特許第5766897号(P5766897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5766897
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】飛散塩分捕獲装置及び飛散塩分捕獲体
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/02 20060101AFI20150730BHJP
【FI】
   G01N1/02 D
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-513544(P2015-513544)
(86)(22)【出願日】2013年12月27日
(86)【国際出願番号】JP2013085067
【審査請求日】2015年3月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】住谷 博之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和文
(72)【発明者】
【氏名】中村 剛
【審査官】 後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3163165(JP,U)
【文献】 実開昭48−105585(JP,U)
【文献】 特開平5−209996(JP,A)
【文献】 特開平4−285841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00−1/44
G21F 9/02
B01D 46/00−46/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中に飛散している塩分を捕獲可能である素材、及び、該素材が張られた枠体を有する複数の飛散塩分捕獲体と、該複数の飛散塩分捕獲体を保持する保持装置とを備え、
前記保持装置は、
未使用の前記飛散塩分捕獲体を縦向きに収納する複数の上段収納部が、前記未使用の飛散塩分捕獲体に対して直交する方向へ並べて配され、前記上段収納部の下部に、前記飛散塩分捕獲体が通過可能な上段スリットが形成された上段部と、
使用済の前記飛散塩分捕獲体を縦向きに収納する複数の下段収納部が、前記上段部から下方に離れた位置において前記使用済の飛散塩分捕獲体に対して直交する方向へ並べて配され、前記下段収納部の上部に、前記飛散塩分捕獲体が通過可能な下段スリットが形成された下段部と、
前記上段部と前記下段部との間に前記上段収納部及び前記下段収納部が並んだ方向へ移動可能に設けられ、前記上段スリットを塞ぐ上板、前記下段スリットを塞ぐ下板、及び、使用中の前記飛散塩分捕獲体を縦向きに前記上板と前記下板との間で保持する保持部を有し、前記上板に前記飛散塩分捕獲体が前記保持部へ通過可能な中段上スリットが形成され、前記下板に前記飛散塩分捕獲体が前記下段収納部へ通過可能な中段下スリットが形成された中段部とを備え、
前記中段部が所定方向に移動すると、前記未使用の飛散塩分捕獲体が、前記上段収納部の何れか一から前記保持部へ前記上段スリット及び前記中段上スリットを通して落下して該飛散塩分捕獲体が隣り合った前記下段スリットの間の部位に載る第一の状態と、前記使用中の飛散塩分捕獲体が、前記保持部から前記下段収納部の何れか一へ前記中段下スリット及び前記下段スリットを通して落下すると共に、前記未使用の飛散塩分捕獲体が、前記上板の上に載る第二の状態とに交互に遷移するように構成されている飛散塩分捕獲装置。
【請求項2】
前記中段部を前記上段収納部及び前記下段収納部が並んだ方向へ移動させる駆動部と、
前記第一の状態が所定時間維持され、前記第二の状態を経由して前記第一の状態に遷移されて前記所定時間維持されることが繰り返されるように、前記中段部を前記駆動部により前記所定方向へ移動させる制御部と
を備える請求項1に記載の飛散塩分捕獲装置。
【請求項3】
前記中段部の側方が通風可能に構成されている請求項1又は請求項2に記載の飛散塩分捕獲装置。
【請求項4】
前記上段部の上部に、前記上部を閉塞する上段蓋部が着脱可能に設けられ、
前記下段部の下部に、前記下部を閉塞する下段蓋部が着脱可能に設けられている請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の飛散塩分捕獲装置。
【請求項5】
