【0038】
これによりケース50の上部に設置した回転つまみ10と、ケース50の下部に設置した重合板200が、ケース50の上下でケース50に対して一体に回転自在に設置される。またクリック板70のクリック弾接部79は取付台150のクリック係合部165に弾接係合した状態となり、また摺動子板110の摺動接点117は第1回路基板部171の摺接パターン179に当接した状態となる。また押釦つまみ30の押圧部33の下面は中央スイッチ183の反転板に当接し、つば部37の上面は回転つまみ10の下面に接近又は当接している。また取付台150は各押圧部163が各押圧スイッチ185の反転板に当接して水平状態を保っている。
【0039】
そして回転つまみ10を回転すれば、重合板200が回転つまみ10と一体に回転し、摺動子板110の摺動接点117が摺接パターン179上を摺動して摺接パターン179の電気的出力が変化する。同時にクリック板70のクリック弾接部79が取付台150のクリック係合部165に弾接係合してクリック感覚が生じる。即ち前記摺動子板110と摺接パターン179によって回転式電子部品の出力を取り出す検出手段が構成されており、一方クリック板70とクリック係合部165によって回転式電子部品のクリック機構が構成されている。
【0040】
一方押釦つまみ30の本体部31を押圧すれば、その押圧部33が中央スイッチ183の反転板を押圧してこれを反転し、中央スイッチ183がオンする。押釦つまみ30への押圧を解除すれば反転板の弾性復帰力によって中央スイッチ183はオフし、押釦つまみ30は元の位置に自動復帰する。また回転つまみ10の上面の取付台150の4か所の押圧部163の何れかに対応する部分を押圧すれば、ケース50や押釦つまみ30等、取付台150上に設置されている各構成部品が取付台150と一体に押圧された方向に傾いて揺動し、下降した側の押圧部163が対向する押圧スイッチ185の反転板を押圧してこれを反転し、押圧スイッチ185がオンする。回転つまみ10への押圧を解除すれば、反転している反転板の弾性復帰力によって回転つまみ10及び取付台150等の各構成部品が一体に元の水平位置に自動復帰し、押圧スイッチ185はオフする。
【0041】
ここで回転つまみ10及びこれと一体に回転する重合板200を回転側部材といい、回転つまみ10の回転方向に対して静止しているそれ以外の各構成部品、即ち押釦つまみ30,ケース50,支持部材130,取付台150,フレキシブル回路基板170(第1,第2回路基板部171,175),保持板190を静止側部材ということとすると、上記回転式電子部品1−1は、摺接パターン179を形成すると共にクリック係合部165を設けてなる静止側部材と、静止側部材に対して回転自在に設置されると共に前記摺接パターン179に摺接する摺動接点117を有する摺動子板110と前記クリック係合部165に弾接するクリック弾接部79を有するクリック板70とを取り付けてなる回転側部材とを具備し、前記摺動子板110とクリック板70とを重ね合わせた重合板200を前記回転側部材に取り付けて構成されているということができる。このように摺動子板110とクリック板70とを重ね合わせて設置したので、摺動子板110などからなる検出手段と、クリック板70などからなるクリック機構とを重合板200の一方の面側の同一のスペース(回転つまみ10と取付台150の間の隙間スペース)に設置でき、これによって回転式電子部品1−1の厚みの薄型化が図れる。
【0042】
即ちこの回転式電子部品1−1においては、摺動子板110を、中央に開口111を有すると共にこの開口111の周囲を囲むように摺動冊子115を配置し、この摺動冊子115中に摺動接点117を設けて構成し、さらにこの摺動接点117を摺動子板110のクリック板70を重ね合わせる面の反対面側に向かって突出させ、一方クリック板70のクリック弾接部79を、このクリック板70を摺動子板110と重ね合わせた際に、摺動子板110の開口111を貫通して摺動接点117が突出している側に向けて突出するように構成している。このように構成したので、摺動子板110の摺動接点117とクリック板70のクリック弾接部79が同一方向を向き、これによって検出手段とクリック機構を前述のように重合板200の一方の面側の同一のスペースに設置できる。従って、上記特許文献1の多機能型の電子部品のように回転つまみの上下のスペースにそれぞれ検出手段とクリック機構とを設置する必要がなく、回転式電子部品1−1の厚みの薄型化が図れる。またクリック板70のクリック弾接部79が摺動子板110の開口111を貫通する構成なので、摺動子板110の摺動接点117の内側の空きスペースにクリック弾接部79及びこれが弾接するクリック係合部165を配置でき、これによって回転式電子部品1−1の外径の小型化が図れる。
