特許第5766864号(P5766864)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5766864樹脂組成物、樹脂成形品、および樹脂成形品の製造方法
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  • 特許5766864-樹脂組成物、樹脂成形品、および樹脂成形品の製造方法 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5766864
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂成形品、および樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20150730BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20150730BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20150730BHJP
   C08L 55/02 20060101ALI20150730BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20150730BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08K7/14
   C08L25/04
   C08L55/02
   C08K3/22
   C08J7/00 302
   C08J7/00CET
   C08J7/00CFD
【請求項の数】17
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-207110(P2014-207110)
(22)【出願日】2014年10月8日
(65)【公開番号】特開2015-108123(P2015-108123A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2014年12月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-220967(P2013-220967)
(32)【優先日】2013年10月24日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】茂木 篤志
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−144768(JP,A)
【文献】 特表2010−536947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00−20/08
C08K 7/14
C08L 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂80〜30重量%と、スチレン系樹脂20〜70重量%とからなる樹脂成分100重量部に対し、平均繊維長が1〜10mmであるチョップドストランド0.5〜8重量部と、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤を含み、
前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤が、金属成分としてアンチモンと錫を含み、かつ、アンチモンよりも錫の含有量の方が多い、樹脂組成物。
【請求項2】
前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤の配合量が、前記樹脂成分100重量部に対し、1〜30重量部である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記チョップドストランドが、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、およびシリコーン樹脂から選択される少なくとも1種の収束剤で表面処理されている、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記収束剤がエポキシ樹脂を含む、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記収束剤が、チョップドストランドの0.1〜5.0重量%である、請求項3または4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤が、金属成分としてアンチモンと錫の両方を含み、かつ、金属成分の70重量%以上が錫である、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤が、金属成分としてアンチモンと錫の両方を含み、かつ、金属成分中のアンチモンと錫の合計量が金属成分の90重量%以上である請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物をコンパウンドしてなる樹脂ペレット。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物または請求項に記載の樹脂ペレットを成形してなる樹脂成形品。
【請求項10】
さらに、表面にメッキ層を有する、請求項に記載の樹脂成形品。
【請求項11】
前記メッキ層がアンテナとしての性能を保有する、請求項10に記載の樹脂成形品。
【請求項12】
携帯電子機器部品である、請求項11のいずれか1項に記載の樹脂成形品。
【請求項13】
請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物を、二軸押出機を用いてコンパウンドすることを含む、樹脂ペレットの製造方法。
【請求項14】
チョップドストランドは、メインフィーダーから供給する、請求項13に記載の樹脂ペレットの製造方法。
【請求項15】
請求項に記載の樹脂成形品の表面に、レーザーを照射後、金属を適用して、メッキ層を形成することを含む、メッキ層付樹脂成形品の製造方法。
【請求項16】
前記メッキ層が銅メッキ層である、請求項1に記載のメッキ層付樹脂成形品の製造方法。
【請求項17】
請求項1または1に記載のメッキ層付樹脂成形品の製造方法を含む、アンテナを有する携帯電子機器部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーダイレクトストラクチャリング用樹脂組成物(以下、単に、「樹脂組成物」ということがある)に関する。さらに、前記樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品および、前記樹脂成形品の表面に、メッキ層を形成したメッキ層付樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンを含む携帯電話の開発に伴い、携帯電話の内部にアンテナを製造する方法が種々検討されている。特に、携帯電話に3次元設計ができるアンテナを製造する方法が求められている。このような3次元アンテナを形成する技術の1つとして、レーザーダイレクトストラクチャリング(以下、「LDS」ということがある)技術が注目されている。LDS技術は、例えば、LDS添加剤を含む樹脂成形品の表面にレーザーを照射し、レーザーを照射した部分のみを活性化させ、前記活性化させた部分に金属を適用することによってメッキ層を形成する技術である。この技術の特徴は、接着剤などを使わずに、樹脂基材表面に直接にアンテナ等の金属構造体を製造できる点にある。かかるLDS技術は、例えば、特許文献1〜4等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2011/095632号パンフレット