前記保持装置を収容し、前記飛散塩分捕獲体に導風する導風口が設けられた箱を備える請求項1から請求項4までの何れか1項に記載の飛散塩分捕獲装置。
【請求項6】
大気中に飛散している塩分を捕獲可能である素材、及び、該素材が張られた枠体を有し、保持装置に保持される飛散塩分捕獲体であり、
前記保持装置は、
未使用の前記飛散塩分捕獲体を縦向きに収納する複数の上段収納部が、前記未使用の飛散塩分捕獲体に対して直交する方向へ並べて配され、前記上段収納部の下部に、前記飛散塩分捕獲体が通過可能な上段スリットが形成された上段部と、
使用済の前記飛散塩分捕獲体を縦向きに収納する複数の下段収納部が、前記上段部から下方に離れた位置において前記使用済の飛散塩分捕獲体に対して直交する方向へ並べて配され、前記下段収納部の上部に、前記飛散塩分捕獲体が通過可能な下段スリットが形成された下段部と、
前記上段部と前記下段部との間に前記上段収納部及び前記下段収納部が並んだ方向へ移動可能に設けられ、前記上段スリットを塞ぐ上板、前記下段スリットを塞ぐ下板、及び、使用中の前記飛散塩分捕獲体を縦向きに前記上板と前記下板との間で保持する保持部を有し、前記上板に前記飛散塩分捕獲体が前記保持部へ通過可能な中段上スリットが形成され、前記下板に前記飛散塩分捕獲体が前記下段収納部へ通過可能な中段下スリットが形成された中段部とを備え、
前記中段部が所定方向に移動すると、前記未使用の飛散塩分捕獲体が、前記上段収納部の何れか一から前記保持部へ前記上段スリット及び前記中段上スリットを通して落下して該飛散塩分捕獲体が隣り合った前記下段スリットの間の部位に載る第一の状態と、前記使用中の飛散塩分捕獲体が、前記保持部から前記下段収納部の何れか一へ前記中段下スリット及び前記下段スリットを通して落下すると共に、前記未使用の飛散塩分捕獲体が、前記上板の上に載る第二の状態とに交互に遷移するように構成されており、
前記素材又は前記枠体に当該飛散塩分捕獲体を識別するための表示が記されている飛散塩分捕獲体。
【請求項7】
前記枠体の一辺にウエイトが取り付けられている請求項6に記載の飛散塩分捕獲体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛散塩分量を測定するために大気中に飛散している塩分を捕獲する飛散塩分捕獲装置及び飛散塩分捕獲体に関する。
【背景技術】
【0002】
送電系統の絶縁碍子や鉄塔等の海塩粒子による塩害の予測を行うために、大気中に飛散している塩分(以下、単位体積あたりに含まれる塩分を気中塩分量、これに風速を乗じたものを飛散塩分量という)の量(飛散塩分量)を測定する必要があり、そのためには、大気中に飛散している塩分を捕獲する必要がある。JIS Z2382で規定されているドライガーゼ法は、窓が空いた木枠にガーゼをはめ込んで雨に濡れない風通しの良い場所に設置し、ガーゼに塩分を含んだ大気を通過させてガーゼに塩分を付着させ、その付着した塩分の量を測定するというものである。
【0003】
また、特許文献1に記載の外気導入装置では、外気を屋外構造物の内部に導入する外気導入部にテープ状の除塩フィルタを設け、この除塩フィルタで塩分を捕獲することで、外気中の塩分が屋外構造物の内部に入ることを防止している。ここで、特許文献1に記載の外気導入装置では、除塩フィルタの新規な面を外気導入部へ送り出し、塩分が付着した面を外気導入部から退避させる機構を設けることで、連続しての塩分の捕獲を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−85516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、百葉箱を鉄塔等の高所に設置してその中に上述のガーゼを設置することにより、高所での飛散塩分量を測定できる。この場合、ガーゼを所定期間毎に交換する必要があるが、交換作業の度に百葉箱を高所で上げたり下したりするのでは作業性が悪い。そのため、高所に設置した百葉箱の中で自動若しくは簡単な操作により、曝露位置において飛散塩分を捕獲するガーゼと未使用のガーゼとを交換できるようにすることが望ましい。なお、特許文献1に記載の送り出し機構を百葉箱内に設置することはこれらの寸法上難しい。