【文献】
LEE CHINGWEI V,SYNTHETIC ANTI-BR3 ANTIBODIES THAT MIMIC BAFF BINDING AND TARGET BOTH HUMAN AND MURINE B CELLS,BLOOD,2006年11月 1日,V108 N9,P3103-3111
【文献】
LIN WEI YU,ANTI-BR3 ANTIBODIES: A NEW CLASS OF B-CELL IMMUNOTHERAPY COMBINING CELLULAR 以下備考,BLOOD,2007年12月 1日,V110 N12,P3959-3967,DEPLETION AND SURVIVAL BLOCKADE
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B細胞の蛍光活性化セルソーター(FACS)で測定したとき、インビボでのB細胞のパーセンテージを、未処理コントロールと比較して、90%まで減少させることができる、請求項1〜4のいずれかの抗体又は抗原結合部分。
変異した又は化学的に変更されたアミノ酸Fc領域を含み、前記変異した又は化学的に変更されたFc領域が野生型Fc領域と比較したときに増大したADCC活性を示す、請求項1〜7のいずれか一項の抗体又は抗原結合部分。
低フコシル化、又は非フコシル化されており、減少した量のフコシル残基を有する、又はフコシル残基を有していない、請求項1〜8のいずれか一項の抗体又は抗原結合部分。
フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子の発現を欠損し、そのためにその中で産生される抗体のADCC活性が野生型FUT8遺伝子を発現する細胞株と比較して増大している哺乳類細胞株において組換え発現により産生される、請求項9の抗体又は抗原結合部分。
BAFF受容体が仲介する、又はB細胞の破壊若しくは減少によって処置することができる病理学的障害の処置に用いられる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
B細胞性非ホジキンリンパ腫;前駆Bリンパ芽球性白血病;及びB細胞慢性リンパ性白血病、並びに多発性骨髄腫の処置に用いられる、請求項16に記載の抗体又は抗原結合部分。
B細胞性非ホジキンリンパ腫が、小リンパ球性リンパ腫、リンパ形質細胞様リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、びまん性大細胞リンパ腫、又はバーキットリンパ腫である、請求項17に記載の抗体又は抗原結合部分。
関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、多発性硬化症、天疱瘡、リンパ腫、白血病又は骨髄腫の処置に用いられる、請求項19または20に記載の医薬組成物。
請求項1〜18のいずれか一項の抗体又は抗原結合部分を製造する方法であって、請求項24の宿主細胞を培養すること、及び前記抗体又は抗原結合部分を単離することを含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明をより容易に理解できるように、まず特定の用語を定義する。さらなる定義は、詳細な説明をとおして説明される。
【0017】
「免疫反応」という用語は、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、及びこれらの細胞又は肝臓から産生される可溶性高分子(抗体、サイトカイン及び相補体を含む)による活動であって、侵入する病原体、病原体に感染した細胞又は組織、癌性細胞に対する、選択的な損傷、破壊又はヒトの体からの除去を引き起こし、自己免疫又は病理学的な炎症にある場合には正常なヒト細胞又は組織に対してこれを引き起こす活動を意味する。
【0018】
「シグナル伝達経路」又は「シグナル伝達活動」は、受容体に対する成長因子の結合のようなタンパク質-タンパク質の相互作用により一般的には開始し、細胞のある部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝達を引き起こす生化学的因果関係を意味する。一般的には、該伝達には、シグナル伝達を引き起こす一連の反応における1又は複数のタンパク質上の1又は複数のチロシン、セリン又はスレオニン残基の特異的なリン酸化が関係している。最後から2番目の過程には、典型的には、細胞核事象が含まれ、遺伝子発現の変化がもたらされる。
【0019】
BAFFR又はBAFF受容体という用語は、配列番号87で定義されるヒトBAFFRを意味する。PCT公報WO200004032及びWO2006073941は、抗BAFFR抗体に一般的に言及している。WO2006073941には、特異的抗BAFFR抗体が記載されている。
【0020】
ここでいう「抗体」という用語には、抗体全体、及び任意の抗原結合断片(つまり「抗原結合部分」)又はそれらの一本鎖が含まれる。自然発生的な「抗体」は、ジスルフィド結合により相互結合された少なくとも2つの重鎖(H)及び2つの軽鎖(L)を含む糖タンパク質である。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(ここではV
