特許第5766306号(P5766306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5766306磁気フローサイトメトリー装置、磁気フローサイトメトリー装置の製造方法および細胞の磁気検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5766306
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】磁気フローサイトメトリー装置、磁気フローサイトメトリー装置の製造方法および細胞の磁気検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/72 20060101AFI20150730BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20150730BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20150730BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   G01N27/72
   G01N37/00 101
   G01N33/48 M
   G01N33/483 E
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-555823(P2013-555823)
(86)(22)【出願日】2012年2月22日
(65)【公表番号】特表2014-509398(P2014-509398A)
(43)【公表日】2014年4月17日
(86)【国際出願番号】EP2012052977
(87)【国際公開番号】WO2012116913
(87)【国際公開日】20120907
【審査請求日】2014年1月14日
(31)【優先権主張番号】102011004806.5
(32)【優先日】2011年2月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】ハイデン、オリファー
(72)【発明者】
【氏名】ヘロウ、ミヒァエル ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ライスベック、マティアス
(72)【発明者】
【氏名】テッデ、 サンドロ フランチェスコ
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−169701(JP,A)
【文献】 特表2009−501930(JP,A)
【文献】 特開2007−256024(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0124779(US,A1)
【文献】 特表2004−503775(JP,A)
【文献】 特表2005−513485(JP,A)
【文献】 特開2006−006166(JP,A)
【文献】 特開2006−118890(JP,A)
【文献】 Welfeng Shen et al.,In situ detection of single micron-sized magnetic beads using magnetic tunnel junction sensors,Applied Physics Letters,2005年,86,253901
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00−15/14、27/72−27/90、
33/48−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(12)上の磁気抵抗センサ(20)と、磁気的にマーキングされた細胞サンプル(90)を濃縮するための濃縮区間(10)とを備え、濃縮区間(10)が第1部分と第2部分を有し、第2部分が基板(12)上に配置され、第1部分が基板(12)の隣の担体(13)上に配置され、濃縮区間(10)が基板(12)の縁部を越えて延び、濃縮区間(10)は磁気的にマーキングされた細胞サンプル(90)を基板(12)上の磁気抵抗センサ(20)上に案内する磁気ガイド片(15)を有し、磁気的にマーキングされた細胞サンプル(90)を磁界により基板(12)上で濃縮させる永久磁石が設けられている磁気フローサイトメトリー装置。
