【実施例】
【0013】
実施例に係るコア嵌設装置及びその嵌設方法につき、
図1から
図11を参照して説明する。
図2,3に示されるように、本発明のコア嵌設装置10は、主として、内部を上水が流れる流体管1の上部に穿設される穿孔Qに連通し流体管1の外周を水密に被覆したケース2と、回転ネジ4の回転によりケース2内にて上下動、すなわち回転ネジ4の軸方向に取り付けられるとともに操作される操作体5と、後述のように穿孔Qに嵌設され内部を介し操作体5を挿入可能な略筒状体のコア40とを有している。
【0014】
本実施例の流体管1は、断面視略円形状に形成された金属製管から成り、内周面がモルタル層で被覆されている。尚、流体管1の内周面はモルタル層に限らず、例えばエポキシ樹脂等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。また、本実施例では流体管1内の流体は上水であるが、流体管の内部を流れる流体は必ずしも上水に限らず、例えば工業用水であってもよいし、また気体や気液混合状態の流体が流れる流体管であっても構わない。
【0015】
流体管1の外周面に固定に取り付けられるケース2は、いわゆる割T字管であって、流体管1の管軸と略直交する上下方向の内空部を備えた分岐管12及び弁蓋3と、流体管1の外周の下側を被覆するカバー11と、からなる。
【0016】
図1に示されるように、先ず分岐管12とカバー11とを、流体管1を挟む位置で対向させ、流体管1の長手方向に沿って配置された複数のボルト・ナット13により締結する。ここで、後述する穿設により流体管1内からの溢水が生じないよう、穿孔Qの外周に沿ったゴムリング22が、分岐管12の内面と流体管1の外面との間に介設されている。そして、流体管1にカバー11、分岐管12を取り付けた後に、分岐管12内に水圧を加えることで、流体管1の外面と分岐管12の内面との間隙の水密性を適宜確認してもよい。
【0017】
次に、分岐管12の上フランジ12aに、内部に作業弁36を配設した筐体35を水密に接続し、更に、筐体35の上端部に穿孔装置50の図示しない上端部を水密に接続する。
【0018】
穿孔装置50は、図示しない駆動手段に接続され分岐管12内を流体管1に向け軸方向に伸出するとともに軸周りに回転する軸部材51と、軸部材51の先端に固設され流体管1を穿設する穿孔刃52aを備えたカッタ部材52と、から主として構成されており、カッタ部材52を流体管1の外面にアプローチして外壁を穿孔し、流体管1の管壁に穿孔Qを穿設する。
【0019】
穿孔装置50による穿孔Qの穿設後は、
図2,3に示されるように、穿孔装置50を上方に引き上げて筐体35内に配置させた後、作業弁36を操作して分岐管12の止水を行う。そして、穿孔装置50を筐体35の上端部から取り外すとともに、筐体35の上端部に外カバー70を水密に接続する。この外カバー70は、側方に向けて一対の開口71,71を備えており、これら開口71,71は、蓋体72,72及びボルト・ナット73によって水密に閉塞されている。
【0020】
外カバー70の図示しない上端部からは、アーム74が上下動可能に取り付けられている。尚、このアーム74の下端部には、予め穿孔Qにコア40を嵌設するための操作体5及び操作体5の外周面に予め取り外し可能に取り付けておいたコア40が内部に配設された弁蓋3が中間部材75を介して接続されており、アーム74を外カバー70の前記上端部に取り付ける際に弁蓋3が外カバー70内に配置される。尚、アーム74と前記上端部との間は、図示しないゴム体によって水密に保持されている。更に尚、中間部材75は筒状に形成されており、内部に後述する回転操作部4aが挿通配置されている。
【0021】
外カバー70を筐体35の上端部に水密に接続した後は、分岐管12と外カバー70とを開閉弁を有する図示しないホースやバイパス管等の連通部材によって接続する。そして、外カバー70の上端部に設けられた図示しない空気弁を開放するとともに、作業弁36を操作して分岐管12を開放することで、外ケース70内及び分岐管12内を流体管1内を流れていた上水で満たす。
【0022】