Hと省略する)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域 (ここではV
Lと省略する) 及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、C
Lから構成される。V
H及びV
L領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域で間をあけられている相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性領域にさらに細分化することができる。それぞれのV
H及びV
Lは、アミノ末端からカルボキシ末端へ次の順番で配列された3つのCDR及び4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系のさまざまな細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(Clq)を含む宿主組織又は因子に対する免疫グロブリンの結合を仲介することができる。
【0021】
ここで用いられる抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗原部分」)という用語は、抗原(例えば、BAFFRの一部)に対して特異的な結合能力を保持する、抗体の完全長又は1若しくは複数の断片を意味する。抗体の抗原結合機能が完全長抗体の断片によって実現され得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例には、V
L、V
H、C
L及びCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;ヒンジ領域におけるジスルフィド結合により接続された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab)
2断片;V
H及びCH1ドメインからなるFd断片;抗体の単一アームにおけるV
L及びV
HドメインからなるFv断片;V
HドメインからなるdAb断片(Ward et al., 1989 Nature 341:544-546);単離相補性決定領域(CDR)が含まれる。
【0022】
さらに、Fv断片の2つのドメインであるV
L及びV
Hは、離れた遺伝子によりコードされるが、それらは、V
L及びV
H領域がペアになって一価分子(単一鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al., 1988 Science 242:423-426; and Huston et al., 1988 Proc. Natl. Acad. Sci. 85:5879-5883を参照)を形成する単一タンパク鎖として作られるようにすることができる合成リンカーによって組換え法を用いて、結合させることができる。このような一本鎖抗体もまた、抗体の「抗原結合領域」という用語に包含されることが意図されている。これらの抗体断片は、当業者に知られる慣用技術を用いて得られ、該断片は、インタクトな抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。
【0023】
本明細書において「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を意味する(例えば、BAFFRに特異的に結合する単離抗体は、BAFFRの他の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、BAFFRに特異的に結合する単離抗体は、他の種からのBAFFR分子のような他の抗原との交差反応性を有していてもよい。さらに、単離抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まないこともある。
【0024】
本明細書において用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」は、単一分子組成物の抗体分子の調製物を意味する。モノクローナル抗体組成物は、単一の結合特異性及び特定のエピトープへの親和性を示す。
【0025】
本明細書において用語「ヒト抗体」は、フレームワーク及びCDR領域のいずれもがヒト起源の配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことが意図されている。さらに、抗体が定常領域を含む場合、該定常領域も、このようなヒト配列、例えばヒト生殖細胞系列配列、変異型ヒト生殖細胞系列配列、又はヒトフレームワーク配列分析に由来する抗体含有コンセンサスフレームワーク配列(例えば、ナピック(Knappik)らにより説明されている(2000. J Mol Biol 296, 57-86))に由来する。
【0026】
