(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の蛍光体層は、蛍光体粒子および光散乱粒子が分散された樹脂からなる。具体的には、蛍光体層は、樹脂に、蛍光体粒子および光散乱粒子を分散させた粒子含有樹脂組成物から形成されている。
【0014】
蛍光体粒子を形成する蛍光体は、例えば、青色光を黄色光に変換することのできる黄色蛍光体などが挙げられる。そのような蛍光体としては、例えば、複合金属酸化物や金属硫化物などに、例えば、セリウム(Ce)やユウロピウム(Eu)などの金属原子がドープされた蛍光体が挙げられる。
【0015】
具体的には、蛍光体としては、例えば、Y
3Al
5O
12:Ce(YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット):Ce)、(Y,Gd)
3Al
5O
12:Ce、Tb
3Al
3O
12:Ce、Ca
3Sc
2Si
3O
12:Ce、Lu
2CaMg
2(Si,Ge)
3O
12:Ceなどのガーネット型結晶構造を有するガーネット型蛍光体、例えば、(Sr,Ba)
2SiO
4:Eu、Ca
3SiO
4Cl
2:Eu、Sr
3SiO
5:Eu、Li
2SrSiO
4:Eu、Ca
3Si
2O
7:Euなどのシリケート蛍光体、例えば、CaAl
12O
19:Mn、SrAl
2O
4:Euなどのアルミネート蛍光体、例えば、ZnS:Cu,Al、CaS:Eu、CaGa
2S
4:Eu、SrGa
2S
4:Euなどの硫化物蛍光体、例えば、CaSi
2O
2N
2:Eu、SrSi
2O
2N
2:Eu、BaSi
2O
2N
2:Eu、Ca−α−SiAlONなどの酸窒化物蛍光体、例えば、CaAlSiN
3:Eu、CaSi
5N
8:Euなどの窒化物蛍光体、例えば、K
2SiF
6:Mn、K
2TiF
6:Mnなどのフッ化物系蛍光体などが挙げられる。好ましくは、ガーネット型蛍光体、さらに好ましくは、Y
3Al
5O
12:Ceが挙げられる。
【0016】
蛍光体粒子の形状は、特に限定されず、例えば、略球形状、略平板形状、略針形状などが挙げられる。
【0017】
また、蛍光体粒子の平均粒子径(最大長さの平均)は、例えば、0.1〜30μm、好ましくは、0.2〜20μmである。蛍光体粒子の平均粒子径は、粒度分布測定装置により測定される。
【0018】
蛍光体粒子は、単独使用または併用することができる。
【0019】
蛍光体粒子の含有割合は、粒子含有樹脂組成物に対して、例えば、5〜20質量%、好ましくは、7〜15質量%である。また、蛍光体粒子の樹脂100質量部に対する含有割合は、例えば、5〜30質量部、好ましくは、7〜20質量部である。
【0020】
光散乱粒子としては、例えば、シリカ(酸化ケイ素)粒子、アルミナ(酸化アルミニウム)粒子、チタニア(酸化チタン)粒子などの無機粒子、例えば、アクリル樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子 、シリコーン樹脂粒子などの有機粒子などが挙げられる。
【0021】
好ましくは、光散乱作用の観点から、無機粒子が挙げられる。
【0022】
また、光散乱粒子の屈折率nは、光散乱作用の観点から、例えば、1.10〜2.00、好ましくは、1.30〜1.70である。なお、屈折率は、JIS K 7142の記載に準拠して測定される。
【0023】
また、光散乱粒子の形状としては、例えば、略球形状、略回転楕円形状(例えば、略長球形状、略扁球形状など)、略平板形状、略針(棒)形状などが挙げられる。好ましくは、略球形状が挙げられる。
【0024】
光散乱粒子は、その製造において、上記した形状にそのまま合成される。あるいは、光散乱粒子は、その製造において、一旦、大きい粒子として合成された後、それを破砕することにより得ることもできる。
【0025】
光散乱粒子の平均粒子径(最大長さの平均)は、例えば、1〜20μm、好ましくは、2〜10μmである。光散乱粒子の平均粒子径が上記範囲にない場合には、蛍光体粒子による光変換を阻害する場合がある。光散乱粒子の平均粒子径は、粒度分布測定装置により測定される。
【0026】
光散乱粒子は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0027】
光散乱粒子の含有割合は、粒子含有樹脂組成物に対して、例えば、5〜20質量%、好ましくは、7〜15質量%である。また、光散乱粒子の樹脂100質量部に対する含有割合は、例えば、5〜30質量部、好ましくは、7〜20質量部である。
【0028】
光散乱粒子の含有割合が上記範囲に満たない場合には、各発光ダイオード11(後述)の発光波長のばらつきに起因する色度のばらつきを十分に低減できない場合がある。一方、光散乱粒子の含有割合が上記範囲を超える場合には、蛍光体層の機械強度が低下する場合がある。
【0029】
