(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5766443
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】スライス映像を提供する超音波システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20150730BHJP
【FI】
A61B8/14ZDM
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-2063(P2011-2063)
(22)【出願日】2011年1月7日
(65)【公開番号】特開2011-143249(P2011-143249A)
(43)【公開日】2011年7月28日
【審査請求日】2013年12月27日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0002705
(32)【優先日】2010年1月12日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】597096909
【氏名又は名称】三星メディソン株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG MEDISON CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】キム, ソン ユン
【審査官】
樋熊 政一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−325514(JP,A)
【文献】
特開平01−134580(JP,A)
【文献】
特開平11−132724(JP,A)
【文献】
特開平01−155837(JP,A)
【文献】
国際公開第03/037189(WO,A2)
【文献】
特表2007−503857(JP,A)
【文献】
特開2002−245487(JP,A)
【文献】
特開2009−207899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 −8/15
A61B 6/00 −6/14
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波信号を対象体に送信し、前記対象体から反射される超音波エコー信号を受信して超音波データを取得する超音波データ取得部と、
ユーザから3次元超音波映像に少なくとも4つのポイントを設定するための入力情報を受信するユーザ入力部と、
前記超音波データ取得部および前記ユーザ入力部に連結され、前記超音波データを用いてボリュームデータを形成し、前記ボリュームデータをレンダリングして前記3次元超音波映像を形成し、前記入力情報に基づいて前記少なくとも4つのポイントを前記3次元超音波映像に設定し、前記少なくとも4つのポイントに対して3つのポイントを含む複数のポイントグループを設定し、前記3つのポイントに基づいて前記3次元超音波映像に前記複数のポイントグループに対応する複数のスライスを設定し、前記複数のスライスに対応する複数のスライス映像を形成するプロセッサと
を備えることを特徴とする超音波システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記3つのポイントに対して前記3つのポイントを通る前記スライスを前記3次元超音波映像に設定し、
前記ボリュームデータに基づいて、前記スライスに対応する前記スライス映像を形成することを特徴とする請求項1に記載の超音波システム。
【請求項3】
a)超音波信号を対象体に送信し、前記対象体から反射される超音波エコー信号を受信して超音波データを取得する段階と、
b)前記超音波データを用いてボリュームデータを形成する段階と、
c)前記ボリュームデータをレンダリングして3次元超音波映像を形成する段階と、
d)ユーザから前記3次元超音波映像に少なくとも4つのポイントを設定するための入力情報を受信する段階と、
e)前記入力情報に基づいて前記少なくとも4つのポイントを前記3次元超音波映像に設定する段階と、
f)前記少なくとも4つのポイントに対して3つのポイントを含む複数のポイントグループを設定する段階と、前記3つのポイントに基づいて前記3次元超音波映像に前記複数のポイントグループに対応する複数のスライスを設定する段階と、
g)前記複数のスライスに対応する複数のスライス映像を形成する段階と
を備えることを特徴とするスライス映像提供方法。
【請求項4】
前記段階f)は、
f1)前記3つのポイントに対して前記3つのポイントを通るスライスを前記3次元超音波映像に設定する段階と、
f2)前記ボリュームデータに基づいて、前記スライスに対応する前記スライス映像を形成する段階と
を備えることを特徴とする請求項3に記載のスライス映像提供方法。
【請求項5】
スライス映像を提供する方法を行うためのプログラムを格納するコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、前記方法は、
