(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記板ばね部材の前記弾性接触部が前記翼部材の内面に弾性接触している面積であって、前記翼部材の長手方向の中央部側の前記弾性接触部の弾性接触面積は、前記翼部材の長手方向の両端部側の前記弾性接触部の弾性接触面積よりも広い、
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンの静翼。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、蒸気タービンの静翼および蒸気タービンにおいて、静翼に生じる自励振動を確実に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明(請求項1にかかる発明)は内部に空間が形成されている翼部材と、翼部材の空間内に配置されていてかつ翼部材の内面に弾性接触している板ばね部材と、を備え、板ばね部材が、翼部材の内面に位置決めされている位置決め部と、翼部材の内面に弾性接触している弾性接触部と、位置決め部と弾性接触部とを連結する連結部と、から構成されていて、板ばね部材が、翼部材の長手方向に複数個のピースに分割されていて、複数個のピースの板ばね部材の弾性接触部が、翼部材の長手方向に複数個にそれぞれ分割されている、ことを特徴とする。
【0010】
この発明(請求項2にかかる発明)は、板ばね部材の弾性接触部が翼部材の内面に弾性接触している面積であって、翼部材の長手方向の中央部側の弾性接触部の弾性接触面積が翼部材の長手方向の両端部側の弾性接触部の弾性接触面積よりも広い、ことを特徴とする。
【0011】
この発明(請求項3にかかる発明)は、板ばね部材の弾性接触部が翼部材の背面側の内面に弾性接触している、ことを特徴とする。
【0012】
この発明(請求項4にかかる発明)は、翼部材の内面と板ばね部材の位置決め部との位置決め構造が凹凸嵌合の位置決め構造からなる、ことを特徴とする。
【0013】
この発明(請求項5にかかる発明)は、前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸気タービンの静翼がロータ軸の周方向に複数個配列されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明(請求項1にかかる発明)の蒸気タービンの静翼は、板ばね部材の弾性接触部が翼部材の長手方向に複数個に分割されているので、翼部材および板ばね部材の製造公差を吸収することができる。これにより、この発明(請求項1にかかる発明)の蒸気タービンの静翼は、翼部材の長手方向に複数個に分割されている板ばね部材の弾性接触部が翼部材の内面に片当たりすることなく設計通りに弾性接触することができる。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の蒸気タービンの静翼は、設計通りの弾性接触面積が得られて、静翼に生じる自励振動を確実に抑制することができる。
【0015】
しかも、この発明(請求項1にかかる発明)の蒸気タービンの静翼は、板ばね部材の弾性接触部が翼部材の内面に片当たりすることがないので、板ばね部材の弾性接触部のばね反力が設計通りとなる。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の蒸気タービンの静翼は、翼部材と板ばね部材との組立時において、押さえつけ作業が容易となる。
【0016】
その上、この発明(請求項1にかかる発明)の蒸気タービンの静翼は、板ばね部材の弾性接触部が翼部材の内面に片当たりすることがないので、板ばね部材の弾性接触部のばね反力が設計通りとなる。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の蒸気タービンの静翼は、翼部材と板ばね部材とを組み立てた際に、片当たりによる翼部材の表面の変形が発生するようなことはない。
【0017】
この発明(請求項1にかかる発明)の蒸気タービンの静翼は、板ばね部材が翼部材の長手方向に複数個のピースに分割されているので、1ピースの板ばね部材と比較して、自由度が大きくなり、その分、翼部材の形状や製作交差(製作ばらつき)に対する吸収性(追従性)が良くなり、設計通りの弾性接触面積を容易にかつ確実に確保することができる。