【特許文献2】国際公開WO2011/076729号パンフレット
【特許文献3】国際公開WO2011/076730号パンフレット
【特許文献4】国際公開WO2012/128219号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レーザーダイレクトストラクチャリング用樹脂組成物を形成してなる樹脂成形品は、LDS添加剤を含まない樹脂組成物を成形してなる成形品と比べて機械物性が低下する傾向にある。これは、LDS添加剤は、LDS加工のためには必須であるが、最終の樹脂成形品中では微細異物となるためである。
本発明は、かかる課題を解決することを目的としたものであって、LDS添加剤を配合しても、機械的強度を低下させない樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる状況のもと、本発明者が鋭意検討を行った結果、平均繊維長が1〜10mmのチョップドストランドを少量用いることにより、この点を解決しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。具体的には、以下の手段<1>により、好ましくは<2>〜<16>により、上記課題は解決された。
【0006】
<1>ポリカーボネート樹脂80〜30重量%と、スチレン系樹脂20〜70重量%とからなる樹脂成分100重量部に対し、平均繊維長が1〜10mmであるチョップドストランド0.5〜8重量部と、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤を含む樹脂組成物。
<2>前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤の配合量が、前記樹脂成分100重量部に対し、1〜30重量部である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記チョップドストランドがエポキシ樹脂で表面処理されている、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤が、金属成分としてアンチモンと錫を含み、かつ、アンチモンよりも錫の含有量の方が多い、<1>〜<3>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<5>前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤が、金属成分としてアンチモンと錫を含み、かつ、金属成分の70重量%以上が錫である、<1>〜<3>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<6>前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤が、金属成分としてアンチモンと錫の両方を含み、かつ、金属成分中のアンチモンと錫の合計量が90重量%以上である<1>〜<3>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<7><1>〜<6>のいずれかに記載の樹脂組成物をコンパウンドしてなる樹脂ペレット。
<8><1>〜<6>のいずれかに記載の樹脂組成物または<7に記載の樹脂ペレットを成形してなる樹脂成形品。
<9>さらに、表面にメッキ層を有する、<8>に記載の樹脂成形品。
<10>前記メッキ層がアンテナとしての性能を保有する、<8>に記載の樹脂成形品。
<11>携帯電子機器部品である、<8>〜<10>のいずれかに記載の樹脂成形品。
<12><1>〜<6>のいずれかに記載の樹脂組成物を、二軸押出機を用いてコンパウンドすることを含む、樹脂ペレットの製造方法。
<13>チョップドストランドは、メインフィーダーから供給する、<12>に記載の樹脂ペレットの製造方法。
<14><8>に記載の樹脂成形品の表面に、レーザーを照射後、金属を適用して、メッキ層を形成することを含む、メッキ層付樹脂成形品の製造方法。
<15>前記メッキ層が銅メッキ層である、<14>に記載のメッキ層付樹脂成形品の製造方法。
<16><14>または<15>に記載のメッキ層付樹脂成形品の製造方法を含む、アンテナを有する携帯電子機器部品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、メッキ性に優れ、機械的強度に優れた樹脂組成物を提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】樹脂成形品の表面にメッキを設ける工程を示す概略図である。図1中、1は樹脂成形品を、2はレーザーを、3はレーザーが照射された部分を、4はメッキ液を、5はメッキ層をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0010】
本発明の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂80〜30重量%と、スチレン系樹脂20〜70重量%とからなる樹脂成分100重量部に対し、平均繊維長が1〜10mmであるチョップドストランド0.5〜8重量部と、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤を含むことを特徴とする。このような構成とすることにより、高い機械的強度を有する樹脂組成物とすることができる。
以下、本発明の樹脂組成物の詳細について説明する。
【0011】
<ポリカーボネート樹脂>
本発明で用いるポリカーボネート樹脂としては特に制限されず、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、芳香族−脂肪族ポリカーボネートのいずれも用いることができる。中でも芳香族ポリカーボネートが好ましく、さらに、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させることによって得られる熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体がより好ましい。
【0012】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−P−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。さらに、難燃性が高い組成物を調製する目的で、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物、またはシロキサン構造を有する両末端フェノール性OH基含有のポリマーもしくはオリゴマー等を、使用することができる。
【0013】
本発明で用いるポリカーボネート樹脂の好ましい例には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体;が含まれる。
【0014】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、14,000〜30,000であるのが好ましく、15,000〜28,000であるのがより好ましく、16,000〜26,000であるのがさらに好ましい。粘度平均分子量が前記範囲であると、機械的強度がより良好となり、且つ成形性もより良好となるので好ましい。
【0015】
ポリカーボネート樹脂の製造方法については、特に限定されるものではなく、本発明には、ホスゲン法(界面重合法)、および溶融法(エステル交換法)等の、いずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、本発明では、一般的な溶融法の製造工程を経た後に、末端基のOH基量を調整する工程を経て製造されたポリカーボネート樹脂を使用してもよい。
