特許第5766596号(P5766596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5766596
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】電池冷却構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/651 20140101AFI20150730BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20150730BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20150730BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20150730BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20150730BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20150730BHJP
   H01M 10/6566 20140101ALI20150730BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   H01M10/651
   H01M10/613
   H01M10/617
   H01M10/625
   H01M10/643
   H01M10/6563
   H01M10/6566
   H01M2/10 V
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-282750(P2011-282750)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-134821(P2013-134821A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】槌谷 克己
【審査官】 土居 仁士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−185103(JP,A)
【文献】 特開2001−319697(JP,A)
【文献】 特開2001−283940(JP,A)
【文献】 特開2005−038678(JP,A)
【文献】 特開2005−183343(JP,A)
【文献】 特開2006−156211(JP,A)
【文献】 特開2006−278140(JP,A)
【文献】 特開2008−135358(JP,A)
【文献】 特開2008−034297(JP,A)
【文献】 特開2004−087218(JP,A)
【文献】 特開2009−205979(JP,A)
【文献】 特開2010−277875(JP,A)
【文献】 特開2001−313090(JP,A)
【文献】 特開2003−142059(JP,A)
【文献】 特開2012−028207(JP,A)
【文献】 特開2012−043591(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0093901(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0124620(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/60−10/667
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の円柱状の電池モジュールが複数列の格子状に配列されてなる組電池を電池ケース内に収蔵し、
電池ケースに設けられた冷却風導入口から電池ケース内に冷却風を導入し、電池モジュールを冷却風により冷却し、電池ケースに設けられた冷却風導出口から電池ケース外に冷却風を排出する電池冷却構造であって、
電池ケース内部には、最上流列の電池モジュールよりも上流となる領域に、電池ケース内部を下流側と上流側に区画するような流れ制御板が設けられており、
流れ制御板には流れ上流側と下流側とを互いに連通する貫通穴が設けられると共に、
流れ制御板からは、互いに隣接する最上流列の電池モジュールの間の空間に達するような複数の仕切板がそれぞれの電池モジュールの間の空間に対して立設されて、
最上流列のそれぞれの電池モジュールにおいては、電池モジュールの一方の側と仕切板との間を通過する空気流の流速が、当該電池モジュールの他方の側と仕切板との間を通過する空気流の流速よりも大きくなるようにされ、
最上流列の電池モジュールと第2列の電池モジュールとの間隔h2が、電池モジュールの直径Dに対し、0.05≦h2/D≦0.19 とされたことを特徴とする電池冷却構造。
【請求項2】
流れ制御板に設けられる貫通穴が、電池モジュールの一方の側と他方の側のいずれかに偏在して設けられたことを特徴とする請求項1に記載の電池冷却構造。
【請求項3】
