(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書では、本発明は、明瞭かつ簡潔な明細書の記載を心がけ、実施形態を参照して記述されている。実施形態が本発明から逸脱することなく、さまざまに組み合わせまたは分割され得ることが意図されており、かつその点は理解されるべきである。
【0020】
別段定義されない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語は、当業者(たとえば、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション技法および生化学の分野の)によって一般に理解されるのと同じ意味をもつ。分子遺伝学的方法および生化学的方法(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.およびAusubel et al., Short Protocols in Molecular Biology (1999) 4th Ed, John Wiley & Sons, Inc.を全体として参照されたい。これらは参照によって本明細書に組み込まれる)ならびに化学的方法については、標準的な技法が用いられる。
【0021】
本明細書で用いる場合、用語「腫瘍壊死因子受容体1(TNFR1)の拮抗剤」または「抗TNFR1拮抗剤」等は、TNFR1に結合して、TNFR1のある(すなわち1つまたは複数の)機能を抑制できる薬剤(たとえば分子、化合物)をいう。たとえば、TNFR1の拮抗剤は、TNFαによるTNFR1への結合および/またはTNFR1を介して媒介されるシグナル伝達を抑制することができる。
【0022】
したがって、TNFR1媒介プロセスおよび細胞応答(たとえば標準L929細胞毒性アッセイにおけるTNFα誘発細胞死)は、TNFR1の拮抗剤によって抑制できる。
【0023】
「患者」は、任意の動物、たとえば哺乳類、たとえば非ヒト霊長類(ヒヒ、アカゲザルまたはカニクイザルなど)、マウス、ヒト、ウサギ、ラット、イヌ、ネコまたはブタである。一実施形態では、患者はヒトである。
【0024】
本明細書で用いる場合、「ペプチド」は、ペプチド結合を介して結合される、約2〜約50個のアミノ酸をいう。
【0025】
本明細書で用いる場合、「ポリペプチド」は、ペプチド結合を介して結合される、少なくとも約50個のアミノ酸をいう。ポリペプチドは、通常三次構造を含み、機能ドメインの形に折り畳まれる。
【0026】
本明細書で用いる場合、抗体は、自然に抗体を産生する任意の種に由来するか、または組換えDNA技術によって作製されたものかにかかわらず、血清、B細胞、ハイブリドーマ、トランスフェクトーマ、酵母または細菌から単離されたものであるかに拘らず、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgEもしくは断片(たとえば、Fab、F(ab’)
2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、閉構造の多重特異性抗体、ジスルフィド結合scFv、二重特異性抗体)をいう。
【0027】
本明細書で用いる場合、「抗体の型式」とは、構造的に抗原への結合特異性を与えるため、1つまたは複数の抗体可変ドメインを組み込むことができる、任意の適切なポリペプチド構造をいう。種々の適切な抗体の型式は、当技術分野で既知であり、たとえば、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、単鎖抗体、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖および/または軽鎖のホモ二量体ならびにヘテロ二量体、前述のいずれかの抗原結合断片(たとえばFv断片(単鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fvなど)、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)
2断片)、単一抗体可変ドメイン(たとえば、dAb、V
H、V
HH、V
L)、および前述の任意の修飾バージョン(たとえばポリエチレングリコールもしくは他の適切なポリマーの共有結合またはヒト化V
HHによる修飾)がある。
【0028】
「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という用語は、異なるV領域もしくはドメインとは独立して抗原またはエピトープに特異的に結合する抗体可変ドメイン(V
H、V
HH、V
L)をいう。免疫グロブリン単一可変ドメインは、他の可変領域または可変ドメインを有する型式(たとえば、ホモ多量体またはヘテロ多量体)に存在することができるが、ここで言う他の領域またはドメインは、単一免疫グロブリン可変ドメインによる抗原結合には必要とされていない(すなわち、免疫グロブリン単一可変ドメインは当該追加の可変ドメインとは独立に抗原に結合する)。「ドメイン抗体」または「dAb」という用語は、本明細書で用いられる場合、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同一である。「単一免疫グロブリン可変ドメイン」という用語は、本明細書で用いられる場合、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同一である。「単一抗体可変ドメイン」または「抗体単一可変ドメイン」という用語は、本明細書で用いられているように、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同一である。免疫グロブリン単一可変ドメインは、一実施形態では、ヒト抗体可変ドメインであるが、げっ歯類(たとえば、国際公開番号第WO00/29004号に開示され、その開示内容全体は参照によって本明細書に組み込まれる)、テンジクザメおよびラクダ科の動物(Camelid)V
HHdAbなどの他の種に由来する単一抗体可変ドメインも含む。ラクダ科の動物V
HHは、ラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダ、およびグアナコを含む種に由来する免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチドであり、自然には軽鎖が欠如する重鎖抗体を産生する。V
HHはヒト化されてもよい。
【0029】
「ドメイン」は、タンパク質の残りの部分から独立して三次構造を有する折り畳まれたタンパク質構造である。通常、ドメインはタンパク質の異なる機能特性に関与し、多くの場合、タンパク質および/またはドメインの残りの部分の機能を失わずに付加、除去、または他のタンパク質へ移転される。「単一抗体可変ドメイン」は、抗体可変ドメインを特徴づける配列を有する折り畳まれたポリペプチドドメインである。したがって、これには、完全抗体可変ドメインおよび修飾可変ドメイン、(たとえば、その1つまたは複数のループが、抗体可変ドメインを特徴づけてない配列で置き換えられている)、あるいは切断された抗体可変ドメインまたはN末端もしくはC末端の伸長を含む抗体可変ドメイン、ならびに少なくとも完全長ドメインの結合活性および特異性を保持する可変ドメインの折り畳まれた断片が含まれる。
【0030】
本出願では、「予防」および「予防すること」という用語は、疾患または状態が誘発される前に行われる保護組成物の投与が含まれる。「治療」および「治療すること」には、疾患または状態の症状が現れた後に行われる保護組成物の投与が含まれる。「抑制」または「抑制すること」とは、疾患または状態の誘発現象の後のことではあるが、その疾患または状態の臨床的出現より前に行われる組成物の投与をいう。
【0031】
本明細書で用いる場合、「用量」という用語は、被験者に、一度(単位用量)に、または規定された時間間隔にわたり2回以上の投与で投与されるリガンドの量をいう。たとえば用量は、1日(24時間)(1日量)、2日、1週間、2週間、3週間または1ヵ月以上の期間にわたり被験者に投与(たとえば単回投与によって、または2回以上の投与によって)されるリガンド(たとえば、標的抗原に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むリガンド)の量をいうことができる。投与間隔は任意の所望の時間量であり得る。用量をいうとき、「薬学的に有効な」という用語は、所望の効果をもたらすためのリガンド、ドメインまたは薬学的に活性な薬剤の十分量を意味する。「有効」である量は、個体の年齢および全身症状、特定の薬物または薬学的に活性な薬剤等に応じて、被験者間で異なる。したがって、すべての患者に適用できる正確な「有効」量を特定することは、必ずしも可能でない。しかし、いずれの個体の場合でも、適切な「有効」量は、通常の実験方法を用いて当業者によって決定可能である。
【0032】
薬物動態学的分析およびリガンド(たとえば単一可変ドメイン、融合タンパク質または多重特異性リガンド)の半減期の決定方法は、当業者にはよく知られているであろう。詳細は、Kenneth, A et.al: Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbook for Pharmacists およびPeters et,al, Pharmacokinetc analysis: A Practical Approach(1996)に見出すことができる。また、“Pharmacokinetics”, M Gibaldi & D Perron, published by Marcel Dekker, 2nd Rev. ex edition(1982)を参照されたい。この文献は、tαおよびtβ半減期ならびに曲線下面積(AUC)などの薬物動態パラメータを説明している。任意に、本明細書で引用されるすべての薬物動態パラメータおよび値は、ヒトでの値であると判断してよい。任意に、本明細書で引用されるすべての薬物動態パラメータおよび値は、マウスまたはラットまたはカニクイザルでの値であると判断してよい。
【0033】