CDRなどの免疫グロブリン可変ドメインの構造及び配置は、よく知られた番号付与体系、例えば、カバット(Kabat)番号付与体系、チョシア(Chothia)番号付与体系、カバットとチョシアの組み合わせ(AbM)などによって定義してもよい(例えば、目的免疫グロブリンのタンパク質の配列、アメリカ保健社会福祉省 (1991)、カバット(Kabat)ら編集; Al Lazikani et al. (1997) J. Mol. Bio. 273:927 948を参照)。
【0027】
本発明のヒト抗体は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸残基を含んでもよい(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位特異的突然変異誘発又はインビボでの体細胞突然変異)。しかしながら、本明細書において用語「ヒト抗体」は、マウスのような別の哺乳動物の種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に接続された抗体を含むことを意図していない。
【0028】
用語「ヒトモノクローナル抗体」は、可変領域を有し単一結合特異性を示す抗体であって、可変領域においてフレームワーク及びCDR領域のいずれもがヒト配列に由来する抗体を意味する。1つの実施態様において、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合された、ヒト重鎖トランス遺伝子及び軽鎖トランス遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物(例えば、トランスジェニックマウス)から得られたB細胞を含むハイブリドーマにより産生される。
【0029】
本明細書において用語「組換えヒト抗体」は、組換え手段によって調製され、発現され、作出され、又は単離されたすべてのヒト抗体を含む。例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニック若しくはトランスクロモソーマルな動物(例えば、マウス)又はそれから調製されたハイブリドーマから単離された抗体、ヒト抗体を発現するよう形質転換された宿主細胞から、例えばトランスフェクトーマから単離された抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体、及び、ヒト免疫グロブリン遺伝子のすべて又は一部の配列を他のDNA配列に接合させることに関係する他の任意の手段によって調製され、発現され、作出され又は単離された抗体を含む。このような組換えヒト抗体が有する可変領域におけるフレームワーク及びCDR領域はヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列由来である。しかしながら、特定の実施態様において、このような組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(あるいは、ヒトIg配列の動物トランスジェニックを用いる場合、インビボ体細胞突然変異誘発)を受けることができ、このような組換え抗体のV
H及びV
L領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列V
H及びV
L配列に由来し関連するけれども、インビボではヒト抗体生殖細胞系列レパートリーの中に天然には存在しないかもしれない配列である。
【0030】
本明細書においては「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子から提供される抗体クラス(例えば、IgM、IgE、IgG1やIgG2のようなIgG)を意味する。
【0031】
語句「抗原認識抗体」及び「抗原特異的抗体」は、用語「抗原に特異的に結合する抗体」とここでは同じ意味に用いられる。
【0032】
本明細書においては、「BAFFRポリペプチドに特異的に結合する」抗体は、100nM以下、10nM以下、1nM以下のK
DでヒトBAFFRポリペプチドに結合する抗体を意味することが意図されている。「BAFFRとは別の抗原に交差反応する」抗体は、0.5x10
-8 M以下、5x10
-9M以下、又は2x10
-9M以下のK
Dでその抗原に結合する抗体を意味することが意図されている。「特定の抗原に交差反応しない」抗体は、1.5x10
-8M以上のK
Dで、又は5〜10x10
-8M、若しくは1x10
-7M以上のK
Dでその抗原に結合する抗体を意味することが意図されている。特定の実施態様において、抗原に交差反応しないこのような抗体は、標準的な結合アッセイでは本来的に検出することができないこれらのタンパク質に対する結合を示す。
【0033】
本明細書においては、用語「アンタゴニスト抗体」は、ヒトB細胞増殖アッセイ又はヒトB細胞IgG1産生アッセイなどのヒトB細胞アッセイにおいてBLyS存在下でのBAFFR誘導シグナル活性を低減、減少、及び/又は阻害する抗体を意味することが意図されている。ヒトB細胞増殖アッセイ及びIgG1産生アッセイの例は、下記実施例において詳細に説明されている。ある実施態様において、本抗体は、10nM以下、1nM以下、又は100pM以下のIC
50でのヒトB細胞増殖アッセイにおいて測定されるBLyS誘導活性を低減、減少又は阻害する。ある実施態様において、本抗体は、10nM以下、1nM以下、又は100pM以下のIC