電池モジュールの一方の側と他方の側において、電池モジュールと仕切板の間隔を異ならせたことを特徴とする請求項1に記載の電池冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池(特に組電池)の冷却構造に関する。特に電池を冷却風によって冷却する空冷式の電池冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車などには、動力源として二次電池を集合させた組電池が用いられている。充電や放電の過程において、電池が過熱したり電池間の温度差が大きくなったりすると、電池の性能が低下したり、電池が損傷することが起こるため、通常、これら組電池を電池ケースに収納して、冷却風を電池ケース内に送り込んで組電池を冷却することが行われる。
【0003】
冷却にあたっては、組電池を構成する複数の電池の温度を極力均一化し、かつ、効率的に電池を冷却することが必要であり、そのために、さまざまな電池冷却構造が提案されるに至っている。
例えば、特許文献1には、電池ケースの冷却風導入口側に、複数の導風板を設けて、導風板の間を通過した冷却風が、電池モジュールの間に向かうようにした冷却構造が開示されている。また、特許文献2には、対向する壁の間に電池モジュールを配置し、電池モジュールの間の位置に対向壁を突出した部分を設け、この突出部の高さを風下側で高くした電池冷却構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−71394号公報
【特許文献2】特開2007−66771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池冷却構造においては、電池モジュールが上流側から下流側に向けて複数列をなして配列されることが多いが、この場合、冷却風が上流側の電池モジュールを冷却することで温まってしまい、下流側の電池モジュールの冷却が不十分となって、電池温度の均一化が不十分となりやすい。
上記文献に開示された従来の技術もまた、こうした電池温度均一化の課題を解決することを意図する発明とも位置づけられるが、本発明は、他の技術的手段により課題解決を図るものである。
【0006】
即ち、本発明の目的は、組電池を構成する電池モジュールの温度がより均一になるように冷却できるような電池冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者が電池温度の均一化が不十分となる原因を調査したところ、電池モジュールが複数列の格子状に配置されていると、図14に示すように、上流側電池モジュールを冷却した冷却風をうまくコントロールできず、中流および下流側の電池モジュールの周辺では冷却風が素通りしてしまい、それら電池モジュール周辺に流れがよどんだ領域が生じやすいことを発見した。そしてこのよどみ領域の存在が、中流および下流側の電池モジュールの冷却性を悪化させる要因となっていることを突きとめた。
【0008】
さらに、本発明の発明者は、鋭意検討の結果、電池ケース内部に特定の構造の流れ制御板を設けると、驚くべきことに、格子状に配列された電池モジュールの間を流れる冷却風の流れを蛇行させることができ、冷却風の蛇行によって、電池モジュール周りの流れのよどみ領域の発生を効果的に予防でき、組電池を構成する電池の温度をより均一化できることを知見し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、複数本の円柱状の電池モジュールが複数列の格子状に配列されてなる組電池を電池ケース内に収蔵し、電池ケースに設けられた冷却風導入口から電池ケース内に冷却風を導入し、電池モジュールを冷却風により冷却し、電池ケースに設けられた冷却風導出口から電池ケース外に冷却風を排出する電池冷却構造であって、電池ケース内部には、最上流列の電池モジュールよりも上流となる領域に、電池ケース内部を下流側と上流側に区画するような流れ制御板が設けられており、流れ制御板には流れ上流側と下流側とを互いに連通する貫通穴が設けられると共に、流れ制御板からは、互いに隣接する最上流列の電池モジュールの間の空間に達するような複数の仕切板がそれぞれの電池モジュールの間の空間に対して立設されて、最上流列のそれぞれの電池モジュールにおいては、電池モジュールの一方の側と仕切板との間を通過する空気流の流速が、当該電池モジュールの他方の側と仕切板との間を通過する空気流の流速よりも大きくなるようにされ、最上流列の電池モジュールと第2列の電池モジュールとの間隔h2が、電池モジュールの直径Dに対し、0.05≦h2/D≦0.19 とされたことを特徴とする電池冷却構造である。
【0010】
本発明においては、流れ制御板に設けられる貫通穴が、電池モジュールの一方の側と他方の側のいずれかに偏在して設けられることが好ましい(第2発明)。あるいは、本発明においては、電池モジュールの一方の側と他方の側において、電池モジュールと仕切板の間隔を異ならせることが好ましい(第3発明)。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、仕切板を有する特定の流れ制御板を用いて、最上流列の電池周りの流れを整流するが、仕切板がそれぞれの電池モジュールの間の空間に対して立設されて、最上流列のそれぞれの電池モジュールにおいては、電池モジュールの一方の側と仕切板との間を通過する空気流の流速が、当該電池モジュールの他方の側と仕切板との間を通過する空気流の流速よりも大きくなるようにされているので、流速の早い側の冷却風流れが最上流電池モジュールに巻きつくように流れるようになり、その結果、格子状に配列された電池モジュールの間を流れる冷却風の流れを蛇行した流れとすることができる。
