特許第5766844号(P5766844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5766844
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】振動発生機
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/02 20060101AFI20150730BHJP
【FI】
   G01M7/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-88382(P2014-88382)
(22)【出願日】2014年4月22日
【審査請求日】2014年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100676
【氏名又は名称】IMV株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】青木 秀修
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】中西 一志
【審査官】 田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3260756(JP,B1)
【文献】 特開2007−212172(JP,A)
【文献】 実開昭60−102651(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被振動物を振動させる振動発生機であって、
前記被振動物が取り付けられるスリップテーブルと、
前記スリップテーブルの下部に設けられ、縦断面視において第1ベースプレート構成部と、当該第1ベースプレート構成部と互いに隣り合う第2ベースプレート構成部と、を含むベースプレートと、
前記第1ベースプレート構成部と前記第2ベースプレート構成部との間に設けられ、流体が流れる流路を有する流路形成エレメントと、を備え、
前記流路形成エレメントの流路は、前記第1ベースプレート構成部及び前記第2ベースプレート構成部の各下面に前記流体を供給する垂直流路と、前記第1ベースプレート構成部の側面及び当該側面に対向している側の、前記第2ベースプレート構成部の側面に前記流体を供給する水平流路と、で構成されていることを特徴とする振動発生機。
【請求項2】
被振動物を振動させる振動発生機であって、
前記被振動物が取り付けられるスリップテーブルと、
前記スリップテーブルの下部に設けられ、縦断面視において複数のベースプレート構成部を含むベースプレートと、を備え、
前記ベースプレートの縦断面視において、両側面がそれぞれ別の各前記ベースプレート構成部の側面と互いに隣り合っている第1ベースプレート構成部と、該第1ベースプレート構成部の片側面と別の前記ベースプレート構成部の片側面とに互いに隣り合っている第2ベースプレート構成部とを有する領域を含み、
前記第1ベースプレート構成部と前記第2ベースプレート構成部との間に設けられ、流体が流れる流路を有する第1流路形成エレメントと、をさらに備え、
前記第1流路形成エレメントの流路は、前記第1ベースプレート構成部及び前記第2ベースプレート構成部の下面に前記流体を供給する第1垂直流路と、前記第1ベースプレート構成部の側面及び該側面に対向している側の、前記第2ベースプレート構成部の側面に前記流体を供給する水平流路と、を含むことを特徴とする振動発生機。
【請求項3】
前記ベースプレートの縦断面視において、側面の片方のみが別の前記ベースプレート構成部の側面と隣り合っている第3ベースプレート構成部を有する領域を含み、
前記第3ベースプレート構成部と、前記第1ベースプレート構成部または前記第2ベースプレート構成部との間に第2流路形成エレメントを備え、
前記第2流路形成エレメントは、前記第3ベースプレート構成部の下面と、前記第1ベースプレート構成部または第2ベースプレート構成部の下面とに前記流体を供給する第2垂直流路を備える、請求項に記載の振動発生機。
【請求項4】
前記ベースプレートは、前記スリップテーブルの下面に流体を供給する流体流路を備えた、請求項1〜3のいずれか1項に記載の振動発生機。
【請求項5】
前記ベースプレートの上面には、前記流体流路から噴出された前記流体を前記ベースプレート上に拡散させる複数の拡散溝が形成されている、請求項に記載の振動発生機。
【請求項6】
