(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
誘電体にフィルムを使用したコンデンサ素子と、このコンデンサ素子を収納する上端面に開口部のある有底筒状の金属ケースと、この金属ケースの開口部を封口する樹脂キャップと、前記金属ケース内を充填する充填樹脂とを備えたフィルムコンデンサにあって、前記金属ケースの側面に沿って金属ケースの底方向に、前記樹脂キャップの周辺部から一体に張り出した筒状の張り出し部を設け、この張り出し部には前記金属ケースの開口部にはめ込まれるはめ込み部分を有し、このはめ込み部分かまたは、このはめ込み部分と接する前記金属ケースの開口部周辺の対向面のどちらかの面には、前記はめ込み部分と前記金属ケースの開口部周辺とのすき間を、前記樹脂キャップの弾性限度内で押し広げる突出部を設けることと、この突出部またはこの突出部と接する側に、前記樹脂キャップを前記金属ケースに固定する、引っかかり部分を設けることを特徴とするフィルムコンデンサ。
前記引っかかり部分として、前記突出部と接する側に前記突出部に対応して突入される環状の凹部を設けるか、前記突出部と接する側のこの突出部よりも内側に環状の凸部を設けるか、または前記突出部の表面もしくはこの突出部と接する部分の表面の少なくとも一方が環状の凹凸面であることを特徴とする請求項1のフィルムコンデンサ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に述べる金属ケースは、上端面に開口部のある有底筒状の金属容器で、金属としては、アルミニウム、マグネシウム、鉄、ステンレス、銅またはそれらの合金などが使用できる。
特に、アルミニウムは軽量、加工性、コスト的にも優れているため好ましく使用できる。アルミニウム材質は、純アルミ系(A1000系)と、アルミ合金系としてAl−Zn、Al−Mgも使用(A3000系、A5000系)できる。
金属ケースの作成方法は、インパクト成形法等が利用でき、ケース厚みは0.3〜2mmで使用する。好ましくは、ケース厚み0.5〜1.5mmとなる。
【0010】
本発明における樹脂キャップは、金属ケースの開口部を封口するもので、その周辺部から、金属ケースの側面方向に一体的に張り出した筒状の張り出し部を設け、この張り出し部には、前記金属ケースの開口部周辺にはめ込まれるはめ込み部分を設ける。
樹脂キャップの材質としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、POM(ポリオキシメチレン)、PPO(ポリフェニレンオキサイド)等の成形品、またはポリ塩化ビニル、ポリカーボネートなどの真空成形品が使用できる。ガラス繊維で強化されてもよい。好ましくは、充填樹脂の硬化温度でも塑性変形しないPPS、PBT、PPEなどの耐熱性の結晶性の樹脂が好ましい。
【0011】
本発明における充填樹脂は、コンデンサ用の絶縁性の充填材で、一般的にフィルムコンデンサの充填用に使用しているものが使用できる。たとえば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂にフィラー等を混ぜたものが使用できる。フィラーとしては、珪素、チタン、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭化物、窒化物、これらの複合物などが使用できる。必要があれば、難燃剤、酸化防止剤を添加してもよい。
この充填樹脂は、樹脂キャップに設けた貫通孔等から金属ケース内に液体状で注入され、充填後加熱や硬化剤による重合化等により固化される。金属ケース内からはみ出した充填樹脂は、封口体の外表面に設けた、ダム形状の周回体やせき止め溝によりせき止める。封口体と一体化したものが好ましいが別部品でもよい。たとえば、粘着テープをダム形状に周回しておくとか、熱収縮チューブを金属ケース側面外周に設ける場合、外部端子側にはみ出させたりして、はみ出した充填樹脂をせき止めてもよい。
充填樹脂は、単層の材料でもよいし、同じ材料でも物性値を変えた複数層ものでもよいし、樹脂またはフィラー等の種類や量を別々に選択することができる。別々に選択することにより、充填樹脂周辺部分の樹脂の堅さ、熱膨張係数、構成材料との密着性等を最適なものとすることができる。
たとえば、コンデンサ素子側には比較的柔軟性のあるウレタン系の樹脂、封口体側には比較的強度があり外部端子と密着性のあるエポキシ系の樹脂などが選択できる。また、フィラーの量をコンデンサ素子側には少なく、封口体側には多くするなども選択できる。