【0012】
そして、さらに、本発明においては、最上流列の電池モジュールと第2列(2段目)の電池モジュールとの間隔h2が、電池モジュールの直径Dに対し、0.05≦h2/D≦0.19となるようにされているので、上段電池モジュールと2段目の電池モジュールの間を通過した冷却風流れが、2段目の電池モジュールに巻きつくように流れやすくなって、2段目の電池モジュールを効果的に冷却し、特に、上段の電池モジュールの温度と2段目の電池モジュールの温度差を小さくできるという効果が得られる。
【0013】
従って本発明によれば、冷却風が蛇行しながら流れて、2段目、あるいはより下流側に配置される電池モジュールの周囲に冷却風がよどむ領域が現れることが抑制されて、それら電池モジュールを効果的に冷却でき、組電池を構成する電池の温度を、より効果的に均一化できるという効果が得られる。
【0014】
さらに、本発明において、第2発明や第3発明のようにした場合には、冷却風流れの蛇行が促されて、より確実に上記効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の電池冷却構造を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態における流れ制御板付近を拡大して示す断面図である。
図3】本発明における電池モジュール周りの流れを示す模式図である。
図4】本発明の第2実施形態における流れ制御板付近を拡大して示す断面図である。
図5】本発明のさらに他の実施形態における流れ制御板付近を拡大して示す断面図である。
図6】本発明の第5実施形態における流れ制御板付近を拡大して示す断面図である。
図7】本発明の第6実施形態における流れ制御板付近を拡大して示す断面図である。
図8】本発明の実施例1における冷却風流れのシミュレーション結果を示す図である。
図9】本発明の実施例3における冷却風流れのシミュレーション結果を示す図である。
図10】本発明の参考例1における冷却風流れのシミュレーション結果を示す図である。
図11】本発明の参考例2における冷却風流れのシミュレーション結果を示す図である。
図12】従来例における冷却風流れのシミュレーション結果を示す図である。
図13】本発明における上段と2段目の電池温度差の低減効果を示すグラフである。
図14】従来の電池冷却構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面に基づいて、本発明の電池冷却構造の実施形態について、ハイブリッド自動車用の組電池を収容する電池ケースを例にして説明する。図1は本発明の電池冷却構造の実施形態の冷却風の流れ方向に沿った断面図である。また、図2は本実施形態の電池冷却構造の流れ制御板付近を拡大して示す断面図である。
【0017】
箱状の電池ケース1の内部空間には、棒状の電池モジュール2,2が所定の間隔で平行に配置されている。電池モジュール2,2は直列あるいは並列に電気的に接続されて組電池を構成する。本実施形態においては、電池モジュールを構成する電池はニッケル水素バッテリーであり、電池を直列に接続した電池モジュール2は円柱状の棒状の形状となっている。本発明においては特に円柱状の電池モジュールが好ましく使用される。なお、電池モジュールは1つの電池で構成されるものであっても良い。
【0018】
図1では、図の紙面奥行き方向に電池モジュール2、2が延在するように配置されており、21本の電池モジュール(もしくはダミーモジュール)が3列×7本の格子状に配置されている。各電池モジュール2,2は、電池ケース1の内面や隣接する電池モジュールとの間に所定の間隔(隙間)を有し、その隙間に冷却風が流れるように、スペーサや支持部材によって、箱状の電池ケース内部に収容、支持されている。本実施形態においては、電池モジュール付近で全体として図の上側から下側に向かって冷却風が流れるようにされており、その意味で、格子状に配列された3列の電池モジュールを、以下、上流側(あるいは上段、最上流列)電池モジュール、中流(あるいは中段、2段目、2列目)電池モジュール、下流側(あるいは下段)電池モジュールと呼ぶことがある。
【0019】
電池ケース1は金属や合成樹脂により成形された中空の箱状の部材であり、電池ケース1には冷却風導入口11と冷却風導出口12が設けられて、電池ケース1の内部空間が冷却風通路となる。そして電池ケース1は、冷却風導入口11や冷却風導出口12がダクトや送風ファンなどの周辺部材と接続されて一連の冷却風通路となって、組電池の冷却に使用される。
【0020】
本実施形態では、冷却風導出口12の下流側に送風ファン(図示せず)が設けられて、図の左上の冷却風導入口11の上流側に接続される冷却風ダクト(図示せず)から、冷却風が電池ケース1の内部に流れ込み、電池モジュール2,2と電池ケース1との間の隙間を通りながら電池を冷却して、冷却風導出口12から図の右下側へと暖められた冷却風が流れ出ていく。
【0021】
