特許第5766612号(P5766612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5766612高い耐摩耗性を持つグラニュレータブレード及び該ブレードを鋭利にする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5766612
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】高い耐摩耗性を持つグラニュレータブレード及び該ブレードを鋭利にする方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/18 20060101AFI20150730BHJP
   B26D 1/28 20060101ALI20150730BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20150730BHJP
   C22C 38/24 20060101ALI20150730BHJP
   B26D 1/00 20060101ALI20150730BHJP
   C22C 38/36 20060101ALN20150730BHJP
【FI】
   C21D9/18
   B26D1/28 B
   C22C38/00 301H
   C22C38/00 302E
   C22C38/24
   B26D1/28 L
   B26D1/00
   !C22C38/36
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-535036(P2011-535036)
(86)(22)【出願日】2009年10月29日
(65)【公表番号】特表2012-508319(P2012-508319A)
(43)【公表日】2012年4月5日
(86)【国際出願番号】EP2009007779
(87)【国際公開番号】WO2010051943
(87)【国際公開日】20100514
【審査請求日】2012年5月31日
(31)【優先権主張番号】MI2008A001970
(32)【優先日】2008年11月7日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】508128303
【氏名又は名称】ベルサリス、ソシエタ、ペル、アチオニ
【氏名又は名称原語表記】VERSALIS S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100114007
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 孝二
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】フェリサリ リカルド
(72)【発明者】
【氏名】カサリーニ アレッサンドロ
【審査官】 静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−527656(JP,A)
【文献】 特開2002−120222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/00−9/44、9/50
C22C 38/00−38/60
B26D 1/25−1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cスケールで、ロックウエル硬さ表示で65未満の硬さを有する、熱可塑性ポリマーの造粒のための、冷間加工工具鋼製のナイフであって、
該ナイフは、該冷間加工工具鋼から加工された後であって、かつグラニュレータに取付ける前に、それを500〜700℃なる範囲の温度にて、5分間を越える期間に渡り加熱、次いでそれを15℃/分に等しいか又はそれ未満の速度にて冷却する焼戻しを受け
該冷間加工工具鋼は、1〜4質量%の炭素、4〜12質量%のクロム、1〜5質量%のモリブデン、0〜0.7質量%のマンガン、3〜12質量%のバナジウム及び0〜1.5質量%のケイ素を含むことを特徴とする、前記ナイフ。
【請求項2】
前記加熱時間が、20分を越えるものである、請求項1記載のナイフ。
【請求項3】
前記冷却が、10℃/分未満の速度にて起る、請求項1又は2記載のナイフ。
【請求項4】