半減期(t1/2αとt1/2β)およびAUCは、リガンドの血清濃度対時間の曲線から決定することができる。たとえば、WinNonlin解析パッケージ、たとえばバージョン5.1(Pharsight Corp., Mountain View, CA94040, USAから入手可能)を用いて、曲線をモデル化することができる。2コンパートメントモデリングを用いるとき、第1相(α相)において、リガンドは、一部除去されるが、患者内で主として分布中である。第2相(β相)はリガンドが分布終了したときの相であり、リガンドが患者から除去されるにつれて、血清濃度は低下する。tα半減期は、第1相の半減期であり、tβ半減期は、第2相の半減期である。このように、一実施形態では、本発明と関連して、可変ドメイン、融合タンパク質またはリガンドは、15分(またはおよそ15分)以上の範囲の半減期を有する。一実施形態では、この範囲の下限は、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、10時間、11時間もしくは12時間(またはそれぞれおよその時間)である。さらに、または代わりに、本発明による可変ドメイン、]融合タンパク質またはリガンドは、最高12時間(またはおよそ12時間)の範囲のtα半減期を有する。一実施形態では、この範囲の上限は、11時間、10時間、9時間、8時間、7時間、6または5時間(もしくは約それぞれの時間)である。適切な範囲の例は、1〜6時間、2〜5時間、もしくは3〜4時間(またはそれぞれおよその時間範囲)である。
【0034】
一実施形態では、本発明は、2.5時間(またはおよそ2.5時間)以上の範囲のtβ半減期を有する本発明の可変ドメイン、融合タンパク質もしくはリガンドを提供する。一実施形態では、この範囲の下限は、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、10時間、11時間または12時間(もしくはそれぞれおよその時間)である。さらに、または代わりに、tβ半減期は、最高21日または25日(もしくはおよそ21日または25日)である。一実施形態では、この範囲の上限は、12時間、24時間、2日、3日、5日、10日、15日、19日、20日、21日または22日(もしくはそれぞれおよその時間、日)である。たとえば、本発明による可変ドメイン、融合タンパク質またはリガンドは、12〜60時間(またはおよそ12〜60時間)の範囲のtβ半減期を有する。さらなる実施形態では、それは、12〜48時間(またはおよそ12〜48時間)の範囲である。さらなる実施形態では、それは、12〜26時間(またはおよそ12〜26時間)の範囲である。
【0035】
2−コンパートメントモデリングの使用の代わりに、当業者は、ノンコンパートメントモデリングの使用に精通しているかもしれない。このモデリングを用いて、終末半減期を決定することができる(本明細書で用いる場合、用語「終末半減期」は、ノンコンパートメントモデリングを用いて決定される終末半減期を意味する)。たとえばこの方法で曲線をモデル化するため、WinNonlin解析パッケージ、たとえばバージョン5.1(Pharsight Corp., Mountain View, CA94040, USAから入手可能)を用いることができる。この場合、一実施形態では、単一可変ドメイン、融合タンパク質またはリガンドは、少なくとも(もしくは少なくともおよそ)8時間、10時間、12時間、15時間、28時間、20時間、1日、2日、3日、7日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日もしくは25日の終末半減期を有する。一実施形態では、この範囲の上限は、24時間、48時間、60時間、72時間または120時間(もしくは約それぞれの時間)である。たとえば終末半減期は、たとえばヒトにおいて8〜60時間、または8〜48時間、または12〜120時間(もしくは約それぞれの範囲)である。
【0036】
さらに、または上述の判断基準の代わりに、本発明による可変ドメイン、融合タンパク質またはリガンドは、1mg.min/mL以上(またはおよそ1mg.min/mL)の範囲のAUC値(曲線下面積)を有する。一実施形態では、この範囲の下限は、5、10、15、20、30、100、200または300mg.min/mL(もしくはそれぞれおよそ)である。さらに、または代わりに、本発明による可変ドメイン、融合タンパク質またはリガンドは、最高(またはおよそ)600mg.min/mLの範囲のAUCを有する。一実施形態では、この範囲の上限は、500、400、300、200、150、100、75または50mg.min/mL(もしくは約それぞれの値)である。可変ドメイン、融合タンパク質またはリガンドは、以下からなる群から選択される範囲(またはおよそその範囲)のAUCを有すれば有利である。すなわち15〜150mg.min/mL、15〜100mg.min/mL、15〜75mg.min/mL、および15〜50mg.min/mL。
【0037】
「表面プラズモン共鳴法」:ヒト血清アルブミンなどの特異抗原またはエピトープが、本明細書に記述する血清アルブミン結合リガンド(たとえば特異的dAb)との結合に関して、カニクイザル血清アルブミンなどの別の抗原またはエピトープと競合するかどうかを、競合アッセイを用いて決定することができる。同様に、競合アッセイを用いて、標的抗原またはエピトープとの結合に関して、dAbなどの第1のリガンドがdAbなどの第2のリガンドと競合するかどうかを決定することができる。本明細書で用いる場合、「競合する」という用語は、2つ以上の分子間の特異的結合相互作用を任意の程度まで妨げることができる分子、化合物、好ましくはタンパク質などの物質について言及される。「競合的に阻害しない」という語句は、分子、化合物、好ましくはタンパク質などの物質が、2つ以上の分子間の特異的結合相互作用を任意の測定可能な程度まで、またはかなりの程度まで妨げないことを意味する。2つ以上の分子間の特異的結合相互作用は、単一可変ドメインとその同族パートナーまたは標的との間の特異的結合相互作用を含むことが好ましい。干渉するまたは競合する分子は、別の単一可変ドメインであり得る。または構造的および/または機能的に同族のパートナーもしくは標的に類似する分子であり得る。
【0038】
「結合部分」という用語は、異なるエピトープまたは抗原結合とは独立に、ある抗原またはエピトープに特異的に結合するドメインをいう。結合部分は、ドメイン抗体(dAb)であってもよく、または非免疫グロブリンタンパク質骨格、たとえば、CTLA−4、リポカリン、SpA、アフィボディ、avimer、GroEI、トランスフェリン、GroESおよびフィブロネクチンからなる群から選択される骨格の誘導体で、天然リガンド以外のリガンドに結合する(本発明の場合、この部分は血清アルブミンに結合する)ドメインであってもよい。国際公開番号第WO2008/096158号を参照されたい。これは、タンパク質骨格の実施例と、抗原またはエピトープ特異的結合ドメインをレパートリーから選択する方法とを開示する(実施例17〜25を参照されたい)。国際公開番号第WO2008/096158号におけるこれらの特異的な開示は、あたかも本明細書に明示的に書かれ、かつ本発明とともに使用するためであるかのように、参照によって本明細書に明確に組み込まれる。かかる開示のいずれの部分も本発明の請求項の1項または複数項に組み込まれ得ることが想定されている。
【0039】
第1の態様では、本発明はDOM7h−14の抗血清アルブミン(SA)免疫グロブリン単一可変ドメイン変異体を提供し、ここで該変異体はDOM7h−14と比較すると、CDR3領域の92位〜96位(Kabatによる位置のナンバリング)に少なくとも1個の変異を含み、かつ該変異体はDOM7h−14のアミノ酸配列と比較すると、1〜8個の変化を有する。
【0040】
任意に、この変異体は、AQG(X1)(X2)(X3)P(X4)Tモチーフを含む。ここでAは89位(Kabatによる)に存在し、かつDOM7h−14の配列と比較すると、(X1)〜(X4)のうちの少なくとも1つは、アミノ酸変化を表す。一実施形態では、95位(Kabatによる)はProである。さらに、または代わりに、一実施形態では、89位(Kabatによる)はAlaである。さらに、または代わりに、90位(Kabatによる)はGlnである。さらに、または代わりに、91位(Kabatによる)はGlyである。さらに、または代わりに、一実施形態では、97位(Kabatによる)はThrである。
【0041】
一実施形態では、DOM7h−14と比較すると、この変異体は、92位、93位、94位のそれぞれ、および任意に96位(Kabatによるナンバリング)変異を含む。変異体は以下から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基を任意に含む。
92位=LまたはF、
93位=R、MまたはK、
94位=HまたはK、および
96位=KまたはM(Kabatによるナンバリング)。
一実施形態では、DOM7h−14と比較すると、変異体は96位(Kabatによるナンバリング)にLysまたはMetを含む。この実施形態では、変異体は以下から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基を任意に含む。
92位=LまたはF、
93位=R、MまたはK、および
94位=HまたはK(Kabatによるナンバリング)。
【0042】
一実施形態では、変異体は、DOM7h−14−10、DOM7h−14−18、DOM7h−14−28およびDOM7h−14−36から選択される単一可変ドメインのアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列、または選択されたアミノ酸配列と比較すると、最高4個の変化を有するアミノ酸配列を含む。ここで、DOM7h−14と比較すると、該変異体はCDR3領域の92位〜96位(Kabatによる位置のナンバリング)に少なくとも1個の変異を含む。
【0043】
本発明のある態様は、本発明の第1の態様による変異体のCDR3を含む抗血清アルブミン(SA)結合部分を提供する。一実施形態では、このSA結合部分は、選択された変異体のCDR1または選択された変異体のCDR1と少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含む。さらに、または代わりに、ある実施形態ではこのSA結合部分は、選択された変異体のCDR2または選択された変異体のCDR2と少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0044】
本発明のさらなる態様は、DOM7h−14の抗血清アルブミン(SA)免疫グロブリン単一可変ドメイン変異体を提供し、ここで該変異体はDOM7h−14と比較すると、22位(Kabatによるナンバリング)にSerおよび42位にGluを含み、かつ該変異体はDOM7h−14のアミノ酸配列と比較すると、0〜4個の変化をさらに有する。一実施形態では、変異体は、DOM7h−14−19のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列、またはDOM7h−14−19のアミノ酸配列と比較すると、最高4個までの変化を有するアミノ酸配列を含み、該変異体はDOM7h−14と比較すると、22位にSerおよび42位(Kabatによるナンバリング)にGluを含む。