外ケース70内及び分岐管12内が上水で満たされた後は、前記空気弁を閉塞し、前記開閉弁を開放して分岐管12と外カバー70とを連通させ、弁蓋3を外カバー70に予め取り付けた押圧手段(図示略)により不断水状態で押圧することで、分岐管12の上フランジ12aに弁蓋3を密封状に組付ける。
【0023】
このとき、分岐管12内と外カバー70内とは、流体管1内を流れる上水で満たされて同一の水圧となるので、弁蓋3を上フランジ12aに組み付ける際に流体管1内を流れる上水から弁蓋3が受ける抗力を小さく抑えることができる。
【0024】
弁蓋3を上フランジ12aに組み付けた後は、
図5に示されるように、再び蓋体72,72を取り外し、開口71,71を介して弁蓋3から中間部材75を取り外すとともに、回転操作部4aにハンドル76を取り付ける。
【0025】
弁蓋3は、分岐管12の内径より小径の外径を有しており、弁蓋3の下部の外周に沿って設けられたOリング19により、分岐管12の内周面に沿って水密に嵌挿されている。また弁蓋3を定置させるよう、固定ボルト16を螺挿することで弁蓋3の位置固定を行う。固定ボルト16は、弁蓋3に対して螺挿されることで、弁蓋3を上下方向に規制している。
【0026】
回転ネジ4は、弁蓋3の頂部に穿設された挿通孔32に回転自在に貫通して、上端部を弁蓋3の外部に突出して取り付けられている(
図11参照)。押え板33は、弁蓋3の上端面にボルト34で固定され、回転ネジ4の抜出しを阻止する(
図11参照)。上記構成により、回転ネジ4はケース2に対し正逆両方向に回転自在であるが上下動はしない。4bは、回転ネジ4の上端部を除いて略全長に亘ってその周面が螺設されたネジ部である。
【0027】
図5に示されるように、ネジこま25は、後述する操作体5の上端部に形成されたガイド溝21に嵌合するとともに、ネジ部4bに螺合しており、回転ネジ4の上端部に形成された回転操作部4aの回転に応じネジ部4bが回転することで、ネジ部4bに沿って螺挿するネジこま25に追随して操作体5が上下動可能となる。
【0028】
図2,3に示されるように、操作体5は、穿孔Qに対して挿入可能な径に形成された弾性材から成るゴム体7を備える。操作体5は、回転ネジ4のネジ部4bを挿入する挿入孔31が形成されている。また
図7に示されるように、ゴム体7の外面にくびれ部7aが周方向に形成されており、このくびれ部7aにコア40を係合させて取り付けることで、コア40は、後述する操作体5の下方動作においては操作体5から外れてしまうことが無い。
【0029】
また
図3に示されるように、操作体5における上下流側の外面に、上下方向に沿った張出部8、8が、ケース2を構成する弁蓋3若しくは分岐管12の内面に設けられた溝部3aに沿って摺接可能に上下方向に延設されている。上記のように構成された張出部8、8が溝部3aに当接することで、回転ネジ4の回転に伴う操作体5の回転を規制できるように成っている。
【0030】
次に、
図4(a)〜(c)に示されるように、本実施例のコア40は、流体管1の管壁を穿孔形成した穿孔Qを防食するために用いられる。詳述するとコア40は、平面視略円形状の周壁を有し内部が貫通形成された筒状体41と、この筒状体41の外周面に配設された防食部材42と、から構成されており、コア40の先端部は、断面視略円形状の流体管1に径方向に穿設された穿孔Qの内周面形状に沿うように、周方向に曲線形状に形成されている。筒状体41は比較的硬質であって縮径方向に変形可能な弾性を有する例えばポリエチレン等の樹脂材から成り、この筒状体41の外周面に、筒状体41と同等種の若しくは異種であって筒状体41よりも軟質であって弾性を有する樹脂材から成る防食部材42が、図示しない接着材により接着されている。尚、防食部材42は、例えば筒状体41の外周面に熱溶着されていてもよい。
【0031】
筒状体41は、より具体的には、自然状態で穿孔Qよりも外径方向に突出形成され、縮径変形することで穿孔Qを通過し流体管1の内部に配置される先端部41bと、先端部41bに連続して延設された胴部41cと、更に胴部41cに連続し穿孔Qよりも大径に膨出した後端部41dとから成る。先端部41bは、流体管1に穿設された穿孔Qの曲面形状に沿うように、流体管1の内周面と略同じ曲率の曲面形状の先端面を有している。また、
