特許第5766675号(P5766675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5766675
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】無端状ゴム製品の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/27 20060101AFI20150730BHJP
   B29C 45/02 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   B29C45/27
   B29C45/02
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-216209(P2012-216209)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-69387(P2014-69387A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2014年1月14日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人科学技術振興機構「地域卓越研究者戦略的結集プログラム(エキゾチック・ナノカーボンの創成と応用プロジェクト)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000226677
【氏名又は名称】日信工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】300025114
【氏名又は名称】興和ゴム工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598124249
【氏名又は名称】エア・ウォーター・マッハ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】青木 盛雄
(72)【発明者】
【氏名】牧瀬 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】祖山 光文
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 賢一
(72)【発明者】
【氏名】寺川 学
(72)【発明者】
【氏名】植木 宏之
(72)【発明者】
【氏名】新原 健一
(72)【発明者】
【氏名】野口 徹
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−170266(JP,A)
【文献】 特開2012−149761(JP,A)
【文献】 特開2003−002992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B29C 43/00−43/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状ゴム製品を製造する製造装置であって、
前記無端状ゴム製品の製品形状に形成されたキャビティと、
前記キャビティに開口したゲート部と、
未架橋のゴム組成物を配置する仕込み部と、
前記仕込み部に開口した開口部と、
前記仕込み部に配置されたゴム組成物を押圧するプランジャーと、
を有し、
前記ゲート部は、前記キャビティの内周面または外周面に沿って形成され、
前記ゲート部と前記開口部とは連通し、
前記ゲート部と前記開口部との隣接距離は0mm以上、10mm以下であり、
前記仕込み部は、未架橋のゴム組成物を載置する載置面を有し、
前記開口部は、前記仕込み部の外周面に沿って開口して形成され、
前記プランジャーは、前記載置面に載置された未架橋のゴム組成物を押圧する押圧部を有し、
前記プランジャーは、前記押圧部が前記載置面に当接するまで下降可能である、無端状ゴム製品の製造装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記隣接距離は、0mm以上、1mm以下である、無端状ゴム製品の製造装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記キャビティは、第1の金型に形成された第1のキャビティ面と、第2の金型に形成された第2のキャビティ面と、を含み、
前記ゲート部は、前記第1の金型と前記第2の金型との対向する部分に形成された、無端状ゴム製品の製造装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、
前記ゲート部、前記連通路及び前記仕込み部は、前記キャビティの内周側に形成され、
前記ゲート部は、前記キャビティの内周面に連続して形成された1つの開口である、無端状ゴム製品の製造装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、
前記未架橋のゴム組成物は、含フッ素エラストマーに平均直径が0.4nm〜230nmのカーボンナノファイバーを均一に混合した炭素繊維複合材料であって、ムーニー粘度(ML1+10121℃)の中心値が80〜165である、無端状ゴム製品の製造装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、
前記未架橋のゴム組成物は、前記キャビティ内でパーオキサイド架橋される、無端状ゴム製品の製造装置。
【請求項7】
未架橋のゴム組成物を仕込み部の載置面上に配置し、