【0012】
本発明における突出部は、樹脂キャップの筒状の張り出し部が金属ケースにはめ込まれた部分と、このはめ込み部分と接する金属ケースのどちらかの対向面に設けるもので、このはめ込み箇所のすき間を押し広げる程度の大きさが必要となるものである。押し広げられるのは、はめ込み周辺の金属ケース、樹脂キャップまたはその両方となる。押し広げる大きさは、金属ケースまたは樹脂キャップの弾性限度内であることが好ましく、両方とも塑性変形するのは好ましくない。押し広げる大きさの程度は、コンデンサの外形に合わせて大きくなるが、0.5mmから2mm程度、好ましくは0.7mmから1.5mm程度で、小さいと耐湿性の効果が得にくく、大きいと樹脂キャップまたは金属ケースの弾性限界を超えてしまいやすい。
突出部の形状は、肉厚にするかまたは、背面から回転ごま等により凸状にそれ自体が変形ささせたものでもよい。
また、突出部は、ケース底面と平行になる方向で金属ケース側面に環状に形成するほうが押し広げる具合が平均化され好ましいが、間欠的に環状に形成してもよい。
また、突出部における金属ケースと樹脂キャップとの接触は、面接触のほうが耐湿性の点で好ましく、接触幅は0.5mmから3mm程度、好ましくは0.7mmから2.5mm程度とする。小さいと耐湿性の効果が得にくく、大きいと加工が難しくなる場合がある。突出部の形状としては、半だ円形状より台形に近い形状のほうが接触幅がとりやすく好ましい。
【0013】
本発明における引っかかり部分は、樹脂キャップが金属ケースから浮き上がらないように、樹脂キャップと金属ケースのはめ込み箇所に設けた突出部を使用した浮き上がり防止機能で、たとえば、突出部と接する側に突出部に対応して突入される環状の凹部を設ける方法、突出部と接する側のこの突出部よりも内側のフィルムコンデンサの中心部側に環状の凸部を設ける方法、または突出部の表面もしくはこの突出部と接する部分の表面の少なくとも一方が環状の凹凸面にする方法により得られる。
引っかかり部分としての上記環状の凹部は、樹脂キャップまたは金属ケースの封口箇所に設けた突出部の頂上部分が、それと接触する位置にある凹状の部分で、突出部の少なくとも一部が環状の凹部内に入り込むことにより、樹脂キャップが金属ケースに引っかかる。
また、引っかかり部分としての上記環状の凸部は、突出部と接する側の、はめ込み部分の先部分に設ける凸状のもので、突出部に引っかかって、封口用の樹脂キャップが金属ケースより浮き上がってしまうのを防止する。上記環状の凸部は環状でも、間欠的な環状でもよい。
また、引っかかり部分としての上記環状の凹凸面は、マット面、ヘアライン面、ヘアラインの碁盤目面などの微細な凹凸面で、突出部の表面またはこの突出部と接するはめ込み部分の表面の少なくとも一方に設ける。好ましくは両面に設ける。この場合の突出部の形状としては、半だ円形状より台形に近い形状のほうが接触幅がとりやすく好ましい。
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態を示すフィルムコンデンサの断面図を示している。
図1では、誘電体にフィルムを使用したコンデンサ素子1と、このコンデンサ素子1を収納する上端面に開口部のある有底筒状の金属ケース2と、この金属ケース2の開口部を封口する樹脂キャップ3と、金属ケース2内を充填する充填樹脂4とを備えたフィルムコンデンサにあって、金属ケース2の内側面方向に、樹脂キャップ3の周辺部から一体的に張り出した筒状の張り出し部5を設け、この張り出し部5には金属ケース2の開口部にはめ込まれるはめ込み部分6を有し、このはめ込み部分6と接する金属ケース2の開口部周辺の対向面に、はめ込み部分6と金属ケース2の開口部周辺とのすき間を押し広げる突出部7を設けていることを示している。
【0015】
そして
図1の場合、樹脂キャップ3のはめ込み部分6に、その後、回転ごま等により、突入される突出部7に対応した環状の凹部13を設けておく。その後、樹脂キャップ3を封口し、はめ込み部分6に接する前記金属ケース2の外側面から回転ごま等により、はめ込み部分6と金属ケース2の開口部周辺とのすき間を押し広げる突出部7を設けていることを示している。突出部7は、樹脂キャップ3を封口する前でもよく、樹脂キャップの貫通孔11等から充填樹脂4を充填する前に設ける。
【0016】
