特許第5766529号(P5766529)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5766529
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】フラットケーブルの防水コネクタ構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20150730BHJP
   H01R 12/65 20110101ALI20150730BHJP
   H01R 13/405 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   H01R13/52 301E
   H01R12/65
   H01R13/405
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-148209(P2011-148209)
(22)【出願日】2011年7月4日
(65)【公開番号】特開2013-16348(P2013-16348A)
(43)【公開日】2013年1月24日
【審査請求日】2014年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075959
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 保
(72)【発明者】
【氏名】神野 圭史
(72)【発明者】
【氏名】大山 幸一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 一乗
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−170627(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/090998(WO,A1)
【文献】 特開2003−142198(JP,A)
【文献】 特開2002−298956(JP,A)
【文献】 特開2002−170612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
H01R 12/52−12/69
H01R 13/405
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体配線が絶縁フィルムによって被覆される絶縁被覆部を有してなるフラットケーブルと、前記導体配線に接合される端子と、前記導体配線と端子との接合部を覆い前記フラットケーブルに一体成形されてなる樹脂モールド部と、対向する両端のうち一端側から前記端子と接続相手端子とが接続されるように接続相手コネクタが嵌合され、他端側から前記樹脂モールド部が挿入されるコネクタハウジングとを有してなるフラットケーブルの防水コネクタ構造において、
前記樹脂モールド部は、
前記コネクタハウジングの内部壁面に密着されように前記樹脂モールド部の外周に沿うように形成されてなる弾性シール部材が配置されるシール部と、前記フラットケーブルの延在方向で前記シール部に比して前記フラットケーブルの端子接続側端から離れて配置され、かつ前記コネクタハウジング内に嵌め込まれる形状を有してなることによって前記フラットケーブルが保持される保持部と、
を有してなることを特徴とするフラットケーブルの防水コネクタ構造。
【請求項2】
前記シール部は、
該シール部の外周に沿って形成された溝部からなるシール部材保持部を有してなり、
前記弾性シール部材は、
環状をなし、前記シール部材保持部に嵌め込まれることを特徴とする請求項1に記載のフラットケーブルの防水コネクタ構造。
【請求項3】
前記コネクタハウジングは、
該コネクタハウジングの上壁に、前記樹脂モールド部が挿入される側の開口端から前記上壁内側に向けて形成された矩形状の切り欠きからなるガイド切り欠き部を有してなり、
前記保持部は、
該保持部の上面から突起して設けられた上部突起部を有してなり、
前記樹脂モールド部が前記コネクタハウジング内に挿入される際、前記上部突起部が前記ガイド切り欠き部によってガイドされることを特徴とする請求項1または2に記載のフラットケーブルの防水コネクタ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットケーブルの防水コネクタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、狭い空間での配索を可能とするものとして可撓性を有してなる平板状のフラットケーブルが用いられる。このフラットケーブルは、接続相手コネクタの端子と接続される端子が、フラットケーブルの導体配線が露出された部分に接続されるようになっている。