【0016】
さらに、本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、バージン原料としてのポリカーボネート樹脂のみならず、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂であってもよい。
【0017】
その他、本発明で用いるポリカーボネート樹脂については、例えば、特開2012−072338号公報の段落番号0018〜0066の記載を参酌でき、その内容は本願明細書に組み込まれる。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。
本発明の樹脂組成物において、全樹脂成分中、ポリカーボネート樹脂の割合は、下限値が30重量%以上であり、45重量%以上が好ましく、50重量%以上がさらに好ましく、52重量%以上とすることもできる。上限値は、80重量%以下が好ましく、メッキ性向上の観点からは、70重量%以下とすることもできる。
【0019】
<スチレン系樹脂>
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分として、ポリカーボネート樹脂の他にスチレン系樹脂を含む。スチレン樹脂を配合することにより、シャルピー衝撃強度を向上させることができる。
【0020】
スチレン系樹脂とは、スチレン系単量体からなるスチレン系重合体、スチレン系単量体と他の共重合可能なビニル系単量体との共重合体、ゴム質重合体の存在下でスチレン系単量体を重合させてなる重合体、ゴム質重合体の存在下でスチレン系単量体およびスチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体を重合させてなる共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体をいう。これらの中でも、ゴム質重合体の存在下にスチレン系単量体を又はスチレン系単量体と他の共重合可能なビニル系単量体との共重合体を用いることが好ましい。
【0021】
スチレン系単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、エチルビニルベンゼン、ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン等のスチレン誘導体が挙げられ、中でもスチレンが好ましい。尚、これらは単独で、又は2種類以上を混合して使用することもできる。
【0022】
上記のスチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、へキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、へキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸アリールエステル、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸アリールエステル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、マレイミド、N,N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物等が挙げられる。
【0023】
さらにスチレン系単量体と共重合可能なゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンランダム共重合体及びブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエンランダム共重合体及びブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルとブタジエンとの共重合体、ポリブタジエン−ポリイソプレンジエン系共重合体、エチレン−イソプレンランダム共重合体及びブロック共重合体、エチレン−ブテンランダム共重合体及びブロック共重合体等のエチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体等のエチレンとα,β−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキサジエン共重合体等のエチレン−プロピレン−非共役ジエンターポリマー、アクリル系ゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレート又はメタクリレートゴムとからなる複合ゴム等が挙げられる。
【0024】
この様なスチレン系樹脂は、例えば、スチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)、スチレン−メチルメタクリレート共重合体(MS樹脂)、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)が好ましく、より好ましくはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)であり、特に好ましいのはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)である。
【0026】
上記のスチレン系樹脂は、乳化重合、溶液重合、塊状重合、懸濁重合あるいは塊状・懸濁重合等の方法により製造されるが、本発明においては、いわゆるスチレン系重合体、又はスチレン系ランダム共重合体あるいはブロック共重合体の場合は、塊状重合、懸濁重合又は塊状・懸濁重合により製造されたものが好適であり、スチレン系グラフト共重合体の場合は塊状重合、塊状・懸濁重合あるいは乳化重合によって製造されたものが好適である。
【0027】
本発明において、特に好適に用いられるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)とは、ブタジエンゴム成分にアクリロニトリルとスチレンをグラフト重合した熱可塑性グラフト共重合体とアクリロニトリルとスチレンの共重合体の混合物である。ブタジエンゴム成分は、ABS樹脂成分100重量%中、5〜40重量%であることが好ましく、中でも10〜35重量%、特に13〜25重量%であることが好ましい。またゴム粒子径は0.1〜5μmであることが好ましく、中でも0.2〜3μm、さらに0.3〜1.5μm、特に0.4〜0.9μmであることが好ましい。ゴム粒子径の分布は、単一分布でも二山以上の複数の分布を有するもののいずれであってもよい。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、スチレン系樹脂を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。
本発明の樹脂組成物において、全樹脂成分中、スチレン系樹脂の割合が、20重量%以上であり、30重量%以上とすることもできる。上限値としては、70重量%以下であり、55重量%以下であることが好ましく、50重量%以下がより好ましく、48重量%以下とすることもできる。
【0029】
さらに本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の樹脂成分を含んでいてもよい。しかしながら、他の樹脂は全樹脂成分の5重量%以下であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、組成物の合計の60重量%以上が樹脂成分であることが好ましく、70重量%以上が樹脂成分であることがより好ましい。
【0030】
<チョップドストランド>