【0018】
この発明(請求項2にかかる発明)の蒸気タービンの静翼は、翼部材の長手方向の中央部側の弾性接触面積が翼部材の長手方向の両端部側の弾性接触面積よりも広いので、効果的に自励振動を抑制することができる。
【0019】
この発明(請求項3にかかる発明)の蒸気タービンの静翼は、板ばね部材の弾性接触部が翼部材の腹面側の内面よりも広い背面側の内面に弾性接触しているので、板ばね部材の弾性接触部と翼部材の背面側の内面との弾性接触面積を広くすることができる。この結果、この発明(請求項3にかかる発明)の蒸気タービンの静翼は、静翼に生じる自励振動をさらに確実に抑制することができる。
【0020】
この発明(請求項4にかかる発明)の蒸気タービンの静翼は、翼部材の内面と板ばね部材の位置決め部とを凹凸嵌合の位置決め構造により位置決めするものであるから、溶接などにより翼部材の内面と板ばね部材の位置決め部とを位置決めするものと比較して、溶接作業を省略することができる。この結果、この発明(請求項4にかかる発明)の蒸気タービンの静翼は、溶接作業を省略することにより、翼部材と板ばね部材とを組み立て工程を短縮することができ、かつ、製造コストを削減することができる。
【0021】
しかも、この発明(請求項4にかかる発明)の蒸気タービンの静翼は、溶接作業を省略することにより、溶接ひずみがなく、その分、板ばね部材の弾性接触部と翼部材の内面との弾性接触面積を広くすることができるので、静翼に生じる自励振動をさらに確実に抑制することができる。その上、この発明(請求項4にかかる発明)の蒸気タービンの静翼は、溶接作業を省略することにより、組立工程を短縮することができ、製造コストを安価にすることができる。
【0022】
この発明(請求項5にかかる発明)の蒸気タービンは、前記の請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸気タービンの静翼を使用するので、前記の請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸気タービンの静翼と同様の効果、すなわち、静翼に生じる自励振動を確実に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明にかかる蒸気タービンの静翼の実施形態のうちの6例およびこの発明にかかる蒸気タービンの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0025】
[実施形態1]
図1〜
図3は、この発明にかかる蒸気タービンの実施形態1を示す。
図4〜
図9は、この発明にかかる蒸気タービンの静翼の実施形態1を示す。以下、実施形態1における蒸気タービンおよび実施形態1における蒸気タービンの静翼についてそれぞれ説明する。
【0026】
「蒸気タービン1の説明」
図1において、符号1は実施形態1における蒸気タービンである。前記蒸気タービン1は、たとえば、原子力発電プラントに使用されるものである。原子力発電プラントは、高圧の蒸気を発生する蒸気発生器2と、前記蒸気発生器2から高圧の蒸気が直接供給される高圧蒸気タービン3と、前記蒸気発生器2および前記高圧蒸気タービン3からの蒸気の湿分を分離して加熱する湿分分離加熱器4と、前記湿分分離加熱器4から低圧の蒸気が供給される低圧の前記蒸気タービン(低圧蒸気タービン)1と、を備えるものである。
【0027】
前記蒸気タービン1は、ケーシング(タービンケーシング、タービン車室)5と、前記ケーシング5に回転可能に取り付けられているロータ軸(タービン軸)6と、前記ケーシング5に前記ロータ軸6の周方向Aに複数個(多数個)配列された静翼7と、前記ロータ軸6に前記ロータ軸6の周方向Aに複数個(多数個)配列された動翼8と、を備えるものである。
【0028】
前記ケーシング5には、蒸気入口9が設けられている。また、前記ケーシング5内には、前記蒸気入口9と連通する蒸気通路10が前記ロータ軸6の軸方向Bに設けられている。
【0029】
