特許第5766716号(P5766716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5766716多環式グアニジン化合物の合成のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5766716
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】多環式グアニジン化合物の合成のための方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20150730BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150730BHJP
【FI】
   C07D487/04 147
   C07D487/04 136
   C07D487/04 144
   C07D487/04 151
   !C07B61/00 300
【請求項の数】11
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2012-546076(P2012-546076)
(86)(22)【出願日】2010年12月17日
(65)【公表番号】特表2013-515728(P2013-515728A)
(43)【公表日】2013年5月9日
(86)【国際出願番号】US2010060985
(87)【国際公開番号】WO2011079041
(87)【国際公開日】20110630
【審査請求日】2013年12月16日
(31)【優先権主張番号】61/299,047
(32)【優先日】2010年1月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/422,492
(32)【優先日】2010年12月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/290,087
(32)【優先日】2009年12月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511046391
【氏名又は名称】ノボマー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100062409
【弁理士】
【氏名又は名称】安村 高明
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】グリードネフ, アレクセイ
【審査官】 小川 由美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05659011(US,A)
【文献】 特開昭61−280495(JP,A)
【文献】 特開昭58−035164(JP,A)
【文献】 米国特許第06013675(US,A)
【文献】 特開昭53−124220(JP,A)
【文献】 米国特許第05101041(US,A)
【文献】 特表2007−504176(JP,A)
【文献】 米国特許第03873266(US,A)
【文献】 米国特許第02473111(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デセ−5−エン(TBD)を合成する方法であって、非環式グアニジン化合物をビス(3−アミノプロピル)アミンと接触させるステップを含む方法。
【請求項2】
前記接触させるステップは前記反応物の未希釈混合物を加熱するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物は0℃〜80℃の温度に加熱される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
非環式グアニジン化合物と、ビス(3−アミノプロピル)アミンとモル比は:1ある、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記非環式グアニジン化合物がグアニジンの付加物または塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記非環式グアニジン化合物が塩酸グアニジンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記非環式グアニジン化合物が炭酸グアニジン、硫酸グアニジン、酢酸グアニジン、硝酸グアニジン、グアニジンp−トルエンスルホネート、塩酸グアニジン、およびリン酸グアニジンからなる群より選択されるグアニジン塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ビス(3−アミノプロピル)アミンとグアニジン塩とを接触させるステップが、80℃〜80℃の温度に前記反応物の未希釈混合物を加熱するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
塩酸グアニジンと、ビス(3−アミノプロピル)アミンとモル比は:1ある、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
塩酸グアニジンとビス(3−アミノプロピル)アミンとが、溶媒の非存在下で接触する、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デセ−5−エン(TBD)を合成する方法であって、非環式グアニジン化合物をビス(3−アミノプロピル)アミンと接触させるステップを含み、該非環式グアニジン化合物が、式I
【化37】

またはその塩もしくは付加物であり、
存在するRは各々独立に、水素、必要に応じて置換されているC1〜20脂肪族、必要に応じて置換されているアリール、およびニトリルからなる群から選択される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2009年12月24日に出願された米国仮特許出願第61/290,087号、2010年1月28日に出願された米国仮特許出願第61/299,047号、および2010年12月13日に出願された米国仮特許出願第61/422,492号に対する優先権を主張し、これらの各出願はこれにより本明細書において参照として援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
高塩基性の二環性および三環性グアニジン化合物は、有機合成およびポリマー添加剤の分野に応用されている。残念ながら、こうした化合物を合成する現在の方法は、硫化水素などの有害な副生成物を生成したり、または厳しい条件を必要としたりする。
【0003】
1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デセ−5−エン(TBD)などの二環性グアニジンは、トリアミンをCSまたは炭酸ジアルキルなどの試薬と組み合わせて使用して調製している。CS経路については、特許文献1に記載されている。この経路には、安価な出発材料を使用すること、さらに高収率が得られるという利点がある。しかしながら、この経路もやはり反応の副生成物として有毒で悪臭のある化合物硫化水素(HS)を大量に生成する。HSが生成された場合、周囲に放出されるのを防止するため、追加の安全予防措置のほか、高価なスクラバーの使用が必要となる。
【0004】
より最近のアプローチは、特許文献2および特許文献3に記載されている。そこに開示されている経路は、炭素源の1つとして環状尿素を使用する。これは、HSが生成されないため、CS経路と比べて改善されている。しかしながら、この化学反応には、多段階のプロセスおよび厳しい反応条件が必要とされる。
【0005】
したがって、TBDなどの多環式グアニジンの対費用効果の高い安価な経路が依然として求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,797,487号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0281314号明細書
【特許文献3】国際公開第2009/137728号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本発明は、多環式グアニジン化合物の簡便な合成方法を提供する。ある種の実施形態では、この合成は、本明細書に記載の試薬をトリアミン化合物と接触させて多環式グアニジン化合物を得るステップを含む。本明細書で定義するように、本明細書に記載の試薬は、グアニジン、非環式グアニジン、シアナミド、シアニミド、メラミン、およびメラミン誘導体を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明は、グアニジン、またはより一般的には非環式グアニジンから多環式グアニジンを合成する方法を包含する。ある種の実施形態では、この方法は、下記スキーム1に示すように非環式グアニジンをトリアミンと接触させて多環式グアニジン化合物を得るステップを含む。下記式中の変数およびR基は、本明細書に記載する通りである。
【0009】
【化1】
いくつかの実施形態では、本発明は、シアナミドまたはより一般的にはシアニミドから多環式グアニジンを合成する方法を包含する。ある種の実施形態では、この方法は、下記スキーム2に示すようにシアニミドをトリアミンと接触させて多環式グアニジン化合物を得るステップを含む。下記式中の変数およびR基は、本明細書に記載する通りである。
【0010】
【化2】
一部の実施形態では、本発明は、メラミンまたはその誘導体から多環式グアニジンを合成する方法を包含する。ある種の実施形態では、この方法は、下記スキーム3に示すようにメラミンまたはメラミン誘導体をトリアミンと接触させて多環式グアニジン化合物を得るステップを含む。下記式中の変数およびR基は、本明細書に記載する通りである。
