(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
導体を形成するのに適する金属インクは、金属ナノ粒子、導電性ポリマー、および、水、有機溶媒、またはこれらの組合せ等の担体系を用いて配合することができる。ナノ粒子は、例えば、銅、銀、ニッケル、鉄、コバルト、アルミニウム、パラジウム、金、スズ、亜鉛、カドミウムなど、または、これらの任意の組合せであり得る。ナノ粒子は、直径が約0.1μm(100nm)以下であり得る。金属ナノ粉末から安定な分散液を形成する工程は、粉末を湿潤させる工程、その粉末中の凝塊を壊す(再分散)工程、およびその分散した粒子を安定化させて凝集を防ぐ工程を含み得る。いくつかの場合には、分散剤または界面活性剤を、粉末の再分散を促進するために添加することができる。いくつかの場合には、プロセスの1工程で最良の性能を提供する分散剤が、別の工程では最良の性能を提供することができない。それ故、2種以上の分散剤または界面活性剤を組み込むことが有益であり得る。
【0012】
通常の分散剤の絶縁性の残留物とは異なり、導電性ポリマー等の導電性有機化合物は、金属導体において絶縁性の欠陥として作用することはなく、むしろ、金属導体(R1)との並列連続レジスタ(R2)として作用し得る。導電性ポリマーの抵抗率(ρ2)は、0.001Ω・cmの低さであり得る。これと比較して、金属導体の抵抗率(ρ1)は、10
-6Ω・cmの周辺であり得る。合計の抵抗(R)は、
【0016】
であり、S1およびS2は、それぞれ、導電性ポリマーおよび融合したナノ粒子の断面積である。S2/S1の比は、0.1より小さい。それ故、R≦R1であり、合計の抵抗は、金属導体のそれより小さいが、著しく小さくはないことを意味する。それ故、残留した導電性ポリマーは、非導電性分散剤からの絶縁性残留物ほど大きく抵抗率を上げることはあり得ない。この導電性ポリマーが、金属ナノ粒子のための分散剤でもある場合、得られる金属皮膜の抵抗率が、残留した非導電性分散剤からの追加の汚染が少なくとも部分的に制限されるかまたは汚染がないことに起因して、著しく低下し得る。場合によっては、金属インクを硬化させて、全部がバルクの金属導体自体に近い抵抗率を有する導電性金属皮膜を得ることができる。
【0017】
立体安定化、静電的安定化、またはこれらの組合せを用いて、貯蔵および付着の際に安定に維持される分散液を調製することができ、これによって、均一でばらつきのないコーティングが得られる。金属ナノ粒子の立体安定化は、非イオン性分散剤またはポリマーを用いて達成することができる。立体構造の寄与としては、金属ナノ粒子の表面とポリマーまたは長鎖有機分子の官能基との間の相互作用が挙げられ、これによって、金属粒子間の直接的接触(例えば、凝集体および凝塊の形成)が起こる可能性がより低くなる。ポリマーまたは長鎖分子と溶媒または水との間の強い相互作用によって、ポリマーが接近し過ぎて互いと接触することが阻止され得る。静電的安定化は、帯電した(例えば、実質的に同等に帯電した)ナノ粒子が互いに反発するときに起こり、これによって、金属ナノ粒子が分離したままに維持し、互いに接触することを実質的に避けることが可能となる。帯電した金属ナノ粒子の静電的安定化は、イオン性分散剤またはポリマーを用いて達成することができる。高い親水性-親油性バランス(HLB)を有する分散剤は、水性分散液で使用することができ、低いHLBを有する分散剤は、非極性有機液体中の分散液で使用できる。
【0018】
ナノ粒子の分散性は、金属ナノ粒子の表面を帯電させることによっても高めることができる。金属ナノ粒子は、これらの表面に酸化物の層を有し得る。その酸化物の層は、例えば、約1nmから約20nmの厚さを有し得る。水の存在下で酸-塩基反応が起こり、表面に水酸化物の層が形成され得る。水酸化物の層は、プロトンを吸着するかまたは失って、正または負に帯電した表面を生じ得る。かくして、プロトンの獲得または損失による帯電、あるいは吸着した電荷による帯電は、良好な分散の達成に関与し得る。低いpHにおいて、水酸化物の表面は、プロトンと反応して正に帯電した表面を生ずることができる。対照的に、高いpHにおいては、プロトンが除去されて負に帯電した表面を生ずることができる。かくして、アニオン性分散剤およびカチオン性分散剤は、溶液または分散液のpHに依存した条件下で金属ナノ粒子の表面に吸着され得る。したがって、電荷補償のために逆帯電したポリ酸官能性を有する帯電した導電性ポリマーを使用して、水性インク中の金属ナノ粒子を有利に分散させることができる。
【0019】
アニオン性ポリマー分散剤、カチオン性ポリマー分散剤、またはこれらの組合せを使用して、水性媒体中の帯電した金属表面による静電気分散液を形成させることができる。無機粒子表面は、正と負の両方の部位を有していて不均一であり得るので、負および/または正に帯電したアンカー基を有する分散剤が有利であり得る。正に帯電したナノ粒子は、アニオン性およびカチオン性ポリマー鎖の両方を有する分散剤によって静電気分散液を形成することができる。
図1は、金属粒子104の分散のためのアニオン性ポリマー基100およびカチオン性ポリマー基102の両方の組合せを有する分散剤の実施形態を示す。場合によっては、金属表面は、不均一であり、正に帯電した部位と負に帯電した部位の両方を有し得る。分散剤中に存在するアニオン性基およびカチオン性基の両方により、分散剤は金属ナノ粒子上の様々な帯電域への親和性を有し、安定した分散が達成され得る。
【0020】
導電性ポリチオフェン、導電性ポリアニリン、金属フタロシアニン、および金属ポルフィリンを含むがこれらには限定されない導電性ポリマーを使用して、水性金属インクを調製することができる。
図2に示す3,4-ポリエチレンジオキシチオフェン-ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)は、水性金属インクを調製するために使用することができる導電性ポリマーの一例である。