50でのIgG1産生アッセイにおいて測定されるBLyS誘導活性を阻害する。
【0034】
本明細書においては、「アゴニスト活性を有しない」抗体は、ヒトB細胞増殖アッセイのような細胞ベースアッセイでのBLyS非存在下におけるBAFFR媒介シグナル伝達活性を顕著には増大させない抗体を意味することが意図されている。このようなアッセイは、下記実施例でより詳細に説明される。
【0035】
本明細書において、インビトロにおいてB細胞を
減少させる抗体は、B細胞
減少アッセイ(ADCC)で測定した場合、10nM以下のEC
50で、好ましくは1nM以下のEC
50で、より好ましくは100pM以下のEC
50で、B細胞を
減少させる抗体を意味することが意図されている。このようなアッセイは、下記実施例でより詳細に説明されている。
【0036】
本明細書において、インビボにおいてB細胞を
減少させる抗体は、B細胞の蛍光活性化セルソーター (FACS)で測定した場合に、インビボにおいてB細胞のパーセンテージを70%、好ましくは80%、より好ましくは90%まで低減させる抗体を意味することが意図されている。このようなアッセイは、下記実施例でより詳細に説明されている。
【0037】
本明細書において用語「K
assoc」又は「K
a」は、特定の抗体−抗原相互作用の会合速度を意味することが意図され、一方、本明細書において用語「K
dis」又は「K
d」は、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度を意味することが意図されている。本明細書において用語「K
D」は、解離定数を意味することが意図され、解離定数は、K
dのK
aに対する比率(すなわちK
d/K
a)から得られ、モル濃度(M)で表現される。抗体のK
D値は、当技術で十分に確立された方法を用いて測定されることができる。抗体のK
Dを測定する方法は、表面プラズモン共鳴を用いること、あるいはビアコア(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを用いることによる。
【0038】
本明細書において、用語「親和性」は、単一の抗原部位における抗体と抗原の間の相互作用の強さを意味する。それぞれの抗原部位の中では、抗体の可変領域「アーム」が、弱い非共有結合性の力を介して、抗原と数々の部位で相互作用する。相互作用が増えれば、親和性は強くなる。
【0039】
本明細書において、用語「結合力」は、抗体−抗原複合体の全体的な安定性又は強さの情報的な基準を意味する。これは、3つの主要因子により制御される:抗体エピトープ親和性;抗原及び抗体いずれもの価数;相互作用部分の構造配列。究極的には、これらの因子は、抗体の特異性、すなわち、特定の抗体の正確な抗原エピトープへの結合のしやすさを特徴づける。
【0040】
本明細書において、用語「ADCC」又は「抗体依存性細胞傷害」活性は、ヒトB細胞
減少活性を意味する。ADCC活性は、上で説明したヒトB細胞
減少アッセイによって測定できる。
【0041】
より高い結合力のプローブを得るために、二量体抱合体(FACSマーカーに結合させた抗体タンパク質の2分子)を構築でき、これにより、例えば生殖細胞系列抗体との低親和性相互作用が、より容易にFACSにより検出されることとなる。さらに、抗原結合の結合力を増大させる別の手段には、抗BAFFR抗体の本明細書に記載のいずれかの構築物の二量体、三量体、又は多量体の産生が含まれる。このような多量体は、個々のモジュール間の共有結合によって産生してもよく、例えば、天然のC末端からN末端への結合を模倣することにより、又は定常領域を介して一体となる抗体二量体を模倣することにより産生してもよい。Fc/Fc接合部分に設計された化学結合は、共有結合又は非共有結合であってもよい。さらに、Fc以外の二量体化又は多量体化パターンをBAFFRハイブリッドにおいて用いて、このような高次構造を作出することができる。例えば、多量体化ドメイン、例えば、ボレアン(Borean)(WO2004039841)に記載の三量体化ドメイン、又はWO98/18943に記載の五量体化ドメインの使用が可能である。
【0042】
本明細書においては、抗体についての「選択性」という用語は、特定の標的ポリペプチドに結合するが、密接に関係するポリペプチドには結合しない抗体を意味する。
【0043】
本明細書において、抗体についての「高親和性」という用語は、標的抗原に対して1nM以下のK
Dを有する抗体を意味する。本明細書において、用語「対象」には、任意のヒト又は非ヒト動物が含まれる。
【0044】
用語「非ヒト動物」には、すべての脊椎動物が含まれ、例えば、哺乳動物及び非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、羊、犬、猫、馬、牛、鶏、両生類、爬虫類などが含まれる。
【0045】