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、飛散塩分を捕獲する飛散塩分捕獲体の交換を百葉箱の中で自動若しくは簡単な操作により実施できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る飛散塩分捕獲装置は、大気中に飛散している塩分を捕獲可能である素材、及び、該素材が張られた枠体を有する複数の飛散塩分捕獲体と、該複数の飛散塩分捕獲体を保持する保持装置とを備え、前記保持装置は、未使用の前記飛散塩分捕獲体を縦向きに収納する複数の上段収納部が、前記未使用の飛散塩分捕獲体に対して直交する方向へ並べて配され、前記上段収納部の下部に、前記飛散塩分捕獲体が通過可能な上段スリットが形成された上段部と、使用済の前記飛散塩分捕獲体を縦向きに収納する複数の下段収納部が、前記上段部から下方に離れた位置において前記使用済の飛散塩分捕獲体に対して直交する方向へ並べて配され、前記下段収納部の上部に、前記飛散塩分捕獲体が通過可能な下段スリットが形成された下段部と、前記上段部と前記下段部との間に前記上段収納部及び前記下段収納部が並んだ方向へ移動可能に設けられ、前記上段スリットを塞ぐ上板、前記下段スリットを塞ぐ下板、及び、使用中の前記飛散塩分捕獲体を縦向きに前記上板と前記下板との間で保持する保持部を有し、前記上板に前記飛散塩分捕獲体が前記保持部へ通過可能な中段上スリットが形成され、前記下板に前記飛散塩分捕獲体が前記下段収納部へ通過可能な中段下スリットが形成された中段部とを備え、前記中段部が所定方向に移動すると、前記未使用の飛散塩分捕獲体が、前記上段収納部の何れか一から前記保持部へ前記上段スリット及び前記中段上スリットを通して落下して該飛散塩分捕獲体が隣り合った前記下段スリットの間の部位に載る第一の状態と、前記使用中の飛散塩分捕獲体が、前記保持部から前記下段収納部の何れか一へ前記中段下スリット及び前記下段スリットを通して落下すると共に、前記未使用の飛散塩分捕獲体が、前記上板の上に載る第二の状態とに交互に遷移するように構成されている。
【0008】
前記飛散塩分捕獲装置は、前記中段部を前記上段収納部及び前記下段収納部が並んだ方向へ移動させる駆動部と、前記第一の状態が所定時間維持され、前記第二の状態を経由して前記第一の状態に遷移されて前記所定時間維持されることが繰り返されるように、前記中段部を前記駆動部により前記所定方向へ移動させる制御部とを備えてもよい。
【0009】
前記飛散塩分捕獲装置において、前記中段部の側方が通風可能に構成されてもよい。
【0010】
前記飛散塩分捕獲装置において、前記上段部の上部に、前記上部を閉塞する上段蓋部が着脱可能に設けられ、前記下段部の下部に、前記下部を閉塞する下段蓋部が着脱可能に設けられてもよい。
【0011】
前記飛散塩分捕獲装置は、前記保持装置を収容し、前記飛散塩分捕獲体に導風する導風口が設けられた箱を備えてもよい。
【0012】
また、本発明に係る飛散塩分捕獲体は、大気中に飛散している塩分を捕獲可能である素材、及び、該素材が張られた枠体を有し、保持装置に保持される飛散塩分捕獲体であり、前記保持装置は、未使用の前記飛散塩分捕獲体を縦向きに収納する複数の上段収納部が、前記未使用の飛散塩分捕獲体に対して直交する方向へ並べて配され、前記上段収納部の下部に、前記飛散塩分捕獲体が通過可能な上段スリットが形成された上段部と、使用済の前記飛散塩分捕獲体を縦向きに収納する複数の下段収納部が、前記上段部から下方に離れた位置において前記使用済の飛散塩分捕獲体に対して直交する方向へ並べて配され、前記下段収納部の上部に、前記飛散塩分捕獲体が通過可能な下段スリットが形成された下段部と、前記上段部と前記下段部との間に前記上段収納部及び前記下段収納部が並んだ方向へ移動可能に設けられ、前記上段スリットを塞ぐ上板、前記下段スリットを塞ぐ下板、及び、使用中の前記飛散塩分捕獲体を縦向きに前記上板と前記下板との間で保持する保持部を有し、前記上板に前記飛散塩分捕獲体が前記保持部へ通過可能な中段上スリットが形成され、前記下板に前記飛散塩分捕獲体が前記下段収納部へ通過可能な中段下スリットが形成された中段部とを備え、前記中段部が所定方向に移動すると、前記未使用の飛散塩分捕獲体が、前記上段収納部の何れか一から前記保持部へ前記上段スリット及び前記中段上スリットを通して落下して該飛散塩分捕獲体が隣り合った前記下段スリットの間の部位に載る第一の状態と、前記使用中の飛散塩分捕獲体が、前記保持部から前記下段収納部の何れか一へ前記中段下スリット及び前記下段スリットを通して落下すると共に、前記未使用の飛散塩分捕獲体が、前記上板の上に載る第二の状態とに交互に遷移するように構成されており、前記素材又は前記枠体に当該飛散塩分捕獲体を識別するための表示が記されている。