前記ナイフが、レデブライト工具鋼製である、請求項1〜3の何れか1項に記載のナイフ。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のナイフを、鋭利にする方法であって、該方法が、グラニュレータのハブに該ナイフを取り付ける工程、該ナイフを回転状態に置く工程、該ナイフを、ダイプレートの表面に対して、該ナイフ1本当たり0.5Nを越えるスラストに掛け、かつ同時に、温度調節された流体の循環による冷却段階を維持する工程を含み、該温度調節された流体の流量が、周期的に変更されることを特徴とする、前記方法。
【請求項6】
前記ナイフのブレードと前記ダイプレートとの間のボトムヒール角が、2〜45°なる範囲にある、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記温度調節された流体が、ガス状及び液状の両者を含み、かつ該ガスの体積分率が、0.6よりも大きく、かつ1未満である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
請求項57に記載の方法によって鋭利にされた請求項1〜4の何れか1項に記載のナイフの、熱可塑性ポリマーの造粒における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い耐摩耗性を持つグラニュレータブレード及びこれの関連する鋭利化方法に関するものである。
本発明の目的とする該ブレードは、熱可塑性ポリマー用のグラニュレータ、例えば水封式、水中式及び水噴霧式グラニュレータにおいて使用することができる。
場合によっては発泡性の、ビニル及びビニル芳香族ポリマーは、本発明を適用することのできる該熱可塑性ポリマーの一種である。より詳しくは、該ブレードは、ポリスチレン、発泡性ポリスチレン及びそのアロイの造粒のために利用することができる。
本明細書において特定された全ての条件は、明瞭に表示されていない場合においても、好ましいものであると考えるべきである。
【背景技術】
【0002】
溶融状態にある熱可塑性ポリマーの裁断は、該ポリマーを、ダイプレート中に存在する一連の孔に通し、次いで依然として溶融状態にある該ポリマーを、特定のデバイスによって裁断することにより実施することができる。
この裁断は、連続的な回転状態にあり、また該ダイプレートの表面と合致した状態にある裁断ブレードを備えた、一連のナイフを用いて実施することができる。
このようにして得られる顆粒を冷却し、温度調節流体によって取出される。
該ポリマーを造粒するための様々な装置が、上記のような技術を利用している。その中でも、特許:WO 03/053650に記載されているような水噴霧式ポリマー裁断技術、水中式及び水封式ポリマー裁断技術は、特に重要である。これら及びその他の技術は、多くの特許及び特許出願、とりわけUS 4,752,196; WO 03/106544; WO 03/053650; WO 2007/087001; WO 2007/089497に例示されている。
【0003】
しかし、幾つかの用途においては、該造粒は、多くの問題を抱えている恐れがある。特に、解決すべき難点の一つは、長い耐用寿命を持つ、即ちそのナイフの交換頻度を減じることのできる裁断装置の入手である。該ナイフの耐久性は、ダイプレートに対する摩擦により、また該ポリマーの同一の裁断操作により生じる磨耗率に、厳密に依存している。
様々な技術的解決策が、高い裁断特性(例えば、スクラップが存在せず、またポリマー粉末を生成しないこと等)を持つと共に、十分な信頼性を得るべく開発されている。
特許出願WO 2007/089497は、特別なナイフの幾何形状及び関連するナイフ-ホルダハブを開示しており、該ナイフの幾何形状は、該ダイプレートの表面に対して殆ど垂直である。この幾何形状は、該ナイフの表面からの、溶融ポリマーのビーズのより良好な分離を可能とする。
特許出願WO 03/053650は、水噴霧式裁断方法を開示しており、該方法は、顆粒の冷却速度を、該グラニュレータの体積の一部のみを占有(残りの部分はガスによって占有される)するサーモベクトル(thermovector)流体の噴霧を使用することによる調節を可能とする。このようにして、該造粒特性及び孔が閉塞される傾向の両者が調節される。
【0004】