前記仕込み部の前記載置面上に配置されたゴム組成物をプランジャーの先端の押圧部で押圧して、前記仕込み部からキャビティにゴム組成物を注入して無端状ゴム製品を製造する方法であって、
未架橋のゴム組成物は、前記押圧部が前記載置部に当接するまで前記プランジャーを下降することで押圧されて、前記仕込み部の外周面に沿って開口して形成された開口部を通って、前記キャビティの内周面に沿って開口して形成されたゲート部から前記キャビティへ注入され、
前記ゲート部と前記開口部との隣接距離は0mm以上、10mm以下である、無端状ゴム製品の製造方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記隣接距離は、0mm以上、1mm以下である、無端状ゴム製品の製造方法。
【請求項9】
請求項7または8において、
前記未架橋のゴム組成物は、含フッ素エラストマーに平均直径が0.4nm〜230nmのカーボンナノファイバーを均一に混合した炭素繊維複合材料であって、ムーニー粘度(ML1+10121℃)の中心値が80〜165である、無端状ゴム製品の製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項において、
前記未架橋のゴム組成物は、前記キャビティ内でパーオキサイド架橋される、無端状ゴム製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状ゴム製品の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エラストマー中においてカーボンナノファイバーを解繊し、かつ、均一に分散させた炭素繊維複合材料が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。このような炭素繊維複合材料は、高剛性でありながら柔軟性を有し、さらに各種のカーボンナノファイバーの特別な配合により、耐熱性、耐薬品性、耐久性などに優れた性能を有するゴム組成物である。
【0003】
しかしながら、カーボンナノファイバーを配合した炭素繊維複合材料は、未架橋体において高粘度であり、流動性に劣るため、コンプレッション成形法によって無端状ゴム製品を製造している。
【0004】
図10図12は、従来のコンプレッション成形法を説明する製造装置101の縦断面を示す模式図である。
【0005】
まず、図10に示すように、下型である第1の金型110と上型である第2の金型120を型開した状態で、無端状ゴム製品に近い形状に打ち抜いた未架橋のゴム組成物130を第1のキャビティ面112と第2のキャビティ面122との間に配置する。未架橋のゴム組成物130は、例えばロールでシート状に分出しした炭素繊維複合材料であるゴム生地を上下に貫通する貫通孔を有する無端状に打ち抜き、または切り出して無端状ゴム製品に近い形状を有している。
【0006】
次に、図11に示すように、第1の金型110に対して第2の金型120を移動して型閉すると、未架橋のゴム組成物130はコンプレッション成形されて第1及び第2のキャビティ112,122によって形成されたキャビティ内を満たし、無端状ゴム製品132を成形する。この状態で所定時間保持しながら図示しない加熱手段によって第1、第2の金型110,120を加熱することによってゴム組成物を架橋する。なお、型閉した状態で第1の金型110の第1の合わせ面114は第2の金型120の第2の合わせ面124と接触している。
【0007】
そして、図12に示すように、第1の金型110から離れるように第2の金型120を移動して型開し、無端状ゴム製品132を金型から取り出す。この従来例で示す無端状ゴム製品132は、貫通孔138を有し、縦断面がX字状のXリングである。この従来例の無端状ゴム製品132は、下方の外周端部134と上方の内周端部136とが金型の合わせ面に接して成形される。
【0008】
このようなコンプレッション成形法によれば、高粘度で流動性に劣る炭素繊維複合材料を用いて無端状ゴム製品を製造することができるが、例えば複雑な形状を有した製品の製造は困難であり、また例えば原料である炭素繊維複合材料はロールでシート状に分出しされた状態で異方性がほぼそのまま無端状ゴム製品にも現れるという問題があった。
【0009】
炭素繊維複合材料は、解繊されたカーボンナノファイバーを均一に分散することによって、カーボンナノファイバーがエラストマーを囲うことによってできる微細補強構造(セルレーション)を内部に多数形成している。炭素繊維複合材料中のセルレーションは、従来のカーボンブラックでは得られない特別な性能をゴム組成物に与えることができるが、
セルレーションがシート状に分出しされる際にセルレーション構造のまま所定方向に配向することによって、分出しされた炭素繊維複合材料の補強構造に異方性が現れる傾向がある。このような炭素繊維複合材料中における異方性は、製品、例えばXリングの一部に例えば引張強度の弱い部分が形成されることになる。
【0010】
そこで、無端状ゴム製品が複雑な形状であっても製造可能であり、しかも分出しされたゴム組成物の生地における補強構造の異方性を低減させるために、一般的なゴムの成型加工装置であるトランスファー成形法で加工することが考えられる。しかしながら、炭素繊維複合材料のように高粘度で流動性に劣る未架橋のゴム組成物は、ポットからランナーを通って金型のキャビティまで流動させることが困難であり、トランスファー成形法を採用することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開WO2009/125503号公報