前記ベースプレートの上面には、前記流体流路から噴出された前記流体を回収する複数の回収溝が形成されている、請求項またはに記載の振動発生機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動試験システム等で用いられる振動発生機に関し、特にそのスリップテーブルの流体軸受構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動試験システム等に各種振動発生機が用いられている。これら振動発生機は、設計製作された製品(自動車部品、電子部品、航空機部品等)が使用される振動環境に耐えて性能を発揮できることの確認を行う振動耐久試験や、出荷される製品が輸送時に受けると予想される振動を与えて製品自体に問題がないことの確認を行う輸送梱包試験等に使用することができる。
【0003】
振動発生機は、モータに偏芯させたマス(おもり)を付けて回転させその遠心力によって振動を発生させるアンバランスマス型、ピストンを用いた油圧型、カム機構を利用したカム型など種々開発されている。これらの他にも、磁界中にある導体に電流を流すと該導体は力を受けるという電磁効果、いわゆるフレミングの左手の法則を利用した動電型振動発生機もある。この動電型振動発生機の原理を簡単に説明すると、円筒型の磁路に空隙を設けておき、該空隙に接触しないようにバネで保持された駆動コイルを挿入しておく。上記磁路の中にある励磁コイルに直流電流を流すと磁束が発生し、空隙には直流磁界ができ、駆動コイルの線と直交する。この駆動コイルに交流電流を流すことによって、振動テーブルは振動を発生させることができる。
【0004】
振動発生機のうち、外部から加圧した例えば油などの流体を供給してスリップテーブルを保持する流体軸受型の振動試験機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。流体軸受型の振動試験機は非接触でスリップテーブルを支持するので、振動精度が良く、摩擦損失が小さいため長寿命化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3260756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の振動試験機では、その加振テーブルの下部の構造が各部ユニット化され、それぞれのユニットは配管で繋がっている。そのため、上記構造の複雑化を避けて通れず、高コストとなる。
【0007】
そこで、本発明は、スリップテーブルの流体軸受構造が簡単化され、それによって低コスト化された振動発生機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明の振動発生機は、被振動物を振動させるものであって、
前記被振動物が取り付けられるスリップテーブルと、
前記スリップテーブルの下部に設けられ、縦断面視において複数のベースプレート構成部を含むベースプレートと、を備え、
前記ベースプレートの縦断面視において、両側面がそれぞれ別の各前記ベースプレート構成部の側面と互いに隣り合っている第1ベースプレート構成部と、該第1ベースプレート構成部の片側面と別の前記ベースプレート構成部の片側面とに互いに隣り合っている第2ベースプレート構成部とを有する領域を含み、
前記第1ベースプレート構成部と前記第2ベースプレート構成部との間に設けられ、流体が流れる流路を有する第1流路形成エレメントと、をさらに備え、
前記第1流路形成エレメントの流路は、前記第1ベースプレート構成部及び前記第2ベースプレート構成部の下面に前記流体を供給する第1垂直流路と、前記第1ベースプレート構成部の側面及び該側面に対向している側の、前記第2ベースプレート構成部の側面に前記流体を供給する水平流路と、を含むことを特徴とする。
本発明は、動電型振動発生機や、アンバランスマス型の振動発生機、ピストンを用いた油圧型の振動発生機、並びにカム機構を利用したカム型の振動発生機など各種振動発生機に用いることができる。
【0009】
上記(1)の構成によると、スリップテーブルの下部にベースプレートが設けられる。本発明の振動発生機は、ベースプレートの縦断面視において、第1ベースプレート構成部と第2ベースプレート構成部とを有する領域を含んでいる。第1ベースプレート構成部は、その両側面がそれぞれ別の各ベースプレート構成部の側面と互いに隣り合っているものである。また、第2ベースプレート構成部は、第1ベースプレート構成部の片側面と別のベースプレート構成部の片側面とに互いに隣り合っているものである。このような第1ベースプレート構成部と第2ベースプレート構成部との間に第1流路形成エレメントが設けられる。この第1流路形成エレメントは、例えば油などの流体が流れる流路を有している。