図3に示す置換ポリチオフェン(PT)は、水性金属インクを調製するために使用することができる導電性ポリマーの別の例である。イオン性ポリチオフェン導電性ポリマーを使用して水性金属インクを調製する実施態様においては、正電荷がポリチオフェン網目中に位置し得る。別の実施態様においては、正の電荷が、例えばナトリウム等のカチオンとして、付加され得る。いずれの場合でも、その多機能構造によって、低濃度での使用により安定なナノ粒子の分散を達成することが可能になる。
【0021】
多数の結合部位を有する導電性ポリマーは、金属ナノ粒子を部分的に包囲し、それによってそれが凝集すること、または、凝塊になることを防ぐことができる。
図4は、ナノ粒子406上にヘッド基402およびテール基404を有するポリマー分散剤400の二重層を示している。そのナノ粒子406は、例えば銅であり得る。このようにポリマーがナノ粒子の複数部位に付着することにより、単一の部位によって付着するのみである分散剤を上回る熱力学的利点がもたらされる。ヘッド基402としては、例えば、アミン、カチオン性アルキルアンモニウム基、カルボン酸、スルホン酸、およびリン酸基、ならびに、カルボキシレート、スルホネート、およびホスフェートまたはホスホネート基を有するこれらの塩を挙げることができる。
【0022】
ナノ粒子406と導電性ポリマーのヘッド基402との間の付着点を複数有することによって得られる熱力学的利点に加えて、テール基を有する導電性ポリマーにも利点が存在する。テール基は、屈曲し、回転することができ、他のナノ粒子が容易に占有することができない大きな「排除体積」を一掃してもたらす長鎖の官能基であり得、かくして、他の金属ナノ粒子がこの分散剤と結合している金属ナノ粒子に接近すること、および分散した金属ナノ粒子と凝集または粘着することを防止する。例えば、長鎖のアルキルまたはアルコキシ官能性は、それらが高い排除体積を生み出すことを可能にする高度の立体配置的柔軟性を有している。高い排除体積の別の利点は、それによって、低濃度の分散剤の使用が可能になり、したがって、硬化過程の間に除去すべき分散剤をほんの少量にすることが可能となることである。
【0023】
分散剤400は、ヘッド基402が、ナノ粒子406と化学的に親和性であるか、あるいは優先的に結合するように、かつ、テール基404が、ビヒクル(溶媒)と化学的に親和性であるか、または優先的に結合するように選択することができる。分散液中では、分散剤400は、ナノ粒子406とビヒクルとの間の分子ブリッジとして作用し、それによってナノ粒子が1層以上のの分子層によって分離された状態を保つことができる。ビヒクル中の分散剤400のテール基404の溶解性も、所与のインク配合物に対する分散剤の選択における要因である。
【0024】
分散剤400のヘッド基402は、その基の官能性がインク配合物中の金属ナノ粒子406と適合するように選択することができる。すなわち、ヘッド基402とナノ粒子406との間の引力は、その系中のヘッド基とビヒクルとの間の引力より強いことが有利である。引力としては、電荷引力、非共有電子対と空の分子軌道との間の特定のドナー-アクセプタ結合、水素結合、分極性分子の静電界トラッピング、またはこれらの任意の組合せを挙げることができる。正または負に帯電した表面を有する金属ナノ粒子に関して、導電性金属インクは、ハロゲン化物イオンまたはカルボン酸イオン等のアニオン成分、あるいは水素イオンまたはI族のカチオン等のカチオン成分をそれぞれ用いて調製されてきた。ヘッド基402がポリマーである場合、このポリマーは、複数のアンカー部位を提供し、したがってナノ粒子406の複数の部位を被覆することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子の分散液を、ナノ粒子を導電性ポリマーの分散液に添加することによって形成させる。導電性ポリマーの分散液は、ポリマーを担体に添加することによって形成させることができる。担体は、例えば、水、有機溶媒、またはこれらの任意の組合せであってよい。分散液のpHは、約1から約12までであってよい。金属ナノ粒子をこの導電性ポリマー分散液に添加して、金属ナノ粒子分散液を形成させることができる。
【0026】
導電性金属インクは、金属ナノ粒子を、約10質量%〜約65質量%、または約15質量%〜約60質量%の範囲の金属ナノ粒子の負荷濃度で含むことができる。
【0027】
有効量の分散剤を使用して、分散剤のヘッド基によるナノ粒子の単層被覆を達成させて、ナノ粒子の表面が凝集または凝塊するほど他のナノ粒子に十分に接近しないようにすることができる。いくつかのインク配合物において、例えば、分散剤の有効質量百分率は、約0.1質量%〜約20質量%、または約0.5質量%〜約10質量%の範囲であり得る。単層に満たない被覆は、凝塊の原因となり得るナノ粒子上のオープン部位を残す。分散剤の第2の単層がそのナノ粒子上に存在する場合、その第2の層は第1の層から反対の方向に配向し、それによってナノ粒子と溶媒との親和性を減少させる。
【0028】
ポリマー分散剤は、導電性インク中でビヒクルとして使用する液体より高い粘度を有し得る。より高い粘度により、インクジェット印刷法に適した分散液の形成が促進される。また、複数のナノ粒子結合部位の存在により、ポリマー分散剤が単一の結合部位を有するモノマー分散剤より低い濃度で使用可能になり、かつ、金属ナノ粒子の単層被覆を依然としてもたらすことを可能にする。より低い分散剤の濃度は、硬化プロセスの後に残る有機物質がより少ないために、好都合である。
【0029】
その他の添加剤、例えば、ジメチルスルホキシドおよびオキシビスエタノール等を、例えば約1質量%〜約5質量%等の様々な量で分散液中に存在させることができる。いくつかの実施において、ポリ酸、例えば、ポリスチレンスルホン酸等を、インク配合物中の電荷補償のために使用することができる。
【0030】
凝塊がナノ粉末中に存在する場合、再分散することによって、安定な分散液の形成が促進される。一部の場合には、金属ナノ粉末中のナノ粒子は、ナノ粉末の形成中に沈殿した可溶性塩を含む塩橋を介して凝塊となり得る。これらの塩橋は、分散剤によって溶解され得、その凝塊が崩壊し得る。ナノ粉末中のナノ粒子間にすき間を侵入させる分散剤は、固体中に割れ目を広めるために必要なエネルギーを減少することもでき、それによって粉砕助剤として機能し得る。
【0031】
