特許第5766723号(P5766723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5766723バイオメトリック・センサ取付部の並置領域上に配置された個人の身体部位の向きを検出するための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5766723
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】バイオメトリック・センサ取付部の並置領域上に配置された個人の身体部位の向きを検出するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20150730BHJP
【FI】
   G06T1/00 400H
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-553293(P2012-553293)
(86)(22)【出願日】2011年2月15日
(65)【公表番号】特表2013-519956(P2013-519956A)
(43)【公表日】2013年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2011052242
(87)【国際公開番号】WO2011101357
(87)【国際公開日】20110825
【審査請求日】2014年1月28日
(31)【優先権主張番号】1051123
(32)【優先日】2010年2月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508288744
【氏名又は名称】モルフォ
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100176418
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】ダシルヴァ エドゥアール
(72)【発明者】
【氏名】ドゥモン ドニ
【審査官】 新井 則和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/129201(WO,A1)
【文献】 特開2003−263640(JP,A)
【文献】 特開2006−277341(JP,A)
【文献】 特開2005−107629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00−7/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並置領域(AP)上の放射線の全反射によって身体部位(DO)の第1の画像(I1)を形成し、身体組織を通過してヘモグロビンに反射することができる放射線から前記身体部位(DO)の第2の画像(I2)を形成するように設計されたバイオメトリック・センサ取付部(P)の前記並置領域(AP)上に配置された個人の前記身体部位(DO)の向きを検出するための方法であって、
基準座標系において、最初に、前記第1の画像内に示される前記身体部位の長手方向軸(A)を判断し、次に、前記第2の画像内に示される前記身体部位の2つの長手方向縁部(B1、B2)を判断するステップと、
前記基準座標系において、このように判断された前記2つの縁部(B1、B2)及び前記軸(A)の相対位置の測定値から、前記取付部に対する前記身体部位の向きを判断するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記2つの縁部(B1、B2)及び前記軸(A)の前記相対位置の前記測定値は、各々が、前記基準座標系において、前記軸(A)と前記2つの縁部(B1、B2)の一方との間で測定された2つの距離(D1、D2)間の比であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記取付部に対する前記身体部位の向きは、前記2つの距離が互いに等しくなく、かつ、次いで、前記向きの符号が、これらの前記2つの距離の差の符号によって与えられる場合に検出されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記身体部位(DO)の横断方向軸(AT)と前記取付部(P)との間に形成される配置角は、測定された距離の対と経験的に予め定められた配置角との間のルックアップ・テーブル(T)から判断されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項5】