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分100重量部に対して0.5〜8重量部の平均繊維長1〜10mmのチョップドストランドを含む。少量のチョップドストランドを含むことで、機械的強度に優れた樹脂組成物を提供可能となる。
【0031】
本発明で用いるチョップドストランドの平均繊維長は、1〜5mmが好ましく、1〜4mmがさらに好ましい。平均繊維長が1mm以上であると、樹脂組成物の機械的強度を向上させることができ、10mm以下であると、樹脂組成物の成形加工性を向上させることができる。
また、チョップドストランドの平均繊維径は、1〜20μmが好ましく、10〜20μmがより好ましく、10〜15μmがさらに好ましい。
なお、本発明において、平均繊維長は重量平均繊維長を表す。
【0032】
本発明で用いるチョップドストランドとしては、ストランド(連続した1本の繊維を数百本〜数千本束ねたもの)を所定の長さに切断したものであり、繊維としては、ガラス繊維、アルミナ繊維、チタン酸カリウムウィスカー、スチール繊維、ステンレス繊維等が挙げられるが、特に、ガラス繊維が好ましい。
ガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Sガラスなどのガラス組成からなり、特に、Eガラス(無アルカリガラス)がポリカーボネート樹脂に悪影響を及ぼさないので好ましい。
【0033】
チョップドストランドとしては、旭ファイバーグラスより、「グラスロンチョップドストランド」や「グラスロンミルドファイバー」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。ガラス繊維は、形態が異なるものを併用することもできる。
【0034】
また、本発明ではガラス繊維として、異形断面形状を有するものも好ましい。この異形断面形状とは、繊維の長さ方向に直角な断面の長径をD2、短径をD1とするときの長径/短径比(D2/D1)で示される扁平率が、例えば、1.5〜10であり、中でも2.5〜10、更には2.5〜8、特に2.5〜5であることが好ましい。かかる扁平ガラスについては、特開2011−195820号公報の段落番号0065〜0072の記載を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0035】
本発明の樹脂組成物におけるチョップドストランドの配合量は、樹脂成分100重量部に対し、0.5〜8重量部であり、1〜8重量部が好ましく、2〜7重量部がより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、チョップドストランドを1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。チョップドストランドを配合することにより、機械的強度を向上できるとともに、メッキ性も向上する傾向にある。
【0036】
<収束剤>
本発明の樹脂組成物に配合するチョップドストランドは、収束剤で被覆され表面処理されているものが好ましい。収束剤の種類は特に定めるものではない。収束剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
チョップドストランドは、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、およびシリコーン樹脂から選択される少なくとも1種の収束剤で表面処理されていることが好ましく、エポキシ樹脂で表面処理されていることがより好ましい。このような収束剤は、ポリカーボネート樹脂を含む本発明の樹脂成分との密着性が弱い。そのため、このようなチョップドストランドを含む樹脂組成物では、チョップドストランドと樹脂成分との間に隙間が形成され、かかる隙間にメッキ液が入り込み、メッキ性をより向上させることが可能になる。このような収束剤の中でも、高い機械的強度の観点から、ウレタン樹脂が好ましい。
本発明の樹脂組成物における収束剤の配合量は、チョップドストランドの0.1〜5.0重量%であることが好ましく、1.0〜5.0重量%であることがより好ましい。本発明の樹脂組成物は、収束剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。
【0038】
<レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(LDS添加剤)>
本発明の樹脂組成物は、LDS添加剤を含む。
本発明におけるLDS添加剤は、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス製、ユーピロン(登録商標)、S−3000F)100重量部に対し、LDS添加剤と考えられる添加剤を4重量部添加し、1064nmのYAGレーザーを用い、出力2.6〜13Wの範囲のいずれか、スキャン速度1〜2m/sのいずれか、周波数10〜50μsの範囲のいずれかの条件でレーザー照射により印字し、続いて、試験片を硫酸にて脱脂後、キザイ製THPアルカリアクチ及びTHPアルカリアクセで処理後、キザイ製SELカッパ―にてメッキ処理を適用したときに、メッキを形成できる化合物をいう。本発明で用いるLDS添加剤は、合成品であってもよいし、市販品を用いてもよい。また、市販品はLDS添加剤として市販されているものの他、本発明におけるLDS添加剤の要件を満たす限り、他の用途として販売されている物質であってもよい。
【0039】
本発明の組成物における、LDS添加剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対し、1〜30重量部であることが好ましく、3〜15重量部であることがより好ましく、3〜9重量部であることがさらに好ましい。LDS添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。2種類以上用いる場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0040】
以下に、本発明で用いるLDS添加剤の好ましい実施形態を述べる。このような実施形態のLDS添加剤を用いることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。しかしながら、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0041】
本発明で用いるLDS添加剤の第一の実施形態は、銅を含むLDS添加剤である。第一の実施形態で用いるLDS添加剤は、銅を含む酸化物であることが好ましく、銅とクロムを含む酸化物(銅クロム酸化物)であることがより好ましい。このようなLDS添加剤としては、例えば、CuCr24やCu3(PO42Cu(OH)2が挙げられ、特にCuCr24が好ましい。このように、銅を含む酸化物をLDS添加剤として用いることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。第一の実施形態で用いるLDS添加剤における銅の含有量は、20〜95重量%であることが好ましい。
【0042】
第一の実施形態で用いるLDS添加剤のモース硬度は、5.5以上であることが好ましく、5.5〜6.5であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、樹脂成形品の機械的強度をより向上させることができる。
第一の実施形態で用いるLDS添加剤は、平均粒径が0.01〜50μmであることが好ましく、0.05〜30μmであることがより好ましい。このような平均粒径とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
【0043】