【0011】
【化3】

一実施形態において、例えば、以下の項目が提供される。
(項目1)
多環式グアニジン化合物の調製方法であって、トリアミン化合物を、グアニジン、非環式グアニジン化合物、シアナミド、シアニミド化合物、メラミンおよびメラミン誘導体からなる群から選択される試薬と接触させるステップを含む方法。
(項目2)
式Vの多環式グアニジン化合物は、式IVのトリアミン化合物を式Iの非環式グアニジン化合物と接触させることにより調製される、項目1に記載の方法:
【化27】

式中、
は、水素、必要に応じて置換されている脂肪族、必要に応じて置換されているヘテロ脂肪族、必要に応じて置換されているアリール、および必要に応じて置換されているヘテロアリールからなる群から選択され、
は必要に応じて存在し、存在するRは各々独立に、ハロゲン、必要に応じて置換されている脂肪族、必要に応じて置換されているヘテロ脂肪族、必要に応じて置換されているアリール、および必要に応じて置換されているヘテロアリールからなる群から選択され、2つ以上のR基は必要に応じて、介在する原子と一緒になって、酸素、窒素または硫黄から選択される1〜3個のヘテロ原子を必要に応じて含む1つまたは複数の必要に応じて置換されている環を形成してもよく、
nは1以上4以下の整数であり、
mは1以上4以下の整数であり、
存在するRは各々独立に、水素、必要に応じて置換されているC1〜20脂肪族、必要に応じて置換されているアリールおよびニトリルからなる群から選択される。
(項目3)
存在するRは各々、水素またはアルキル基である、項目2に記載の方法。
(項目4)
式Iの前記非環式グアニジン化合物はグアニジンである、項目2に記載の方法。
(項目5)
式Iの前記非環式グアニジン化合物はテトラアルキルグアニジンである、項目2に記載の方法。
(項目6)
式Iの前記非環式グアニジン化合物はテトラメチルグアニジンである、項目2に記載の方法。
(項目7)
式Iの前記非環式グアニジン化合物は塩または付加物の形態である、項目2に記載の方法。
(項目8)
式Iの前記非環式グアニジン化合物は炭酸塩の形態である、項目2に記載の方法。
(項目9)
式Iの前記非環式グアニジン化合物は炭酸グアニジンである、項目2に記載の方法。
(項目10)
式Iの前記非環式グアニジン化合物は硫酸グアニジンである、項目2に記載の方法。
(項目11)
式Iの前記非環式グアニジン化合物は酢酸グアニジンである、項目2に記載の方法。
(項目12)
式Iの前記非環式グアニジン化合物は硝酸グアニジンである、項目2に記載の方法。
(項目13)
式Iの前記非環式グアニジン化合物はグアニジンp−トルエンスルホネートである、項目2に記載の方法。
(項目14)
式Iの前記非環式グアニジン化合物は塩酸グアニジンである、項目2に記載の方法。
(項目15)
式Iの前記非環式グアニジン化合物はリン酸グアニジンである、項目2に記載の方法。
(項目16)
少なくとも1つ存在するRはニトリルである、項目2に記載の方法。
(項目17)
少なくとも1つ存在するRはニトリルであり、他に存在する場合はすべて水素またはアルキル基から独立に選択される、項目2に記載の方法。
(項目18)
式Iの前記非環式グアニジン化合物は下記式Iaの非環式グアニジン化合物である、項目2に記載の方法
【化28】


(項目19)
式Iの前記非環式グアニジン化合物はシアノグアニジンである、項目2に記載の方法。
(項目20)
式Vの多環式グアニジン化合物は、式IVのトリアミン化合物を式IIのシアニミド化合物と接触させることにより調製される、項目1に記載の方法:
【化29】

式中、
は水素、必要に応じて置換されている脂肪族、必要に応じて置換されているヘテロ脂肪族、必要に応じて置換されているアリール、および必要に応じて置換されているヘテロアリールからなる群から選択され、
は必要に応じて存在し、存在するRは各々独立に、ハロゲン、必要に応じて置換されている脂肪族、必要に応じて置換されているヘテロ脂肪族、必要に応じて置換されているアリール、および必要に応じて置換されているヘテロアリールからなる群から選択され、2つ以上のR基は必要に応じて、介在する原子と一緒になって、酸素、窒素または硫黄から選択される1〜3個のヘテロ原子を必要に応じて含む1つまたは複数の必要に応じて置換されている環を形成してもよく、
nは1以上4以下の整数であり、
mは1以上4以下の整数であり、
存在するRは各々独立に、水素、必要に応じて置換されているC1〜20脂肪族、および必要に応じて置換されているアリールからなる群から選択される。
(項目21)
式IIの前記シアニミド化合物はシアナミドである、項目20に記載の方法。
(項目22)
存在するRは各々、水素またはアルキル基である、項目20に記載の方法。
(項目23)
式Vの多環式グアニジン化合物は、式IVのトリアミン化合物を式IIIのメラミンまたはメラミン誘導体と接触させることにより調製される、項目1に記載の方法:
【化30】

式中、
は水素、必要に応じて置換されている脂肪族、必要に応じて置換されているヘテロ脂肪族、必要に応じて置換されているアリール、および必要に応じて置換されているヘテロアリールからなる群から選択され、
は必要に応じて存在し、存在するRは各々独立に、ハロゲン、必要に応じて置換されている脂肪族、必要に応じて置換されているヘテロ脂肪族、必要に応じて置換されているアリール、および必要に応じて置換されているヘテロアリールからなる群から選択され、2つ以上のR基は必要に応じて、介在する原子と一緒になって、酸素、窒素または硫黄から選択される1〜3個のヘテロ原子を必要に応じて含む1つまたは複数の必要に応じて置換されている環を形成してもよく、
nは1以上4以下の整数であり、
mは1以上4以下の整数であり、
存在するRおよびRは各々独立に水素、必要に応じて置換されているC1〜20脂肪族、および必要に応じて置換されているアリールからなる群から選択される。
(項目24)
存在するRおよびRは各々独立に水素またはアルキル基である、項目23に記載の方法。
(項目25)
式Vの前記多環式グアニジン化合物は式IVのトリアミン化合物をメラミンと接触させることにより調製される、項目23に記載の方法。
(項目26)
式IVの前記トリアミン化合物は式IVaのトリアミン化合物である、項目2、20または23のいずれか1項に記載の方法
【化31】


(項目27)
前記トリアミン化合物は必要に応じて置換されているビス(アミノプロピル)アミンである、項目1に記載の方法。
(項目28)
前記トリアミン化合物は必要に応じて置換されているビス(アミノエチル)アミンである、項目1に記載の方法。
(項目29)
前記トリアミン化合物は必要に応じて置換されている2,6−ビス(アミノメチル)ピペリジンである、項目1に記載の方法。
(項目30)
前記トリアミン化合物は必要に応じて置換されている2,6−ビス(アミノエチル)ピペリジンである、項目1に記載の方法。
(項目31)
前記トリアミン化合物は必要に応じて置換されている2,5−ビス(アミノメチル)ピロリジンである、項目1に記載の方法。
(項目32)
前記トリアミン化合物は必要に応じて置換されている2,5−ビス(アミノエチル)ピロリジンである、項目1に記載の方法。
(項目33)
前記トリアミン化合物は必要に応じて置換されているN−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミンである、項目1に記載の方法。
(項目34)
前記トリアミン化合物は必要に応じて置換されているN−(2−アミノエチル)−1,4−ブタンジアミンである、項目1に記載の方法。
(項目35)
前記トリアミン化合物は必要に応じて置換されているN−(2−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミンである、項目1に記載の方法。
(項目36)
前記トリアミン化合物は
【化32】

および
【化33】

からなる群から選択される、項目2、20または23のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
前記トリアミン化合物は下記構造のトリアミン化合物である、項目2、20または23のいずれか1項に記載の方法
【化34】


(項目38)
前記トリアミン化合物は下記構造のトリアミン化合物である、項目2、20または23のいずれか1項に記載の方法
【化35】


(項目39)
前記トリアミン化合物は下記構造のトリアミン化合物である、項目2、20または23のいずれか1項に記載の方法
【化36】


(項目40)
前記トリアミン化合物と前記試薬とは溶媒の存在下で接触する、項目1に記載の方法。
(項目41)
前記トリアミン化合物と前記試薬とは溶媒の非存在下で接触する、項目1に記載の方法。
(項目42)
前記トリアミン化合物と前記試薬との混合物を加熱するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目43)
前記混合物は約50℃〜約250℃の温度に加熱される、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記混合物は約80℃〜約200℃の温度に加熱される、項目42に記載の方法。
(項目45)
前記混合物は約100℃〜約180℃の温度に加熱される、項目42に記載の方法。
(項目46)
前記混合物は約140℃〜約160℃の温度に加熱される、項目42に記載の方法。
(項目47)
前記トリアミン化合物と前記試薬とは促進剤の存在下で接触する、項目1に記載の方法。
(項目48)