【0043】
またこの回転式電子部品1−1は、静止側部材に設けた軸支孔53に回転側部材に設けた軸部17を挿入することによって回転側部材を回動自在に軸支すると共に、軸部17の外径よりも外径の大きい部分を有する重合板200を、軸部17の軸支孔53を貫通されて突出する部分に取り付け、これによって軸部17の軸支孔53からの抜けを防止している。このように摺動子板110とクリック板70を重ねてなる重合板200に、静止側部材の軸支孔53から回転側部材の軸部17が抜けるのを防止する機能を持たせたので、別途専用の部品を用いて前記抜けを防止させる必要がなく、部品点数の削減が図れてコストダウンが図れる。また上述のように別途抜け防止用の部品を介在させなくてよいので、この回転式電子部品1−1の薄型化も図れる。
【0044】
またこの回転式電子部品1−1は、回転側部材が前記軸部17を有する回転つまみ10を具備して構成され、一方前記静止側部材が前記軸支孔53を設けたケース50と、このケース50の下部に設置され前記摺接パターン179を形成した第1回路基板部171とを具備して構成され、前記回転つまみ10の軸部17を前記ケース50の軸支孔53に挿入して貫通されて突出する部分に前記重合板200を取り付け、さらに前記第1回路基板部171の摺接パターン179を設けた内側位置にクリック係合部165を配置している。このように構成することによって、ケース50の軸支孔53に回転つまみ10の軸部17を回動自在に挿入して軸支し、且つケース50の下側に第1回路基板部171を設置してなる構造の回転式電子部品1−1に本発明を効果的に適用することができる。
【0045】
またこの回転式電子部品1−1は、クリック板70を、リング形状に形成されて摺動子板110と重なる取付部71と、取付部71の中央の開口73内に設置されるクリック弾接部79と、取付部71とクリック弾接部79間を連結する連結部77とを具備して構成している。このようにクリック板70の取付部71を摺動子板110と重ね合わせるので、重合板200の強度が増す。従ってこの重ね合わせた部分を回転つまみ10に取り付ければ強固な取り付けが可能となる。同時にクリック弾接部79の部分は摺動子板110と重ね合わせなくても良いので、その弾性力(弾発力)が摺動子板110との重ね合わせによって阻害されることはなく、効果的な弾性力を維持できる。
【0046】
ところで1枚の金属板に摺動子の機能とクリック板の機能を合わせ持たせることも可能である。しかしながらこのように構成すると、以下のような問題がある。即ちクリック弾接部の弾発力(即ちクリック感)と摺動子板の摺動接点の接触圧とを別々に独立して調整することが困難になり、両者の調整の自由度が小さくなってしまう。例えば板厚を厚くするとクリック感及び回転トルクは重く(強く)なるが、摺接パターンが削れてしまい、その摺動寿命が短くなる。一方板厚を薄くすると摺動寿命は延びるが、クリック感及び回転トルクは軽くなってしまう。これに対して本願発明のようにクリック板70と摺動子板110とを2枚別部品にした場合は、クリック弾接部79の弾発力(即ちクリック感)及び回転トルクの調整と摺動子板110の摺動接点117の接触圧の調整を別々に独立して行えるので、両者の調整の自由度が大きくなる。例えば摺動子板110は電気的機能部であるためそのバネ圧の管理を厳しくする必要があるが、クリック板70は機械的なクリック感及び回転トルクが得られれば良いのでそのバネ圧の管理はそれほど厳しくする必要がない。つまり摺動子板110とクリック板70のそれぞれの材質及び厚みを両者の目的に応じて自由に変更することができ、摺動接点117の接触圧の厳しい管理(その最大最小幅が狭い)と、クリック板70のクリック弾発力、回転トルクの比較的厳しくない管理(その最大最小幅が広い)とを、容易に行うことができる。またクリック板70を摺動子板110の材質(例えばリン青銅)よりも材料費の安い材料(例えばステンレス)で作成でき、コストの削減もできる。なお重合板としたこれら作用効果は、以下の各例においても同様に生じる。
【0047】
〔第2実施形態〕
図6は本発明の第2実施形態に係る回転式電子部品1−2の概略側断面図(
図7のB−B概略断面図)、
図7は回転式電子部品1−2の斜視図、
図8は回転式電子部品1−2の上側の部品の分解斜視図、
図9は回転式電子部品1−2の下側の部品の分解斜視図である。
【0048】