【0045】
一実施形態では、本発明の任意の態様または実施形態による変異体または結合部分は、以下の速度論的特性うちの1つまたは複数を含む:
(a)変異体または部分は、表面プラズモン共鳴法で決定される場合、0.1(またはおよそ0.1)〜10000(またはおよそ10000)nM、任意に1(またはおよそ1)〜6000(またはおよそ6000)nMの解離定数(KD)で、ヒトSAに特異的に結合する結合部位を含む;
(b)変異体または部分は、表面プラズモン共鳴法によって決定される場合、1.5×10
−4(またはおよそ)〜0.1sec
−1(またはおよそ)、任意に3×10
−4(またはおよそ)〜0.1sec
−1(またはおよそ)の解離速度定数(K
d)でヒトSAに特異的に結合する結合部位を含む;
(c)変異体または部分は、表面プラズモン共鳴法によって決定される場合、2×10
6(またはおよそ)〜1×10
4M
−1sec
−1(またはおよそ)、任意に1×10
6(またはおよそ)〜2×10
4M
−1sec
−1(またはおよそ)の会合速度定数(K
a)で、ヒトSAに特異的に結合する結合部位を含む;
(d)変異体または部分は、表面プラズモン共鳴法で決定される場合、0.1(またはおよそ0.1)〜10000(またはおよそ)nM、任意に1(またはおよそ1)〜6000(またはおよそ6000)nMの解離定数(KD)で、カニクイザルSAに特異的に結合する結合部位を含む;
(e)変異体または部分が、表面プラズモン共鳴法によって決定される場合、1.5×10
−4(またはおよそ)〜0.1sec
−1(またはおよそ)、任意に3×10
−4(またはおよそ)〜0.1sec
−1(またはおよそ)の解離速度定数(K
d)で、カニクイザルSAに特異的に結合する結合部位を含む前述の請求項のいずれかに記載の変異体;
(f)変異体または部分が、表面プラズモン共鳴法によって決定される場合、2×10
6(またはおよそ)〜1×10
4M
−1sec
−1(またはおよそ)、任意に1×10
6(またはおよそ)〜5×10
3M
−1sec
−1(またはおよそ)の会合速度定数(K
a)で、カニクイザルSAに特異的に結合する結合部位を含む前述の請求項のいずれかに記載の変異体;
(g)変異体または部分は、表面プラズモン共鳴法で決定される場合、0.1(またはおよそ0.1)〜10000(またはおよそ)nM、任意に1(またはおよそ1)〜6000(またはおよそ6000)nMの解離定数(KD)で、ラットSAに特異的に結合する結合部位を含む;
(h)変異体または部分は、表面プラズモン共鳴法によって決定される場合、2×10
−3(またはおよそ)〜0.15sec
−1(またはおよそ)、任意に9×10
−3(またはおよそ)〜0.14sec
−1(またはおよそ)の解離速度定数(K
d)で、ラットSAに特異的に結合する結合部位を含む;
(i)変異体または部分は、表面プラズモン共鳴法によって決定される場合、2×10
6(またはおよそ)〜1×10
4M
−1sec
−1(またはおよそ)、任意に1×10
6(またはおよそ)〜3×10
4M
−1sec
−1(またはおよそ)の会合速度定数(K
a)で、ヒトSAに特異的に結合する結合部位を含む;
(j)変異体または部分は、表面プラズモン共鳴法で決定される場合、1(またはおよそ1)〜10000(またはおよそ)nMの解離定数(KD)で、マウスSAに特異的に結合する結合部位を含む;
(k)変異体または部分は、表面プラズモン共鳴法によって決定される場合、2×10
−3(またはおよそ)〜0.15sec
−1(またはおよそ)の解離速度定数(K
d)で、マウスSAに特異的に結合する結合部位を含む;および/または
(l)変異体または部分は、表面プラズモン共鳴法によって決定される場合、2×10
6(またはおよそ)〜1×10
4M
−1sec
−1(またはおよそ)、任意に2×10
6(またはおよそ)〜1.5×10
4M
−1sec
−1(またはおよそ)の会合速度定数(K
a)で、マウスSAに特異的に結合する結合部位を含む。
【0046】
任意に、変異体または部分は、
I:(a)および(d)によるKD、(b)および(e)によるK
d、ならびに(c)および(f)によるK
a;または
II:(a)および(g)によるKD、(b)および(h)によるK
d、ならびに(c)および(i)によるK
a;または
III:(a)および(j)によるKD、(b)および(k)によるK
d、ならびに(c)および(l)によるKa;または
IV:IおよびIIによる反応速度;または
V:IおよびIIIによる反応速度;または
VI:I、IIおよびIIIによる反応速度。
【0047】
本発明はまた、前述の態様または本発明の実施形態のいずれかの変異体または部分を含むリガンドを提供する。たとえば、リガンドは二重特異的なリガンドであり得る(二重特異性リガンドに関して国際公開番号第WO04/003019号を参照されたい)。一態様では、本発明は、前述の本発明の態様または実施形態のいずれかの抗SA変異体または部分と、SA以外の標的抗原に特異的に結合するさらなる結合部位とを含む、多重特異性リガンド提供する。この結合部分または各結合部分は標的に特異的に結合し、たとえば、この結合部分は、抗体、抗体断片、scFv、FabdAbまたは非免疫グロブリンタンパク質骨格を含む結合部分であり得る。かかる部分は、国際公開番号第WO2008/096158号に詳細に開示されている(実施例17〜25を参照されたい。これらの開示は、参照によって本明細書に組み込まれる)。非免疫グロブリン骨格の実施例は、CTLA−4,リポカリン、ブドウ球菌タンパク質A(spA)、Affibody(商標)、Avimer(商標)、GroELおよびフィブロネクチンである。
【0048】
一実施形態では、リンカーが抗標的結合部分と抗SA単一変異体または部分の間に備えられ、該リンカーはアミノ酸配列AST、任意にASTSGPS、たとえば抗SAおよび抗標的dAbを含む。別のリンカーは、国際公開番号第WO2007/085814号(参照によって本明細書に組み込まれる)および国際公開番号第WO2008/096158(135頁12行目から140頁14行目の節を参照されたい)に記載されている。リンカーについての開示およびすべての配列は、あたかも本明細書に明示的に書かれ、かつ本発明とともに使用するためであるかのように、参照によって本明細書に明確に組み込まれる。この開示のいずれの部分も本明細書の請求項の1項または複数項に組み込まれ得ることが想定される)に記述される。
【0049】
多重特異性リガンドの一実施形態では、標的抗原は、ポリペプチド、タンパク質または核酸であってもよく、またはその一部であってもよい。これらは天然に存在するものであってもよいし、合成であってもよい。この点において、本発明のリガンドは、標的抗原に結合し、拮抗剤または作動薬(たとえばEPO受容体作動薬)として作用することもある。当業者は、その選択肢が広範で多様であることを理解するであろう。たとえば、それら、ヒトまたは動物のタンパク質、サイトカイン、サイトカイン受容体であってもよく、サイトカイン受容体には、サイトカイン、酵素、酵素の補助因子、またはDNA結合タンパク質のための受容体が含まれる。適切なサイトカインおよび増殖因子としては、好ましくは限定されないが、以下が挙げられる。ApoE、Apo−SAA、BDNF、カルジオトロフィン−1、EGF、EGF受容体、ENA−78、エオタキシン、エオタキシン−2、エクソダス−2、EpoR、酸性FGF、塩基性FGF、線維芽細胞増殖因子−10、FLT3リガンド、フラクタルカイン(CX3C、GDNF、G−CSF、GM−CSF、GF−β1、インスリン、IFN−γ、IGF−I、IGF−II、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8(72a.a.)、IL−8(77a.a.)、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18(IGIF)、インヒビンα、インヒビンβ、IP−10、ケラチノサイト増殖因子−2(KGF−2)、KGF、レプチン、LIF、リンホタクチン、ミューラー管抑制物質、単球コロニー抑制因子、単球誘引タンパク質、M−CSF、MDC(67a.a.)、MDC(69a.a.)、MCP−1(MCAF)、MCP−2、MCP−3、MCP−4、MDC(67a.a.)、MDC(69a.a.)、MIG、MIP−1α、MIP−1β、MIP−3α、MIP−3β、MIP−4、骨髄系前駆細胞抑制因子−1(MPIF−1)、NAP−2、ニュールツリン、神経成長因子、β−NGF、NT−3、NT−4、オンコスタチンM、PDGF−AA、PDGF−AB、PDGF−BB、PF−4、ランテス、SDF1α、SDF1β、SCF、SCGF、幹細胞因子(SCF)、TARC、TGF−α、TGF−β、TGF−β2、TGF−β3、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF−α、TNF−β、TNF受容体I、TNF受容体II、TNIL−1、TPO、VEGF、VEGF受容体1、VEGF受容体2、VEGF受容体3、GCP−2、GRO/MGSA、GRO−β、GRO−γ、HCC1、1−309、HER1、HER2、HER3およびHER4、CD4、ヒトケモカイン受容体CXCR4またはCCR5、C型肝炎ウイルス由来の非構造タンパク質3型(NS3)、TNF−α、IgE、IFN−γ、MMP−12、CEA、ピロリ菌、TB、インフルエンザ、E型肝炎、MMP−12、いくつかの細胞上で過剰発現しインターナライジングする受容体(たとえば上皮増殖因子受容体(EGFR)、腫瘍細胞上のErBb2受容体、インターナライジング細胞受容体、LDL受容体、FGF2受容体、ErbB2受容体、トランスフェリン受容体、PDGF受容体、VEGF受容体、PsmAr、細胞外基質タンパク質、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、α1−アンチトリプシン,組織因子プロテアーゼ阻害剤、PDK1、GSK1、Bad、カスパーゼ−9、フォークヘッド、ヘリコバクターピロリの抗原、マイコバクテリウム・ツベルクローシスの抗原、およびインフルエンザウイルスの抗原。このリストが決して網羅的でないことは明らかであろう。
【0050】