【特許文献2】国際公開WO2011/077595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、炭素繊維複合材料のような高粘度で流動性に劣る未架橋のゴム組成物を用いた場合でもゴム組成物をキャビティに注入することができる無端状ゴム製品の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかる無端状ゴム製品の製造装置は、
無端状ゴム製品を製造する製造装置であって、
前記無端状ゴム製品の製品形状に形成されたキャビティと、
前記キャビティに開口したゲート部と、
未架橋のゴム組成物を配置する仕込み部と、
前記仕込み部に開口した開口部と、
前記仕込み部に配置されたゴム組成物を押圧するプランジャーと、
を有し、
前記ゲート部は、前記キャビティの内周面または外周面に沿って形成され、
前記ゲート部と前記開口部とは連通し、
前記ゲート部と前記開口部との隣接距離は0mm以上、10mm以下であり、
前記仕込み部は、未架橋のゴム組成物を載置する載置面を有し、
前記開口部は、前記仕込み部の外周面に沿って開口して形成され、
前記プランジャーは、前記載置面に載置された未架橋のゴム組成物を押圧する押圧部を有し、
前記プランジャーは、前記押圧部が前記載置面に当接するまで下降可能であることを特徴とする。
【0014】
本発明にかかる無端状ゴム製品の製造装置によれば、開口部からゲート部までの隣接距離が短いので、高粘度で流動性に劣る未架橋のゴム組成物であっても仕込み部で押圧された未架橋のゴム組成物をキャビティへ注入することができる。また、本発明にかかる無端状ゴム製品の製造装置によれば、開口部からゲート部までの隣接距離が短いので、高粘度で流動性に劣る未架橋のゴム組成物であっても複雑な形状の製品を製造することができる。特に、高粘度で架橋速度の速いゴム組成物の製造に有用である。さらに、本発明にかかる無端状ゴム製品の製造装置によれば、未架橋のゴム組成物が炭素繊維複合材料であっても、仕込み部からキャビティへ注入する際にセルレーションの配向を減少し、セルレーションの配向による補強構造の異方性を低減することができる。
【0015】
本発明にかかる無端状ゴム製品の製造装置において、
前記隣接距離は、0mm以上、1mm以下であることができる。
【0016】
本発明にかかる無端状ゴム製品の製造装置において、
前記キャビティは、第1の金型に形成された第1のキャビティ面と、第2の金型に形成された第2のキャビティ面と、を含み、
前記ゲート部は、前記第1の金型と前記第2の金型との対向する部分に形成されることができる。
【0017】
本発明にかかる無端状ゴム製品の製造装置において、
前記ゲート部、前記連通路及び前記仕込み部は、前記キャビティの内周側に形成され、
前記ゲート部は、前記キャビティの内周面に連続して形成された1つの開口であることができる。
【0018】
本発明にかかる無端状ゴム製品の製造装置において、
前記未架橋のゴム組成物は、含フッ素エラストマーに平均直径が0.4nm〜230nmのカーボンナノファイバーを均一に混合した炭素繊維複合材料であって、ムーニー粘度(ML1+10121℃)の中心値が80〜165であることができる。
【0019】
本発明にかかる無端状ゴム製品の製造装置において、
前記未架橋のゴム組成物は、前記キャビティ内でパーオキサイド架橋されることができる。
【0020】
本発明にかかる無端状ゴム製品の製造方法は、
未架橋のゴム組成物を仕込み部の載置面上に配置し、
前記仕込み部の前記載置面上に配置されたゴム組成物をプランジャーの先端の押圧部で押圧して、前記仕込み部からキャビティにゴム組成物を注入して無端状ゴム製品を製造する方法であって、
未架橋のゴム組成物は、前記押圧部が前記載置部に当接するまで前記プランジャーを下降することで押圧されて、前記仕込み部の外周面に沿って開口して形成された開口部を通って、前記キャビティの内周面に沿って開口して形成されたゲート部から前記キャビティへ注入され、
前記ゲート部と前記開口部との隣接距離は0mm以上、10mm以下であることを特徴とする。
【0021】
本発明にかかる無端状ゴム製品の製造方法によれば、開口部からゲート部までの隣接距離が短いので、高粘度で流動性に劣る未架橋のゴム組成物であっても仕込み部で押圧された未架橋のゴム組成物をキャビティへ注入することができる。また、本発明にかかる無端状ゴム製品の製造方法によれば、開口部からゲート部までの隣接距離が短いので、高粘度で流動性に劣る未架橋のゴム組成物であっても複雑な形状の製品を製造することができる。さらに、本発明にかかる無端状ゴム製品の製造方法によれば、未架橋のゴム組成物が炭素繊維複合材料であっても、仕込み部からキャビティへ注入する際にセルレーションの配向を減少し、セルレーションの配向による補強構造の異方性を低減することができる。
【0022】
本発明にかかる無端状ゴム製品の製造方法において、
前記隣接距離は、0mm以上、1mm以下であることができる。
【0023】
本発明にかかる無端状ゴム製品の製造方法において、
前記未架橋のゴム組成物は、含フッ素エラストマーに平均直径が0.4nm〜230nmのカーボンナノファイバーを均一に混合した炭素繊維複合材料であって、ムーニー粘度(ML1+10121℃)の中心値が80〜165であることができる。
【0024】
本発明にかかる無端状ゴム製品の製造方法において、
前記未架橋のゴム組成物は、前記キャビティ内でパーオキサイド架橋されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1の実施の形態に係る無端状ゴム製品の製造装置の概略縦断面図である。