また、光散乱粒子の蛍光体粒子に対する含有割合(光散乱粒子の質量部/蛍光体粒子の質量部)は、例えば、0.7〜1.3、好ましくは、0.75〜1.0、さらに好ましくは、0.75を超過し、1.0未満である。
【0030】
換言すれば、蛍光体粒子の光散乱粒子に対する含有割合(蛍光体粒子の質量部/光散乱粒子の質量部)は、例えば、0.8〜1.5であり、好ましくは、1.0〜1.3、さらに好ましくは、1.0を超過し、1.3未満である。光散乱粒子の蛍光体粒子に対する含有割合が上記範囲を超える場合には、光散乱粒子が蛍光体粒子による光変換を阻害する場合がある。一方、光散乱粒子の蛍光体粒子に対する含有割合が上記範囲に満たない場合には、各発光ダイオード11の発光波長のばらつきに起因する色度のばらつきを十分に低減できない場合がある。
【0031】
樹脂は、蛍光体粒子および光散乱粒子を分散させるマトリックスであって、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂などの透明樹脂などが挙げられる。
【0032】
好ましくは、耐久性の観点から、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。
【0033】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂など)、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂など)などの芳香族系エポキシ樹脂、例えば、トリエポキシプロピルイソシアヌレート(トリグリシジルイソシアヌレート)、ヒダントインエポキシ樹脂などの含窒素環エポキシ樹脂、例えば、脂肪族系エポキシ樹脂、例えば、ジシクロ環型エポキシ樹脂などの脂環式エポキシ樹脂、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、例えば、トリアジン系エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0034】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、100〜1200g/eqiv.である。エポキシ当量は、JISK7236(2001年)によって測定される。
【0035】
また、エポキシ樹脂の25℃における粘度は、例えば、800〜6000mPa・sである。
【0036】
これらエポキシ樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0037】
なお、エポキシ樹脂は、硬化剤を配合することにより、エポキシ樹脂組成物として調製することができる。
【0038】
硬化剤は、加熱によりエポキシ樹脂を硬化させることができる潜在性硬化剤(エポキシ樹脂硬化剤)であって、例えば、イミダゾール化合物、アミン化合物、酸無水物化合物、アミド化合物、ヒドラジド化合物、イミダゾリン化合物などが挙げられる。
【0039】
イミダゾール化合物としては、例えば、2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0040】
アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのポリアミン、または、これらのアミンアダクトなど、例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどが挙げられる。
【0041】
酸無水物化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、4−メチル−ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ピロメリット酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ジクロロコハク酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、クロレンディック酸無水物などが挙げられる。
【0042】
アミド化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、ポリアミドなどが挙げられる。
【0043】
ヒドラジド化合物としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
【0044】
イミダゾリン化合物としては、例えば、メチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、エチルイミダゾリン、イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、フェニルイミダゾリン、ウンデシルイミダゾリン、ヘプタデシルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリンなどが挙げられる。