【請求項2】
磁気ガイド片(15)が強磁性体である請求項記載の装置。
【請求項3】
濃縮区間(10)に沿ってマイクロ流体流路(50)が形成され、マイクロ流体流路(50)を通って流れる磁気的にマーキングされた細胞サンプル(90)が磁気ガイド片(15)で方向付けられる請求項または記載の装置。
【請求項4】
永久磁石マイクロ流体流路(50)を通って流れる磁気的にマーキングされた細胞サンプル(90)が流路床面にある永久磁石の磁界により濃縮されるように配置されている請求項記載の装置。
【請求項5】
マイクロ流体流路(50)の第1部分及び第2部分並びに磁気抵抗センサ(20)は、マイクロ流体流路(50)を通って流れる磁気的にマーキングされた細胞サンプル(90)が先ずマイクロ流体流路(50)の第1部分を通って濃縮区間(10)の第1部分上に、ついでマイクロ流体流路(50)の第2部分を通って濃縮区間(10)の第2部分上およびセンサ(20)上に案内されるように配置され
マイクロ流体流路(50)の第2部分および濃縮区間(10)の第2部分は、マイクロ流体流路(50)の第2部分および濃縮区間(10)の第2部分によりそれぞれマイクロ流体流路(50)の第1部分および濃縮区間(10)の第1部分に対するずれが流動する磁気的にマーキングされた細胞サンプル(90)の濃縮及び方向付けに関して修正されるように形成されている
請求項またはに記載の装置。
【請求項6】
濃縮区間(10)の長さが少なくとも15000μmである請求項1からの1つに記載の装置。
【請求項7】
基板(12)の最大拡がりが18000μm以下である請求項1からの1つに記載の装置。
【請求項8】
磁気抵抗センサ(20)が巨大磁気抵抗センサ、トンネル磁気抵抗センサまたは異方性磁気抵抗センサである請求項1からの1つに記載の装置。
【請求項9】
半導体基板(12)上への磁気抵抗センサ(20)の形成工程
半導体基板(12)上への濃縮区間(10)の第2部分の取り付け工程
担体(13)上への半導体基板(12)のパッケージングおよび担体(13)上への磁気抵抗センサ(20)の電気接続部(17、18,28)の引き出し工程
濃縮区間(10)の第1部分の形成工程
を有する請求項1からの1つに記載の磁気フローサイトメトリー装置の製造方法。
【請求項10】
半導体基板(12)のパッケージング工程、パッケージング材料(16)からマイクロ流体流路(50)が形成されるように行われる請求項記載の方法。
【請求項11】
射出成形工程においてマイクロ流体流路(50)が形成される請求項10記載の方法。
【請求項12】
濃縮区間(10)の第1部分の磁気ガイド片(15)が直接流路床面上に堆積される請求項から11の1つに記載の方法。
【請求項13】
濃縮区間の第2部分の磁気ガイド片(15)が直接半導体基板(12)上に堆積される請求項から11の1つに記載の方法。
【請求項14】
磁気的にマーキングされた細胞サンプル(90)が請求項1からの1つに記載の磁気フローサイトメトリー装置に注入される細胞の磁気検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロー中の磁気的な細胞検出に関する。具体的には、本発明は、磁気フローサイトメトリー装置、磁気フローサイトメトリー装置の製造方法および細胞の磁気検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞測定および細胞検出の分野では散光または蛍光測定などの光学的測定方法と並んで検出すべき細胞の種類を磁気ラベルによりマーキングする磁気的な検出方法も知られている。
【0003】
特に磁気に基づく測定のために磁気的にマーキングされた細胞を磁気泳動法によりたとえば血液サンプルなどの複合細胞懸濁液から分別する方法が知られている。このためこの複合懸濁液は検出すべき細胞がそれから分離できるようにまず処理される必要がある。磁気マーキングは特に、細胞固有のマーカーが複合細胞サンプル中に導入されることにより行われる。磁気泳動法は従来は磁気的にマーキングされた細胞または一般に磁気粒子の選別に使用されている。
【0004】