図2】第1の実施の形態に係る無端状ゴム製品の製造装置の概略縦断面図である。
図3】第1の実施の形態に係る無端状ゴム製品の製造装置の概略縦断面図である。
図4】第1の実施の形態に係る無端状ゴム製品の製造装置の概略縦断面図及び無端状ゴム製品の概略斜視図である。
図5図2におけるA−A断面図である。
図6図2における部分拡大縦断面図である。
図7】第2の実施の形態に係る無端状ゴム製品の製造装置の概略縦断面図である。
図8】第2の実施の形態に係る無端状ゴム製品の製造装置の概略縦断面図である。
図9図8におけるB−B断面図である。
図10】従来のコンプレッション成形装置の概略縦断面図である。
図11】従来のコンプレッション成形装置の概略縦断面図である。
図12】従来のコンプレッション成形装置の概略縦断面図及び無端状ゴム製品の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
本実施の形態にかかる無端状ゴム製品の製造装置は、無端状ゴム製品を製造する製造装置であって、前記無端状ゴム製品の製品形状に形成されたキャビティと、前記キャビティに開口したゲート部と、未架橋のゴム組成物を配置する仕込み部と、前記仕込み部に開口した開口部と、前記仕込み部に配置されたゴム組成物を押圧するプランジャーと、を有し、前記ゲート部は、前記キャビティの内周面または外周面に沿って形成され、前記ゲート部と前記開口部とは連通し、前記ゲート部と前記開口部との隣接距離は0mm以上、10mm以下であり、前記仕込み部は、未架橋のゴム組成物を載置する載置面を有し、前記開口部は、前記仕込み部の外周面に沿って開口して形成され、前記プランジャーは、前記載置面に載置された未架橋のゴム組成物を押圧する押圧部を有し、前記プランジャーは、前記押圧部が前記載置面に当接するまで下降可能であることを特徴とする。
【0028】
本発明にかかる無端状ゴム製品の製造方法は、未架橋のゴム組成物を仕込み部の載置面上に配置し、前記仕込み部の前記載置面上に配置されたゴム組成物をプランジャーの先端の押圧部で押圧して、前記仕込み部からキャビティにゴム組成物を注入して無端状ゴム製品を製造する方法であって、未架橋のゴム組成物は、前記押圧部が前記載置部に当接するまで前記プランジャーを下降することで押圧されて、前記仕込み部の外周面に沿って開口して形成された開口部を通って、前記キャビティの内周面に沿って開口して形成されたゲート部から前記キャビティへ注入され、前記ゲート部と前記開口部との隣接距離は0mm以上、10mm以下であることを特徴とする。
【0029】
1.第1の実施の形態
図1図3は、第1の実施の形態に係る無端状ゴム製品の製造装置の概略縦断面図である。図4は、第1の実施の形態に係る無端状ゴム製品の製造装置の概略縦断面図及び無端状ゴム製品の概略斜視図である。図5は、図2におけるA−A断面図である。図6は、図2における部分拡大縦断面図である。
【0030】
図1に示す無端状ゴム製品の製造装置1は、図4に示す無端状ゴム製品32を製造する製造装置である。無端状ゴム製品32は縦断面がX字状に形成されたいわゆるXリングであって、中央に貫通孔38を有する無端状のゴム製リングである。無端状ゴム製品の製造装置1は、いわゆる下型である第1の金型10と、第1の金型10の上方にあって第1の金型10に対し昇降移動可能に配置されたいわゆる上型である第2の金型20と、を有することができる。
【0031】
第1の金型10の上面には第1のキャビティ面12が環状に掘り込まれて形成されてい
る。第1のキャビティ面12の外側には第2の金型20が重ねあわされる第1の合わせ面14が形成され、第1のキャビティ面12の内側中央には仕込み部40の載置面42が形成されている。載置面42には未架橋のゴム組成物30が配置されている。未架橋のゴム組成物30については、後述する。
【0032】
第2の金型20の下面には第2のキャビティ面22が第1のキャビティ面12に対向して環状に掘り込まれて形成されている。第2のキャビティ面22の外側には第1の金型10が重ねあわされる第2の合わせ面24が形成され、第2のキャビティ面22の内側中央には第2の金型20の上下に貫通する環状の貫通孔を形成する外周壁44が形成されている。外周壁44は、第2の金型20に対して進退駆動可能なプランジャー50を受け入れることができる。
【0033】
図2に示すように、第1の金型10と第2の金型20とが型閉じすると無端状ゴム製品32の製品形状に形成されたキャビティ80と、キャビティ80に開口したゲート部70と、未架橋のゴム組成物30を配置する仕込み部40と、が形成される。キャビティ80は、第1のキャビティ面12と、第2のキャビティ面22と、を含むことができる。ゲート部70は、第1の金型10と第2の金型20との対向する部分に形成されることができる。キャビティ80は、縦断面がX字状であって、仕込み部40の周囲を一周する環状の空洞である。
【0034】
仕込み部40は、載置面42と、載置面42の上方に円筒状に形成された外周壁44とによって形成される。仕込み部40は、キャビティ80側に開口した開口部43を有する。載置面42は、第1の金型10の上面に形成された外形が円形の平坦面であり、その外周が開口部43の下面を構成する。外周壁44は、載置面42から開口部43の高さを隔てた位置から上方へ延びる横断面円形の壁面で構成される。
【0035】
