(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2有機発光層および前記第1有機EL素子用の前記第1正孔注入・輸送層の全面と、前記青色の第1有機発光層との間に、低分子材料からなる第2正孔注入・輸送層を備えた
請求項1記載の有機EL表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(赤色・緑色発光層を塗布法により形成し、青色発光層を共通層として蒸着法により形成した例)
2.第2の実施の形態(青色正孔輸送層を低分子材料により構成した例)
3.第3の実施の形態(赤色・緑色発光層に低分子材料を含む例)
4.第4の実施の形態(赤色・緑色発光層および青色正孔輸送層の上に第2の正孔注入・輸送層を設けた例)
5.第5の実施の形態(青色正孔輸送層を設けず、青色正孔注入層上に第2の正孔注入・輸送層を設けた例)
6.適用例
7.変形例(4色の場合)
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る有機EL表示装置の構成を表すものである。この有機EL表示装置は、有機ELテレビジョン装置などとして用いられるものであり、例えば、基板11の上に、表示領域110として、後述する複数の赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bがマトリクス状に配置されたものである。表示領域110の周辺には、映像表示用のドライバである信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が設けられている。
【0018】
表示領域110内には画素駆動回路140が設けられている。
図2は、画素駆動回路140の一例を表したものである。画素駆動回路140は、後述する下部電極14の下層に形成されたアクティブ型の駆動回路である。すなわち、この画素駆動回路140は、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、これらトランジスタTr1,Tr2の間のキャパシタ(保持容量)Csと、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において駆動トランジスタTr1に直列に接続された赤色有機EL素子10R(または緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10B)とを有する。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成され、その構成は例えば逆スタガ構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガ構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
【0019】
画素駆動回路140において、列方向には信号線120Aが複数配置され、行方向には走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bのいずれか一つ(サブピクセル)に対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
【0020】
また、表示領域110には、赤色の光を発生する赤色有機EL素子10Rと、緑色の光を発生する緑色有機EL素子10Gと、青色の光を発生する青色有機EL素子10Bとが、順に全体としてマトリクス状に配置されている。なお、隣り合う赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの組み合わせが一つの画素(ピクセル)を構成している。ここで、青色有機EL素子10Bは、本発明における「第1有機EL素子」の一具体例に対応する。赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子は、本発明における「第2有機EL素子」の一具体例に対応する。
【0021】
図3は
図1に示した表示領域110の断面構成を表したものである。赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bは、それぞれ、基板11の側から、上述した画素駆動回路140の駆動トランジスタTr1および平坦化絶縁膜(図示せず)を間にして、陽極としての下部電極14、隔壁15、後述する発光層16Cを含む有機層16および陰極としての上部電極17がこの順に積層された構成を有している。
【0022】
このような赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bは、保護層20により被覆され、更にこの保護層20上に熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂などの接着層(図示せず)を間にしてガラスなどよりなる封止用基板40が全面にわたって貼り合わされることにより封止されている。
【0023】
基板11は、その一主面側に赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bが配列形成される支持体であって、公知のものであって良く、例えば、石英、ガラス、金属箔、もしくは樹脂製のフィルムやシートなどが用いられる。この中でも石英やガラスが好ましく、樹脂製の場合には、その材質としてポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表されるメタクリル樹脂類、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN) などのポ
リエステル類、もしくはポリカーボネート樹脂などが挙げられるが、透水性や透ガス性を抑える積層構造、表面処理を行うことが必要である。
【0024】
下部電極14は、基板11に、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの各々ごとに設けられている。下部電極14は、例えば、積層方向の厚み(以下、単に厚みと言う)が10nm以上1000nm以下であり、クロム(Cr),金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),銅(Cu),タングステン(W)あるいは銀(Ag)などの金属元素の単体または合金が挙げられる。また、下部電極14は、これらの金属元素の単体または合金よりなる金属膜と、インジウムとスズの酸化物(ITO)、InZnO(インジウ亜鉛オキシド)、酸化亜鉛(ZnO)とアルミニウム(Al)との合金などの透明導電膜との積層構造を有していてもよい。なお、下部電極14が陽極として使われる場合には、下部電極14は正孔注入性の高い材料により構成されていることが望ましい。ただし、アルミニウム(Al)合金のように、表面の酸化皮膜の存在や、仕事関数が大きくないことによる正孔注入障壁が問題となる材料においても、適切な正孔注入層を設けることによって下部電極14として使用することが可能である。
【0025】
隔壁15は、下部電極14と上部電極17との絶縁性を確保すると共に発光領域を所望の形状にするためのものであると共に、後述する製造工程においてインクジェットまたはノズルプリンティング方式による塗布を行う際の隔壁としての機能も有している。隔壁15は、例えば、SiO2 等の無機絶縁材料よりなる下部隔壁15Aの上に、ポジ型感光性ポリベン ゾオキサゾール,ポジ型感光性ポリイミドなどの感光性樹脂よりなる上部隔壁15Bを有している。隔壁15には、発光領域に対応して開口が設けられている。なお、有機層16ないし上部電極17は、開口だけでなく隔壁15の上にも設けられていてもよいが、発光が生じるのは隔壁15の開口だけである。
【0026】
赤色有機EL素子10Rの有機層16は、例えば、下部電極14の側から順に、正孔注入層16AR,正孔輸送層16BR,赤色発光層16CR,青色発光層16CB,電子輸
送層16Eおよび電子注入層16Fを積層した構成を有する。緑色有機EL素子10Gの有機層16は、例えば、下部電極14の側から順に、正孔注入層16AG,正孔輸送層16BG,緑色発光層16CG,青色発光層16CB,電子輸送層16Eおよび電子注入層16Fを積層した構成を有する。青色有機EL素子10Bの有機層16は、例えば、下部電極14の側から順に、正孔注入層16AB,正孔輸送層16BB,青色発光層16CB,電子輸送層16Eおよび電子注入層16Fを積層した構成を有する。これらのうち青色発光層16CB,電子輸送層16Eおよび電子注入層16Fは、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの共通層として設けられている。
【0027】
正孔注入層16AR,16AG,16ABは、正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層であり、下部電極14の上に赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの各々ごとに設けられている。
【0028】
正孔注入層16AR,16AG,16ABの厚みは例えば5nm〜100nmであることが好ましく、より好ましくは8nm〜50nmである。正孔注入層16AR,16AG,16ABの構成材料は、電極や隣接する層の材料との関係で適宜選択すればよく、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体等の導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニン等)、カーボン等が例示される。
正孔注入層16AR,16AG,16ABに用いられる材料が、高分子材料である場合、その高分子の重量平均分子量(Mw)は、2000〜1万程度のオリゴマーや1万〜30万の範囲であることが好ましい。特に、5000〜20万程度が好ましい。Mwが5000未満では、正孔輸送層以降を形成する際に、正孔注入層が溶解してしまう恐れがある。また30万を超えると、材料がゲル化し、成膜が困難になる恐れがある。
【0029】
正孔注入層16AR,16AG,16ABの構成材料として使用される典型的な導電性高分子としては、ポリアニリンおよび/またはオリゴアニリン、及びポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などのポリジオキシチオフェンが挙げられる。例えば、エイチ・シー・スタルク製 Nafion(商標) で市販されているポリマー、または溶
解形態で商品名 Liquion( 商標) で市販されているポリマーや、日産化学製エルソース(商標)や、綜研化学製導電性ポリマーベラゾール(商標)などがある。
【0030】
正孔輸送層16BR,16BG,16BBは、赤色発光層16CR,緑色発光層16CGおよび青色発光層16CBへの正孔輸送効率を高めるためのものである。正孔輸送層16BR,16BG,16BBは、正孔注入層16AR,16AG,16ABの上に赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの各々ごとに設けられている。
【0031】
正孔輸送層16BR,16BG,16BBの厚みは、素子の全体構成にもよるが、例えば10nm〜200nmであることが好ましく、さらに好ましくは15nm〜150nmである。正孔輸送層16BR,16BGを構成する高分子材料としては、有機溶媒に可溶な発光材料、例えば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール等が使用できる。
【0032】
高分子材料の重量平均分子量(Mw)は、5万〜30万であることが好ましく、特に、10万〜20万であることが好ましい。Mwが5万未満では、発光層を形成するときに、
高分子材料中の低分子成分が脱落し、正孔注入・輸送層にドットが生じるため、有機EL素子の初期性能が低下したり、素子の劣化を引き起こすおそれがある。一方、30万を越えると、材料がゲル化するため、成膜が困難になるおそれがある。
尚、重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒として、ゲルパーエミーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた値である。
【0033】
赤色発光層16CR,緑色発光層16CGは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。赤色発光層16CR,緑色発光層16CGの厚みは、素子の全体構成にもよるが、例えば10nm〜200nmであることが好ましく、さらに好ましくは15nm〜150nmである。赤色発光層16CR,緑色発光層16CGを構成する高分子発光材料としては、ポリフルオレン系高分子誘導体や、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、あるいは上記高分子に有機EL材料をドープして用いることができる。例えば、ルブレン、ペリレン、9,10ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6等をドープすることにより用いることができる。