しかし細胞検出のための磁気抵抗センサの分野では、複合懸濁液中の磁気的にマーキングされた細胞をフロー中で動的に計数することも可能である。このためには細胞を細分化して順次センサ上を流動させ、磁気的にマーキングされた細胞を磁気抵抗センサに十分近いところでこのセンサ上を案内させることが重要である。
【0005】
磁気フローサイトメーターでは流路中のマーキングされた細胞はそれゆえ表面近くで磁気センサ上を移動させられる。磁気的にマーキングされた細胞がセンサに近いことが重要である。なぜなら磁気マーカーの漂遊磁界により磁気的にマーキングされた細胞は最終的にセンサにより検出されるが、この漂遊磁界は距離の三乗で減衰するからである。
【0006】
マーキングされた細胞がセンサの直近を通過することを保証するために、原理的には細胞サンプルが流れる流路の直径をできるだけ小さくすることが考えられる。すなわち極端な場合流路の直径は、個々の細胞がちょうど通過できる大きさにされる。この場合には勿論、不純物もしくは障害となる粒子が存在すると極めて迅速に流路の閉塞を生じるという問題がある。
【0007】
これに対し流路をより大きく設計すると、マーキングされた幾つかの細胞がセンサをその有効範囲外で通過し、従って検出されないという確率が増大する。これには磁気的にマーキングされた細胞がセンサ面で濃縮されることにより対処できる。マイクロ流体流路中の1cmまでの長さのできるだけ長い濃縮区間がポジティヴに作用し、濃縮区間の最後では複合懸濁液から磁気的にマーキングされた細胞のほぼ100%が流路床面で濃縮され、磁気センサによる検出が可能となるということが示されている。しかし磁気抵抗デバイスが形成される半導体基板上にこのように長い濃縮区間を配置することは基板の高いアスペクト比を生じ、これは半導体基板の全面特にシリコンダイに高い経費がかかるとともに、製造プロセスにおける処理に問題を生じる。フローの速度が早ければ早いほどおよびサンプル中の細胞濃度が高ければ高いほど、濃縮区間は、センサ通過時点における磁気的にマーキングされた細胞の十分な濃縮を保証するように選定される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、サンプルスループット量を増大させ半導体チップの小型化を可能にする磁気細胞検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、基板上の磁気抵抗センサと、磁気的にマーキングされた細胞サンプルを濃縮するための濃縮区間とを備え、濃縮区間が第1部分と第2部分を有し、第2部分が基板上に配置され、第1部分が基板の隣の担体上に配置され、濃縮区間が基板の縁部を越えて延び、濃縮区間は磁気的にマーキングされた細胞サンプルを基板上の磁気抵抗センサ上に案内する磁気ガイド片を有し、磁気的にマーキングされた細胞サンプルを磁界により基板上で濃縮させる永久磁石が設けられている磁気フローサイトメトリー装置により解決される(請求項1)。
この磁気フローサイトメトリー装置の製造方法は、
半導体基板上に磁気抵抗センサを形成する工程、
半導体基板上に濃縮区間の第2部分を取り付ける工程、
担体上に半導体基板をパッケージング(実装)し、担体上に磁気抵抗センサの電気接続部を引き出す工程、
濃縮区間の第1部分を形成する工程
を有する(請求項)。
磁気の細胞検出方法によれば、磁気的にマーキングされた細胞サンプルが本発明による磁気フローサイトメトリー装置に注入される(請求項14)
本発明の有利な実施態様は次の通りである。
*磁気フローサイトメトリー装置に関して
・磁気ガイド片が強磁性体である(請求項)。
濃縮区間に沿ってフロー室、特にマイクロ流体流路が形成され、マイクロ流体流路を通って流れる磁気的にマーキングされた細胞サンプルが磁気ガイド片で方向付けられる(請求項)。
・磁石を備え、この磁石がマイクロ流体流路を通って流れる磁気的にマーキングされた細胞サンプルが流路床面にある磁石の磁界により濃縮されるように配置される(請求項)。
・マイクロ流体流路の第1部分及び第2部分並びに磁気抵抗センサは、マイクロ流体流路を通って流れる磁気的にマーキングされた細胞サンプルが先ずマイクロ流体流路の第1部分を通って濃縮区間の第1部分上に、ついでマイクロ流体流路の第2部分を通って濃縮区間の第2部分上およびセンサ上に案内されるように配置され、マイクロ流体流路の第2部分および濃縮区間の第2部分は、マイクロ流体流路の第2部分および濃縮区間の第2部分によりそれぞれマイクロ流体流路の第1部分および濃縮区間の第1部分に対するずれが流動する磁気的にマーキングされた細胞サンプルの濃縮及び方向付けに関して修正されるように形成されている(請求項)。