複数個円環に配列された前記静翼7群のベース側(前記ロータ軸6側、内側、前記ロータ軸6の径方向Cの内側)は、シュラウド(内輪、インナーリング)11に溶接(図示せず)により連結されている。また、複数個円環に配列された前記静翼7群のチップ側(前記ケーシング5側、外側、前記ロータ軸6の径方向Cの外側)は、翼根リング(外輪、アウターリング)12に溶接13により連結されている。前記翼根リング12が前記ケーシング5に固定されている。前記静翼7の内部には、空間14が形成されている。前記静翼7の腹面20(
図4、
図5、
図7参照)側には、スリット15(
図4、
図5参照)が前記空間14と連通するように設けられている。前記シュラウド11には、開口16(
図3参照)が前記空間14と連通するように設けられている。
【0030】
複数個円環に配列された前記動翼8群のベース側は、前記ロータ軸6に固定されている。複数個円環に配列された前記動翼8群のチップ側は、前記ケーシング5に対向する。
【0031】
複数個円環に配列された前記静翼7群と、同じく、複数個円環に配列された前記動翼8群とは、一対で1個の段を構成する。前記蒸気タービン1においては、複数段の前記静翼7群と前記動翼8群とが設けられている。前記静翼7および前記動翼8の翼幅(前記ロータ軸6の径方向C、すなわち、前記ロータ軸6の軸方向Bとほぼ直交する方向の翼の長さ)は、前記蒸気通路10を上流側から下流側に向かうに従って長くなるように構成されている。前記蒸気通路10の最も下流側に位置する段を低圧最終段という。低圧最終段の前記静翼7および前記動翼8の翼幅は、他の段の前記静翼7および前記動翼8の翼幅の中で最も長い。
【0032】
以下、前記の構成からなる前記蒸気タービン1の作用について説明する。前記湿分分離加熱器4から前記蒸気入口9に供給された蒸気は、前記蒸気通路10を前記ロータ軸6の軸方向Bに沿って流れる。このとき、前記静翼7群において圧力降下によって運動エネルギが発生し、この運動エネルギを前記動翼8群によって回転トルクに変換している。この結果、ロータ軸6が回転駆動して発電が行われる。
【0033】
前記静翼7の腹面20(表面)に付着している水(蒸気、水滴)は、
図5の破線矢印方向Dに示すように、蒸気圧力を受けて前記腹面20上を移動し、前記スリット15から前記空間14中に流入する。前記空間14中に流入した水は、前記ロータ軸6の径方向Cに前記シュラウド11側に流れ、
図3中の実線矢印方向Eに示すように、前記開口16から外部に流出(排出)する。
【0034】
「静翼7の構成の説明」
以下、実施形態1における蒸気タービン1の静翼7の構成について説明する。前記静翼7は、腹側部材17(
図7(A)参照)と、背側部材18(
図7(B)参照)と、板ばね部材19(
図6参照)と、を備えるものである。
【0035】
前記腹側部材17は、
図7(A)のプロファイルに示すように、板金をプレス加工して形成される。前記腹側部材17には、前記スリット15が設けられている。前記背側部材18は、
図7(B)のプロファイルに示すように、板金をプレス加工して形成される。前記板ばね部材19は、
図6に示すように、板金(バネ鋼)をプレス加工して形成される。前記腹側部材17および前記背側部材18および前記板ばね部材19は、3次元曲面をなすものである。
【0036】
図5に示すように、前記ロータ軸6の軸方向Bの断面形状において、前記腹側部材17は、外面である腹面20から内面21側に凸となるように湾曲している。前記背側部材18は、内面22から外面である背面23側に凸となるように湾曲している。前記腹側部材17の湾曲(反り)と、前記背側部材18の湾曲(反り)とは、異なっている。この結果、前記腹側部材17の前縁部24と前記背側部材18の前縁部24とを、および、前記腹側部材17の後縁部25と前記背側部材18の後縁部25とを、溶接26によりそれぞれ固定する。すると、前記腹側部材17および前記背側部材18からなる翼部材の内部には、前記空間14が形成される。
【0037】
前記板ばね部材19は、位置決め部27と、弾性接触部28と、連結部29と、から構成されている。前記板ばね部材19は、この例では、1ピースから構成されている。前記位置決め部27は、前記板ばね部材19の中央部において、前記翼部材17、18(前記腹側部材17および前記背側部材18)の長手方向(前記ロータ軸6の径方向C)に設けられている。前記弾性接触部28は、前記板ばね部材19の左右両側部において、前記翼部材17,18の長手方向に設けられている。前記連結部29は、中央部の前記位置決め部27と左右両側部の前記弾性接触部28との間に設けられていて、前記位置決め部27と前記弾性接触部28とを連結するものである。前記弾性接触部28および前記連結部29は、たとえばレザー加工などにより、前記翼部材17、18の長手方向に複数個、この例では、9個にほぼ同等に(すなわち、前記弾性接触部28と前記背側部材18の内面22との接触面積がほぼ同等となるように)分割されている。前記弾性接触部28および前記連結部29を複数個(9個)分割している溝32の幅(前記翼部材17、18の長手方向の長さ)は、ほぼ同等である。