本発明で用いるLDS添加剤の第二の実施形態は、アンチモンおよび/または錫を含むLDS添加剤である。本実施形態におけるLDS添加剤中の金属成分のうちアンチモンまたは錫の含有量は、それぞれ、1〜95重量%であることが好ましく、1.5〜60重量%がより好ましい。アンチモンと錫の両方を含む態様では、LDS添加剤の金属成分中、アンチモンと錫の合計量が90重量%以上であることが好ましく、90〜100重量%がより好ましい。
【0044】
LDS添加剤の第二の実施形態では、アンチモンと錫を含むLDS添加剤が好ましく例示される。本実施形態では、アンチモンと錫の両方を含み(より好ましくは、酸化アンチモンおよび酸化錫を含み)、かつ、アンチモンよりも錫の含有量の方が多い態様がより好ましく、アンチモンと錫の両方を含み(より好ましくは、酸化アンチモンおよび酸化錫を含み)、かつ、金属成分の70重量%以上が錫である態様がさらに好ましい。
本発明で用いられるLDS添加剤として、アンチモンがドープされた錫、アンチモンがドープされた酸化錫、酸化アンチモンがドープされた酸化錫が例示できる。
【0045】
<エラストマー>
本発明の樹脂組成物は、エラストマーを含む。エラストマーを含有することで、樹脂組成物の耐衝撃性を改良することができる。本発明に用いるエラストマーとしては、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)、SBS、SEBSと呼ばれているスチレン−ブタジエン系トリブロック共重合体とその水添物、SPS、SEPSと呼ばれているスチレン−イソプレン系トリブロック共重合体とその水添物、TPOと呼ばれているオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系エラストマー、シロキサン系ゴム、アクリレート系ゴム等が挙げられる。エラストマーとしては、特開2012−251061号公報の段落番号0075〜0088に記載のエラストマー、特開2012−177047号公報の段落番号0101〜0107に記載のエラストマー等を用いることができ、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0046】
本発明に用いるエラストマーは、ゴム成分にこれと共重合可能な単量体成分とをグラフト共重合したグラフト共重合体が好ましい。グラフト共重合体の製造方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などのいずれの製造方法であってもよく、共重合の方式は一段グラフトでも多段グラフトであってもよい。
【0047】
ゴム成分は、ガラス転移温度が通常0℃以下、中でも−20℃以下が好ましく、更には−30℃以下が好ましい。ゴム成分の具体例としては、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブチルアクリレートやポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート共重合体などのポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴムなどのシリコーン系ゴム、ブタジエン−アクリル複合ゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN(Interpenetrating Polymer Network)型複合ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴムやエチレン−ブテンゴム、エチレン−オクテンゴムなどのエチレン−α−オレフィン系ゴム、エチレン−アクリルゴム、フッ素ゴムなど挙げることができる。これらは、単独でも2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、機械的特性や表面外観の面から、ポリブタジエンゴム、ポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴム、スチレン−ブタジエンゴムが好ましい。
【0048】
ゴム成分とグラフト共重合可能な単量体成分の具体例としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)などが挙げられる。これらの単量体成分は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、機械的特性や表面外観の面から、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステル化合物である。(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等を挙げることができる。
【0049】
ゴム成分を共重合したグラフト共重合体は、耐衝撃性や表面外観の点からコア/シェル型グラフト共重合体タイプのものが好ましい。なかでもポリブタジエン含有ゴム、ポリブチルアクリレート含有ゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム成分をコア層とし、その周囲に(メタ)アクリル酸エステルを共重合して形成されたシェル層からなる、コア/シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。上記コア/シェル型グラフト共重合体において、ゴム成分を40重量%以上含有するものが好ましく、60重量%以上含有するものがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル酸は、10重量%以上含有するものが好ましい。尚、本発明におけるコア/シェル型とは必ずしもコア層とシェル層が明確に区別できるものでは無なくてもよく、コアとなる部分の周囲にゴム成分をグラフト重合して得られる化合物を広く含む趣旨である。
【0050】
これらコア/シェル型グラフト共重合体の好ましい具体例としては、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(MABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体(MB)、メチルメタクリレート−アクリルゴム共重合体(MA)、メチルメタクリレート−アクリルゴム−スチレン共重合体(MAS)、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−(アクリル・シリコーンIPNゴム)共重合体、ポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートとを含むシリコーン−アクリル複合ゴム等が挙げられ、ポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートとを含むシリコーン−アクリル複合ゴムおよびメチルメタクリレート−ブタジエン共重合体(MB)が特に好ましい。このようなゴム質重合体は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0051】
このようなエラストマーとしては、例えば、ローム・アンド・ハース・ジャパン製の「パラロイド(登録商標、以下同じ)EXL2602」、「パラロイドEXL2603」、「パラロイドEXL2655」、「パラロイドEXL2311」、「パラロイドEXL2313」、「パラロイドEXL2315」、「パラロイドKM330」、「パラロイドKM336P」、「パラロイドKCZ201」、三菱レイヨン製の「メタブレン(登録商標、以下同じ)C−223A」、「メタブレンE−901」、「メタブレンS−2001」、「メタブレンSRK−200」、「メタブレンS−2030」カネカ製の「カネエース(登録商標、以下同じ)M−511」、「カネエースM−600」、「カネエースM−400」、「カネエースM−580」、「カネエースM−711」、「カネエースMR−01」、宇部興産製の「UBESTA XPA」等が挙げられる。