濃縮区間の長さが少なくとも15000μmである(請求項)。
・基板の最大拡がりが18000μm以下である(請求項)。
・磁気抵抗センサが巨大磁気抵抗(GMR)センサ、トンネル磁気抵抗(TMR)センサまたは異方性磁気抵抗(AMRセンサである(請求項)。
*磁気フローサイトメトリー装置の製造方法に関して
・半導体基板のパッケージング(実装)工程は、パッケージング材料からマイクロ流体流路が形成されるように行われる(請求項10)。
マイクロ流体流路は射出成形工程において形成される(請求項11)。
濃縮区間の第1部分の磁気ガイド片が特に熱蒸着またはスパッタリングにより直接流路床面上に堆積される(請求項12)。
濃縮区間の第2部分の磁気ガイド片が特に熱蒸着またはスパッタリングにより直接半導体基板上に堆積される(請求項13)。
【0010】
本発明による磁気フローサイトメトリー装置は基板上の磁気抵抗センサと濃縮区間を有する。この場合濃縮区間は第1部分と第2部分に分けられる。濃縮区間の第2部分は基板上に配置され、濃縮区間の第1部分は基板の隣りの担体上に配置されるので、濃縮区間は基板の縁部を超えて延びている。
【0011】
できるだけ長い濃縮区間を形成するとともに、磁気抵抗センサが形成されている半導体基板を不必要に拡大しないようにするために、濃縮区間は基板の隣りに形成される。特に濃縮区間と基板は共通の担体、たとえばプリント回路板を分かち合っている。このプリント回路板上に半導体基板はセンサとともに載置されて電気的に接続され、かつ電気接続部を絶縁し腐食並びに機械的損傷から保護するようにパッケージ中に装填される。この担体基板もしくは担体基板上に載置されるパッケージング材料上に濃縮区間は任意の長さに施される。たとえば濃縮区間を蛇行状に形成し、曲がり部分を介して接続される多数の軌道内をセンサを備えた半導体チップに達するまで延びるようにすることができる。特に細胞サンプルを流すことのできるフロー室の形成にはパッケージング材料が使用される。パッケージングは特に射出成形法により行われ、これによりフロー室が作られる。
【0012】
濃縮区間は特に強磁性の磁気ガイド片を有すると有利である。ガイド片用の強磁性材料としてはたとえばニッケルが挙げられる。強磁性合金もこのために使用可能である。
【0013】
本発明の有利な実施態様ではフロー室、特にマイクロ流体流路が濃縮区間に沿って形成され、このマイクロ流体流路を通って流れる磁気的にマーキングされた細胞サンプルは濃縮区間の磁気ガイド片に方向付けられる。すなわち磁気ガイド片および磁気的にマーキングされた細胞は互いに作用し、細胞は細胞懸濁液内で方向付けされ、その磁気ラベルの漂遊磁界はセンサ上でできるだけ高い信号を生じる。
【0014】
本発明の別の有利な実施態様では装置は磁石を有し、この磁石は、マイクロ流体流路を通って流れる磁気的にマーキングされた細胞サンプルが流路床面にあるこの磁石の磁界により濃縮されるように配置されている。すなわち磁気ガイド片による案内に付加して、磁石特に永久磁石の磁界が細胞懸濁液中で磁気的にマーキングされた細胞に磁力を及ぼしてこれを細胞懸濁液から流路床面へ向かう方向に動かす。
【0015】
このような磁気的にマーキングされた細胞の濃縮と方向付けは、磁気的にマーキングされた細胞の濃度が流路床面の近くで従って磁気抵抗センサの近くで増大するという利点を有する。このセンサは合目的にはほぼすべてのマーキングされた細胞を検出できるように流路床面に設置される。細胞が濃縮および方向付けの前に全サンプル量においても等しく分布されていれば、濃縮および方向付けによりセンサでの個別細胞検出が保証されることになる。
【0016】