前記促進剤は酸である、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記酸は鉱酸およびスルホン酸からなる群から選択される、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記促進剤はスルホン酸である、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記酸はリン酸である、項目48に記載の方法。
(項目52)
前記酸は硫酸である、項目48に記載の方法。
(項目53)
前記スルホン酸はメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸およびトリフルオロメチルスルホン酸(trifluormethyl sulfonic acid)からなる群から選択される、項目50に記載の方法。
(項目54)
前記試薬と前記トリアミン化合物との反応から生成された粗生成物を強塩基で処理するステップをさらに含む、項目48に記載の方法。
(項目55)
前記強塩基は金属アルコキシドである、項目54に記載の方法。
(項目56)
酸促進剤と試薬とのモル比は約2:1〜約2:2である、項目48に記載の方法。
(項目57)
酸促進剤と試薬とのモル比は約1:1である、項目48に記載の方法。
(項目58)
トリアミン化合物と試薬とのモル比は約2:1〜約2:2である、項目1に記載の方法。
(項目59)
トリアミン化合物と試薬とのモル比は約1:1である、項目58に記載の方法。
(項目60)
1,5,7−トリアザビシクロ[5.5.0]デセ−5−エン(TBD)を合成する方法であって、スルホン酸の存在下で炭酸グアニジンをビス(3−アミノプロピル)アミンと接触させるステップを含む方法。
(項目61)
前記接触させるステップは前記反応物の未希釈混合物を加熱するステップを含む、項目60に記載の方法。
(項目62)
前記混合物は約80℃〜約180℃の温度に加熱される、項目61に記載の方法。
(項目63)
炭酸グアニジンと、ビス(3−アミノプロピル)アミンと、前記スルホン酸とのモル比は約1:1:1である、項目60に記載の方法。
(項目64)
前記スルホン酸はメタンスルホン酸を含む、項目60に記載の方法。
(項目65)
1,5,7−トリアザビシクロ[5.5.0]デセ−5−エン(TBD)を合成する方法であって、スルホン酸の存在下でテトラメチルグアニジンをビス(3−アミノプロピル)アミンと接触させるステップを含む方法。
(項目66)
前記接触させるステップは前記反応物の未希釈混合物を加熱するステップを含む、項目65に記載の方法。
(項目67)
前記混合物は約80℃〜約180℃の温度に加熱される、項目66に記載の方法。
(項目68)
炭酸グアニジンと、ビス(3−アミノプロピル)アミンと、前記スルホン酸とのモル比は約1:1:1である、項目65に記載の方法。
(項目69)
前記スルホン酸はメタンスルホン酸を含む、項目65に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の方法を用いて生成された粗TBD生成物のH NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
特定の官能基および化学用語の定義について、以下により詳細に記載する。本発明において、化学元素は、Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed.,裏表紙により確認され、特定の官能基は一般に、その中に記載されているものと定義される。さらに、有機化学の一般原理のほか、特定の官能部分および反応性については、Organic Chemistry,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito,1999;Smith and March March’s Advanced Organic Chemistry,5th Edition,John Wiley & Sons,Inc.,New York,2001;Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers,Inc.,New York,1989;Carruthers,Some Modern Methods of Organic Synthesis,3rd Edition,Cambridge University Press,Cambridge,1987に記載されている。これら各々の内容全体を参照によって本明細書に援用する。
【0014】
本発明のある種の化合物は、1つまたは複数の不斉中心を含んでもよく、したがって様々な立体異性体、たとえば、エナンチオマーおよび/またはジアステレオマーとして存在する場合がある。このため、本発明の化合物およびその組成物は、単独のエナンチオマー、ジアステレオマーまたは幾何異性体の形態であってもよいし、または立体異性体の混合物の形態であってもよい。ある種の実施形態では、本発明の化合物は、エナンチオピュアな化合物である。他のある種の実施形態では、エナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物を提供する。
【0015】
さらに、他に記載がない限り、ある種の化合物は、本明細書に記載するように、ZあるいはE異性体として存在する可能性がある1つまたは複数の二重結合を有していてもよい。本発明はさらに、他の異性体を実質的に含まない個々の異性体としての化合物と、あるいは、様々な異性体の混合物、たとえば、エナンチオマーのラセミ混合物としての化合物とも包含する。上記の化合物自体に加えて、本発明はさらに、1種または複数種の化合物を含む組成物も包含する。
【0016】
本明細書で使用する場合、「異性体」という用語は、あらゆる幾何異性体および立体異性体を含む。たとえば、「異性体」は、シスおよびトランス異性体、E−およびZ−異性体、R−およびS−エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、これらのラセミ混合物、および本発明の範囲内に包含されるこれらの他の混合物を含む。いくつかの実施形態では、たとえば、1種または複数種の対応する立体異性体を実質的に含まない化合物を提供してもよく、これを「立体化学的に濃縮された」と呼ぶことがある。
【0017】
「ハロ」および「ハロゲン」という用語は、本明細書で使用する場合、フッ素(フルオロ、−F)、塩素(クロロ、−Cl)、臭素(ブロモ、−Br)およびヨウ素(ヨード、−I)から選択される原子をいう。
【0018】
「脂肪族」または「脂肪族基」という用語は、本明細書で使用する場合、直鎖(すなわち、非分岐)でも、分岐でも、または環状(縮合、架橋、およびスピロ縮合多環式を含む)でもよく、かつ完全に飽和していても、または1つまたは複数の不飽和の単位を含んでいてもよいが、芳香族ではない炭化水素部分を意味する。他に記載がない限り、脂肪族基は、1〜30個の炭素原子を含む。ある種の実施形態では、脂肪族基は、1〜12個の炭素原子を含む。ある種の実施形態では、脂肪族基は、1〜8個の炭素原子を含む。ある種の実施形態では、脂肪族基は、1〜6個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、脂肪族基は、1〜5個の炭素原子を含み、いくつかの実施形態では、脂肪族基は1〜4個の炭素原子を含み、なお他の実施形態では、脂肪族基は1〜3個の炭素原子を含み、なお他の実施形態では、脂肪族基は1〜2個の炭素原子を含む。好適な脂肪族基には、直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基、ならびに(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルなどこれらの混合物があるが、これに限定されるものではない。
【0019】
「ヘテロ脂肪族」または「ヘテロ脂肪族基」という用語は、本明細書で使用する場合、炭素原子に加えて、必要に応じて置換されている1〜5個のヘテロ原子を有する炭化水素部分を意味し、炭化水素部分は、直鎖(すなわち、非分岐)でも、分岐でも、または環状(「複素環」)でもよく、かつ完全に飽和していても、または1つまたは複数の不飽和の単位を含んでいてもよいが、芳香族ではない。「ヘテロ原子」という用語は、窒素、酸素、または硫黄をいい、窒素または硫黄の任意の酸化形態、および塩基性窒素の任意の四級化形態を含む。また、「窒素」という用語は、置換窒素も含む。他に記載がない限り、ヘテロ脂肪族基は1〜6個の炭素原子を含み、1〜3個の炭素原子が酸素、窒素および硫黄から選択されるヘテロ原子で必要に応じて独立に置き換えられている。いくつかの実施形態では、ヘテロ脂肪族基は1〜4個の炭素原子を含み、1〜2個の炭素原子が酸素、窒素および硫黄から選択されるヘテロ原子で必要に応じて独立に置き換えられている。なお他の実施形態では、ヘテロ脂肪族基は1〜3個の炭素原子を含み、1個の炭素原子が酸素、窒素および硫黄から選択されるヘテロ原子で必要に応じて独立に置き換えられている。好適なヘテロ脂肪族基には、直鎖または分岐のヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基およびヘテロアルキニル基があるが、これに限定されるものではない。
【0020】
「不飽和」という用語は、本明細書で使用する場合、ある部分が1つまたは複数の二重結合または三重結合を有することを意味する。
【0021】