a)対象体に対する超音波データに基づいてボリュームデータを形成する段階と、
b)前記ボリュームデータをレンダリングして3次元超音波映像を形成する段階と、
c)ユーザから前記3次元超音波映像に少なくとも4つのポイントを設定するための入力情報を受信する段階と、
d)前記入力情報に基づいて前記少なくとも4つのポイントを前記3次元超音波映像に設定する段階と、
e)前記少なくとも4つのポイントに対して3つのポイントを含む複数のポイントグループを設定する段階と、前記3つのポイントに基づいて前記3次元超音波映像に前記複数のポイントグループに対応する複数のスライスを設定する段階と、
f)前記複数のスライスに対応する複数のスライス映像を形成する段階と
を備えることを特徴とするコンピュータ読み出し可能記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波システムに関し、特に、3次元超音波映像に設定される少なくとも3つのポイントに基づいて少なくとも1つのスライス映像を提供する超音波システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波システムは、無侵襲および非破壊特性を有しており、対象体内部の情報を得るために医療分野で広く用いられている。超音波システムは、対象体を直接切開して観察する外科手術の必要がなく、対象体の内部組織を高解像度の映像で医師に提供することができるため、医療分野で非常に重要なものとして用いられている。
【0003】
3次元の超音波映像を用いた超音波システムは、2次元超音波映像では提供することができない空間情報や解剖学的な形態情報を提供してくれる。一般に、超音波システムは、連続的に超音波信号を対象体に送信し、対象体から反射される超音波信号(即ち、超音波エコー信号)を受信してボリュームデータを形成する。超音波システムは、ボリュームデータをレンダリングして3次元超音波映像を形成する。
【0004】
従来は、ユーザが3次元超音波映像で観測しようとする部位を探すために、3次元超音波映像を回転または移動させなければならず、観測しようとする部位が複数である場合、観測しようとする複数の部位を全て含むスライス映像を提供することができない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−006283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、3次元超音波映像に少なくとも3つのポイントを設定し、その少なくとも3つのポイントに基づいて少なくとも1つのスライス映像を提供する超音波システムおよび方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における超音波システムは、超音波信号を対象体に送信し、前記対象体から反射される超音波エコー信号を受信して超音波データを取得する超音波データ取得部と、ユーザから3次元超音波映像に少なくとも3つのポイントを設定するための入力情報を受信するユーザ入力部と、前記超音波データ取得部および前記ユーザ入力部に連結され、前記超音波データを用いてボリュームデータを形成し、前記ボリュームデータをレンダリングして前記3次元超音波映像を形成し、前記入力情報に基づいて前記少なくとも3つのポイントを前記3次元超音波映像に設定し、前記少なくとも3つのポイントに基づいて前記3次元超音波映像に少なくとも1つのスライスを設定し、前記少なくとも1つのスライスに対応する少なくとも1つのスライス映像を形成するプロセッサとを備える。
【0008】
また、本発明におけるスライス映像提供方法は、a)超音波信号を対象体に送信し、前記対象体から反射される超音波エコー信号を受信して超音波データを取得する段階と、b)前記超音波データを用いてボリュームデータを形成する段階と、c)前記ボリュームデータをレンダリングして3次元超音波映像を形成する段階と、d)ユーザから前記3次元超音波映像に少なくとも3つのポイントを設定するための入力情報を受信する段階と、e)前記入力情報に基づいて前記少なくとも3つのポイントを前記3次元超音波映像に設定する段階と、f)前記少なくとも3つのポイントに基づいて前記3次元超音波映像に少なくとも1つのスライスを設定する段階と、g)前記少なくとも1つのスライスに対応する少なくとも1つのスライス映像を形成する段階とを備える。
【0009】