本発明の有利な実施態様ではマイクロ流体流路の第1部分および第2部分並びに磁気抵抗センサは、マイクロ流体流路を通って流れる磁気的にマーキングされた細胞サンプルが先ずマイクロ流体流路の第1部分を通って濃縮区間の第1部分上に、次にマイクロ流体流路の第2部分を通って濃縮区間の第2部分およびセンサ上を案内されるように配置されている。この場合マイクロ流体流路および濃縮区間のそれぞれ第2部分は、マイクロ流体流路および濃縮区間のそれぞれ第1部分とのずれを修正できるように形成されている。このようなずれは、磁気抵抗センサが配置されている基板と担体とを結合して、この担体の上に同様に該基板が配置されるときに生じうる。マイクロ流体流路および濃縮区間のそれぞれ第2部分は、少なくとも流動的に磁気的にマーキングされた細胞サンプルの濃縮および方向付けに関してこのずれが修正されるように作用する。すなわちセンサに到着する磁気的にマーキングされた細胞はあたかも担体から基板への移行時に濃縮区間内でずれがないかのように流路床面で濃縮および方向付けされる。
【0017】
特に濃縮区間は15000μmの最小長さを有する。この場合基板は特に最高18000μmの最大拡がりを有する。特にシリコンのような半導体基板は極めて高価なので、所要面積が小さいと極めて有利である。半導体基板の小さい所要面積は、基板を担体上に取り付ける際にずれが補償されるだけの長さの濃縮区間だけが基板上に存在することにより保証される。濃縮および方向付けの大部分はしかし担体上における濃縮区間の第1部分において行われる。
【0018】
濃縮区間の最小長さは、濃縮区間の終端において高濃度化された細胞サンプルも流路床面で濃縮され濃縮区間の磁気ガイドに沿って方向付けされるので、磁気抵抗センサの通過時点で個別細胞の検知が保証されるという利点を有することが判明している。
【0019】
半導体チップと担体とを結合する際に、わずかなオフセット、すなわち典型的には100μm以下のずれが生じうる。すなわち濃縮区間の第1部分は事実上磁気抵抗センサが配置されているところとは異なる点に方向付けされる。これを補償するために半導体チップ上のセンサへのマイクロ流体流路の最後の部分上になお強磁性片を有する濃縮区間が形成され、これにより濃縮および方向付けられた細胞がセンサに向かって集中させられる。細胞は特に層状の流れプロフィルに従う。流路床面でできるだけセンサ表面近くでの細胞の濃縮のため、磁気細胞はたとえば1つの永久磁石によりデバイスの下側で、または2つの磁石によりフローサイトメーターの上側または下側で作られる磁気勾配磁界にさらされる。
【0020】
装置の磁気抵抗センサは特にGMR(Giant Magneto Resistance=巨大磁気抵抗)センサである。たとえば装置の磁気抵抗センサはTMR(Tunnel Magneto Resistance=トンネル磁気抵抗)センサまたは装置の磁気抵抗センサはAMR(異方性磁気抵抗)センサである。
【0021】
上述の装置の製造は、半導体基板上に磁気抵抗センサを作る工程、半導体基板上に濃縮区間の第2の部分を取り付ける工程、担体上に半導体基板をパッケージングする工程、並びに担体上に磁気抵抗センサの電気接続部を引き出す工程、最後に濃縮区間の第1部分を形成する工程を含む。この方法は、半導体基板のわずかな表面が大きな濃縮区間を形成できるように利用されるという利点を有する。半導体チップのパッケージングはマイクロシステム技術では日常的な方法であり、絶縁、腐食保護並びに接続部の損傷保護および担体たとえばプリント回路板上の半導体チップの取り付けに役立つ。パッケージングおよび担体はたとえばさらに、担体上に濃縮区間の長い部分を形成してその上で大部分の濃縮および方向付けをセンサを備えた半導体チップ上に細胞懸濁液を導く前に行うようにするのに用いられる。
【0022】
利点は特に、少ないシリコン消費量において1μリットルあたり約1細胞の低濃度サンプルに対して大きなスループット量を有する大きな濃縮区間が実現されることにある。シリコン‐ダイ‐フットプリント(Silicon-die-footprint)はそれ故できるだけ小さくされる。ダイ(die)とはたとえばハウジングのない半導体チップ、集積電子デバイス、半導体またはセンサ基板のことである。半導体チップ上に集積センサ回路を製造後にこの回路は「パッケージ」中にカプセル化され、損傷または腐食から保護される。そのため半導体チップはまず担体基板上に載置され、集積回路の電気接続部が担体基板上に引き出される。これはたとえばワイヤボンドまたはスルーホールにより行われる。パッケージング材料としてはたとえばセラミックまたはエポキシのようなポリマーが使用される。パッケージングはそれゆえ環境の影響にさらされるデバイスを作るために必要な工程である。本発明の実施形態のこの例は、一方では濃縮区間を配置するための付加的な面として、他方ではパッケージング材料がフロー室の形成自体に用いられ、これが特に個々の工程において行われるという二重の意味でこのパッケージングを利用できるという利点を有する。