プランジャー50は、仕込み部40の上方にあって載置面42に未架橋のゴム組成物30が配置されることを許容する。プランジャー50は、第2の金型20とは別体に形成され、第1の金型10と第2の金型20とが型閉じして仕込み部40が形成された後、ゴム組成物30に対し下降することができる。プランジャー50の下面には、仕込み部40に配置されたゴム組成物30を押圧する平面状の押圧部52を有する。プランジャー50は、押圧部52が載置面42に当接するまで下降可能である。押圧部52は、ゴム組成物30に対しプランジャー50を進退駆動することによってゴム組成物30を押圧してキャビティ80へ注入することができる。
【0036】
外周壁44の下端と載置面42が形成された第1の金型10の上面との間には隙間があり、仕込み部40からキャビティ80へ連通する連通路60が形成される。連通路60は、仕込み部40に開口する開口部43とキャビティ80に開口するゲート部70とを連通する。
【0037】
ゲート部70、連通路60、開口部43及び仕込み部40は、キャビティ80の内周側に形成され、ゲート部70は、キャビティ80の内周面に連続して形成された1つの開口であることができる。一般に、「ゲート」は流路の一部を含む開口を意味することがあるが、ここではゲート部70は連通路60を含まない開口のみを意味する。ゲート部70をこのように形成することによって、仕込み部40からキャビティ80へ放射状にゴム組成物を注入することができ、全体に均質な無端状ゴム製品32を製造することができる。
【0038】
ここで、図6を用いて、開口部43、連通路60及びゲート部70の構造について詳述する。図6は、図2の左側の開口部43、連通路60及びゲート部70を拡大して示した断面図である。キャビティ80の下部の外周端部84で第1のキャビティ面12と第2の
キャビティ面22とが合わさって形成され、キャビティ80の上部の内周端部82において第1のキャビティ面12と第2のキャビティ面22とが対向する隙間にゲート部70が開口して形成されている。したがって、ゲート部70は、キャビティ80の内周面(内周端部82)に沿って環状に形成されている。
【0039】
開口部43は、仕込み部40の外周壁44の下端と載置面42との間の隙間に開口して形成されている。開口部43は、仕込み部40の外周に沿った連続した開口であって、ゲート部70に対向して環状に形成されている。
【0040】
連通路60は、載置面42と同じ高さに連続して形成された第1の連通路形成面62と、外周壁44の下端からキャビティ80の上部の内周端部82(すなわち開口部43の上端部からゲート部70の上端部)へ延びる第2の連通路形成面64との間に形成される。連通路60は、第1の連通路形成面62と第2の連通路形成面64との間隔である高さHと、外周壁44からゲート部70までの距離、すなわちゲート部70と開口部43との隣接距離Lと、を有している。連通路60におけるゲート部70と開口部43との隣接距離Lは、0mm以上、10mm以下であり、さらに、0mm以上、5mm以下であることができ、特に、0mm以上、1mm以下であることができる。
【0041】
隣接距離Lが0mmであるとき、連通路60は実質的に存在せず、開口部43とゲート部70は同じ開口である。すなわち、仕込み部40の開口部43がキャビティ80に直接開口することを意味する。隣接距離Lは、製品形状や金型の材質などにも寄るが、0mmであることを妨げない。
【0042】
このように開口部43からゲート部70までの隣接距離Lが短いので、高粘度で流動性に劣るような未架橋のゴム組成物、例えば炭素繊維複合材料であっても仕込み部40で押圧された未架橋のゴム組成物30をキャビティ80へ注入することができる。また、このように隣接距離Lが短いので、高粘度で流動性に劣る未架橋のゴム組成物30であっても複雑な形状の製品を製造することができる。さらに、隣接距離Lが短いので、未架橋のゴム組成物が例えば炭素繊維複合材料であっても、仕込み部40からキャビティ80へ注入する際に層流となることなく乱流のままキャビティ80内へ注入するので、セルレーションの配向を減少し、セルレーションの配向による補強構造の異方性を低減することができる。セルレーションの配向による補強構造の異方性を低減する機構については、後述する。
【0043】
図2に示す状態から図3に示す状態にプランジャー50をゴム組成物30に対して前進すると、ゴム組成物30はプランジャー50の先端の押圧部52によって押圧されて仕込み部40の開口部43から連通路60を通り、ゲート部70からキャビティ80内へ注入され、キャビティ80を満たす。図示しない加熱装置によって、第1の金型10及び第2の金型20は所定温度に加熱することができる。キャビティ80に注入されたゴム組成物30は、所定時間加熱保持することで架橋して無端状ゴム製品32に成形される。
【0044】
図4に示すように、第1の金型10と第2の金型20を型開し、製造装置1から無端状ゴム製品32を取り出すことができる。無端状ゴム製品32の外周端部34にはパーティングラインが形成され、内周端部36には連通路60内に残ったバリが形成される。連通路60の途中に鋭角な部分を設けるなどの態様で一般的に用いられている食い切り部を形成することができる。食い切り部を形成することで内周端部36のバリを容易に取り除くことができる。
【0045】
連通路60の高さHは、開口部43及びゲート部70の高さと同一であることができる。連通路60の高さHは、例えば、キャビティ80の高さより低くすることができる。ま
た、連通路60の高さHは、例えば、0.01mm以上、2mm以下であることができ、さらに0.05mm以上、0.5mm以下であることができ、特に0.05mm以上、0.1mm以下であることができる。連通路60の高さHは、製品の容量に影響されるものであるが、0.01mm〜2mmの間で設定することができる。
【0046】