これらの図に示すように回転式電子部品1−2は、押釦つまみ310と、表示部材330と、回転体(以下「回転つまみ」という)380と、クリック板410と、摺動子板420と、第1回路基板部431と、取付台450と、第2回路基板部435と、支持部材(以下「保持板」という)500とを具備して構成されている。以下各構成部品について説明する。なお第1回路基板部431と第2回路基板部435は1枚の回路基板(以下「フレキシブル回路基板」という)430によって構成されている。
【0049】
押釦つまみ310は合成樹脂の成形品であり、略円板状の本体部311と、本体部311の下面中央から突出する柱状の押圧部313とを具備し、押圧部313の先端近傍の外周面からガイド突起317を突出して構成されている。
【0050】
表示部材330は合成樹脂の成形品であり、下記する取付台450上に固定される軸部351(
図6参照)と、軸部351の上部において半径方向外方に張り出す略円板状の表示部331とを有して構成されている。
【0051】
図6に示すように、表示部331の下面には、2つのリング状の突起が下記する回転つまみ380の回転中心軸を中心に同心円状に設けられており、内側のリング状の突起が表示部側軸支部333を構成している。表示部331の上面中央には円形に凹んで前記押釦つまみ310の本体部311を収納するつまみ収納部335が設けられている。表示部331の表面(上面)には、指標337が設けられている。この例では各指標337は下記する4つの押圧スイッチ447の上部の位置にそれぞれ設けられており、回転つまみ380を揺動した際の各種操作の内容を示している。
【0052】
軸部351は表示部331の下面中央から下方向に向かって略柱状に突出しており、その下端面からは複数(3つ)の取付部353が突出している。軸部351の中央にはこれを上下に貫通する開口355が設けられており、その形状は前記押釦つまみ310の押圧部313及びガイド突起317をぴったり挿入する形状、つまり円形部分の外周から矩形状の部分を突出する鍵穴形状に形成されている。
【0053】
回転つまみ380は合成樹脂の成形品であり、略円板状に成形され、その上面に円形凹状の表示部収納部381を設け、その中央に円形の貫通孔からなる開口部383を設け、その下面を取付面385として構成している。表示部収納部381の内径寸法は前記表示部材330の表示部331の外径寸法よりも若干大きく形成されている。表示部収納部381の深さ寸法は、前記表示部331の厚み寸法よりも大きく形成されている。表示部収納部381の底面の開口部383を囲む位置には一部が切り欠かれたリング状の凸部からなる回転体側軸支部387が形成されている。回転体側軸支部387の内径寸法は、前記表示部材330の表示部側軸支部333の外径寸法と略同一であり、回転体側軸支部387の内側に表示部側軸支部333を回動自在に挿入して回転つまみ380を回転自在に軸支するように形成している。開口部383の内径寸法は、その内部に前記表示部材330の軸部351及び底面側部分336を挿入できる寸法となっている。回転つまみ380の表示部収納部381の外側を囲むリング状の部分は、つまみ操作部389となっている。回転つまみ380の取付面385には複数(
図6では1つのみ示すが、実際は3つ)の小突起からなる取付部391が形成されている。各取付部391は下記するクリック板410の各被取付部417に対向する位置に設けられている。また取付面385の周囲を囲む位置にはリング状に突出する当接部393が設けられている。また表示部材収納部381の底面には、上下に貫通する小孔からなる位置決め孔395が形成されている。位置決め孔395は回転つまみ380にクリック板410等を自動組み立てによって取り付ける際に組立治具に設けたピンに挿入してその位置決めを行うためのものである。
【0054】
クリック板410は、弾性金属板(例えばステンレス板)をリング状に形成した取付部411と、取付部411の内側の開口412内にリング状に配置された一対の半円弧状の弾接アーム413とを一体に形成して構成されている。弾接アーム413の中央の円形の開口部415の内径は、前記表示部材330の軸部351を挿入できる寸法に形成されている。取付部411には前記回転つまみ380の各取付部391を挿入する小孔からなる被取付部417が複数(3つ)設けられている。各弾接アーム413は、それらの根元部分が一対の連結部419によって取付部411の内周に連結され、この根元部分において弾接アーム413は下方向に傾くように折り曲げられている。両弾接アーム413のそれぞれ中央位置には下方向に突出するように湾曲するクリック弾接部414が設けられている。
【0055】