この流路は、第1垂直流路及び水平流路を含んで構成される。第1垂直流路は、第1ベースプレート構成部の下面及び第2ベースプレート構成部の下面に流体を供給する。また、水平流路は、第1ベースプレート構成部の側面及び該側面に対向している側の、第2ベースプレート構成部の側面に流体を供給する。このような構成において、第1垂直流路からの流体が第1ベースプレート構成部の下面及び第2ベースプレート構成部の下面に供給されることによって、第1ベースプレート構成部及び第2ベースプレート構成部がその高さ方向に安定して支持される。また、水平流路からの流体が第1ベースプレート構成部の側面及び第2ベースプレート構成部の上記側面に供給されることによって、第1ベースプレート構成部及び第2ベースプレート構成部がその幅方向に安定して支持される。これにより、第1ベースプレート構成部及び第2ベースプレート構成部の上下振動及び水平振動が抑制される。したがって、ベースプレートからの流体の供給によりスリップテーブルを支持する場合、該スリップテーブルに対する第1ベースプレート構成部及び第2ベースプレート構成部の相対位置が安定するので、第1ベースプレート構成部及び第2ベースプレート構成部によるスリップテーブルの支持精度が向上する。また、第1垂直流路と水平流路とを有する第1流路形成エレメントを、一枚ものであるベースプレートにマニホールドしてこれらを単体化させることで、ユニット化された複数のベースプレートを備える従来の振動発生機に比して、スリップテーブルの流体軸受構造を著しく簡単化することができる。それによって、振動発生機を低コスト化することができる。
【0010】
(2) 上記(1)の振動発生機においては、前記ベースプレートの縦断面視において、側面の片方が別の前記ベースプレート構成部の側面と隣り合っている第3ベースプレート構成部を有する領域を含み、前記第3ベースプレート構成部と、前記第1ベースプレート構成部または前記第2ベースプレート構成部との間に第2流路形成エレメントを備え、前記第2流路形成エレメントは、前記第3ベースプレート構成部の下面と、前記第1ベースプレート構成部または第2ベースプレート構成部の下面とに流体を供給する第2垂直流路を備えることが好ましい。
【0011】
上記(2)の構成によると、本発明の振動発生機は、ベースプレートの縦断面視において、第3ベースプレート構成部を有している領域を含む。この第3ベースプレート構成部は、その側面の片方のみが、別のベースプレート構成部の側面と隣り合っているものである。また、第2流路形成エレメントは、第3ベースプレート構成部と、第1ベースプレート構成部または第2ベースプレート構成部との間に設けられる。第2流路形成エレメントは、第3ベースプレート構成部の下面と、第1ベースプレート構成部または第2ベースプレート構成部の下面とに流体を供給する第2垂直流路を備える。加振方向(スリップテーブルの上面視において垂直方向)に比して水平方向には加振による力がほとんど作用しない。このことに鑑みて、第3ベースプレート構成部を水平流路からの流体によって支持することを省略することができ、その結果、第2流路形成エレメントと各ベースプレート構成部との間に該第2流路形成エレメントの挿入のための若干の隙間のみを設ければ済む。これにより、流体軸受構造を簡単化することができると共に水平流路を設けた場合の高精度な位置決めが不要となるので、低コスト化をより図ることができる。
【0012】
(3) 上記(1)または(2)の振動発生機においては、前記ベースプレートは、前記スリップテーブルの下面に流体を供給する流体流路を備えることが好ましい。
【0013】
上記(3)の構成によると、流体流路からの流体がスリップテーブルの下面に供給されるので、該スリップテーブルを油膜によって安定して支持することができる。これにより、スリップテーブルの上下振動が抑制される。
【0014】
(4) 上記(3)の振動発生機においては、前記ベースプレートの上面には、前記流体流路から噴出された前記流体を前記ベースプレート上に拡散させる複数の拡散溝が形成されていることが好ましい。
【0015】
上記(4)の構成によると、流体流路からの流体が複数の拡散溝によってベースプレート上に拡散されるので、スリップテーブルの下面に広い油膜を形成することができる。それにより、スリップテーブルを安定して支持することができる。
【0016】
(5) 上記(3)または(4)の振動発生機においては、前記ベースプレートの上面には、前記流体流路から噴出された前記流体を回収する複数の回収溝が形成されていることが好ましい。
【0017】