このように判断された前記符号及び前記配置角の値から、前記第1の画像(I1)によって伝達される前記身体部位の表現を修正するステップも含むことを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記取付部に対する前記個人の前記身体部位の前記向きが前記個人の識別のために正しいかどうかを、前記個人に表示するためのステップを含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記取付部に対する前記身体部位の向きは、前記2つの距離が、以前に測定され、かつ、前記取付部に対する前記身体部位の基準位置を表す2つの他の距離に等しくない場合に検出されることを特徴とする、請求項1から6いずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
並置領域(AP)上の放射線の全反射によって身体部位(DO)の第1の画像(I1)を形成し、身体組織を通過してヘモグロビンに反射することができる放射線から前記身体部位(DO)の第2の画像(I2)を形成するように設計されたバイオメトリック・センサ取付部(P)の前記並置領域(AP)上に配置された個人の前記身体部位(DO)の向きを検出するための装置であって、
基準座標系において、最初に、前記第1の画像内に示される前記身体部位の長手方向軸(A)を判断し、次に、前記第2の画像内に示される前記身体部位の2つの長手方向縁部(B1、B2)を判断するための手段(DET1)と、
前記基準座標系において、このように判断された前記2つの縁部(B1、B2)及び前記軸(A)の相対位置の測定値から、前記取付部に対する前記身体部位の向きを判断するための手段(DET2)と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項9】
取付部(P)を備え、かつ、前記並置領域(AP)上の放射線の全反射によって、前記取付部(P)の前記並置領域(AP)上に配置された個人の身体部位(DO)の第1の画像(I1)を形成し、身体組織を通過してヘモグロビンに反射することができる放射線から前記身体部位(DO)の第2の画像(I2)を形成するように設計されたバイオメトリック・センサであって、請求項8に記載の装置を備えることを特徴とするバイオメトリック・センサ。
【請求項10】
並置領域(AP)上の放射線の全反射によって、センサ(CAP)の取付部(P)の前記並置領域(AP)上に配置された個人の身体部位(DO)の第1の画像(I1)を形成し、身体組織を通過してヘモグロビンに反射することができる放射線から前記身体部位(DO)の第2の画像(I2)を形成するように設計されたバイオメトリック・センサ(CAP)を備える識別設備であって、前記センサ内に統合される、又は前記センサとは別個のものである、請求項8に記載の装置を備えることを特徴とする識別設備。
【請求項11】
情報キャリア上に格納されたコンピュータ・プログラムであって、前記プログラムは、請求項8に記載の装置によってロードされ、実行されたときに、請求項1からのいずれか1項に記載の方法を実施するための命令を含むことを特徴とするコンピュータ・プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並置領域(apposition area)上の放射線の全反射によって身体部位の第1の画像を形成し、身体組織を通過してヘモグロビンに反射することができる放射線から身体部位の第2の画像を形成するように設計されたバイオメトリック・センサ取付部の並置領域上に配置された個人の身体部位の向きを検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
個人の身体部位上で得られるボディプリント及び静脈網を、特に、個人の指のうちの1本の末節骨上で得られる指紋及び静脈網を読み取ることによって、個人を識別するための機器が知られている。
【0003】
このタイプの機器において、個人は、第一に、2つの画像を光学的に形成するように設計されたバイオメトリック・センサの取付部の並置領域上にその人の身体部位を配置することによって、その人のバイオメトリック・データ、この場合はその人の身体部位のボディプリント及び静脈網の事前登録を進める必要がある。個人の身体部位のボディプリントを表す画像の1つは、並置領域上の放射線の全反射によって得られ、個人の身体部位の静脈網を表す他方の画像は、身体組織を通過してヘモグロビンに反射することができる放射線から得られる。直接視について論じられることもある。
【0004】
図1aは、所定のいわゆる基準位置に従って、バイオメトリック・センサ取付部Pの並置領域AP上に置かれた個人の身体部位DO、この場合は個人の指の1本の末節骨の正面図を示す。この場合、指の末節骨は、取付部上に平坦な状態で置かれる、つまり、指の横断方向軸ATは、取付部Pに対して実質的に平行である。次に、ボディプリントの画像及び静脈網の画像が、事前登録段階の際に光学的に形成される。