摺動子板420は前述の摺動子板110と同一の部材なので、その詳細な説明は省略する。なお摺動子板110の開口111,取付固定部113,摺動冊子115,摺動接点117は、それぞれ摺動子板420の開口421,取付固定部423,摺動冊子425,摺動接点427に相当する。
【0056】
取付台450は合成樹脂を略円板状に成形して構成されており、その外周にはこれを囲む取付台保持部453が取り付けられている。取付台450の中央には押釦つまみ310の押圧部313及びガイド突起317を挿通する押圧部挿通孔455が設けられている。押圧部挿通孔455の形状は、円形部分の外周から矩形状部分を突出する形状、言い換えれば鍵穴形状に形成されており、矩形状部分が突出する方向を前記表示部材330の開口355の矩形状部分が突出する方向と180°逆向きにしている。また押圧部挿通孔455の円形部分の周囲上面には、前記表示部材330の開口355の矩形状部分に挿入される塞ぎ部457が形成されている。また取付台450上面の押圧部挿通孔455の周囲には、リング状の軸部当接面459が設けられ、さらに軸部当接面459の周囲を囲む位置にはリング形状の凹凸からなるクリック係合部461が設けられている。軸部当接面459中には、前記表示部材330に設けた各取付部353を挿入する貫通孔からなる被取付部463が形成されている。取付台450の上面の外周近傍部分には、複数(5つ)の小突起からなる基板係止部465が設けられている。また取付台450の下面の下記する各押圧スイッチ447に対向する位置(4か所)にはそれぞれ下方向に向かって突出する柱状の押圧部467(
図6参照)が形成されている。
【0057】
取付台保持部453は、取付台450の外周を囲む位置に設置されており、略平板リング状でその全体が上下方向に可撓性を有する厚みに形成されている。取付台保持部453はその1か所が切り欠かれており、切り欠かれた部分が基板挿通部469となっている。取付台保持部453と取付台450間は、等間隔に配置した複数(4つ)の平板薄板状の連結部471によって連結されており、これら各部分は一体の成形品で構成されている。連結部471も上下方向に可撓性を有している。取付台保持部453の下面には複数(4つ)の固定部473が等間隔に下方向に向かって突設されている。各固定部473は各連結部471の中間に位置するように設けられている。
【0058】
第1回路基板部431と第2回路基板部435を構成する1枚のフレキシブル回路基板430は、可撓性を有する合成樹脂フイルム上に所望の回路パターンを設けて構成されており、両者は帯状の連結部449によって連結されている。
【0059】
第1回路基板部431は略円形の外形を有し、中央に取付台450のクリック係合部461を挿通する円形の開口部433を設け、またその上面の開口部433の周囲に所望の摺接パターン437を設けて構成されている。摺接パターン437は、図では詳細な記載を省略しているが、この例ではスイッチパターンである。また第1回路基板部431の外周近傍部分の前記取付台450の各基板係止部465に対向する複数(5か所)の位置には貫通孔又は凹部からなる挿通部439が設けられている。
【0060】
第2回路基板部435はその上面に中央スイッチ445を設置し、中央スイッチ445の周囲の同心円周上の等間隔(90°間隔)の4か所の位置に押圧スイッチ447を設置して構成されている。各スイッチ445,447の構造は、前記中央スイッチ183及び押圧スイッチ185の構造と同じである。また前記取付台450の各固定部473に対向する位置にはそれぞれ貫通孔からなる被取付部448が形成されている。なお摺接パターン437と中央,押圧スイッチ445,447とはフレキシブル回路基板430の表裏異なる面に形成されており、連結部449の部分を折り返すことでそれぞれが上向きとなるようにしている。
【0061】
支持部材500は硬質板(例えば金属板や硬質合成樹脂板)によって構成されており、前記取付台450の各固定部473に対向する位置に貫通孔からなる被取付部501を形成している。
【0062】
次に回転式電子部品1−2の組み立て方法を説明する。まず予め回転つまみ380の取付面385にクリック板410と摺動子板420とを重ねて載置する。このとき回転つまみ380の各取付部391をクリック板410の各被取付部417と摺動子板420の各取付固定部423に挿入し、各取付部391の先端を熱かしめすることで、クリック板410と摺動子板420を回転つまみ380に取り付け、これによって重ね合わせたクリック板410と摺動子板420によって構成される重合板400を、回転つまみ380の下面に一体に固定する。
【0063】
図10は重合板400のみを単独で示した裏面図である。同図に示すように重合板400は、摺動子板420の摺動接点427を、この摺動子板420のクリック板410を重ね合わせる面の反対面側(