再分散の後、分散液の安定性は、インク配合物中の引力と斥力の間のバランスを得ることによって維持され得る。分散の維持は、ボールミルまたはその他の装置、高周波音による分解(例えば、超音波処理)などにより凝塊を機械的に破壊することによって支援することができる。これらの機械的処理を分散剤の存在下で行って、機械的撹拌の後の再凝塊の発生を低減させることができる。
【0032】
分散が良好な導電性金属インクは、例えば、ドローダウンまたはインクジェット印刷を含めたプロセスによって印刷することができる。スピンキャスティング、スプレー、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、ロールツーロールコーティングなどを含むその他の印刷方法も、導電性金属インクを堆積(付着)させるために使用することができる。インクは、フレキシブル基材、例えば、ポリイミド(例えば、KAPTON(登録商標)、E.I. du Pont de Nemours and Company、Wilmington、DEから入手可能)、液晶性ポリマー(LCP)、MYLAR(登録商標)、およびポリエチレンテレフタレート(PET)などを含む基材上に堆積させることができる。
【0033】
インクを基材に適用した後、予備硬化プロセスを空気中で約150℃未満の温度で行うことができる。予備硬化工程によって、印刷またはコーティングされた硬化前の金属ナノ粒子の乾燥が促進され、これによって、硬化中の揮発性化合物の急速な蒸発を低減し、かつ、急速な蒸発によってもたらされる皮膜の不連続性および粗面を実質的に排除する。
【0034】
印刷し、乾燥したインクを、硬化させることができる。硬化方法としては、光フラッシュシステム、適切な波長を用いるパルス状レーザ、およびその他のショートパルスランプが挙げられる。印刷された金属インクは、予備硬化乾燥工程の後、黒色であり得、それ故、広範囲の波長に及ぶ光を吸収することができる。硬化プロセスは、空気中、室温で行うことができる。光(または光子)硬化プロセスの間、金属皮膜は、吸収した光によって直接加熱される。基材の非金属部分は、吸収した光によっては直接加熱されない。光強度が十分に高く(例えば、1平方センチメートル当たりほぼ2〜3ジュール)、パルスが十分に短い(例えば、300マイクロ秒以下のオーダー)である場合、皮膜に供給される光エネルギーは金属ナノ粒子を融解することができる。融解したナノ粒子は互いに融合し得る。短時間のパルスにより、基材物質によって吸収されるエネルギーの量を低減することができる。
【0035】
銅インク等のいくつかの導電性インクについては、硬化を、光焼結によって達成することができる。光焼結の間、金属ナノ粒子はフォトニック硬化の間に接着し合って金属皮膜を形成する。連続式レーザおよびパルス状レーザ(例えば、ナノ秒〜フェムト秒レーザ)を含むレーザを用いて、金属インクを金属導体に焼結することができる。光焼結プロセスはマイクロ秒からミリ秒未満までのタイムスケールで起こり得る。不動態化した金属ナノ粒子については、金属酸化物層が元素金属に光還元されて高純度の金属導体がもたらされ得る。場合によって、光焼結からの熱により、その金属と比較的低い融点を有するプラスチックとの間に溶接効果が引き起こされ、これらの金属導体(または皮膜)と基材との間の優れた接着がバインダー材料を使用することなく得られる。不動態化した銅ナノ粒子の場合、光焼結により、銅酸化物の層が光還元されて金属銅になり、共に融合して銅伝導体を形成することが可能になる。
【0036】
非イオン性分散剤を含む光焼結性銅インクによって形成された導電性皮膜については、約3.6μΩ・cm〜約10μΩ・cmの低さの抵抗率を達成することができる(バルクの銅は1.7μΩ・cm)。イオン性分散剤分散剤、または、イオン性分散剤および非イオン性分散剤を含む銅インクから形成される導電性皮膜については、約2.3μΩ・cm〜約10μΩ・cmの低さの抵抗率を達成することができる。
【0037】
銅ナノ粒子を焼結させるためのかかるフォトニック硬化の使用により、硬化過程を空気中で行うことが可能になる。フォトニック硬化により、空気中の熱硬化の間に起こり得る非導電性の酸化銅の形成が低減される。銅皮膜中に非導電性の酸化銅が存在すると、高い抵抗率がもたらされる。対照的に、フォトニック硬化過程は、1秒のほんの何分の1かの間に起こり、銅が冷めて周囲温度に戻るまでに有意な酸化が全く起こらない。硬化過程の間、銅ナノ粒子は、基材に殆どまたは全く損傷を与えることなく非常に短い硬化時間の間に融合し、銅ナノ粒子の表面に存在する酸化銅の少なくとも一部が光還元される。
【0038】
銅ナノ粒子インクから形成された硬化皮膜については、約7×10
-6Ω・cmの抵抗率、すなわち、バルク銅の抵抗率より約4倍大きい抵抗率を、ドローダウン法およびインクジェット印刷法の両方で得ることができる。空気中で硬化してμΩ・cmオーダーの抵抗率を有する銅伝導体を与えることができる銅インクには、金属導体をパターン化または堆積させる必要がある、印刷回路板(PCB)、フレキシブルエレクトロニクス、太陽電池パネル、およびその他の用途を含む非常に広範囲の用途がある。
【0039】
[金属インク用の非イオン性ポリマー分散剤]
非イオン性(立体的)分散剤の排除体積は、柔軟なアルキル(またはエトキシ)鎖であり得る分散剤のテール基によって「占有される」空間を表す。この空間には、他のナノ粒子が実質的に存在しない。大きい排除体積は、小さい排除体積より金属ナノ粒子をより効果的に分離し、低濃度の分散剤による高レベルのナノ粒子の被覆をもたらす。
【0040】
以下の例示的非イオン性ポリマーは、光子により硬化して良好な導体を与えるインク配合物中の調整剤として有用である:
1. 界面活性剤(例えば、Roche Diagnostics GmbH、ドイツ、から入手可能なTRITON(登録商標)X-100、TRITON(登録商標)X-15、TRITON(登録商標)X-45、TRITON(登録商標)QS-15など)、
2. 線状アルキルエーテル(例えば、Colonial Chemical, Inc.、South Pittsburg、TNから入手可能なCOLA(登録商標)CAP MA259およびCOLA(登録商標)CAP MA1610など)、