【0005】
ひとたび事前登録段階が行われると、例えば、アクセスが制限されている場所又は機械にアクセスするためには、この個人の識別が必要となる度に、再度、個人の身体の同じ部位をバイオメトリック・センサ取付部の並置領域上に配置しなければならず、これにより、その身体部位の2つの新しい画像が形成され、次に、新たに形成された画像又はこれらの画像から抽出されたデータを、事前登録段階の際に形成されたものと比較することにより、個人が識別される。
【0006】
個人が自分の識別を行う必要がある場合は、ボディプリントの新しい画像及び静脈網の新しい画像が形成される。その際、図1bに示されるように、個人が、指を取付部の並置領域上の基準位置に置かない、この場合は、完全に平坦な状態に置かないということが起こり得る。言い換えると、横断方向軸AT及び取付部Pが、配置角(placing angle)と呼ばれることもある、ゼロでない角度βを形成する。指の位置決めの誤り、この場合は取付部上に置かれた指の向きの誤りにより、もはや事前登録段階の際に形成された画像で表現されるものとは対応しないほど変形したボディプリント及び/又は静脈網の画像が提示され、それにより個人の識別の誤りが生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/129201号パンフレット
【発明の概要】
【0008】
本発明によって解決される問題は、並置領域上の放射線の全反射によって身体部位の第1の画像を形成し、身体組織を通過してヘモグロビンに反射することができる放射線から身体部位の第2の画像を形成するように設計されたバイオメトリック・センサの取付部の並置領域上に配置された個人の身体部位の向きの検出することを可能にする方法を提供することである。
【0009】
この目的を達成するために、本発明は、基準座標系において、最初に、第1の画像上に表された身体部位の長手方向軸を判断し、次に、第2の画像上に表された身体部位の2つの長手方向縁部を判断するステップと、基準座標系において、このように判断された2つの縁部及び軸の相対位置の測定値から、取付部に対する身体部位の向きを判断するステップとを含むことを特徴とする方法に関する。
【0010】
従って、身体部位が、再度、バイオメトリック・センサ取付部の並置領域上に配置されると、本方法は、2つの新たに形成された画像上に示されるボディプリントと静脈網との間のオフセットを判断することによって、身体部位の向きを検出することを可能にする。
【0011】
一実施形態によると、2つの縁部及び軸の相対位置の測定値は、各々が、基準座標系において、軸と2つの縁部の一方との間で測定された2つの距離間の比である。
【0012】
この実施形態は、バイオメトリック・センサの画像平面上に形成された2つの画像を同じ基準座標系によって関連付け、次に、これら2つの画像から、判断された縁部の各々及び長手方向軸を分離する画素をカウントすることによって、距離をこれらの画像上で直接容易に測定できるので、実施するのが特に簡単である。
【0013】
一実施形態によると、取付部に対する身体部位の向きは、2つの距離が互いに等しくなく、かつ、向きの符号が2つの距離の差の符号によって与えられる場合に検出される。
【0014】
この実施形態は、ボディプリント全体の信頼できる表示を提供する、並置領域上の身体部位の基準位置を定めるために、特に事前登録段階の際に有利である。このモードは、後述されるように、身体部位を並置領域上に配置する際の不具合を修正するためにも有利である。
【0015】
一実施形態によると、取付部に対する身体部位の向きは、2つの距離が、予め測定されかつ、取付部に対する身体部位の基準位置を表す他の2つの距離に等しくないときに検出される。
【0016】
この実施形態は、バイオメトリック・センサ取付部に対する身体部位の向きと、予め登録された基準位置とを比較することを可能にするので有利である。
【0017】
一実施形態によると、身体部位の横断方向軸と取付部との間に形成される配置角の値は、測定された距離の対と実験的に予め定められた配置角との間のルックアップ・テーブルから判断される。
【0018】
一実施形態によると、本方法は、このように判断された符号及び配置角の値から第1の画像により伝達された身体部位の表現を修正するステップも含む。
【0019】
一実施形態によると、本方法は、取付部に対する本人の身体部位の向きが識別のために正しいかどうかを、個人に表示するためのステップも含む。
【0020】
ハードウェア態様の1つによると、本発明は、上記の方法の1つを実施するための手段を含む装置に関する。
【0021】