【0038】
以下、前記腹側部材17と前記背側部材18と前記板ばね部材19とを備える前記静翼7の組立工程について説明する。
【0039】
まず、
図7(A)、
図7(B)、
図6に示すように、前記腹側部材17と前記背側部材18と前記板ばね部材19とをプレス加工により形成する。つぎに、
図8に示すように、前記腹側部材17の内面21上に前記板ばね部材19の前記位置決め部27を載置する。前記腹側部材17の内面21と前記板ばね部材19の前記位置決め部27とを溶接(スポット溶接あるいはプラグ溶接)30により位置決めする。
【0040】
それから、位置決めした前記板ばね部材19の前記弾性接触部28の上に前記背側部材18の内面22を載置する。このとき、弾性変形する前の前記弾性接触部28(
図5中の二点鎖線参照)が弾性変形した後の前記弾性接触部28(
図5中の実線参照)よりも前記背側部材18側に位置するので、前記背側部材18の内面22が前記板ばね部材19の前記弾性接触部28の左右両先端に当接している。
【0041】
そして、
図9に示すように、前記背側部材18を前記腹側部材17側に押し付けて、前記板ばね部材19の前記弾性接触部28を
図5中の二点鎖線の状態から
図5中の実線の状態に弾性変形させる。このとき、前記腹側部材17の内面21と前記板ばね部材19の前記位置決め部27とが溶接30により位置決めされているので、前記腹側部材17と前記板ばね部材19との相対位置がずれるようなことはない。
【0042】
この状態で、前記腹側部材17の前縁部24と前記背側部材18の前縁部24とを、および、前記腹側部材17の後縁部25と前記背側部材18の後縁部25とを、溶接26によりそれぞれ固定する。この結果、
図5に示すように、前記板ばね部材19は、前記翼部材17、18の前記空間14内に配置されている。前記弾性接触部28は、前記翼部材17、18の内面21、22、この例では、前記背側部材18の内面22に弾性接触している。
【0043】
「静翼7の作用の説明」
この実施形態1における蒸気タービンの静翼は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0044】
蒸気タービン1の運転中において、静翼7の腹側部材17および背側部材18が弾性変形する。すると、背側部材18の内面22と板ばね部材19の弾性接触部28との間において摩擦が発生する。この摩擦により、静翼7の腹側部材17および背側部材18の弾性変形が減衰される。この結果、静翼7において生じる自励振動が抑制される。
【0045】
「蒸気タービン1の効果および静翼7の効果の説明」
この実施形態1における蒸気タービン1およびこの実施形態1における蒸気タービンの静翼7は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0046】
この実施形態1における蒸気タービン1およびこの実施形態1における蒸気タービンの静翼7は、板ばね部材19の弾性接触部28および連結部29が翼部材17、18の長手方向に複数個、この例では、9個に分割されているので、翼部材17、18および板ばね部材19の製造公差を吸収することができる。これにより、この実施形態1における蒸気タービン1およびこの実施形態1における蒸気タービンの静翼7は、翼部材17、18の長手方向に複数個、この例では、9個に分割されている板ばね部材19の弾性接触部28が翼部材17、18の内面21、22、この例では、背側部材18の内面22に片当たりすることなく設計通りに弾性接触することができる。この結果、この実施形態1における蒸気タービン1およびこの実施形態1における蒸気タービンの静翼7は、設計通りの弾性接触面積が得られて、静翼7に生じる自励振動を確実に抑制することができる。
【0047】
