(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5766029
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20150730BHJP
【FI】
H01R13/52 301A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-113929(P2011-113929)
(22)【出願日】2011年5月20日
(65)【公開番号】特開2012-243636(P2012-243636A)
(43)【公開日】2012年12月10日
【審査請求日】2014年4月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 元
【審査官】
前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−069347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子挿入孔を有するハウジングと、
前記端子挿入孔に挿入された端子と、
該端子の全周を囲うように装着されて前記端子挿入孔と前記端子との隙間を塞ぐOリングと、
前記端子に相手側端子を締結固定する締結ナット及び締結ネジと、
前記ハウジングに設けられた締結部の係合凹部に嵌め込まれた前記締結ナットのみによって前記Oリング側へ押圧されて前記Oリングを前記端子挿入孔と前記端子との隙間へ向かって押し付けるように前記端子に沿って移動自在なOリングホルダと、
を備えたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングには、前記端子挿入孔と連通するOリング装着凹部が形成され、前記Oリングは、前記Oリング装着凹部へ嵌め込まれていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記Oリングホルダは、前記端子が挿通可能なリング部を有し、該リング部が前記端子の全周にわたって前記Oリングを押圧することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングの内部への水、油、等といった液体の浸入を防止する構造を備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハウジングの内部への水、油、等といった液体の浸入を防止する液体浸入防止構造を備えたコネクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このコネクタは、
図5に示すように、ハウジング1、端子2及びOリング3を備えている。ハウジング1には、端子挿入孔4が形成されており、この端子挿入孔4に端子2が挿入されている。この端子2には、Oリング3が装着されており、このOリング3は、ハウジング1に形成されたOリング収容段部5に収容されている。そして、このコネクタでは、Oリング3によってハウジング1の内部への液体の浸入が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−92779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記構造のコネクタでは、Oリング3の脱落を防止する構造が設けられておらず、Oリング3は、ハウジング1のOリング収容段部5に嵌め込まれただけで保持されている。このため、振動や衝撃が加わった際に、Oリング3がOリング収容段部5から外れて良好な防水効果が得られなくなるおそれがある。
【0006】
また、上記のコネクタには、端子2に対して接続相手側の配線を締結して確実に接続する構造もなかった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好な液体浸入防止効果を維持することができ、しかも、配線を確実に接続することが可能なコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1) 端子挿入孔を有するハウジングと、
前記端子挿入孔に挿入された端子と、
前記端子の全周を囲うように装着されて前記端子挿入孔と前記端子との隙間を塞ぐOリングと、
前記端子に相手側端子を締結固定する締結ナット及び締結ネジと、
前記ハウジングに設けられた締結部の係合凹部に嵌め込まれた前記締結ナットのみによって前記Oリング側へ押圧されて前記Oリングを前記端子挿入孔と前記端子との隙間へ向かって押し付ける
ように前記端子に沿って移動自在なOリングホルダと、
を備えたこと。
(2) 上記(1)の構成のコネクタにおいて、
前記ハウジングには、前記端子挿入孔と連通するOリング装着凹部が形成され、前記Oリングは、前記Oリング装着凹部へ嵌め込まれていること。