【0023】
本発明の有利な実施態様では、半導体基板のパッケージング工程においてパッケージング材料からマイクロ流体流路が形成される。パッケージング工程は特に射出成形により行われる。そのため射出成形技術によりマイクロ流体流路が形成される。
【0024】
本発明の有利な実施態様では、濃縮区間、特に濃縮区間の第1部分の磁気ガイド片は直接流路床面に堆積される。このためたとえば熱蒸着またはスパッタリングなどの方法が用いられる。パッケージング材料上にマイクロ流体流路を形成することによりそれゆえガイド片による磁気ガイドが流路内に作られる。
【0025】
半導体基板上に配置される濃縮区間の部分に対しては磁気ガイド片が同様に直接半導体基板上に堆積される。このため同様に熱蒸着またはスパッタプロセスが用いられる。
【0026】
磁気細胞検出方法のため磁気的にマーキングされた細胞サンプルは半導体基板の隣りの付加的な担体基板上に濃縮区間を備えた上述の装置に注入される。
【0027】
外部磁界、たとえば永久磁石の磁界上の濃縮、および強磁性ガイド軌道による磁気泳動的方向付けは測定工程中に現場的(in situ)に行われると有利である。それゆえマーキングされた細胞のほぼ100%の所望の再発見率を保証するためには磁気的にマーキングされた細胞に対する十分に長い方向付け区間が必要である。強磁性磁路を有する濃縮および方向付け区間の正確に必要な長さへの影響ファクタは次のとおりである。
1.細胞サンプルがマイクロ流体流路をポンピングされる速度
2.印加された濃縮磁界の磁界強度
3.懸濁液中における超常磁性にマーキングされた細胞の濃度、並びに
4.使用されたマーカーの磁気特性
5.細胞懸濁液の組成およびレオロジー特性、すなわちたとえばその流動特性、および
6.マーキングされた細胞の種類およびその細胞表面上のアイソトープ数、従って検出すべき漂遊磁界の強度を決定する細胞当りの常磁性マーカの数、
【0028】
細胞懸濁液は特に圧力勾配によりマイクロ流体流路中をポンピングされる。圧力勾配はたとえば噴射器または噴射システムの手動操作により作ることができる。これにより細胞サンプルの層状の流れが再循環なしに生じることが保証される。細胞および細胞を囲む複合媒体が近似的に同じ密度を有するので、蛇行状の流路の曲がり範囲においても僅かな遠心力が生じるだけで、マーキングされた細胞はその軌道上にとどまることができる。
【0029】
磁気フローサイトメトリーにおいてはそれゆえ磁気的にマーキングされた細胞が磁気抵抗センサのごく近くを通り過ぎることが重要である。細胞サンプルはフロー室、たとえばマイクロ流体流路を流れるので、マーキングされた細胞はこのフロー室で磁気抵抗センサが設置されているその内面近くを通らなければならない。特に流路壁は磁気センサに直接接触して設置される。代替的な実施態様では磁気抵抗センサが流路壁に埋め込まれる。磁気マーキングとしては超常磁性ラベルが用いられると有利である。磁気抵抗センサとしてはGMR、TMRまたはAMRセンサが問題となる。磁気的にマーキングされた細胞がセンサに近づくことは、磁気マーキングの漂遊磁界が近傍界領域では距離の三乗で減衰するので重要である。磁気的にマーキングされた細胞の方向付けは検出可能性に正に作用する。その場合磁気的にマーキングされた細胞は、磁気マーキングの磁界がセンサ内でできるだけはっきりした信号を惹起するようにフロー方向に方向付けられると有利である。磁気フローサイトメトリーでは誤正信号と正信号との間のできるだけ正確な差別化が必要である。そのため正信号にはノイズ信号と区別するために信号に対するできるだけ高い閾値が設定できるようにしなければならない。
【0030】
磁気的にマーキングされた細胞がマイクロ流体流路の直径を狭めて個々の細胞のみがこの流路を通過できるようにして細分化されてセンサ上を案内される方法とは異なり、本方法は、前処理しない複合懸濁液から直接ほぼ100%の個別細胞検出を可能にする利点を有する。従って流動システムの閉塞を生ずるような細胞のいわば機械的細分化の大きな欠点が克服される。またこの種の測定装置では種々の直径を有する磁気的にマーキングされた細胞を正確に個々に求めることはできないであろう。細胞はたとえば約3から30μmの直径を有する。これらの細胞は直径が10ないし1000倍の極めて幅広のマイクロ流体流路中を案内されると有利である。センサまたはセンサアレイはこの場合フロー方向に直角をなして配置され、たとえば細胞の直径に応じて幅が30μmに達する。
