特許第5766835号(P5766835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5766835
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】タービン外部車室用架台の施工方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/28 20060101AFI20150730BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20150730BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   F01D25/28 C
   F01D25/00 U
   F01D25/00 X
   F01D25/24 J
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-32777(P2014-32777)
(22)【出願日】2014年2月24日
(62)【分割の表示】特願2011-9238(P2011-9238)の分割
【原出願日】2011年1月19日
(65)【公開番号】特開2014-98395(P2014-98395A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2014年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】近藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】中澤 民暁
【審査官】 佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−013913(JP,A)
【文献】 特開昭52−057412(JP,A)
【文献】 特開平10−311049(JP,A)
【文献】 特開2002−089207(JP,A)
【文献】 特開2002−235505(JP,A)
【文献】 米国特許第3942907(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00
F01D 25/24−25/28
F04D 1/00−13/16
F04D 17/00−19/02
F04D 21/00−25/16
F04D 29/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鋼板間にコンクリートが充填された鋼板コンクリート構造であって、梁部材の側面を構成する前記鋼板がタービン外部車室の下半部を構成する側板部または端板部であるタービン外部車室用架台の施工方法であって、
側面が前記鋼板である第1の梁部材からなる第1のブロックと、側面が前記鋼板である第2の梁部材および前記第2の梁部材に接続されてタービン内部車室を上部で支持する支持部材からなる第2のブロックを製作する工程と
前記第1のブロックと前記第2のブロックを接続する工程と、
を有し、
前記支持部材は、一対の前記側板部の間または一対の前記端板部の間に設けられると共に、前記一対の側板部または前記一対の端板部に結合されるタービン外部車室用架台の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン外部車室用架台の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン発電システムでは、高圧タービン、低圧タービンおよび発電機などが架台に据え付けられ固定される。架台は、例えば鉄筋コンクリート構造または鋼板内部にコンクリートを充填した鋼板コンクリート構造などである。架台上部には各装置の下半部が収容される開口が設けられる。
【0003】
図8に関連技術における架台80の一例を示す。図8中の開口HPには高圧タービンが収容され、開口LP−1、LP−2には低圧タービンが収容され、開口GENには発電機が収容される。低圧タービンの場合、タービン外部車室の下半部50が開口に収容され、下半部50の上部に外部車室の上半部51が被覆される。下半部50のY方向長さは例えば約10mである。
【0004】
特許文献1には、タービン低圧ケーシングにおいて、ケーシングの下半部が鉄筋コンクリート構造の架台と一体に製作される技術が開示されている。また、特許文献2には、複数のコンクリート構造の柱に複数の鋼板コンクリート構造の梁を支持させる発電設備用架台が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭59−38402号公報