【0013】
前記飛散塩分捕獲体において、前記枠体の一辺にウエイトが取り付けられてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、飛散塩分を捕獲する飛散塩分捕獲体の交換を百葉箱の中で自動若しくは簡単な操作により実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る飛散塩分捕獲装置を示す斜視図である。
図2】飛散塩分捕獲体を示す正面図である。
図3】保持装置を示す縦断面図である。
図4】保持装置を示す斜視図である。
図5】保持装置を示す正面図である。
図6】保持装置を示す側面図である。
図7】保持装置の動作を説明するための立断面図である。
図8】保持装置の動作を説明するための立断面図である。
図9】保持装置の動作を説明するための立断面図である。
図10】保持装置の動作を説明するための立断面図である。
図11】保持装置の動作を説明するための立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。図1は、一実施形態に係る飛散塩分捕獲装置10を示す斜視図である。この図に示すように、飛散塩分捕獲装置10は、百葉箱1と、百葉箱1内に設置された保持装置100と、保持装置100が保持する複数の飛散塩分捕獲体20とを備えている。百葉箱1は、直方体状の箱であり、四つの側面にルーバー2が設けられている。ルーバー2は、奥側へかけて上側に傾斜する整流板が縦に並んだ構成である。なお、百葉箱1の一の側面を前面といい、該一の側面と対向する面を後面という。また、百葉箱1の前面側を装置前側、百葉箱1の後面側を装置後側といい、百葉箱1の前後方向を装置前後方向という。また、装置前後方向と直交する横方向を装置左右方向という。
【0017】
図2は、飛散塩分捕獲体20を示す正面図である。この図に示すように、飛散塩分捕獲体20は、通気性を有し、飛散する塩分を捕獲可能である矩形状のガーゼ22と、ガーゼ22を保持する矩形状の枠体であるガーゼホルダー24と、ガーゼホルダー24に取り付けられたウエイト26とを備えている。この飛散塩分捕獲体20では、ガーゼ22の周縁部がガーゼホルダー24に取り付けられることで、ガーゼ22がガーゼホルダー24の内側に張られている。また、ガーゼホルダー24は上下左右及び表裏の設置向きが決められており、その向きでガーゼホルダー24が設置された場合に、ガーゼホルダー24の下辺となる位置にウエイト26が取り付けられている。
【0018】
ここで、ガーゼ22には、当該ガーゼ22を識別するための表示である数字が記されている。この数字は使用する順序や使用する月等を特定するものである。即ち、使用する順序を特定する数字の場合は、ガーゼ22の設置数に応じて1,2,3,4,…となり、使用する月を特定する数字の場合は、例えば、4,5,6,7,…となる。
【0019】
図3は、保持装置100を示す縦断面図であり、図4は、保持装置100を示す斜視図である。また、図5は、保持装置100を示す正面図であり、図6は、保持装置100を示す側面図である。これらの図に示すように、保持装置100は、未使用の飛散塩分捕獲体20を装置の上段で保持する上段保持部110と、使用中の飛散塩分捕獲体20を装置の中段の曝露位置で保持する中段保持部120と、使用済の飛散塩分捕獲体20を装置の下段で保持する下段保持部130と、これらを支持するフレーム140と、中段保持部120を移動させる移動機構150とを備えている。ここで、複数の飛散塩分捕獲体20は、上段保持部110及び下段保持部130においてガーゼ22が装置前後方向を向くように装置前後方向に間隔を空けて並べて配されている。
【0020】
フレーム140は、互いに平行且つ装置左右方向に対向するように配された一対の矩形状の側板142と、一対の側板142の上部を連結する一対の連結部材144A、144Bと、一対の側板142の下部を連結する一対の連結部材146A、146Bと、これらを支持する一対の脚部148、149とを備えている。側板142は多孔板であり、装置左右方向からの風を通過させる。また、一対の連結部材144A、144Bは、装置左右方向に延びるL型アングルであり、連結部材144Aは、一対の側板142の上側の一方の角部を連結し、連結部材144Bは、一対の側板142の上側の両側の角部の間を連結している。また、一対の連結部材146A、146Bは、装置左右方向に延びるL型アングルであり、連結部材146Aは、連結部材144Aの直下において一対の側板142の下側の一方の角部を連結し、他方の連結部材146Bは、連結部材144Bの直下において一対の側板142の下側の両側の角部の間を連結している。