【0045】
これら硬化剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0046】
硬化剤の配合割合は、硬化剤とエポキシ樹脂との当量比にもよるが、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、1〜80質量部である。
【0047】
エポキシ樹脂組成物は、上記したエポキシ樹脂および硬化剤を上記した配合割合で配合し、攪拌混合することにより、調製される。
【0048】
シリコーン樹脂は、主として、シロキサン結合(−Si−O−Si−)からなる主鎖と、主鎖のケイ素原子(Si)に、アルキル基(例えば、メチル基など)またはアルコキシル基(例えば、メトキシ基)などの有機基が結合した側鎖とを分子内に有している。
【0049】
具体的には、シリコーン樹脂としては、例えば、脱水縮合型シリコーンレジン、付加反応型シリコーンレジン、過酸化物硬化型シリコーンレジン、湿気硬化型シリコーンレジン、硬化型シリコーンレジンなどが挙げられる。好ましくは、付加反応型シリコーンレジンなどが挙げられる。
【0050】
シリコーン樹脂の25℃における動粘度は、例えば、10〜30mm
2/sである。
【0051】
樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0052】
樹脂の配合割合は、粒子含有樹脂組成物において、上記した蛍光体粒子および光散乱粒子の残部であって、具体的には、例えば、60〜90質量%、好ましくは、70〜86質量%である。
【0053】
粒子含有樹脂組成物は、樹脂に、蛍光体粒子および光散乱粒子を上記した割合で配合して、攪拌混合することにより、調製する。
【0054】
図1は、本発明の蛍光体層の一実施形態を備える蛍光体層転写シートの平面図、
図2は、蛍光体層転写シートを製造するための工程図、
図3は、本発明の発光装置の一実施形態を製造するための工程図を示す。なお、
図1において、便宜的に、紙面上下方向を前後方向、紙面左右方向を左右方向とする。
【0055】
次に、上記した粒子含有樹脂組成物からなる蛍光体層およびそれを備える発光装置について、
図1〜
図3を参照して説明する。
【0056】
図1および
図2(e)において、この蛍光体層転写シート1は、略平板矩形状に形成されており、離型基材2と、離型基材2の上に形成される蛍光体層3と、蛍光体層3の上に形成される接着剤層4とを備えている。
【0057】
離型基材2は、平面視において、蛍光体層転写シート1の外形形状に対応するように形成されており、具体的には、略平板矩形シート形状に形成されている。
【0058】
具体的には、離型基材2を形成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂材料、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレスなどの金属材料などが挙げられる。好ましくは、樹脂材料が挙げられる。
【0059】
また、離型基材2の表面(上面)には、蛍光体層3および接着剤層4からの離型性を高めるため、必要に応じて、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの離型処理がなされている。
【0060】
離型基材2の厚みは、例えば、10〜1000μm、好ましくは、50〜500μmである。
【0061】
蛍光体層3は、離型基材2の上面に形成されており、互いに間隔を隔てて複数整列配置される蛍光体部5を備えている。
【0062】
各蛍光体部5は、蛍光体層転写シート1の厚み方向に直交する方向、すなわち、離型基材2の面方向、具体的には、前後方向および左右方向に互いに間隔を隔てて配置されている。蛍光体部5は、例えば、前後方向に4列、左右方向に3列のパターンで整列配置されている。なお、各蛍光体部5は、後述するハウジング15によって仕切られる各領域に対応するように、配置されている。
【0063】
また、蛍光体部5は、平面視略円形状に形成されている。
【0064】
蛍光体層3は、上記した粒子含有樹脂組成物からなる。
【0065】
蛍光体層3の厚みは、例えば、20〜500μm、好ましくは、50〜300μmである。
【0066】
接着剤層4は、蛍光体層転写シート1の外形形状に対応するように形成され、具体的には、離型基材2の周縁部を露出するように形成されている。つまり、接着剤層4は、蛍光体層3の表面、および、蛍光体層3から露出する離型基材2の表面(周縁部を除く)を被覆するように、略平板シート状に形成されている。具体的には、接着剤層4は、各蛍光体部5の表面(上面および周側面)と、各蛍光体部5間における離型基材2の表面(上面)とに接触している。
【0067】