【特許文献2】特許第4358408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、低圧タービンは復水器に蒸気が排出され、車室内部が大気圧以下の圧力に保持される。そのため、車室には変形防止のため補強構造が設けられる。図9は、関連技術のタービン外部車室の下半部を示す斜視図である。図10は、関連技術のタービン外部車室の下半部を示す縦断面図であり、図11のB−B線で切断した断面図である。図11は、関連技術のタービン外部車室の下半部を示す平面図である。
【0007】
下半部50は、鋼板製の外壁が例えば側板部52と端板部53から構成される。そして、外部補強構造として、断面形状がT字形のTリブ54が、側板部52や端板部53に沿って設けられる。また、内部補強構造として、内部補強リブ57やステイバー58が下半部50内に設けられる。
【0008】
しかし、近年、タービンの大型化に伴い、関連技術の外部補強構造や内部補強構造によって、車室に必要な剛性を確保することが困難になってきている。すなわち、架台80に外部車室下半部50を据え付ける場合、外部車室下半部50は、台板82を介してフート55によって架台80に支持される。フート55は、外部車室下半部50の側板部52、端板部53から突出して設けられた水平部材である。
【0009】
このとき、図11に示すように下半部50の側板部52と架台80の梁側面80aの間や、下半部50の端板部53と架台80の梁側面80bの間には、隙間が設けられるが、隙間を広げすぎるとタービン架台の梁断面が大きくなる、すなわち架台のコストアップとなるため狭いほうが望ましい。そのため、外部補強構造としてのTリブ54のサイズを大きくすることによって、車室の剛性を高めることができない。
【0010】
また、内部補強構造としての内部補強リブ57やステイバー58は、車室内部における蒸気の流れを妨げ、圧力損失の原因となる。そのため、復水器へ導かれる蒸気が滞り、低圧タービンの排気性能が低下する恐れがある。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、車室内部の蒸気の流れを向上させつつ簡潔な構造で車室の剛性を高めることが可能なタービン外部車室用架台の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のタービン外部車室用架台の施工方法は以下の手段を採用する。
本発明に係るタービン外部車室用架台の施工方法は、複数の鋼板間にコンクリートが充填された鋼板コンクリート構造であって、梁部材の側面を構成する鋼板がタービン外部車室の下半部を構成する側板部または端板部であるタービン外部車室用架台の施工方法であって、側面が前記鋼板である第1の梁部材からなる第1のブロックと、側面が前記鋼板である第2の梁部材および前記第2の梁部材に接続されてタービン内部車室を上部で支持する支持部材からなる第2のブロックを製作する工程と、前記第1のブロックと前記第2のブロックを接続する工程とを有し、前記支持部材は、一対の前記側板部の間または一対の前記端板部の間に設けられると共に、前記一対の側板部または前記一対の端板部に結合される
【0013】
この構成によれば、タービン外部車室用架台を施工する際、まず、架台の梁部材となる第1の梁部材からなる第1のブロックと、架台の梁部材となる第2の梁部材および第2の梁部材に接続されてタービン内部車室を上部で支持する支持部材からなる第2のブロックが製作される。そして、第1のブロックと第2のブロックが接続されることで、タービン外部車室用架台が構成される。このタービン外部車室用架台は、複数の鋼板間にコンクリートが充填された鋼板コンクリート構造であって、梁部材の側面を構成する鋼板がタービン外部車室の下半部を構成する側板部または端板部である。例えば工場などで予め第1のブロックや第2のブロックを製作し、これらを現地据付とすることで、架台の梁部材と一体となったタービン外部車室の寸法精度が向上し、かつ現地施工期間を短縮することができる。
【0014】
本発明の参考例に係るタービン外部車室は、複数の鋼板間にコンクリートが充填された鋼板コンクリート構造の架台に設置されるタービン外部車室であって、下半部を構成する側板部または端板部が架台を構成する鋼板からなる。
【0015】