上記(5)の構成によると、流体流路から噴出された後の流体を回収溝によって回収することができる。それにより、回収された流体を再利用することができ、ランニングコストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る振動発生機の全体構成を示す正面図である。
図2図1のスリップテーブルの下方に設けられるベースプレートの構成を示す上面図である。
図3】(a)は図2のA−A線断面図であり、(b)は図2のB−B線断面図であり、(c)は図2のC−C線断面図である。
図4】(a)は図2のD−D線断面図であり、(b)は図2のE−E線断面図である。
図5】ベースプレートが油リサイクル部の上部に保持された状態を示す一部縦断面図である。
図6】ベースプレートが油リサイクル部の上部に保持された状態を示す他の一部縦断面図である。
図7図6の要部拡大図である。
図8】油リサイクル部の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る振動発生機について、図1図8に基づいて説明する。なお、以下では一例として、本発明の振動発生機が動電型振動発生機である場合について説明を行う。
【0020】
本実施形態に係る振動発生機1は、垂直方向に加振できるとともに水平方向にも加振できるものである。図1では、水平方向に加振できるように振動発生機1がセッティングされている状態が示されている。なお、後記のヨークを時計回りに90°回転させることで、垂直加振を実現できるようになっている。
【0021】
図1に示すように、振動発生機1は、ヨーク2と、振動台3と、ヨーク2を保持する土台4と、スリップテーブル5と、スリップテーブル5と振動台3とを連結する連結部6と、スリップテーブル5の下部に設けられる油リサイクル部7とを主として備える。ヨーク2の材料としては、高透磁率で高強度の磁性材料、例えばSS400等の低炭素鋼を好適に用いることができる。振動台3の材料としては、非磁性体で高強度の金属、例えばアルミニウム合金、あるいは合成樹脂、例えばカーボンファイバを好適に用いることができる。なお、同図中の矢印Xは加振方向を示している。
【0022】
ヨーク2には、該ヨーク2に静磁場を生成するための図示しない励磁コイルと、振動発生用の図示しないドライブコイルとが設けられている。このドライブコイルは磁気ギャップ内に配され、振動台3と一体的に構成されている。励磁コイルに直流電流を流すことにより、該励磁コイルを取り巻くヨーク2内に磁気回路(静磁場)が生成される。ドライブコイルに所定周波数の交流電流を流すことにより、上記磁気ギャップに生成される静磁場とドライブコイルに流れる交流電流との間に力が働く。この力により、ドライブコイルは磁束の方向と直交する方向に振動する。それにより、振動台3はドライブコイルに流される交流電流の周波数で振動し、これに伴って、スリップテーブル5に取り付けられた被振動物も振動する仕組みになっている。
【0023】
図2図1のスリップテーブル5の下方に設けられるベースプレートの構成を示す上面図である。図3(a)は図2のA−A線断面図であり、図3(b)は図2のB−B線断面図であり、図3(c)は図2のC−C線断面図である。図4(a)は図2のD−D線断面図であり、図4(b)は図2のE−E線断面図である。
【0024】
本発明では、スリップテーブル5の下面にベースプレート10からの流体(例えば油など。以下、油として説明)が供給されることによって、該スリップテーブル5とベースプレート10との間に油膜が形成され、該油膜によってスリップテーブル5が支持されるようになっている。いわゆる流体軸受方式を採用している。
【0025】
図2に示すように、ベースプレート10には、油を拡散する拡散溝11が該ベースプレート10の垂直方向及び水平方向にそれぞれ例えば2本ずつ設けられている。なお、水平方向に設けられた2本の拡散溝11はそれぞれ中央部で分割されている。このような4本の拡散溝11によってベースプレート10を平面的に区画して出来た9つの領域を、以下便宜的にR1〜R9とする。なお、区画領域の数は、ベースプレート10の大きさに応じて拡散溝11の数を増減させることにより任意に設定することができる。
【0026】
ベースプレート10の領域R1〜R9において、複数のポケット12と該ポケット12の内側に設けられ油を噴出する噴出孔13がそれぞれ設けられている。また、ベースプレート10の領域R1〜R3及び領域R7〜R9においては、ベースプレート10の垂直方向に隣り合う各ポケット12の間には、後で詳述する流路形成エレメントが挿入されるエレメント孔14が設けられている。図3(a)に示すように、噴出孔13及びポケット12には、流体流路18から油が供給されるようになっている。この流体流路18は、図2の水平方向に沿って形成されている。図4(a)に示すように、流体流路18の始端には油の導入口18aが設けられ、その終端には油の止め栓19が設けられている。