ここで、この実施形態1における蒸気タービン1およびこの実施形態1における蒸気タービンの静翼7においては、板ばね部材19の弾性接触部28を溝32により複数個(9個)に分割するので、弾性接触部28自体の面積が多少減らされるが、複数個(9個)に分割された弾性接触部28がほぼ全面に亘って背側部材18の内面22に弾性接触するので、分割しなかった弾性接触部が背側部材18の内面22に片当たりして部分的に弾性接触する従来構造と比較して、複数個(9個)に分割された弾性接触部28と背側部材18の内面22との弾性接触面積が従来構造の分割しなかった弾性接触部と背側部材18の内面22との弾性接触面積よりも広い。
【0048】
しかも、この実施形態1における蒸気タービン1およびこの実施形態1における蒸気タービンの静翼7は、板ばね部材19の弾性接触部28が翼部材17、18の内面21、22、この例では、背側部材18の内面22に片当たりすることがないので、板ばね部材19の弾性接触部28のばね反力が設計通りとなる。この結果、この実施形態1における蒸気タービン1およびこの実施形態1における蒸気タービンの静翼7は、翼部材17、18と板ばね部材19との組立時において、押さえつけ作業が容易となる。
【0049】
その上、この実施形態1における蒸気タービン1およびこの実施形態1における蒸気タービンの静翼7は、板ばね部材19の弾性接触部28が翼部材17、18の内面21、22、この例では、背側部材18の内面22に片当たりすることがないので、板ばね部材19の弾性接触部28のばね反力が設計通りとなる。この結果、この実施形態1における蒸気タービン1およびこの実施形態1における蒸気タービンの静翼7は、翼部材17、18と板ばね部材19とを組み立てた際に、片当たりによる翼部材17、18の表面の変形が発生するようなことはない。
【0050】
この実施形態1における蒸気タービン1およびこの実施形態1における蒸気タービンの静翼7は、板ばね部材19が1ピースから構成されているので、部品点数が増加することなく、かつ、翼部材17、18と板ばね部材19との組立作業が容易となる。
【0051】
この実施形態1における蒸気タービン1およびこの実施形態1における蒸気タービンの静翼7は、板ばね部材19の弾性接触部28が腹側部材17の内面21よりも広い背側部材18の内面22に弾性接触しているので、板ばね部材19の弾性接触部28と背側部材18の内面22との弾性接触面積を広くすることができる。この結果、この実施形態1における蒸気タービン1およびこの実施形態1における蒸気タービンの静翼7は、静翼7に生じる自励振動をさらに確実に抑制することができる。
【0052】
[実施形態2]
図10は、この発明にかかる蒸気タービンの静翼の実施形態2を示す。以下、この実施形態2における蒸気タービンの静翼について説明する。図中、
図1〜
図9と同符号は、同一のものを示す。
【0053】
前記の実施形態1における蒸気タービンの静翼7は、板ばね部材19が1ピースから構成されているものである。これに対して、この実施形態2における蒸気タービンの静翼7は、
図10に示すように、板ばね部材190が翼部材17、18の長手方向に複数個、この例では、9個のピースにほぼ同等に(すなわち、弾性接触部28と背側部材18の内面22との接触面積がほぼ同等となるように)分割されている。すなわち、前記板ばね部材190の前記弾性接触部28および前記連結部29と共に前記位置決め部27が前記溝32により複数個(9個)分割されている。
【0054】
この実施形態2における蒸気タービンの静翼7は、前記の構成からなるので、前記の実施形態1における蒸気タービンの静翼7とほぼ同等の作用効果を達成することができる。
【0055】
特に、この実施形態2における蒸気タービンの静翼7は、板ばね部材190が翼部材17、18の長手方向に複数個、この例では、9個のピースに分割されているので、1ピースの板ばね部材19と比較して、自由度が大きくなり、その分、翼部材17、18の形状や製作交差(製作ばらつき)に対する吸収性(追従性)が良くなり、設計通りの弾性接触面積を容易にかつ確実に確保することができる。
【0056】
[実施形態3]
図11(A)、(B)は、この発明にかかる蒸気タービンの静翼の実施形態3を示す。以下、この実施形態3における蒸気タービンの静翼について説明する。図中、
図1〜