また、本発明における、スライス映像を提供する方法を行うためのプログラムを格納するコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、前記方法が、a)対象体に対する超音波データに基づいてボリュームデータを形成する段階と、b) 前記ボリュームデータをレンダリングして3次元超音波映像を形成する段階と、c)ユーザから前記3次元超音波映像に少なくとも3つのポイントを設定するための入力情報を受信する段階と、d) 前記入力情報に基づいて前記少なくとも3つのポイントを前記3次元超音波映像に設定する段階と、e) 前記少なくとも3つのポイントに基づいて前記3次元超音波映像に少なくとも1つのスライスを設定する段階と、f)前記少なくとも1つのスライスに対応する少なくとも1つのスライス映像を形成する段階とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、複雑な臓器や複数の情報を1つのスライス映像に構成するのが難しい場合でも、ユーザによって設定された少なくとも3つのポイントに対して3つのポイントを含むスライス映像を形成することができ、複数の部位の情報を探す必要がなく、少なくとも3つのポイントに基づいて所望の部位のスライス映像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例における超音波システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施例における超音波データ取得部の構成を示すブロック図である。
【
図3】フレームのスキャン方向を示す例示図である。
【
図4】本発明の実施例によって、3次元超音波映像に設定される少なくとも3つのポイントに基づいてスライス映像を形成する順序を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施例における3次元超音波映像に設定されるポイントを示す例示図である。
【
図7】本発明の実施例において3次元超音波映像に設定されるスライスを示す例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施例における超音波システムの構成を示すブロック図である。
図1を参照すると、超音波システム100は、超音波データ取得部110、ユーザ入力部120、プロセッサ130、格納部140およびディスプレイ部150を備える。
【0014】
超音波データ取得部110は、超音波信号を対象体に送信し、対象体から反射される超音波信号(すなわち、超音波エコー信号)を受信して超音波データを取得する。
【0015】
図2は、本発明の実施例における超音波データ取得部の構成を示すブロック図である。
図2を参照すると、超音波データ取得部110は、送信信号形成部210、複数の電気音響変換素子(transducer element:以下単に変換素子と呼ぶ)(図示せず)を含む超音波プローブ220、ビームフォーマ230および超音波データ形成部240を備える。
【0016】
送信信号形成部210は、変換素子および集束点を考慮して、フレームを得るための送信信号を形成する。本実施例において、送信信号形成部210は、
図3に示すように、フレームF
i(1≦i≦N)のそれぞれを得るための送信信号を形成する。
【0017】
超音波プローブ220は、送信信号形成部210から提供される送信信号を超音波信号に変換して対象体に送信し、対象体から反射される超音波エコー信号を受信して受信信号を形成する。受信信号は、アナログ信号である。超音波プローブ220は、3Dメカニカルプローブ(three−dimensional mechanical probe)、2Dアレイプローブ(two−dimensional array probe)などを含む。
【0018】
ビームフォーマ230は、超音波プローブ220から受信信号が提供されると、受信信号をアナログデジタル変換してデジタル信号を形成する。また、ビームフォーマ230は、変換素子の位置および集束点を考慮して、デジタル信号を受信集束させて受信集束信号を形成する。
【0019】
超音波データ形成部240は、ビームフォーマ230から提供される受信集束信号を用いて、該当フレームF
i(1≦i≦N)に対応する超音波データを形成する。超音波データは、RF(radio frequency)データを含む。しかし、超音波データは、必ずしもこれに限定されない。また、超音波データ形成部240は、超音波データを形成するのに必要な様々な信号処理(例えば、利得(gain)調節等)を受信集束信号に行うこともできる。
【0020】
再び
図1を参照すると、ユーザ入力部120は、ユーザの入力情報を受信する。本実施例において、入力情報は、少なくとも3つのポイントを3次元超音波映像に設定するための入力情報を含む。ユーザ入力部120は、コントロールパネル(control panel)、マウス(mouse)、キーボード(keyboard)などを含む。
【0021】
プロセッサ130は、超音波データ取得部110およびユーザ入力部120に連結される。プロセッサ130は、CPU(central processing unit)、マイクロプロセッサ(micro processor)、GPU(graphic processing unit)などを含む。
【0022】
図4は、本発明の実施例によって、3次元超音波映像に設定される少なくとも3つのポイントに基づいてスライス映像を形成する順序を示すフローチャートである。
図4を参照すると、プロセッサ130は、超音波データ取得部110から提供される超音波データを用いて、