(3) 上記(1)または(2)の構成のコネクタにおいて、
前記Oリングホルダは、前記端子が挿通可能なリング部を有し、該リング部が前記端子の全周にわたって前記Oリングを押圧すること。
【0009】
上記(1)の構成のコネクタでは、端子と相手側端子とを締結
ナット及び締結ネジによって締結することにより、接続相手側の配線との確実な接続状態を得ることができ、接続信頼性を高めることができる。また、端子の全周を囲うように装着されて端子挿入孔と端子との隙間を塞ぐOリングによって、端子挿入孔と端子との隙間をシールして、ハウジングの内部への水、油、等といった液体の浸入を防止することができる。しかも、端子に相手側端子を締結する締結
ナットのみによってOリング側へ押圧されてOリングを端子挿入孔と端子との隙間へ向かって押し付けるOリングホルダを備えているので、端子と相手側端子との締結とOリングの脱落防止とを一括で行うことができ、接続信頼性及び良好な防水効果の両方を確実に維持することができる。
上記(2)の構成のコネクタでは、OリングがOリングホルダによって押圧されてOリング装着凹部へ嵌め込まれた状態に維持されるので、Oリングによる端子挿入孔と端子との隙間における良好なシール状態を確保することができる。
上記(3)の構成のコネクタでは、Oリングホルダのリング部によって、端子の全周にわたってOリングがバランス良く押圧されるので、Oリングによる端子挿入孔と端子との隙間におけるさらに良好なシール状態を確保することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、良好な液体浸入防止効果を維持することができ、しかも、配線を確実に接続することが可能なコネクタを提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】コネクタの接続部の構造を示す一部を断面視した斜視図である。
【
図4】コネクタの接続部におけるハウジングの一部を断面視した斜視図である。
【
図5】従来のコネクタの構造を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、実施形態に係るコネクタの斜視図、
図2は、コネクタの接続部の構造を示す一部を断面視した斜視図、
図3は、コネクタの接続部における断面図、
図4は、コネクタの接続部におけるハウジングの一部を断面視した斜視図である。
【0015】
図1に示すように、コネクタ10は、例えば、各種機器のパネルに装着される。
【0016】
このコネクタ10は、絶縁性を有する合成樹脂等から成形されたハウジング11を有している。このハウジング11のパネルへの装着側には、接続部12が設けられており、この接続部12には、複数の端子台13が設けられている。このハウジング11は、シェル17によってその一部が覆われている。
【0017】
ハウジング11には、接続部12に、周囲へ突出するフランジ部14が設けられている。このフランジ部14には、外方へ張り出した複数の固定片15が形成されており、これらの固定片15には、挿通孔16が形成されている。
【0018】
また、フランジ部14には、端子台13の周囲を囲むように、シール溝18が形成されており、このシール溝18には、環状のパッキン19が嵌め込まれている。
【0019】
このコネクタ10を各種機器のパネルに装着するには、ハウジング11の接続部12の端子台13を、パネルに形成された装着孔(図示略)へ挿し込み、フランジ部14を装着孔の縁部におけるパネルの表面に当接させる。この状態で、固定片15の挿通孔16へネジ(図示略)を挿入し、パネルに形成されたネジ孔(図示略)へ螺合させる。
【0020】
これにより、コネクタ10がパネルに固定されて取り付けられる。また、このようにパネルへコネクタ10を固定すると、パッキン19がパネルに密着し、よって、パネルとコネクタ10との間がシールされる。
【0021】
次に、ハウジング11の接続部12に設けられた端子台13について説明する。
【0022】
図2及び
図3に示すように、端子台13は、端子21と、Oリング22と、Oリングホルダ23と、締結ナット(締結具)24とを備えている。
【0023】
図4に示すように、接続部12におけるハウジング11には、端子挿入孔31が形成されている。また、ハウジング11における端子挿入孔31よりも手間側には、端子挿入孔31よりも大きな断面積の穴を形成することにより、端子挿入孔31と連通するOリング装着凹部32が設けられている。
【0024】
また、ハウジング11におけるOリング装着凹部32よりも手前側には、切欠き部33を形成することにより、上方側が開放された締結部34が設けられている。締結部34には、係合凹部35が形成されており、この係合凹部35の底部には、逃げ溝36が形成されている。