特許出願US 2005/0126015は、回転ナイフの特別な形状及びこれに関連する支持構造を開示しており、これらは確実に摩擦を減じることを可能とする。この技術は、該ナイフの振動及び加熱を最小化することを可能とする。
特許US 7,296,985は、軸方向に移動できるシャフトとナイフホルダハブとの間に働くトルクの伝達用デバイスを備えた、熱可塑性ポリマーを造粒するための特別な装備を例示している。
特許出願WO 2007/087001は、熱可塑性樹脂用のグラニュレータを始動する方法を開示している。特定のダイプレートを使用することにより、この方法は、同時に、該ダイプレートの孔を閉塞する恐れのある過度の冷却を回避し、また生成する粒状物の良好な性能を得るのに十分な冷却を保証することにより、ペレット生成を開始することを可能とする。
【0005】
これらのナイフは、典型的には、良好な裁断特性を確保するために、該ダイプレートの表面に対して加圧状態に維持されている。高い回転速度と共に、この圧力は、該ナイフの著しい摩耗を引起す。該造粒が典型的に連続的に行われ、また結果としてメンテナンスによる中断が、典型的に工業的プラントの生産能力における低下に相当する場合には、この磨耗は、該工業的プラントに対する重大な制限となる。
この磨耗は、著しく高い硬さを持つ無機添加物を、あるいはこれを高濃度にて含むポリマー樹脂、あるいはこれら両者に該当するポリマー樹脂が使用される場合には、より一層顕著となる。これらの応用例は、特許US 6,340,713及びEP 1514895に記載されている。
この磨耗は、より一層流動性に富む樹脂、例えば発泡性樹脂の裁断において、及び微細造粒操作において、特に重大である。事実、これら条件の下では、該ナイフの、該グラニュレータの表面に対する最大の密着性を確保することが必要とされる。この高い密着性は、結果として摩擦による著しい摩耗を引起す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
裁断ナイフを製造するための該材料は、その摩耗を制限し、かつ該ポリマーの正確かつ長期に渡る造粒を行うためには、極めて重要なものである。
公知の如く、極端に硬い材料の使用は、該ブレードの耐用寿命を延長することを可能とする。該ダイプレート表面は、従って該ブレードよりも硬くする必要があり、結果として該ブレードが最初に摩耗することとなる。あるいはまた、該ダイプレート表面の一部のみ、さらにはその小部分を、より硬い材料で製造することで十分である。というのは、該ナイフが該軸の回りを回転する一方で、該ブレードの少なくとも一部が、常に該より硬質の材料と接触状態にあるからである。
これらの用途に対して最も広範に使用されているナイフ製造用の材料は、冷間加工工具鋼である。これらの幾つか、例えばボーラー-ウデホルム(Bohler-Uddeholm)製のK100型は、高い寸法安定性を保証し、また十分なレジリエンス及びかなり高い硬さ(ロックウエル硬さ)、例えば50HRCを越える硬さを持つ。
しかし、特に上記用途において、これら材料で作られたナイフは、また工業的使用に関しては、極めて高い摩耗を被る。
【0007】
ナイフブレードを製造するために使用することのできる材料の他の例は、レデブライト鋼によって代表される。これらは十分な耐摩耗性を持つが、その鋭利化段階において、限られた加工性を持つ。さらに、この著しく高い硬さは、該ブレードの過度の剛性及び結果としての、該ブレードの該ダイプレート表面に対する低い密着性のために、高品位の造粒を困難にする恐れがある。
該材料とは別に、該ダイプレートにおける該ナイフのスラスト圧の制御装置も、根本に係るものである。該ナイフは、通常適当な装置、例えば該ナイフが堅固に適用されているハブ上に所定のスラストを保証する油-起動装置よって、該ダイプレート表面に対して押し付けられる。
これら装置において、該磨耗は、該ナイフに作用する圧力を減じることにより制御できる。しかし、この操作は、危険である可能性がある。実際に、この方法では、該裁断表面に対する該ナイフの接触は、前記回転装置によって発生する振動及び該ポリマーのスラストのために、最早確保することができない。支持体が存在しない場合には、該ナイフは引出され、また該造粒は、その品質を低下し、さらに造粒は不可能となる。