図10と同符号は、同一のものを示す。
【0057】
前記の実施形態1、2における蒸気タービンの静翼7は、板ばね19,190を幅がほぼ同等の溝32により複数個(9個)に分割し、その複数個(9個)に分割されている板ばね部材19、190の弾性接触部28と背側部材18の内面22との接触面積がほぼ同等に(なお、チップ側の弾性接触部28の接触面積は他の弾性接触部28の接触面積と若干異なる)構成されているものである。これに対して、この実施形態3における蒸気タービンの静翼7は、
図11(A)、(B)に示すように、翼部材17、18の長手方向の中央部側の弾性接触部28と背側部材18の内面22との弾性接触面積が、翼部材17、18の長手方向の両端部側(チップ側およびベース側)の弾性接触部28と背側部材18の内面22との弾性接触面積よりも広くなるように、構成されている。弾性接触部28および連結部29を、あるいは、位置決め部27および弾性接触部28および連結部29を、複数個(9個)分割している溝33の幅(前記翼部材17、18の長手方向の長さ)において、翼部材17、18の長手方向の中央部側の溝33の幅が翼部材17、18の長手方向の両端部側の溝33の幅よりも狭い。
図11(A)に示す板ばね部材191は、前記の実施形態1における蒸気タービンの静翼7と同様に1ピースから構成されている。
図11(B)に示す板ばね部材192は、前記の実施形態2における蒸気タービンの静翼7と同様に複数個(9個)のピースから構成されている。
【0058】
この実施形態3における蒸気タービンの静翼7は、前記の構成からなるので、前記の実施形態1、2における蒸気タービンの静翼7とほぼ同等の作用効果を達成することができる。
【0059】
特に、この実施形態3における蒸気タービンの静翼7は、翼部材17、18の長手方向の中央部側の弾性接触部28と背側部材18の内面22との弾性接触面積が翼部材17、18の長手方向の両端部側の弾性接触部28と背側部材18の内面22との弾性接触面積よりも広いので、効果的に自励振動を抑制することができる。ここで、対象としている振動モード(たとえば、両端固定の曲げモードを想定した振動モード)に対して、振幅の大きいところに板ばね部材を配置することが有効的(効果的)である。このために、振幅が大きい中央部の弾性接触面積を広げることにより、効果的に自励振動を抑制することができる。
【0060】
[実施形態4]
図12(A)、(B)は、この発明にかかる蒸気タービンの静翼の実施形態4を示す。以下、この実施形態4における蒸気タービンの静翼について説明する。図中、
図1〜
図11と同符号は、同一のものを示す。
【0061】
前記の実施形態3における蒸気タービンの静翼7は、翼部材17、18の長手方向の中央部側の溝33の幅が翼部材17、18の長手方向の両端部側の溝33の幅よりも狭い溝33により板ばね191、192を複数個(9個)に分割し、その複数個(9個)に分割されている板ばね部材191、192の弾性接触部28と背側部材18の内面22との接触面積において、翼部材17、18の長手方向の中央部側の弾性接触部28と背側部材18の内面22との弾性接触面積が、翼部材17、18の長手方向の両端部側の弾性接触部28と背側部材18の内面22との弾性接触面積よりも広くなるように、構成するものである。これに対して、この実施形態4における蒸気タービンの静翼7は、
図12(A)、(B)に示すように、幅がほぼ同等の溝32により板ばね193、194を複数個(9個)に分割し、その複数個(9個)に分割されている板ばね部材193、194の弾性接触部28と背側部材18の内面22との接触面積において、翼部材17、18の長手方向の中央部側の弾性接触部28と背側部材18の内面22との弾性接触面積が、翼部材17、18の長手方向の両端部側の弾性接触部28と背側部材18の内面22との弾性接触面積よりも広くなるように、構成するものである。
図12(A)に示す板ばね部材193は、前記の実施形態1における蒸気タービンの静翼7および前記の
図11(A)に示す実施形態3における蒸気タービンの静翼7と同様に1ピースから構成されている。
図12(B)に示す板ばね部材194は、前記の実施形態2における蒸気タービンの静翼7および前記の
図11(B)に示す実施形態3における蒸気タービンの静翼7と同様に複数個(9個)のピースから構成されている。
【0062】