3. 四級化アルキルイミダゾリン(例えば、Colonial Chemical, Inc.から入手可能なCOLA(登録商標)SOLV IESおよびCOLA(登録商標)SOLV TESなど)、
4. ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ならびに、ポリシロキサン、ポリスチレン、アルキル置換チオフェンポリマー(例えば、American Dye Source, Inc.、Canadaから入手可能なADS 304PTおよびADS 306PTなど)
、および無水マレイン酸付加ポリブタジエン(例えば、Elf Atochemから入手可能なRICOBOND(登録商標)1756およびRICOBOND(登録商標)1731など)。
【0041】
[金属インク用のイオン性ポリマー分散剤]
以下の例示的イオン性ポリマーは、光子により硬化して良好な導体を与えるインク配合物中の調整剤として有用である:
1. イオン性基を有するコポリマー、カルボン酸変性ポリエステルコポリマー(例えば、BYK Chemie、ドイツ、から入手できるDISPERBYK(登録商標)-111および110など)および顔料親和性基を有する高分子量ブロックコポリマー(例えば、BYK Chemieから入手できるDISPERBYK(登録商標)-182、190、191、192および194など)を含む、
2. スチレン無水マレイン酸コポリマーの水性アンモニウム溶液(例えば、Elf Atochemから入手可能なSMA(登録商標)1440H 溶液、SMA(登録商標)1440のアンモニウム塩の水溶液)または加水分解したスチレン無水マレイン酸コポリマー、これらはいずれも、水溶性マトリックス中で金属ナノ粒子に対して良好な湿潤性を示し、水性インク配合物中の分散剤として使用できる、
3. 置換アルキル鎖を有する導電性ポリチオフェン(PT)(例えば、American Dye Source, Inc.から入手可能なADS2000P)、水溶性スルホン化ポリスチレン、ならびに、ポリスチレンコロイド溶液およびポリチオフェンコロイド溶液の混合物(例えば、H.C.Starck GmbH、ドイツ、から入手可能なHCS-P、HCS-Nなど)。
【0042】
溶媒、例えば、2-ブトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、2-エトキシエチルアセテート、エチレングリコールジアセテート、水などを、非イオン性およびイオン性の両方のポリマー分散剤と共に用いて、導電性金属インクを配合することができる。
【0043】
[非イオン性およびイオン性ポリマー分散剤を含む配合物]
一部の場合には、上に掲げた非イオン性分散剤とイオン性分散剤との両方を1つのインク配合物中に使用して、より安定な分散液を形成させることができる。上述した溶媒、またはこれらの任意の組合せを、非イオン性分散剤およびイオン性分散剤を含むインク配合物用のビヒクルとして使用することができる。以下の溶媒混合物:i) 2-ブトキシエチルアセテートとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ii) 2-エトキシエチルアセテートとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、iii) 2-エトキシエチルアセテートとアミルアセテート、およびiv) エチレングリコールジアセテートとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、を含む溶媒は、イオン性分散剤および非イオン性分散剤の両方を含むインク配合物用の有効なビヒクル系である。
【0044】
[低有機残留物の金属インク]
金属インクを、高い導電率を有する金属皮膜を生じるように配合することができる。例えば、低沸点の溶媒および分散剤を有するインク配合物は、(例えば、光焼結による)皮膜形成後に残る有機残留物がわずかであり、その結果、高い導電率を有する皮膜を生ずる。低沸点溶媒としては、例えば、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、トルエン、ブチルベンゼン、酢酸ブチル、水などが挙げられる。低沸点の分散剤としては、比較的低分子量のアミン、例えば、ヘキシルアミン、オクチルアミン等が挙げられる。これらの低沸点のビヒクルおよび分散剤は、約150℃未満の沸点を有していればよく、あるいは、約150℃未満の温度の予備硬化プロセスを被覆されたインクにかけるときに蒸発すればよい。約150℃未満の沸点を有するアミンについては、その分散剤の多くは予備硬化プロセスの間に蒸発する。一例において、約2.5μΩ・cmの抵抗率を有する高純度の銅皮膜が、低沸点のビヒクルおよび分散剤を用いる光焼結性インク配合物によって形成され得る。
【0045】
[添加剤および調整剤を用いる、インクの安定化、インクジェットレオロジーの制御、基材接着性を高めるための塗布、および塗膜の外観の改善]
添加剤および調整剤を、導電性金属インクの性能を高めるために使用することができる。これらの添加剤および調整剤の性質および量は、それぞれの導電性インク、それぞれの基材、それぞれの印刷方法などに応じてさまざまである。これらの違いは、基材の様々な表面エネルギー、基材の様々な接着性、インクジェット方式等の様々な印刷方法の要件、および金属インクを焼結して金属導体にするために用いる様々な方法に起因し得る。添加剤および調整剤は、そのインクの配合で使用するビヒクルおよび分散剤の両方と化学的に親和性となるように選択することができる。また、溶剤型インクと水性インクとの表面張力は異なり得るので、様々な添加剤および調整剤がインクと基材との間の望ましい接触角を維持するために必要となり得る。
【0046】
導電性金属インクに使用する添加剤および調整剤は、レオロジー調整剤、湿潤剤、接着促進剤、バインダー、消泡剤、レベリング剤、イオン強度調整剤などとして作用し得る。添加剤および調整剤は、様々なインク配合物、基材、および適用方法に対してインク特性を調整するために有利に選択することができる。例えば、作用物質および調整剤の選択により、基材タイプの内部の修正を含めた様々な基材を使用するために必要なインク特性の綿密な管理、および、インクジェット方式またはエアロゾルジェット方式等の様々な排出方法(具体的なプリンター製造業者、モデルタイプ、およびプリントヘッドを対象とした配合を含む)を使用するために必要なインク特性の綿密な管理が可能となる。