図10の紙面手前側)に向かって突出させ、一方クリック板410のクリック弾接部414を、このクリック板410を摺動子板420と重ね合わせた際に、摺動子板420の内部の開口421を貫通して前記摺動接点427が突出している側(
図10の紙面手前側)に向けて突出させる構成となっている。
【0064】
一方
図9に示すように、第1回路基板部431を取付台450上に載置し、その際取付台450の各基板係止部465を第1回路基板部431の各挿通部439に挿入し、その先端を熱かしめすることで取付台450上に第1回路基板部431を取り付ける。このときフレキシブル回路基板430の連結部449を取付台450に設けた基板挿通部469に通すことで、取付台450と取付台保持部453間の隙間に挿入しておく。
【0065】
次に表示部材330のつまみ収納部335内に押釦つまみ310を挿入し、その押圧部313を表示部材330の開口355に挿入する。このとき押釦つまみ310のガイド突起317を開口355の矩形状の部分に挿入し、軸部351の下面側に突出したガイド突起317を180°回転しておく。
図8には、押釦つまみ310を180°回転した後の状態を示しているので、ガイド突起317と前記開口355の矩形状の部分の方向が180°異なっている。
【0066】
次に上記押釦つまみ310を装着した表示部材330を、上記重合板400を取り付けた回転つまみ380の表示部収納部381内に挿入し、その際表示部材330の軸部351を回転つまみ380の開口部383及びクリック板410の開口部415及び摺動子板420の開口421に挿通する。
【0067】
次に上記各部品を搭載した回転つまみ380を、上記取付台450に取り付けた第1回路基板部431上に載置し、その際表示部材330の軸部351を取付台450のクリック係合部461の内側に挿入し、その下面を軸部当接面459上に載置する。このとき軸部351下面の各取付部353を取付台450の各被取付部463に挿入し、その先端を取付台450の下面において熱かしめする。
【0068】
取付台450上に表示部材330を載置した際、取付台450の塞ぎ部457が表示部材330の開口355の矩形状の部分に挿入されてこれを塞ぎ、開口355は円形部分のみとなり、押釦つまみ310の押圧部313が確実にガイドされる。
【0069】
そしてこの取付台450を、支持部材500上に載置した第2回路基板部435上に載置し、その際取付台450の各固定部473を第2回路基板部435の被取付部448と支持部材500の被取付部501に挿入し、その先端を支持部材500の下面で熱かしめする。これによって回転式電子部品1−2が完成する。
【0070】
以上のように構成された回転式電子部品1−2において、回転つまみ380を回転すると、回転つまみ380に取り付けた摺動子板420が回転つまみ380と一体に回転し、その摺動接点427が摺接パターン437上を摺動することで摺接パターン437からの検出出力が変化する。同時に回転つまみ380と一体にクリック板410が回転してそのクリック弾接部414が取付台450のクリック係合部461の凹凸を乗り越えてゆき、クリック感覚が生じる。ところでクリック弾接部414がクリック係合部461の凸の部分に乗り上げる際、回転つまみ380の開口部383にクリック板410の弾接アーム413が面しているので、乗り上げて上昇したクリック弾接部414及び弾接アーム413は回転つまみ380の開口部383内に入り込む。つまり別途クリック弾接部414と弾接アーム413が上下動するスペースを回転つまみ380と取付台450の間に設ける必要がなく、回転式電子部品1−2の薄型化が図れる。
【0071】
次に押釦つまみ310の本体部311を押圧すれば、押釦つまみ310が下降してその押圧部313が中央スイッチ445の反転板を押圧して反転し、中央スイッチ445がオンする。押釦つまみ310への押圧を解除すれば反転板の弾性復帰力によって押釦つまみ310は元の位置に戻り、中央スイッチ445はオフする。
【0072】
また回転つまみ380のつまみ操作部389の各指標337の何れかに対応する上面部分(その指標337の半径方向外側の上面部分)を下方向に向けて押圧すれば、回転つまみ380や表示部材330や押釦つまみ310等、取付台450上に設置されている各構成部品全体が取付台450と一体に押圧された方向に傾いて揺動し、下降した側の押圧部467が対向する押圧スイッチ447の反転板を押圧して反転し、押圧スイッチ447がオンする。取付台450は、連結部471及び取付台保持部453が撓むことで傾く。回転つまみ380への押圧を解除すれば、撓んだ連結部471及び取付台保持部453の元の形状への弾発力と、反転している反転板の弾性復帰力とによって、回転つまみ380及び取付台450等の揺動していた全構成部品が一体に元の位置に自動復帰し、押圧スイッチ447はオフする。