本明細書において、用語「最適化」は、ヌクレオチド配列が、産生細胞又は生物において、一般的には真核細胞において、例えば、ピキア(Pichia)細胞、トリコデルマ(Trichoderma)細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)又はヒト細胞において望ましいコドンを用いて、アミノ酸配列をコードするように変換されたことを意味する。最適化されたヌクレオチド配列は、「親」配列としても知られる開始ヌクレオチド配列によって本来コードされるアミノ酸配列を、完全に又はできるだけ多く保持するように設計する。ここでの最適化された配列は、CHO哺乳動物細胞に望ましいコドンを有するように設計されてきた;しかしながら、他の真核細胞におけるこれらの配列の最適化された発現も、ここでは想定されている。最適化されたヌクレオチド配列によってコードされたアミノ酸配列もまた、最適化されたと呼ばれる。
【0046】
本発明の多様な側面は、さらに詳細に、次のサブセクションにおいて説明される。
【0047】
様々な種のBAFFRに対する抗体の結合能を評価する標準的なアッセイは、当技術分野において周知であり、例えば、ELISA、ウェスタンブロット、及びRIAが含まれる。適切なアッセイは、実施例において詳細に説明される。抗体の結合反応速度(例えば、結合親和性)もまた、当技術分野において周知の標準的なアッセイによって評価することができ、例えば、ビアコアアッセイが挙げられる。BAFFRの機能特性(例えば、受容体結合、ヒトB細胞増殖又はIgG産生の阻止又は誘導)に対する抗体の効果を評価するアッセイは、実施例において詳細に説明される。
【0048】
したがって、当技術分野において周知でありここに説明される方法論によって測定される1又は複数のこれらのBAFFR機能特性(例えば、生化学、免疫化学的、細胞的、生理的、又は他の生物的活性など)を「阻害する」抗体は、抗体の非存在下で見られるものと比較した統計的に有意な減少に関係すると理解されるであろう。測定パラメータの少なくとも10%の、少なくとも50%、80%又は90%の統計的に顕著な減少のようなBAFFR活性効果を阻害する抗体は、また、特定の実施態様において本発明の抗体は、BAFFR機能活性の95%、98%又は99%以上を阻害しうる。
【0049】
「クロスブロック」、「クロスブロックされた」及び「クロスブロッキング」との用語は、ここでは、標準的な競合結合アッセイにおける他の抗体又は結合剤のBAFFRへの結合を妨害する他の結合剤又は抗体の結合能と同じ意味で用いられる。
【0050】
抗体又は他の結合剤が別の抗体又はBAFFRへの結合分子の結合を妨害することができる能力又は程度は、したがって、本発明によるクロスブロックするといわれうるかどうかは、標準的な競合結合アッセイを用いて測定されることができる。1つの適切なアッセイは、ビアコア技術の使用(例えば、ビアコア3000装置(ビアコア、アップサラ、スウェーデン)の使用)を含み、ビアコア技術は、表面プラズモン共鳴技術を用いた相互作用の程度を測定することができる。クロスブロックを測定する別のアッセイは、ELISAベースのアプローチを用いる。
【0051】
両方の方法のさらなる詳細は、実施例に示される。
【0052】
本発明によれば、抗体又は結合剤の組合せ(混合)の実際の結合が、2つの抗体又は結合剤の組合せでの最大理論結合(上で定義される)の80%と0.1%の間(例えば、80%〜4%)、具体的には、最大理論結合の75%と0.1%の間(例えば、75%〜4%)、より具体的には、最大理論結合の70%と0.1%の間(例えば、70%〜4%)、より具体的には、65%と0.1%の間(例えば、65%〜4%)となるように、本発明によるクロスブロッキング抗体又は他の結合剤は、記載されたビアコアクロスブロッキングアッセイにおいてBAFFRに結合する。
【0053】
溶液相抗BAFFR抗体が、溶液相抗BAFFR抗体の非存在下(すなわち、陽性コントロールウェル)で得られるBAFFR検出シグナルに比較して、BAFFR検出シグナル(すなわち、被覆された抗体に結合されたBAFFRの量)の60%と100%の間の、具体的には70%と100%の間の、より具体的には80%と100%の間の低減を引き起こすことができる場合、抗体は、実施例に記載のELISAアッセイにおいて、クロスブロッキングすると定義される。
【0054】
組換え抗体
本発明の抗体は、実施例に記載のとおりに単離され、構造的に特性化されたヒト組換え抗体を含む。本発明の単離抗体のV
Hアミノ酸配列は、配列番号50〜56に示される。本発明の単離抗体のV
Lアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号43〜49に示される。本発明の抗体の好ましい完全長軽鎖アミノ酸配列の例は、配列番号71〜74に示される。本発明の抗体の好ましい完全長重鎖アミノ酸配列の例は、配列番号75〜78にそれぞれ示される。抗体の好ましい完全長重鎖及び軽鎖アミノ酸配列の他の例は、ノバルティスファーマAG、フォーラム1、CH-4002バーゼル、スイスによって、DSMZに2009年4月29日に、それぞれ受託番号DSM22542及びDSM22543として寄託されたプラスミドpBW510及びpBW512に含まれる対応DNA配列によってコードされるものである。本発明の他の抗体には、アミノ酸欠失、挿入又は置換によって変異されたが、上で記載される配列に表されるCDR領域とCDR領域において少なくとも60、70、80、90又は95%同一性を有するアミノ酸が含まれ、ここで、上記配列に表されるCDR領域には、ノバルティスファーマAG、フォーラム1、CH-4002バーゼル、スイスによって、DSMZに2009年4月29日に、それぞれ受託番号DSM22542及びDSM22543として寄託されたプラスミドpBW510及びpBW512の対応DNA配列によってコードされるCDR領域が含まれる。ある実施態様において、それは、上記配列に表されるCDR配列と比較した場合に、CDR領域におけるアミノ酸欠失、挿入又は置換によって1、2、3、4又は5アミノ酸が変異されている変異アミノ酸配列を含む。