一実施形態では、多重特異性リガンドは、本発明の抗血清アブルミンdAb変異体または部分と、抗TNFR1結合部分、たとえば抗TNRF1dAbとを含む。任意に、このリガンドは、受容体の架橋結合の機会を減少させるため、抗TNFR1結合部分(たとえばdAb)だけを有する。一実施形態では、抗血清アルブミンdAb変異体は、DOM7h−14−10である。
【0051】
一実施形態では、抗TNFR1結合部分は、国際公開番号第WO2008/149148号に開示されるDOM1h−131−206である(そのPCT出願に開示されているように、該国際公開のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は、あたかも本明細書に書かれ、かつ本発明とともに使用するためであるかのように、参照によって本明細書に明確に組み込まれる。この開示のいかなる部分も本明細書の請求項の1項または複数項に組み込まれ得ることが想定されている)。一実施例では、多重特異性リガンドは、DOM1h−131−206のアミノ酸配列と、DOM7h−14−10のアミノ酸配列とを含む、またはこれらから構成される。
【0052】
一実施形態では、抗TNFR1結合部分またはdAbは、同時係属米国特許出願USSN61/153,746に開示されるそのような部分またはdAbであり、その開示は参照によって本明細書に組み込まれる。一実施形態では、抗TNFR1結合部分は、DOM1h−574−156、DOM1h−574−72、DOM1h−574−109、DOM1h−574−138、DOM1h−574−162もしくはDOM1h−574−180のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列、または表3に開示される抗TNFR1dAbのいずれかのアミノ酸配列を含む。一実施形態では、多重特異性リガンドは、DOM1h−574−156のアミノ酸配列と、DOM7h−14−10のアミノ酸配列とを含む、またはこれらから構成される。
【0053】
一実施形態では、本発明のリガンドは、1つまたは複数のポリペプチドに直接もしくは間接的に融合された本発明の変異体または部分を含む、融合タンパク質である。たとえば、この融合タンパク質は、国際公開番号第WO2005/118642号(この開示は参照によって本明細書に組み込まれる)に開示されるような本発明の変異体または部分と、そのPCT出願に定義されるポリペプチド薬物とを含む「薬物融合体」であり得る。
【0054】
本明細書で用いる場合、「薬物」とは、個体に投与され、該個体内で生物学的標的分子に結合ことおよび/またはその機能を変化させることによって薬効、治療効果または診断効果をもたらすことができる、任意の化合物(たとえば有機小分子、核酸、ポリペプチド)を言う。標的分子は、個体のゲノムによってコードされる内在性標的分子(たとえば個体のゲノムによってコードされる酵素、受容体、増殖因子、サイトカイン)または病原体のゲノムによってコードされる外因性標的分子(たとえばウイルス、細菌、真菌、線虫または他の病原体のゲノムによってコードされる酵素)であり得る。本発明の抗血清アルブミンdAb変異体を含む融合タンパク質および抱合体で用いられる適切な薬物は、国際公開番号第WO2008/118642号および第WO2006/059106号に開示されている(これらの開示全体を参照し、かつあたかも特定薬物のリストが本明細書に明示的に書かれたかのようにこのリスト全体を本明細書に組み込まれる。かかる組み込みにより、本明細書の請求項に包含される特定薬物の開示が想定されている)。たとえば、薬物はグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)もしくは変異体、インターフェロンα2bもしくは変異体、またはエキセンディン−4もしくは変異体であり得る。
【0055】
一実施形態では、本発明は、国際公開番号第WO2005/118642号および第WO2006/059106号に定義されかつ開示される薬物抱合体を提供する。ここで薬物抱合体は、本発明の変異体または部分を含む。一実施例では、薬物は変異体または部分に共有結合している(たとえば変異体または部分および薬物は単一ポリペプチドの一部として発現される)。あるいは、一実施例では、薬物は変異体または部分と非共有結合、または会合する。薬物は、(たとえば、適切なリンカーおよび/または相補結合パートナー(たとえばビオチンおよびアビジン)の非共有結合を介して)、共有結合的または非共有結合的に、変異体または部分と直接または間接的に結合され得る。相補結合パートナーを用いるとき、結合パートナーのうちの1つは、薬物に直接的または適切なリンカー部分を介して共有結合させることができ、相補結合パートナーは変異体または部分に直接または適切なリンカー部分を介して共有結合させることができる。薬物がポリペプチドまたはペプチドであるとき、薬物組成物は、該ポリペプチドまたはペプチド、薬物およびポリペプチド結合部分が連続したポリペプチド鎖の個々の部分である、融合タンパク質であり得る。本明細書で記述する場合、ポリペプチド結合部分およびポリペプチド薬物部分は、ペプチド結合を介して、直接互いに結合させることができる。または適切なアミノ酸、またはペプチドもしくはポリペプチドのリンカーを介して連結できる。
【0056】
血清アルブミンに特異的に結合する本発明の1つの単一可変ドメイン(単量体)変異体または部分、または2つ以上の単一可変ドメインまたは部分(本明細書で定義されるような多量体、融合タンパク質、抱合体、および二重特異的リガンド)を含むリガンドは、標識、タグ、追加の単一可変ドメイン、dAb、抗体、抗体断片、マーカーおよび薬物(好ましくはこれらに限定されない)から選択される1つまたは複数の物質をさらに含むことができる。これらの物質の1つまたは複数を、単一可変ドメインまたは部分免疫グロブリンの単一可変ドメインまたは非免疫グロブリンの単一可変ドメイン)を含むリガンドのCOOH末端もしくはN末端のいずれかに、またはN末端およびCOOH末端の両方に位置づけることができる。これらの物質の1つまたは複数は、1つの単一可変ドメイン(単量体)もしくは残基または2つ以上の単一可変ドメインまたは部分(本明細書で定義されるような多量体、融合タンパク質、抱合体、および二重特異的リガンド)を含むリガンドの血清アルブミンに特異的に結合する単一可変ドメインまたは部分のCOOH末端もしくはN末端、またはN末端およびCOOH末端の両方に位置付けることができる。これらの末端の1つまたは両方に位置することができるタグの非限定的な例としては、HA、hisまたはmycタグが挙げられる。1つまたは複数のタグ、標識および薬物を含む物質は、上述のように直接またはリンカーを介して血清アルブミンに結合する1つの単一可変ドメイン(単量体)または2つ以上の単一可変ドメインまたは部分(本明細書で定義されるように多量体、融合タンパク質、抱合体、および二重特異的リガンド)を含むリガンドに、結合させることができる。
【0057】
本発明のある態様は、上述のように任意の変異体または部分に(NCEのために)融合または抱合したポリペプチド薬物を含む、融合タンパク質またはペプチドとの融合体またはNCE(新規化学部物質)薬物との抱合体などの融合産物を提供する。ここで、変異体または部分は任意に、DOM7h−14−10(または、DOM7h−14−10のアミノ酸配列と少なくとも95、96、97、98または99%同一のアミノ酸を有する変異体)であり、DOM7h−14−10は、パートナーに融合または抱合された場合、親和性にわずかな低下をもたらすだけであり、融合産物において有用なものとなる。
【0058】
本発明は、本発明のいずれかの態様の変異体、融合タンパク質、抱合体またはリガンドおよび薬学的に許容される希釈剤、担体、賦形剤もしくはビヒクルを含む組成物を提供する。
【0059】
また、本明細書に記述する変異体、部分、融合タンパク質、抱合体またはリガンドのたとえば、血清アルブミンに特異的に結合する、またはヒト血清アルブミンおよび少なくとも1種の非ヒト血清アルブミンもしくはその機能的活性断片の双方に特異的に結合する、本発明の1つの単一可変ドメイン(単量体)変異体または2つ以上の単一可変ドメイン(たとえば、本明細書に定義されるような多量体、融合タンパク質、抱合体、および二重特異性リガンド)変異体を含むリガンドのいずれかをコードする単離された核酸も、本明細書に包含される。こまた、本明細書に包含するのは、以下のとおりである。ベクターおよび/または発現ベクター;ベクターを含む宿主細胞、たとえば植物もしくは動物細胞および/またはベクターで形質転換された細胞系;1つまたは複数の変異体、融合タンパク質もしくは、血清アルブミンまたは前述のベクターによってコードされるそれらの断片に特異的に結合する1つの単一可変ドメイン(単量体)変異体もしくは部分または2つ以上の単一可変ドメイン変異体または部分(たとえば、本明細書に定義されるように多量体、融合タンパク質、抱合体、および二重特異的リガンド)を含むリガンドを発現および/または産生する方法。この方法は、場合によっては、1つまたは複数の変異体、部分、融合タンパク質またはリガンドもしくはそれらの断片が発現されるように宿主細胞を培養するステップと、血清アルブミンに特異的に結合する1つの単一可変ドメインまたは部分(単量体)変異体または部分または2つ以上の単一可変ドメインまたは部分(たとえば、本明細書で定義されるような多量体、融合タンパク質、抱合体および二重特異的リガンド)を含むリガンドを宿主細胞培地から任意に回収するステップとを含む。また、本明細書に記述するリガンドを、血清アルブミンおよび/または非ヒト血清アルブミンを含む血清アルブミン、および/または血清アルブミン以外の1つまたは複数の標的と接触させる方法も包含される。ここで標的は生物活性分子を含み、かつ動物タンパク質、上述のリストのサイトカイン類を含む。この方法は、in vitroで接触させるステップ、ならびに本明細書に記述する任意の変異体、部分、融合タンパク質またはリガンドを、個々の宿主動物または細胞にin vivoおよび/もしくはex vivoで投与するステップも含む。好ましくは、血清アルブミンおよび/または非ヒト血清成アルブミンに向けられた単一可変ドメイン(免疫グロブリンまたは非免疫グロブリン)と、血清アルブミン以外の1つまたは複数の標的に向けられた1つまたは複数のドメインとを含む本明細書に記述したリガンドの投与は、抗標的リガンドのtβ半減期および/または終末半減期を含む半減期を増加させることになる。変異体、融合タンパク質または単一ドメインを含むリガンドまたはその機能的断片をコードする核酸分子も、本明細書で想定される。発現ベクター類を含むが好ましくはこれらに限定されない核酸分子をコードするベクターは、これらの発現ベクターのうちの1つまたは複数を含む細胞系または生物に由来する宿主細胞同様、本明細書で想定されている。また、前述の核酸、ベクターおよび宿主細胞のいずれかを含むが好ましくはこれらに限定されない任意の変異体、融合タンパク質またはリガンドを産生する方法も想定されている。