【0034】
青色発光層16CBは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものであり、赤色発光層16CR,緑色発光層16CGおよび青色有機EL素子10B用の正孔輸送層16BBの全面に共通層として設けられている。青色発光層16CBは、アントラセン化合物をホスト材料として青色もしくは緑色の低分子蛍光性色素,りん光色素、金属錯体等の有機発光材料よりなるゲスト材料がドーピングされており、青色もしくは緑色の発光光を発生する。
【0035】
電子輸送層16Eは、赤色発光層16CR,緑色発光層16CG,青色発光層16CBへの電子輸送効率を高めるためのものであり、青色発光層16CBの全面に共通層として設けられている。電子輸送層16Eの材料としては、例えば、キノリン、ペリレン、フェナントロリン、ビススチリル、ピラジン、トリアゾール、オキサゾール、フラーレン、オキサジアゾール、フルオレノン、またはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。具体的には、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(略称Alq
3 )、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、アントラセン、ペリレン、ブタジエン、クマリン、C60、アクリジン、スチルベン、1,10−フェナントロリンまたはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。
【0036】
電子注入層16Fは、電子注入効率を高めるためのものであり、電子輸送層16Eの全面に共通層として設けられている。電子注入層16Fの材料としては、例えばリチウム(Li)の酸化物である酸化リチウム(Li
2 O)や、セシウム(Cs)の複合酸化物である炭酸セシウム(Cs
2 CO
3 )、さらにはこれらの酸化物及び複合酸化物の混合物を用いることができる。また、電子注入層16Fは、このような材料に限定されることはなく、例えば、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属、リチウム、セシウム等のアルカリ金属、さらにはインジウム(In)、マグネシウム(Mg)等の仕事関数の小さい金属、さらにはこれらの金属の酸化物及び複合酸化物、フッ化物等を、単体でまたはこれらの金属および酸化物及び複合酸化物、フッ化の混合物や合金として安定性を高めて使用しても良い。
【0037】
上部電極17は、例えば、厚みが3nm以上8nm以下であり、金属導電膜により構成されている。具体的には、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca)またはナトリウム(Na)の合金が挙げられる。中でも、マグネシウムと銀との合金(Mg−Ag合金)は、薄膜での導電性と吸収の小ささとを兼ね備えているので好ましい。Mg−Ag合金におけるマグネシウムと銀との比率は特に限定されないが、膜厚比でMg:Ag=20:1〜1:1の範囲であることが望ましい。また、上部電極17の材料は、アルミニウム(Al)とリチウム(Li)との合金(Al−Li合金)でもよい。
【0038】
更に、上部電極17は、アルミキノリン錯体、スチリルアミン誘導体、フタロシアニン誘導体等の有機発光材料を含有した混合層でもよい。この場合には、さらに第3層としてMgAgのような光透過性を有する層を別途有していてもよい。なお、上部電極17は、アクティブマトリックス駆動方式の場合、有機層16と隔壁15とによって、下部電極14と絶縁された状態で基板11上にベタ膜状に形成され、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの共通電極として用いられる。
【0039】
保護層20は、例えば厚みが2〜3μmであり、絶縁性材料または導電性材料のいずれにより構成されていてもよい。絶縁性材料としては、無機アモルファス性の絶縁性材料、例えばアモルファスシリコン(α−Si), アモルファス炭化シリコン(α−SiC), アモルファス窒化シリコン(α−Si
1-x N
x )、アモルファスカーボン(α−C)などが好ましい。このような無機アモルファス性の絶縁性材料は、グレインを構成しないため透水性が低く、良好な保護膜となる。
【0040】
封止用基板40は、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの上部電極17の側に位置しており、接着層(図示せず)と共に赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bを封止するものである。封止用基板40は、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bで発生した光に対して透明なガラスなどの材料により構成されている。封止用基板40には、例えば、カラーフィルタおよびブラックマトリクスとしての遮光膜(いずれ
も図示せず)が設けられており、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bで発生した光を取り出すと共に、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10B並びにその間の配線において反射された外光を吸収し、コントラストを改善するようになっている。
【0041】
カラーフィルタは、赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタ(いずれも図示せず)を有しており、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bに対応して順に配置されている。赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタは、それぞれ例えば矩形形状で隙間なく形成されている。これら赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタは、顔料を混入した樹脂によりそれぞれ構成されており、顔料を選択することにより、目的とする赤,緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整されている。
【0042】
遮光膜は、例えば黒色の着色剤を混入した光学濃度が1以上の黒色の樹脂膜、または薄膜の干渉を利用した薄膜フィルタにより構成されている。このうち黒色の樹脂膜により構成するようにすれば、安価で容易に形成することができるので好ましい。薄膜フィルタは、例えば、金属,金属窒化物あるいは金属酸化物よりなる薄膜を1層以上積層し、薄膜の干渉を利用して光を減衰させるものである。薄膜フィルタとしては、具体的には、クロムと酸化クロム(III)(Cr
2 O
3 )とを交互に積層したものが挙げられる。
【0043】
図4ないし
図9は、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの配列の第1例ないし第6例をそれぞれ表したものである。有機EL表示装置1は、行列状(マトリクス状)に配置された複数の画素10を有している。各画素10は、例えば正方形の平面形状を有し、少なくとも一つの青色有機EL素子10Bを含むと共に、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gを一つずつ含んでいる。
【0044】
赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gおよび青色有機EL素子10Bは、すべての画素10に同一の配列で含まれている。赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gの各々は、少なくとも対向する2辺で同一画素10内または隣接画素10内の青色有機EL素子10Bと隣接している。これにより、この有機EL表示装置1では、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gの有機層16の膜厚の均一性または対称性を向上させることが可能となっている。
【0045】
例えば
図4に示した第1例および
図5に示した第2例では、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bは細長い矩形(短冊状)の平面形状を有している。赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gは、矩形の短辺に平行な方向に等間隔で配列されている。青色有機EL素子10Bは、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gの間に配置されている。この場合、赤色有機EL素子10および緑色有機EL素子10Gの各々は、二本の長辺で同一画素10内または隣接画素10内の青色有機EL素子10Bと隣接している。
【0046】
図6に示した第3例では、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gは、各画素10の対角線上の二つの角に配置(いわゆる千鳥配置)されている。すなわち、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gは、矩形(例えば正方形)の平面形状を有し、対角線を同一線上にして斜めに(例えば
図6では赤色有機EL素子10Rが画素10の左上、緑色有機EL素子10Gが画素10の右下)に配列されている。青色有機EL素子10Bは、矩形(例えば正方形)の平面形状を有し、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10G以外の領域に(画素10の右上および左下)配置されている。この場合、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gの各々は、四辺のすべてで同一画素10内または隣接画素10内の青色有機EL素子10Bと隣接している。
【0047】
図7に示した第4例、
図8に示した第5例および
図9に示した第6例では、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gは、一方向に(直線状に)配列されている。すなわち、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gは、矩形(例えば正方形)の平面形状を有し、横並びに(赤色有機EL素子10Rが画素10の左上、緑色有機EL素子10Gが画素10の右上)配列されている。青色有機EL素子10Bは、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10G以外の領域に(画素10の左下および右下)配置されている。この場合、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gの各々は、上下の二辺で同一画素10内または隣接画素10内の青色有機EL素子10Bと隣接している。
【0048】
青色有機EL素子10Bは、
図7に示した第4例のように、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gと同じ形状(例えば正方形)の平面形状を有していてもよいし、
図8に示した第5例または
図9に示した第6例のように、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gをつなげた細長い矩形でもよい。
【0049】
第1例ないし第6例のいずれも、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gの面積は同一であることが望ましい。面積および印刷するインク量を同一にすることで乾燥時間を同等にすることができ、これにより赤と緑の膜厚分布をより均一化することができるからである。
【0050】
一方、青色有機EL素子10Bの面積は、必ずしも赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gの面積と同一である必要はない。例えば、青色有機EL素子10Bは、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gに比べて発光寿命が短いので、青色有機EL素子10Bの面積を赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gの面積よりも広い面積となるよう設計する場合がある。従って、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gの面積は、青色有機EL素子10Bの面積とは異なっていてもよい。
図6に示した第3例以外は、青色有機EL素子10Bの面積を任意に設計することが可能である。
【0051】
例えば、
図4に示した第1例では、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの短辺の長さが等しいのに対して、