単独で、またはより大きな部分の一部として使用される「環状脂肪族」、「炭素環」または「炭素環式」という用語は、本明細書に記載するように3〜20員を有する飽和または部分不飽和の単環式、二環式、または多環式環系をいい、脂肪族環系は、上記で定義し本明細書に記載したように必要に応じて置換されている。環状脂肪族基として、以下に限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、シクロオクチル、シクロオクテニル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ノルボルニル、スピロ[4.5]デシル、およびシクロオクタジエニルが挙げられる。いくつかの実施形態では、シクロアルキルは、3〜6個の炭素を有する。「環状脂肪族」、「炭素環」または「炭素環式」という用語は、ラジカルまたは結合点が脂肪族環状にある、デカヒドロナフチルまたはテトラヒドロナフチルなど1つまたは複数の芳香環または非芳香環に縮合した脂肪族環も含む。いくつかの実施形態では、炭素環式基は二環式である。いくつかの実施形態では、炭素環式基は三環式である。いくつかの実施形態では、炭素環式基は多環式である。ある種の実施形態では、「3〜14員環炭素環」および「C3〜14炭素環」という用語は、3〜8員環の飽和または部分不飽和単環式炭素環、または7〜14員環の飽和または部分不飽和多環炭素環をいう。
【0022】
「アルキル」という用語は、本明細書で使用する場合、水素原子1個を取り除くことにより、1〜6個の炭素原子を含む脂肪族部分から誘導される飽和で直鎖または分岐鎖の炭化水素ラジカルをいう。他に記載がない限り、アルキル基は1〜12個の炭素原子を含む。ある種の実施形態では、アルキル基は1〜8個の炭素原子を含む。ある種の実施形態では、アルキル基は1〜6個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、アルキル基は1〜5個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、アルキル基は1〜4個の炭素原子を含む。ある種の実施形態では、アルキル基は1〜3個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、アルキル基は1〜2個の炭素原子を含む。アルキルラジカルの例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、sec−ペンチル、イソ−ペンチル、tert−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−デシル、n−ウンデシル、ドデシルおよび同種のものがあるが、これに限定されるものではない。
【0023】
「アルケニル」という用語は、本明細書で使用する場合、水素原子1個を取り除くことにより、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する直鎖または分岐鎖の脂肪族部分から誘導される一価の基を意味する。他に記載がない限り、アルケニル基は2〜12個の炭素原子を含む。ある種の実施形態では、アルケニル基は2〜8個の炭素原子を含む。ある種の実施形態では、アルケニル基は2〜6個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、アルケニル基は2〜5個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、アルケニル基は2〜4個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、アルケニル基は2〜3個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、アルケニル基は2個の炭素原子を含む。アルケニル基には、たとえば、エテニル、プロペニル、ブテニル、1−メチル−2−ブテン−1−イルおよび同種のものがある。
【0024】
「アルキニル」という用語は、本明細書で使用する場合、水素原子1個を取り除くことにより、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する直鎖または分岐鎖の脂肪族部分から誘導される一価の基をいう。他に記載がない限り、アルキニル基は2〜12個の炭素原子を含む。ある種の実施形態では、アルキニル基は2〜8個の炭素原子を含む。ある種の実施形態では、アルキニル基は2〜6個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、アルキニル基は2〜5個の炭素原子を含み、いくつかの実施形態では、アルキニル基は2〜4個の炭素原子を含み、なお他の実施形態では、アルキニル基は2〜3個の炭素原子を含み、なお他の実施形態では、アルキニル基は2個の炭素原子を含む。代表的なアルキニル基には、エチニル、2−プロピニル(プロパルギル)、1−プロピニルおよび同種のものがあるが、これに限定されるものではない。
【0025】
単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」または「アリールオキシアルキル」のようにより大きな部分の一部として使用される「アリール」という用語は、系内の少なくとも1つの環が芳香族であり、かつ系内の各環は3〜12個の環員を含み、全体で5〜20個の環員を有する単環式および多環式環系をいう。「アリール」という用語は、「アリール環」という用語と同義で使われることがある。本発明のある種の実施形態では、「アリール」とは、以下に限定されるものではないが、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラシルおよび同種のものを含む芳香環系をいい、1つまたは複数の置換基を有していてもよい。また、本明細書で使用する場合、ベンゾフラニル、インダニル、フタルイミジル、ナフトイミジル、フェナントリイジニル(phenantriidinyl)またはテトラヒドロナフチルおよび同種のものなど芳香環が1つまたは複数の別の環に縮合した基も「アリール」という用語の範囲内に含まれる。ある種の実施形態では、「6〜10員環アリール」および「C6〜10アリール」という用語は、フェニルまたは8〜10員環の多環式アリール環をいう。ある種の実施形態では、「6〜14員環アリール」および「C6〜14アリール」という用語は、フェニルまたは8〜14員環の多環式アリール環をいう。
【0026】
「ヘテロアリール」、および単独で、あるいは、たとえば、「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアラルコキシ」などより大きな部分の一部として使用される「ヘテロアル−(heteroar−)」という用語は、5〜14個の環原子、好ましくは5、6または9個の環原子を有し、環全体で6、10または14個のπ電子を共有し、かつ炭素原子以外に1〜5個のヘテロ原子を有する基をいう。「ヘテロ原子」という用語は、窒素、酸素または硫黄をいい、窒素または硫黄の任意の酸化形態、および塩基性窒素の任意の四級化形態を含む。ヘテロアリール基には、以下に限定されるものではないが、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニル、ベンゾフラニルおよびプテリジニルがある。「ヘテロアリール」および「ヘテロアル−(heteroar−)」という用語はまた、本明細書で使用する場合、ラジカルまたは結合点が芳香族複素環上にあり、ヘテロ芳香環が1つまたは複数のアリール環、環状脂肪族環またはヘテロシクリル環に縮合した基も含む。非限定的な例として、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H−キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルおよびピリド[2,3−b]−1,4−オキサジン−3(4H)−オンがある。ヘテロアリール基は、単環式でもまたは二環式でもよい。「ヘテロアリール」という用語は、「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」または「複素芳香族」という用語と同義で使われることがあり、これらの用語のいずれも、必要に応じて置換されている環を含む。「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルキル基をいい、アルキル部分およびヘテロアリール部分が独立に必要に応じて置換されている。「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルキル基をいい、アルキル部分およびヘテロアリール部分が独立に必要に応じて置換されている。ある種の実施形態では、「5〜10員環ヘテロアリール」という用語は、窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される1〜3個のヘテロ原子を有する5〜6員環ヘテロアリール環、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される1〜4個のヘテロ原子を有する8〜10員環の二環式ヘテロアリール環をいう。ある種の実施形態では、「5〜14員環ヘテロアリール」という用語は、窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される1〜3個のヘテロ原子を有する5〜6員環ヘテロアリール環、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される1〜4個のヘテロ原子を有する8〜14員環の多環式ヘテロアリール環をいう。
【0027】