【0047】
導電性インク配合物のための添加剤および調整剤の選択は、ビヒクル系、基材、またはこれらの組合せの物理化学的性質次第である。例えば、有機溶剤型インクは低い表面張力および多くの基材に対する小さい接触角を有し得る一方、水性インクに、低い表面張力および所望の濡れ性を与えるために湿潤剤が必要とされ得る。高い表面エネルギーを有する基材(ポリイミド等の柔軟な基材を含む)は、ガラス、シリコン、または低い表面エネルギーのポリマー基材等の低い表面エネルギーを有する基材とは異なる添加剤および調整剤を必要とする。基材の空隙率の変動、したがって、導電性インクの吸着の違いも、導電性インク配合物のための添加剤および調整剤の選択に影響を及ぼし得る。
【0048】
添加剤および調整剤は、導電性インクが、柔軟性のある基材(例えば、ポリイミドおよび液晶ポリマー等)に接着でき、同時に、類似のバルク金属と同じ桁数のオーダーの電気抵抗を有する導電性パターンまたは皮膜を形成できるように選択できる。これらの添加剤は、インクに、基材表面およびインクジェットノズル等の印刷装置との親和性を供与し、一様な印刷品質のために必要とされる均一な分散を維持する助けをする湿潤性および表面張力特性を提供する。これらの添加剤は、例えば、望ましい特性をその導電性インク中に導入する様々な鎖長、ターミナル末端基、側鎖、およびコポリマー鎖を有するポリマー材料であり得る。場合によっては、これらのポリマーは、分散剤の分散作用を高める。調整剤および添加剤は、インクの保存寿命、最終的な硬化後の抵抗率、および塗膜外観をさらに高めるために使用することもできる。
【0049】
分散、インクレオロジー、接着性、および塗膜品質等の特性は、特定の調整剤および添加剤によって選択的に高めることができる。例えば、分散安定化剤(例えば、DISPERBYK(登録商標)111、110、180、および190など)、沈降防止剤(例えば、BYK(登録商標)-410および420など)、またはこれらの任意の組合せを導電性インクに加えて、インクの保存寿命安定性およびインクジェット能力を高めることができる。さらに、インクレオロジーを、レオロジー調整性ポリマー(例えば、BYK(登録商標)-410および420など)によるか、高粘度の溶媒(例えば、イソブチルアルコール、テルピネオール、グリセロールなど)の添加によりビヒクル粘度を増大させることによるか、あるいはこれらの任意の組合せによって改善することができる。接着強化は、接着促進剤、例えば、スチレン無水マレイン酸コポリマー(SMA(登録商標)1440H 溶液およびSMA(登録商標)1440フレークなど)、線状アルキルエーテル(例えば、COLA(登録商標)CAP MA259およびCOLA(登録商標)CAP MA1610など)、四級化アルキルイミダゾリン(例えば、COLA(登録商標)SOLV IESおよびCOLA(登録商標)SOLV TESなど)等をインク配合物中に加えることによって達成することができる。IES(またはイソステアリルエチルイミダゾリニウムエトサルフェート)は、金属表面の静電荷を減少させる生分解性のイオン性液体であり、導電性インクの接着性を向上させる。
【0050】
塗膜の均一性およびホールの不存在によって測定されるインク塗膜の外観または品質は、インクの表面張力を低下する調整剤または添加剤、金属湿潤性を高める調整剤または添加剤、インクの消泡を促進する調整剤または添加剤などによって改良できる。表面張力調整剤、例えば、BYK(登録商標)-DYNWET800、BYK(登録商標)-381、BYK(登録商標)-346、およびBYK(登録商標)-378など(BYK Chemieから入手可能)は、インクの表面張力を低下し、金属の湿潤性を改良するためにインク配合物中に添加することができる。消泡剤、例えば、BYK(登録商標)-066N、BYK(登録商標)-141、BYK(登録商標)-052、BYK(登録商標)-067A、BYK(登録商標)-1752、BYK(登録商標)-080A、およびBYK(登録商標)-020など(BYK Chemieから入手可能)は、インク塗膜のピンホールを減らすために使用できる。
【0051】
上述した調整剤および添加剤のいくつかを表 1に掲げる。
【0054】
化合物MA026、MA257、MA259、およびMA1610は、Colonial Chemical, Inc.から入手可能な非イオン性界面活性剤であり、構造H
3C-(CH
2)
x-O-(CH
2CH
2O)
y-CH
2C(CH
3)=CH
2を有する(
図5を参照)。これらの化合物は、共通の構造を共有するが、曇り点、泡高、およびドレーヴス湿潤速度(Draves Wetting)が異なる。MA1610は、この群の中で最も短い湿潤時間を有しており、25℃で6.0秒のDraves Wetting(活性成分0.1%)である。導電性インク(例えば、銅インク)に対する添加剤として、低濃度のMA1610(例えば、約0.1質量%〜約0.2質量%)によって、得られる導電性皮膜における望ましい低さの抵抗率、ならびにKAPTON(登録商標)基材上の高度に均一な塗膜がもたらされる。
【0055】
BYK(登録商標)-378〔構造[O-Si(CH
3)
2]
nを有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン〕は、担体の泡なしでスリップを引き起こす表面張力低下剤である。有機溶剤型インクおよび水性インクの両方と親和性であるこの材料は、約0.01質量%から約0.3質量%までの範囲の量で使用して、クレーター形成を制限し、インク-基材の湿潤性を高めることができる。
【0056】
図6に示したSMA(登録商標)1440H溶液(SMA)、-[(CH(Ph)-CH
2)-CH(CO
2H)-CH(CONHCH
3)]
n-は、スチレン-無水マレイン酸コポリマー樹脂の加水分解によって得られる顔料湿潤剤(分子量5,000ダルトン)である。
【0057】