【0031】
本発明の実施形態を添付の図面の図1から図8について具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1はマイクロ流体流路と基板の横断面図を示す。
図2図2はその磁気ガイド付きの平面図を示す。
図3図3は再びマイクロ流体流路と基板の横断面図を示す。
図4図4はその磁気ガイド付きの平面図を示す。
図5図5は別のマイクロ流体流路と基板の横断面図を示す。
図6図6は別のマイクロ流体流路と基板の横断面図を示す。
図7図7は蛇行状の濃縮区間を示す。
図8図8濃縮区間の第1の曲がり部分の磁気ガイドを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は測定装置の一実施形態の横断面図、図2はその平面図を示す。図3は本発明の代替的実施例の横断面図、図4はその平面図を示す。
【0034】
測定センサ20の基板として用いられる半導体チップ12は担体板13の上に載置される。担体板13はたとえば電子デバイス用のプリント回路板、特に銅製プリント回路板である。このプリント回路板13は接続部17を有し、これらはたとえば図1、3に示すように担体板13を貫通する給電要素である。すなわち接続部は担体板13の上部と下部とを電気的に接続する。これらのスルーホールまたは接続部17には半導体チップ12上の測定センサ20の接続部がボンディングワイヤすなわち電気接続ワイヤ18により図1に示すように接続されるか、または図3に示すようにいわゆるスルーシリコンバイアホール28を介して担体板13の接続部17と接続されている。
【0035】
半導体チップ12の一部、特に電気接続部18、28を有する部分上にはパッケージング材料16が堆積され、これにより半導体チップ12を担体板13に接続している。接続部17、18、28はパッケージング材料16によって電気的に絶縁されかつ腐食または機械的損傷から保護されている。パッケージング材料16により覆われていない半導体チップ12の部分は磁気抵抗センサ20を有する。パッケージング材料16上を離れて細胞サンプル90がセンサ20を備えた半導体チップ12のこの開放領域上に流れることができる。このため濃縮区間10が基板12の縁部を超えて配置される。磁気的にマーキングされた細胞90および破線の矢印により示されているように、細胞サンプル90の流れがセンサ20上に作られる。このため特に測定装置の上側または下側には永久磁石が配置されている。磁気的にマーキングされた細胞90がその永久磁石の磁界中をパッケージング材料16および半導体チップ12に向かって案内されて、その磁界内でパッケージング材料16および半導体チップ12上で濃縮される。センサ表面での細胞90の濃縮の他に、細胞90は付加的に図1から4にそれぞれ横断面図および平面図で示すように磁気ガイド片15に沿って整列(方向付け)される。横断面図に示すように個々の磁気ガイド片15は濃縮区間10の中央軌道を磁気センサ20の方向に案内される。図2、4の平面図に磁気ガイド片15の魚骨模様の有利な配置形態が示されている。磁気ガイド片15は濃縮区間10の中央線に対し90°以下の角度を示しており、したがって磁気的にマーキングされた細胞90を濃縮区間10の縁部から濃縮区間10の中央路に案内するので、これらの細胞は中央で磁気抵抗センサ20上を案内される。
【0036】
基板12の縁部から延びている濃縮区間10の大部分は任意の大きさに堆積可能なパッケージング材料16上にある。すなわち基本となる担体板13は測定装置の全体の大きさを規定する。この上に大きな濃縮区間10が極めて簡単にコスト的に有利に実現される。磁気的にマーキングされた細胞90がセンサ20を備えた半導体チップ12に達すると、細胞は既にセンサ表面で濃縮され、相応に方向付けされる。半導体チップ12のセンサ20の前の短い区間はしかし同様に短い濃縮区間600を有し、この濃縮区間600はセンサ20に向かうパッケージング材料16上の濃縮区間にずれ601が生じた場合にこのずれ601を補償するのに役立つ。図4に示したこのようなずれ601は担体板13上に半導体チップ12を取り付ける際に生じうる。しかしわずかなずれ(オフセット601は濃縮区間10をさらに長くすることなしに短い濃縮区間600により補償することができる。従って半導体チップ12上の短い濃縮区間600は、その全体の大きさを著しく高めることなしに磁気的にマーキングされた細胞90をセンサ20上の中央に案内するのに十分である。