【0073】
ここで回転つまみ380及びこれと一体に回転する重合板400を回転側部材といい、回転つまみ380の回転方向に対して静止しているそれ以外の各構成部品、即ち押釦つまみ310,表示部材330,第1回路基板部431,取付台450,第2回路基板部435,支持部材500を静止側部材ということとすると、上記回転式電子部品1−2は、摺接パターン437を形成すると共にクリック係合部461を設けてなる静止側部材と、静止側部材に対して回転自在に設置されると共に前記摺接パターン437に摺接する摺動接点427を有する摺動子板420と前記クリック係合部461に弾接するクリック弾接部414を有するクリック板410とを取り付けてなる回転側部材とを具備し、前記摺動子板420とクリック板410とを重ね合わせた重合板400を前記回転側部材に取り付けて構成されているということができる。このように摺動子板420とクリック板410とを重ね合わせて設置したので、摺動子板420及び摺接パターン437からなる検出手段と、クリック板410及びクリック係合部461からなるクリック機構とを重合板400の一方の面側の同一のスペース(回転つまみ380と取付台450の間の隙間スペース)に設置でき、これによって回転式電子部品1−2の厚みの薄型化が図れる。
【0074】
さらに詳しく言えば、この回転式電子部品1−2においては、摺動子板420を、中央に開口421を有すると共にこの開口421の周囲を囲むように摺動冊子425を配置し、この摺動冊子425中に摺動接点427を設けて構成し、さらにこの摺動接点427を摺動子板420のクリック板410を重ね合わせる面の反対面側に向かって突出させ、一方クリック板410のクリック弾接部414を、このクリック板410を摺動子板420と重ね合わせた際に、摺動子板420の開口421を貫通して摺動接点427が突出している側に向けて突出するように構成している。このように構成したので、摺動子板420の摺動接点427とクリック板410のクリック弾接部414が同一方向を向き、これによって検出手段とクリック機構を前述のように重合板400の一方の面側の同一のスペースに形成できる。従って、上記引用文献1の多機能型の電子部品のように回転つまみの上下のスペースにそれぞれ検出手段とクリック機構とを設置する必要がなく、回転式電子部品1−2の厚みの薄型化が図れる。またクリック板410のクリック弾接部414が摺動子板420の開口421を貫通する構成なので、摺動子板420の摺動接点427の内側の空きスペースにクリック弾接部414及びこれが弾接するクリック係合部461を配置でき、これによって回転式電子部品1−2の外径の小型化が図れる。
【0075】
さらに詳しく言えば、この回転式電子部品1−2は、回転側部材を中央に開口部383を有する回転つまみ380を具備して構成し、一方前記静止側部材を前記回転つまみ380の下部に設置され摺接パターン437を形成した第1回路基板部431と、前記第1回路基板部431の前記摺接パターン437を設けた中央位置に立設する軸部351とこの軸部351から半径方向外方であって前記回転つまみ380の上面側に張り出す表示部331とを有する表示部材330とを具備して構成し、前記回転つまみ380の前記第1回路基板部431に対向する側の面に重合板400を取り付け、前記第1回路基板部431の摺接パターン437を設けた内側の前記軸部451の周囲の位置にクリック係合部461を配置している。このように構成することによって、回転つまみ380の中央に表示部材330を配置し、回転つまみ380の下側に第1回路基板部431を設置してなる構造の回転式電子部品1−2に本発明を効果的に適用することができる。
【0076】
図11〜
図15は、本発明の他の実施形態に係る重合板600−1〜600−5を示す側断面図である。各図の断面部分は、
図1の断面部分と同一部分である。まず
図11に示す重合板600−1は、摺動子板610−1とクリック板620−1とを重ね合わせ、その際摺動子板610−1の摺動接点611−1を摺動子板610−1のクリック板620−1を重ね合わせる面の反対面側(下向き)に向けて突出させ、一方クリック板620−1のクリック弾接部621−1をクリック板620−1の摺動子板610−1を重ね合わせる面の反対面側(上向き)に向けて突出させて構成している。つまり摺動接点611−1とクリック弾接部621−1は逆方向に向けて突出している。このように構成した場合、静止側部材に設ける摺接パターンは重合板600−1の下側に配置され、静止側部材に設けるクリック係合部は重合板600−1の上側に配置される。従ってそのような配置に合う構造の回転式電子部品にこの重合板600−1を適用することができる。