本発明においては、電池ケース1の内部に、電池ケースの内部空間を冷却風導入口側と冷却風導出口側とに仕切り、冷却風の流れをさえぎるように、流れ制御板13が設けられている。そして、流れ制御板13は、最上流側(上段)の電池モジュール2よりも上流側となる位置に、即ち全ての電池モジュール(組電池)よりも上流側となる位置に、電池ケース1に対して一体に取り付けられている。
【0022】
流れ制御板13は、図2にその詳細な断面形状を示すように、略平板状の制御板本体131に、複数の貫通穴(開口穴)132、132が、電池モジュールの長さ方向に沿って(図2では紙面奥行き方向に)設けられるとともに、電池モジュールの長さ方向に沿う複数の仕切板133が、上段電池モジュールの間を仕切るようなリブ状に、制御板本体131から立設されて構成されている。
流れ制御板13によって上流側と下流側に分け隔てられた電池ケース1の内部空間は、これら貫通穴132,132を介して上流側と下流側が連通するようにされており、下流側に設けられた組電池(電池モジュール2、2)は、これら貫通穴から吹き出る冷却風により冷却される。
【0023】
本実施形態における流れ制御板13の構造をより詳細に説明する。制御板本体131に設けられる貫通穴132,132は、それぞれの貫通穴が、電池モジュールの長さ方向に延在するような長穴もしくはスリット状となるように形成されている。これら貫通穴は、それぞれの電池モジュールの全長にわたって設けられる。そして、本実施形態においては、上段の電池モジュールのそれぞれに対して、第1の貫通穴132aが電池モジュールの直上部に、第2の貫通穴132bが第1貫通穴の中心よりも下流側(図の右側)にオフセットした位置に設けられる。即ち、貫通穴は、全体として、電池モジュールに対して上流側あるいは下流側に偏在して設けられている(本実施形態では、下流側に偏在している)。なお、本実施形態においては、流れ制御板13の上流側領域では冷却風は図の左側から右側へと流れるため、流れ制御板に設けられる貫通穴の位置については、左側を上流側、右側を下流側と表現している。
【0024】
さらに、本実施形態においては、全ての上段電池モジュールに対して、貫通穴132,132がそれぞれの電池モジュールに対し下流側(図2で右側)に偏在するように設けられている。
【0025】
制御板本体131に立設される仕切板133,133について詳細に説明する。仕切板133,133は、制御板本体131から、上段の電池モジュール2,2の間の空間に向かって、電池モジュールの長さ方向に沿うようなリブ状に立設されている。仕切板133,133は、上段の電池モジュールの間の空間のそれぞれに対して、上段の電池モジュールの間の空間Cに達する程度の長さに設けられる。ここで、空間Cとは、上段の互いに隣接する電池モジュールの間の空間のことであり、図2にその領域を点線で囲って示す。本実施形態においては、仕切板133,133は、上段の電池モジュールの間の全てに対して設けられると共に、仕切板133,133は、上段の電池モジュールの中心を結ぶ線m付近まで達するような長さに設けられている。そして、本実施形態においては、仕切板と電池モジュールとの間隔が電池モジュールの左右で等しくなるように(すなわち、d1=d2となるように)、仕切板が設けられている。
【0026】
仕切板133の先端部と上段の電池モジュールの中心を結ぶ線mとの関係は、仕切板133先端と線mとの間の距離d3が、電池モジュールの半径をrとして、d3<r、より好ましくは、d3<0.5*r、さらに好ましくは、d3<0.2*rとなるようにすると良い。ここで、仕切板133の先端部が上段の電池モジュールの中心を結ぶ線mと一致するようにしたり、仕切板133の先端部が上段の電池モジュールの中心を結ぶ線mよりも長く(即ち下流側(図下側)に延在して)設けられることもまた好ましい実施の形態であり、この場合の突き出し量も、前記d3と同様の数値範囲とすることが好ましい。
【0027】
そして、本実施形態においては、上段電池モジュール2uと2段目(中段)電池モジュール2mの間の間隔h2が、電池モジュール2の直径をDとして、0.05≦h2/D≦0.19となるように、電池モジュールが配置されている。0.053≦h2/D≦0.175とすることが特に好ましい。
【0028】
上記電池冷却構造を構成する電池ケースの製造方法は、公知の製造方法により行うことができ、例えば、電池ケース1は開口状の箱と蓋に分けたケース部材を合成樹脂(例えばポリプロピレン樹脂)の射出成形により形成することができる。流れ制御板13も合成樹脂(例えばポリプロピレン樹脂)の射出成形により形成することができ、可能であれば、電池ケース1のケース部材と一体成形してもよい。もちろん、流れ制御板13を金属板や合成樹脂の射出成形などによりケースとは別体に作成して、電池ケース組み立て時に所定位置に取り付けるようにしてもよい。
【0029】
電池ケース1内の所定位置に電池モジュールを並べて、電池モジュール間の配線を確立し、流れ制御板を組み込んだ状態で電池ケースの蓋を閉じて、上記実施形態の組電池が収蔵された電池ケースおよび電池冷却構造が完成される。
【0030】
本発明の電池冷却構造による作用と効果を説明する。
本発明の電池冷却構造においては、流れ制御板13に設けられた貫通穴132,132と立設された仕切板133,133と円柱状の電池モジュール2,2の相互作用によって、流れ制御板13よりも下流の流れが、格子状に配置された電池モジュールの間を蛇行するような流れとなるようにできる。