図4(a)に示されるように、先端部41bにおける流体管1の管頂を含む近傍に配置される部分が、穿孔Qよりも外径方向に突出した鍔部41aに形成されている。
【0032】
この胴部41cの外周面に亘って接着された防食部材42は、その自然状態においては穿孔Qよりも大径であって、筒状体41よりも軟質であるため更に弾性変形し易く形成されている。
【0033】
上記構成を有するコア嵌設装置10において、コア40の穿孔Qへの取り付けについて説明する。
図1に示したように穿孔装置50により流体管1に穿孔Qを穿設した後に、
図2,3に示すように、外周面にコア40を取り外し可能に取り付けた操作体5が、ハンドル76の水平回動によって生じる非上昇の回転ネジ4の回転により、ケース2内部をコア40とともに下方に動作することで、操作体5の外周面に取り付けられたコア40は、先端部41bの鍔部41aを縮径変形させつつ穿孔Q内に挿入される。
【0034】
図5,6に示されるように、操作体5のゴム体7が穿孔Qに対して挿入されるとともに、コア40は、穿孔Qを通過した鍔部41aが流体管1の内部において弾性復元し流体管1の内周面に係合することで、穿孔Qに嵌設される。コア40は、穿孔Qに嵌設した状態では、流体管1の金属素地が露出した穿孔Qの内周面に亘り防食部材42が当接することで、穿孔Qを防食するように成っている。この状態でコア40の後端部41dは、穿孔Q近傍の流体管1の外周面に当接する。尚、コア40が穿孔Qに嵌設された状態においても、流体管1の内部は操作体5により流路を遮断されることなく開放されており、上水が流通可能となっている。
【0035】
次に、
図7,8に示されるように、ハンドル76の水平回動によって生じる回転ネジ4の回転により、操作体5がケース2内部を上方に動作することで、操作体5の外面に取り付けられたコア40に対し上方に向かう引上げ力が作用するが、コア40の鍔部41aが穿孔Q近傍の流体管1の内周面に係合していることが反力として作用するため(
図7点線囲い部参照)、コア40は、前記引上げ力に抗して穿孔Qに嵌設された状態を維持し、すなわち上方に移動する操作体5のくびれ部7aから取り外されることになる。
【0036】
図9に示されるように、操作体5による穿孔Qへのコア40の嵌設後、操作体5に替えて、流体管1の管路を遮断若しくは開放するための仕切弁としての弁体60をケース2内に配設する。より詳しくは、先ず、
図8,9に示されるように、回転操作部4aからハンドル76を取り外すとともに弁蓋3を中間部材75を介してアーム74に接続させ、外カバー70の開口71,71を蓋体72,72及びボルト・ナット73によって閉塞する。
【0037】
そして、固定ボルト16を弁蓋3から取り外し、アーム74を上方に移動させることによって弁蓋3と操作体5とを上方に引き上げた後に、作業弁36を操作して分岐管12の止水を行うとともに、前記連通部材の開閉弁を閉塞する。
【0038】
次に、筐体35の上端部から外カバー70を取り外す。そして、外カバー70内に配置された弁蓋3の回転ネジ4から操作体5を取り外すとともに、操作体5に替えて回転ネジ4に弁体60を取り付ける。この後、外カバー70を、
図10に示されるように、再び筐体35の上端部に水密に接続し、前記空気弁及び作業弁36を操作して分岐管12を開放し、外カバー70内及び分岐管12内を上水で満たす。更に、前記空気弁を閉塞した後に再び前記連通部材の開閉弁を開放することで外カバー70内の水圧と分岐管12内の水圧とを常時一定に保つ。
【0039】
尚、弁体60は、穿孔Qに対して挿入可能な径に形成された弾性材から成り、操作体5と同一構成のガイド溝61、張出部62、ネジこま63、挿入孔64を有している。このため弁体60は、回転操作部4aの回転に応じて上下動可能となる。
【0040】
このように操作体5に替えて弁体60が取り付けられた弁蓋3を、
図11に示されるように、作業弁36が開放された後に前記外カバーに予め取り付けた押圧手段(図示略)により分岐管12に向けて不断水状態で押圧することで、流体管1内を流れる上水から弁蓋3が受ける抗力を小さく抑えながら弁蓋3を分岐管12の上フランジ12aに密封状に組付け、固定ボルト16を再び弁蓋3に螺挿する。更に、前記連通部材の開閉弁を閉塞するとともに、上フランジ12a上から筐体35及び外カバー70を取り外す。最後に、リング状のフランジ9を弁蓋3に挿入し、ボルト・ナット14でフランジ9と分岐管12とを締結する。