【0077】
重合板600−1をこのように構成すれば、重合板600−1の一方の面側のスペースに摺動子板610−1等からなる検出手段を配置し、重合板600−1の他方の面側のスペースにクリック板620−1等からなるクリック機構を配置することになるので、重合板200,400の場合に比べれば回転式電子部品の厚みは厚くなるが、検出手段とクリック機構を重合板600−1を挟んだ上下に接するスペースに設置することができるので、従来に比べれば回転式電子部品の小型化・厚みの薄型化が図れる。例えば特許文献1の多機能型の電子部品の場合は、摺動子(110)と摺接パターン(179)からなる検出手段を回転つまみ(100)の下側に設置し、一方表示部(11)に取り付けたクリック板(40)と回転つまみ(100)に設けたクリック係合部(107)からなるクリック機構を回転つまみ(100)の上側に設置しているが、表示部(11)の下面に弾接部(49)を挿入するための弾接部挿入部(17)を設ける必要が生じてその分電子部品の厚みが厚くなる。これに対して重合板600−1を用いた場合、クリック弾接部621−1を摺動子板610−1側に移動させるので、移動の際は検出手段を設置するスペース内にクリック弾接部621−1を挿入させればよく、その分回転式電子部品の厚みの薄型化が図れる。またこの重合板600−1を回転式電子部品1−1のように静止側部材からの抜け防止部材に兼用することができ、これによっても回転式電子部品の構造の簡素化や薄型化が図れる。以上の作用・効果は以下の重合板600−2,4,5においても同様に生じる。
【0078】
図12に示す重合板600−2は、摺動子板610−2とクリック板620−2とを
図11の場合と上下逆向きに重ね合わせたものであり、その際摺動子板610−2の摺動接点611−2を摺動子板610−2のクリック板620−2を重ね合わせる面の反対面側(上向き)に向けて突出させ、一方クリック板620−2のクリック弾接部621−2をクリック板620−2の摺動子板610−2を重ね合わせる面の反対面側(下向き)に向けて突出させて構成している。このように構成した場合、静止側部材に設ける摺接パターンは重合板600−2の上側に配置され、静止側部材に設けるクリック係合部は重合板600−2の下側に配置される。従ってそのような配置に合う構造の回転式電子部品にこの重合板600−2を適用することができる。
【0079】
図13に示す重合板600−3も、摺動子板610−3とクリック板620−3とを重ね合わせることで構成されている。摺動子板610−3はリング状の基部617−3の中央に形成される開口613−3中に摺動冊子615−3を配置し、この摺動冊子615−3中に摺動接点611−3を設けて構成されている。基部617−3と摺動冊子615−3の間は図示しない連結部によって連結されている。一方クリック板620−3は、リング形状に形成された取付部623−3の中央の円形の開口625−3内にリング形状の弾接アーム部627−3を図示しない一対の連結部によって連結して構成されている。弾接アーム部627−3には一対のクリック弾接部621−3が180°対向する位置に設けられている。そして摺動子板610−3とクリック板620−3とを重ね合わせた際、摺動子板610−3の摺動接点611−3を摺動子板610−3のクリック板620−3を重ね合わせる面の反対面側(下向き)に向けて突出させ、一方クリック板620−3のクリック弾接部621−3を摺動子板610−3の開口613−3を貫通してクリック板620−3の摺動子板610−3を重ね合わせる面側(下向き)に向けて突出させている。つまり摺動接点611−3とクリック弾接部621−3は同一方向(下向き)に向けて突出している。このように構成した場合、静止側部材に設ける摺接パターンと静止側部材に設けるクリック係合部は、何れも重合板600−3の下側に配置される。従ってそのような配置に合う構造の回転式電子部品にこの重合板600−3を適用することができる。この重合板600−3の場合、重合板200,400の場合と同様の回転式電子部品の厚みの薄型化が図れる。
【0080】