【0052】
エラストマーの配合量は、樹脂成分100重量部に対し、1〜20重量部であり、1〜15重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。本発明の樹脂組成物は、エラストマーを1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。
【0053】
<白色顔料>
本発明の樹脂組成物は白色顔料を含んでいてもよい。本発明では、白色顔料を添加することにより、樹脂成形品を着色することが可能になる。白色顔料としては、ZnS、ZnO、酸化チタンが例示され、硫化亜鉛および酸化チタンが好ましい。
【0054】
酸化チタンとしては、一般に市販されているもののなかで白色度と隠蔽性の点で、酸化チタンを80重量%以上含有するものを用いるのが好ましい。本発明で使用する酸化チタンとしては、例えば、一酸化チタン(TiO)、三酸化ニチタン(Ti23)、二酸化チタン(TiO2)などが挙げられ、これらのいずれを使用してもよいが、二酸化チタンが好ましい。また、酸化チタンとしては、ルチル型の結晶構造を有するものが好ましく使用される。
【0055】
白色顔料の平均一次粒子径は、1μm以下であることが好ましく、0.001〜0.5μmの範囲内であることがより好ましく、0.002〜0.1μmの範囲内であることがさらに好ましい。白色顔料の平均粒径をこのような範囲とし、配合量を後述の範囲内とすることにより、白色度が高く、表面反射率の高い成形品を与える樹脂組成物を得ることができる。
【0056】
白色顔料として無機顔料を用いる場合、表面処理を施したものを使用してもよい。本発明で用いる白色顔料はシロキサン化合物の少なくとも1種で表面処理された白色顔料であることが好ましい。この場合、シロキサン化合物の付着量は、白色顔料の0.1〜5重量%であることが好ましい。シロキサン化合物については、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン類およびオルガノポリシロキサン類を好ましく用いることができる。
本発明の好ましい実施形態としては、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン類およびオルガノポリシロキサン類から選択される少なくとも1種で表面処理された酸化チタンを用いる処方が例示される。
白色顔料は、市販されているものを使用することができる。さらには、塊状のものや平均粒径が大きなものを適宜粉砕し、必要に応じて篩い等によって分級して、上記した平均粒径となるようにしたものを使用してもよい。
【0057】
本発明の樹脂組成物が白色顔料を含む場合、白色顔料の配合量は、樹脂成分100重量部に対し、0.1〜10重量部であることが好ましく、1〜8重量部であることがより好ましく2〜5重量部であることがさらに好ましい。本発明の樹脂組成物は、白色顔料を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。
【0058】
<タルク>
本発明の樹脂組成物はタルクを含んでいてもよい。本発明では、タルクを配合することにより、レーザーを照射した部分のメッキ性能が向上する傾向にある。
また、本発明で用いるタルクは、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン類およびオルガノポリシロキサン類から選択される化合物の少なくとも1種で表面処理されたタルクであることが好ましい。この場合、シロキサン化合物の付着量は、タルクの0.1〜5重量%であることが好ましい。シロキサン化合物については、上述の白色顔料で述べたシロキサン化合物が好ましく採用できる。
本発明の樹脂組成物がタルクを含む場合、タルクの配合量は、樹脂成分100重量部に対し、1〜30重量部であることが好ましく、5〜28重量部がより好ましく、7〜22重量部がさらに好ましい。タルクが表面処理されている場合、表面処理された合計量が、上記範囲であることが好ましい。
【0059】
<リン系安定剤>
本発明の樹脂組成物は、リン系安定剤を含むことが好ましい。
リン系安定剤としては、リン酸エステルおよび亜リン酸エステルが好ましい。
【0060】
リン酸エステルとしては、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
一般式(3)
O=P(OH)m(OR)3-m・・・(3)
(一般式(3)中、Rはアルキル基またはアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。mは0〜2の整数である。)
Rは炭素数1〜30のアルキル基または、炭素数6〜30のアリール基であることが好ましく、炭素数2〜25のアルキル基、フェニル基、ノニルフェニル基、アテアリルフェニル基、2,4−ジtert−ブチルフェニル基、2,4−ジtert−ブチルメチルフェニル基、トリル基がより好ましい。
【0061】
リン酸エステルとしては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2−エチルフェニルジフェニルホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスフォナイト等が挙げられる。
【0062】
亜リン酸エステルとしては、下記一般式(4)で表される化合物が好ましい。
一般式(4)
【化1】
(一般式(4)中、R'は、アルキル基またはアリール基であり、各々同一でも異なっていてもよい。)
R'は炭素数1〜25のアルキル基または、炭素数6〜12のアリール基であることが好ましい。R’がアルキル基である場合、炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。R’がアリール基である場合、炭素数6〜30のアリール基が好ましい。
【0063】
亜リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、モノブチルジフエニルホスファイト、モノオクチルジフエニルホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2.6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、モノステアリルアシッドフォスフェート、ジステアリルアシッドフォスフェート等の亜リン酸のトリエステル、ジエステル、モノエステル等が挙げられる。
【0064】
本発明の樹脂組成物がリン系安定剤を含む場合、リン系安定剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対し、0.01〜5重量部であり、0.02〜2重量部がより好ましい。本発明の樹脂組成物は、リン系安定剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。
【0065】
<酸化防止剤>
本発明の樹脂組成物は、酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤が好ましく、より具体的には、2,6−ジ−オブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4―ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4'−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、およびオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。中でも、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが好ましい。