このような製造装置を用いることによって、これまでコンプレッション成形しかできなかったゴム組成物の成形加工、またはコンプレッション成形では難しかった複雑な形状の製品の成形加工であっても対応することが可能となる。このようなゴム組成物の成形加工としては、例えば、高粘度のゴム組成物の成形加工、架橋速度の速いゴム組成物の成形加工、及び製品の特性に異方性を生ずるゴム組成物の成形加工のうち少なくとも1つ以上の成形加工であることができる。
【0047】
高粘度のゴム組成物は、例えば、成形加工時のキャビティの温度におけるムーニー粘度(ML1+10121℃)の中心値が80以上であるものを挙げることができ、さらに、80〜165であることができる。ゴム組成物のムーニー粘度は、成形加工時の温度における架橋剤を含まないゴム組成物のムーニー粘度を測定することによって、成形加工時の粘度を仮想的に測定することができる。
【0048】
ゴム組成物の架橋は、公知の架橋剤を用いて行うことができる。例えば、パーオキサイド架橋、ポリアミン架橋、ポリオール架橋などを挙げることができる。
【0049】
架橋速度の速いゴム組成物としては、成形加工の温度条件や架橋剤の配合量などにも影響されるが、例えば、パーオキサイド架橋によるゴム組成物を挙げることができる。パーオキサイド架橋は、公知の有機過酸化物を適量配合し、その有機過酸化物の架橋が促進される適温にキャビティを加熱することで行うことができる。有機過酸化物としては、例えばジクミルパーオキサイド、ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等があげられる。
【0050】
製品の特性に異方性を生ずるゴム組成物は、例えば、繊維状の補強剤が配合された複合材料を挙げることができ、特にカーボンナノファイバーのようなナノサイズの繊維を補強材として用いた複合材料であることができる。
【0051】
未架橋のゴム組成物30は、エラストマーにカーボンナノファイバーを均一に混合した炭素繊維複合材料であることができる。カーボンナノファイバーを均一に混合した炭素繊維複合材料は、未架橋であっても粘性が高く流動しにくい。
【0052】
例えば、未架橋のゴム組成物は、含フッ素エラストマーに平均直径が0.4nm〜230nmのカーボンナノファイバーを均一に混合した炭素繊維複合材料であって、ムーニー粘度(ML1+10121℃)の中心値が80〜165であることができる。また、未架橋のゴム組成物は、キャビティ80内でパーオキサイド架橋されることができる。含フッ素エラストマーは、一般に高粘度で成形しにくく、特にパーオキサイド架橋する場合には架橋速度が速いため素早く成形加工することが要求される。しかも、カーボンナノファイバーを均一に混合した炭素繊維複合材料は、カーボンブラックで補強したゴム組成物に比べてさらに高粘度であり、カーボンナノファイバーによるセルレーションが配向することによる製品における補強特性の異方性を低減することが求められる。本実施の形態にかかる製造装置1によれば、このような炭素繊維複合材料の要求に応えて成形加工することができる。
【0053】
含フッ素エラストマーとしては、分子中にフッ素原子を含む合成ゴムであり、フッ素ゴムとも呼ばれ、2元系または3元系の含フッ素エラストマーを用いることができる。3元
系の含フッ素エラストマーは、例えば、フッ化ビニリデン(VDF)−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)−テトラフルオロエチレン(TFE)3元共重合体(VDF−HFP−TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)−パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(FMVE)−テトラフルオロエチレン(TFE)3元共重合体(VDF−HFP−TFE)などが挙げられる。含フッ素エラストマーの架橋剤として架橋速度の速い公知の有機過酸化物を用いて、パーオキサイド架橋することができる。パーオキサイド架橋は、架橋速度が速いためスコーチになりやすい。
【0054】
炭素繊維複合材料に用いるエラストマーとしては、含フッ素エラストマーに限らず、例えば、水素化ニトリルゴム(H−NBR)やエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などを挙げることができる。
【0055】
カーボンナノファイバーは、平均直径(繊維径)が0.4nm〜230nmであることができ、平均直径(繊維径)が9nm〜110nmであることができ、特に9nm〜20nmまたは60nm〜110nmであることができる。平均直径(繊維径)が0.4nm〜230nmであるカーボンナノファイバーを用いることで、エラストマーを補強することができる。カーボンナノファイバーは、炭素六角網面のグラファイトの1枚面(グラフェンシート)を巻いて筒状にした形状を有するいわゆる多層カーボンナノチューブ(MWNT:マルチウォールカーボンナノチューブ)であり、平均直径が10nm〜20nmのカーボンナノファイバーとしては、例えばバイエルマテリアルサイエンス社のバイチューブ(Baytubes)C150P及びC70P並びにナノシル(Nanocyl)社のNC−7000などを挙げることができ、平均直径が60nm〜110nmのカーボンナノファイバーとしては、例えば保土谷化学工業社のNT−7などを挙げることができる。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブ、気相成長炭素繊維といった名称で称されることもある。
【0056】