【0021】
脚部148は、一対の鉛直な柱部148Aと、一対の柱部148Aの下端を連結する底部148Bとを備えている。各柱部148Aの上端は、各側板142の上側の一方の角部を挟んで連結部材144Aの一端と結合され、各柱部148Aの中間部は、各側板142の下側の一方の角部を挟んで連結部材144Aの一端と結合されている。
【0022】
脚部149は、一対の斜柱部149Aと、一対の斜柱部149Aの下端を連結する底部149Bとを備えている。各斜柱部149Aの上端は、各側板142の上端を挟んで連結部材144Bの一端と結合され、各斜柱部149Aの中間部は、各側板142の下側の他方の角部に固定されている。
【0023】
上段保持部110は、複数の仕切板112と、この複数の仕切板112を保持する左右一対の保持部材114と、上段保持部110の上部を開閉する蓋部116とを備えている。一対の保持部材114は、縦長の矩形状の板材であり、装置左右方向に対向している。一方の保持部材114の下端は、その幅方向(装置前後方向)に貫通する固定ピン115により連結部材144A、144Bの長手方向一端に固定され、他方の保持部材114の下端は、その幅方向(装置前後方向)に貫通する固定ピン115により連結部材144A、144Bの長手方向他端に固定されている。
【0024】
ここで、一対の保持部材114の互いに装置左右方向に対向する面には、複数列の縦スリット114Aが形成されている(図3参照)。ここで、一方の保持部材114の縦スリット114Aと他方の保持部材114の縦スリット114Aとの装置前後方向の位置が揃うように構成されており、仕切板112の左右両端が、スリット114Aに嵌り込んでいる。これにより、複数の仕切板112が装置前後方向に間隔を空けて並んだ状態で一対の保持部材114により保持されている。
【0025】
また、蓋部116は、底側が開口した直方体形状の部材であり、その長手方向両端が一対の保持部材114の上部に着脱可能に嵌められている。即ち、蓋部116が一対の保持部材114の上部に嵌められた状態で、上段保持部110の上部が閉塞され、蓋部116が一対の保持部材114の上部から取り外された状態で、上段保持部110の上部が開放される。
【0026】
下段保持部130は、複数の仕切板132と、この複数の仕切板132を保持する左右一対の保持部材134と、下段保持部130の下部を閉塞する蓋部136と、下段保持部130の上部に設けられたスリット形成部138とを備えている(図3参照)。一対の保持部材134は、縦長の矩形状の板材であり、装置左右方向に対向している。一方の保持部材134の上端は、その幅方向(装置前後方向)に貫通する固定ピン135により連結部材146A、146Bの長手方向一端に固定され、他方の保持部材134の上端は、その幅方向(装置前後方向)に貫通する固定ピン135により連結部材146A、146Bの長手方向他端に固定されている。
【0027】
ここで、一対の保持部材134の互いに装置左右方向に対向する面には、複数列の縦スリット134Aが形成されている。ここで、一方の保持部材134の縦スリット134Aと他方の保持部材134の縦スリット134Aとの装置前後方向の位置が揃うように構成されており、仕切板132の左右両端が、スリット134Aに嵌り込んでいる。これにより、複数の仕切板132が装置前後方向に間隔を空けて並んだ状態で一対の保持部材134により保持されている。
【0028】
また、蓋部136は、上側が開口した直方体形状の部材であり、その長手方向両端が一対の保持部材134の下部に着脱可能に嵌められている。即ち、蓋部136が一対の保持部材114の下部に嵌められた状態で、下段保持部130の下部が閉塞され、蓋部136が一対の保持部材134の下部から取り外された状態で、下段保持部130の下部が開放される。
【0029】
また、スリット形成部138は、仕切板132間に飛散塩分捕獲体20を落下させるための複数のスリット138Aを形成すると共に、スリット138A間の帯状部138Bでは下段保持部130の上部を塞ぐ。
【0030】