また、コンデンサ素子1の両端面には、亜鉛金属などの金属の溶射などの方法により端面電極8を形成し、これと樹脂キャップ3に設けた外部との接続用の外部端子9とは、引き出しタブ10により接続する。
外部端子9本体の材質としては、たとえば、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、ステンレス、燐青銅等の金属または合金からなるもの、表面に錫、半田等をメッキする場合もある。形状は、直径が1mmから30mm程度の円錐形で、その大きさは流れる電気量により決定する。外部とは、ボルト等により接続できるような、ネジ等の加工部を設け接続される。
【0017】
引き出しタブ10は、金属の箔、薄板、または線など変形可能で、はんだ接続、溶接、圧接可能なものが限定なく使用できる。特に電気的良導体として銅または銅合金が好ましい。また接続部分以外の部分を絶縁物で被覆することもある。引き出しタブ10を外部端子9と一体化させる場合もある。
【0018】
なお、本実施の形態では金属化ポリプロピレンフィルムを用いた例を示したが、これに限定されるものではなく、金属化ポリエステルフィルムや、金属化フェニレンサルファイドフィルム等の他の金属化フィルムを用いてもよい。
【0019】
また、誘電体の片面に金属化蒸着電極を形成した金属化フィルムを2枚重ねて捲回したコンデンサ素子の例を示したが、これに限定されるものではなく、両面に金属蒸着電極を形成した金属化フィルムと、金属蒸着電極を形成していない誘電体フィルムとを重ねて捲回して作製したコンデンサ素子でもよい。
【0020】
図2は、本発明の実施の形態を示すフィルムコンデンサの一部拡大した断面図を示している。
拡大部分は、樹脂キャップ3と金属ケース2との封口部分を示している。引っかかり部分として、
図2(a)では環状の凹部13、
図2(b)では環状の凸部14、
図2(c)では凹凸面15を設けた場合を示している。また、
図2の左側の図は、突出部が金属ケースにある場合を、
図2の右側の図は、突出部が樹脂キャップにある場合を示している。
図2(a)の左側の図では、環状の凹部13は樹脂キャップ3側にあり、金属ケース2に設けた突出部7により環状の凹部13に突入されて、引っかかり部分を形成している。
図2(a)の右側の図では、環状の凹部13は金属ケース2側にあり、樹脂キャップ3に設けた突出部7により環状の凹部13に突入されて、引っかかり部分を形成している。
図2(b)では、環状の凸部14が樹脂キャップ3側にあり、金属ケース2に設けた突出部7が環状の凸部14より外側に設けることにより、引っかかり部分を形成している。
図2(c)の左側の図では、突出部7が金属ケース2側にあり、突出部7の表面と突出部と接する樹脂キャップ3の部分の表面が凹凸面15となっていて、引っかかり部分を形成している。樹脂キャップ3が柔らかく、突出部7の表面の凹凸面15の凹凸が、樹脂キャップ3にくいこむ場合には、樹脂キャップ3側に凹凸面15を必ずしも設けなくてもよい。
図2(c)の右側の図では、突出部7が樹脂キャップ3側にあり、突出部7の表面と突出部と接する部分の表面が凹凸面15となっていて、引っかかり部分を形成している。
【0021】
図3は、本発明の実施の形態を示すフィルムコンデンサ製造方法の一部拡大した断面図を示している。拡大部分は、樹脂キャップ3と金属ケース2の開口部周辺とがはめ込まれる封口部分で、
図3(a)は、はめ込み前、
図3(b)は、はめ込み後を示している。
まず、
図3(a)に示すように、金属ケース2の開口部周辺には、突出部7を設け、樹脂キャップ3のはめ込み部分6には環状の凹部13を設ける。次に、
図3(b)に示すように、樹脂キャップ3が金属ケース2の開口部周辺にはめ込まれる時に、金属ケース2に設けた突出部7により、樹脂キャップ3のはめ込み部分6が内側に変形し、金属ケース2と張り出し部5とのすき間が広がることを示している。
【0022】
図4は、本発明の実施の形態を示すフィルムコンデンサ製造方法の別の一部拡大した断面図を示している。拡大部分は、樹脂キャップ3と金属ケース2の開口部周辺とがはめ込まれる封口部分で、
図4(a)は、突出部7を設ける前、
図4(b)は、突出部7を設ける途中、
図4(c)は、突出部7を設けた後を示している。
まず、
図4(a)に示すように、樹脂キャップ3のはめ込み部分6には環状の凹部13を設け、それを金属ケース2の開口部周辺にはめ込んだことを示している。次に、
図4(b)に示すように、回転ごま16により、環状の凹部13に突入するように、金属ケース2の開口側面に突出部7を設けはじめ、