図14に示す重合板600−4は、前記重合板600−3で用いた摺動子板610−3及びクリック板620−3と同一の摺動子板610−4及びクリック板620−4を用いており、相違する点はその重ね合わの向きだけである。即ちこの重合板600−4の場合、摺動子板610−4の摺動接点611−4を摺動子板610−4のクリック板620−4を重ね合わせる面の反対面側(下向き)に向けて突出させ、一方クリック板620−4のクリック弾接部621−4をクリック板620−4の摺動子板610−4を重ね合わせる面の反対面側(上向き)に向けて突出させている。このように構成した場合、静止側部材に設ける摺接パターンは重合板600−4の下側に配置され、静止側部材に設けるクリック係合部は重合板600−4の上側に配置される。従ってそのような配置に合う構造の回転式電子部品にこの重合板600−4を適用することができる。
【0081】
図15に示す重合板600−5は、摺動子板610−5とクリック板620−5とを
図14の場合と上下逆向きに重ね合わせたものであり、その際摺動子板610−5の摺動接点611−5を摺動子板610−5のクリック板620−5を重ね合わせる面の反対面側(上向き)に向けて突出させ、一方クリック板620−5のクリック弾接部621−5をクリック板620−5の摺動子板610−5を重ね合わせる面の反対面側(下向き)に向けて突出させている。このように構成した場合、静止側部材に設ける摺接パターンは重合板600−5の上側に配置され、静止側部材に設けるクリック係合部は重合板600−5の下側に配置される。従ってそのような配置に合う構造の回転式電子部品にこの重合板600−5を適用することができる。
【0082】
さらに別の重合板として図示はしないが、
図5に示す重合板200や
図10に示す重合板400の上下を逆転させた構成の重合板もある。この重合板の場合、クリック板の上に摺動子板を積層し、その際摺動子板の摺動接点を上向きに突出させ、一方クリック板のクリック弾接部を摺動子板中央の開口を貫通して前記摺動接点が突出している側(上側)に向けて突出させる構成である。重合板をこのように構成した場合、静止側部材に設ける摺接パターンは重合板の上側に配置され、静止側部材に設けるクリック係合部も重合板の上側に配置される。従ってそのような配置に合う構造の回転式電子部品にこの重合板を適用することができる。
【0083】
さらに別の重合板として図示はしないが、
図13に示す重合板600−3の上下を逆転させた構成の重合板もある。この重合板の場合、クリック板の上に摺動子板を積層し、その際摺動子板の摺動接点を上向きに突出させ、一方クリック板のクリック弾接部も上向きに突出させる構成である。重合板をこのように構成した場合、静止側部材に設ける摺接パターンと静止側部材に設けるクリック係合部は、何れも重合板の上側に配置される。従ってそのような配置に合う構造の回転式電子部品にこの重合板を適用することができる。
【0084】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、クリック板の形状・構造は、種々の変更が可能であり、要は、静止側部材に設けたクリック係合部に弾接するクリック弾接部を有するクリック板であれば、どのような形状・構造であっても良い。また摺動子板の形状・構造も種々の変更が可能であり、要は、静止側部材に設けた摺接パターンに摺接する摺動接点を有する摺動子板であれば、どのような形状・構造であっても良い。また重合板は摺動子板とクリック板とを重ね合わせて構成されるが、両者の間に薄板状の他の部材を介在させても良い。また上記各回転式電子部品1−1,1−2では回転式電子部品の他に、押圧式電子部品と揺動式電子部品の構成要素(構成部品)を加えることで多機能型の電子部品としているが、押圧式電子部品や揺動式電子部品の構成要素は省略しても良い。
【0085】
また上記回転式電子部品1−1では、重合板200を構成するクリック板70の外周全体をケース50の軸支孔53の内径よりも大きく形成したが、クリック板70の外周の一部のみを軸支孔53の内径よりも大きくすることで重合板200の抜けを防止しても良い。また摺動子板110の外径(その一部でも良い)をクリック板70の外径よりも大きくし、この摺動子板110によって重合板200の抜けを防止しても良い。
【0086】
また上記クリック板70(他の実施形態のクリック板も同様)では、両クリック弾接部79が何れも取付部71に対して、一対の連結部77によって両持ち状に取り付けられているが、何れか一方の連結部77を省略すること等によって片持ち状に取り付けても良い。また上記クリック板70では一対のクリック弾接部79が設けられているが、クリック弾接部79は1つ又は3つ以上設置しても良い。また上記摺動子板110(他の実施形態の摺動子板も同様)では、摺動冊子115及び摺動接点117を3組設けたが、1組又は3組以外の複数組設けても良い。