本明細書全体において、用語「剪断性能」及び「造粒性能」とは、等価であると考えるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特許請求の範囲に記載された本発明によれば、ナイフの製造において使用する材料は、高い耐摩耗性を持つ鋼である。この材料は、好ましくは、恐らく粉末冶金技術によって得ることのできる、冷間加工工具鋼、例えばレデブライト鋼である。
より一層好ましくは、該材料はクロム、モリブデン及びバナジウムを主成分とする合金鋼である。
これら材料の好ましい例は、質量基準で、1〜4%の炭素、4〜12%のクロム、1〜5%のモリブデン、0〜0.7%のマンガン、3〜12%のバナジウム及び0〜1.5%のケイ素を含むものである。
これら材料の例は、ボーラー-ウデホルム(Bohler-Uddeholm)社により製造され、またUS特許第7,297,177号、同第6,818,040号及び同第6,348,109号に記載されている、バナジス-4エキストラ(Vanadis-4 Extra)、バナジス-6(Vanadis-6)及びバナジス-10(Vanadis-10)である。
しばしば、この型の鋼で作られたナイフの使用は、本発明の目的とする、特別の手順によらなければ、満足な造粒の実施を可能とするものではない。
【0009】
事実、既に述べたように、高い硬さを持つ鋼の使用は耐久性を改善するが、その裁断性能を低下する。逆も真であり、より柔軟なナイフは、耐久性を犠牲にして、優れた裁断特性を与える。
本発明の目的とする該ナイフは、有利には、該裁断装置に組込む前に、熱的に処理される。この熱処理は、500〜700℃なる範囲の温度、より好ましくは550〜650℃なる範囲の温度にて、該ナイフを加熱する工程を含む。
該ナイフは、5分間を越える、より典型的には20分間を越える、例えば35〜250分なる範囲の期間に渡り、上記温度に維持され、また引続き、温度が500℃に等しいか、あるいはそれ未満となるまで、例えば450℃までは、例えば15℃/分に等しいか、それ未満の平均冷却速度、より好ましくは10℃/分未満の平均冷却速度にて徐々に冷却される。
この熱処理されたナイフの硬さは、一般的に未処理のナイフよりも低い。この硬さにおける低下は、典型的にはスケールCのロックウエル硬さで、2〜20なる範囲にある。
【0010】
驚いたことに、この手順によって製造したナイフは、このような硬さにおける低下にも拘らず、またより高い表面硬さ、例えば10なるロックウエルC硬さ以上によって特徴付けられる、ダイプレートに取り付けられた場合においてさえ、極めて耐摩耗性に富むものである。このことは、改善された造粒性能を得及び同時にグラニュレータの稼働中の、ナイフの大幅に延長された寿命を維持することを可能とする。
さらに、本発明において記載する方法に従って製造したナイフの使用は、以下において記載するように、同一のナイフで交換後に、造粒デバイスを再始動する操作の単純化の達成を可能とする。高品位の造粒を達成するためには、該ダイプレート表面上における、該ナイフの十分な支持を保証することが必須であることは公知である。この結果を得るためには、該ナイフを、典型的には該ハブに固定し、一方でこれらナイフを、平坦で平滑な支持表面に対して保持する。しかし、幾つかの場合、例えば微小顆粒の生成又は発泡性ポリマーの裁断の際には、この固定化手順は、十分な裁断特性を得るためには不十分である。
【0011】
これらの場合において、回転しているナイフによって発生する表面とダイプレートとの間のより一層高い合致性が、実際上必要となる。この合致性は、ナイフが、該ダイプレートに対して部分的に摩耗する、鋭利化操作によって達成できる。
鋼、例えばボーラー(Bohler)製のK100等で作られた伝統的なナイフは、低い耐摩耗性を有し、従ってこれらは、該ダイプレート表面に対して容易に摩耗し、結果として容易に鋭利化される。同時に、ナイフの寿命は、ありきたりのものとなる。
より高い耐摩耗性を持つ鋼の使用は、大幅な耐久性の増加をもたらすが、一般的に鋭利化することが困難であり、長時間及び特別な操作条件を必要とする。本発明の目的とする該ナイフは、摩損に対してかなりの抵抗性を維持するが、これらは、驚くほどに鋭利化が容易であり、従って造粒デバイスの再始動操作を促進する。
【0012】