このような導体配線と端子の接合部は防水処理を施す必要がある。このため、例えば特許文献1には、防水性能を有するフラットケーブルの防水コネクタ構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−68931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたフラットケーブルの防水コネクタ構造は、筒状のハウジングの中に配列した複数の端子の導体接続部にそれぞれ導体が接続されかつ導体接続部が弾性体によって包括して被覆された複合端子体を嵌着し、ハウジングの係止突起を弾性体の蛇腹部とを密着させることにより防水コネクタを形成している。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたフラットケーブルの防水コネクタ構造では、フラットケーブルに外力が負荷されると弾性体が変形し、ハウジングの内壁面と弾性体との間に隙間が発生し、防水性能が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、フラットケーブルに外力が負荷される場合であっても、防水性能の低下を防ぐことができるフラットケーブルの防水コネクタ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1にかかるフラットケーブルの防水コネクタ構造は、導体配線が絶縁フィルムによって被覆される絶縁被覆部を有してなるフラットケーブルと、前記導体配線に接合される端子と、前記導体配線と端子との接合部を覆い前記フラットケーブルに一体成形されてなる樹脂モールド部と、対向する両端のうち一端側から前記端子と接続相手端子とが接続されるように接続相手コネクタが嵌合され、他端側から前記樹脂モールド部が挿入されるコネクタハウジングとを有してなるフラットケーブルの防水コネクタ構造において、前記樹脂モールド部は、前記コネクタハウジングの内部壁面に密着されように前記樹脂モールド部の外周に沿うように形成されてなる弾性シール部材が配置されるシール部と、前記フラットケーブルの延在方向で前記シール部に比して前記フラットケーブルの端子接続側端から離れて配置され、かつ前記コネクタハウジング内に嵌め込まれる形状を有してなることによって前記フラットケーブルが保持される保持部と、を有してなることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2にかかるフラットケーブルの防水コネクタ構造は、上記の発明において、前記シール部は、該シール部の外周に沿って形成された溝部からなるシール部材保持部を有してなり、前記弾性シール部材は、環状をなし、前記シール部材保持部に嵌め込まれることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3にかかるフラットケーブルの防水コネクタ構造は、上記の発明において、前記コネクタハウジングは、該コネクタハウジングの上壁に、前記樹脂モールド部が挿入される側の開口端から前記上壁内側に向けて形成された矩形状の切り欠きからなるガイド切り欠き部を有してなり、前記保持部は、該保持部の上面から突起して設けられた上部突起部を有してなり、前記樹脂モールド部が前記コネクタハウジング内に挿入される際、前記上部突起部が前記ガイド切り欠き部によってガイドされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1にかかるフラットケーブルの防水コネクタ構造は、前記樹脂モールド部が、前記コネクタハウジングの内部壁面に密着されように前記樹脂モールド部の外周に沿うように形成された弾性シール部材が配置されたシール部と、前記フラットケーブルの延在方向で前記シール部に比して前記フラットケーブルの端子接続側端から離れて配置され、かつ前記コネクタハウジング内に嵌め込まれる形状を有してなることによって前記フラットケーブルが保持される保持部と、を有してなるので、前記シール部に配置された前記弾性シール部材よって防水性能を有し、前記樹脂モールド部によって前記弾性シール部材に比して強度が高められて変形しにくい構造になっているため、前記コネクタハウジングの内部壁面と前記弾性シール部材との間に隙間が発生し難くなり、結果的に、前記フラットケーブルに外力が負荷される場合であっても、防水性能の低下を防ぐことができる。
【0011】
本発明の請求項1にかかるフラットケーブルの防水コネクタ構造は、前記樹脂モールド部が前記コネクタハウジングに取り付けられることによって、前記各導体配線と接合された前記各端子が前記コネクタハウジング内に収容されるようになっているので、前記各導体配線に接続されるための中継用の端子を前記コネクタハウジング内に組み付ける必要がなく、組み付け作業が容易となる。