この構成によれば、タービン外部車室が設置される架台は、複数の鋼板間にコンクリートが充填された鋼板コンクリート構造であり、タービン外部車室の下半部を構成する側板部または端板部は、架台を構成する鋼板からなる。ここで、タービン外部車室の側板部や端板部は、例えばタービン外部車室の外壁であり、側板部はタービン軸方向に対して平行な板状部材であり、端板部はタービン軸方向に対して垂直な板状部材である。また、架台の梁部分の側面や底面が鋼板からなる。そして、タービン外部車室の側板部または端板部が、架台の梁部分の側板と共通化されていることで、架台がタービン外部車室の補強部材を兼用する。その結果、架台内部に独立単体で構成可能なタービン外部車室を設置する場合に比べて、タービン外部車室の補強構造を削減できる。また、架台が鋼板コンクリート構造であるため、鉄筋コンクリート構造の場合に比べて、コンクリート施工のための型枠工事を削減でき、工期の短縮化を図ることができる。
【0016】
上記参考例において、タービン内部車室を上部で支持する支持部材と、支持部材上に設けられ、タービン内部車室の鉛直方向の位置を調整する調整部材とを備えてもよい。
【0017】
この構成によれば、支持部材はタービン内部車室を上部で支持し、調整部材は支持部材上に設けられることでタービン内部車室の鉛直方向の位置を調整できる。支持部材は例えば架台の梁部材の側面に接続される。タービン内部車室は、タービン外部車室の内側に設けられる。一般に、鋼板コンクリート構造のタービン外部車室の寸法精度は、タービン内部車室の寸法精度に比べて粗いため、タービン内部車室を精度良く設置することは困難である。一方、調整部材によって位置調整することで精度良くタービン内部車室を設置することができる。
【0018】
本発明の参考例に係るタービン外部車室用架台は、複数の鋼板間にコンクリートが充填された鋼板コンクリート構造のタービン外部車室用架台であって、梁部材の側面を構成する鋼板がタービン外部車室の下半部を構成する側板部または端板部である。
【0019】
この構成によれば、タービン外部車室用架台は、複数の鋼板間にコンクリートが充填された鋼板コンクリート構造である。そして、架台の梁部材の側面を構成する鋼板がタービン外部車室の下半部を構成する側板部または端板部であることで、架台がタービン外部車室の補強部材を兼用する。その結果、架台内部に独立単体で構成可能なタービン外部車室を設置する場合に比べて、タービン外部車室の補強構造を削減できる。また、架台が鋼板コンクリート構造であるため、鉄筋コンクリート構造の場合に比べて、コンクリート施工のための型枠工事を削減でき、工期の短縮化を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、車室内部の蒸気の流れを向上させつつ簡潔な構造で車室の剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の架台とタービン外部車室を示す縦断面図である。
図2】本発明の架台とタービン外部車室を示す平面図である。
図3】本発明のアジャスタを示す側面図である。
図4】本発明のアジャスタを示す側面図である。
図5】本発明の架台およびタービン外部車室の施工方法の一工程を示す概略図である。
図6】本発明の架台およびタービン外部車室の施工方法の一工程を示す概略図である。
図7】本発明の架台およびタービン外部車室の施工方法を示すフローチャートである。
図8】関連技術の架台を示す斜視図である。
図9】関連技術のタービン外部車室の下半部を示す斜視図である。
図10】関連技術の架台とタービン外部車室の下半部を示す縦断面図である。
図11】関連技術の架台とタービン外部車室の下半部を示す平面図である。
図12】関連技術の架台およびタービン外部車室の施工方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
まず、本発明の実施形態に係る架台とタービン外部車室の構成について説明する。図1は、本発明の架台とタービン外部車室を示す縦断面図である。図2は、本発明の架台とタービン外部車室を示す平面図である。なお、図1は、図2のA−A線で切断した断面図である。
【0023】
本実施形態の架台は、図8に示した関連技術の架台80と同様に、梁と、梁を支持する柱を有する。架台は、上部に設けられ梁に囲まれて形成される開口にて、タービン外部車室の下半部1を収容しつつ固定する。なお、下半部1に内蔵されるタービンは、例えば蒸気タービン発電システムにおける低圧タービンである。下半部1の上部には、外部車室の上半部2が被覆される。架台のうち少なくとも梁は、複数の鋼板間にコンクリート13が充填された鋼板コンクリート構造である。