本明細書で使用する場合、「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素環式ラジカル」および「複素環式環」という用語は、同義で使われ、炭素原子に加えて1個または複数個、好ましくは上記で定義した1〜4個のヘテロ原子を有する飽和あるいは部分不飽和の安定な3〜7員環単環式、または7〜14員環二環式の複素環部分をいう。複素環の環原子について使用する場合、「窒素」という用語は、置換窒素を含む。一例を挙げると、酸素、硫黄または窒素から選択される0〜3個のヘテロ原子を有する飽和または部分不飽和環では、窒素は、N(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルの場合)でも、NH(ピロリジニルの場合)でも、またはNR(N置換ピロリジニルの場合)でもよい。いくつかの実施形態では、「3〜7員環複素環式」という用語は、窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される1〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員環で飽和または部分不飽和の単環式複素環式環をいう。いくつかの実施形態では、「3〜8員環複素環」という用語は、窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される1〜2個のヘテロ原子を有する3〜8員環で飽和または部分不飽和の単環式複素環式環をいう。いくつかの実施形態では、「3〜12員環複素環式」という用語は、窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される1〜2個のヘテロ原子を有する3〜8員環で飽和または部分不飽和の単環式複素環式環、あるいは、窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される1〜3個のヘテロ原子を有する7〜12員環で飽和または部分不飽和の多環式複素環式環をいう。いくつかの実施形態では、「3〜14員環複素環」という用語は、窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される1〜2個のヘテロ原子を有する3〜8員環で飽和または部分不飽和の単環式複素環式環、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される1〜3個のヘテロ原子を有する7〜14員環で飽和または部分不飽和の多環式複素環式環をいう。
【0028】
複素環式環は、安定な構造をもたらすのであれば、そのペンダント基にどのようなヘテロ原子または炭素原子で結合していてもよく、環原子のいずれかが必要に応じて置換されていてもよい。こうした飽和または部分不飽和の複素環式ラジカルの例として、以下に限定されるものではないが、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニルおよびキヌクリジニルが挙げられる。「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクリル環」、「複素環式基」、「複素環部分」および「複素環式ラジカル」という用語は、本明細書において同義で使われ、インドリニル、3H−インドリル、クロマニル、フェナントリジニルまたはテトラヒドロキノリニルなど、ラジカルまたは結合点がヘテロシクリル環上にあり、ヘテロシクリル環が1つまたは複数のアリール、ヘテロアリールまたは環状脂肪族環に縮合した基をさらに含む。ヘテロシクリル基は、単環式でもまたは二環式でもよい。「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、ヘテロシクリルで置換されたアルキル基をいい、アルキル部分およびヘテロシクリル部分が独立に必要に応じて置換されている。
【0029】
本明細書で使用する場合、「部分不飽和」という用語は、環部分が少なくとも1つの二重結合または三重結合を含むことをいう。「部分不飽和」という用語は、複数の不飽和部位を有する環を包含することを意図しているが、本明細書で定義したようなアリール部分またはヘテロアリール部分を含むことを意図していない。
【0030】
本明細書に記載するように、本発明の化合物は、「必要に応じて置換されている」部分を含む。一般に、「置換されている」という用語は、「必要に応じて」という用語が前に付くか否かに関わらず、指定した部分の1つまたは複数の水素が好適な置換基で置き換えられていることを意味する。他に記載がない限り、「必要に応じて置換されている」基は、その基の置換可能な各位置で好適な置換基を有していてもよく、任意の特定の構造において2つ以上の位置が、特定の基から選択される2つ以上の置換基で置換され得る場合、その置換基は各位置で同一でも、あるいは異なっていてもよい。本発明が想定する置換基の組み合わせは、好ましくは安定なまたは化学的に実現可能な化合物の形成をもたらす組み合わせである。「安定な」という用語は、本明細書で使用する場合、化合物の生成、検出、さらにある種の実施形態では、化合物の回収、精製、および本明細書に開示された1つまたは複数の目的のための使用を可能にする条件に付した際に、化合物が実質的に変化しないことをいう。
【0031】
本明細書のいくつかの化学構造では、置換基を、図示した分子の鎖中または環内の結合に交差する結合に結合したように示してある。これは、置換基の1つまたは複数が任意の利用可能な位置で(通常親構造の水素原子に代わり)環または鎖に結合し得ることを示すことが理解されよう。このように置換される環または鎖の原子が2つの置換可能な位置を有する場合、2つの基が同じ環原子上に存在してもよい。他に記載がない限り、2つ以上の置換基が存在する場合、各置換基は、他方から独立に定義され、異なる構造を有していてもよい。環の結合に交差するように示された置換基が−Rである場合、これは、前の段落に記載されているように環が「必要に応じて置換されている」と述べている場合と同じ意味を持つ。
【0032】
「必要に応じて置換されている」基の置換可能な炭素原子上の好適な一価の置換基としては独立に、ハロゲン;−(CH0〜4;−(CH0〜4OR;−O−(CH0〜4C(O)OR;−(CH0〜4CH(OR;−(CH0〜4SR;Rで置換されていてもよい−(CH0〜4Ph;Rで置換されていてもよい−(CH0〜4O(CH0〜1Ph;Rで置換されていてもよい−CH=CHPh;−NO;−CN;−N;−(CH0〜4N(R;−(CH0〜4(R、−(CH0〜4N(R)C(O)R;−N(R)C(S)R;−(CH0〜4N(R)C(O)NR;−N(R)C(S)NR;−(CH0〜4N(R)C(O)OR;−N(R)N(R)C(O)R;−N(R)N(R)C(O)NR;−N(R)N(R)C(O)OR;−(CH0〜4C(O)R;−C(S)R;−(CH0〜4C(O)OR;−(CH0〜4C(O)N(R;−(CH0〜4C(O)SR;−(CH0〜4C(O)OSiR;−(CH0〜4OC(O)R;−OC(O)(CH0〜4SR−、SC(S)SR;−(CH0〜4SC(O)R;−(CH0〜4C(O)NR;−C(S)NR;−C(S)SR;−SC(S)SR、−(CH0〜4OC(O)NR;−C(O)N(OR)R;−C(O)C(O)R;−C(O)CHC(O)R;−C(NOR)R;−(CH0〜4SSR;−(CH0〜4S(O);−(CH0〜4S(O)OR;−(CH0〜4OS(O);−S(O)NR;−(CH0〜4S(O)R;−N(R)S(O)NR;−N(R)S(O);−N(OR)R;−C(NH)NR;−P(O);−P(O)R;−OP(O)R;−OP(O)(OR;SiR;−(C1〜4直鎖または分岐アルキレン)O−N(Rまたは−(C1〜4直鎖または分岐アルキレン)C(O)O−N(Rが挙げられる。式中、Rは各々、下記の通り置換されていてもよく、独立に水素、C1〜8脂肪族、−CHPh、−O(CH0〜1Ph、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される0〜4個のヘテロ原子を有する5〜6員環の飽和環、部分不飽和環もしくはアリール環であるか、あるいは、上記の定義に関わらず、独立に存在する2つのRは、介在する原子(単数または複数)と一緒になって、窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される0〜4個のヘテロ原子を有する3〜12員環の飽和、部分不飽和もしくはアリールの単環式環または多環式環であり、下記の通り置換されていてもよい。
【0033】
(または独立に存在する2つのRが介在する原子と一緒になって形成される環)上の好適な一価の置換基は独立に、ハロゲン、−(CH0〜2、−(ハロR)、−(CH0〜2OH、−(CH0〜2OR、−(CH0〜2CH(OR;−O(ハロR)、−CN、−N、−(CH0〜2C(O)R、−(CH0〜2C(O)OH、−(CH0〜2C(O)OR、−(CH0〜4C(O)N(R;−(CH0〜2SR、−(CH0〜2SH、−(CH0〜2NH、−(CH0〜2NHR、−(CH0〜2NR、−NO、−SiR、−OSiR、−C(O)SR、−(C1〜4直鎖または分岐アルキレン)C(O)ORまたは−SSRである。式中、Rは各々非置換であるか、あるいは、「ハロ」が前にある場合、1つまたは複数のハロゲンのみで置換されており、C1〜4脂肪族、−CHPh、−O(CH0〜1Ph、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される0〜4個のヘテロ原子を有する5〜6員環の飽和環、部分不飽和環もしくはアリール環から独立に選択される。Rの飽和炭素原子上の好適な二価の置換基としては、=Oおよび=Sがある。
【0034】