別のハードウェア態様によると、本発明は、上記のような装置を統合するバイオメトリック・センサ、又は、別個のバイオメトリック・センサ及び上述の装置のいずれかを含む、個人を識別するための設備に関する。
【0022】
本発明の上述の特徴及び他の特徴は、添付図面と関連して与えられる、例示的な実施形態の以下の説明を読むことでより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1a】バイオメトリック・センサ取付部上の並置領域上に配置された個人の身体部位の正面図を示す。
図1b】バイオメトリック・センサ取付部上の並置領域上に配置された個人の身体部位の正面図を示す。
図2a】並置領域上の放射線の全反射によって身体部位の第1の画像を撮影し、身体組織を通過してヘモグロビンに反射することができる放射線から第2の画像を撮影するように設計されたバイオメトリック・センサを概略的に示す。
図2b】並置領域上の放射線の全反射によって身体部位の第1の画像を撮影し、身体組織を通過してヘモグロビンに反射することができる放射線から第2の画像を撮影するように設計されたバイオメトリック・センサを概略的に示す。
図3】本発明による、取付部Pに対する部位DOの様々な向きに対して、バイオメトリック・センサ取付部の並置領域上に配置された個人の身体部位の向きを検出する方法を示す。
図4】本発明による、取付部Pに対する部位DOの様々な向きに対して、バイオメトリック・センサ取付部の並置領域上に配置された個人の身体部位の向きを検出する方法を示す。
図5】本発明による装置を含む識別設備の例のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
取付部Pを含み、取付部Pの並置領域AP上の放射線の全反射によって個人の身体部位DOの第1の画像I1を形成し、身体組織を通過してヘモグロビンに反射することができる放射線から部位DOの第2の画像I2を形成するように設計されたバイオメトリック・センサが、従来技術から知られている。読者は、例えば、特許文献1の下で、出願人により出願され公開された国際出願を参照することができる。
【0025】
図2a及び図2bは、かかるバイオメトリック・センサCAPの例を概略的に示す。
【0026】
バイオメトリック・センサCAPは、個人の身体部位DO(ここでは、手の指の第1指骨)のための並置領域APを構成するように用いられる、電磁放射線に対して少なくとも部分的に透過性である平坦な取付部Pを形成するプレート(典型的には、ガラス又は類似のもの)を含む。
【0027】
取付部Pの下に、集束レンズL、及び、異なる波長を有する2つの電磁放射線を検出することができるセンサ手段Cが配置され、用いられるセンサはこれらの2つの波長に対して感応性であるか、又は、2つの波長に対してそれぞれ感応性のセンサの二重アレイが提供される。
【0028】
第1の照射手段S1(例えば、LEDの形態の)が、レンズLの周囲に、かつ、取付部Pの並置領域APと接触状態で配置された身体部位DOをほぼ正面から照射するように配置される。第1の照射手段S1は、第1の波長を有する放射線を含む第1の光ビームF1を発し、この放射線は身体組織を通過しないように適合されているので、FR1と呼ばれ図2aに破線で示されるこの放射線は、ひとたび並置領域APに反射すると、ボディプリントの光学情報を伝達する。典型的には、この波長は、赤色の範囲内にあり、例えば、約650nmである。
【0029】
第2の照射手段S2(例えば、LEDの形態の)は、取付部Pの並置領域AP上に配置された身体部位DOを横方向から照射するように構成される。第2の照射手段S2は、第2の波長を有する放射線を含む第2の光ビームF2を発し、この放射線は身体組織を通過することができ、ヘモグロビンに、言い換えれば部位DOの静脈網に反射される。典型的には、この波長は、近赤外線の範囲内にあり、例えば、約950nmである。部位DOの静脈網からの光学情報を伝達する反射放射線FR2が破線で示される。
【0030】
変形態様において、特許文献1の下で公開された国際出願において説明されるように、単一の照射手段及び/又はプリズム光学素子を用いることが可能である。
【0031】
一般的には、本発明は、例えば図2a及び図2bに関連して説明されたもののような、バイオメトリック・センサCAPの取付部Pの並置領域AP上に配置された個人の身体部位DOの向きを検出する方法に関する。
【0032】
センサCAPによる2つの画像I1及びI2の獲得に続いて、又は、変形態様において予め獲得され格納された画像I1及びI2若しくはこれら2つの画像から抽出されたデータに続いて、本方法は、基準座標系PIにおいて、最初に、第2の画像I2上に示された身体部位の2つの長手方向縁部B1及びB2を、次に、第1の画像I1上に示された身体部位の長手方向軸Aを判断するステップから開始する。このステップの後に、基準座標系PIにおいて、このように判断された2つの縁部B1、B2及び軸Aの相対位置の測定値から、取付部Pに対する身体部位DOの向きを判断するステップが続く。