本発明の樹脂組成物が酸化防止剤を含む場合、酸化防止剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対し、0.01〜5重量部であり、0.05〜3重量部がより好ましい。本発明の樹脂組成物は、酸化防止剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。
【0066】
<離型剤>
本発明の樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。離型剤は、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、および数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。中でも、脂肪族カルボン酸、および脂肪族カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましく用いられる。
【0067】
脂肪族カルボン酸としては、飽和または不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸を挙げることができる。本明細書では、脂肪族カルボン酸の用語は、脂環式カルボン酸も包含する意味で用いる。脂肪族カルボン酸の中でも、炭素数6〜36のモノまたはジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がより好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
【0068】
脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、飽和または不飽和の1価アルコール、飽和または不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価または多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコールまたは多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸および/またはアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートを挙げることができる。
【0069】
本発明の樹脂組成物が離型剤を含む場合、離型剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対し、0.01〜5重量部であり、0.05〜3重量部がより好ましい。本発明の樹脂組成物は、離型剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。
【0070】
本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、リン系安定剤以外の安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、チョップドストランドおよびタルク以外の無機フィラー、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、防菌剤などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
これらの成分については、特開2007−314766号公報、特開2008−127485号公報および特開2009−51989号公報、特開2012−72338号公報等の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
尚、本発明の樹脂組成物は、チョップドストランド以外の繊維状フィラーを含んでいてもよいが、チョップドストランド以外の繊維状フィラーの配合量をチョップドストランドの配合量の5重量%以下とすることもできる。
【0071】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に定めるものではなく、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。具体的には、各成分を、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどで溶融混練することによって樹脂組成物を製造することができる。本発明では、特に、樹脂組成物を、二軸押出機を用いてコンパウンドすることによって樹脂ペレットを製造することが好ましい。さらに、本発明では、繊維状のフィラーをメインフィーダーから供給することが好ましい。このようにコンパウンドすることで、得られる樹脂ペレット中のチョップドストランドの平均繊維長を長く残しつつ、安定した生産が可能となる。
【0072】
本発明の樹脂組成物またはペレットから樹脂成形品を製造する方法は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂について一般に採用されている成形法、すなわち一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシストなどの中空成形法、断熱金型を用いた成形法、急速加熱金型を用いた成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサ−ト成形、IMC(インモ−ルドコ−ティング成形)成形法、押出成形法、シ−ト成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法等を採用することができる。また、ホットランナ−方式を用いた成形法を選択することもできる。
【0073】
次に、本発明の樹脂組成物を成形した樹脂成形品の表面にメッキを設ける工程を図1に従って説明する。図1は、レーザーダイレクトストラクチャリング技術によって、樹脂成形品1の表面にメッキを形成する工程を示す概略図である。図1では、樹脂成形品1は、平坦な基板となっているが、必ずしも平坦な基板である必要はなく、一部または全部が曲面している樹脂成形品であってもよい。また、樹脂成形品は、最終製品に限らず、各種部品も含む趣旨である。本発明における樹脂成形品としては、携帯電子機器部品が好ましい。携帯電子機器部品は、高い耐衝撃性と剛性、優れた耐熱性を併せ持つうえ、異方性が小さく、反りが小さいという特徴を有し、電子手帳、携帯用コンピューター等のPDA、ポケットベル、携帯電話、PHSなどの内部構造物および筐体として極めて有効であり、特に樹脂成形品がリブを除く平均肉厚が1.2mm以下(下限値は特に定めるものではないが、例えば、0.4mm以上)である平板形状の携帯電子機器部品に適しており、中でも筐体として特に適している。
【0074】
再び図1に戻り、樹脂成形品1にレーザー2を照射する。ここでのレーザーとは、特に定めるものではなく、YAGレーザー、エキシマレーザー、電磁線等の公知のレーザーから適宜選択することができ、YGAレーザーが好ましい。また、レーザーの波長も特に定めるものではない。好ましい波長範囲は、200nm〜1200nmである。特に好ましくは800〜1200nmである。
レーザーが照射されると、レーザーが照射された部分3のみ、樹脂成形品1が活性化される。この活性化された状態で、樹脂成形品1をメッキ液4に適用する。メッキ液4としては、特に定めるものではなく、公知のメッキ液を広く採用することができ、金属成分として銅、ニッケル、金、銀、パラジウムが混合されているものが好ましく、銅がより好ましい。