図5に示した第2例では、各青色有機EL素子10Bの短辺の長さが赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gの短辺よりも短く、各青色有機EL素子10Bの面積が赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gの面積よりも小さくなっている。これにより、各画素10内での赤色有機EL素子10Rの面積と、緑色有機EL素子10Gの面積と、二つの青色有機EL素子10Bの合計面積とがほぼ等しくされている。
【0052】
また、例えば
図8に示した第5例では、青色有機EL素子10Bの短辺の長さが赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gの一辺の長さに等しいのに対して、
図9に示した第6例では、青色有機EL素子10Bの短辺の長さが赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gの一辺の長さよりも短くされている。これにより、第2例と同様に、各画素10内での赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの面積がほぼ等しくされている。
【0053】
なお、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの配列は、第1例ないし第6例以外にも可能であることは言うまでもない。
【0054】
この有機EL表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。
【0055】
図10は、この有機EL表示装置の製造方法の流れを表したものであり、
図11,
図12および
図14は
図10に示した製造方法を工程順に表したものである。まず、上述した材料よりなる基板11の上に駆動トランジスタTr1を含む画素駆動回路140を形成し、例えば感光性樹脂よりなる平坦化絶縁膜(図示せず)を設ける。
【0056】
(下部電極14を形成する工程)
次いで、基板11の全面に例えばITOよりなる透明導電膜を形成し、この透明導電膜をパターニングすることにより、
図11(A)に示したように、下部電極14を赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの各々ごとに形成する(ステップS101)。その際、下部電極14を、平坦化絶縁膜(図示せず)のコンタクトホール(図示せず)を介して駆動トランジスタTr1のドレイン電極と導通させる。
【0057】
(隔壁15を形成する工程)
続いて、同じく
図11(A)に示したように、下部電極14上および平坦化絶縁膜(図示せず)上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長)法により、SiO2 等の無機絶縁材料を成膜し、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、下部隔壁15Aを形成する。
【0058】
そののち、同じく
図11(A)に示したように、下部隔壁15Aの所定位置、詳しくは画素の発光領域を囲む位置に、上述した感光性樹脂よりなる上部隔壁15Bを形成する。これにより、上部隔壁15Aおよび下部隔壁15Bよりなる隔壁15が形成される(ステップS102)。
【0059】
隔壁15を形成したのち、基板11の下部電極14および隔壁15を形成した側の表面を酸素プラズマ処理し、その表面に付着した有機物等の汚染物を除去して濡れ性を向上させる。具体的には、基板11を所定温度、例えば70〜80℃程度に加熱し、続いて大気圧下で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(O
2 プラズマ処理)を行う。
【0060】
(撥水化処理を行う工程)
プラズマ処理を行ったのち、撥水化処理(撥液化処理)を行う(ステップS103)ことにより、特に上部隔壁15Bの上面及び側面の濡れ性を低下させる。具体的には、大気圧下で4フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理(CF
4 プラズマ処理)を行い、
その後、プラズマ処理のために加熱された基板11を室温まで冷却することで、上部隔壁15Bの上面及び側面を撥液化し、その濡れ性を低下させる。
【0061】
なお、このCF
4 プラズマ処理においては、下部電極14の露出面および下部隔壁15Aについても多少の影響を受けるが、下部電極14の材料であるITOおよび下部隔壁15Aの構成材料であるSiO2 などはフッ素に対する親和性に乏しいため、酸素プラズマ処理で濡れ性が向上した面は濡れ性がそのままに保持される。
【0062】
(正孔注入層16AR,16AG,16ABを形成する工程)
撥水化処理を行ったのち、
図11(B)に示したように、上部隔壁15Bに囲まれた領域内に、上述した材料よりなる正孔注入層16AR,16AG,16ABを形成する(ステップS104)。この正孔注入層16AR,16AG,16ABは、インクジェット,ノズルプリンティング,凸版印刷,グラビア印刷または反転オフセット印刷などの塗布法により形成する。特に、上部隔壁15Bに囲まれた領域に正孔注入層16AR,16AG,16ABの形成材料を選択的に配する必要上、液滴吐出法であるインクジェット法や、ノズルプリンティング法を用いることが好ましい。
【0063】
具体的には、例えばインクジェット法により、正孔注入層16AR,16AG,16ABの形成材料であるポリアニリンやポリチオフェン等の溶液または分散液を下部電極14の露出面上に配する。その後、熱処理(乾燥処理)を行うことにより、正孔注入層16AR,16AG,16ABを形成する。
【0064】
熱処理においては、溶媒または分散媒を乾燥後、高温で加熱する。ポリアニリンやポリチオフェン等の導電性高分子を用いる場合、大気雰囲気、もしくは酸素雰囲気が好ましい。酸素による導電性高分子の酸化により、導電性が発現しやすくなるためである。
【0065】
加熱温度は、150℃〜300℃が好ましく、さらに好ましくは180℃〜250℃である。時間は、温度、雰囲気にもよるが、5分〜300分程度が好ましく、さらに好ましくは、10分〜240分である。この乾燥後の膜厚みは、5nm〜100nmが好ましい。さらに好ましくは、8nm〜50nmが好ましい。
【0066】
(正孔輸送層16BR,16BG,16BBを形成する工程)
正孔注入層16AR,16AG,16ABを形成したのち、
図11(C)に示したように、正孔注入層16AR,16AG,16ABの上に、上述した高分子材料よりなる正孔輸送層16BR,16BG,16BBを赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの各々ごとに形成する(ステップS105)。この正孔輸送層16BR,16BG,16BBは、インクジェット,ノズルプリンティング,凸版印刷,グラビア印刷または反転オフセット印刷などの塗布法により形成する。特に、上部隔壁15Bに囲まれた領域に正孔輸送層16BR,16BG,16BBの形成材料を選択的に配する必要上、液滴吐出法であるインクジェット法や、ノズルプリンティング法を用いることが好ましい。
【0067】
具体的には、例えばインクジェット法により、正孔輸送層16BR,16BG,16BBの形成材料である高分子ポリマーの溶液または分散液を正孔注入層16AR,16AG,16ABの露出面上に配する。その後、熱処理(乾燥処理)を行うことにより、正孔輸送層16BR,16BG,16BBを形成する。
【0068】
熱処理においては、溶媒または分散媒を乾燥後、高温で加熱する。塗布する雰囲気や溶媒を乾燥、加熱する雰囲気としては、窒素(N
2 )を主成分とする雰囲気中が好ましい。酸素や水分があると、作成された有機EL表示装置の発光効率や寿命が低下する恐れがある。特に、加熱工程においては、酸素や水分の影響が大きいため、注意が必要である。好ましい酸素濃度は、0.1ppm以上100ppm以下が好ましく、50ppm以下であればより好ましい。100ppmより多い酸素があると、形成した薄膜の界面が汚染され、得られた有機EL表示装置の発行効率や寿命が低下する恐れがある。また、0.1ppm未満の酸素濃度の場合、素子の特性は問題ないが、現状の量産のプロセスとして、雰囲気を0.1ppm未満に保持するための装置コストが多大になる可能性がある。
また、水分については、露点が例えば−80℃以上−40℃以下であることが好ましい。更に、−50℃以下であればより好ましく、−60℃以下であれば更に好ましい。−40℃より高い水分があると、形成した薄膜の界面が汚染され、得られた有機EL表示装置の発光効率や寿命が低下する恐れがある。また、−80℃未満の水分の場合、素子の特性は問題ないが、現状の量産のプロセスとして、雰囲気を−80℃未満に保持するための装置コストが多大になる可能性がある。
【0069】
加熱温度は、100℃〜230℃が好ましく、さらに好ましくは100℃〜200℃である。少なくとも、正孔注入層16AR,16AG,16AB形成時の温度よりも低いことが好ましい。時間は、温度、雰囲気にもよるが、5分〜300分程度が好ましく、さらに好ましくは、10分〜240分である。乾燥後の膜厚みは、素子の全体構成にもよるが、10nm〜200nmが好ましい。さらに、15nm〜150nmであればより好ましい。
【0070】
(赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGを形成する工程)
正孔輸送層16BR,16BG,16BBを形成したのち、
図12(A)に示したように、赤色有機EL素子の正孔輸送層16BRの上に上述した高分子材料よりなる赤色発光層16CRを形成する。また、緑色有機EL素子の正孔輸送層16BGの上に上述した高分子材料よりなる緑色発光層16CGを形成する(ステップS106)。赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGは、インクジェット,ノズルプリンティング,凸版印刷,グラビア印刷または反転オフセット印刷などの塗布法により形成する。特に、上部隔壁15Bに囲まれた領域に赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGの形成材料を選択的に配する必要上、液滴吐出法であるインクジェット法や、ノズルプリンティング法を用いることが好ましい。
【0071】
具体的には、例えばインクジェット法により、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGの形成材料である高分子ポリマーの溶液または分散液を正孔輸送層16BR,16BGの露出面上に配する。その後、熱処理(乾燥処理)を行うことにより、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGを形成する。
【0072】
熱処理においては、溶媒または分散媒を乾燥後、高温で加熱する。塗布する雰囲気や溶媒を乾燥、加熱する雰囲気としては、窒素(N
2 )を主成分とする雰囲気中が好ましい。酸素や水分があると、作成された有機EL表示装置の発光効率や寿命が低下する恐れがある。特に、加熱工程においては、酸素や水分の影響が大きいため、注意が必要である。好ましい酸素濃度は、0.1ppm以上100ppm以下が好ましく、50ppm以下であればより好ましい。100ppmより多い酸素があると、形成した薄膜の界面が汚染され、得られた有機EL表示装置の発光効率や寿命が低下する恐れがある。また、0.1pp
m未満の酸素濃度の場合、素子の特性は問題ないが、現状の量産のプロセスとして、雰囲気を0.1ppm未満に保持するための装置コストが多大になる可能性がある。
また、水分については、露点が例えば−80℃以上−40℃以下であることが好ましい。更に、−50℃以下であればより好ましく、−60℃以下であれば更に好ましい。−40℃より高い水分があると、形成した薄膜の界面が汚染され、得られた有機EL表示装置の発光効率や寿命が低下する恐れがある。また、−80℃未満の水分の場合、素子の特性は問題ないが、現状の量産のプロセスとして、雰囲気をー80℃未満に保持するための装置コストが多大になる可能性がある。
【0073】
加熱温度は、100℃〜230℃が好ましく、さらに好ましくは100℃〜200℃である。少なくとも、正孔注入層16AR,16AG,16AB形成時の温度よりも低いことが好ましい。時間は、温度、雰囲気にもよるが、5分〜300分程度が好ましく、さらに好ましくは、10分〜240分である。乾燥後の膜厚みは、素子の全体構成にもよるが、10nm〜200nmが好ましい。さらに、15nm〜150nmであればより好ましい。
【0074】
ここでは、赤色有機EL素子10および緑色有機EL素子10Gの各々が、少なくとも対向する2辺で同一画素10内または隣接画素10内の青色有機EL素子10Bと隣接しているので、青色有機EL素子10Bに隣接している辺では、塗布液の乾燥速度の不均一が抑えられ、乾燥後の赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGの膜厚の片寄りが低減されている。よって、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGの膜厚の均一性または対称性が向上する。