【0060】
本発明のある態様は、本発明による変異体または本発明の多重特異性リガンドまたは本発明の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0061】
本発明のある態様は、DOM7h−14−10、DOM7h−14−18、DOM7h−14−28、DOM7h−14−36およびDOM7h−14−19から選択されるDOM7h−14変異体のヌクレオチド配列、または前述の選択された配列と少なくとも70、75、80,85、90,95、96、97、98、または99%同一のヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0062】
本発明のある態様は、本発明の核酸を含むベクターを提供する。本発明のある態様は、前述のベクターを含む単離された宿主細胞を提供する。
【0063】
ライブラリーベクター系の詳細については、単一可変ドメイン、二重特異性リガンドの特徴付け、二重特異性リガンドの構造、二重特異性リガンドの構築で用いる骨格、抗血清アルブミンdAbおよび多重特異性リガンドおよび半減期を向上させたリガンドの用途、ならびに抗血清アルブミンdAbを含む組成物および製剤を組み合わせる、国際公開番号第WO2008/096158号を参照する。これらの開示は本発明の変異体、部分、リガンド、融合タンパク質、抱合体、核酸、ベクター、宿主および組成物用を含む本発明の使用のためのガイダンスを提供するため、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0064】
本発明によるものではないDOM7h−11変異体の配列は、本出願と同日に提出される同時係属の米国特許仮出願、表題「改善型抗血清アルブミン結合変異体」に開示される。DOM7h−11変異体のこれらの配列(同時係属出願中の配列番号1から10)をあたかも本明細書に明示的に書かれたかのように参照によって本明細書に組み込む。
配列
【0109】
【表5-6】
この表の中でmycタグが付いた分子が表示されている場合、これは実施例でのPK試験で用いたバージョンであった。mycタグが付いてない配列が表示されている場合、実施例でのPK試験はmycタグが付いた材料で行われなかった。すなわち、試験は、表示した非タグが付いた構築体で行われた。
例示
【0110】
実験のセクションにおけるすべてのナンバリングは、Kabatによる(Kabat, E.A. National Institutes of Health (US) & Columbia University.免疫学的関心のタンパク質の配列、第5版(US Dept. Of Health and Human Services Public Health Service, National Institues of Health, Bethesda, MD, 1991))。
【0111】
DOM7h−11およびDOM7h−14の変異体の誘導体を記述する。DOM7h−11変異体は、本発明によるものではない。
【0112】
実施例1
Vk親和性成熟
選択:
HSA(ヒト血清アルブミン)およびRSA(ラット血清アルブミン)の抗原をSigmaから入手した(基本的に脂肪酸フリー、約99%(アガロースゲル電気泳動法)、凍結乾燥した粉末、それぞれカタログ番号A3782およびA6414)。
【0113】
上記2種類の抗原のビオチン化産物を、EZ Link Sulfo−NHS−SS−Biotin(Pierce、カタログ番号21331)を用いて作製した。PD10脱塩カラムに試料を2回通して、遊離ビオチン試薬を除去し、続いて4℃で、1000x過剰量のPBSに対して一晩透析を行った。得られた産物を質量スペクトルによって分析したところ、分子あたり1〜2ビオチンが観察された。
【0114】
親和性成熟ライブラリー:
エラープローンおよびCDRの両ライブラリーを、DOM7h−11およびDIM7h−14親dAbを用いて作製した(DOM7h−11およびDOM7h−14の配列に関しては国際公開番号第WO2008/09158号を参照されたい)。CDRライブラリーをpDOM4ベクター中で作製し、エラープローンライブラリーをpDOM33ベクター中で作製した(プロテア−ゼ処理の要否選択を可能にするために)。ベクターpDOM4は、遺伝子IIIシグナルペプチド配列が酵母糖脂質アンカー型表面(GAS)タンパク質シグナルペプチドに置き換えられているFdファージベクターの誘導体である。また、ベクターpDOM4は、リーダー配列と遺伝子IIIの間にc−mycタグを含み、このタグによって遺伝子IIIがインフレームに戻る。このリーダー配列は、ファージディスプレイベクターだけでなく他の原核生物発現ベクターでも十分に機能し、広く一般に使用することができる。pDOM33は、c−mycタグが取り除かれているpDOM4ベクターの修飾型バージョンであり、dAb−ファージ融合体をプロテアーゼトリプシンに耐性にする。これは、プロテアーゼに対してより安定なdAbを選択するファージの選択内で、トリプシンの使用を可能にする(国際公開番号第WO2008/149143号を参照されたい)。
【0115】
エラープローン成熟ライブラリーのために、成熟対象dAbをコードするプラスミドDNAをGENEMORPH(登録商標)II RANDOM MUTAGENESIS KIT(ランダム、ユニーク突然変異生成キット、Stragene)を用いて、PCRによって増幅した。産物は、Sal1およびNot1で消化し、切断ファージベクターpDOM33との連結反応で用いた。
【0116】
CDRライブラリーのために、NNKまたはNNSコドンを含む縮重オリゴヌクレオチドを用いて、PCR反応を行い、親和性成熟対象dAbにおける必要な位置を多様化した。次いで、アセンブリPCRを用いて、完全長の多様な挿入断片を生成した。この挿入断片はSal1およびNot1で消化し、複数残基の突然変異生成のためにpDOM4との連結反応で、および単一残基の突然変異生成のためにpDOM5との連結反応で用いた。pDOM5ベクターは、タンパク質発現がLacZプロモータによって促進されるpUC119ベース発現ベクターである。GAS1リーダー配列(国際公開番号第WO2005/093074号を参照されたい)は、単離した可溶性dAbが周辺質および大腸菌(E.coli)の培養上清に確実に分泌されるようにする。dAbは、このベクター中でクローン化したSalI/NotIであり、このベクターはAbのC末端にmycタグを付加する。SalIおよびNotIを用いるこのプロトコルは、N末端でSTアミノ酸配列の包含をもたらす。
【0117】
次いで、いずれかの方法によって生成される連結を用いて、大腸菌(E.coli)株TB1を電気穿孔法によって形質転換し、次いで形質転換した細胞を15μg/mLのテトラサイクリンを含む2×TY寒天に播種し、>5×10
7クローンサイズのライブラリーを得た。
【0118】
エラープローンライブラリーは、以下の平均変異率およびサイズを有した:DOM7h−11(1dAbあたり2.5の変異)、サイズ:6.1×10
8、DOM7h−14(1dAbあたり2.9の変異)、サイズ:5.4×10
8。
【0119】
各CDRライブラリーには、4つのアミノ酸多様性がある。CDR1および3のそれぞれに対して2つのライブラリーを生成し、CDR2に対しては1つのライブラリーを生成した。各ライブラリー内の多様化した位置は、以下のとおりである(VKダミーDPK9配列に基づくアミノ酸)。
【0121】
実施例2
選択戦略:
3つのファージ選択戦略をVk AlbudAb(商標)(抗血清アルブミンdAb)親和性成熟に対して採用した。
1)HSAのみに対する選択:
HSAに対する選択を3回行った。すべての回でエラープローンライブラリーおよび各CDRライブラリーを個別のプールとして選択した。1回目の選択は、1mg/mLをイムノチューブ上に受動的にコーティングしたHSAに対して行った。2回目は、100nMのHSAに対して行い、および3回目は10nM(CDR選択)または20nMまたは100nM(エラープローンの選択)のHSAに対して行った。両選択は、可溶性ライブラリーの選択として行った。続いて可溶性ライブラリーの選択として1.5nMのHSAに対するエラープローンライブラリーを用いて4回目の選択を行った。エラープローンライブラリーを0.1Mのグリシン、pH2.0で溶出して、1MのTris、pH8.0で中和した。およびCDRライブラリーを1mg/mLのトリプシンで溶出して、対数期TG1細胞に感染させた。各選択の3回目にスクリーニングのためにpDOM5にサブクローニングした。可溶性ライブラリーの選択には、ビオチン化HSAを使用した。
【0122】
2)HSAに対するトリプシン選択:
親クローンと比較するとプロテアーゼ耐性が増加し、かつ潜在的に生物物理学的特性が改善したdAbを選択するために、ファージ選択でトリプシンを使用した(国際公開番号第WO2008/149143号を参照されたい)。4回の選択をHSAに対して行った。エラープローンライブラリーの1回目の選択を、トリプシンなしで1mg/mLを受動的にコーティングしたHSAに対して行い、2回目の選択を、20μg/mLのトリプシンとともに1mg/mLを受動的にコーティングしたHSAに対して37℃で1時間行い、3回目の選択を、ビオチン化HSAを用いる可溶性選択によって、20μg/mLまたは100μg/mLのトリプシンとともに100nMのHSAに対して37℃で1時間行った。選択の最終回を、ビオチン化HSAを用いる可溶性選択によって、100μg/mLのトリプシンとともに100nMのHSAに対して37℃で終夜行った。
【0123】
3)HSA(1回目)およびRSA(2〜4回回目)に対する交差選択:
1回目の選択は、1mg/mLを受動的にコーティングしたHSAに対して、または1μMのHSA(可溶性選択)に対して行い、続いてビオチン化RSAに対する可溶性選択をさらに3回(1回目は1μMの濃度で、2回目は100nMで、3回目は20nM、10nMまたは1nMで)行った。
【0124】
スクリーニング戦略および親和性の決定:
いずれの場合も選択後、適切な選択の回に由来するファージDNAのプールを、QIAfilter Midiprepキット(Qiagen)を使用して調製し、このファージDNAを制限酵素Sal1およびNot1を用いて消化し、次いで濃縮したV遺伝子をpDOM5可溶性発現ベクター内の対応する部位に連結する。pDOM5はmycタグを有するdAbを発現する(国際出願番号PCT/EP2008/067789を参照されたい)。連結したDNAを用いて、大腸菌(E.coli)HB2151細胞を電気形質転換させ、次いでこれらの細胞を、抗生物質カルベニシリンを含有する寒天板上で終夜、増殖させる。結果として得たコロニーを抗原結合に関して個別に評価する。いずれの場合にも、HSA、CSA(カニクイザル血清アルブミン)、MSA(マウス血清アルブミン)RSAとの結合に関して、少なくとも96コロニーをBIAcore(商標)(表面プラズモン共鳴法)によって調べた。MSA抗原はSigmaから入手し(基本的に脂肪酸フリー、約99%(アガロースゲル電気泳動法)、凍結乾燥粉末カタログ番号A3559)、およびCSAはPrometic blue樹脂(Amersham)を使用して、カニクイザル(Cynomolgus)の血清アルブミンから精製した。可溶性dAb断片を、96ウェルプレート中のONEX培地(Novagen)の細菌培養で、37℃で終夜生成した。高密度HSA,CSA、MSA、およびRSAのCM5チップに結合させるために、可溶性dAbを含む培養上清を遠心して、BIAcoreで分析した。解離速度スクリーニングによって、クローンがこれらすべての種の血清アルブミンに結合することがわかった。クローンを配列決定して、ユニークなdAb配列を明らかにした。
【0125】
選択したクローンの親(アミノ酸レベルで)に対する最少同一性は、97.2%(DOM7h−11−3:97.2%、DOM7h−11−12:98.2%、DOM7h11−15:96.3%、DOM7h−11−18:98.2%、DOM7h−11−19:97.2%)であった。
【0126】
選択したクローンの親(アミノ酸レベルで)に対する最少同一性は、96.3%(DOM7h−14−10:96.3%、DOM7h−14−18:96.3%、DOM7h−14−19:98.2%、DOM7h−14−28:99.1%、DOM7h−14−36:97.2%)であった。
【0127】
ユニークなdAbを、2.5L振盪フラスコ中のOnex培地で、250rpmで振盪しながら30℃で48時間、細菌培養上清として発現させた。dAbは、培地から吸収によってタンパク質Lアガロースに精製し、続いて10mMのグリシン、pH2.0を用いて溶出した。HSA、CSA、MSAおよびRSAへの結合を、1μM,500nMおよび50nMnの3濃度で精製タンパク質を用いてBIAcoreによって確認した。各血清アルブミンへのAlbudAbの結合親和性(K
D)を決定するために、精製dAbを、5000nMから39nMのアルブミン濃度の範囲(5000nM、2500nM、1250nM、625nM、312nM、156nM、78nM、39nM)でBIAcoreによって分析した。
【0131】
DOM7h−14由来のすべての変異体はマウス、ラット、ヒトおよびカニクイザルの血清アルブミンに対して交差反応性である。DOM7h−14−10は、親と比較するとラット、カニクザルおよびヒトの血清アルブミンに対する親和性が改善した。DOM7h−14−28は、RSAに対する親和性が改善している。DOM7h−14−36は、RSA、CSAおよびMSAに対する親和性が改善している。
【0132】
DOM7h−11−3は、CSAおよびHSAに対する親和性が改善した。DOM7h−11−12は、RSA、MSAおよびHSAに対する親和性が改善した。DOM7h−11−15は、RSA、MSA、CSAおよびHSAに対する親和性が改善した。DOM7h−11−18およびDOM7h−11−19は、RSA、MSAおよびHSAに対する親和性が改善した。
【0133】
実施例3
主要なDOM7h−11系統クローンのオリジン:
DOM7h−11−3:CDR2ライブラリー(Y49、A50、A51、S53)を使用して、HSAに対して行った親和性成熟に由来する。10nMのHSAでの3回の回収。
【0134】
DOM7h−11−12:エラープローンライブラリーを使用してHSAに対して行った親和性成熟に由来する。100μg/mLトリプシンとともに3回の回収(100nM、HSA)。
【0135】
DOM7h−11−15:HSAに対して1回、続いて1nMのRSAによる3回の選択で、CDR2ライブラリー(Y49、A50、A51、S53)を使用してRSAに対して3回の追加の選択を行った交差選択に由来する。
【0136】
DOM7h−11−18:HSAに対して1回、続いてエラープローンライブラリーを使用してRSAに対して3回の追加の選択を行った交差選択に由来する。20nMのRSAでの3回の回収。
【0137】
DOM7h−11−19:HSAに対して1回、続いてエラープローンライブラリーを使用してRSAに対して3回の追加の選択を行った交差選択に由来する。5nMのRSAでの3回の回収。
【0139】
実施例4
主要なDOM7h−14系統クローンのオリジン:
DOM7h−14−19:エラープローンライブラリーを使用して、HSAに対して行った親和性成熟に由来する。100μg/mLのトリプシンとともに3回の回収(100nM,HSA)。
DOM7h−14−10、DOM7h−14−18、DOM7h−14−28、DOM7h−14−36:CDR3ライブラリー(Y92、Y93、T94、N96)を使用してHSAに対して行った親和性成熟に由来する。3回の回収。
【0141】
実施例5
発現特性および生物物理学的特性
2.5Lの振盪フラスコ内のOnex培地で、250rpmで振盪しながら30℃で48時間培養した後、通常の細菌発現レベルを決定した。生物物理学的特性をSEC MALLSおよびDSCによって決定した。SEC MALLS(多角度レーザー光散乱による分子ふるいクロマトグラフィー)は、溶液中の巨大分子の特徴づけのための非侵襲性手法である。手短に言えば、タンパク質(0.5mL/minのダルベッコPBSバッファ中1mg/mLの濃度)を、それらの流体力学的性質によって、分子ふるいクロマトグラフィー(カラム:TOSOH Biosciences製のTSK3000、Pharmacia製のS200)を用いて分離する。分離の後に、光を散乱させるタンパク質の性質を、多角度レーザー光散乱(MALLS)検出器を使用して測定する。タンパク質が検出器を通る間に、散乱した光の強度を、角度関数として測定する。屈折率(RI)検出器を使用して決定されるタンパク質濃度とこの測定との組み合わせは、適切な式(解析ソフトウェアAstra v.5.3.4.12の整数部)を用いたモル質量の算出を可能にする。
【0142】
DSC(示差走査熱測定法):手短に言えば、タンパク質(PBS中1mg/mL)を180℃/時間の定率で加熱し、熱変性に付随する検出可能な熱変化を測定する。遷移中間点(appTm)を決定する。これは、タンパク質の50%がその未変性コンホメーションであり、残りの50%が変性する場合、温度として表される。ここで、試験される大部分のタンパク質は再度十分に折り畳まれないので、見かけの遷移中間点(appTm)がDSCによって決定される。Tmが高ければ高いほど、分子はより安定する。変性曲線を、非二状態方程式によって分析した。使用したソフトウェアパッケージは、Origin(登録商標) v7.0383であった。
【0144】
我々は、大腸菌(E.coli)において15〜119mg/Lの範囲で、表9のすべてのクローンの発現レベルを観察した。
【0145】
DOM7h−14およびDOM7h−11の変異体の場合、好ましい生物物理学的パラメータ(SEC MALLSによって決定された場合溶液中で単量体の状態、およびDSCによって決定された場合>55℃のappTm)および発現レベルが親和性成熟の間、維持された。単量体状態は、二量体化および細胞表面受容体などの標的と架橋結合し得る産物のリスクを回避するので、有利である。
【0146】
実施例6
ラット、マウスおよびカニクイザルにおける血清半減期の決定:
DOM7h−14−10、DOM7h−14−18、DOM7h−14−19,DOM7h−11、DOM7h−11−12およびDOM7h−11−15のAlbudAbをpDOM5ベクターにクローン化した。各AlbudAb(商標)に対して20〜50mgの量を大腸菌(E.coli)内で発現させ、タンパク質L親和性樹脂を使用して細菌培養上清から精製し、次いで100mMのグリシン、pH2を用いて溶出した。これらのタンパク質をQスピンカラム(Vivascience)を使用して、1mg/mLを超えるまで濃縮し、PBSにバッファ交換し、次いでエンドトキシンを枯渇させた。ラットの薬物動態解析(PK)のために、1化合物あたり3匹のラットを用いて、AlbudAbを2.5mg/kgで単回静脈注入した。血清試料を、0.16時間、1時間、4時間、12時間、24時間、48時間、72時間、120時間、168時間で採取した。血清レベルの分析を、下述の方法により抗myc ELISAによって行った。
【0147】
マウスPKのために、DOM7h−11、DOM7h−11−12およびDOM7h−11−15を3匹の被験マウスからなる用量群ごとに2.5mg/kgで単回静脈注入し、次いで血清試料を10分、1時間、8時間、24時間、48時間、72時間、96時間で採取した。血清レベルの分析を、後述する方法により抗myc ELISAによって行った。
カニクイザルPKのために、DOM7h−14−10およびDOM7h−11−15を、1用量群あたり3匹のメスのカニクイザルに2.5mg/kgで単回静脈注入し、次いで血清試料を0.083時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間、48時間、96時間、144時間、192時間、288時間、336時間、504時間で採取した。血清レベルの分析を、後述する方法により抗myc ELISAによって行った。
【0148】
抗myc ELISA法
血清中のAlbudAb濃度を抗myc ELISAによって測定した。手短に言えば、ヤギ抗mycポリクローナル抗体(1:500;Abcamカタログ番号ab9132)を,Nunc96ウェルMaxisorpプレート上に終夜コ−ティングして、5%BAS/PBS+1%Tweenでブロックした。血清試料を、既知の濃度の標準溶液と一緒に希釈剤の範囲で加えた。次いで、ウサギポリクローナル抗Vk(1:1000;社内試薬、血液試料をプールし、使用する前にタンパク質A精製を行った)、さらに抗ウサギIgG HRP抗体(1:10,000;Sigma、カタログ番号A2074)を用いて、結合したmycタグ付きAlbudAbを検出した。アッセイの各段階の間に、プレートを3×PBS+0.1%Tween20で、続いて3×PBSで洗浄した。最終的な洗浄の後、TMB(SureBlue TMB1−コンポーネントマイクロウェルペルオキシダーゼ基質、KPL、カタログ番号52−00−00)を加えて、発現を可能にした。この発現を1MのHClで停止させて、次いで450nmでの吸光度を使用してシグナルを測定した。