【0024】
架台の梁は、側面や底面が鋼板からなる。そして、架台の梁のうち一方向の梁は、図1に示すように、底面を構成する板状の底面部11と、梁の一側面を構成する側板部3と、側板部3に対向しつつ梁の他側面を構成する板状の側面部12からなる。ここで、側板部3は、外部車室の下半部1の壁面でもある。なお、側板部3は、タービン軸方向に対して平行な方向に設けられた部材である。
【0025】
また、上記一方向の梁部材に対して直交する他方向の梁部分は、上記と同様に底面部(図示せず。)と、図2に示すように、梁の一側面を構成する端板部4と、端板部4に対向しつつ梁の他側面を構成する側面部16からなる。ここで、端板部4は、外部車室の下半部1の壁面でもある。なお、端板部4は、タービン軸方向に対して垂直方向に設けられた部材である。
【0026】
なお、梁部分の内部にはダイヤフラム14やスタッド15が設けられてもよい。ダイヤフラム14は、梁部分の軸方向に対して垂直に設けられる板状部材であり、梁部分の剛性を高める。スタッド15は、鋼板である側板部3や端板部4に溶接で取り付けられるボルトなどの部材であり、スタッド15が梁部材の内側に設けられることで、鋼板とコンクリート13が一体化される。
【0027】
外部車室の側面部分の外壁は、上記の側板部3と端板部4から構成される。そして、内部構造として、内部補強リブ5,8や内部補強ステイバー9が下半部1内に設けられる。
【0028】
上記の通り、本発明は、外部車室の側板部3と端板部4が、架台の梁部分の側板と共通化されていることで、架台が外部車室の補強部材を兼用する。架台は鋼板コンクリート構造であり、外部車室の内外圧力差による変形を防止するための高い強度を確保できる。関連技術の図8〜11に示したように、架台80内部に独立単体で構成可能な外部車室を設置する場合、外壁に沿ってTリブ54を設けたり、内側に内部補強リブ57やステイバー58を設けたりする必要があった。一方、本発明は、関連技術に比べて、外部車室の補強構造を削減できる。そのため、外部車室から復水器へ導かれる蒸気の流れを妨げる部材を減らすことができ、低圧タービンの排気性能を向上させることができる。
【0029】
次に、本発明の架台およびタービン外部車室を用いた場合におけるタービン内部車室の設置について説明する。
【0030】
タービン内部車室70は、内部にロータを収容しており、タービン外部車室の内側に設置される。内部車室70本体は、内部車室70の外壁に設けられたフランジ72によって内部補強リブ5上に支持される。フランジ72は、内部車室70の外壁から突出して設けられた、タービン軸方向に対して平行な水平部材である。内部補強リブ5は、側板部3と結合され、2枚の側板部3間に設けられる板状部材である。内部補強リブ5は、外部車室を内側から補強して内外の圧力差による変形を防止すると共に、内部車室70を上部で支持する。内部補強リブ5の上端には、アジャスタ6が設置される。
【0031】
関連技術の内部車室70本体は、図11に示すように、内部車室70の外壁に設けられた支持部材71によって架台80上に支持され、外部車室に内蔵されている。また、関連技術の内部補強リブ57は、内部車室70を支持しておらず、外部車室を内側から補強しているだけである。一方、図1および図2に示した本発明は、内部補強リブ5が外部車室の補強と内部車室70の支持を兼ねている。したがって、本発明は関連技術が有していた内部車室の外壁に設けられた支持部材71が不要となり、内部車室70の支持構造が簡素化される。そのため、外部車室から復水器へ導かれる蒸気の流れを妨げる部材を減らすことができ、低圧タービンの排気性能を向上させることができる。
【0032】
また、関連技術の構造にて、内部補強リブ57上に内部車室70を載せるという構成にすると、図11に示すように下半部50と架台80の梁側面80a、80bの間には、隙間が設けられているため、内部車室70の重量などによって下半部50が変形する。そのため、内部車室70の支持点が移動して、クリアランス管理上に問題が生ずる。一方、本発明は、外部車室が架台と一体になることによって、外部車室の剛性が向上しているため、内部補強リブ5に内部車室70を載せても外部車室が変形することがない。
【0033】