【0075】
例えば
図4に示した第1例および
図5に示した第2例では、短冊状の赤色有機EL素子10Rおよび短冊状の緑色有機EL素子10Gの間に短冊状の青色有機EL素子10Bが配置されている。赤色有機EL素子10および緑色有機EL素子10Gの各々は、二本の長辺で同一画素10内または隣接画素10内の青色有機EL素子10Bと隣接している。この場合、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gの長辺では、塗布液の乾燥速度の不均一が抑えられ、乾燥後の赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGの膜厚の片寄りが低減される。よって、
図4または
図5において左右方向(短辺に平行な方向)での膜厚分布の均一性または対称性が良くなる。
【0076】
図6に示した第3例では、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gは、千鳥配置されている。赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gの各々は、四辺のすべてで同一画素10内または隣接画素10内の青色有機EL素子10Bと隣接している。この場合、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gの四辺のすべてで、塗布液の乾燥速度の不均一が抑えられ、乾燥後の赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGの膜厚の片寄りが低減される。よって、
図6において左右方向だけでなく上下方向でも膜厚分布の均一性または対称性が良くなり、最も高い効果が得られる。
【0077】
図7に示した第4例、
図8に示した第5例および
図9に示した第6例では、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gは、一方向に配列されている。赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gの各々は、上下の二辺で同一画素10内または隣接画素10内の青色有機EL素子10Bと隣接している。この場合、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gの上下の二辺では、塗布液の乾燥速度の不均一が抑えられ、乾燥後の赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGの膜厚の片寄りが低減される。よって、
図7または
図8において上下方向での膜厚分布の均一性または対称性が良くなる。
【0078】
これに対して従来では、
図13(A)に示したように、赤色有機EL素子810R,緑色有機EL素子810G,青色有機EL素子810Bが順に配列されていた。そのため、赤色発光層816CRおよび緑色発光層816CGの青色有機EL素子810Bと隣接している辺では、塗布液の乾燥速度が速くなり、いわゆるコーヒーステイン現象により未乾燥のインクが乾燥済のインクに引き寄せられ、結果として、
図13(B)に示したように、青色有機EL素子810Bと隣接している辺の膜厚が厚くなり、膜厚分布の均一性または対称性が悪くなっていた。ここにいうコーヒーステイン現象とは、基板に広がった液膜の外縁部つまり周縁部の蒸発量が他の部分よりも多いため、それを補うように液が周縁部に向かって流れ、その結果、乾燥後、周縁部が盛り上がった膜が形成される現象である。なお、
図13では、
図12と同一の構成要素には800番台の符号を付して表している。
【0079】
これを回避するため、青色有機EL素子810B上に溶剤のみ塗布し、乾燥速度を均等化することも考えられるが、塗布装置のヘッド数を増やす必要があるのでコスト増加の原因となる。
【0080】
また、青色有機EL素子810Bは、材料の問題から、赤色有機EL素子810R,緑色有機EL素子810Gに比べて発光寿命が短いので、青色有機EL素子
810Bの面積を赤色有機EL素子
810R,緑色有機EL素子
810Gの面積よりも広い面積として長寿命化を図る場合がある。しかし、その場合には、より乾燥ムラが発生しやすくなり、
図13(B)を参照して説明したコーヒーステイン現象による膜厚の不均一の問題が更に顕著なものとなっていた。
【0081】
(青色発光層16CBを形成する工程)
青色有機EL素子10B用の正孔輸送層16BBおよび赤色発光層16CR,緑色発光層16CGまで形成したのち、
図12(B)に示したように、蒸着法により、赤色発光層16CR,緑色発光層16CGおよび青色有機EL素子10B用の正孔輸送層16BBの全面に、上述した低分子材料よりなる青色発光層16CBを共通層として形成する(ステップS109)。
【0082】
(電子輸送層
16E,電子注入層
16Fおよび上部電極17を形成する工程)
青色発光層16CBを形成したのち、
図14(A),
図14(B)および
図14(C)に示したように、この青色発光層16CBの全面に、蒸着法により、上述した材料よりなる電子輸送層16E,電子注入層16Fおよび上部電極17を形成する(ステップS110,S111,S112)。
【0083】
上部電極17を形成したのち、
図3に示したように、下地に対して影響を及ぼすことのない程度に、成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法、例えば蒸着法やCVD法により、保護層20を形成する。例えば、アモルファス窒化シリコンからなる保護層20を形成する場合には、CVD法によって2〜3μmの膜厚に形成する。この際、有機層16の劣化による輝度の低下を防止するため、成膜温度を常温に設定すると共に、保護層20の剥がれを防止するために膜のストレスが最小になる条件で成膜することが望ましい。
【0084】
青色発光層16CB,電子輸送層16E,電子注入層16F,上部電極17および保護層20は、マスクを用いることなく全面にベタ膜として形成される。また、青色発光層16CB,電子輸送層16E,電子注入層16F,上部電極17および保護層20の形成は、望ましくは、大気に暴露されることなく同一の成膜装置内において連続して行われる。これにより大気中の水分による有機層16の劣化が防止される。
【0085】
なお、下部電極14と同一工程で補助電極(図示せず)を形成した場合、補助電極の上部にベタ膜で形成された有機層16を、上部電極17を形成する前にレーザアブレーショ
ンなどの手法によって除去してもよい。これにより、上部電極17を補助電極に直接接続させることが可能となり、コンタクトが向上する。
【0086】
保護層20を形成したのち、例えば、上述した材料よりなる封止用基板40に、上述した材料よりなる遮光膜を形成する。続いて、封止用基板40に赤色フィルタ(図示せず)の材料をスピンコートなどにより塗布し、フォトリソグラフィ技術によりパターニングして焼成することにより赤色フィルタを形成する。続いて、赤色フィルタ(図示せず)と同様にして、青色フィルタ(図示せず)および緑色フィルタ(図示せず)を順次形成する。
【0087】
そののち、保護層20の上に、接着層(図示せず)を形成し、この接着層を間にして封止用基板40を貼り合わせる。以上により、
図1ないし
図3に示した表示装置が完成する。
【0088】
この有機EL表示装置では、各画素に対して走査線駆動回路130から書き込みトランジスタTr2のゲート電極を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。すなわち、この保持容量Csに保持された信号に応じて駆動トランジスタTr1がオンオフ制御され、これにより、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bに駆動電流Idが注入され、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、下面発光(ボトムエミッション)の場合には下部電極14および基板11を透過して、上面発光(トップエミッション)の場合には上部電極17,カラーフィルタ(図示せず)および封止用基板40を透過して取り出される。
【0089】
その際、赤色有機EL素子10Rでは、赤色発光層16CRと青色発光層16CBとが設けられているが、最もエネルギー準位の低い赤色にエネルギー移動が起こり、赤色発光が支配的となる。緑色有機EL素子10Gでは、緑色発光層16CGと青色発光層16CBとが設けられているが、よりエネルギー準位の低い緑色にエネルギー移動が起こり、緑色発光が支配的となる。青色有機EL素子10Bでは、青色発光層16CBのみを有するので、青色発光が生じる。ここでは、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gの各々が、少なくとも対向する2辺で同一画素10内または隣接画素10内の青色有機EL素子10Bと隣接しているので、青色有機EL素子10Bに隣接している辺では、製造工程における塗布液の乾燥速度の不均一が抑えられ、乾燥後の赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGの膜厚の片寄りが低減されている。よって、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGの膜厚の均一性または対称性が向上し、実効的な発光面積を広くとることが可能となり、発光寿命が改善される。
【0090】
このように本実施の形態では、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gの各々を、少なくとも対向する2辺で同一画素10内または隣接画素10内の青色有機EL素子10Bと隣接させるようにしたので、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGの膜厚の均一性または対称性を向上させることが可能となる。よって、実効的な発光面積を広くとることが可能となり、発光寿命の改善が可能となる。
【0091】
また、青色有機EL素子10Bの面積を赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gの面積よりも広くした場合にも、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGの膜厚の不均一が抑えられる。よって、青色有機EL素子10Bの面積を広くして、赤色有機EL素子10および緑色有機EL素子10Gとの発光寿命のバランスをとることが可能となる。
【0092】
(第2ないし第5の実施の形態)
以下、第2ないし第5の実施の形態について説明する。これらの実施の形態はいずれも、上記第1の実施の形態において
図4ないし
図9を参照して説明した画素配列の効果を特に高めることが可能な素子構造に関するものである。また、以下の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成要素については同一符号を付してその説明は省略する。
【0093】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、青色有機EL素子10Bの正孔輸送層16BBに低分子材料を含ませることにより、青色の発光効率および寿命を向上させるようにしたことを除いては、上記第1の実施の形態と同様の構成を有している。ここで、低分子材料とは、低分子化合物が同じ反応又は類似の反応を連鎖的に繰り返すことにより、生じた高分子量の重合体又は縮合体の分子からなる物質以外のものであって、分子量が実質的に単一である化合物を指す。また加熱により、実質的に分子間の新たな化学結合は生まれず、単分子で存在する。
【0094】
正孔輸送層16BBの具体的な材料としては、例えば、ベンジン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、テトラシアノキノジメタン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキ
サゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベンあるいはこれらの誘導体、または、ポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマー、オリゴマーあるいはポリマーを用いることができる。
【0095】