【0149】
ELISAの生データから、希釈係数を考慮に入れて標準曲線に対する補間によって未知の試料の濃度を確立した。各時点での平均濃度結果を反復値から決定し、WinNonLin解析パッケージ(たとえばバ−ジョン5.1(Pharsight Corp., Mountain View、CA94040, USAから入手可能)に入力した。ノンコンパートメントモデルを使用してデータフィッティングを行い、PKパラメータをソフトウェアによって推定して、終末半減期を得た。投与情報および時点を選択して、各PKプロファイルの終末相に反映させた。
【0151】
DOM7h−11−12およびDOM7h11−15は、親と比較するとラットおよびマウスにおいてAUCおよびf1/2が改善した。DOM7h−11−15はまた、親と比較するとカニクイザルにおいてAUCおよびt1/2が改善した。AUC/t1/2におけるこの改善は、血清アルブミンに対するin vitroのKDの改善と相関する。
【0152】
実施例7
AlbudAb(商標)IFN融合体:
クローン化および発現
単一AlbudAbならびに親和性成熟したVk AlbudAbをインターフェロンα2b(IFNα2b)に連結させて、AlbudAbの有用なPKが融合タンパク質として維持されているかどうかを決定した。
インターフェロンα2bアミノ酸配列:
CDLPQTHSLGSRRTLMLLAQMRRISLFSCLKDRHDFGFPQEEFGNQFQKAETIPVLHEMIQQIFNLFSTKDSSAAWDETLLDKFYTELYQQLNDLEACVIQGVGVTETPLMKEDSILAVRKYFQRITLYLKEKKYSPCAWEVVRAEIMRSFSLSTNLQESLRSKE(配列番号374)
インターフェロンα2bヌクレオチド配列:
TGTGATCTGCCTCAAACCCACAGCCTGGGTAGCAGGAGGACCTTGATGCTCCTGGCACAGATGAGGAGAATCTCTCTTTTCTCCTGCTTGAAGGACAGACATGACTTTGGATTTCCCCAGGAGGAGTTTGGCAACCAGTTCCAAAAGGCTGAAACCATCCCTGTCCTCCATGAGATGATCCAGCAGATCTTCAATCTCTTCAGCACAAAGGACTCATCTGCTGCTTGGGATGAGACCCTCCTAGACAAATTCTACACTGAACTCTACCAGCAGCTGAATGACCTGGAAGCCTGTGTGATACAGGGGGTGGGGGTGACAGAGACTCCCCTGATGAAGGAGGACTCCATTCTGGCTGTGAGGAAATACTTCCAAAGAATCACTCTCTATCTGAAAGAGAAGAAATACAGCCCTTGTGCCTGGGAGGTTGTCAGAGCAGAAATCATGAGATCTTTTTCTTTGTCAACAAACTTGCAAGAAAGTTTAAGAAGTAAGGAA (配列番号375)
【0153】
TVAAPSリンカー領域を介してIFNα2bをAlbudAbに連結させた(国際公開番号第WO2007/085814号を参照されたい)。この構築体を、SOE−PCR(Horton et al.Gene, 77, p61(1989)による単一オーバーラップ伸長)によってクローン化した。AlbudAbおよびIFN配列のPCR増幅を、TVAAPSリンカー領域で約15塩基対のオーバーラップを有するプライマーを使用して、別々に行った。使用したプライマーは、以下の通りである.
【0155】
断片を別々に精製し、続いてフランキングプライマーだけを用いてSOE(単一オーバーラップ伸長)PCR伸長反応で構築した。
【0157】
構築したPCR産物は制限酵素BamHIおよびHindIIIで消化し、その遺伝子をpDOM50内の対応する部位に連結した。pDOM50は哺乳類発現ベクターであり、細胞培地への発現を促進するために導入されたN末端V−J2−CマウスIgG分泌リーダー配列を有するpTT5誘導体である。
リーダー配列(アミノ酸):
METDTLLLWVLLLWVPGSTG (配列番号382)
リーダー配列(ヌクレオチド):
ATGGAGACCGACACCCTGCTGCTGTGGGTGCTGCTGCTGTGGGTGCCCGGATCCACCGGGC (配列番号383)
【0158】
プラスミドDNAをQIAfilter megaprep(Qiagen)を用いて調製した。293−Fectinによって1μgDNA/mLをHEK293E細胞にトランスフェクトして、無血清培地で増殖させた。タンパク質を培地中で5日間発現させ、次いでタンパク質L親和性樹脂を用いて培養上清から精製して100mMグリシン、pH2で溶出させた。Qスピンカラム(Vivascience)を使用して、これらのタンパク質を1mg/mLを超えるまで濃縮し、PBSにバッファ交換し、次いでエンドトキシンを枯渇させた。
【0159】
mycタグ(アミノ酸およびヌクレオチド配列として)を含む、およびタグなしのインターフェロンα2b−AlbudAbの配列
【表14-1】
【0173】
親和性の決定および生物物理学的特徴づけ:
AlbudAb−IFNα2b融合タンパク質の各血清アルブミンに対する結合親和性(K
D)を決定するために、HBS−EP BIAcoreバッファ中、5000nM〜39nM(5000nM、2500nM、1250nM、625nM、312nM、156nM、78nM、39nM)の濃度の融合タンパク質を使用することによって、アルブミン(一級アミンカップリングによってCM5チップ上に固定化した;BIAcore)上で、精製した融合タンパク質をBIAcoreによって分析した。
【0176】
IFNα2bがAlbudAb変異体に連結するとき、すべての場合、血清アルブミンへのAlbudAb結合の親和性は減少する。DOM7h−14−10およびDOM7h−11−15は、親と比較すると種にかかわらず血清アルブミンへの改善された結合親和性を保持する。DOM7h−11−12も、親と比較すると種にかかわらず血清アルブミンへの改善された結合親和性を示す。
【0177】
生物物理学的特徴付け
生物物理学的特徴付けは、上述のように、単一AlbudAbに対してSEC MALLSおよびDSCによって行った。
【表16】
SEC MALLSによって検出された場合、M/Dは単量体/二量体の平衡を示す。我々は、表16のすべてのクローンに関してHEK293において17.5〜54mg/Lの範囲で発現を観察した。
IFNα2b−DOM7h−14およびIFNα2b−DOM7h−11の変異体の場合、好ましい生物物理学的パラメータおよび発現レベルが親和性成熟の間、維持された。
【0178】
AlbudAb−IFNα2b融合体に対するPKの決定
AlbudAb−IFNα2b融合体であるDMS7321(IFNα2b−DOM7h−14)、DM7322(IFNα2b−DOM7h−14−10)、DMS7323(IFNα2b−DOM7h−14−18)、DM7324(IFNα2b−DOM7h−14−19)、DMS7325(IFNα2b−DOM7h−11)、DM7326(IFNα2b−DOM7h−11−12)、DM7327(IFNα2b−DOM7h−11−15)を、HEK293細胞中で20〜50mgの量でmycタグを用いて発現させ、次いでタンパク質L親和性樹脂を用いて培養上清から精製して、100mMグリシン、pH2を用いて溶出した。Qスピンカラム(Vivascience)を使用して、これらのタンパク質を1mg/mLを超えるまで濃縮して、ダルベッコPBSにバッファ交換し、次いでエンドトキシンを枯渇させた。
【0179】
ラットPKのために、IFN−AlbudAbを1化合物あたり3匹のラットを用いて2.0mg/kgで単回静脈注入した。血清試料を、0.16時間、1時間、4時間、8時間、24時間、48時間、72時間、120時間、168時間で採取した。血清レベルの分析は、製造業者の説明書(GE Healthcare、カタログ番号RPN5960)に従って、EASY ELISAによって行った。
【0180】
マウスPKのために、mycタグを有するDMS7322(IFNα2B−DOM7h−14−10)、DMS7325(IFNα2b−DOM7h−11)、DMS7326(IFNα2b−DOM7h−11−12)、DMS7327(IFNα2b−DOM7h−11−15)を、3匹の被験マウスからなる用量群ごとに2.0mg/kgで単回静脈注入し、次いで血清試料を10分、1時間、8時間、24時間、48]時間、72時間、96時間で採取した。血清レベルの分析は、製造業者の説明書(GE Healthcare、カタログ番号RPN5960)に従ってEASY ELISAによって行った。
【0182】
【表17-2】
ラットおよびマウスの試験に由来する薬物動態パラメータを、ノンコンパートメントモデルを使用して、フィッティングさせた。キー:AUC:無限大へ補外した投与時間からの曲線の下面積;CL:クリアランス;t1/2:血中濃度が半減する時間;Vz:終末相に基づく分布量。
【0183】
IFNα2b−AlbudAbをラットおよびマウスで試験した。ラットおよびマウスの両方においてすべてのIFNα2b−DOM7h−11変異体融合タンパク質が、親と比較するとt1/2が改善している。t1/2におけるこの改善は、血清アルブミンに対するin vitroのK
Dの改善と相関する。IFNα2b−DOM7h−14−10の変異体の場合、血清アルブミンに対するin vitroのK
Dにおけるこの改善も、ラットにおけるt1/2の改善と相関する。
【0184】
すべてのIFNα2b−AlbudAb融合タンパク質が、単一AlbudAbと比較すると、RASへの結合において5〜10倍の減少を示す。この効果は、DOM7h−11シリーズ(わずかに5倍の減少)よりもDOM7h−14シリーズに対してより明白(すなわち、10倍の減少)である。
【0185】
実施例8
タンパク質、ペプチドおよびNCEとのAlbudAbのさらなる融合体:
他の化学物質、すなわち、ドメイン抗体(dAB)、ペプチドおよびNCEに融合した種々のAlbudAbを試験した。結果を表18に示す。
【0186】
【表18】
キー:DOM1m−21−23は抗TNFR1dAbであり、エキセンディン−4は39個のアミノ酸長からなるペプチド(GLP−1作動薬)である。NCE、NCE−GGGGSCおよびNCE−TVAAPSCは後述する。