ここで、上側の連結部材144A、144Bと下側の連結部材146A、146Bとの間には、装置前後方向に見て矩形状の空間が形成されており、この空間に中段保持部120が装置前後方向に移動可能に配されている。この中段保持部120は、上側の連結部材144A、144Bと下側の連結部材146A、146Bとの間に装置前後方向に移動可能に嵌め込まれたベース部122と、ベース部122の内部に配された矩形状の一対の枠体124とを備えている。ベース部122は、上下に対向する上板122Aと下板122Bとが4本の柱部122Cで連結された構成である。
【0031】
枠体124の開口124Aの縦横の長さはガーゼ22よりも大きくなったおり、一対の枠体124は、風が開口124Aを装置前後方向に吹き抜けるようにベース部122の装置前後方向の中央部に配されている。また、一対の枠体124は、飛散塩分捕獲体20を挿入できるだけの間隔を空けて配されている。また、枠体124の下端がベース部122の下板122Bに固定され、枠体124の上端がベース部122の上板122Aに固定されている。ここで、ベース部122の装置前後方向の長さは、上段保持部110及び下段保持部130の装置前後方向の長さの2倍以上に設定されている。
【0032】
図3に示すように、ベース部122の上板122Aには、上段保持部110から一対の枠体124の間に飛散塩分捕獲体20を落下させるためのスリット122Dが形成され、ベース部122の下板122Bには、一対の枠体124の間から下段保持部130へ飛散塩分捕獲体20を落下させるためのスリット122Dが形成されている。ここで、後述するように飛散塩分捕獲体20は、一対の枠体124間で一定期間保持されるが、その際にガーゼ22の全体が開口124A内で曝露されるように、開口124Aの位置が設定されている。
【0033】
移動機構150は、連結部材146Aに取り付けられたモータ152と、ベース部122の下板122Bの下面に装置前後方向に延びるように設けられたラック154とを備えている(図3図5及び図6参照)。モータ152のピニオンギア152Aとラック154とは噛み合っており、モータ152が駆動されると中段保持部120が装置前後方向に移動する。
【0034】
ところで、上側の仕切板112の間隔と下側の仕切板132の間隔とは同じであり、上側の仕切板112と下側の仕切板132との装置前後方向についての位置は一致している。また、上段保持部110から中段保持部120へ飛散塩分捕獲体20を落下させるためのスリット122Dの幅は、上側の仕切板112及び下側の仕切板132のそれぞれの間隔、及びスリット122Eの幅と同じである。ここで、中段保持部120から下段保持部130へ飛散塩分捕獲体20を落下させるためのスリット138Aの幅は、スリット122D、122Eよりも狭く、また、スリット138Aは、スリット122D、122Eの幅方向の中心よりも装置後側に寄せて配されている。これにより、中段保持部120の移動によりスリット122Dが上側の仕切板112の間に配置されると、上段保持部110の飛散塩分捕獲体20がスリット122Dを通して中段保持部120に落下してスリット形成部138の帯状部138B上に乗る。この状態から中段保持部120が装置後側へ移動すると、飛散塩分捕獲体20がスリット122E及びスリット138Aを通して下段保持部130へ落下する。
【0035】
ここで、モータ152は、タイマ機能付きのモータ制御装置(図示省略)によって所定期間(例えば、1か月間)おきに駆動され、スリット122Dを上段保持部110の次列の飛散塩分捕獲体20の位置まで移動させる。以下、保持装置100の動作について説明する。
【0036】
図7図11は、保持装置100の動作を説明するための立断面図である。まず、図7に示すように、上段保持部110の装置後側の3列の収納位置と、中段保持部120の装置前側(最前列)の収納位置とに飛散塩分捕獲体20が収納される。中段保持部120の飛散塩分捕獲体20のガーゼ22は、開口124Aを通して曝露され、飛散塩分を捕獲する。
【0037】
次に、図8及び図9に示すように、所定期間経過後にモータ152が駆動されて、スリット122Dが上段保持部110の次列(装置前側から2列目)の飛散塩分捕獲体20の位置まで移動される。この際、図8に示すように、中段保持部120の装置後側への移動により、中段保持部120の使用済みの飛散塩分捕獲体20が、下段保持部130の最前列のスリット138A上まで移動されて該スリット138Aを通して下段保持部130の最前列の収納位置に落下する。そして、図9に示すように、中段保持部120のスリット122Dが上段保持部110の2列目の未使用の飛散塩分捕獲体20の位置まで移動すると、該未使用の飛散塩分捕獲体20が、スリット122Dを通して中段保持部120の収納位置に落下する。この際、該未使用の飛散塩分捕獲体20は、下段保持部130の2列目の帯状部138Bの上に落下することにより、中段保持部120において保持される。