さらに具体的な材料としては、α−ナフチルフェニルフェニレンジアミン、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリン、金属ナフタロシアニン、ヘキサシアノアザトリフェニレン、7, 7, 8, 8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、7, 7, 8, 8−- テトラシアノ -2,3,5,6- テトラフルオロキノジメタン(F4−TCNQ)、テトラシアノ4、4、4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、N、N、N’、N’−テトラキス(p−トリル)p−フェニレンジアミン、N、N、N’、N’−テトラフェニル−4、4’−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾール、4−ジ−p−トリルアミノスチルベン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリ(2、2’−チエニルピロール)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
この表示装置は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0097】
図15は、本実施の形態の有機EL表示装置の製造方法の流れを表したものであり、
図16ないし
図18は、
図15に示した製造方法を工程順に表したものである。
【0098】
(下部電極14を形成する工程)
まず、第1の実施の形態と同様にして、
図16(A)に示したように、画素駆動回路140および平坦化絶縁膜を形成した基板11の上に下部電極14を形成する(ステップS201)。
【0099】
(隔壁15を形成する工程)
次いで、第1の実施の形態と同様にして、同じく
図16(A)に示したように、下部隔壁15Aおよび上部隔壁15Bよりなる隔壁15を形成する(ステップS202)。
【0100】
(撥水化処理を行う工程)
続いて、第1の実施の形態と同様にして、基板11の下部電極14および隔壁15を形成した側の表面に対して酸素プラズマ処理を行ったのち、撥水化処理(撥液化処理)を行う(ステップS203)ことにより、特に上部隔壁15Bの上面及び側面の濡れ性を低下させる。
【0101】
(正孔注入層16AR,16AG,16ABを形成する工程)
そののち、第1の実施の形態と同様にして、
図16(B)に示したように、上部隔壁15Bに囲まれた領域内に、上述した材料よりなる正孔注入層16AR,16AG,16ABを形成する(ステップS204)。
【0102】
(正孔輸送層16BR,16BGを形成する工程)
正孔注入層16AR,16AG,16ABを形成したのち、第1の実施の形態と同様にして、
図16(C)に示したように、正孔注入層16AR,16AGの上に、上述した高分子材料よりなる正孔輸送層16BR,16BGを赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gの各々ごとに形成する(ステップS205)。
【0103】
ここでは、赤色有機EL素子10および緑色有機EL素子10Gの各々が、少なくとも対向する2辺で同一画素10内または隣接画素10内の青色有機EL素子10Bと隣接しているので、第1の実施の形態と同様に、青色有機EL素子10Bに隣接している辺では、塗布液の乾燥速度の不均一が抑えられ、乾燥後の正孔輸送層16BR,16BGの膜厚の片寄りが低減されている。よって、正孔輸送層16BR,16BGの膜厚の均一性または対称性が向上する。
【0104】
(赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGを形成する工程)
正孔輸送層
16BR,16BGを形成したのち、第1の実施の形態と同様にして、
図17(A)に示したように、赤色有機EL素子10Rの正孔輸送層16BRの上に上述した高分子材料よりなる赤色発光層16CRを形成する。また、緑色有機EL素子10Gの正孔輸送層16BGの上に上述した高分子よりなる緑色発光層16CGを形成する(ステップS206)。
【0105】
ここでもまた、赤色有機EL素子10および緑色有機EL素子10Gの各々が、少なくとも対向する2辺で同一画素10内または隣接画素10内の青色有機EL素子10Bと隣接しているので、第1の実施の形態と同様に、青色有機EL素子10Bに隣接している辺では、塗布液の乾燥速度の不均一が抑えられ、乾燥後の赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGの膜厚の片寄りが低減されている。よって、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGの膜厚の均一性または対称性が向上する。
【0106】
(青色有機EL素子10Bの正孔輸送層16BBを形成する工程)
赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGを形成したのち、
図17(B)に示したように、青色有機発光素子10B用の正孔注入層16ABの上に、上述した低分子材料よりなる正孔輸送層16BBを形成する(ステップS207)。正孔輸送層16BBは、インクジェット,ノズルプリンティング,凸版印刷,グラビア印刷または反転オフセット印刷などの塗布法により形成する。特に、上部隔壁15Bに囲まれた領域に正孔輸送層16BBの形成材料を選択的に配する必要上、液滴吐出法であるインクジェット法や、ノズルプリンティング法を用いることが好ましい。
【0107】
具体的には、例えばインクジェット法により、正孔輸送層16BBの形成材料である低分子の溶液または分散液を正孔注入層16ABの露出面上に配する。その後、熱処理(乾燥処理)を行うことにより、正孔輸送層16BBを形成する。
【0108】
熱処理においては、溶媒または分散媒を乾燥後、高温で加熱する。塗布する雰囲気や溶媒を乾燥、加熱する雰囲気としては、窒素(N
2 )を主成分とする雰囲気中が好ましい。酸素や水分があると、作成された有機EL表示装置の発光効率や寿命が低下する恐れがある。特に、加熱工程においては、酸素や水分の影響が大きいため、注意が必要である。好ましい酸素濃度は、0.1ppm以上100ppm以下が好ましく、50ppm以下であればより好ましい。100ppmより多い酸素があると、形成した薄膜の界面が汚染され、得られた有機EL表示装置の発光効率や寿命が低下する恐れがある。また、0.1ppm未満の酸素濃度の場合、素子の特性は問題ないが、現状の量産のプロセスとして、雰囲気を0.1ppm未満に保持するための装置コストが多大になる可能性がある。
また、水分については、露点が例えば−80℃以上−40℃以下であることが好ましい。更に、−50℃以下であればより好ましく、−60℃以下であれば更に好ましい。−40℃より高い水分があると、形成した薄膜の界面が汚染され、得られた有機EL表示装置の発光効率や寿命が低下する恐れがある。また、−80℃未満の水分の場合、素子の特性は問題ないが、現状の量産のプロセスとして、雰囲気を−80℃未満に保持するための装置コストが多大になる可能性がある。
【0109】
加熱温度は、材料の特性にもよるが、100℃〜230℃が好ましく、さらに好ましくは100℃〜200℃である。少なくとも、正孔注入層16AR,16AG,16AB形成時の温度よりも低いことが好ましい。また低分子材料のTgを超えすぎた温度で加熱しつづけると、特性が大きく低下する恐れがある。時間は、温度、雰囲気にもよるが、5分〜300分程度が好ましく、さらに好ましくは、10分〜240分である。乾燥後の膜厚みは、素子の全体構成にもよるが、10nm〜200nmが好ましい。さらに、15nm
〜150nmであればより好ましい。
【0110】
(工程の順序について)
赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gの正孔輸送層16BR,16BGを形成する工程と、青色有機EL素子10Bの正孔輸送層16BBを形成する工程と、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGを形成する工程とは、いずれの順番で行ってもよいが、少なくとも、形成する層を展開する下地が先に形成されており、加熱乾燥各工程の加熱工程を経ていることが必要である。また、加熱工程時の温度が、前工程よりも少なくとも同等もしくは低い温度で行うように、塗布する必要がある。例えば、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGの加熱温度が、130℃であり、青色有機EL素子10B用の正孔輸送層16BBの加熱温度が同じ130℃である場合、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGの塗布を行い、乾燥せずに、続けて、青色有機EL素子10B用の正孔輸送層16BBの塗布をした後、赤色発光層16CR,緑色発光層16CGおよび青色有機EL素子10B用の正孔輸送層16BBの乾燥、加熱工程を行ってもよい。
また、上記各工程において、乾燥と加熱とは別個の工程として分けて行うことが好ましい。理由として、乾燥工程では、塗布したウエット膜が、非常に流動しやすいために、膜ムラが起きやすいからである。好ましい乾燥工程は、常圧で均一に真空乾燥する方法であり、さらに、乾燥中に風などをあてずに乾燥させることが望ましい。加熱工程では、ある程度、溶媒が飛んで流動性が低下し、硬化した膜になっており、そこからゆっくりと、熱をかけることにより、微量に残存している溶媒を取り除いたり、発光材料や正孔輸送層の材料を分子レベルで再配列を起こさせることが可能となる。
【0111】
(青色発光層16CBを形成する工程)
青色有機EL素子10B用の正孔輸送層16BBおよび赤色発光層16CR,緑色発光層16CGまで形成したのち、第1の実施の形態と同様にして、
図17(C)に示したように、蒸着法により、赤色発光層16CR,緑色発光層16CGおよび青色有機EL素子10B用の正孔輸送層16BBの全面に、上述した低分子材料よりなる青色発光層16CBを共通層として形成する(ステップS209)。
【0112】
(電子輸送層
16E,電子注入層
16Fおよび上部電極17を形成する工程)
青色発光層16CBを形成したのち、第1の実施の形態と同様にして、
図18(A),
図18(B)および
図18(C)に示したように、この青色発光層16CBの全面に、蒸着法により、上述した材料よりなる電子輸送層16E,電子注入層16Fおよび上部電極17を形成する(ステップS210,S211,S212)。
【0113】
上部電極17を形成したのち、第1の実施の形態と同様にして、
図3に示したように、保護層20を形成する。また、第1の実施の形態と同様にして、上述した材料よりなる封止用基板40に、遮光膜,赤色フィルタ(図示せず),青色フィルタ(図示せず)および緑色フィルタ(図示せず)を順次形成する。
【0114】
そののち、保護層20の上に、接着層(図示せず)を形成し、この接着層を間にして、封止用基板40を貼り合わせる。以上により、
図1ないし
図3に示した表示装置が完成する。
【0115】
この有機EL表示装置では、各画素に対して第1の実施の形態と同様にして駆動制御がなされることにより、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bに駆動電流Idが注入され、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、下面発光(ボトムエミッション)の場合には下部電極14および基板11を透過して、上面発光(トップエミッション)の場合には上部電極17,カラーフィルタ(図示せず)および封止用基板40を透過して取り出される。
【0116】
その際、赤色有機EL素子10Rでは、赤色発光層16CRと青色発光層16CBとが設けられているが、最もエネルギー準位の低い赤色にエネルギー移動が起こり、赤色発光が支配的となる。緑色有機EL素子10Gでは、緑色発光層16CGと青色発光層16CBとが設けられているが、よりエネルギー準位の低い緑色にエネルギー移動が起こり、緑色発光が支配的となる。青色有機EL素子10Bでは、青色発光層16CBのみを有するので、青色発光が生じる。ここでは、青色有機EL素子10B用の正孔輸送層16BBが低分子材料により構成されているので、低分子材料よりなる青色発光層16CBとの界面状態が改善され、青色の発光効率および寿命が向上する。
【0117】
このように本実施の形態では、青色有機EL素子10Bの正孔注入層16ABの上に低分子材料よりなる正孔輸送層16BBを塗布法により形成するようにしたので、第1の実施の形態の効果に加えて、低分子材料よりなる青色発光層16CBとの界面状態を改善し、青色の発光効率および寿命を向上させることが可能になる。よって、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gおよび青色有機EL素子10Bを配列形成してなるカラー有機EL表示装置のさらなる高発光効率化、長寿命化が可能になる。また、蒸着時のパターニングの困難さを解消し、かつ印刷プロセスによる低コスト化を実現することが可能となる。
【0118】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態は、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGが低分子材料を含むようにしたことを除いては、上記第2の実施の形態と同様の構成を有している。
【0119】