【0025】
そして、ハウジング11の接続部12には、その端子挿入孔31に、銅などの導電性金属材料から形成された端子21が挿入されている。この端子21には、その端部に、締結孔41が形成されており、この締結孔41が、締結部34に配置されている。
【0026】
端子挿入孔31に挿入された端子21には、その先端側から、環状のOリング22が装着されている。このOリング22は、ゴム等の弾性材料から形成されており、端子21の全周を囲うように端子21に装着されている。このOリング22は、Oリング装着凹部32に嵌め込まれており、端子21が挿入された端子挿入孔31と端子21との隙間が、Oリング22によって封止されてシールされている。
【0027】
また、締結部34の底面34aと端子21との間には、板状のOリングホルダ23が嵌め込まれている。このOリングホルダ23は、合成樹脂または金属材料から形成されたもので、一端側であるOリング22側の端部に、端子21が挿通可能なリング部23aを有している。そして、このリング部23aに端子21を挿通させた状態で、Oリングホルダ23をOリング22側へ押し込むことにより、Oリング装着凹部32に嵌め込まれたOリング22にリング部23aが突き当てられている。
【0028】
また、締結部34の係合凹部35には、ハウジング11の先端側から四角ナットからなる締結ナット24が嵌め込まれており、この締結ナット24によってOリングホルダ23がリング装着凹部32側へ押し込まれている。
【0029】
図3に示すように、上記構造の締結部34の端子21には、端子21の接続相手の端子である機器側の相手側端子51が接続される。この相手側端子51には、挿通孔52が形成されている。この相手側端子51を端子21に接続するには、相手側端子51を、その挿通孔52が端子21の締結孔41と連通するように、端子21に重ねる。
【0030】
この状態で、相手側端子51及び端子21の挿通孔52及び締結孔41へ締結ネジ(締結具)53を挿し込み、締結ナット24へねじ込んで締結する。なお、締結ナット24の下部から突出する締結ネジ53の先端部は、ハウジング11と干渉することなく、係合凹部35の底部に形成された逃げ溝36内に入り込む。
【0031】
このようにすると、締結ナット24と締結ネジ53との締結力によって端子21に相手側端子51が強固に接続され、確実な接続信頼性が得られる。
【0032】
また、このように、締結ナット24へ締結ネジ53を締結させると、締結ナット24が確実に固定される。すると、この締結ナット24によってリング装着凹部32側へ押し込まれているOリングホルダ23が保持される。これにより、Oリング22が、Oリングホルダ23のリング部23aによって全周にわたってOリング装着凹部32内へ押し込まれた状態に維持され、脱落が防止される。したがって、端子21が挿入された端子挿入孔31が、Oリング22によって確実に封止されてシールされた状態に維持される。
【0033】
このように、上記実施形態に係るコネクタによれば、端子21と相手側端子51とを締結ナット24と締結ネジ53とによって締結することにより、接続相手側の配線との確実な接続状態を得ることができ、接続信頼性を高めることができる。
【0034】
また、端子21の全周を囲うように装着されて端子挿入孔31と端子21との隙間を塞ぐOリング22によって、端子挿入孔31と端子21との隙間をシールして、機器側からハウジング11の内部への水、油、等といった液体の浸入を防止することができる。しかも、端子21に相手側端子51を締結する締結ナット24及び締結ネジ53によってOリング22側へ押圧されてOリング22を端子挿入孔31と端子21との隙間へ向かって押し付けるOリングホルダ23を備えているので、端子21と相手側端子51との締結とOリング22の脱落防止とを一括で行うことができ、接続信頼性及び良好な防水効果の両方を確実に維持することができる。
【0035】
また、Oリング22がOリングホルダ23によって押圧されてOリング装着凹部32へ嵌め込まれた状態に維持されるので、Oリング22による端子挿入孔31と端子21との隙間における良好なシール状態を確保することができる。
【0036】
しかも、Oリングホルダ23のリング部23aによって、端子21の全周にわたってOリング22がバランス良く押圧されるので、Oリング22による端子挿入孔31と端子21との隙間におけるさらに良好なシール状態を確保することができる。
【0037】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0038】
10 コネクタ
11 ハウジング
21 端子
22 Oリング
23 Oリングホルダ
23a リング部
24 締結ナット(締結具)
31 端子挿入孔
32 Oリング装着凹部
51 相手側端子
53 締結ネジ(締結具)