「必要に応じて置換されている」基の飽和炭素原子上の好適な二価の置換基としては、=O、=S、=NNR、=NNHC(O)R、=NNHC(O)OR、=NNHS(O)、=NR、=NOR、−O(C(R))2〜3O−または−S(C(R))2〜3S−がある。式中、各々独立に存在するRは、水素、下記に定義する通り置換されていてもよいC1〜6脂肪族、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される0〜4個のヘテロ原子を有する非置換で5〜6員環の飽和環、部分不飽和環もしくはアリール環から選択される。「必要に応じて置換されている」基に近接する置換可能な炭素に結合するのに好適な二価の置換基としては、−O(CR2〜3O−がある。式中、各々独立に存在するRは、水素、下記に定義する通り置換されていてもよいC1〜6脂肪族、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される0〜4個のヘテロ原子を有する非置換で5〜6員環の飽和環、部分不飽和環もしくはアリール環から選択される。
【0035】
の脂肪族基の好適な置換基としては、ハロゲン、−R、−(ハロR)、−OH、−OR、−O(ハロR)、−CN、−C(O)OH、−C(O)OR、−NH、−NHR、−NRまたは−NOがある。式中、Rは各々、非置換であるか、あるいは、「ハロ」が前にある場合、1つまたは複数のハロゲンのみで置換されており、独立にC1〜4脂肪族、−CHPh、−O(CH0〜1Ph、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される0〜4個のヘテロ原子を有する5〜6員環の飽和環、部分不飽和環もしくはアリール環である。
【0036】
「必要に応じて置換されている」基の置換可能な窒素上の好適な置換基としては、−R、−NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−S(O)、−S(O)NR、−C(S)NR、−C(NH)NRまたは−N(R)S(O)がある。式中、Rは各々独立に、水素、以下に定義される通り置換されていてもよいC1〜6脂肪族、非置換−OPh、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される0〜4個のヘテロ原子を有する非置換で5〜6員環の飽和環、部分不飽和環もしくはアリール環であるか、あるいは、上記の定義に関わらず、2つの独立に存在するRは、介在する原子(単数または複数)と一緒になって、窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される0〜4個のヘテロ原子を有する非置換で3〜12員環の飽和、部分不飽和もしくはアリール単環式環または二環式環である。置換可能な窒素は、3つのR置換基で置換されて荷電アンモニウム部分−N(Rを与えてもよく、アンモニウム部分はさらに好適な対イオンと複合体を形成する。
【0037】
の脂肪族基の好適な置換基は独立に、ハロゲン、−R、−(ハロR)、−OH、−OR、−O(ハロR)、−CN、−C(O)OH、−C(O)OR、−NH、−NHR、−NR、または−NOである。式中、Rは各々、非置換であるか、または「ハロ」が前にある場合、1つまたは複数のハロゲンのみで置換されており、独立にC1〜4脂肪族、−CHPh、−O(CH0〜1Ph、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される0〜4個のヘテロ原子を有する5〜6員環の飽和環、部分不飽和環もしくはアリール環である。
【0038】
本明細書で使用する場合、「本明細書に記載の試薬」という表現は、トリアミンと反応して多環式グアニジン化合物を得ることができる化合物を含む。そのような例示的化合物として、グアニジン、非環式グアニジン、シアナミド、シアニミド、メラミンおよびメラミン誘導体があるが、これに限定されるものではない。また、「本明細書に記載の試薬」という表現は、上記の化合物の塩形態も意図している。非限定的な例として、グアニジンの塩形態には、炭酸グアニジン、硫酸グアニジン、酢酸グアニジン、硝酸グアニジン、グアニジンp−トルエンスルホネート、塩酸グアニジン、リン酸グアニジンおよび同種のものがある。
【0039】
発明の詳細な説明
本発明は、多環式グアニジン化合物の調製方法を提供する。ある種の実施形態では、提供される方法は、本明細書に記載の試薬をトリアミン化合物と接触させるステップを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、本発明は、グアニジン、またはより一般的には非環式グアニジンから多環式グアニジンを合成する方法を包含する。ある種の実施形態では、この方法は、下記スキーム1に示すように非環式グアニジンをトリアミンと接触させて多環式グアニジン化合物を得るステップを含む。
【0041】
【化4】
式中、変数およびR基は、本明細書に記載する通りである。いくつかの実施形態では、Rは各々水素である。
【0042】
いくつかの実施形態では、この方法は、下記スキーム1aに示すように非環式グアニジンをトリアミンと接触させて多環式グアニジン化合物を得るステップを含む。
【0043】
【化5】
式中、変数および他のR基は、本明細書に記載する通りである。いくつかの実施形態では、Rは各々水素である。
【0044】
いくつかの実施形態では、この方法は、下記スキーム1bに示すように非環式グアニジンをトリアミンと接触させて多環式グアニジン化合物を得るステップを含む。
【0045】
【化6】
式中、変数および他のR基は、本明細書に記載する通りである。いくつかの実施形態では、Rは各々水素である。
【0046】
いくつかの実施形態では、本発明は、シアナミドまたはより一般的にはシアニミドから多環式グアニジンを合成する方法を包含する。ある種の実施形態では、この方法は、下記スキーム2に示すようにシアニミドをトリアミンと接触させて多環式グアニジン化合物を得るステップを含む。
【0047】
【化7】
式中、変数およびR基は、本明細書に記載する通りである。いくつかの実施形態では、Rは各々水素である。いくつかの実施形態では、存在するRは各々水素またはアルキル基である。
【0048】
いくつかの実施形態では、この方法は、下記スキーム2aに示すようにシアニミドをトリアミンと接触させて多環式グアニジン化合物を得るステップを含む。
【0049】
【化8】
式中、変数および他のR基は、本明細書に記載する通りである。いくつかの実施形態では、Rは各々水素である。
【0050】
いくつかの実施形態では、本発明は、メラミンまたはその誘導体から多環式グアニジンを合成する方法を包含する。ある種の実施形態では、この方法は、下記スキーム3に示すようにメラミンまたはメラミン誘導体をトリアミンと接触させて多環式グアニジン化合物を得るステップを含む。
【0051】
【化9】
式中、変数および他のR基は、本明細書に記載する通りである。いくつかの実施形態では、RおよびRは各々水素である。いくつかの実施形態では、存在するRおよびRは各々独立に水素またはアルキル基である。
【0052】
ある実施形態では、この方法は、下記スキーム3aに示すようにメラミンまたはメラミン誘導体をトリアミンと接触させて多環式グアニジン化合物を得るステップを含む。
【0053】
【化10】
式中、変数および他のR基は、本明細書に記載する通りである。いくつかの実施形態では、RおよびRは各々水素である。
【0054】
ある種の実施形態では、提供される方法は、本明細書に記載の試薬およびトリアミンを促進剤の存在下で接触させるステップを含む。
【0055】
ある種の実施形態では、促進剤は酸である。好適な酸として、塩酸、硫酸またはリン酸などの鉱酸、および有機酸(たとえば、スルホン酸)があるが、これに限定されるものではない。好適なスルホン酸としては、その多くが当業者に知られているアルキルまたはアリールスルホン酸がある。例示的なスルホン酸として、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸があるが、これに限定されるものではない。ある種の実施形態では、酸促進剤として、固体担持酸を挙げることができる。固体担持酸としては、酸交換樹脂(たとえば、Dowex(商標)樹脂およびAmberlyst(商標)樹脂などのスルホン酸樹脂)、ならびにシリカまたはアルミナおよび/もしくは当該技術分野において周知の他のものなど無機支持体に担持された酸を挙げることができる。
【0056】
ある種の実施形態では、促進剤は塩基である。ある種の実施形態では、促進剤は強塩基である。好適な塩基として、1種または複数種の金属水酸化物またはアルコキシドを挙げることができるが、これに限定されるものではない。ある種の実施形態では、1種または複数種のI族またはII族金属のアルコキシドを使用する。ある種の実施形態では、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムt−ブトキシドおよび同種のものなどのナトリウムアルコキシドを使用する。ある種の実施形態では、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムイソプロポキシド、リチウムt−ブトキシドおよび同種のものなどのリチウムアルコキシドを使用する。ある種の実施形態では、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムイソプロポキシド、カリウムt−ブトキシドおよび同種のものなどのカリウムアルコキシドを使用する。
【0057】
試薬
いくつかの実施形態では、本発明の方法においてトリアミン化合物と共に使用するのに好適な本明細書に記載の試薬として、グアニジン、またはより一般的には式Iの非環式グアニジンを挙げることができる。
【0058】
【化11】
式中、存在するRは各々独立に、水素、必要に応じて置換されているC1〜20脂肪族、必要に応じて置換されているアリール、およびニトリルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、式Iの非環式グアニジンは、本明細書に記載するような塩または付加物として存在する。
【0059】