赤色発光層16CR,緑色発光層16CGは高分子(発光)材料に低分子材料が添加された混合材料により構成されている。これにより本実施の形態では、共通層である青色発光層16CBから赤色発光層16CRまたは緑色発光層16CGへの正孔および電子の注入効率を向上させることが可能となっている。ここで低分子材料とは、モノマーまたはこのモノマーを2〜10個結合したオリゴマーとし、5万以下の重量平均分子量を有するものが好ましい。なお、重量平均分子量が上記範囲を超えた低分子材料を必ずしも除外するものではない。
【0120】
赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGは、例えばインクジェット等の塗付法により形成する。その際、高分子材料および低分子材料を例えばトルエン、キシレン、アニソール、シクロヘキサノン、メシチレン(1,3,5−トリメチルベンゼン)、ブサイドクメン( 1,2,4−トリメチルベンゼン) 、ジハイドロベンゾフラン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、1−メチルナフタレン、p−アニシルアルコール、ジメチルナフタレン、3-メチルビフェニル、4−メチルビフェニル、3−イソプロピルビフェニル、モノイソプロピルナフタレンなどの有機溶媒に少なくとも1種類以上使って溶解し、この混合溶液を用いて形成する。
【0121】
赤色発光層16CR,緑色発光層16CGを構成する高分子材料としては、例えばポリフルオレン系高分子誘導体や、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、あるいは上記高分子に有機EL材料をドープしたものが挙げられる。ドープ材料としては、例えばルブレン、ペリレン、9,10ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6等を用いることができる。
【0122】
以下、赤色発光層16CR,緑色発光層16CGを構成する高分子材料に低分子材料を添加することにより、共通層である青色発光層16CBから赤色発光層16CRまたは緑色発光層16CGへの正孔および電子の注入効率が向上する原理について説明する。
【0123】
第1および第2の実施の形態では、高分子材料のみから構成される赤色発光層16CR,緑色発光層16CGの上部に共通層として低分子材料からなる青色発光層16CBを形成しており、赤色発光層16CR,緑色発光層16CGのエネルギー準位と、青色発光層16CBのエネルギー準位との差は大きい。このため、青色発光層16CBと赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CG各々との間の正孔または電子の注入効率は非常に低く、本来の高分子材料からなる発光層が有する特性を十分に得ることができないおそれがあった。本実施の形態では、この正孔または電子の注入特性を向上させるために、赤色発光層16CR,緑色発光層16CGが有するエネルギー準位と、青色発光層16CBが有するエネルギー準位との差を小さくする低分子材料(モノマーまたはオリゴマー)を赤色発光層16CR,緑色発光層
16CGに添加するものである。ここでは、赤色発光層16CR,緑色発光層16CRの最高占有分子軌道(HOMO)準位および最低非占有分子軌道(LUMO)準位と、青色発光層16CBのHOMO(最高占有分子軌道)準位および最低非占有分子軌道(LUMO)準位と赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGに添加する低分子材料のHOMO(最高占有分子軌道)準位および最低非占有分子軌道(LUMO)準位との関係を考慮する。具体的な添加する低分子材料としては、赤色発光層16CRまたは緑色発光層16CGのそれぞれのLUMOより低い値を有すると共に、青色発光層のLUMOより高い値を有し、かつ、赤色発光層16CRまたは緑色発光層16CGのそれぞれのHOMOより高い値を有すると共に、青色発光層のHOMOより低い値を有する化合物を選択する。
【0124】
また、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGに添加する低分子材料は、低分子化合物が同じ反応または類似の反応を連鎖的に繰り返すことにより生じた高分子量の重合体または縮合体の分子からなる化合物以外のものであって、分子量が実質的に単一であるものを指す。また加熱による分子間の新たな化学結合は生じず、単分子で存在する。このような低分子材料の重量平均分子量(Mw)は5万以下であることが好ましい。これは分子量の大きい、例えば5万以上の材料に比べてある程度小さい分子量の材料のほうが多様な特性を有し、正孔または電子の移動度やバンドギャップあるいは溶媒への溶解度などを調整しやすいためである。また、低分子材料の添加量は、赤色発光層16CRまたは緑色発光層16CGに用いられる高分子材料:低分子材料の混合比率が、その重量比で10:1以上1:2以下になるようにすることが好ましい。高分子材料:低分子材料の混合比率
が10:1未満では、低分子材料の添加による効果が低くなるためである。また、この混合比率が1:2を超える場合には、発光材料としての高分子材料が有する特性が得られにくくなるためである。
【0125】
このような低分子材料としては、例えば、ベンジン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、テトラシアノキノジメタン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキザゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベンあるいはこれらの誘導体、または、ポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマーあるいはオリゴマーを用いることができる。
【0126】
さらに具体的な材料としては、α−ナフチルフェニルフェニレンジアミン、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリン、金属ナフタロシアニン、ヘキサシアノアザトリフェニレン、7, 7, 8, 8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、7, 7, 8, 8−テトラシアノ−2,3,5,6- テトラフルオロキノジメタン(F4−TCNQ)、テトラシアノ4、4、4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、N、N、N’、N’−テトラキス(p−トリル)p−フェニレンジアミン、N、N、N’、N’−テトラフェニル−4、4’−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾール、4−ジ−p−トリルアミノスチルベン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリ(2、2’−チエニルピロール)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0127】
なお、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGに添加する低分子材料は1種類だけでなく、複数種類を混合して用いてもよい。
【0128】
この有機EL表示装置は、例えば、第2の実施の形態と同様にして製造することができる。
【0129】
この有機EL表示装置では、各画素に対して第1の実施の形態と同様にして駆動制御が行われることにより、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bに駆動電流Idが注入され、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、下面発光(ボトムエミッション)の場合には下部電極14および基板11を透過して、上面発光(トップエミッション)の場合には上部電極17,カラーフィルタ(図示せず)および封止用基板40を透過して取り出される。
【0130】
その際、赤色有機EL素子10Rでは、赤色発光層16CRと青色発光層16CBとが設けられているが、最もエネルギー準位の低い赤色にエネルギー移動が起こり、赤色発光が支配的となる。緑色有機EL素子10Gでは、緑色発光層16CGと青色発光層16CBとが設けられているが、よりエネルギー準位の低い緑色にエネルギー移動が起こり、緑色発光が支配的となる。青色有機EL素子10Bでは、青色発光層16CBのみを有するので、青色発光が生じる。前述のように第1および第2の実施の形態では、青色発光層16CBから赤色発光層16CRまたは緑色発光層16CGへの正孔または電子の注入効率が低く、高分子材料からなる赤色発光層16CRまたは緑色発光層16CGが有する本来の特性が発揮されていなかった。
【0131】
ここでは、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGを、高分子材料に低分子材料を添加した構成としているので、低分子材料からなる青色発光層16CBとのエネルギー準位の差が小さくなる。これにより青色発光層16CBから赤色発光層16CRまたは緑色発光層16CGへの正孔または電子の注入効率が改善され、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGが有する素子特性に近い値を実際に得ることが可能となる。
【0132】
このように本実施の形態では、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGを、高分子材料および低分子材料の混合材料を用いて塗布法により形成するようにしたので、第1の実施の形態の効果に加えて、青色発光層16CBから赤色発光層16CRまたは緑色発光層16CGへの正孔または電子の移動効率が改善され、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGが有する素子特性に近い値が得られる。すなわち、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gおよび青色有機EL素子10Bを配列形成してなるカラー有機EL表示装置のさらなる高発光効率化、長寿命化が可能になる。
【0133】
(第4の実施の形態)
図19は、本発明の第4の実施の形態に係る有機EL表示装置1Aの表示領域110の断面構成を表したものである。この有機EL表示装置1Aは、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGおよび青色有機EL素子10B用の正孔輸送層16BBの全面と、青色発光層16CBとの間に、低分子材料からなる共通正孔輸送層16Dを有している。このことを除いては、この有機EL表示装置1Aは上記第3の実施の形態と同様の構成を有している。
【0134】
赤色有機EL素子10Rの有機層16は、例えば、下部電極14の側から順に、正孔注入層16AR,正孔輸送層16BR,赤色発光層16CR,共通正孔輸送層(第2正孔注入・輸送層)16D,青色発光層16CB,電子輸送層16Eおよび電子注入層16Fを積層した構成を有する。緑色有機EL素子10Gの有機層16は、例えば、下部電極14の側から順に、正孔注入層16AG,正孔輸送層16BG,緑色発光層16CG,共通正孔輸送層16D,青色発光層16CB,電子輸送層16Eおよび電子注入層16Fを積層した構成を有する。青色有機EL素子10Bの有機層16は、例えば、下部電極14の側から順に、正孔注入層16AB,正孔輸送層16BB,共通正孔輸送層16D,青色発光層16CB,電子輸送層
16Eおよび電子注入層
16Fを積層した構成を有する。これらのうち共通正孔輸送層16D,青色発光層16CB,電子輸送層16Eおよび電子注入層16Fは、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの共通層として設けられている。
【0135】
赤色発光層16CR,緑色発光層16CGは、第3の実施の形態と同様に、高分子(発光)材料に低分子材料が添加された混合材料により構成されている。
【0136】
青色有機EL素子10Bの正孔輸送層16BBは、低分子材料(モノマーおよびオリゴマー)または高分子材料のいずれでもよい。ここで用いる低分子材料のうちモノマーは赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGに添加する低分子材料と同様の低分子化合物の重合体または縮合体等の化合物以外のものであって、分子量が単一であるものであり、単分子で存在するものである。また、オリゴマーはモノマーが複数個結合したものであり、重量平均分子量(Mw)は5万以下のものを指す。更に高分子材料は正孔輸送層16BR,16BGに用いられる高分子材料と同様に、重量平均分子量が5万〜30万の範囲であればよく、と特に10万〜20万程度が好ましい。なお、正孔輸送層16BBに用いる低分子材料および高分子材料は分子量および重量平均分子量の異なる2種以上の材料を混合して用いてもよい。
【0137】