【0027】
また、ベースプレート10の領域R1〜R3及び領域R7〜R9において、始端と終端との両方がベースプレート10の外縁部に通じるように回収溝15がそれぞれ設けられている。これに対して、領域R4〜R6においては、始端と終端との両方がベースプレート10の外縁部に通じるように且つこれらの領域に亘って回収溝16が設けられている。回収溝15,16は、油を回収して油リサイクル部7(図1)に流すものである。なお、ベースプレート10の外縁部及び垂直方向の中央部には、複数の締結孔17が設けられている。
【0028】
図5及び図6はベースプレート10が油リサイクル部7の上部に保持された状態を示す一部縦断面図であり、図7図6の要部拡大図である。なお、図5図2のベースプレート10を領域R2,R5,R8において水平方向に切断した場合の縦断面図を示し、図6図2のベースプレート10を領域R1,R2,R3において垂直方向に切断した場合の縦断面図を示している。
【0029】
図5に示すように、エレメント孔14には第1流路形成エレメント20が挿入される。第1流路形成エレメント20の上部はスリップテーブル5に固定されている。第1流路形成エレメント20内には、噴出孔31bに連通する流体流路25がそれぞれ形成されている。また、噴出孔31bはポケット31aに連通している。詳細は後述する。同図中、左側の第1流路形成エレメント20の流体流路25には、油リサイクル部7から油を導入するための導入部26が接続されている。左側の第1流路形成エレメント20の流体流路25と右側の第1流路形成エレメント20の流体流路25とは流体流路27で繋がっている。
【0030】
図6に示すように、ベースプレート10は、その縦断面視において第1ベースプレート構成部10aと第2ベースプレート構成部10bと2つの第3ベースプレート構成部10c,10cとを含む。第1ベースプレート構成部10aとは、その両側面がそれぞれ別の各ベースプレート構成部(同図では第2ベースプレート構成部10b及び第3ベースプレート構成部10c)の側面と互いに隣り合っているものである。第2ベースプレート構成部10bとは、第1ベースプレート構成部10aの片側面と別のベースプレート構成部(同図では第3ベースプレート構成部10c)の片側面とに互いに隣り合っているものである。
【0031】
上記のような第1ベースプレート構成部10aと第2ベースプレート構成部10bとの間に第1流路形成エレメント20が設けられる。第1流路形成エレメント20は、図7に示すように、第1ベースプレート構成部10aの下面及び第2ベースプレート構成部10bの下面に油を供給する第1垂直流路30と、第1ベースプレート構成部10aの側面及び該側面に対向している側の、第2ベースプレート構成部10bの側面に油を供給する水平流路31とを有する。また、第1垂直流路30の先端に噴出孔30bが連通しており、噴出孔30bはポケット30aに連通している。さらに、水平流路31の先端に噴出孔31bが連通しており、噴出孔31bはポケット31aに連通している。このような構成において、第1垂直流路30からの油が噴出孔30bより垂直方向に噴出されることによって、ポケット30aに油膜がそれぞれ生成され、この油膜により第1ベースプレート構成部10a及び第2ベースプレート構成部10bがその高さ方向に安定して支持される。また、水平流路31からの油が噴出孔31bより水平方向に噴出されることによって、ポケット31aに油膜がそれぞれ生成され、この油膜により第1ベースプレート構成部10a及び第2ベースプレート構成部10bがその幅方向に安定して支持される。これにより、第1ベースプレート構成部10a及び第2ベースプレート構成部10bの上下振動及び水平振動が抑制される。よって、スリップテーブル5に対する第1ベースプレート構成部10a及び第2ベースプレート構成部10bの相対位置が安定するので、第1ベースプレート構成部10a及び第2ベースプレート構成部10bによるスリップテーブル5の支持精度が向上する。第1垂直流路30及び水平流路31からの油の噴出圧は例えば6MPa〜7MPaである。なお、図6の左側と右側の第2流路形成エレメント21の垂直方向における油の噴出の効果については、上述の第1流路形成エレメント20の垂直方向における油の噴出の効果と同様である。
【0032】