【0038】
同様に、図10に示すように、所定期間経過後にモータ152が駆動されて、スリット122Dが上段保持部110の次列(装置前側から3列目)の飛散塩分捕獲体20の位置まで移動される。これにより、使用済みの2列目の飛散塩分捕獲体20が中段保持部120から下段保持部130の2列目の収納位置に落下し、上段保持部110の3列目の未使用の飛散塩分捕獲体20が中段保持部120の収納位置に落下する。
【0039】
さらに、図11に示すように、所定期間経過後にモータ152が駆動されて、スリット122Dが上段保持部110の次列(装置前側から4列目)の飛散塩分捕獲体20の位置まで移動される。これにより、使用済みの3列目の飛散塩分捕獲体20が中段保持部120から下段保持部130の3列目の収納位置に落下し、上段保持部110の4列目の未使用の飛散塩分捕獲体20が中段保持部120の収納位置に落下する。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る飛散塩分捕獲装置10は、大気中に飛散している塩分を捕獲可能であるガーゼ22、及び、ガーゼ22が張られたガーゼホルダー24を有する複数の飛散塩分捕獲体20と、複数の飛散塩分捕獲体20を保持する保持装置100とを備える。この保持装置100は、上段保持部110と、上段保持部110から下方に離された位置に配された下段保持部130と、これらの間に配された中段保持部120とを備える。
【0041】
上段保持部110は、未使用の飛散塩分捕獲体20を縦向きに収納する複数の上段収納部(仕切板112の間の空間)が、未使用の飛散塩分捕獲体20に対して直交する方向(装置前後方向)へ並べて配され、前記上段収納部の下部に、飛散塩分捕獲体20が通過可能なスリット(仕切板112の間の空間の下部)が形成されている。また、下段保持部130は、使用済の飛散塩分捕獲体20を縦向きに収納する複数の下段収納部(仕切板132の間の空間)が、使用済の飛散塩分捕獲体20に対して直交する方向へ並べて配され、前記下段収納部の上部に、飛散塩分捕獲体20が通過可能なスリット138Aが形成されている。さらに、中段保持部120は、上段保持部110と下段保持部130との間に前記上段収納部及び前記下段収納部が並んだ方向(装置前後方向)へ移動可能に設けられ、仕切板112の間のスリットを塞ぐ上板122A、スリット138Aを塞ぐ下板122B、及び、使用中の飛散塩分捕獲体20を縦向きに上板122Aと下板122Bとの間で保持する枠体124を有し、上板122Aに飛散塩分捕獲体20が枠体124へ通過可能なスリット122Dが形成され、下板122Bに飛散塩分捕獲体20が前記下段収納部へ通過可能なスリット122Eが形成されている。
【0042】
ここで、中段保持部120が所定方向(装置後方向)に移動すると、未使用の飛散塩分捕獲体20が、前記上段収納部の何れか一から枠体124へスリット(仕切板112の間の空間の下部)及びスリット122Dを通して落下して該飛散塩分捕獲体20が隣り合ったスリット138Aの間の帯状部138Bに載る第一の状態と、使用中の飛散塩分捕獲体20が、枠体124から前記下段収納部(仕切板112の間の空間)の何れか一へスリット122D及びスリット138Aを通して落下すると共に、未使用の飛散塩分捕獲体20が上板122Aの上に載る第二の状態とに交互に遷移するように構成されている。
【0043】
これによって、複数の未使用の飛散塩分捕獲体20を上段保持部110に収納しておき、中段保持部120を装置後方向へ所定量ずつ移動させるという簡単な操作により、装置前側から順番に未使用の飛散塩分捕獲体20を上段保持部110から中段保持部120へ落下させて所定期間曝露状態とし、使用済の飛散塩分捕獲体20については、装置前側から順番に下段保持部130へ落下させて下段保持部130に収納することができる。従って、飛散塩分を捕獲するガーゼ22の交換を百葉箱1の中で簡単に実施できる。
【0044】