接着剤層4としては、例えば、エポキシ接着剤組成物、シリコーン接着剤組成物、ウレタン接着剤組成物、アクリル接着剤組成物などの接着剤組成物から形成されている。接着剤組成物としては、好ましくは、エポキシ接着剤組成物、シリコーン接着剤組成物が挙げられ、さらに好ましくは、エポキシ接着剤組成物が挙げられる。
【0068】
エポキシ接着剤組成物は、例えば、上記したエポキシ樹脂および硬化剤を含有しており、そのようなエポキシ樹脂および硬化剤としては、上記した樹脂で例示したエポキシ樹脂および硬化剤と同様のものが挙げられる。
【0069】
接着剤層4の厚みT1、つまり、蛍光体層3の上面から蛍光体層転写シート1の上面までの高さは、例えば、1〜1000μmである。
【0070】
そして、この蛍光体層転写シート1を製造するには、まず、
図2(a)に示すように、離型基材2を用意する。
【0071】
次いで、
図2(b)に示すように、粒子含有樹脂組成物8を離型基材2の上に塗布する。なお、粒子含有樹脂体組成物8には、必要により、粘度を調製するため、例えば、トルエンなどの溶媒を適宜の割合で配合することもできる。
【0072】
粒子含有樹脂体組成物8の塗布では、例えば、印刷法などが用いられる。印刷法では、例えば、蛍光体部5の反転パターンに形成されたスクリーン6を、離型基材2の上に載置し、次いで、粒子含有樹脂体組成物8をスキージ7によってスクリーン6を介して印刷する。この印刷法では、各蛍光体部5の上面が、スクリーン6の上端面と面一となることにより、平坦となるので、粒子含有樹脂体組成物8を均一かつ簡便に塗布することができる。
【0073】
その後、必要により、溶媒を加熱により除去した後、スクリーン6を離型基材2から引き上げることによって、
図2(c)に示すように、複数の蛍光体部5を備える蛍光体層3を形成する。
【0074】
次いで、
図2(d)に示すように、接着剤組成物9を離型基材2の上に、蛍光体層3を被覆するように、塗布する。なお、接着剤組成物9には、必要により、粘度を調製するため、例えば、カルビトールアセテートなどの溶媒を適宜の割合で配合することもできる。
【0075】
接着剤組成物9の塗布では、例えば、印刷法、塗工法などが用いられ、好ましくは、印刷法が用いられる。印刷法では、例えば、離型基材2の周縁部に枠部材21を載置し、次いで、接着剤組成物9をスキージ7によって印刷する。この印刷法では、接着剤層4の上面が、枠部材21の上端面と面一となることにより、平坦となるので、接着剤組成物9を均一かつ簡便に塗布することができる。
【0076】
その後、必要により、溶媒を加熱により除去した後、枠部材21を離型基材2から引き上げることによって、
図2(e)に示すように、接着剤層4を形成する。
【0077】
これにより、蛍光体層転写シート1を得ることができる。
【0078】
次に、この蛍光体層転写シート1を用いて発光装置18を製造する方法について、
図3を参照して説明する。
【0079】
この方法では、まず、
図3(a)に示すように、基板10と、それの上に複数設けられる発光ダイオード11とを用意する。
【0080】
基板10は、ベース基板13、ベース基板13の上面に形成される導体パターン14、および、ベース基板13の上面から上方に立設されるハウジング15を備えている。
【0081】
ベース基板13は、平面視略矩形平板状に形成されており、例えば、ポリイミド樹脂などの公知の絶縁樹脂から形成されている。
【0082】
導体パターン14は、複数の発光ダイオード11の端子と、各発光ダイオード11に電気を供給するための電源の端子(図示せず)とを電気的に接続している。導体パターン14は、例えば、銅、鉄などの導体材料から形成されている。
【0083】
ハウジング15は、平面視において、各発光ダイオード11を1つずつ囲むように配置され、上方に向かって次第に幅狭となる断面略台形状に形成されている。これにより、ハウジング15は、各発光ダイオード11が収容される各領域を1つずつ仕切っている。また、ハウジング15は、発光ダイオード11が複数整列配置されることから、平面視略格子形状に形成されている。
【0084】
なお、ハウジング15により仕切られる領域は、平面視において、蛍光体部5よりやや小さい略円形状に形成されている。
【0085】
発光ダイオード11としては、例えば、主として青色光を発光する青色発光ダイオード(青色LED)などが挙げられる。
【0086】
発光ダイオード11は、ベース基板13の上に複数設けられている。各発光ダイオード11は、ハウジング15によって仕切られる各領域内に設けられ、導体パターン14とワイヤ16を介して電気的に接続(ワイヤボンディング)されている。なお、発光ダイオード11は、ウエハをダイシングすることにより得られる。
【0087】
なお、ベース基板13の上には、ハウジング15によって仕切られる各領域に封止層12が充填されており、これによって、各発光ダイオード11が封止されている。封止層12は、例えば、シリコーン樹脂などの公知の封止樹脂から形成され、その上面が、ハウジング15の上面と厚み方向において面一に形成されている。