【0041】
以後、弁体60は、回転操作部4aの回転によって下方に移動することで流体管1の内周面に弾性変形しながら水密に当接することで流体管1の管路を遮断するとともに、回転操作部4aの回転によって上方に移動することで流体管1の管路を開放するようになる。尚、弁体60によって流体管1の管路を遮断及び開放させるには、前述したハンドル76を回転操作部4aに取り付け、水平回動させてもよい。
【0042】
以上、本実施例におけるコア嵌設装置10及びコア嵌設方法にあっては、コア40は、穿孔Q近傍の流体管1内面に係合するために、縮径方向に変形可能な弾性を有し自然状態で穿孔Qよりも外径方向に突出形成された鍔部41aを備えており、コア40は、操作体5の外周面に取り付けられた状態で操作体5とともに穿孔Qにアプローチし、鍔部41aが流体管1内面に係合することでコア40が穿孔Qに嵌設され、操作体5が穿孔Qから離間するときに、コア40は穿孔Qに嵌設された状態のまま操作体5から取り外されるので、外周面にコア40を取り付けた状態の操作体を穿孔Qに挿入させ、鍔部41aを弾性により縮径させて穿孔Q内を挿通させるとともに、鍔部41aが穿孔Qを貫通した後に、鍔部41aを流体管1内で自然状態に弾性復元させることで、例えば、コア40を拡径させる等の特別な手段を要さずとも、コア40を穿孔Qに対して容易に嵌設させることができる。また、コア40を穿孔Qに対して嵌設させた後は、操作体5を穿孔Qから離間させる際に、鍔部41aが穿孔Q近傍の流体管1の内面に係止することで、コア40の穿孔Qへの嵌設を保ったまま確実に操作体5だけを穿孔Qから離間させることができる。
【0043】
また、コア40は、穿孔Qの略全内周面に亘り当接する防食部材42を備えているので、コア40の防食部材42を穿孔Qの略全内周面に亘り当接させることで、穿孔Qの防食を確実にできる。
【0044】
また、コア40は、穿孔Qよりも大径の後端部41dを備えているので、コア40の後端部41dを穿孔Q近傍の流体管1外面に当接させることで、コア40の過挿入を防止できる。
【0045】
また、回転ネジ4に、コア40を穿孔Qに嵌設させた後の操作体5に替えて、流体管1の流路を遮断若しくは開放可能な弁体60が交換可能であるので、コア40の穿孔Qへの嵌設と流体管1の流路の遮断若しくは開放とで操作体5と弁体60以外の構成を共有して使用するので、流体管1の流路の遮断若しくは開放を個別の構成を用いずとも安価に行うことができる。
【0046】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0047】
例えば、前記実施例では、弁体60は、ケース2内で回転ネジ4の軸方向に操作される仕切弁であったが、本発明の弁体は、流体管の流路の遮断時にコアの当接部と密封状に当接する構成を有していれば、例えば軸回りに回転操作されることで流路を遮断するいわゆるバタフライ弁等であってもよい。
【0048】
また、前記実施例では、流体管1が金属製の管であって、コア40が流体管1に穿設された穿孔Qを防食する防食部材42を備えた防食用のコアであるが、流体管の材質若しくはコアの用途は必ずしも本実施例に限られず、例えば流体管が塩ビ管等の樹脂製の管であるとともに、コアが前記樹脂製の管に穿設された穿孔の周囲管壁の強度を増進する用途で設けられるコアであっても構わない。
【0049】
また、前記実施例では、コア40を構成する筒状体41及び防食部材42が、ポリエチレン等の樹脂材から成っているが、コアを構成する部材の材質は、例えばゴム材であってもよいし、エラストマー等の他の材料から成るものでも構わない。
【0050】
また、前記実施例では、コア40を穿孔Qに嵌設させた後の弁蓋3を中間部材75から取り外し、弁蓋3内に操作体5に替えて弁体60を取り付け、弁体60を取り付けた弁蓋3を再び中間部材75に取り付けたが、予め弁体60を取り付けた弁蓋を個別に用意し、コア40を穿孔Qに嵌設させた後の弁蓋3に替えて弁体60を取り付けた前記弁蓋を中間部材75に取り付けるようにしてもよい。