【0031】
上記実施形態に基づいて説明すると、図3において、図の左上から流れ込んでくる冷却風は、貫通穴132,132を通過して、電池モジュール2,2が収容された空間に流れ込む。ここで、流れ制御板13には、仕切板133,133が上段の電池モジュール間の空間に達するように設けられているため、貫通穴132,132を通過した冷却風は、電池モジュール2と仕切板133,133との間の隙間から下流側へと流れていくことになる。
【0032】
そして、本実施形態においては、上述したように、上段電池モジュールの中心に対して貫通穴が全体として下流側(図2図3の右側)に偏在するように設けられているため、電池モジュール2と仕切板133,133との間の隙間から下流側へと流れていく冷却風の流れは、貫通穴が偏在する側(電池モジュールに対し図の右側)において、反対側(貫通穴が少ない側:図の左側)よりも、勢いよく流れるものとなる。すなわち、上段の電池モジュールの一方の側(図で右側)と仕切板との間を通過する冷却風の流速Vaが、その電池モジュールの他方の側(図で左側)と仕切板との間を通過する冷却風の流速Vbよりも大きくなるように、冷却風が流れる。
【0033】
本発明では、このように上段の電池モジュールの両側部を流れる冷却風の流速に差がつく(即ちVa>Vbとなる)ことにより、以下に説明するような電池モジュール周りを蛇行する冷却風流れが実現される。
【0034】
冷却風流れが蛇行するメカニズムは、以下に説明するように、コアンダ効果の影響が支配的であろうと推察される。即ち、気流を物体表面に沿って流すと、気流が物体の表面形状に沿って曲がろうとする、いわゆるコアンダ効果が生ずる。この効果は上段電池モジュールの側部を通過する気流においても生ずる効果である。ここで、上段の電池モジュール2uの両側部を流れる冷却風の流速に差があると、コアンダ効果は流速の高い側に顕著に現れる。その結果、それぞれの電池モジュールの両側部を通過した冷却風流れは、流速の高い側の冷却風(図中の電池モジュール2u右側のVaで示される流れ)が、上段電池モジュール2u周りに巻きつくように流れるようになる。
【0035】
そして、上段電池モジュール2u周りに巻きつくように流れた冷却風は、中段の電池モジュール2mの上側表面に沿って吹付けられるようになり、今度は、中段の電池モジュール2m周りに巻きつくように流れるようになる。
【0036】
このようにして、本発明によれば、円柱状の電池モジュールの周りに生ずるコアンダ効果を利用して、上段電池モジュールや中段電池モジュールの周辺に、冷却風が蛇行して流れる流れ場が実現されることになる。
【0037】
そして、本発明においては、更に、最上流列電池モジュール2uと2列目電池モジュール2mとの間隔h2が、電池モジュール2の直径をDとして、0.05≦h2/D≦0.19となっているので、最上流列電池モジュール2uと2列目電池モジュール2mとの間を流れる冷却風が、2列目(2段目)電池モジュールにしっかりと巻きつくように流れる。その結果、格子状の電池モジュール間の冷却風流れの蛇行がよりはっきりと発生し、特に2段目の電池モジュールの冷却が効果的に行われるようになり、電池温度がより均一化する。
【0038】
h2/Dが大きすぎると、冷却風流れが第2列目の電池モジュール2mに巻きつく効果が弱まる傾向がある。逆に、h2/Dが小さすぎると、最上段の電池モジュール2uに巻きつくように流れてきた冷却風流れをブロックしてしまうことになり、冷却風の蛇行流れが邪魔されやすくなる。以上の効果は後述する実施例により例証される。
【0039】
また、本実施形態においては、それぞれの電池モジュールにおける両側部の流速の大小関係が、最上流列の電池モジュールの全てにおいて揃えられている。すなわち、いずれの最上流電池モジュールでも、電池モジュールの右側の流速が左側の流速よりも大きくなるようにされている。そのため、格子状に配置される電池モジュールの周りで、流速の高い部分と流速の低い部分とが交互に規則的に並ぶようになって、上記した蛇行する流れが規則的かつより明確に現れやすくなる。
【0040】
以上説明したように、本発明によれば、上段電池モジュールや、それに後続する電池モジュールの周りに、格子状に配置された電池モジュールの間を蛇行するような冷却風流れを生じさせることができる。特に2段目の電池モジュールの周りに冷却風流れを導いて、巻きつくような流れを実現し、これら電池モジュールを効率的に冷却できるようになる。
【0041】
従って、本発明によれば、中段以下の電池モジュール周りの冷却風流れを効果的に改善して、組電池を構成する電池モジュール間の温度差を少なくして、電池温度を効果的に均一化することができる。
【0042】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に本発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその説明を省略する。
【0043】
まず、流れ制御板に設けられる貫通穴の変更例を説明する。流れ制御板に設けられる貫通穴は、電池モジュールの両側部で流速に差が生ずるようなものであれば特に限定されないが、上記実施形態で説明したように、貫通穴が電池モジュールの中心に対して偏在するようにされていると、効果的に電池モジュールの両側部での流速差を生じさせることができて好ましい。貫通穴を偏在させる具体的手段は、貫通穴の大きさ、位置、数などの手段で調整して偏在させることができる。