炭素繊維複合材料中において、カーボンナノファイバーが解繊され、均一に分散することによって、カーボンナノファイバーが3次元に張り巡らされた網目構造によってエラストマーを囲むように微小セル構造、すなわちセルレーションが形成される。これまでの研究結果から1つのセルの最大径はおおよそカーボンナノファイバーの平均直径の2倍〜10倍程度になることが判っている。
【0057】
カーボンナノファイバーの平均直径及び平均長さは、走査型電子顕微鏡による例えば5,000倍の撮像(カーボンナノファイバーのサイズによって適宜倍率は変更できる)から200箇所以上の直径及び長さを計測し、その算術平均値として計算して得ることができる。
【0058】
炭素繊維複合材料におけるカーボンナノファイバーの配合量は、所望の特性に応じて適宜配合することができ、例えばエラストマー100質量部に対してカーボンナノファイバー5質量部以上100質量部以下を配合することができる。また、炭素繊維複合材料には、カーボンナノファイバー以外にゴム組成物に一般に用いられている補強用充填材として例えばシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物、カーボンブラックなどを用いることができる。ここで、「質量部」は、特に指定しない限り「phr」を示し、「phr」は、parts per hundred of resin or
rubberの省略形であって、ゴム等に対する添加剤等の外掛百分率を表すものである。
【0059】
第1の実施の形態にかかる無端状ゴム製品の製造方法は、未架橋のゴム組成物30を仕込み部40に配置し、仕込み部40に配置されたゴム組成物30を押圧部52で押圧して
、仕込み部40からキャビティ80にゴム組成物を注入して無端状ゴム製品32を製造する。未架橋のゴム組成物30は、仕込み部40の外周面に沿って開口した開口部43からキャビティ80の内周面に沿って開口して形成されたゲート部70へ連通路60を通って注入され、連通路60におけるゲート部70と開口部43との隣接距離Lは、0mm以上、10mm以下である。押圧動作は、プランジャー50をゴム組成物30に対して前進させることで行うことができる。
【0060】
図5は、図2におけるA−A断面を模式的に示す図である。図の中央には、仕込み部40に配置した横断面長方形の未架橋のゴム組成物30があり、仕込み部40の外周に環状の開口部43と、開口部43の外側に環状の連通路60と、さらのその外側に環状のゲート部70及びキャビティ80がある。ゴム組成物30の中に示した矢印Xは、ロールからシート状に分出しした方向である。実際には、分出しした方向が一方向にならないようにシートを直交する方向に複数枚重ねて分出しするため、このように一方向にはならないが、わかりやすく説明するためにここでは一方向のみを示した。炭素繊維複合材料の内部では矢印Xの方向にセルレーションが配向し、矢印Xに沿った方向と矢印Xと交差する方向とでは例えば引張強さが異なる性質を有している。
【0061】
図5に示すように、隣接距離Lは、ゲート部70の円の中心Pを通る仮想線Q(図では一点鎖線で示した)上における連通路60の幅であることができ、すなわち、その仮想線Q上におけるゲート部70と開口部43との距離であることができる。
【0062】
プランジャー50によって押圧されたゴム組成物30は、開口部43に向かって放射状に広がり、連通路60を通ってゲート部70からキャビティ80に矢印Vで示すように放射状に注入される。このように放射状にキャビティ80に注入されることによって、炭素繊維複合材料中のセルレーションは、その放射状の流動によって向きを変え、さらに、狭いゲート部70から広いキャビティ80へ注入される際に上下方向へも複雑に流動することによって矢印X以外の様々な方向に向きを変えることができる。そのため、分出ししたときのセルレーションの配向による補強構造の異方性を低減することができる。
【0063】
2.第2の実施の形態
図7及び図8は、第2の実施の形態に係る無端状ゴム製品の製造装置の概略縦断面図である。図9は、図8におけるB−B断面図である。
【0064】
図7に示すように、第2の実施の形態に係る無端状ゴム製品32bの製造装置1bは、キャビティ80bの内側に配置された無端状の未架橋のゴム組成物30bに合わせてプランジャー50bが環状に形成されている点で第1の実施の形態に係る無端状ゴム製品の製造装置1と異なる。また、無端状ゴム製品32bは、縦断面が円形のいわゆるOリングである。第1の実施の形態と同様の構成については説明を省略する。なお、第2の実施の形態に係る無端状ゴム製品32bの製造装置1bにおける隣接距離L及び連通路60bの高さHは、第1の実施の形態と同様であるので説明は省略する。
【0065】
図9に示すように、キャビティ80bは無端状ゴム製品32bの形状に合わせて環状に形成され、その内側に連通路60bを介して環状の仕込み部40bが形成されている。仕込み部40bには無端状の未架橋のゴム組成物30bが配置されている。なお、ゴム組成物30bは、無端状ではなく、例えば1本または複数本のゴム組成物を環状に並べて配置してもよい。
【0066】
第2の金型20bに形成された仕込み部40bの内周壁46b及び外周壁44bは、プランジャー50bがゴム組成物30bに対して進退駆動することを許容する。外周壁44bと第2のキャビティ面22bとの間には、第1の実施の形態と同様に連通路60bとゲ
ート部70bが形成されている。
【0067】
図8に示すように、仕込み部40bの形状に合わせて環状に形成されたプランジャー50bが下降して、ゴム組成物30bを押圧し、載置面42bに当接するまで下降する。