【0033】
図3及び図4は、取付部Pに対する部位DOの様々な向きに関する本方法を示す。
【0034】
図3の左部に、画像I2上に示された部位DOの長手方向縁部B1及びB2、即ち、画像I2により伝達された静脈網の長手方向縁部の表現、及び、画像I1上に示されたボディプリントCOの長手方向軸Aの表現が、概略的に示される。画像I2から縁部B1及びB2を、及び画像I1から軸Aを判断するための多くの既知の方法が存在する。例えば、画像I2により伝達される静脈網の表現を包含する矩形、及び、画像I1により伝達されるボディプリントの表現を包含する別の矩形を判断することを目的とする、包含体積測定アルゴリズムを用いることができる。次いで、縁部B1及びB2並びに軸Aが、これらの矩形から容易に取得される。画像I1に適用される場合には長手方向軸Aを容易に定めることができるボディプリントの輪郭を定め、画像I2に適用される場合には縁部B1及びB2を直接定める、輪郭点抽出アルゴリズムを用いることもできる。
【0035】
一実施形態によると、図3の右部に示すように、2つの縁部B1及びB2並びに軸Aの相対位置の測定値は、各々が基準面PIにおいて測定された、軸Aと2つの縁部B1、B2の一方との間の2つの距離D1、D2の比である。距離D1は、軸Aと縁部B1との間に定められ、距離D2は、軸Aと縁部B2との間に定められる。
【0036】
一実施形態によると、基準面PIは、例えば、センサCAPのものであり、距離D1及びD2は、軸Aと縁部B1、B2の一方との間の画素数を計算することにより測定される。
【0037】
一実施形態によると、取付部Pに対する身体部位DOの向きは、距離D1が距離D2に等しくなく、かつ、その時の向きの符号が差D2−D1の符号によって与えられる場合に検出される。
【0038】
図3の右部において、距離D1及びD2は互いに等しく、これは配置角βがゼロである場合に対応する。
【0039】
図4の左部には、配置角が正である、即ちD2>D1である場合が示され、右部には、配置角が負である、即ちD1>D2である場合が示される。
【0040】
一実施形態によると、取付部Pに対する身体部位DOの向きは、一対の距離(D1、D2)が、予め測定され、かつ、取付部Pに対する身体部位DOの基準位置を表す一対の距離に等しくない場合に検出される。前述したように、この基準位置は、例えば、事前登録段階(登録)の際に定められる。
【0041】
一実施形態によると、配置角βは、二対の測定距離と経験的に予め定められた配置角との間のルックアップ・テーブルTから判断される。例えば、各々の配置角は、下限と上限との間にある距離D2とD1の差に対応し、角度5°は、ゼロではなく、5画素よりも少ない距離D2とD1の差に対応し、10°の値は、6画素と10画素との間にある距離D2とD1の差に対応する等である。
【0042】
次いで、一実施形態によると、本方法は、第1の画像I1により伝達される身体部位DOの表現、即ちボディプリントの表現COを、このように判断された符号及び配置角の値から修正するステップを含むことができる。この修正は、例えば、幾何学的変換を表現COに適用することからなる。この変換は、例えば、配置角に等しい角度により表現COをサポートする平面の回転、即ち、距離D2に等しい距離D1を取得するように並進運動により補完することができる回転である。
【0043】
一実施形態によると、本方法は、個人に対して、取付部Pに対するその人の身体部位DOの向きが識別のために正しいかどうかを表示するためのステップも含む。従って、本方法は、部位の向きが正しくない限り、つまり、距離D1とD2が互いに等しいか、又は、基準位置を定める一対の距離に等しくない限り、並置領域上の身体部位の位置を変えるように個人に要求するように設計することができる。
【0044】
本発明に従って個人を識別するための設備の例が、図5に示される。
【0045】
この設備は、例えば図2a及び図2bにおけるもののようなバイオメトリック・センサCAPを含む。この場合、設備はまた、一方(I1)はボディプリントを表し、他方(I2)は静脈網を表す、2つの画像I1及びI2を連続的に又は同時にキャプチャするように、センサ手段Cと、照射手段S1及びS2とを制御する制御手段(マイクロコントローラ)MCも含む。
【0046】