さらに、関連技術の内部車室70の位置決めは、柔構造の外部車室によって行われていた。一方、本発明では、外部車室は真空荷重を受けた場合でもほとんど変形がないため、内部車室70は内部補強リブ5を介して剛構造の架台によって、内部車室70の位置決めが行われることになる。その結果、本発明は内部車室の位置決め精度を向上できる。
【0034】
但し、鋼製コンクリート構造の架台の製作精度は、内部車室70の製作精度に劣るため、本発明ではアジャスタ6による位置調整が必要である。アジャスタ6は、内部車室70の外壁に設けられたフランジ72の下のみに設置される。図3および図4を用いてアジャスタ6について説明する。図3および図4は、本発明のアジャスタを示す側面図である。図3は、タービン軸方向に平行な方向から見た図であり、図4は、タービン軸方向に対して垂直な方向から見た図である。
【0035】
アジャスタ6は、例えば、直方体形状の支持部材21および昇降部材22と、ボルト23からなる。支持部材21は、内部補強リブ5上に設置され、ボルト23が貫通するボルト穴が形成されている。ボルト23の端部は昇降部材22に固定される。そして、ボルト23を締めたり緩めたりすることによって、昇降部材22の位置を上昇させたり下降させたりすることができる。昇降部材22上に内部車室70のフランジ72を載せることによって、アジャスタ6は内部車室70を鉛直方向に位置調整できる。
【0036】
本発明は、運転時の温度上昇による外部車室の熱伸びがほとんど生じない。これに対して、内部車室70内のロータは軸方向に熱伸びが発生する。そのため、タービン軸方向において、外部車室と内部車室70内のロータとの間で熱伸び差が大きくなりクリアランス管理が厳しくなる。関連技術では、内部車室70は位置決めのため内部補強リブ57の中間に設けられた位置決めキー56を使用していた。しかし、本発明では、外部車室と内部車室70内のロータとの軸方向の熱伸び差による影響を低減するために、内部車室70を熱伸びさせる必要があるため、内部車室70の位置決めのための位置決めキーを設けない。すなわち、本発明では、原則として内部補強リブ5と内部車室70を接触させることはない。
【0037】
次に、本発明の架台およびタービン外部車室の施工方法について説明する。図5は、本発明の架台およびタービン外部車室の施工方法の一工程を示す概略図であり、鋼製ブロックの搬入および現地据付を表している。図6は、図5と同じく本発明の架台およびタービン外部車室の施工方法の一工程を示す概略図であり、鋼製ブロック同士の接続を表している。図7は、本発明の架台およびタービン外部車室の施工方法を示すフローチャートである。
【0038】
本発明は、架台80を鉄筋コンクリート構造ではなく、鋼製コンクリート構造とすることで、コンクリート打設のための型枠工事が不要となる。その結果、架台を含むタービン建屋の工期を短縮できる。また、架台とタービン外部車室の下半部が一体であるため、架台を製作することによって、下半部の外壁が製作される。そのため、現地における下半部の製作工程を削減できる。
【0039】
本発明では、図5に示すように、予め鋼製ブロックBL1,BL2,BL3を工場などにて製作しておく。鋼製ブロックBL1,BL2,BL3は、コンクリートのための型枠でもある。なお、鋼製ブロックBL1,BL2,BL3の内部に、予めダイヤフラム14やスタッド15を設置しておくことで、建屋工事の現場における施工期間を短縮できる。鋼製ブロックBL1,BL3は、端板部4を含む梁部材と、梁部材の両端に位置する柱部材と、軸受け部21を有する。鋼製ブロックBL2は、側板部3を含む二つの梁部材と、梁部材間に設置された内部補強構造(内部補強リブ5,8、内部補強ステイバー9)を有する。
【0040】
そして、各鋼製ブロックBL1,BL2,BL3を工場から現地に搬入し設置する(ステップS1)。その際、図6に示すように、鋼製ブロックBL1と鋼製ブロックBL2の間、鋼製ブロックBL2と鋼製ブロックBL3の間を溶接することで、一体化した架台を製作できる。図6中の符号Wは溶接部分を示す。
【0041】
その後、現地にて鋼製ブロックBL1,BL2,BL3の鋼板間にコンクリートを打設する(ステップS2)。そして、コンクリート打設後に、内部車室下半部を外部車室内に据え付ける(ステップS3)。なお、内部車室の据付精度を確保するため、アジャスタ6による位置決め調整を行う。
【0042】
一方、関連技術の鉄筋コンクリート構造の架台の場合、架台の施工は図12に示すような工程となる。図12は、関連技術の架台およびタービン外部車室の施工方法を示すフローチャートである。
【0043】