また、第1垂直流路30と水平流路31とを有する第1流路形成エレメント20を、一枚ものであるベースプレート10にマニホールドしてこれらを単体化させることで、ユニット化された複数のベースプレートを備える従来の振動発生機に比して、流体軸受構造を著しく簡単化することができる。それによって、振動発生機を低コスト化することができる。
【0033】
図6に戻り、一方、第3ベースプレート構成部10cと、第1ベースプレート構成部10aまたは第2ベースプレート構成部10bとの間に第2流路形成エレメント21が設けられる。第2流路形成エレメント21は、第3ベースプレート構成部10cの下面と、第1ベースプレート構成部10aまたは第2ベースプレート構成部10bの下面とに油を供給する第2垂直流路32を備える。第2垂直流路32からの流体が第3ベースプレート構成部10cの下面、第1ベースプレート構成部10aの下面及び第2ベースプレート構成部10bの下面に供給されることによって油膜が生成され、この油膜により第1ベースプレート構成部10a、第2ベースプレート構成部10b及び第3ベースプレート構成部10cがその高さ方向に安定して支持される。また、加振方向X(スリップテーブル5の上面視において垂直方向)に比して水平方向には加振による力がほとんど作用しない。このことに鑑みて、第2流路形成エレメント21の水平部は、各ベースプレート構成部10a、10b、10cから支持されることを省略することができ、その結果、第2流路形成エレメント21と各ベースプレート構成部との間に該第2流路形成エレメント21の挿入のための若干の隙間のみを設ければ済む。これにより、流体軸受構造を簡単化することができると共に水平流路を設けた場合の高精度な位置決めが不要となるので、低コスト化をより図ることができる。
【0034】
図8は油リサイクル部7の構成を示す模式図である。本発明では、流体軸受機能を達成するのに用いた油を再利用することができる。詳しくは、油リサイクル部7は、図8に示すように、サクションフィルタ40と、ポンプ41と、リリーフ弁42と、切替弁43と、導入部26やベースプレート10の油の導入口18aに接続された管路44と、ベースプレート10から落ちてくる油を溜める図示しないオイルタンクを備える。このような構成において、オイルタンクに貯溜された油は、サクションフィルタ40で清浄化された後、ポンプ41により吸い上げられてリリーフ弁42及び切替弁43を介して管路44を通じて導入部26に導入される。
【0035】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。したがって、本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0036】
上記実施形態では、ベースプレート10の区画領域を9つの領域R1〜R9としたが、これに限定されるものではなく、8以下あるいは10以上とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の振動発生機は、車載機器やその他の機器の振動試験に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 振動発生機
5 スリップテーブル
10 ベースプレート
10a 第1ベースプレート構成部
10b 第2ベースプレート構成部
10c 第3ベースプレート構成部
11 拡散溝
15 回収溝
18 流体流路
20 第1流路形成エレメント
21 第2流路形成エレメント
30 第1垂直流路
31 水平流路
32 第2垂直流路
R1〜R9 領域
【要約】
【課題】スリップテーブルの流体軸受構造が簡単化され、それによって低コスト化された振動発生機を得る。
【解決手段】振動発生機1は、スリップテーブル5の下部に設けられるベースプレートの縦断面視において、両側面がそれぞれ別の各ベースプレート構成部の側面と互いに隣り合っている第1ベースプレート構成部10aと、該第1ベースプレート構成部10aの片側面と別のベースプレート構成部の片側面とに互いに隣り合っている第2ベースプレート構成部10bとを有する領域を含む。第1ベースプレート構成部10aと第2ベースプレート構成部10bとの間に第1流路形成エレメント20が設けられる。第1流路形成エレメント20は、第1ベースプレート構成部10aの下面及び第2ベースプレート構成部10bの下面に油を供給する第1垂直流路30と、第1ベースプレート構成部10aの側面及び該側面に対向している側の、第2ベースプレート構成部10bの側面に油を供給する水平流路31とを有する。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8