BYK(登録商標)-349は、水性インクの表面張力を低下し、インクの基材中への浸透および吸着を促進する水性の水溶性添加剤である。このシリコーン界面活性剤は、基材の濡れおよびレベリングをもたらす表面張力の低下を提供する。水中で、約23mN/mの表面張力を、0.05質量%のBYK(登録商標)-349の使用量で得ることができる。同様に、この表面張力調整剤は、非常に低濃度で使用して、インクの特性を変えることができる。
【0058】
BYK(登録商標)-DYNWET 800は、動的表面張力の優れた低下を提供し、かくしてなおも基材への濡れ性を改良するアルコールアルコキシレートである。これは水性系のためのシリコーンを含まない表面添加剤である。配合物によって、約1質量%〜約2質量%の使用量で様々な基材上の流動性を改良することが示されている。
【0059】
インク用のBYK(登録商標)-381は、表面張力に対する影響が殆どまたは全くないポリアクリル酸コポリマーアクリルレベリング添加剤のイオン性溶液である。全体配合物の約0.1質量%〜約1質量%の範囲の添加で、BYK(登録商標)-381は、コーティング液の流動性を改良し、また、光沢を増し、クレーターおよびピンホール等の表面欠陥を低下させる。
【0060】
インク用のBYK(登録商標)-346、すなわち、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンの溶液は、水性印刷インクにおいて表面張力を低下させ、泡を安定化することなく基材への濡れおよびレベリングを改良する。このシリコーン界面活性剤は、実質的に表面すべり性を増すとか、または上塗り性を損なうことはない。より高い表面すべり性が必要な場合には、BYK(登録商標)-307、BYK(登録商標)-333、またはこれらの任意の組合せを、BYK(登録商標)-346と一緒に使用することができる。BYK(登録商標)-346は、配合物全体の約0.1質量%〜約1質量%の範囲で導電性インクに望ましい特性を与え、全体の配合物を基準として約3質量%〜約7質量%の共溶媒を有する系に対して望ましい影響を示す。より高い濃度の共溶媒が存在する場合は、BYK(登録商標)-307およびBYK(登録商標)-333等のポリマー状シリコーン添加剤をBYK(登録商標)-346の代わりに使用できる。共溶媒含量がより低い場合は、BYK(登録商標)-348をBYK(登録商標)-346の代わりに使用できる。溶媒を含まないBYK(登録商標)-346のバージョンは、BYK(登録商標)-345として入手可能である。
【0061】
BYK(登録商標)-410および420を金属インクおよびペースト中の安定化剤として使用して、金属粒子と液体媒体の間の密度の違いによってそのままでは層分離を起こすであろう配合物において、長期間の分散安定性を可能にすることができる。安定化剤は、弱くゲルを形成するポリマーであり、静止状態の保存または非常に低い剪断に際してそれらは半固体となり、かくして、その中に懸濁された粒子の凝集および沈降を防止する。これらの系に降伏応力を超える剪断をかけると、それは液体となり、したがって容易に流動する。
【0062】
金属インクおよびペーストにおいて、安定化剤は、これらの材料から硬化する導体の抵抗率が有意に増大することを避けるために、少量添加することができる。一例において、BYK(登録商標)-410を有機溶媒型の銅ナノ粒子インク中に添加することによって、オルガノゲルを調製した。このインクの抵抗率を、BYK(登録商標)-410を含有しない類似のインクと、各インクの皮膜をドローダウン印刷し、その抵抗率を四点プローブによって測定することによって比較した。0.2質量%のBYK(登録商標)-410が、抵抗率を著しく増すことなく(すなわち、抵抗率は、BYK(登録商標)-410なしの7μΩ・cmからBYK(登録商標)-410ありの9μΩ・cmまで増加した)、インク中の層分離を阻止するのに十分であることが見出された。同様の系が、水性媒体中で水性安定化剤BYK(登録商標)-420を用いて開発された。水性インクについては、最終皮膜の抵抗率はBYK(登録商標)-420なしの3.3μΩ・cmからBYK(登録商標)-420ありの8μΩ・cmまで増加した。
【実施例】
【0063】
(実施例)
以下の実施例を、本発明のいくつかの実施形態をより完全に説明するために提供する。当業者には当然のことながら、以下の実施例中に開示する技術が、本発明の実践において十分に機能することを本発明者らが見出した技術を表しており、したがって、その実施のための例示的様態を構成するものであることが理解されるはずである。しかし、当業者であれば、本開示に照らして、開示されている具体的な実施形態において本発明の精神および範囲から逸脱することなく多くの変形が可能であり、同様のまたは類似の結果をなお得ることができることを理解するべきである。
【0064】
図9は、金属インクから金属皮膜を形成させるプロセスにおける工程を説明するフローチャート900である。これらの工程のいくつかまたはすべてを、以下の実施例で詳細に説明する。工程902では、金属ナノ粒子、ポリマー分散剤、および溶媒を含む安定な導電性インク分散液を調製する。工程904では、インクを基材に塗布する。工程906では、インクを予備硬化させる。工程908では、インクを硬化させて導電性金属インクを形成させる。
【0065】
(
参照実施例1)
BYK(登録商標)-378を、2-ブトキシエチルアセテート(D)およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(T)を含むインク溶媒混合物(DT)に加えた。下記表 2に示すように、溶媒の表面張力はBYK(登録商標)-378なしの29mN/mから、1〜2質量%のBYK(登録商標)-378を含む約26.78mN/mに約2mN/m低下した。低下した約26〜27mN/mの溶媒の表面張力が、得られる塗膜中のピンホールを実質的になくすことが明らかとなった。
【0066】
【表2】
【0067】
(
参照実施例2)
スチレン無水マレイン酸コポリマーSMA(登録商標)1440およびその加水分解した水溶性誘導体SMA(登録商標)1440H溶液を、実施例1で記載した溶媒(DT)に17質量%の銅負荷と共に加えた。表3および表4に見られるように、1(貧弱な接着)〜10(優秀な接着)の基準に基づいて、SMA(登録商標)1440およびSMA(登録商標)1440Hは両方とも、未硬化の銅皮膜のKAPTON(登録商標)基材への塗膜の接着性を増大させた。