該鋭利化は、回転運動状態に保たれた該ナイフを、ナイフ1本当たり0.5Nを越える、例えばナイフ1本当たり1Nを越える、好ましくは20〜100Nなる範囲の、該ダイプレートの表面に向かうスラストに付することによって行われる。その上、公知の如く、該溶融ポリマーを該ダイプレートに供給する前に行われる、該ナイフの鋭利化中に、該ダイプレートに対して摩耗する該ナイフのブレードを、摩擦による過熱を回避するために、連続的に冷却する必要がある。また、驚いたことに、本発明に従って製造した該ナイフの上記鋭利化工程を単純化し、かつ促進するための方法も見出された。この方法は、該造粒段階中に採用された値に対して、該鋭利化段階中の該ブレードの冷却の程度を減じることからなる。水噴霧式グラニュレータ又はより一般的にはガスの体積分率が、0.6を越えかつ1未満であるグラニュレータにおいて、この方法は、該グラニュレータ中の水の流量、又はより一般的にはベクトル流体(vector fluid)を減じることによって適用することができる。
同様な方法を、水中式グラニュレータにおいて使用することができ、あるいはあるガス流を、該液体画分を減じ、また結果的に熱伝達を減じるために、あるガス流を導入することができる。
【0013】
本発明によれば、これらグラニュレータに対する最適の流量減少は、該ポリマーの造粒の際に一般的に使用される該流体流量に対して、1:2〜1:100なる範囲内にある。
該鋭利化速度を最大にするために、該熱伝達を周期的又は連続的に変えることも可能である。これは、該冷却流体の流量を、一定の時間間隔にて、2つの固定された値間で変えることにより達成することができる。該流量は、例えば30秒という一定の時間間隔にて、基準流量と該値の1:20なる比率との間で変えることができる。
本発明の目的としてのもう一つの操作手順によれば、該熱伝達における該変更は、所定の時間間隔にて、該冷却流を周期的に遮断することにより達成できる。例えば、該冷却流体は、50秒間に渡り該ナイフに向けて導かれ、かつ10秒間に渡り中断又は別の場所に転じられる。60秒間続くこのサイクルは、該鋭利化操作が完了するまで繰返される。
該鋭利化時間の更なる低減は、該鋭利化すべきナイフが、該ダイプレート表面と接触した際に、該接触表面が著しく減じられるような幾何形状を持つ場合に達成できる。
これは、該ブレードのボトムヒール角(即ち、該ダイプレート表面と該表面に対向する該ナイフの側面との間の角度)が、ゼロでないことを保証することによって達成し得る。該ブレードの該ボトムヒール角は、好ましくは2〜45°なる範囲にある。
裁断角(即ち、トップとボトムヒール角との間の角度)は、有利には90°未満、好ましくは5°〜70°なる範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、焼戻し温度の関数として、本発明の目的としてのナイフに係る、スケールCのロックウエル硬さ表示で表された硬さを示す図である。
図2図2は、本発明を例示する、熱可塑性ポリマーを造粒するための一対のナイフの、正面図及び側面図である。該ナイフは、孔23及び24を介して、2本のボルトによりナイフ-ホルダハブに固定されている。裁断ブレード21の厚み及び裁断ブレード22の長さは、該ブレードと裁断面との密着性を確保するために、正確な該ブレードの可撓性を保証するように調節されている。
図3図3は、該ダイプレート表面と該ナイフブレードとの接触を例示する断面図である。本図面に関連して、参照番号32は、ボトムヒール角であり;33はトップヒール角であり;また31は、裁断角である。
図4図4は、該裁断表面に対する該ナイフの位置を示す図である(ここでは、単純化のために、該ナイフ-ホルダハブは図示されていない)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目的とする、高い耐摩耗性を持つ該グラニュレータのブレード及び溶融状態にある熱可塑性ポリマーの裁断におけるその使用を、本明細書において含まれる非-限定的実施例を参照しつつ、以下においてさらに詳細に説明する。
実施例1A
ボーラー-ウデホルム(Bohler-Uddeholm)社により製造されたバナジス-10(Vanadis-10)材料で作られたシートを加工して、図2に示すような形状を持つナイフを得る。
該加工の前後において測定した硬さは、スケールCのロックウエル硬さ表示で、58及び56に等しい。