樹脂成形品1をメッキ液4に適用する方法についても、特に定めるものではないが、例えば、メッキ液を配合した液中に投入する方法が挙げられる。メッキ液を適用後の樹脂成形品は、レーザー照射した部分のみ、メッキ層5が形成される。
本発明の方法では、1mm以下、さらには、150μm以下の幅の回路間隔(下限値は特に定めるものではないが、例えば、30μm以上)を形成することができる。かかる回路は携帯電子機器部品のアンテナとして好ましく用いられる。すなわち、本発明の樹脂成形品の好ましい実施形態の一例として、携帯電子機器部品の表面に設けられたメッキ層が、アンテナとしての性能を保有する樹脂成形品が挙げられる。
【実施例】
【0075】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
比較例1−1〜比較例1−6、実施例1−1〜実施例1−8、比較例2−1、および、比較例2−3〜比較例2−6は参考例である。
【0076】
<樹脂成分>
S−3000F:三菱エンジニアリングプラスチックス製、芳香族ポリカーボネート樹脂
AT−08:日本A&L製、塊状重合させたABS樹脂
【0077】
<繊維状フィラー>
T−187:日本電気硝子製、平均繊維径が13μmのチョップドストランド、平均繊維長3mmの円形断面を有するガラス繊維、収束剤としてエポキシ樹脂を使用。
T−571:日本電気硝子製、平均繊維径が13μmのチョップドストランド、平均繊維長3mm、収束剤としてウレタン樹脂を使用。
JB1−20:旭ファイバーグラス製、ミルドファイバー、平均繊維径10μm、平均繊維長30〜100μm
MF−S−R:旭ファイバーグラス製、平均繊維径10μm、平均繊維長110μmのミルドファイバー、亜リン酸で表面処理。
【0078】
<LDS添加剤>
Black1G:シェパードジャパン製、スピネル構造の銅クロム酸化物
CP5C:Keeling&Walker製、アンチモンドープ酸化スズ(酸化スズ95重量%、酸化アンチモン5重量%、酸化鉛0.02重量%、酸化銅0.004重量%)からなる
【0079】
<エラストマー>
M711:カネカ製、MBS樹脂
【0080】
<白色顔料>
CP−K:レジノカラー製、メチルハイドロジェンシロキサン処理された酸化チタン
【0081】
<リン系安定剤>
PEP−8:ADEKA製、(サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト))
AX71:ADEKA製、(モノおよびジステアリルアシッドフォスフェート)の略等モルの混合物
<酸化防止剤>
Irganox1076:BASF製、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート
<離型剤>
VPG861:コグニスオレオケミカルズジャパン製、ペンタエリスリトールテトラステアレート
【0082】
<コンパウンド−サイドフィード>
後述する下記表に示す組成となるように、各成分をそれぞれ秤量し、繊維状フィラーを除く成分をタンブラーにてブレンドし、二軸押出機(東芝機械製、TEM26SS)の根元から投入し、溶融した後で、繊維状フィラーをサイドフィードして樹脂ペレットを作製した。押出機の温度設定は、280℃にて実施した。
【0083】
<コンパウンド−メインフィード>
後述する下記表に示す組成となるように、各成分をそれぞれ秤量し、タンブラーにてブレンドし、二軸押出機(東芝機械製、TEM26SS)の根元から投入し、溶融し樹脂ペレットを作製した。押出機の温度設定は、280℃にて実施した。なお、実施例1−3、2−3は単軸押出機(田辺プラスチック製、VS−40)を用いて樹脂ペレットを作製した。
【0084】
<曲げ弾性率および曲げ強度>
上述の製造方法で得られた樹脂ペレットを100℃で5時間乾燥させた後、住友重機械工業製、SG75−MIIを用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形し、4mm厚さのISO引張り試験片を成形した。
ISO178に準拠して、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度で曲げ弾性率(単位:MPa)および曲げ強度(単位:MPa)を測定した。
【0085】
<引張最大点強度>
上述の製造方法で得られた樹脂ペレットを100℃で5時間乾燥させた後、住友重機械工業製、SG75−MIIを用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形し、4mm厚さのISO引張り試験片を成形した。
ISO527−1&2に準拠して、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度で引張最大点強度(単位:MPa)を測定した。
【0086】
<ウェルド引張最大点強度>
上述の製造方法で得られた樹脂ペレットを100℃で5時間乾燥させた後、日精樹脂工業製、NEX80を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形し、4mm厚さの中央部にウェルドを有する引張り試験片を成形した。
ISO527−1&2に準拠して、上記のウェルドを有する引張り試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度でウェルド引張最大点強度(単位:MPa)を測定した。
【0087】
<シャルピー衝撃強度>
上述の製造方法で得られた樹脂ペレットを100℃で5時間乾燥させた後、住友重機械工業製、SG75−MIIを用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形し、3mm厚さのISOダンベル試験片を成形した。
上記で得られたISOダンベル試験片(3mm厚)を用い、ISO179に準拠し、23℃の条件で、ノッチ有およびノッチ無シャルピー衝撃強度を測定した。NBは、ノンブレイクであることを意味する。
【0088】
<メッキ性(LDS活性)−Plating Index>
上述の製造方法で得られた樹脂ペレットを100℃で5時間乾燥させた後、日精樹脂工業製、J−50を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒の条件で射出成形し、3mm厚さのプレートを成形した。
上記で得られた3mm厚のプレートに1064nmのYAGレーザーを用い、出力2.6〜13Wの範囲のいずれか、スキャン速度1〜2m/sのいずれか、周波数10〜50μsの範囲のいずれかの条件から組み合わされた各種条件でレーザー照射により印字し、続いて、プレートを硫酸にて脱脂後、キザイ製THPアルカリアクチ及びTHPアルカリアクセで処理後、キザイ製SELカッパ―にてメッキ処理を行った。メッキ処理後のプレートを目視にて判定し、下記5段階に分類した。
5:各種レーザー条件中、明瞭にメッキが載った条件が40%以上100%以下
4:各種レーザー条件中、明瞭にメッキが載った条件が30%以上40%未満
3:各種レーザー条件中、明瞭にメッキが載った条件が20%以上30%未満
2:各種レーザー条件中、明瞭にメッキが載った条件が10%以上20%未満
1:各種レーザー条件中、明瞭にメッキが載った条件が10%未満
【0089】
【表1】
【表2】
【表3】
【0090】
【表4】
【表5】
【表6】
【0091】
結果を下記表に示す。表中、配合量は重量%である。
上記表から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物は、LDS添加剤を含んでいても、機械的強度が低下しておらず、メッキ性に優れていることが分かった。これに対し、比較例の組成物は、満足する機械的強度が得られなかった。すなわち、本発明の樹脂組成物は、メッキ性を維持しつつ、優れた機械的強度を有することがわかった。
図1