共通正孔輸送層16Dは、青色発光層16CBへの正孔の注入効率を向上させるものであり、赤色発光層16CR,緑色発光層16CGおよび青色有機EL素子10B用の正孔輸送層16BBの全面に共通層として設けられている。共通正孔輸送層16Dの厚みは、素子の全体構成にもよるが、例えば1nm〜20nmであることが好ましく、さらに好ましくは1nm〜10nmである。
【0138】
共通正孔輸送層16Dは蒸着法を用いて形成するため、低分子材料、特にモノマーを用いることが好ましい。オリゴマーまたは高分子材料のような重合された分子は蒸着中分解が起こる虞があるためである。なお、共通正孔輸送層16Dに用いる低分子材料は分子量の異なる2種以上の材料を混合して用いてもよい。
【0139】
共通正孔輸送層16Dに用いられる低分子材料としては、第3の実施の形態の赤色発光層16CR、緑色発光層16CGおよび青色正孔輸送層16CBにおいて説明した低分子材料と同様に、例えば、ベンジン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、テトラシアノキノジメタン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキザゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベンあるいはこれらの誘導体、または、ポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマー、オリゴマーまたはポリマーを用いることができる。
【0140】
さらに具体的な材料としては、α−ナフチルフェニルフェニレンジアミン、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリン、金属ナフタロシアニン、ヘキサシアノアザトリフェニレン、7, 7, 8, 8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、7, 7, 8, 8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(F4−TCNQ)、テトラシアノ4、4、4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、N、N、N’、N’−テトラキス(p−トリル)p−フェニレンジアミン、N、N、N’、N’−テトラフェニル−4、4’−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾール、4−ジ−p−トリルアミノスチルベン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリ(2、2’−チエニルピロール)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0141】
この有機EL表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。
【0142】
図20は、この有機EL表示装置の製造方法の流れを表したものであり、
図21ないし
図23は
図20に示した製造方法を工程順に表したものである。
【0143】
(下部電極14を形成する工程)
まず、第1の実施の形態と同様にして、
図21(A)に示したように、画素駆動回路140および平坦化絶縁膜を形成した基板11の上に下部電極14を形成する(ステップS301)。
【0144】
(隔壁15を形成する工程)
次いで、第1の実施の形態と同様にして、同じく
図21(A)に示したように、下部隔壁15Aおよび上部隔壁15Bよりなる隔壁15を形成する(ステップS302)。
【0145】
(撥水化処理を行う工程)
続いて、第1の実施の形態と同様にして、基板11の下部電極14および隔壁15を形成した側の表面に対して、酸素プラズマ処理を行ったのち、撥水化処理(撥液化処理)を行う(ステップS303)ことにより、特に上部隔壁15Bの上面及び側面の濡れ性を低下させる。
【0146】
(正孔注入層16AR,16AG,16ABを形成する工程)
そののち、第1の実施の形態と同様にして、
図21(B)に示したように、上部隔壁15Bに囲まれた領域内に、上述した材料よりなる正孔注入層16AR,16AG,16ABを形成する(ステップS304)。
【0147】
(正孔輸送層16BR,16BGを形成する工程)
正孔注入層16AR,16AG,16ABを形成したのち、第1の実施の形態と同様にして、
図21(C)に示したように、正孔注入層16AR,16AGの上に、上述した高分子材料よりなる正孔輸送層16BR,16BGを赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gの各々ごとに形成する(ステップS305)。
【0148】
ここでは、赤色有機EL素子10および緑色有機EL素子10Gの各々が、少なくとも対向する2辺で同一画素10内または隣接画素10内の青色有機EL素子10Bと隣接しているので、第1の実施の形態と同様に、青色有機EL素子10Bに隣接している辺では、塗布液の乾燥速度の不均一が抑えられ、乾燥後の正孔輸送層16BR,16BGの膜厚の片寄りが低減されている。よって、正孔輸送層16BR,16BGの膜厚の均一性または対称性が向上する。
【0149】
(赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGを形成する工程)
正孔輸送層
16BR,16BGを形成したのち、第1の実施の形態と同様にして、
図22(A)に示したように、赤色有機EL素子10Rの正孔輸送層16BRの上に上述した高分子材料よりなる赤色発光層16CRを形成する。また、緑色有機EL素子10Gの正孔輸送層16BGの上に上述した高分子よりなる緑色発光層16CGを形成する(ステップS306)。
【0150】
ここでもまた、赤色有機EL素子10および緑色有機EL素子10Gの各々が、少なくとも対向する2辺で同一画素10内または隣接画素10内の青色有機EL素子10Bと隣接しているので、第1の実施の形態と同様に、青色有機EL素子10Bに隣接している辺では、塗布液の乾燥速度の不均一が抑えられ、乾燥後の赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGの膜厚の片寄りが低減されている。よって、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGの膜厚の均一性または対称性が向上する。
【0151】
(青色有機EL素子10Bの正孔輸送層16BBを形成する工程)
赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGを形成したのち、第3の実施の形態と同様に、
図22(B)に示したように、青色有機発光素子10B用の正孔注入層16ABの上に、上述した材料よりなる正孔輸送層16BBを形成する(ステップS307)。
【0152】
(工程の順序について)
赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gの正孔輸送層16BR,16BGを形成する工程と、青色有機EL素子10Bの正孔輸送層16BBを形成する工程と、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGを形成する工程との順序については、第2の実施の形態と同様である。
【0153】
(共通正孔輸送層16Dを形成する工程)
青色有機EL素子10B用の正孔輸送層16BBおよび赤色発光層16CR,緑色発光層16CGまで形成したのち、
図22(C)に示したように、蒸着法により、赤色発光層16CR,緑色発光層16CGおよび青色有機EL素子10B用の正孔輸送層16BBの全面に、上述した低分子材料よりなる共通正孔輸送層16Dを共通層として形成する(ステップS308)。
【0154】
(青色発光層16CBを形成する工程)
共通正孔輸送層16Dを形成したのち、
図22(D)に示したように、蒸着法により、共通正孔輸送層16Dの全面に、上述した低分子材料よりなる青色発光層16CBを共通層として形成する(ステップS309)。
【0155】
(電子輸送層
16E,電子注入層
16Fおよび上部電極17を形成する工程)
青色発光層16CBを形成したのち、第1の実施の形態と同様にして、
図23(A),
図23(B)および
図23(C)に示したように、この青色発光層16CBの全面に、蒸着法により、上述した材料よりなる電子輸送層16E,電子注入層16Fおよび上部電極17を形成する(ステップS310,S311,S312)。
【0156】
上部電極17を形成したのち、第1の実施の形態と同様にして、
図3に示したように、保護層20を形成する。このとき、共通正孔輸送層16D,青色発光層16CB,電子輸送層16E,電子注入層16F,上部電極17および保護層20は、マスクを用いることなく全面にベタ膜として形成される。また、共通正孔輸送層16D,青色発光層16CB,電子輸送層16E,電子注入層16F,上部電極17および保護層20の形成は、望ましくは、大気に暴露されることなく同一の成膜装置内において連続して行われる。これにより大気中の水分による有機層16の劣化が防止される。
【0157】
保護層20を形成したのち、第1の実施の形態と同様にして、上述した材料よりなる封止用基板40に、遮光膜,赤色フィルタ(図示せず),青色フィルタ(図示せず)および緑色フィルタ(図示せず)を順次形成する。
【0158】
そののち、保護層20の上に、接着層(図示せず)を形成し、この接着層を間にして、封止用基板40を貼り合わせる。以上により、
図1ないし
図3に示した表示装置が完成する。
【0159】
この有機EL表示装置1Aでは、各画素に対して第1の実施の形態と同様の駆動制御がなされることにより、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bに駆動電流Idが注入され、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、下面発光(ボトムエミッション)の場合には下部電極14および基板11を透過して、上面発光(トップエミッション)の場合には上部電極17,カラーフィルタ(図示せず)および封止用基板40を透過して取り出される。
【0160】
その際、第2または第3の実施の形態のように塗布法によって形成された青色正孔輸送層16BB上に直接青色発光層16CBを設けた場合には、以下の理由により青色発光層16CBの本来の特性が発揮されないおそれがあった。まず、第1の理由としては塗付法による青色正孔輸送層16BBの形成時に混入する水分や残存溶媒等による正孔注入性の低下が挙げられる。第2の理由としては、青色正孔輸送層16BBは大気環境下で形成されるため界面汚染等による劣化が挙げられる。
【0161】
本実施の形態の有機EL表示装置では、青色正孔輸送層16BB上に低分子材料からなる共通正孔輸送層16Dを蒸着法により形成するようにしたので、大気中の水分などの混入が抑制され、青色発光層16CBとの界面が改善される。これにより、青色発光層16CBへの正孔注入効率が改善され、青色発光層16CBの本体の特性に近い値を得ることが可能となる。
【0162】
なお、共通正孔輸送層16Dは蒸着法によって形成するため、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CG上にも共通正孔輸送層16Dが形成される。これにより赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGと、青色発光層16CBとは共通正孔輸送層16Dを介して積層されることとなる。共通正孔輸送層16Dは、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CG上では通常は電子ブロック性を示すため、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGへの電子注入性は悪化する。また、第1または第2の実施の形態のように、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGが高分子材料のみから構成されている場合には、低分子材料からなる共通正孔輸送層16Dとのエネルギーレベルの差が大きいため正孔輸送性能が低下するおそれがあった。そのため、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGへ注入される電子および正孔が不足し、駆動電圧が増大したり、発光効率が低下したりする可能性があった。また、正孔および電子の注入が適切に行われないため、赤色有機EL素子10Rまたは緑色有機EL素子10Gを発光させた際に、430〜500nmにピークを持つ青色の発光を伴うおそれがあった。即ち、赤色光または緑色光に青色光が混色することによって赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gの色度が変化してしまう。これは、ディスプレイを構成する表示素子としては大きな問題となる可能性があった。
【0163】