【0187】
以前、我々はin vivoで抗TNFR1のPK半減期を延ばすために、アルブミン結合dAb(AlbudAb)を有する遺伝子融合体の使用を説明した(たとえば、国際公開番号第WO04/003019号、第WO2006/038027号、第WO2008/149148号を参照されたい)。これらのPCT出願におけるプロトコルを参照する。上記の表では、DOM1m−21−23は抗マウスTNFR1dAbである。
【0188】
エキセンディン−4の遺伝子融合体または血清アルブミンに結合するDOM7h−14(もしくは他のAlbudAb)を有する遺伝子融合体を作製するために、エキセンディン−4−リンカーAlbudAb配列を、pTT−5ベクター(CNRC,Canadaから入手可能)にクローン化した。いずれの場合にも、エキセンディン−4はこの構築体の5’末端にあり、dAbは3’末端にあった。リンカーは、(G
4S)
3リンカーであった。エンドトキシンフリーDNAを大腸菌(E.coli)内でアルカリ法(エンドトキシンフリープラスミドGigaキット、Qiagen,CAから入手可能)を使用して調製し、それを用いてHEK293E細胞(CNRC,Canadaから入手可能)をトランスフェクトした。トランスフェクションは1.75×10
6細胞/mLでHEK293E細胞を含む250mL/フラスコに、フラスコあたり333uLの293フェクチン(Invotrogen)および250μgのDNAを用いて行い、30℃で5日間発現させた。上清を遠心によって収集し、次いでタンパク質L上で親和性精製によって精製を行った。タンパク質を樹脂にバッチ結合させ、カラムに充填し、次いで10カラム容量のPBSで洗浄した。タンパク質を50mLの0.1Mグリシン、pH2で溶出し、次いでTris、pH8で中和した。期待されるサイズのタンパク質は、SDS−PAGEゲル上で特定した。
【0189】
NCEのAlbudAb融合体:
新規化学物質(NCE)のAlbudAb融合体を試験した。NCE、小分子ADAMTS−4阻害剤をPEGリンカー(PEG4リンカー、すなわち、マレイミドの前の4PEG分子)と、AlbudAbへの抱合のためのマレイミド基とを用いて合成した。AlbudAbへのNCEの抱合は、アミノ酸のR108C位で設計されたシスチン残基、またはAlbudAbの末端で設計された5アミノ酸(GGGGSC)もしくは6アミノ酸(TVAAPSC)スペーサを介して行った。手短に言えば、このAlbudAbをTCEP(Pierce、カタログ番号77720)で還元し、PD10カラム(GE Healthcare)を使用して25mMのBis−Tris、5mMのEDTA、10%(v/v)グリセロール、pH6.5により脱塩した。5倍モル過剰のマレイミド活性NCEを、10%(v/v)最終濃度を超えないようにDMSOに加えた。この反応を室温で終夜、インキュベートし、20mMのTris、pH7.4になるように徹底的に透析した。
PEGリンカー:
【化1】
【0190】
配列:
DOM7h−14R108C:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQWIGSQLSWYQQKPGKAPKLLIMWRSSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCAQGLRHPKTFGQGTKVEIKC (配列番号412)
ヌクレオチド:
GACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACCGTGTCACCATCACTTGCCGGGCAAGTCAGTGGATTGGGTCTCAGTTATCTTGGTACCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCATGTGGCGTTCCTCGTTGCAAAGTGGGGTCCCATCACGTTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTCTGCAACCTGAAGATTTTGCTACGTACTACTGTGCTCAGGGTTTGAGGCATCCTAAGACGTTCGGCCAAGGGACCAAGGTGGAAATCAAATGC (配列番号413)
DOM7h−14−10/TVAAPSCおよびDOM7h−14−10/GGGGSC(すなわち、DOM7h−14−10/G4SC)の配列については表5を参照されたい。
【0191】
NCE−AlbudAb DOM7h−1410GGGGSCおよびDOM7h−14−10TVAAPSCは、この化学物質に融合されるとき、BIAcoreによって決定した場合、RSAへのin vitroの親和性(K
D)において5〜10倍の減少を示す。これらの分子に関するPKデータは、まだ得られていない。
【0192】
dAb−AlbudAb融合体:未融合AlbudAbと比較すると、治療用ドメイン抗体に融合するとき、RSAに対して最も高い親和性を有する2つのDOM7h−11 AlbudAbは、BIAcoreによる場合、RSAへの親和性において2倍の減少する。DOM7h−11クローンは、融合されるとき(2.8μM)も未融合のとき(約5μM)も、マイクロモルK
Dを示す。
【0193】
エキセンディン4−AlbudAb融合体:結合においてわずか4倍の減少を示すDOM7h−14−10は別として、RSAへの結合能に関して、AlbudAbをペプチドに融合する効果は、約10倍である。しかし、この効果は、DOM7h−11シリーズに対して現れるよりも、DOM7h−14シリーズ(DOM7h−14−10を除く)に対してより明白である。
【0194】
上記のすべてのデータに関して、融合体のT1/2は、種のSAへの親和性の改善を増加させた。
【0195】
血清アルブミン結合に関してAlbudAb−薬物融合体が0.1nM〜10nMの親和性範囲(K
D)を示すとき、我々は通常、そのAlbudAb治療薬を治療的に受け入れられる(疾患、状態または徴候の治療および/または予防のために)ものとして分類する。
【0196】
我々は、AlbudAbおよびAlbudAb融合体(タンパク質−AlbudAb、たとえばIFNα2b−DOM7h−14−10;ペプチド−AlbudAb、たとえばエキセンディン4−DOM7h−14−10;dAb−AlbudAb、たとえばDOM1m21−23−DOM7h−11−15;NCE−AlbudAb、たとえばADAMTS−4−DOM7h−14−10)の治療域を以下のように定義する。慢性または急性の状態、疾患もしくは徴候の治療に有用である親和性(K
D)の範囲が示される。また、「中間」として区分される親和性範囲も示される。この範囲内のAlbudAbおよび融合体は、慢性または急性の疾患、状態もしくは徴候に対して有用である。このように、血清アルブミンに対するAlbudAbまたは融合体の親和性を、治療を施されるべき疾患、状態または徴候に合わせて調整または選択することができる。上述のように、本発明は種々の親和性を有するAlbudAbを提供することにより、各AlbudAbを「高親和性」、「中親和性」または「低親和性」と分類するのを可能にするので、当業者は治療に本発明の適切なAlbudAbを選択できるようになる。
図2を参照されたい。
【0197】
実施例9
DOM7h−11−15S12Pの配列:
DOM7h−11−15
S12Pのアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLPASVGDRVTITCRASRPIGTMLSWYQQKPGKAPKLLILAFSRLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCAQAGTHPTTFGQGTKVEIKR(配列番号414)
【0198】
本発明のある態様は、DOM7h−11−15
S12Pのヌクレオチド配列、または前述の選択された配列と少なくとも80%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。DOM7h−11−15
S12Pを、以下の核酸配列(下線を引いたCは変化(DOM7h−11−15をコードする核酸に対する)を意味し、12位でプロリンになる)を用いて作製した。
GACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTG
CCTGCATCTGTAGGAGACCGTGTCACCATCACTTGCCGGGCAAGTCGTCCGATTGGGACGATGTTAAGTTGGTACCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCCTTGCTTTTTCCCGTTTGCAAAGTGGGGTCCCATCACGTTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTCTGCAACCTGAAGATTTTGCTACGTACTACTGCGCGCAGGCTGGGACGCATCCTACGACGTTCGGCCAAGGGACCAAGGTGGAAATCAAACGG (配列番号415)
【0199】
プライマーを用いてS12P変異を導入したPCRでの鋳型としてDOM7h−11−15を用いることでDOM7h−11−15
S12Pを構築した。このプライマー配列は以下のとおりである。
GCAACAGCGTCGACGGACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGCCTGCATCTGTAGG (配列番号416).
【0200】
本発明の代替態様は、配列番号415のヌクレオチド配列を含む核酸、または当該選択された配列と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を提供する。一実施形態では、DOM7h−11−15
S12Pは、インラインタンパク質の融合産物を作製するために、リンカー領域と、タンパク質またはペプチド薬物または単一可変ドメインまたは他の抗体断片をコードするC末端配列とを含むベクターによってコードされ、そのベクターから発現される。一実施形態では、リンカーはアミノ酸配列TVA、たとえばTVAAPSを含む。本発明の他の態様は、核酸を含むベクター、およびそのベクターを含む単離された宿主細胞である。本発明はまた、患者の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、該方法はその患者にDOM7h−11−15
S12Pの少なくとも1用量を投与するステップを含む。