この実施形態4における蒸気タービンの静翼7は、前記の構成からなるので、前記の実施形態1、2、3における蒸気タービンの静翼7とほぼ同等の作用効果を達成することができる。
【0063】
[実施形態5]
図13(A)、(B)は、この発明にかかる蒸気タービンの静翼の実施形態5を示す。以下、この実施形態5における蒸気タービンの静翼について説明する。図中、
図1〜
図12と同符号は、同一のものを示す。
【0064】
前記の実施形態1、2、3、4における蒸気タービンの静翼7は、1ピースの板ばね部材19、191、193の弾性接触部28および連結部29を複数個(9個)に分割し、また、板ばね部材190、192、194の位置決め部27および弾性接触部28および連結部29を複数個(9個)のピースに分割するものである。これに対して、この実施形態5における蒸気タービンの静翼7は、
図13(A)に示すように、翼部材17、18の長手方向の中央部側の溝33の幅が翼部材17、18の長手方向の両端部側の溝33の幅よりも狭い溝33により、板ばね195を複数個(3個)のピースに分割し、かつ、複数個(3個)のピースの板ばね195の弾性接触部28および連結部29を複数個(3個)にそれぞれ分割したものである。また、この実施形態5における蒸気タービンの静翼7は、
図13(B)に示すように、幅がほぼ同等の溝32により、板ばね196を複数個(3個)のピースに分割し、かつ、複数個(3個)のピースの板ばね196の弾性接触部28および連結部29を複数個(3個あるいは4個)にそれぞれ分割したものである。
【0065】
この実施形態5における蒸気タービンの静翼7は、前記の構成からなるので、前記の実施形態1、2、3、4における蒸気タービンの静翼7とほぼ同等の作用効果を達成することができる。
【0066】
[実施形態6]
図14は、この発明にかかる蒸気タービンの静翼の実施形態6を示す。以下、この実施形態6における蒸気タービンの静翼について説明する。図中、
図1〜
図13と同符号は、同一のものを示す。
【0067】
前記の実施形態1、2、3、4、5における蒸気タービンの静翼7は、板ばね部材19〜196を腹側部材170の内面21に溶接30により位置決めするものである。これに対して、この実施形態6における蒸気タービンの静翼7は、腹側部材170の内面21と板ばね部材19〜196の位置決め部27との位置決め構造が凹凸嵌合の位置決め構造からなるものである。すなわち、腹側部材170の内面21のうち板ばね部材19〜196の位置決め部27と位置決めする箇所に、位置決め凹部31を設ける。また、板ばね部材19〜196の位置決め部27を位置決め凸部とする。板ばね部材19〜196の位置決め凸部としての位置決め部27を腹側部材170の内面21の位置決め凹部31に嵌合することにより、板ばね部材19〜196と腹側部材170との相対位置が決められる。ここで、板ばね部材19〜196と腹側部材170および背側部材18(翼部材)とを組み立てる際に、板ばね部材19〜196が弾性変形した状態で腹側部材170と背側部材18との間に挟まれるので、板ばね部材19〜196が腹側部材170、背側部材18に対して位置ずれする虞がない。
【0068】
この実施形態6における蒸気タービンの静翼7は、前記の構成からなるので、前記の実施形態1、2、3、4、5における蒸気タービンの静翼7とほぼ同等の作用効果を達成することができる。
【0069】
特に、この実施形態6における蒸気タービンの静翼7は、溶接作業を省略することにより、溶接ひずみがなく、その分、板ばね部材19〜196の弾性接触部28と背側部材18の内面22との弾性接触面積を広くすることができるので、静翼7に生じる自励振動をさらに確実に抑制することができる。
【0070】
しかも、この実施形態6における蒸気タービンの静翼7は、溶接作業を省略することにより、組立工程を短縮することができ、製造コストを安価にすることができる。
【0071】
「実施形態1、2、3、4、5、6以外の例の説明」
なお、前記の実施形態1〜6においては、板ばね部材19〜196の弾性接触部28が背側部材18の内面22に弾性接触するものである。ところが、この発明においては、板ばね部材の弾性接触部が腹側部材の内面に弾性接触し、あるいは、板ばね部材の弾性接触部が腹側部材の内面および背側部材の内面の双方に弾性接触しても良い。