ある種の実施形態では、Rは、存在する場合各々水素であり、試薬はグアニジンである。ある種の実施形態では、Rは、存在する場合各々水素またはアルキル基である。ある種の実施形態では、本発明に記載される非環式グアニジンはテトラアルキルグアニジンである。ある種の実施形態では、本発明に記載される非環式グアニジンはテトラメチルグアニジンである。
【0060】
ある種の実施形態では、Rは、1つ存在する場合、ニトリル(−C≡N)である。ある種の実施形態では、Rは、1つ存在する場合、ニトリルであり、他に存在する場合はすべて水素またはアルキル基である。ある種の実施形態では、式Iに記載された非環式グアニジンは、シアノグアニジンまたはその誘導体である。
【0061】
いくつかの実施形態では、本発明の方法においてトリアミン化合物と共に使用するのに好適な本明細書に記載の試薬として、シアナミド、またはより一般的には式IIのシアニミドを挙げることができる。
【0062】
【化12】
式中、存在するRは各々独立に、水素、必要に応じて置換されているC1〜20脂肪族、および必要に応じて置換されているアリールからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、式IIのシアニミドは、塩または付加物として存在する。
【0063】
ある種の実施形態では、Rは各々水素であり、試薬はシアナミドである。ある種の実施形態では、Rは、存在する場合各々、水素またはアルキル基である。
【0064】
いくつかの実施形態では、本発明の方法においてトリアミン化合物と共に使用するのに好適な本明細書に記載の試薬として、メラミンまたは式IIIのメラミン誘導体を挙げることができる。
【0065】
【化13】
式中、存在するRおよびRは各々独立に水素、必要に応じて置換されているC1〜20脂肪族、および必要に応じて置換されているアリールからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、式IIIのメラミン誘導体は、塩または付加物として存在する。
【0066】
ある種の実施形態では、RおよびRは、存在する場合各々、水素であり、試薬はメラミンである。ある種の実施形態では、RおよびRは、存在する場合各々、水素またはアルキル基である。
【0067】
ある種の実施形態では、本発明の方法において本明細書に記載の試薬の塩または付加物を使用してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の試薬の塩または付加物は、非環式グアニジンを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の試薬の塩または付加物は、グアニジンを含む。ある種の実施形態では、本発明の方法は、炭酸グアニジン、硫酸グアニジン、酢酸グアニジン、硝酸グアニジン、グアニジンp−トルエンスルホネート、塩酸グアニジン、リン酸グアニジンおよび同種のものなどグアニジンの塩を利用する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の試薬の塩または付加物は、シアニミドを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の試薬の塩または付加物は、シアナミドを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の試薬の塩または付加物は、メラミン誘導体を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の試薬の塩または付加物は、メラミンを含む。
【0068】
トリアミン
ある種の実施形態では、本方法に利用されるトリアミンは、式IVを有する。
【0069】
【化14】
式中、
は、水素、必要に応じて置換されている脂肪族、必要に応じて置換されているヘテロ脂肪族、必要に応じて置換されているアリール、および必要に応じて置換されているヘテロアリールからなる群から選択され、
は必要に応じて存在し、存在するRは各々独立に、ハロゲン、必要に応じて置換されている脂肪族、必要に応じて置換されているヘテロ脂肪族、必要に応じて置換されているアリール、および必要に応じて置換されているヘテロアリールからなる群から選択され、2つ以上のR基は必要に応じて、介在する原子と一緒になって、酸素、窒素または硫黄から選択される1〜3個のヘテロ原子を必要に応じて含む1つまたは複数の必要に応じて置換されている環を形成してもよく、
nは1以上4以下の整数であり、
mは1以上4以下の整数である。
【0070】
ある種の実施形態では、提供される方法は式IVのトリアミンを使用する。
【0071】
【化15】
式中、R、nおよびmは、上記で定義した通りである。
【0072】
ある種の実施形態では、トリアミンは、必要に応じて置換されているビス(アミノプロピル)アミンである。ある種の実施形態では、トリアミンは、必要に応じて置換されているビス(アミノエチル)アミンである。ある種の実施形態では、トリアミンは、必要に応じて置換されている2,6−ビス(アミノメチル)ピペリジンである。ある種の実施形態では、トリアミンは、必要に応じて置換されている2,6−ビス(アミノエチル)ピペリジンである。ある種の実施形態では、トリアミンは、必要に応じて置換されている2,5−ビス(アミノメチル)ピロリジンである。ある種の実施形態では、トリアミンは、必要に応じて置換されている2,5−ビス(アミノエチル)ピロリジンである。ある種の実施形態では、トリアミンは、必要に応じて置換されているN−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミンである。ある種の実施形態では、トリアミンは、必要に応じて置換されているN−(2−アミノエチル)−1,4−ブタンジアミンである。ある種の実施形態では、トリアミンは、必要に応じて置換されているN−(2−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミンである。
【0073】
ある種の実施形態では、本発明に従い使用されるトリアミンは、下記のトリアミンのいずれかから選択される。
【0074】
【化16】
【0075】
【化17】
ある種の実施形態では、トリアミンは、下記構造のトリアミンである。
【0076】
【化18】
ある種の実施形態では、トリアミンは、下記構造のトリアミンである。
【0077】
【化19】
ある種の実施形態では、トリアミンは、下記構造のトリアミンである。
【0078】
【化20-1】
方法
本発明の方法は、溶媒の存在下で行っても、あるいは試薬の未希釈混合物を用いて行ってもよい。好適な溶媒として、炭化水素、エーテル、エステル、ニトリル、スルホキシド、アミド、塩素化炭化水素および/または上記溶媒のいずれか1つの2つ以上の混合物など通常の有機溶媒を挙げることができる。ある種の実施形態では、追加溶媒を用いずに本方法を行う。
【0079】
いくつかの実施形態では、方法は、反応物を加熱するステップを含む。ある種の実施形態では、反応混合物を約40℃〜約300℃に加熱する。ある種の実施形態では、反応混合物を約50℃〜約250℃に加熱する。ある種の実施形態では、反応混合物を約80℃〜約200℃に加熱する。ある種の実施形態では、反応混合物を約100℃〜約180℃に加熱する。ある種の実施形態では、反応混合物を約110℃〜約180℃に加熱する。ある種の実施形態では、反応混合物を約110℃〜約170℃に加熱する。ある種の実施形態では、反応混合物を約120℃〜約170℃に加熱する。ある種の実施形態では、反応混合物を約130℃〜約170℃に加熱する。ある種の実施形態では、反応混合物を約130℃〜約160℃に加熱する。ある種の実施形態では、反応混合物を約140℃〜約170℃に加熱する。ある種の実施形態では、反応混合物を約140℃〜約160℃に加熱する。
【0080】
当業者であれば、反応を進行させる温度および時間の長さを調節すれば、所望の生成物の収率を最大化し、副成物を最小限に抑え、および/または、実験装置を最も効率的に使用することができることが分かるであろう。本明細書の教示内容および開示に基づく、こうした提示した方法の修正および調整については当業者に容易に明らかになるものであり、これらのパラメーターの調節は、通常の実験で行われ得ることである。こうした修正は、認識されており、本発明の範囲に明確に包含される。
【0081】
提供される方法において酸性促進剤を利用する本発明の実施形態の場合、提供される方法により生成される多環式(polycylic)グアニジンは、酸性塩として存在してもよい。ある種の実施形態では、本発明の方法は、反応の生成物を塩基で処理することにより、こうした酸性塩を中和するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、中和するステップは、1種または複数種の強塩基の使用を含む。ある種の実施形態では、1種または複数種の金属水酸化物またはアルコキシドを使用する。ある種の実施形態では、I族またはII族金属の1種または複数種のアルコキシドを使用する。ある種の実施形態では、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムt−ブトキシドおよび同種のものなどのナトリウムアルコキシドを使用する。ある種の実施形態では、固体支持体および/または高分子塩基を使用する。ある種の実施形態では、アニオン交換樹脂を使用して、本発明の方法を用いて生成される生成物を中和および/または単離してもよい。
【0082】