さらに、設備は、各々が、第1の画像I1(個人の身体部位DOのボディプリントの画像)から抽出されたデータIme及び第2の画像I2(身体部位DOの静脈網の画像)から抽出されたデータImvから形成されたデータの対(Imv、Ime)がメモリ内に保持されるストレージ手段MEMを含み、これらのデータの対(Imv、Ime)は、個人の登録(エンロールメント)の予備ステップの際にキャプチャされ、メモリ内に置かれ、次いで、身体部位DOは基準位置とみなされる位置を占める。
【0047】
設備は、取付部Pに対する個人の身体部位DOの向きを検出するための装置Dも含む。
【0048】
一実施形態によると、装置Dは、センサCAP内に統合され、別の実施形態によると、図5に示されるように、装置Dは、このセンサとは別個のものである。
【0049】
装置Dは、基準座標系PIにおいて、最初に、第1の画像I1内に示された身体部位DOの長手方向軸Aを判断し、次に、第2の画像I2上に示された身体部位の2つの長手方向縁部B1及びB2を定めるための手段DET1を含む。例えば、この基準座標系PIは、2つの画像I1及びI2を重ね合わせることにより与えられ、次いで同じ画像平面上に定められ、次に、前述のように、コンピュータ・プログラムの命令が実施されて、縁部B1及びB2並びに軸Aを抽出する。
【0050】
装置Dはまた、基準座標系PIにおいて、そのように判断された2つの縁部B1及びB2並びに軸Aの相対位置の測定値から、取付部Pに対する身体部位DOの向きを定めるための手段DET2も含む。
【0051】
一実施形態によると、手段DET1及びDET2は、例えばメモリMEMのような情報キャリア上に格納されたコンピュータ・プログラムによって用いられ、該プログラムは、図5には示されない、この目的のためにコンピューティング手段及びメモリ手段が設けられた装置Dによりロードされ実行されたときに、上記の検出方法の1つを実施するための命令を含む。
【0052】
一実施形態によると、装置Dはまた、上述したような描写COを修正するための手段CORも含む。
【0053】
一実施形態によると、メモリMEMはまた、測定された距離の対と経験的に予め定められた配置角との間のルックアップ・テーブルTも含む。従って、距離D1及びD2が手段DET2によって求められると、これらの距離は、メモリMEMに送信され、メモリMEMは、配置角を手段CORに返す。
【0054】
一実施形態によると、装置Dは、個人に対して、取付部Pに対するその身体部位の向きが識別のために正しいかどうかを表示するために設けられるグラフィカル・インターフェースIHMも含む。このインターフェースIHMは、手段DET2から発行する配置角及び/又は距離の符号及び/又は値を表示するために設けることもできる。
【0055】
個人の識別を可能にするために、設備はまた、表現CO又は表現CO’のいずれかを前述のデータImeと比較し、比較の結果、特に、有効若しくは無効(例えば、識別情報の確認又は非確認、許諾又は拒否又はアクセス等)を表す信号を送るために、第1の画像I1により伝達されるボディプリントの表現CO、又は、一実施形態によると、手段CORから送信される表現の修正版CO’及び格納手段MEM内のメモリ内に保持されるボディプリントのデータImeを受信するように設計された、検証ユニットVALも含む。
【0056】
従って、本例示の設備によると、静脈網のマッピングは、単に、並置領域AP上の身体部位DOの配置角を判断することが可能な補助的基準として利用され、一実施形態によると、ボディプリントCO又はその修正版CO’の画像は、固有の識別基準のままである。本発明の範囲から逸脱することなく、ボディプリント及び静脈網の獲得された画像の他の利用法を、個人を識別するために用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
A:長手方向軸
AP:並置領域
AT:横断方向軸
B1、B2:長手方向縁部
C:センサ手段
CAP:バイオメトリック・センサ
CO:ボディプリントの表現
CO’:ボディプリントの表現の修正版
COR:表現を修正するための手段
D:個人の身体部位の向きを検出するための装置
D1、D2:距離
DET1:身体部位の長手方向軸及び2つの縁部を定めるための手段
DET2:身体部位の向きを定めるための手段
DO:身体部位
F1、F2:光ビーム
FR1、FR2:反射された放射線
I1、I2:画像
IHM:グラフィカル・インターフェース
Ime:第1の画像から抽出されたデータ
Imv:第2の画像から抽出されたデータ
L:集束レンズ
MC:マイクロコントローラ(制御手段)
MEM:ストレージ手段
P:バイオメトリック・センサ取付部
PI:基準座標系(基準面)
S1、S2:照射手段
T:ルックアップ・テーブル
VAL:認証ユニット
β:配置角
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4
図5