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
さらなる実験により、SMA(登録商標)1440およびSMA(登録商標)1440Hが、硬化した銅皮膜に対する接着促進剤としても寄与することができることが示された。0.1〜5質量%のSMA(登録商標)1440およびSMA(登録商標)1440Hは、硬化および未硬化の両方の銅皮膜の接着において望ましい改良を得るために有効である。
【0071】
(実施例3)
表5に見られるように、0.1〜0.5質量%のCOLA(登録商標)SOLV IESを、SMA(登録商標)1440H、BYK(登録商標)-DYNWET 800、および導電性ポリチオフェン(PT)(
図3にオレンジの形態で示したもの)の混合物に添加すると、水性銅インクのKAPTON(登録商標)基材に対する接着が、抵抗率のわずかな低下と共に、改良される。
【0072】
【表5】
【0073】
(実施例4)
銅湿潤促進剤MA1610、表面張力調整剤BYK(登録商標)-378、および皮膜接着調整剤COLA(登録商標)SOLV IESの混合物を、導電性銅インク配合物に加えた。下記表6に示すように、これらの添加剤は、塗膜の均一性、KAPTON(登録商標)基材に対する接着、および銅皮膜の抵抗率を改良した。
【0074】
【表6】
【0075】
(実施例5A〜5F)
以下の水性銅インクを配合した。
【0076】
(実施例5A)
銅ナノ粒子と、H.C. Starckから入手可能な導電性ポリマー分散液であるPEDOT:PSS(
図2に示したもの)とを含む水性インクを調製した。この酸性ポリマーの中和した形態はHCS-Nと呼ばれる。HCSおよびHCS-Nは、含水エタノール中の懸濁液として入手できる。銅ナノ粒子をHCS/HCS-Nに加えて、懸濁液中の懸濁液を得た。
【0077】
(実施例5B)
銅ナノ粒子および導電性ポリマーPT(実施例3に示したもの)を含む水性インクを調製した。PTを含水アルコール中に溶解し、銅ナノ粒子をアルコール/PT溶液に加えて分散液を形成させた。
【0078】
(実施例5C)
銅ナノ粒子と、PT(実施例3に示したもの)およびBYK(登録商標)湿潤剤および表面張力調整剤を含む溶液とを含む水性インクを調製した。
【0079】
(
参照実施例5D)
銅ナノ粒子およびSMA(登録商標)1440H分散剤を含む水性インクを調製した。
【0080】
(
参照実施例5E)
銅ナノ粒子、SMA(登録商標)1440H分散剤、BYK(登録商標)湿潤剤、および接着促進剤COLA(登録商標)SOLV IESを含む水性インクを調製した。
【0081】
(
参照実施例5F)
銅ナノ粒子およびグリオキシル酸またはシュウ酸を含む水性インクを調製した。
【0082】
これらのインクのそれぞれをポリイミド(KAPTON(登録商標))上に塗布した。その塗膜を予備硬化し、光焼結させた。その分散液の品質を遠心分離条件下で評価した。BYK(登録商標)-349、BYK(登録商標)-DYNWET800、イソステアリルエチルイミダゾリニウムエトサルフェート、およびアルコールを含むその他の添加剤を、これらのインクのいくつかに加えて良好な湿潤性および接着性を促進した。これらのインクのそれぞれについて、最終の金属皮膜の抵抗率は、約5〜50μΩ・cmの範囲であった。10μΩ・cm未満の抵抗率は、HCS、HCSN、SMA、PT、BYK(登録商標)-349、およびBYK(登録商標)-DYNWET800の組合せを含む水性銅インクから形成された皮膜に対して得られた。20μΩ・cm未満の抵抗率は、グリオキシル酸を含む水性銅インクから形成された皮膜に対して得られた。200μΩ・cm未満の抵抗率は、シュウ酸およびポリビニルピロリドンを含む水性銅インクから形成された皮膜に対して得られた。
【0083】
観察結果を以下に記録した:
1. 銅ナノ粒子を含むHCS導電性ポリマー懸濁液(実施例5A)は、4.5μΩ・cmの抵抗率を有する皮膜を生じた。
2. 銅ナノ粒子を含むHCSN導電性ポリマー懸濁液(実施例5A)は、13μΩ・cmの抵抗率を有する皮膜を生じた。
3. 銅ナノ粒子を含むPTの含水イソプロパノール溶液(実施例5B)は、6μΩ・cmの抵抗率を有する皮膜を生じた。
4. 銅ナノ粒子を含むグリオキシル酸の水溶液(実施例5C)は、17μΩ・cmの抵抗率を有する皮膜を生じた。
5. 銅ナノ粒子を含むグリオキシル酸およびシュウ酸の水溶液(実施例5C)は、135μΩ・cmの抵抗率を有する皮膜を生じた。
6. 銅ナノ粒子を含むポリビニルピロリドン(PVP)を含むグリオキシル酸の水溶液は、53μΩ・cmの抵抗率を有する皮膜を生じた。
7. BYK(登録商標)-D800を添加した含水エタノールインクの分散は、SMA(登録商標)1440Hの割合を1.25質量%から5質量%に増加したとき悪化した。
8. 1.25質量%のSMA(登録商標)1440Hを含む第7項に、0.2質量%のPTを添加すると、分散が改良された。この配合においてSMA(登録商標)1440Hの量を0.5質量%に低減すると、分散の悪化がもたらされた。
9. 第7および8項におけるSMA(登録商標)1440Hの量を、2.5質量%に、次いで5質量%に増やしても、分散液の品質に変化は見られなかった。
10. BYK(登録商標)-DYNWET800およびSMA(登録商標)1440Hを含む水性インクに0.2質量%のPTを加えると、接着性が失われることなく、抵抗率が、19μΩ・cmから8μΩ・cmに低下した。
11. 第7項における5%のSMA(登録商標)1440Hを含むインクを除いて、これらのインクのすべてが、良好な接着性と抵抗率とを有する皮膜を生じた。
12. IESを添加すると、ポリイミド(KAPTON(登録商標))に対する優れた接着性および6.5μΩ・cmの低い抵抗率を有する水性インクがもたらされた。
【0084】
(実施例6)