【0012】
本発明の請求項1にかかるフラットケーブルの防水コネクタ構造は、前記樹脂モールド部によって前記弾性シール部材に比して強度が高められ、変形しにくい構造になっているため、前記ハウジングコネクタへの前記樹脂モールド部の挿入が容易になる。
【0013】
本発明の請求項2にかかるフラットケーブルの防水コネクタ構造は、前記シール部が、該シール部の外周に沿って形成された溝部からなるシール部材保持部を有してなり、前記弾性シール部材が、環状をなし、前記シール部材保持部に嵌め込まれるようになっているので、前記弾性部材が変形し難いように保持され、結果的に防水性能を高めることができる。
【0014】
本発明の請求項3にかかるフラットケーブルの防水コネクタ構造は、前記コネクタハウジングが、該コネクタハウジングの上壁に、前記樹脂モールド部が挿入される側の開口端から上壁内側に向けて形成された矩形状の切り欠きからなるガイド切り欠き部を有してなり、前記保持部が、該保持部の上面から突起して設けられた上部突起部を有してなり、前記樹脂モールド部が前記コネクタハウジング内に挿入される際、前記上部突起部が前記ガイド切り欠き部によってガイドされるので、前記ハウジングコネクタへの前記樹脂モールド部の挿入が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施の形態にかかるフラットケーブルの防水コネクタ構造の分解斜視図である。
図2図2は、図1に示したフラットケーブルの防水コネクタ構造の斜視図である。
図3図3は、図1に示したフラットケーブルの防水コネクタ構造の平面図である。
図4図4は、図3に示したフラットケーブルの防水コネクタ構造のA−A線断面図である。
図5図5は、図1に示したフラットケーブルおよびフラットケーブルに接合された端子の斜視図である。
図6図6は、既存の接続相手コネクタと、図1に示したコネクタハウジングとが嵌合される前のフラットケーブルの防水コネクタ構造とを示した斜視図である。
図7図7は、図6に示した既存の接続相手コネクタと図1に示したコネクタハウジングが既存の接続相手コネクタに嵌合されたフラットケーブルの防水コネクタ構造とを示した平面図である。
図8図8は、図7に示した接続相手コネクタおよびフラットケーブルの防水コネクタ構造のB−B線断面図である。
図9図9は、図1に示したフラットケーブルの防水コネクタ構造の製造方法を示した図である。
図10図10は、図1に示したフラットケーブルの防水コネクタ構造の製造方法を示した図である。
図11図11は、本発明の実施の形態の変形例のフラットケーブルの防水コネクタ構造を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、この発明にかかるフラットケーブルの防水コネクタ構造の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態にかかるフラットケーブルの防水コネクタ構造1の分解斜視図である。図2は、図1に示したフラットケーブルの防水コネクタ構造1の斜視図である。図3は、図1に示したフラットケーブルの防水コネクタ構造1の平面図である。図4は、図3に示したフラットケーブルの防水コネクタ構造1のA−A線断面図である。図5は、図1に示したフラットケーブル10およびフラットケーブル10に接合された端子20の斜視図である。図6は、既存の接続相手コネクタ70と、図1に示したコネクタハウジング50とが嵌合される前のフラットケーブルの防水コネクタ構造1とを示した斜視図である。図7は、図6に示した既存の接続相手コネクタ70と図1に示したコネクタハウジング50が既存の接続相手コネクタ70に嵌合されたフラットケーブルの防水コネクタ構造1とを示した平面図である。図8は、図7に示した接続相手コネクタ70およびフラットケーブル10の防水コネクタ構造1のB−B線断面図である。
なお、便宜上、図中の互いに直交する矢印の方向を前後左右上下方向とする。
フラットケーブルの防水コネクタ構造1は、図1に示すように、フラットケーブル10、三つの端子20、樹脂モールド部30、およびコネクタハウジング50を有してなる。
【0018】
まず、図2を用いてフラットケーブル10について説明する。
フラットケーブル10は、導体部11および絶縁被覆部12を有してなる。
導体部11は、銅あるいは銅合金等からなり、かつ可撓性を有する導体配線11aを三本有してなる。これら三本の導体配線11aの各導体配線11aは、端子20の並列間隔に応じて並設されている。
なお、この実施の形態では、導体部11が三本の導体配線11aを有してなるものを例示したが、これに限らない。すなわち、導体配線11aの数は一本以上であればよい。
絶縁被覆部12は、導体部11がポリプロピレン等の絶縁フィルム12bによって被覆された部分である。