図4(c)に示すように、樹脂キャップ3のはめ込み部分6が内側に変形し、金属ケース2とはめ込み部分6とのすき間が広がるように、環状の凹部13に突出部7が突入したことを示している。
【0023】
図5は、本発明の実施の形態を示すフィルムコンデンサ製造方法の別の一部拡大した断面図を示している。拡大部分は、樹脂キャップ3と金属ケース2の開口部周辺とがはめ込まれる封口部分で、
図5(a)は、突出部7を設ける前、
図5(b)は、突出部7を設ける途中、
図5(c)は、突出部7を設けた後を示している。
まず、
図5(a)に示すように、樹脂キャップ3のはめ込み部分6と金属ケース2の開口部周辺とには凹凸面15を設け、樹脂キャップ3を金属ケース2の開口部周辺にはめ込んだことを示している。次に、
図5(b)に示すように、回転ごま16により、凹凸面15部分に、金属ケース2の開口側面に突出部7を設けはじめ、
図5(c)に示すように、樹脂キャップ3のはめ込み部分6が内側に変形し、金属ケース2とはめ込み部分6とのすき間が広がるように、金属ケース2の突出部7の凹凸面15が樹脂キャップ3のはめ込み部分6の凹凸面15に圧接したことを示している。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
コンデンサ素子は、誘電体フィルムとして厚さ5μmのポリプロピレンフィルムの表面に金属蒸着電極としてセグメントパターンを設けた片面金属化フィルムと、これと同様な金属化フィルムを金属面が重ならないよう互い違いに2枚重ねて捲回し、捲回した両端部に亜鉛金属の溶射の方法により端面電極を形成した。また、樹脂キャップには、引っかかり部分としてそのはめ込み部分に、後で回転ごま加工により形成される突出部と接する側に突出部に対応して突入される環状の凹部を設けたものを用意した。
次に、コンデンサ素子の端面電極と樹脂キャップに設けた外部端子とを厚さ200μmの箔状の引き出しタブによりおのおのはんだ付けで接続した。
次に、樹脂キャップ付きのコンデンサ素子を厚さ0.8mmの金属ケース内に収納した。
次に、金属ケースの開口部周辺側面の内側に、回転ごま加工により、樹脂キャップのはめ込み部と金属ケースの開口部周辺とのすき間より平均0.7mmすき間が広くなるように突出部を設けた。この突出部の樹脂キャップへの接触側の先端形状は、台形に近い形状で、その台形部の先端の短形寸法は1.5mmとした。
次に、樹脂キャップに設けた貫通孔から、ウレタン系の充填樹脂を注入し、真空中で充填樹脂の脱泡後、熱硬化させた。
【0025】
(実施例2)
樹脂キャップ付きのコンデンサ素子を金属ケース内に収納する前に、金属ケースに突出部加工する以外は、実施例1と同じく作製した。
【0026】
(実施例3)
突出部を樹脂キャップ側に設け、それに対応する環状の凹部を金属ケースに設ける以外は、実施例1と同じく作製した。
【0027】
(比較例1−3)
引っかかり部分を設けないこと以外は、実施例1−3とそれぞれ同様に比較例1−3を作製した。この時、樹脂キャップのはめ込み部と金属ケースの開口部周辺との平均すき間が同じくなるように、引っかかり部分の分、突出部の突出を少なく調節した。
(比較例4)
引っかかり部分(環状の凹部)を設けず、また突出部のない金属ケース、突出部のない樹脂キャップを使用していること以外は、実施例1と同じく作製した。
【0028】
表1には、実施例1−3と比較例1−3の試料各20個について、真空中で充填樹脂の脱泡中に、封口用の樹脂キャップが金属ケースより浮き上がり個数の具合、樹脂キャップと金属ケース界面の樹脂しみ出しの判定結果を示す。
【0029】
【表1】
実施例は、比較例と比べて樹脂キャップが金属ケースからの浮き上がりが見られず良好であった。また、樹脂キャップと金属ケースとの界面の樹脂しみ出しについても、実施例は樹脂しみ出しが見られず良好であった。
【0030】
次に、実施例1−3と比較例4の試料各3個について、周囲温度85℃、相対湿度85%RHで定格電圧1100V印加した。中間測定として250h毎に試験を停止し、コンデンサの温度を室温に戻してから、容量変化率、tanδ変化率を測定し1000hで評価した。これらの試料の測定結果を表2に合わせて示した。
【0031】
【表2】
【0032】
表2に示したように、実施例1−3では容量変化率、tanδ変化率ともに比較例4より著しく特性が良化している。これに対して、比較例4は、容量変化率、tanδ変化率ともに大きい。