すなわち、まず、足場工事を行って足場をくみ上げた後、型枠施工を行う(ステップS11)。そして、型枠内に鉄筋を配筋する(ステップS12)。その後、鉄筋が配筋された型枠内にコンクリートを打設する(ステップS13)。最後に、コンクリートが硬化する養生期間を経た後、型枠を撤去する(ステップS14)。以上の工程によって、関連技術の鉄筋コンクリート構造の架台が製作される。
【0044】
そして、完成した架台上部の開口内に外部車室下半部50を据え付ける(ステップS15)。次に、内部車室70の下半部を外部車室下半部50内に据え付ける(ステップS16)。
【0045】
上記の関連技術の施工方法に対して、本発明では、まず、鋼製ブロックBL1,BL2,BL3を工場にて製作することで、現地における施工期間の短縮化を図ることができる。また、工場製作によって架台の製作精度の向上が可能である。なお、鋼製ブロックBL1,BL2,BL3の現地据付を簡素化できれば、型枠工事のために必要な足場工事を省略することもできる。
【0046】
さらに、本発明の架台は鉄筋コンクリート構造ではなく鋼板コンクリート構造であるため、現地での配筋工事が不要である。また、コンクリート打設後、型枠を撤去するまでのコンクリート硬化に要する待ち時間を削減できる。したがって、本発明は、関連技術に比べて工期の短縮化を図ることが可能である。
【0047】
またさらに、本発明は架台と外部車室の外壁を共通化していることから、架台と外部車室の外壁との間に隙間がない。そのため、外部車室のサイズが関連技術と本発明とで同一であるとした場合、本発明の架台のサイズは小さくなり、コンクリートの打設量を低減できる。また、関連技術の鉄筋コンクリート構造の架台では、鉄筋を十分に被覆するため、かぶりコンクリートが必要であった。一方、本発明では、かぶりコンクリートを削減できるため、この点からもコンクリートの打設量を低減できる。
【0048】
そして、本発明では、鋼製ブロックBL2のように梁部材と内部補強部材を一体化して現地で据付工事をするため、関連技術の鉄筋コンクリート構造の架台のような別途外部車室を据え付ける工程が不要となる。
【0049】
以上、近年、タービンの大型化に伴って、車室に必要な剛性を確保することが困難になりつつあるところ、本発明では、タービン外部車室の外壁と鋼板コンクリート構造の架台の梁の側面部を共通化する。これによって、外部車室の外部補強が不要になり、関連技術で行っていた外部車室の外部補強を大型化する必要がなく、外部車室を効率良く補強することができる。また、外部車室内部の補強構造を減らせるため、外部車室内部から復水器への排気性能を関連技術に比べて向上させることが可能である。
【0050】
また、架台およびタービン外部車室の施工方法において、架台の梁部材と外部車室の外壁や内部補強部材とが一体化していることから、現地における外部車室の据え付けが不要となり、現地での施工期間を短縮できる。また、工場で架台と外部車室が一体化した鋼製ブロックを製作することで、外部車室の寸法精度を向上させることができる。
【0051】
なお、図5および図6では、架台を3分割して鋼製ブロックを三つに分ける例を示したが、本発明はこの例に限定されない。架台の大きさ、施工手順、クレーンの重量制限などに応じて鋼製ブロックは二つ以下としてもよいし四つ以上としてもよい。架台を分割することなく図6に示すような形状で一体のまま工場から現地据え付けをすることができれば、分割する例に比べてさらに寸法精度を向上させることができる。
【0052】
また、上記説明では、鋼製ブロックによって本発明の架台およびタービン外部車室を施工する方法について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、鋼製の架台とタービン外部車室をそれぞれ別に製作し、外部車室を架台に隙間なく挿入することによって、外部車室の外壁と架台の側板部または端板部を一体化させてもよい。この場合でも、上記説明の架台およびタービン外部車室と同様に、車室内部の蒸気の流れを向上させつつ簡潔な構造で車室の剛性を高めることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 下半部
2 上半部
3 側板部
4 端板部
5,8 内部補強リブ
6 アジャスタ
9 内部補強ステイバー
12,16 側面部
13 コンクリート
14 ダイヤフラム
15 スタッド
70 内部車室
図1
図2
図3
図4
図5
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図12