【0044】
例えば、図4に示すように、電池モジュールの一方の側部側にのみ貫通穴が存在するようにすることもできる(第2実施形態)。本実施形態においては、流れ制御板33には第1実施例と同じくリブ状の仕切板333が設けられると共に、貫通穴332が、仕切板立設部近傍で電池モジュールの下流側(図の右側)となる位置にのみ設けられている。
【0045】
本実施形態においても、それぞれの上段電池モジュールの両側部と仕切板333との間を流れる空気の流れが、一方の側(図中右側)での流速Vaが他方の側(図中左側)での流速Vbよりも大きくなるようにできて、第1実施形態と同じく、格子状に配置された電池モジュールの間を蛇行して流れるような冷却風流れを実現して、電池モジュール温度の均一化を図ることができる。
【0046】
また、第2実施形態においては、仕切板333が、上段電池モジュールの中心を結ぶ線mまで延在するようにされている。このようにされていると、あるいは線mを越えて延在するようにされていると、上段電池モジュールの間を流れる冷却風流れにおいて、それぞれの電池モジュール側部を通過する流れが仕切られたより個別の流れとなるため、流速の差が現れやすくなって、冷却風流れの蛇行化や電池温度の均一化により効果的である。
【0047】
図5には、流れ制御板に設けられる貫通穴を偏在させる他の構成の例を示す。図5には上段電池モジュールのみ示している。貫通穴は、図5(a)に示すように、電池モジュールの一方の側(図中右側)に多く、他方の側(図中左側)に少なくなるように設けてもよい。本実施形態では、一方の側に2列の貫通穴を、他方の側に1列の貫通穴を設けている。
【0048】
あるいは、図5(b)に示すように、貫通穴の大小により、貫通穴を偏在させるようにしても良い。即ち、図5(b)の実施形態においては、電池モジュールの一方の側(図中右側)の貫通穴が大きく(幅が広く)、他方の側(図中左側)の貫通穴が小さく(幅が狭く)なるようにされている。
【0049】
これら実施形態においても、貫通穴が偏在する側(貫通穴が大きい側・数が多い側)において、電池モジュール側部と仕切板の間を流れる冷却風の流速が、他方の側における流速よりも高くなるようになって、第1実施形態や第2実施形態と同様に、冷却風流れが電池モジュールの間を蛇行して、電池温度の均一化が図れる。
【0050】
また、貫通穴の詳細な形態は、例えば、図5(a)の実施形態に示したように、貫通穴の上流側端縁に面取りが施されたような形態であっても良い。あるいは、図5(a)に示したようなC面取りのかわりに端縁部にRをかけたような形態であっても良い。
【0051】
本発明において、上段の電池モジュールの両側部の流速に差をつける手段としては、仕切板と電池モジュールの間の間隔を調整する手段を採用することもできる。図6に示す本発明第5実施形態では、流れ制御板43には、仕切板433が上段電池モジュールの間まで立設されており、流れ制御板43には、連通穴432,432が設けられている。本実施形態においては、1対の連通穴432,432は電池モジュールに対しほぼ対称な位置と大きさに設けられているが、仕切板433は、隣接する電池モジュールの中間から一方の電池モジュールの側にオフセットした位置に設けられており、その結果、電池モジュールと仕切板との間隔(図中d1とd2)が、それぞれの電池モジュールの両側部で異なるように(本実施形態では、d1<d2となるように)されている。
【0052】
このように、電池モジュールと仕切板との間隔が、それぞれの電池モジュールの両側部で異なるようにされていると、電池モジュールの上側から下側に流れる冷却風の流れが仕切板との間で絞られるようになるため、間隔の狭い(d1)側の流速Vaが間隔の広い(d2)側の流速Vbよりも大きくなる。その結果、本実施形態においても、第1実施形態や第2実施形態と同様に、流速の大きい側(Va側)の流れが、上段電池モジュールや中段電池モジュールに巻きつくように流れるようになって、冷却風の流れが格子状に配置された電池モジュールの間で蛇行するようになり、電池温度の均一化が図れるようになる。
【0053】
また、上述した一連の実施形態においては、電池モジュールの両側部で生ずる流速の大小関係(例えば、第1実施形態でいえば、図2の電池モジュールの右側の流速Vaが左側の流速Vbよりも大きいという関係)が、最上流列の全ての電池モジュールでそろえられることが好ましいことを説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、流速の大小関係が最上流の電池モジュールの全てで揃っていなくても良い。
【0054】
そのような実施形態の例を図7に示す(第6実施形態)。本実施形態においては、それぞれの電池モジュールの両側部を通過する冷却風流れに差が生じるように流れ制御板53や、貫通穴532,532、仕切板533,533、および電池モジュール2,2が構成・配置されると共に、それぞれの電池モジュールの両側部で生ずる流速の大小関係が、互いに隣接する電池モジュールの間で互いに逆になるように、すなわち、流速の大小関係が交互に切り替わるようにされている。