【0019】
このような、フラットケーブル10は、図5に示すように、導体部11が絶縁フィルム12bによって平板状に被覆されることによって可撓性を有するようになっている。また、このフラットケーブル10は、端子20と接続される側の端部である端子接続側端12cの絶縁フィルム12bが除去され、各導体配線11aが露出された状態になっており、この露出された各導体配線11aに各端子20が接合されるようになっている。
【0020】
次に、三つの端子20について説明する。
三つの端子20の各端子20は、導体配線11aに対応した形状をなし、各導体配線11aに超音波溶接、圧着等の方法によって接合される。この実施の形態では、各端子20が雄型端子であり、導体配線11aと接合される側の端部20aと対向する端部20bが図示しない相手接続端子に接続されるようになっている。
なお、この実施の形態では、フラットケーブルの防水コネクタ構造1が、三つの端子20を有してなるものを例示したが、これに限らない。すなわち、端子20は導体配線11aの本数に応じた数だけ設ければよい。
【0021】
次に、コネクタハウジング50について説明する。
コネクタハウジング50は、図6に示すように、対向する両端のうち一端側から端子20と図示しない接続相手端子71とが接続されるように既存の接続相手コネクタ70が嵌合され、他端側からフラットケーブル10が挿入されるものである。
このコネクタハウジング50は、相手接続コネクタと嵌合される第一の嵌合部51と、樹脂モールド部30と嵌合する第二の嵌合部52とを有してなる。
【0022】
第一の嵌合部51は、横断面の外形が長円形状の筒状をなし、内部に接続相手コネクタ70が嵌入されるようになっている。すなわち、接続相手コネクタ70が第一の嵌合部51に嵌入されることによって、図8に示すように、端子20が接続相手端子71に接続されるようになっている。
【0023】
第二の嵌合部52は、横断面の外形が矩形状の筒状をなし、内部に樹脂モールド部30が嵌入されるようになっている。この第二の嵌合部52は、ガイド切り欠き部52aおよびハウジング開口部52bを有してなる。
ガイド切り欠き部52aは、第二の嵌合部52の上壁52cに開口端52dから上壁52c内側に向けて形成された矩形状の切り欠きである。このガイド切り欠き部52aは、第二の嵌合部52の上壁52cの2箇所に形成されてなる。各ガイド切り欠き部52aは、フラットケーブル10がコネクタハウジング50内に挿入される際、樹脂モールド部30の後述する各上部突起部42をガイドするようになっている。
ハウジング開口部52bは、第二の嵌合部52の両側壁52eに形成された一対の開口である。このハウジング開口部52bは、樹脂モールド部30の後述する各側部突起部43に係合するようになっている。
【0024】
なお、コネクタハウジング50の形状は、第一の嵌合部51の横断面の外形が長円形状の筒状をなし、第二の嵌合部52の横断面の外形が矩形状の筒状をなすものを例示したが、これに限らない。すなわち、対向する両端のうち一端側から端子20と接続相手端子71とが接続されるように接続相手コネクタ70が嵌合され、他端側からフラットケーブル10が挿入される形状を有していればその他の形状であってもよい。
【0025】
次に、樹脂モールド部30について説明する。
樹脂モールド部30は、図1に示すように、導体配線11aと端子20との接合部60を覆いフラットケーブル10に一体成形されてなる。
この樹脂モールド部30は、シール部31および保持部40を有してなる。
【0026】
シール部31は、樹脂モールド部30を前後で2分した場合に、樹脂モールド部30の前側部分であり、コネクタハウジング50の内部壁面52fに密着される部分である。このシール部31は、コネクタハウジング50の内部壁面52fに密着されように樹脂モールド部30の外周に沿うように形成された弾性シール部材33が配置されてなる。より具体的には、弾性シール部材33は、環状をなすゴム材等からなる。また、シール部31は、弾性シール部材33が嵌め込まれるシール部材保持部32を有してなる。
シール部材保持部32は、シール部31の外周に沿って形成された溝部であり、弾性シール部材33がこの溝部に嵌め込まれるようになっている。このシール部材保持部32に嵌め込まれた弾性シール部材33によって、図4に示すように、コネクタハウジング50とシール部31との間が密着されるようになっている。
【0027】
保持部40は、フラットケーブル10の延在方向でシール部31に比してフラットケーブル10の端子接続側端12cから離れて配置され、かつコネクタハウジング50内に嵌め込まれる形状を有してなることによってフラットケーブル10を保持する部分である。より具体的には、保持部40は、樹脂モールド部30の後端縁30aに沿って立設され、横断面の外形が矩形状のフランジ状壁41と、このフランジ状壁41の上縁面41a、すなわち保持部40の上面の2箇所に上縁面41aから突起された上部突起部42と、フランジ状壁41の両側縁面41bからと突起された一対の側部突起部43とを有してなる。