水とアルコールの混合物を、銅インクを配合するためのビヒクルとして使用した。その水の含量は、約50質量%から約80質量%まで変動させた。アルコール含量は、約10質量%から約50質量%まで変動させた。イソプロパノール(IPA)、イソブチルアルコール、エタノール、ポリビニルアルコール、エチレングリコール、およびこれらの組合せを含めたアルコールを使用した。アミン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール、イソステアリルエチルイミダゾリニウムエトサルフェート、およびオレイルエチルイミダゾリニウムエトサルフェートを、分散剤として使用した。約15質量%から約65質量%までの負荷濃度の銅ナノ粒子を、ビヒクルおよび分散剤と共に配合した。
【0085】
1つの特定の例では、水、IPA、およびPVPを銅ナノ粒子と共に混合して銅インクを形成させた。このインクをポリイミド基材に塗布して皮膜を形成させた。この皮膜を光焼結して銅伝導体を生じさせた。H
2O/IPAビヒクル系および分散剤としてのDISPERBYK(登録商標)-111を含む銅インクは、4.85μΩ・cmの抵抗率を有する皮膜を生じた。2:1〜3:1のIPA:H
2Oの質量比が、COLA(登録商標)SOLV IESおよびSMA(登録商標)1440H等の接着促進剤添加剤をH
2O/IPAビヒクル系に添加するのに望ましかった。
【0086】
(
参照実施例7)
シクロヘキサノール/IPA/H
2Oの混合物を、銅インク配合物用のビヒクルとして使用するために調製した。好ましい組成物は、約10質量%〜約50質量%の水含量、約40質量%〜約60質量%のシクロヘキサノール含量、および約1:1〜約1:2のH
2O:IPA比を有していた。8μΩ・cmの抵抗率が、シクロヘキサノール/H
2O/IPAビヒクルと、リン酸変性ホスフェートポリエステルコポリマーであるDISPERBYK(登録商標)-111、DISPERBYK(登録商標)-190、DISPERBYK(登録商標)-194、スルホン化スチレン無水マレイン酸エステルSMA(登録商標)1440H、またはこれらの任意の組合せから選択される分散剤とを含み、約10質量%〜約15質量%の銅ナノ粒子負荷を有する銅インクにおいて達成された。
【0087】
(
参照実施例8)
イソブタノール/IPA/H
2Oの混合物を、銅インク配合物用のビヒクルとして使用するために調製した。好ましい組成物は、約10質量%〜約30質量%の水含量、約20質量%〜約80質量%のイソブタノール含量、および約1:1〜約1:2のH
2O:IPA比を有していた。20μΩ・cmの抵抗率が、イソブタノール/H
2O/IPAビヒクルと、リン酸変性ホスフェートポリエステルコポリマーであるDISPERBYK(登録商標)-111、DISPERBYK(登録商標)-190、DISPERBYK(登録商標)-194、COLA(登録商標)SOLVE IES、スルホン化スチレン無水マレイン酸エステルSMA(登録商標)1440H、またはこれらの任意の組合せから選択される分散剤とを含み、約10質量%〜約15質量%の銅ナノ粒子負荷を有する銅インクおいて達成された。
【0088】
(
参照実施例9)
60〜80質量%の水および10〜30質量%のエタノールの混合物中の約2質量%の3,4-ポリエチレンジオキシチオフェン-ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)の分散液(H.C. Starck Inc.から入手可能)を得た。この分散液は、1〜5質量%のジメチルスルホキシドおよび1〜5質量%のオキシビスエタノールもを含んでいた。約2nmから約100nmまでの範囲の粒度を有する銅ナノ粒子をグローブボックス中でこの分散液に加えて、約15質量%〜約65質量%の銅を含む分散液を形成させた。この溶液を少なくとも20分間激しく撹拌して凝塊となった銅ナノ粒子をどれもバラバラに離散させ、その分散液を混合した。安定な分散液、すなわち銅インクが激しい撹拌の後に得られた。
【0089】
銅皮膜を柔軟なポリイミド基材上にドローダウン法によって堆積させた。これに続いて、空気中100℃での予備硬化プロセスを採用して堆積させた皮膜から水と溶媒を蒸発させた。この予備硬化工程は、水と溶媒の除去、および得られた材料の乾燥状態を確保するために、少なくとも15分間を要した。
【0090】
この銅インクをポリイミド基材に印刷するために、インクジェット印刷機も使用した。インクジェット印刷の後、空気中100℃で加熱する予備硬化プロセスを行って水と溶媒を蒸発させ、印刷されて得られた材料の乾燥状態を確保した。
【0091】
次いで、最高で15J/cm
2までのエネルギー密度を0.01から2000マイクロ秒のパルス幅を用いて供給することができる高出力パルスキセノンランプを採用する光フラッシュシステムを使用して、印刷して乾燥した銅インクを硬化させた。この光硬化工程は、室温の空気中で行った。この硬化プロセスの後、7×10
-6Ω・cmの抵抗率が、ドローダウンおよびインクジェット印刷方法の両方により印刷された皮膜について得られた。ポリイミド基材702上にこの銅インクを用いて印刷されたパターン700を描写する
図7に示したように、銅ナノ粒子は、キセノン閃光の非常に短い硬化時間の間に融合し、基材に対して殆どまたは全く損傷を与えない。銅ナノ粒子の表面に存在する酸化銅は、キセノンランプによるフラッシュ硬化プロセスの前の試料800および後の試料802について測定した
図8におけるX線回折パターンによって示されるとおり、少なくとも一部が光還元された。
【0092】
(実施例10)
導電性ポリマーPTの0.1質量%〜約1質量%の分散液を水中で調製した。約2nmから約100nmまでの範囲の粒度を有する銅ナノ粒子をグローブボックス中でこの分散液に加えて、約15質量%〜約65質量%の範囲の銅を含む分散液を形成させた。この溶液を少なくとも20分間激しく撹拌して凝塊となった銅ナノ粒子をいずれもバラバラに離散させ、分散液を混合した。安定な分散液、すなわち銅インクが激しい撹拌の後に得られた。最小限の銅ナノ粒子の沈降が記録された。柔軟な基材に印刷し、続いて予備硬化させ、次に光フラッシュシステムにより空気中で硬化させて、16×10
-6Ω・cmの抵抗率を有する銅伝導体が形成されたことは、1つには低濃度の導電性ポリマーによるものと考えられる。