【0055】
本実施形態においても、上段電池モジュールの両側部の流速の差により、冷却風の蛇行が促されて、電池温度の均一化を図ることができる。
【0056】
そして、これら実施形態においても、上段電池モジュール2uと2段目(中段)電池モジュール2mの間の間隔h2が、電池モジュール2の直径をDとして、0.05≦h2/D≦0.19とされることによって、上段電池モジュールと2段目電池モジュールの間を通過した冷却風が、2段目の電池モジュールに巻きついて流れる傾向がより顕著になる。そして、2段目の電池モジュールが効果的に冷却されて、電池温度の均一化が図られる。
【0057】
また、上記実施形態の説明においては、中空箱状の電池ケース1に組電池が収蔵される形態について説明したが、電池ケースの実施形態は、ケース専用に成形された中空箱状のものに限定されるものではなく、電池ケースは、パネル部材やブロック部材などの複数の部材を組み合わせて構成されるものであってもよい。例えば、車体のフロアパネル上に組電池を配置して、組電池を取り囲むように、断熱パネルや電極パネルを設けて、フロアパネルや断熱パネル、電極パネルの間を冷却風通路とした電池ケースを構成するようにすることもできる。このように、本発明における電池ケースには、専用の構成部材で構成された電池ケースのほか、組電池の周辺に配置される部材を利用・兼用して構成される電池ケースを含む。
【0058】
組電池を構成する電池の種類には、一次電池、二次電池(リチウムイオンバッテリー、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池など)、二重電気キャパシタなどが例示できる。電池モジュールは、上記実施形態においては、棒状で特に円柱状のものについて説明したが、完全な円柱状に限定さるものではなく、コアンダ効果により流れの偏向効果が生じうる形状であれば、楕円形状やおむすび形状のような円柱状であってもよい。
【0059】
また、組電池の電池モジュールが配列される形態は、上記実施形態においては電池モジュール周りの流れの上流から下流にかけて3段の格子状に電池モジュールが配置される例について説明したが、電池モジュールの配列は3段に限定されるものではなく、流れ方向に沿って2段もしくは4段以上の段数にわたるものであっても良い。本発明によれば、特に最上段と最下段の間の中間の段(特に2段目)の電池モジュールの冷却効率を効果的に高めることができる。
また、本発明の電池冷却構造には、上記構成に加え、例えば、組電池の下流側の流れ制御板といった、他の流れ制御部材や構造を併用することもできる。
【0060】
組電池が使用される目的・用途も、自動車用に限定されるものではなく、例えば、風力発電装置や太陽電池発電装置などにおいて発電電力を平準化する目的で二次電池が使用される用途など、広い用途に使用される組電池の冷却に本発明は活用できる。
【実施例】
【0061】
本発明による電池温度の均一化の効果を例証するために、以下に示す実施例、参考例および従来例に対し、数値流体シミュレーションを行うと共に、各電池モジュールに所定の発熱量を設定して各電池モジュールの冷却温度シミュレーションを実施した。
【0062】
(実施例1)
シミュレーションは、図4に示した第2実施形態について行った。実施例1とした第2実施形態の電池冷却構造における電池モジュールの配列や流れ制御板33の主要な具体的寸法は以下のとおりである。電池モジュール2,2は3列x7本の格子状に配列され、電池モジュール2の直径は32mmであり、電池モジュールの中心間の左右の間隔は39mmとなるように配置されている。
【0063】
流れ制御板33は、最上流(上段)の電池モジュール表面から上流側に3mm隔てた位置に制御板本体331が位置するように設けられている。流れ制御板の制御板本体331に設けられる貫通穴332の幅(図2で左右方向)は2.5mmで設けられている。そして、仕切板333は、厚さ2mmで立設されて、最上段電池モジュールの中心を結ぶ線mに達する位置まで延在している。また、電池モジュールと仕切板の間隔は、貫通穴332が存在する側(電池の右側)で約2.3mmとされ、貫通穴が存在しない側(電池の左側)で約2.7mmとされている。そして、最上流列の電池モジュールと2列目の電池モジュールの間の隙間h2は、2.7mmとされている。
【0064】
(他の実施例及び参考例)
実施例2,3及び参考例1,2は、実施例1に対し、上段電池モジュールと2段目の電池モジュールとの間の寸法h2を変化させた例である(表1)。参考例1、実施例2、実施例1、実施例3、参考例2の順にh2(h2/D)が大きくなるようにされている。また、従来例は、仕切り板がない流れ制御板を供えた例であり、貫通穴の配置は図12の流れ図より明らかであるように、上段電池モジュール同士の中間位置に設けられている。
【0065】
【表1】
【0066】
電池間を流れる冷却風流れの様子(流れシミュレーションの結果)は、図8に実施例1の結果を、図9に実施例3の結果を、図10に参考例1の結果を、図11に参考例2の結果を、図12に従来例の結果を示している。これらの図は、図1に示した電池冷却構造において破線で囲って示した領域の速度分布である。図中、色の濃い部分が流速の高い領域を、色の薄い部分が流速の低い領域を示している。