また、本実施形態に係る飛散塩分捕獲装置10では、前記第一の状態が所定時間(例えば1か月間)維持され、前記第二の状態を経由して前記第一の状態に遷移されて前記所定時間維持されることが繰り返されるように、中段保持部120を装置後方向へ移動させる移動機構150を備える。従って、飛散塩分を捕獲するガーゼ22の交換を百葉箱1の中で自動で実施できる。
【0045】
また、本実施形態に係る飛散塩分捕獲装置10では、中段保持部120の側部が開放されていると共に、中段保持部120を装置左右方向に挟む一対の側板142が多孔板となっている。即ち、中段保持部120で曝露状態の飛散塩分捕獲体20の装置左右方向両側が通風状態となっている。従って、装置前後方向のみならず装置左右方向から曝露状態の飛散塩分捕獲体20へ導風することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る飛散塩分捕獲装置10では、上段保持部110の上部に、該上部を閉塞する蓋部116が着脱可能に設けられ、下段保持部130の下部に、該下部を閉塞する蓋部136が着脱可能に設けられている。これによって、上段保持部110や下段保持部130に飛散塩分が侵入してガーゼ22に付着することを防止できる。また、未使用の飛散塩分捕獲体20を上段保持部110に挿入でき、使用済の飛散塩分捕獲体20を下段保持部130から取り出すことができる。
【0047】
また、本実施形態に係る飛散塩分捕獲体20には、各々を識別するための表示が記されている。この表示は、曝露位置に置かれて飛散塩分を捕獲するのに使用される月等である。よって、使用済の飛散塩分捕獲体20の管理を容易化できる。さらに、本実施形態に係る飛散塩分捕獲体20のガーゼホルダー24の一辺にウエイト26が取り付けられていることにより、この一辺を下にして飛散塩分捕獲体20を上段保持部110に挿入することで、飛散塩分捕獲体20が、上段保持部110から中段保持部120へ、中段保持部120から下段保持部130へ落下し易くなる。
【0048】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、上記実施形態では、中段保持部120が移動機構150により自動で移動されるように構成したが、中段保持部120は手動で移動させてもよい。また、移動機構150を、ラック・アンド・ピニオン機構としたが、ボールネジを用いた機構等の他の機構としてもよい。さらに、飛散塩分捕獲体20のガーゼ22に識別表示を記したが、ガーゼホルダー24に識別表示を記してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 百葉箱、2 ルーバー、10 飛散塩分捕獲装置、20 飛散塩分捕獲体、22 ガーゼ、24 ガーゼホルダー、26 ウエイト、100 保持装置、110 上段保持部、112 仕切板、114 保持部材、114A スリット、115 固定ピン、116 蓋部、120 中段保持部、122 ベース部、122A 上板、122B 下板、122C 柱部、122D、122E スリット、124 枠体、124A 開口、130 下段保持部、132 仕切板、134 保持部材、134A スリット、135 固定ピン、136 蓋部、138 スリット形成部、138A スリット、138B 帯状部、140 フレーム、142 側板、144A、144B、146A、146B 連結部材、148 脚部、148A 柱部、148B 底部、149 脚部、149A 柱部、149B 底部、150 移動機構、152 モータ、152A ピニオンギア、154 ラック
【要約】
【課題】飛散塩分を捕獲するガーゼの交換を百葉箱の中で自動若しくは簡単な操作により実施できるようにする。
【解決手段】保持装置100は、中段保持部120が所定方向(装置後方向)に移動すると、前記上段収納部の何れか一から枠体124へスリット(仕切板112の間の空間の下部)及びスリット122Dを通して未使用の飛散塩分捕獲体20が落下して該飛散塩分捕獲体20がスリット138Aの間の帯状部138Bに載る第一の状態と、枠体124から前記下段収納部(仕切板112の間の空間)の何れか一へスリット122D及びスリット138Aを通して使用中の飛散塩分捕獲体20が落下すると共に、未使用の飛散塩分捕獲体20が上板122Aの上に載る第二の状態とに交互に遷移するように構成されている。
図1
図2
図3
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図5
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図11