【0055】
さらに、可変重鎖親ヌクレオチド配列は、配列番号64に示される。可変軽鎖親ヌクレオチド配列は、配列番号57に示される。哺乳動物細胞における発現に最適化された完全長軽鎖ヌクレオチド配列は、配列番号83〜86に示される。哺乳動物細胞における発現に最適化された完全長重鎖ヌクレオチド配列は、配列番号79〜82に示される。本発明の他の抗体には、変異されているが上記配列と少なくとも60、70、80、90又は95%同一性を有するアミノ酸又は核酸が含まれる。ある実施態様においては、これには、上記配列に表される可変領域と比較した場合に、可変領域へのアミノ酸欠失、挿入又は置換によって1、2、3、4又は5アミノ酸が変異されている変異アミノ酸配列が含まれる。
【0056】
これらの抗体のそれぞれは、同じエピトープに結合し、同じ親抗体からの産物であるので、V
H、V
L完全長軽鎖及び完全長重鎖配列(ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列)を「混合し、マッチングして」、他の本発明の抗BAFFR結合分子を作成することができる。このような「混合し、マッチングした」抗体のBAFFR結合は、上記及び実施例に記載の結合アッセイ(例えば、ELISA)を用いて試験できる。これらの鎖を混合し、マッチングした場合には、特定のV
H/V
LペアからのV
H配列は、構造的に類似したV
H配列に置換されるべきである。同様に、特定の完全長重鎖/完全長軽鎖ペアからの完全長重鎖配列は、構造的に類似した完全長重鎖配列で置換されるべきである。同様に、特定のV
H/V
LペアからのV
L配列は、構造的に類似したV
L配列で置換されるべきである。同様に、特定の完全長重鎖/完全長軽鎖ペアからの完全長軽鎖配列は、構造的に類似した完全長軽鎖配列で置換されるべきである。したがって、ある側面においては、本発明は、配列番号50〜56からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号43〜49からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有し、BAFFRに特異的に結合する単離組換え抗体又はその抗原結合領域を提供する。
【0057】
別の側面において、本発明は、
(i)配列番号75〜78からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む完全長重鎖、及び配列番号71〜74からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む完全長軽鎖を有し、BAFFRに特異的に結合する単離組換え抗体、又は
(ii)その抗原結合部分を含む機能性タンパク質
を提供する。
【0058】
別の側面において、本発明は、
(i)配列番号79〜82からなる群から選ばれ、哺乳動物細胞における発現に最適化されたヌクレオチド配列によりコードされる完全長重鎖、及び配列番号83〜86からなる群から選ばれ、哺乳動物細胞における発現に最適化されたヌクレオチド配列によりコードされる完全長軽鎖を有し、BAFFRに特異的に結合する単離組換え抗体、又は
(ii)その抗原結合部分を含む機能性タンパク質
を提供する。
【0059】
抗体のV
H CDR1のアミノ酸配列は、配列番号1〜7に示される。抗体のV
H CDR2のアミノ酸配列は、配列番号8〜14に示される。抗体のV
H CDR3のアミノ酸配列は、配列番号15〜21に示される。抗体のV
L CDR1のアミノ酸配列は、配列番号22〜28に示される。抗体のV
L CDR2のアミノ酸配列は、配列番号29〜35に示される。抗体のV
L CDR3のアミノ酸配列は、配列番号36〜42に示される。配列番号1〜42説明するCDR領域は、カバット体系(Kabat system)(Kabat, E. A., et al., 1991、免疫学的目的のタンパク質の配列、第5版、米国保健福祉省、NIH出版No.91-3242)を用いて明らかにされる。
【0060】
これらの抗体のそれぞれがBAFFRに結合することができ、抗原結合特異性が第一次的にCDR1、2及び3領域により提供されることを考えると、V
H CDR1、2及び3配列並びにV
L CDR1、2及び3配列を、「混合し、マッチングする」ことができる(すなわち、異なる抗体からのCDRを、混合し、マッチングすることができ、V
H CDR1、2及び3、並びにV
L CDR1、2及び3を含むそれぞれの抗体は、本発明の他の抗BAFFR結合分子を生成する)。このような「混合し、マッチングした」抗体のBAFFR結合は、上記及び実施例に記載の結合アッセイ(例えば、ELISA)を用いて試験することができる。V