【0067】
図8図9のシミュレーション結果に示すように、実施例1や実施例3においては、上段の電池モジュールと仕切り板の間から吹き出す冷却風は、貫通穴が偏在する側(上段電池モジュールの右側)の流速が高くなっている。そして、流速が高い側の冷却風流れが、上段電池モジュールに巻きつくように流れて、上段電池モジュールと中段電池モジュールの間を流れ、さらに、中段電池モジュールに巻きつくように流れて、全体として、冷却風流れが、格子状に配置された電池モジュールの間を蛇行するような流れとなった様子が観察される。
【0068】
また、図10(参考例1)や図11(参考例2)に示す参考例においても、上段電池モジュールを通過した流れの一部が、上段電池モジュールと2段目電池モジュールの間に流れ、冷却風が少し蛇行する様子が観察される。しかしながら、参考例1や参考例2では、蛇行する流れが弱い。
【0069】
一方、電池モジュールに対し貫通穴が対称に配置されるとともに仕切板も存在しない従来の冷却風制御板を用いた従来例の数値シミュレーションを行うと、図12に示すような解が得られた。図12の従来例の解析結果においては、上段の電池モジュールの間を流れた冷却風流れは、大部分がそのまま中段の電池モジュールの間に流れ込みながらその勢いを失ってしまい、上段電池モジュールと中段電池モジュールの間や、中段電池モジュールと下段電池モジュールの間に、流速が低いよどみ領域が存在しやすいことがわかる。
【0070】
それぞれの仕様に対する冷却温度シミュレーションにおいては、上段電池モジュール2uと2段目電池モジュール2mの温度差を評価し、同じ冷却風風量・諸元(流れ制御板を除くケース形状、電池直径・配置、発熱量など)で、各仕様間の比較を行った。その結果を表2に示す。表2には、それぞれの仕様における、上段電池モジュールの電池平均温度と2段目電池モジュールの電池平均温度の温度差を示している。また、それぞれの仕様において、所定の冷却風流量を流すために要した圧力損失も示している。
【0071】
電池の平均表面温度の評価は、図1に示す上段の電池モジュールや中段の電池モジュールに対し、それぞれ、電池モジュールの電池表面温度を電池周方向に平均して、各電池モジュール表面の平均温度を計算し、更に上段電池や中段電池(2段目の電池)でその平均を求めて、上段電池平均温度と2段目電池平均温度を求めた。そして、上段と2段目の電池平均温度の差でもって、上段電池と2段目電池の温度差を評価した。
【0072】
【表2】
【0073】
図13のグラフに、上段電池と2段目電池との間隔h2(h2/D)と、電池の温度差の関係を示す。いずれの実施例、参考例も従来例と比べれば、電池の温度が小さくなっている。さらに、実施例1,2,3及び参考例1,2を対比すると、h2/Dを、0.05≦h2/D≦0.19の範囲にすると、上段と2段目の電池の温度差を特に小さくできることがわかる。また、表2によれば、実施例と参考例の間では、圧力損失の差はそれほどないことがわかる。
【0074】
0.05≦h2/D≦0.19の範囲においては、図8図9に示したように、電池周りを蛇行する流れがはっきりと現れている。図8(実施例1)と図9(実施例3)の流れを対比すると、h2/Dが大きい図9(実施例3)よりも、h2/Dが小さい図8(実施例1)の方が、上段電池と2段目電池の間を流れた冷却風が2段目電池にしっかり巻きついて流れている。即ち、h2/Dが大きくなると、冷却風の2断面電池への巻きつきが弱まる傾向があることがわかる。そして、参考例2のように、h2/D>0.19となると、図11に示したように、冷却風が2段目電池にあまり巻きつかなくなってしまい、2段目電池の冷却性が悪くなり、上段と2段目の電池温度差が大きくなることが理解される。
【0075】
逆に、h2/Dが0.05よりも小さくなると(参考例1)、上段電池と2段目電池の間が狭いために冷却風が流れにくくなって、冷却風が蛇行しにくくなる。そのため、上段と2段目の電池の温度差が大きくなってしまう傾向がある。この様子は、図10の流れ図にも見てとれる。
従って、0.05≦h2/D≦0.19の範囲にすることにより、本発明において、上段電池モジュールを通過した冷却風が、効果的に、上段電池モジュールと2段目電池モジュールの間を流れ、2段目電池モジュールに巻きつくように流れ、2段目電池モジュールの冷却が効率的に行われ、電池間の温度差が小さくなる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、電気自動車やハイブリッド自動車、発電装置などに使用される大容量組電池の冷却に使用することができ、それら組電池を構成する電池を均一に冷却して、電池の性能を効果的に発揮させることができ、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0077】
1 電池ケース
11 冷却風導入口
12 冷却風導出口
13 流れ制御板
131 制御板本体
132 貫通穴
133 仕切板
2 電池モジュール
33 流れ制御板
331 制御板本体
332 貫通穴
333 仕切板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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