【0037】
図5には測定装置上のマイクロ流体流路50の可能な実施形態が示されている。同様に図5は半導体チップ12上にボンディングワイヤ18により接触させられている担体板13を示す。ここでもパッケージング材料16が電気接続部17、18を絶縁し保護しているのが示されている。さらに磁気ガイド片15に沿って磁気的にマーキングされた細胞90が案内されているのが横断面図で示されている。パッケージング材料16および半導体チップ12の表面はいわばマイクロ流体流路50の床面を示しており、そこで磁気的にマーキングされた細胞90が濃縮される。パッケージング材料16は射出成形法によりマイクロ流体流路50が形成されるように設けられ、このマイクロ流体流路50を通って細胞サンプル90が案内される。特にこのマイクロ流体流路50は図5に入出矢印で示されているように入出口11を有している。図5は、流路壁がパッケージング材料16で作られ、測定装置もしくはマイクロ流体流路50がカプセル19により上方から閉鎖されている例を示す。
【0038】
図6は代替的実施例の横断面図を同様に示す。図5とは異なりここではパッケージング材料16は流路壁として形成されるのではなく電気接続部17、18を閉鎖するパッケージング工程後に担体板13およびパッケージング材料16上に射出成形により加工される他の材料49が堆積され、この他の材料49からマイクロ流体流路50が形成される。
【0039】
この横断面図に示すように、マイクロ流体流路50は同様に上方から閉鎖されているが、矢印で示す入出口11を有するだけである。ここでも磁気的にマーキングされた細胞90は流路の床面、すなわち基板12の上で、特に磁気ガイド片15およびこの後の半導体チップ12およびセンサ20上で濃縮される。
【0040】
図7は蛇行状の濃縮区間10の平面図である。濃縮区間10は3つの直線部分区間を有し、これらは2つの曲線部分K1、K2で互いに接続されている。濃縮区間10は一方では磁気的にマーキングされた細胞90の方向付け(整列)にまた流路床面での濃縮用に形成されている。すなわち図7のマイクロ流体流路50は濃縮区間10に沿って形成され、このマイクロ流体流路50を通って案内される細胞サンプル90は流路床面での濃縮用に永久磁石の磁力および磁気ガイド片15による磁気交番作用を受ける。図7に示した磁気ガイド片15は濃縮区間10に沿って特に半導体チップの表面である基板12上に直接延びている。第1の直線部分区間に沿って磁気ガイド片15は鋭角に濃縮区間10の中心線に延び、従って磁気的にマーキングされた細胞90を流路中央に導く。第1の曲線部K1に沿って磁気ガイド片15は濃縮区間10の縁部から、すなわちマイクロ流体流路50の縁部から濃縮区間10の中央に向かって延びる。この例では常に流路中心に沿って配置された中央磁気ガイド片が示されている。さらに図7濃縮区間10の平面図として細胞サンプルのマイクロ流体流路への入口11を示している。
【0041】
図8濃縮区間の第1の曲線部K1を示す濃縮区間10の断面図である。図8には磁気ガイド片15の代替的実施形態が示されている。このガイド片はその代わりに扇状に中心線に向かっており、半径が異なる半円状のラインを形成し、それぞれマイクロ流体流路50の流路壁と一定の距離を置いて軌道を描いている。この例では磁気的にマーキングされた細胞サンプル90はこの軌道に曲線部K1によって導かれる。矢印は濃縮区間10の曲線部K1を通る細胞サンプルの流れ方向を示す。
【符号の説明】
【0042】
10 濃縮区間
11 入出口
12 半導体チップ(基板)
13 担体板
15 磁気ガイド片
16 パッケージング材料
17 接続部
18 電気接続ワイヤ
20 磁気抵抗センサ
50 マイクロ流体流路
90 細胞サンプル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8