【0088】
次いで、この方法では、
図3(b)に示すように、上記の蛍光体層転写シート1を用いて、蛍光体層3を基板10の上に転写する。
【0089】
具体的には、蛍光体層転写シート1の接着剤層4の表面(
図3(b)における下面(裏面)で、
図2(e)における上面)を、基板10のハウジング15の表面(上面)および封止層12の表面(上面)に当接させる。
【0090】
この転写では、各蛍光体部5は、各発光ダイオード11を仕切る各領域に対応させるにように、つまり、各蛍光体部5と、各発光ダイオード11とが1対1対応となるように、接着剤層4を介して、各発光ダイオード11の上側を被覆する。
【0091】
これにより、蛍光体層3が、接着剤層4を介して、ハウジング15および封止層12の上面に貼着される。
【0092】
また、蛍光体層3は、発光ダイオード11を被覆するように設置される。具体的には、各蛍光体部5が、平面視において、発光ダイオード11に対応するハウジング15により仕切られる各領域を含むように、蛍光体層3が設置される。より具体的には、各蛍光体部5と、上記した各領域とが、1対1対応となるように、各蛍光体部5が、各発光ダイオード11の上側を被覆する。
【0093】
次いで、
図3(b)の仮想線で示すように、離型基材2を、蛍光体層3の表面(上面)および各蛍光体部5間から露出する接着剤層4の表面(上面)から、剥離する。
【0094】
その後、
図3(c)に示すように、接着剤層4を加熱により硬化させる。加熱温度は、例えば、100〜150℃である。
【0095】
これによって、蛍光体層3がハウジング15および封止層12の上面に接着剤層4を介して接着される。
【0096】
なお、接着剤層4は、上記した硬化により、主に厚み方向に収縮する。硬化後の接着剤層4の厚み(蛍光体層3の下面からハウジング15および封止層12の上面までの高さ)T2は、例えば、1〜1000μmである。
【0097】
その後、
図3(d)に示すように、複数のレンズ17を、各蛍光体部5の上に、設置する。レンズ17は、略半球形状(略ドーム形状)をなし、各発光ダイオード11を封止する封止層12の上を被覆するように、公知の接着剤層(図示しない)を介して設置される。レンズ17は、例えば、シリコーン樹脂などの透明樹脂から形成されている。
【0098】
そして、上記した蛍光体層3は、蛍光体粒子および光散乱粒子が分散された樹脂からなるので、発光装置18では、各発光ダイオード11間において青色光の発光波長のばらつきが生じていても、各発光ダイオード11を被覆する蛍光体層3により、色度のばらつきを低減しながら黄色光に変換することができる。
【0099】
そのため、この発光装置18、または、各発光ダイオード11に対応してダイシングした複数の発光装置18間において、色度のばらつきが低減された白色光の発光を達成することができる。
【0100】
また、上記した蛍光体層転写シート1によれば、蛍光体層3を基板10に転写する簡易な方法によって、蛍光体層3を接着剤層4を介して基板10に簡便に接着することができる。そのため、発光装置18を簡便な方法で、優れた製造コストで得ることができる。
【0101】
なお、上記した
図2および
図3の説明では、発光装置18の製造において、まず、蛍光体層3を、離型基材2の上に形成して、蛍光体層転写シート1を形成した後、これを用いて、蛍光体層3を基板10の上に転写しているが、例えば、図示しないが、蛍光体層3を、基板10の上に直接形成することもできる。
【0102】
すなわち、粒子含有樹脂組成物8を、例えば、スクリーン印刷などの塗布方法によって、
図3(a)が参照されるように、封止層12およびハウジング15の上面に直接塗布する。その後、必要により、溶媒を加熱により除去する。
【0103】
この方法によれば、離型基材2および接着剤層4を用意および形成する必要がないので、蛍光体層3を簡便に形成することができる。
【0104】
また、上記した説明では、基板10に封止層12を設けているが、例えば、図示しないが、封止層12を設けることなく、発光ダイオード11が収容される領域を中空形状にすることもできる。
【0105】
また、上記した説明では、発光装置18にレンズ17を設けているが、例えば、図示しないが、レンズ17を設けることなく、発光装置18を構成することもできる。
【0106】
また、上記した説明では、発光ダイオード11をワイヤ16を介して導体パターン14と電気的に接続(ワイヤボンディング)しているが、例えば、図示しないが、発光ダイオード11の下面に端子を形成し、かかる端子と、導体パターン14の端子とを、ワイヤ16を用いることなく、はんだなどによって電気的に接続(フリップチップボンディング)することもできる。
【0107】