【0028】
2箇所の上部突起部42各上部突起部42は、コネクタハウジング50の各ガイド切り欠き部52aに対応したほぼ直方体形状をなしている。このような各上部突起部42が各ガイド切り欠き部52aにガイドされることによってフラットケーブル10がコネクタハウジング50内に位置決めされながら挿入されるようになっている。
なお、この実施の形態では、上部突起部42およびガイド切り欠き部52aのそれぞれが2箇所に設けられているものを例示したが、これに限らない、すなわち、フラットケーブル10がコネクタハウジング50内に位置決めされながら挿入されるようになっていればよい。例えば、上部突起部42が1箇所に設けられ、この上部突起部42をガイドするガイド切り欠き部52aが1箇所に設けられるようにしてもよい。
【0029】
一対の側部突起部43の各側部突起部43は、ほぼランス形状をなし、コネクタハウジング50の各ハウジング開口部52bに係合するようになっている。このような各側部突起部43と各ハウジング開口部52bとが係合することによって、コネクタハウジング50内の所定位置で樹脂モールド部30が固定されるようになっている。すなわち、各側部突起部43と各ハウジング開口部52bとが係合することによって、端子20と接合されたフラットケーブル10が、コネクタハウジング50内の所定位置に固定されるようになっている。
【0030】
次に、図9および図10を用いてフラットケーブルの防水コネクタ構造1の製造方法について説明する。図9および図10は、図1に示したフラットケーブルの防水コネクタ構造1の製造方法を示した図である。
まず、作業者は、フラットケーブル10の端子接続側端12cの絶縁フィルム12bを除去し、各導体配線11aの端部を露出させ、この露出された各導体配線11aの端部と各端子20とを超音波溶接、圧着等の方法によって接合する(図9(a)参照)。
【0031】
その後、作業者は、各導体配線11aと各端子20の接合部60を覆うように樹脂モールド部30をフラットケーブル10に一体成形する(図9(b)参照)。
【0032】
その後、作業者は、弾性シール部材33をシール部材保持部32に嵌め込む(図9(c)参照)。
【0033】
その後、作業者は、樹脂モールド部30をコネクタハウジング50内に挿入する(図10(d)参照)。この樹脂モールド部30のコネクタハウジング50内への挿入の際、各上部突起部42が各ガイド切り欠き部52aにガイドされることによって樹脂モールド部30がコネクタハウジング50内に位置決めされながら挿入される。また、樹脂モールド部30は、弾性シール部材33に比して強度が高められて変形しにくい構造になっているため、コネクタハウジング50内に容易に挿入することができる。
【0034】
その後、作業者は、一対のハウジング開口部52bの各ハウジング開口部52bを、樹脂モールド部30の各側部突起部43に係合させる(図10(e)参照)。これによって、フラットケーブルの防水コネクタ構造1が完成される。このように樹脂モールド部30がコネクタハウジング50に取り付けられることによって、シール部31が、弾性シール部材33を介してコネクタハウジング50の内部壁面52fに密着され、保持部40が、コネクタハウジング50内に嵌め込まれてフラットケーブル10を保持するようになっている。
また、樹脂モールド部30がコネクタハウジング50に取り付けられることによって、各導体配線11aと接合された各端子20がコネクタハウジング50内に収容され、雄コネクタとして機能するようになっている。すなわち、フラットケーブルの防水コネクタ構造1は、コネクタハウジング50内に中継用の端子を設ける必要がない。
【0035】
本発明の実施の形態のフラットケーブルの防水コネクタ構造1は、樹脂モールド部30が、コネクタハウジング50の内部壁面52fに密着されように樹脂モールド部30の外周に沿うように形成された弾性シール部材33が配置されたシール部31と、フラットケーブル10の延在方向でシール部31に比してフラットケーブル10の端子接続側端12cから離れて配置され、かつコネクタハウジング50内に嵌め込まれる形状を有してなることによってフラットケーブルが保持される保持部40と、を有してなるので、シール部31に配置された弾性シール部材33よって防水性能を有し、樹脂モールド部30によって弾性シール部材33に比して強度が高められて変形しにくい構造になっているため、コネクタハウジング50の内部壁面52fと弾性シール部材33との間に隙間が発生し難くなり、結果的に、フラットケーブルに外力が負荷される場合であっても、防水性能の低下を防ぐことができる。