これに対して、本実施の形態では、第3の実施の形態と同様に、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGを、高分子材料に低分子材料を添加した混合材料により形成しているので、エネルギーレベルの差が小さくなり、正孔輸送性能が改善されると共に適宜調整することが可能となる。また、共通正孔輸送層16Dは、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGに添加した低分子材料と同系統の材料により形成されているため、各層のエネルギーレベル等の差を小さくする。更に、共通正孔輸送層16Dは、青色発光層16CBを形成する材料とも同系統の材料で形成されているため、青色発光層16CBを介して赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGへ注入される電子の輸送性能も優れている。従って、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGと共通正孔輸送層16Dとの間の正孔輸送性および電子輸送性の障壁が軽減され、上述した駆動電圧および発光効率の問題が解決される。また、赤色有機EL素子10Rまたは緑色有機EL素子10Gを発光させた際の青色の発光が抑えられるため、赤色発光素子10Rおよび緑色発光素子10Gの色度変化が抑制される。即ち、表示素子として用いることが可能な赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gを提供することが可能となる。
【0164】
このように本実施の形態では、青色正孔輸送層16BBおよび赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CB上の全面に低分子材料からなる共通正孔輸送層16Dを蒸着法により形成するようにしたので、第1ないし第3の実施の形態の効果に加えて、青色発光層16CBの界面が改善される。これにより、青色発光層16CBへの正孔の注入効率が改善され、青色発光層16CBの本体の特性に近い値を得ることが可能となる。すなわち、青色有機EL素子10Bの発光効率および寿命特性が向上するため、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gおよび青色有機EL素子10Bを配列形成してなるカラー有機EL表示装置のさらなる高発光効率化、長寿命化が可能になる。
【0165】
また、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGへ低分子材料を添加することにより、正孔および電子のキャリアバランスを調整することがより簡易になる。これにより、共通正孔輸送層16Dと青色発光層16CBおよび電子輸送層16Eを形成することによって起こる、赤色発光層16CRおよび緑色発光層16CGへの電子注入性の低下および正孔輸送性の低下を抑制することが可能となる。即ち、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gの発光効率および寿命の低下、駆動電圧の上昇および発光色度の変化を抑えることが可能となる。
【0166】
(第5の実施の形態)
図24は本発明の第5の実施の形態における有機EL表示装置1Bの表示領域の断面構成を表したものである。この有機EL表示装置
1Bは、青色有機EL素子10Bの正孔輸送層16BBを設けず、正孔注入層16AB上に共通正孔輸送層16Dを直接設けたことを除いては、第4の実施の形態と同様の構成を有している。
【0167】
赤色有機EL素子10Rの有機層16は、例えば、第
4の実施の形態における赤色有機EL素子10Rと同様に下部電極14の側から順に、正孔注入層16AR,正孔輸送層16BR,赤色発光層16CR,共通正孔輸送層(第2正孔注入・輸送層)16D,青色発光層16CB,電子輸送層16Eおよび電子注入層16Fを積層した構成を有する。緑色有機EL素子10Gの有機層16は、例えば、第
4の実施の形態における緑色有機EL素子10Gと同様に下部電極14の側から順に、正孔注入層16AG,正孔輸送層16BG,緑色発光層16CG,共通正孔輸送層16D,青色発光層16CB,電子輸送層16Eおよび電子注入層16Fを積層した構成を有する。青色有機EL素子10Bの有機層16は、例えば、下部電極14の側から順に、正孔注入層16AB,共通正孔輸送層16D,青色発光層16CB,電子輸送層16Eおよび電子注入層16Fを積層した構成を有し、青色の正孔輸送層がない点が第4の実施の形態と異なる。これらのうち共通正孔輸送層16D,青色発光層16CB,電子輸送層16Eおよび電子注入層16Fは、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの共通層として設けられている。
【0168】
本実施の形態の有機EL装置では第4の実施の形態の効果に加えて、更に青色有機EL素子10Bの寿命特性を向上させることができる。また、青色有機EL素子10Bの正孔注入層16AB上に直接共通正孔輸送層16Dを設けることにより、製造工程数が削減されると共に、コストを抑えることも可能となる。
【0169】
(モジュールおよび適用例)
以下、上記実施の形態で説明した有機EL表示装置の適用例について説明する。上記実施の形態の有機EL表示装置は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0170】
(モジュール)
上記実施の形態の有機EL表示装置は、例えば、
図25に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板11の一辺に、保護層30および封止用基板40から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、信号線駆動回路120および走査線駆動回路130の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0171】
(適用例1)
図26は、上記実施の形態の有機EL表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記実施の形態に係る有機EL表示装置により構成されている。
【0172】
(適用例2)
図27は、上記実施の形態の有機EL表示装置が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上記実施の形態に係る有機EL表示装置により構成されている。
【0173】
(適用例3)
図28は、上記実施の形態の有機EL表示装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上記実施の形態に係る有機EL表示装置により構成されている。
【0174】
(適用例4)
図29は、上記実施の形態の有機EL表示装置が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上記実施の形態に係る有機EL表示装置により構成されている。
【0175】
(適用例5)
図30は、上記実施の形態の有機EL表示装置が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記実施の形態に係る有機EL表示装置により構成されている。
【0176】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。
【0177】
例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
【0178】
また、上記実施の形態では、有機EL素子10R,10G,10Bの構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。
【0179】
更に、上記実施の形態では、青色以外の有機EL素子(第2有機EL素子)として赤色および緑色の有機EL素子を備えた3原色表示の表示装置について説明したが、第2有機EL素子は、赤色有機EL素子、緑色有機EL素子、黄色有機EL素子または白色有機EL素子のうちの少なくとも1色、好ましくは少なくとも2色である。例えば、本発明は青色有機EL素子と黄色有機EL素子からなる2原色表示の表示装置への適用も可能である。
【0180】
加えて、本発明は、第2有機EL素子として、赤色有機EL素子および緑色有機EL素子と共に、黄色または白色の有機EL素子を備えた4原色表示の場合にも適用可能である。この場合、
図31に示したように、赤色有機EL素子810R,青色有機EL素子810B,緑色有機EL素子810Gおよび黄色有機EL素子810Yを順に配列した場合には、緑色有機EL素子810Gの左側と、赤色有機EL素子810Rの右側とにおいて乾燥速度が速くなり膜厚が厚めになる。
【0181】
そこで、例えば
図32ないし
図34に示したように、矩形(例えば正方形)の赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gおよび黄色有機EL素子10Yを各画素10の三つの角に配置し、青色有機EL素子10Bを残りの一つの角に配置する。このようにすれば、例えば
図32に示した第1例では、緑色有機EL素子10Gの各々は、左右の二辺で同一画素10内または隣接画素10内の青色有機EL素子10Bと隣接している。よって、緑色有機EL素子10Gの左右辺では、塗布液の乾燥速度の不均一が抑えられ、乾燥後の緑色発光層16CGの膜厚の片寄りが低減され、左右方向での膜厚分布の均一性または対称性が良くなる。また、赤色有機EL素子10Rの各々は、上下の二辺で同一画素10内または隣接画素10内の青色有機EL素子10Bと隣接している。よって、赤色有機EL素子10Rの上下辺では、塗布液の乾燥速度の不均一が抑えられ、乾燥後の赤色発光層16CRの膜厚の片寄りが低減され、上下方向での膜厚分布の均一性または対称性が良くなる。
【0182】
図33に示した第2例では、黄色有機EL素子10Yの各々は、左右の二辺で同一画素10内または隣接画素10内の青色有機EL素子10Bと隣接している。よって、黄色有機EL素子10Yの左右辺では、塗布液の乾燥速度の不均一が抑えられ、乾燥後の黄色発光層の膜厚の片寄りが低減され、左右方向での膜厚分布の均一性または対称性が良くなる。赤色有機EL素子10Rについては第1例と同様である。
【0183】
図34に示した第3例では、赤色有機EL素子10Rの各々は、左右の二辺で同一画素10内または隣接画素10内の青色有機EL素子10Bと隣接している。よって、赤色有機EL素子10Rの左右辺では、塗布液の乾燥速度の不均一が抑えられ、乾燥後の赤色発光層16CGの膜厚の片寄りが低減され、左右方向での膜厚分布の均一性または対称性が良くなる。また、緑色有機EL素子10Gの各々は、上下の二辺で同一画素10内または隣接画素10内の青色有機EL素子10Bと隣接している。よって、緑色有機EL素子10Gの上下辺では、塗布液の乾燥速度の不均一が抑えられ、乾燥後の緑色発光層16CGの膜厚の片寄りが低減され、上下方向での膜厚分布の均一性または対称性が良くなる。
【0184】
あるいは、
図35に第4例として示したように、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gおよび黄色有機EL素子10Yは、一方向に配列されていてもよい。赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gおよび黄色有機EL素子10Yの各々は、上下の二辺で同一画素10内または隣接画素10内の青色有機EL素子10Bと隣接している。この場合、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gおよび黄色有機EL素子10Yの上下の二辺では、塗布液の乾燥速度の不均一が抑えられ、乾燥後の赤色発光層16CR,緑色発光層16CGおよび黄色発光層の膜厚の片寄りが低減され、上下方向での膜厚分布の均一性または対称性が良くなる。この第4例は、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gおよび黄色有機EL素子10Yが同一形状(同一面積)になるので、より好ましい。更に、
図36に示した第5例のように、青色有機EL素子10Bの短辺を短くする一方、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gおよび黄色有機EL素子10Yの長辺を長くして、開口率を調整することも可能である。
【0185】
なお、
図32ないし
図36は、黄色有機EL素子10Yを白色有機EL素子に代えた場合にも同様にあてはまる。
【0186】
更にまた、上記実施の形態では、アクティブマトリクス型の表示装置の場合について説明したが、本発明はパッシブマトリクス型の表示装置への適用も可能である。更にまた、アクティブマトリクス駆動のための画素駆動回路の構成は、上記実施の形態で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを追加してもよい。その場合、画素駆動回路の変更に応じて、上述した信号線駆動回路120や走査線駆動回路130のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。