さらに、上記した説明では、蛍光体層3を、発光ダイオード11の上側に間隔を隔てて設けているが、例えば、発光ダイオード11の表面(上面および側面)にそれを直接被覆するように設けることもできる。
【実施例】
【0108】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。
【0109】
実施例1
(蛍光体層転写シートの作製)
ポリエチレンテレフタレートからなる厚み50μmの離型基材を用意した(
図2(a)参照)。
【0110】
また、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量650g/eqiv.、粘度(25℃)2000mPa・s)50質量部および硬化剤(酸無水物化合物)30質量部を配合して、エポキシ樹脂組成物を調製した。このエポキシ樹脂組成物80質量部に、Y
3Al
5O
12:Ceからなる蛍光体粒子(球形状、平均粒子径17μm)17質量部、および、シリカ粒子(光散乱粒子、球形状、屈折率(n):1.45、平均粒子径4.6μm)10質量部を配合し、攪拌混合することにより、粒子含有樹脂組成物を調製した。
【0111】
次いで、調製した粒子含有樹脂組成物を離型基材の上に、上記した印刷法によって塗布した(
図2(b)参照)。印刷法では、まず、上記したパターンのスクリーンを離型基材の上に載置し、次いで、粒子含有樹脂組成物を、スキージによってスクリーンを介して印刷した。その後、スクリーンを離型基材から引き上げることによって、複数整列配置された蛍光体部を備える、厚み300μmの蛍光体層を形成した(
図2(c)参照)。
【0112】
別途、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量600g/eqiv.、粘度(25℃)2000mPa・s)50質量部、および、硬化剤(酸無水物化合物)30質量部を配合して、均一攪拌することにより、エポキシ接着剤組成物を調製した。
【0113】
次いで、離型基材の周縁部に枠部材を載置し、次いで、調製したエポキシ接着剤組成物をスキージによって印刷した(
図2(d)参照)。その後、枠部材を離型基材から引き上げることによって、厚み(T1)67μmの接着剤層を形成した(
図2(e)参照)。
【0114】
これにより、蛍光体層転写シートを作製した(
図1参照)。
【0115】
(発光装置の製造)
ベース基板、導体パターンおよびハウジングを備える基板と、複数の青色発光ダイオードとを用意した(
図3(a)参照)。なお、各青色発光ダイオードを、ワイヤを介して導体パターンとワイヤボンディングした後、封止層によって封止した。
【0116】
次いで、上記で製造した蛍光体層転写シートを用いて、蛍光体層を基板の上に転写した(
図3(b)参照)。
【0117】
すなわち、蛍光体層転写シートの接着剤層の表面を、基板のハウジングの上面および封止層の上面に当接させることにより、蛍光体層の各蛍光体部を、接着剤層を介して、ハウジングおよび封止層の上面に、各青色発光ダイオードを被覆するように貼着した。
【0118】
次いで、離型基材を剥離した(
図3(b)の仮想線参照)。
【0119】
その後、接着剤層を150℃の加熱によって硬化させた(
図3(c)参照)。硬化後の接着剤層の厚み(T2)は40μmであった。
【0120】
その後、ドーム形状のレンズを接着剤層(シリコーン系)を介して設置した。これにより、発光装置を製造した。
【0121】
比較例1
粒子含有樹脂組成物の調製において、シリカ粒子(光散乱粒子)を配合しなかったこと、および、色調を合わせるために蛍光体層の厚みを500μmにしたこと以外は、実施例1と同様にして、蛍光体層を形成することにより、蛍光体層転写シートを作製し、続いて、発光装置を製造した。
【0122】
(評価)
(色度の測定)
実施例1および比較例1の蛍光体層転写シートの色度を、
図4に示す異なる波長毎に、分光放射計(瞬間マルチ測光システム:MCPD−7000、大塚電子社製)を用いて測定して、xy色度図を作成した。それを、
図4に示す。
【0123】
図4から分かるように、実施例1の蛍光体層転写シートでは、xy色度図におけるx軸における数値範囲が0.013(=0.297−0.284)であり、x軸の数値範囲が0.020(=0.298−0.278)である比較例1の蛍光体層転写シートに比べて、格段に小さい。つまり、実施例1は、比較例1に比べて、x軸のばらつきが小さいことが分かる。
【0124】
また、実施例1の蛍光体層転写シートでは、xy色度図におけるy軸における数値範囲が0.082(=0.337−0.255)であり、y軸の数値範囲が0.095(=0.335−0.240)である比較例1の蛍光体層転写シートに比べて、小さい。つまり、実施例1は、比較例1に比べて、y軸のばらつきが小さいことが分かる。
【0125】
従って、実施例1は、比較例1に比べて、異なる波長に基づく色度のばらつきが低減されていることが分かる。