当該技術分野においてよくあることだが、各反応物の割合は、本発明の精神または範囲を逸脱することなく異なっても構わない。本明細書の開示および教示内容に基づき、反応物(たとえば、トリアミンと本明細書に記載の試薬)の割合の修正は、当業者にとって通常の実験で行われ得ることである。いくつかの実施形態では、トリアミンと本明細書に記載の試薬とは、約4:1〜約1:4の範囲のモル比で存在する。ある種の実施形態では、トリアミンと本明細書に記載の試薬とは、約2:1〜約1:2のモル比で存在する。ある種の実施形態では、これらの反応物は、ほぼ等モル量で存在する。ある種の実施形態では、トリアミンと本明細書に記載の試薬との割合は、グアニジン形成のため本明細書に記載の試薬が与え得る炭素原子の数とほぼ相関するように選択する。たとえば、本明細書に記載の試薬がグアニジン誘導体である実施形態では、グアニジン誘導体とトリアミンとの割合を約1:1で利用してもよい。同様に、本明細書に記載の試薬がシアノグアニジン(またはその誘導体)またはメラミン(またはメラミン誘導体)である場合、本明細書に記載の試薬とトリアミンとの割合はそれぞれ、約1:2または約1:3であってもよい。
【0083】
同様に、促進剤の量も異なってもよい。ある種の実施形態では、促進剤は、他の2つの反応物の一方または両方に対して約1:10〜約10:1の割合で存在する。ある種の実施形態では、本明細書に記載の試薬とトリアミンと酸促進剤とは、ほぼ等モルの量で存在する。
【0084】
いくつかの実施形態では、本発明は、TBDの合成方法であって、スルホン酸の存在下で炭酸グアニジンをビス(3−アミノプロピル)アミンと接触させるステップを含む方法を包含する。ある種の実施形態では、これを追加溶媒の非存在下で行う。ある種の実施形態では、反応物を約80℃〜約180℃に加熱する。ある種の実施形態では、反応を約12時間未満の期間加熱する。ある種の実施形態では、炭酸グアニジンおよびビス(3−アミノプロピル)アミンをメタンスルホン酸の存在下で加熱する。ある種の実施形態では、炭酸グアニジンとトリアミンとスルホン酸とのモル比は、約1:1:1である。
【0085】
ある実施形態では、本発明は、TBDの合成方法であって、スルホン酸の存在下でテトラメチルグアニジンをビス(3−アミノプロピル)アミンと接触させるステップを含む方法を包含する。ある種の実施形態では、これを追加溶媒の非存在下で行う。ある種の実施形態では、反応物を約80℃〜約180℃に加熱する。ある種の実施形態では、反応を約12時間未満の期間加熱する。ある種の実施形態では、テトラメチルグアニジンおよびビス(3−アミノプロピル)アミンをメタンスルホン酸の存在下で加熱する。ある種の実施形態では、テトラメチルグアニジンとトリアミンとスルホン酸とのモル比は、約1:1:1である。
【0086】
ある実施形態では、本発明は、TBDの合成方法であって、スルホン酸の存在下でメラミンまたはその誘導体をビス(3−アミノプロピル)アミンと接触させるステップを含む方法を包含する。ある種の実施形態では、これを追加溶媒の非存在下で行う。ある種の実施形態では、反応物を約80℃〜約180℃に加熱する。ある種の実施形態では、反応を約12時間未満の期間加熱する。ある種の実施形態では、メラミンまたはその誘導体、およびビス(3−アミノプロピル)アミンをメタンスルホン酸の存在下で加熱する。ある種の実施形態では、メラミンとトリアミンとスルホン酸とのモル比は、約1:1:1である。ある種の実施形態では、メラミンとトリアミンとスルホン酸とのモル比は、約1:2:2である。ある種の実施形態では、メラミンとトリアミンとスルホン酸とのモル比は、約1:3:3である。
【実施例】
【0087】
以下の例は、本発明のある種の実施形態の非限定的な実例として提供するものである。
(実施例1)
【0088】
炭酸グアニジンを使用したTBDメシラートの合成
フラスコに1.9gのメタンスルホン酸(0.02mol)および3.6gの炭酸グアニジン(0.02mol)を仕込み、150℃の浴に入れた。10分後、2.6gのビス(3−アミノプロピル)アミン(0.02mol)を加えた。6時間後、反応混合物を冷却し、クロロホルムで抽出した。クロロホルム溶液を蒸発させて、TBDメシラートを含む1.1gの白色の固体塊を得た。
【化20-2】
(実施例2)
【0089】
炭酸グアニジンを使用したTBDメシラートの別の合成
フラスコに4.5gの炭酸グアニジン(0.025mol)を仕込み、これに4.9gのメタンスルホン酸(0.05mol)を加えた。混合物を150℃の油浴で加熱した。5分の加熱後、6.5gのビス(3−アミノプロピル)アミン(0.05mol)を加えた。2時間後、反応混合物を冷却して白色の固体塊(13.9g)を得た。NMRにより、ビス(3−アミノプロピル)アミンの約70%がTBDメシラートに変換されることが明らかになった。
(実施例3)
【0090】
テトラメチルグアニジンを使用したTBDメシラートの別の合成
1.16gのテトラメチルグアニジン(0.01mol)と1.3gのビス(3−アミノプロピル)アミン(0.01mol)との混合物に0.98gのメタンスルホン酸(0.01mol)を加え、140℃の浴に入れた。3時間後、反応混合物を冷やし、クロロホルムで抽出した。クロロホルム溶液を蒸発させて白色の固体塊を得た。この粗生成物のNMR解析により、ビス(3−アミノプロピル)アミンのTBDメシラートへの変換が79%であることが示された。
(実施例4)
【0091】
塩酸グアニジンを使用したTBDヒドロクロリドの合成
4.8gの塩化グアニジン(0.05mol)および6.5gのビス(3−アミノプロピル)アミン(0.05mol)を窒素下、160℃で6時間撹拌した。この粗生成物のプロトンNMRスペクトル(図1参照)により、ビス(3−アミノプロピル)アミンのTBDヒドロクロリドへの変換が80%であることが示された。
(実施例5)
【0092】
炭酸グアニジンを使用したTBDカルボネートの合成
2.76gの炭酸グアニジン(0.012mol)および3.25gのビス(3−アミノプロピル)アミン(0.025mol)を窒素下、160℃で6時間撹拌した。この粗生成物のプロトンNMRスペクトルにより、ビス(3−アミノプロピル)アミンのTBDカルボネートへの変換が約60%であることが示された。
(実施例6)
【0093】
シアノグアニジンを使用したTBDメシラートの別の合成
4.2gのシアノグアニジン(0.05mol)と1.3gのビス(3−アミノプロピル)アミン(0.01mol)との混合物に0.98gのメタンスルホン酸(0.01mol)を加え、160℃の浴に6時間入れた。この粗生成物のプロトンNMRスペクトルにより、ビス(3−アミノプロピル)アミンのTBDメシラートへの変換が88%であることが示された。
(実施例7)
【0094】
シアナミドを使用したTBDメシラートの別の合成
0.84gのシアナミド(0.02mol)と2.6gのビス(3−アミノプロピル)アミン(0.02mol)との混合物に1.9gのメタンスルホン酸(0.02mol)をゆっくりと加えた。反応混合物を5時間150℃で維持した。この粗生成物のプロトンNMRスペクトルにより、ビス(3−アミノプロピル)アミンのTBDメシラートへの変換が約83%であることが示された。
(実施例8)
【0095】
TBDの単離
TBDメシラートは、クロロホルムに可溶化して精製してもよい。TBDメシラートのメタノール溶液に等モル量のカリウムメチラートまたはナトリウムメチラートを加えることにより、遊離TBDが得られる。また、当該技術分野において公知の方法を用いて他のTBD塩からTBDを単離してもよい。
(実施例9)
【0096】
塩酸グアニジンを使用した2,3,5,6−テトラヒドロ−1H−イミダゾ[1,2−a]イミダゾールの合成
【0097】
【化21】
密封容器でジエチレントリアミン(0.56mL、5.2mmol)および塩酸グアニジン(0.50g、5.2mmol)を170℃で6時間撹拌した。その後、溶融物を周囲温度まで放冷した。白色の固体が得られた。
【0098】
【化22】
(実施例10)
【0099】
塩酸グアニジンを使用した1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロイミダゾ[1,2−a]ピリミジンの合成
【0100】
【化23】
密封容器でN−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン(0.65mL、5.2mmol)および塩酸グアニジン(0.50g、5.2mmol)を170℃で6時間撹拌した。その後、溶融物を周囲温度まで放冷した。白色の固体が得られた。
【0101】
【化24】
(実施例11)
【0102】
塩酸グアニジンを使用した2,3,4,6,7,8,9,10−オクタヒドロピリミド[1,2−a][1,3]ジアゼピンの合成
【0103】
【化25】
密封容器でスペルミジン(0.82mL、5.2mmol)および塩酸グアニジン(0.50g、5.2mmol)を170℃で6時間撹拌した。その後、溶融物を周囲温度まで放冷した。
【0104】
【化26】
等価物
以下に限定されるものではないが、特許および特許出願など本出願に引用された資料はすべて、そうした文献および類似資料の形式に関わらず、参照によってその全体を本明細書に明示的に援用する。以下に限定されるものではないが、定義された用語、用語の使用法、記載された技術または同種のものなど、援用した文献および類似資料の1つまたは複数が本出願と異なったり、または矛盾したりする場合、本出願が優先する。
【0105】
本明細書に使用するセクション見出しは、整理することのみを目的とするものであり、いかなる意味においても、記載された主題を限定するものと解釈してはならない。
【0106】
本開示について、特定の例示的実施形態を参照しながら詳細に図示して記載してきたが、本開示の精神および範囲を逸脱しない範囲で形式および細部に関する様々な変更が可能であることを理解すべきである。したがって、本開示の範囲および精神に属する実施形態、およびその等価物はすべて、特許請求されることを意図している。本開示の特許請求の範囲および説明は、他に記載がない限り、構成要素の記載順序に限定されるものと解釈してはならない。
図1