【0068】
第2の実施の形態のように製造装置1bを構成することによって、無端状ゴム製品32bの内径が比較的大きな製品であっても製造することができる。
【0069】
上記のように、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。したがって、このような変形例はすべて、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0070】
例えば、第1及び第2の実施の形態においては、仕込み部40,40b、ゲート部70,70b、及び連通路60,60bは、無端状ゴム製品32,32bの内側に形成されたが、これに限らず、無端状ゴム製品32,32bの外側に形成することができる。すなわち、ゲート部は、キャビティ80,80bの外周面に沿って形成することができ、開口部はキャビティ80,80bの外側に環状に形成された仕込み部の内周面に沿って形成することができる。さらに、ゲート部は、仕込み部の配置によって、例えばキャビティ80,80bの上方または下方に開口するように形成されることができる。また、第1の実施の形態では載置面42の中央にゴム組成物30を配置したが、例えば第2の実施の形態のように無端状の未架橋のゴム組成物30bとすることができる。無端状ゴム製品は、Xリング、Oリングに限らず、縦断面形状がD字状のDリング、T字状のTリング、U字状のUパッキン、V字状のVパッキンなどの形状であることができる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
ロール径が6インチのオープンロール(ロール温度10〜20℃)に、100質量部(phr)の3元系の含フッ素エラストマーを投入して、ロールに巻き付かせた。
【0073】
次に、15質量部(phr)のカーボンナノファイバーの他、補強材としてのカーボンブラック、架橋剤としてのTAIC及びパーオキサイド、及び加工助剤等の配合剤をエラストマーに投入した。このとき、ロール間隙を1.5mmとした。
【0074】
配合剤を投入し終わったら、配合剤を含む混合物をロールから取り出し、ロール間隙を1.5mmから0.3mmと狭くして、混合物を投入して薄通しをした。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。薄通しは繰り返し10回行った。
【0075】
ロールを所定の間隙(3.5mm)にセットして、薄通しした複合材料を列理と反列理交互に重ね合わせて投入し、シート状に分出しして炭素繊維複合材料の未架橋のゴム組成物を得た。
【0076】
この未架橋のゴム組成物を円形に打ち抜いて、図9及び図10に示すような第2の実施の形態に係る製造装置1bのキャビティ80bの内側に配置した。第2の金型20bを第1の金型10bに対して型閉じして160℃、10分間プレス成形(キュア)した後、さらに230℃、4時間ポストキュアして、実施例1としてAS568B−223のOリング形状の無端状ゴム製品を得た。このとき、隣接距離Lは5mmであり、連通路60bの高さHは0.05mmであった。ゲート70bはOリング形状のキャビティ80bの内周面に沿って全周に形成されていた。
【0077】
また、実施例1と同じ未架橋のゴム組成物を無端状ゴム製品に近い形状に打ち抜き、図10に示すような従来のコンプレッション成形装置(キャビティはXリング形状ではなく、実施例1と同じOリング形状)に配置して、第2の金型120を第1の金型110に対して型閉じして160℃、10分間プレス成形(キュア)した後、さらに230℃、4時間ポストキュアして、比較例1としてAS568B−223のOリング形状の無端状ゴム製品を得た。
【0078】
なお、カーボンナノファイバーは実測平均直径68nmの多層カーボンナノチューブであり、含フッ素エラストマーはムーニー粘度ML1+10 121℃(中心値)65の3元系FKMであり、未架橋のゴム組成物はムーニー粘度ML1+10 121℃(中心値)140の炭素繊維複合材料であった。
【0079】
(2)基本特性試験
実施例1及び比較例1の複数のOリングについて、国際ゴム硬度(IRHD)試験に基づいてゴム硬度(Hs)を測定した。
【0080】
また、実施例1及び比較例1の複数のOリングについて、ASTM D1414試験に準拠して引張試験を行い、室温における、引張強さ(TS(MPa))、破断伸び(Eb(%))、50%変形時の応力(σ50(MPa))を測定し、各平均値を求めた。測定結果は、表1に示した。
【0081】
【表1】
【0082】
表1の結果から、実施例1の方が比較例1よりも引張強さと50%変形時の応力(σ50(MPa))に優れていた。
【符号の説明】
【0083】
1,1b 無端状ゴム製品の製造装置、10,10b 第1の金型、12,12b 第1のキャビティ面、14,14b 第1の合わせ面、20,20b 第2の金型、22,22b 第2のキャビティ面、24,24b 第2の合わせ面、30,30b 未架橋のゴム組成物、32,32b 無端状ゴム製品、34 外周端部、36 内周端部、38 貫通孔、40,40b 仕込み部、42,42b 載置面、43,43b 開口部、44,44b 外周壁、46b 内周壁、50,50b プランジャー、52,52b 押圧部、60,60b 連通路、62 第1の連通路形成面、64 第2の連通路形成面、70,70b ゲート部、80,80b キャビティ、82 キャビティ内周端部、84 キャビティ外周端部、L 隣接距離、H 連通路の高さ、X 矢印、V 矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12