図5に示すようにボリュームデータ510を形成する(S402)。
【0023】
図5は、ボリュームデータ510の例を示す例示図である。ボリュームデータ510は、輝度値を有する複数のボクセル(voxel)(図示せず)を含む。
図5において、符号521〜523は、互いに直交するA断面、B断面およびC断面を示す。また、
図5において、軸(axial)方向は、超音波プローブ220の変換素子を基準として超音波信号の進行方向を、横(lateral)方向は、スキャンライン(scanline)の移動方向を、また、エレベーション(elevation)方向は、3次元超音波映像の深さ方向であって、フレームのスキャン方向を示す。
【0024】
再び
図4を参照すると、プロセッサ130は、ボリュームデータ510をレンダリングして3次元超音波映像を形成する(S404)。3次元超音波映像は、ディスプレイ部150に表示される。従って、ユーザは、ユーザ入力部120を用いて、ディスプレイ部150に表示された3次元超音波映像に少なくとも3つのポイントを設定することができる。
【0025】
プロセッサ130は、ユーザ入力部120から提供される入力情報に基づいて、3次元超音波映像になくとも3つのポイントを設定する(S406)。一例として、プロセッサ130は、ユーザ入力部120から提供される入力情報に基づいて、
図6に示すように、3次元超音波映像UIにポイントP
1,P
2,P
3およびP
4を設定する。
図6において、符号IO
1〜IO
3は、対象体内の関心物体を示す。なお、設定されるポイントはこれに限定されず、5つ以上であってもよい。
【0026】
プロセッサ130は、3次元超音波映像に設定された少なくとも3つのポイントに基づいて、3次元超音波映像に少なくとも1つのスライスを設定する(S408)。
【0027】
一例として、プロセッサ130は、
図6に示すように3次元超音波映像UIに設定されたポイントP
1、P
2、P
3およびP
4に対して、3つのポイントを含むポイントグループを設定する。すなわち、プロセッサ130は、ポイントP
1、P
2およびP
3を含む第1のポイントグループ、ポイントP
1、P
2およびP
4を含む第2のポイントグループ、ポイントP
1、P
3およびP
4を含む第3のポイントグループおよびポイントP
2、P
3およびP
4を含む第4のポイントグループを設定する。
【0028】
ポイントグループ数は、ポイントの総数およびグルーピングされるポイントの数に依存する。例えば、5つのポイントが設定されれば、3つのポイントを含む第1〜第10のポイントグループを設定してもよく、4つのポイントを含む第1〜第5のポイントグループを設定してもよい。
【0029】
プロセッサ130は、
図7に示すように、第1のポイントグループのポイントP
1、P
2およびP
3を通る第1のスライスS
1、第2のポイントグループのポイントP
1、P
2およびP
4を通る第2のスライスS
2、第3のポイントグループのポイントP
1、P
3およびP
4を通る第3のスライスS
3および第4のポイントグループのポイントP
2、P
3およびP
4を通る第4のスライスS
4を、3次元超音波映像UIに設定する。
【0030】
プロセッサ130は、ボリュームデータ510に基づいて3次元超音波映像に設定された少なくとも1つのスライスに対応する少なくとも1つのスライス映像を形成する(S410)。一例として、プロセッサ130は、
図7に示すように、スライスS
1〜S
4のそれぞれに対応するスライス映像を形成する。このように、本実施例では、3次元超音波映像に4つのポイントを設定し、4つのポイントグループを設定することで、観測しようとする複数の部位の情報を含む4つのスライス映像を簡単に形成することができる。
【0031】
再び
図1を参照すると、格納部140は、超音波データ取得部110で取得された超音波データを格納する。また、格納部140は、プロセッサ130で形成されたボリュームデータ510を格納する。また、格納部140は、ユーザ入力部120で受信された入力情報を格納する。
【0032】
ディスプレイ部150は、プロセッサ130で形成された3次元超音波映像を表示する。また、ディスプレイ部150は、プロセッサ130で形成された少なくとも1つのスライス映像を表示する。
【0033】
本発明は、望ましい実施例によって説明および例示をしたが、当業者であれば添付した特許請求の範囲の事項および範疇を逸脱することなく、様々な変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
100 超音波システム
110 超音波データ取得部
120 ユーザ入力部
130 プロセッサ
140 格納部
150 ディスプレイ部
210 送信信号形成部
220 超音波プローブ
230 ビームフォーマ
240 超音波データ形成部
510 ボリュームデータ
521 A断面
522 B断面
523 C断面
UI 3次元超音波映像
P
1〜P
4 ポイント
S
1〜S
4 スライス
IO
1〜IO
3 関心物体