これらのナイフを、窒素ガス流でフラッシングされたマッフル炉内に、隔置された状態で挿入する。該マッフル炉を作動させ、500℃までは、10℃/分なる速度にて、また620℃という、予め定められた焼戻し温度までは、2℃/分なる速度にて加熱する。この温度を、3時間に渡り一定に維持し、次いで該マッフル炉を停止させ、該ナイフを徐々に(約5℃/分なる速度にて)冷却させる。該温度が400℃に達した時点において、該ナイフを取り出し、穏やかな空気中で、室温に達するまで冷却させる。この熱処理後に測定した該ナイフの硬さは、スケールCのロックウエル硬さで、44.5である。
【0016】
これらのナイフを、グラニュレータのハブに取付け、以下の条件下で鋭利化する:回転速度:1,500rpm;該ダイプレート表面に対して直交する方向において、各ナイフに及ぼされる力:約80N;窒素ガス雰囲気内で霧化された水を噴霧することによる冷却(水全体の流量:800L/時;ノズル内の水の断面に基いて算出された速度:15m/秒)。該鋭利化の継続期間は、120分間に等しく、また該ナイフの0.1mmが浸食される。
このようにして鋭利化された該ナイフを、以下に示すような条件下で、発泡性熱可塑性ポリスチレン(平均分子量Mw:180,000g/モル;該発泡性ポリマーの全質量に対して計算された、75:25なる比率のn-ペンタン/イソペンタン混合物を5質量%なる量で含む)を、造粒するために使用する:回転速度:1,500rpm;該ダイプレート表面に対して直交する方向において、各ナイフに及ぼされる力:約60N;窒素ガス雰囲気内で霧化された水を噴霧することによる冷却(水全体の流量:1,600L/時;ノズル内の水の断面に基いて算出された速度:30m/秒)。該発泡性ポリマーは、該ダイプレート内に均一に分布しており、また径0.7mmを持つ一連の孔を通過する。
【0017】
該ナイフの摩耗を、マイクロメータによって測定する。該マイクロメータは、該ナイフが堅固に固定されている該ハブの位置を測定する。該鋭利化段階中は、30分毎に、あるいは該造粒段階中は、5時間毎に示された位置における変動に基いて摩耗率を算出する。以下の表2は、達成された造粒特性及び該鋭利化段階中及び該造粒段階中に示された、最小及び最大の摩耗率を示す。
比較例1B及び1C
同一のシートに由来するが、如何なる熱的な焼戻し処理にも付されていないナイフにつき、実施例1Aと同様な手順を繰り返した。該ナイフの構築後測定された硬さを、スケールCのロックウエル硬さ表示で、表1に示す。得られた裁断特性を、以下の表2に示す。
実施例1D〜1G
同一のシートに由来するが、様々な温度にて熱的な焼戻し処理に付されたナイフについて、実施例1Aと同様な手順を繰り返した。測定されたスケールCのロックウエル硬さ表示による硬さを、表1に示す。これに続く表2は、達成された造粒特性及び該鋭利化段階中に及び該造粒段階中に示された、最小及び最大摩耗率を示す。
【0018】
【表1】
【0019】
実施例2
実施例1Aを繰返したが、その鋭利化段階中に、該冷却水の流量を、30秒間なる等しい期間を交互に繰返すように周期的に調節し、完全な流量(850L/時)で流し、及び10秒間なる期間にて、予想噴霧速度16m/秒にて噴霧する。該噴霧の際には、水の流量は、前者の値の1/8に減じる。該鋭利化の期間は、60分間に等しい。
比較例2
K-100材料製のシートを加工して、図2に示された形状を持つナイフを得る。
これら処理後に測定された該ナイフの硬さは、スケールCのロックウエル硬さ表示で58に等しい。
これらナイフを、上記グラニュレータのハブに取付け、以下の条件下で鋭利化する:回転速度:1,500rpm;該ダイプレート表面に対して直交する方向において、各ナイフに及ぼされる力:約40N;窒素ガス雰囲気内で霧化された水を、15m/秒にて噴霧することによる冷却。該鋭利化の期間は、60分間に等しい。
【0020】
比較例3
比較例2を繰返したが、使用した材料はK-110である。鋭利化は比較例2と同一の条件下で行う。
表2は、得られた一般的な耐摩耗性のデータ及び裁断特性を示す。
表2を参照すると、ここに記載した実施例に従って製造し、使用したナイフは、ポリマーの造粒中の、良好な裁断特性、及び適度な又は測定されなかった摩耗率を得ることを可能とする。比較例2及び3に従って製造し、使用したナイフは、良好な造粒特性を示したが、高い摩耗性を示し、これは該ナイフの耐久性を減じる。比較例1B及び1Cに従って製造したナイフは、許容される造粒特性の達成を可能としない。
【0021】
【表2】
N.D.:測定せず。
図1
図2
図3
図4