【0036】
また、本発明の実施の形態のフラットケーブルの防水コネクタ構造1は、樹脂モールド部30がコネクタハウジング50に取り付けられることによって、各導体配線11aと接合された各端子20がコネクタハウジング50内に収容されるようになっているので、各導体配線11aに接続されるための中継用の端子をコネクタハウジング50内に組み付ける必要がなく、組み付け作業が容易となる。
【0037】
本発明の実施の形態のフラットケーブルの防水コネクタ構造1は、樹脂モールド部30によって弾性シール部材33に比して強度が高められ、変形しにくい構造になっているため、ハウジングコネクタ50への樹脂モールド部30の挿入が容易になる。
【0038】
また、本発明の実施の形態のフラットケーブルの防水コネクタ構造1は、シール部31が、該シール部31の外周に沿って形成された溝部からなるシール部材保持部32を有してなり、弾性シール部材33が、環状をなし、シール部材保持部32に嵌め込まれるようになっているので、弾性部材33が変形し難いように保持され、結果的に防水性能を高めることができる。
【0039】
また、本発明の実施の形態のフラットケーブルの防水コネクタ構造1は、コネクタハウジング50が、該コネクタハウジング50の上壁52cに、樹脂モールド部30が挿入される側の開口端52dから上壁内側に向けて形成された矩形状の切り欠きからなるガイド切り欠き部52aを有してなり、保持部40が、該保持部40の上縁面41aから突起して設けられた上部突起部42を有してなり、樹脂モールド部30がコネクタハウジング50内に挿入される際、上部突起部42がガイド切り欠き部52aによってガイドされるので、ハウジングコネクタ50への樹脂モールド部30の挿入が容易になる。
【0040】
(変形例)
ここで、図11を用いて本発明の実施の形態の変形例について説明する。図11は、本発明の実施の形態の変形例のフラットケーブルの防水コネクタ構造2を示した斜視図である。
本発明の実施の形態のフラットケーブルの防水コネクタ構造1は、1本のフラットケーブル10を有してなるものを例示したが、この変形例のフラットケーブルの防水コネクタ構造2は、2本のフラットケーブルが上下に並設されてなる点で実施の形態のフラットケーブルの防水コネクタ構造1と異なる。
なお、その他の構成は実施の形態と同様であり、実施の形態と同一構成部分には同一符号を付している。
この変形例のフラットケーブルの防水コネクタ構造2は、シール部31に配置された弾性シール部材33よって防水性能を有し、樹脂モールド部30によって弾性シール部材33に比して強度が高められて変形しにくい構造になっているため、実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0041】
なお、本発明の実施の形態のフラットケーブルの防水コネクタ構造1、2は、保持部40が樹脂モールド部30の後端縁30aに沿って立設され、横断面の外形が矩形状のフランジ状壁41と、このフランジ状壁41の上縁面41aの2箇所に上縁面41aから突起された上部突起部42と、フランジ状壁41の両側縁面41bからと突起された一対の側部突起部43とを有してなるものを例示したが、これに限らない。すなわち、フラットケーブル10の延在方向でシール部31に比してフラットケーブル10の端子接続側端12cから離れて配置され、コネクタハウジング50内に嵌め込まれる形状を有してなることによってフラットケーブル10を保持することができればその他の形状であってもよい。
【0042】
以上、本発明者によってなされた発明を、上述した発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上述した発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0043】
1、2 フラットケーブルの防水コネクタ構造
10 フラットケーブル
11 導体部
11a 導体配線
12 絶縁被覆部
12b 絶縁フィルム
12c 端子接続側端
20 端子
20a、20b 端部
30 樹脂モールド部
30a 後端縁
31 シール部
32 シール部材保持部
33 弾性シール部材
40 保持部
41 フランジ状壁
41a 上縁面
41b 側縁面
42 上部突起部
43 側部突起部
50 コネクタハウジング
51 第一の嵌合部
52 第二の嵌合部
52a ガイド切り欠き部
52b ハウジング開口部
52c 上壁
52d 開口端
52e 側壁
52f 内部壁面
60 接合部
70 接続相手コネクタ
71 接続相手端子
図1
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