H CDR配列を混合し、マッチングした場合、特定のV
H配列からのCDR1、CDR2及び/又はCDR3配列は、構造的に類似したCDR配列で置換されるべきである。同様に、V
L CDR配列を混合し、マッチングした場合、特定のV
L配列からのCDR1、CDR2及び/又はCDR3配列は、構造的に類似したCDR配列で置換されるべきである。1又は複数のV
H及び/又はV
L CDR領域配列を、本発明のモノクローナル抗体のために本明細書で示されるCDR配列からの構造的に類似した配列で置換することによって、新規のV
H及びV
L配列が生成されうることは、当業者によって容易に理解されるであろう。
【0061】
ある実施態様において、単離組換え抗体、又はその抗原結合領域は、配列番号1〜7からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、配列番号8〜14からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、配列番号15〜21からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3、配列番号22〜28からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、配列番号29〜35からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2、及び配列番号36〜42からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3を有し、該抗体は、BAFFRに特異的に結合する。
【0062】
特定の実施態様において、抗体は、配列番号2の重鎖可変領域CDR1、配列番号9の重鎖可変領域CDR2、配列番号16の重鎖可変領域CDR3、配列番号23の軽鎖可変領域CDR1、配列番号30の軽鎖可変領域CDR2、及び配列番号37の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0063】
特定の実施態様において、抗体は、配列番号3の重鎖可変領域CDR1、配列番号10の重鎖可変領域CDR2、配列番号17の重鎖可変領域CDR3、配列番号24の軽鎖可変領域CDR1、配列番号31の軽鎖可変領域CDR2、及び配列番号38の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0064】
特定の実施態様において、抗体は、配列番号4の重鎖可変領域CDR1、配列番号11の重鎖可変領域CDR2、配列番号18の重鎖可変領域CDR3、配列番号25の軽鎖可変領域CDR1、配列番号32の軽鎖可変領域CDR2、及び配列番号39の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0065】
特定の実施態様において、抗体は、配列番号5の重鎖可変領域CDR1、配列番号12の重鎖可変領域CDR2、配列番号19の重鎖可変領域CDR3、配列番号26の軽鎖可変領域CDR1、配列番号33の軽鎖可変領域CDR2、及び配列番号40の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0066】
特定の実施態様において、抗体は、配列番号6の重鎖可変領域CDR1、配列番号13の重鎖可変領域CDR2、配列番号20の重鎖可変領域CDR3、配列番号27の軽鎖可変領域CDR1、配列番号34の軽鎖可変領域CDR2、及び配列番号41の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0067】
特定の実施態様において、抗体は、配列番号7の重鎖可変領域CDR1、配列番号14の重鎖可変領域CDR2、配列番号21の重鎖可変領域CDR3、配列番号28の軽鎖可変領域CDR1、配列番号35の軽鎖可変領域CDR2、及び配列番号42の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0068】
本明細書においては、抗体の可変領域又は完全長鎖がヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子を用いるシステムから得られるのであれば、ヒト抗体は、特定の生殖細胞系列配列「の生成物である」又はそれ「に由来する」重鎖若しくは軽鎖可変領域又は完全長重鎖若しくは軽鎖を含む。このようなシステムには、ヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスを、目的の抗原で免疫するもの、又はファージにディスプレイされたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリを、目的の抗原でスクリーニングするものが含まれる。ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列「の生成物である」又はそれ「に由来する」ヒト抗体は、ヒト抗体のアミノ酸配列をヒト生殖細胞系列免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較し、ヒト抗体の配列と配列において最も近接する(すなわち最大の%同一性)ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列を選択することによってそれ自体同定されうる。ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列「の生成物である」又はそれ「に由来する」ヒト抗体は、例えば自然発生的体細胞突然変異又は部位特異的変異の意図的導入による、生殖細胞系列配列と比較したアミノ酸の違いを含みうる。しかしながら、選択されたヒト抗体は、典型的には、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列とアミノ酸配列において少なくとも90%同一であり、他の種の生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列(例えば、マウス生殖細胞系列配列)と比較した場合にヒト抗体をヒトであると同定するアミノ酸残基を含む。特定のケースでは、ヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と、アミノ酸の配列において、少なくとも60%、70%、80%、90%、あるいは少なくとも95%、あるいは少なくとも96%、97%、98%、又は99%同一であってよい。典型的には、特定のヒト生殖細胞系列に由来するヒト抗体配列は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列とわずか10のアミノ酸の違いしか示さない。特定のケースでは、該ヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と、5、あるいは4、3、2、又は1のアミノ酸の違いしか示さないでよい。
【0069】
同種抗体
さらに別の態様において、本発明の抗体は、前記抗体のアミノ酸及びヌクレオチド配列と相同性のある、完全長の重鎖及び軽鎖アミノ酸配列、完全長の重鎖及び軽鎖のヌクレオチド配列、可変領域の重鎖及び軽鎖のヌクレオチド配列、又は可変領域の重鎖及び軽鎖アミノ酸配列を有し、本発明の抗BAFFR抗体の所望の機能特性を保持する。
【0070】
例えば、本発明は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む単離組換え抗体(又はその抗原結合部分を含む機能性タンパク質)を提供する。ここで該重鎖可変領域は、配列番号50〜56からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも80%、又は少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、該軽鎖可変領域は、配列番号43〜49からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも80%、又は少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、該抗体は、BAFFRに特異的に結合し、該抗体は、BLySにより誘導されるB細胞増殖、又はBLySにより誘導されるIgG1産生を阻害し、インビトロ又はインビボでB細胞を
減少させるという機能特性の少なくとも1つを示す。
【0071】
さらに別の例では、本発明は、完全長の重鎖及び完全長の軽鎖を含む単離組換え抗体(又はその抗原結合部分を含む機能性タンパク質)を提供する。ここで該完全長の重鎖は、配列番号75〜78からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、又は、少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、該完全長の軽鎖は、配列番号71〜74からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、又は、少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、該抗体は、BAFFRに特異的に結合し、該抗体は、BLySにより誘導されるB細胞増殖、又はBLySにより誘導されるIgG1産生を阻害し、インビトロ又はインビボでB細胞を
減少させるという機能特性の少なくとも1つを示す。
【0072】
別の例では、本発明は、完全長の重鎖及び完全長の軽鎖を含む単離組換え抗体(又はその抗原結合部分を含む機能性タンパク質)を提供する。ここで、該完全長の重鎖は、配列番号79〜82からなる群から選択されるヌクレオチド配列と、少なくとも80%、又は少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列によってコードされ、該完全長の軽鎖は、配列番号83〜86からなる群から選択されるヌクレオチド配列と、少なくとも80%、又は少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列によってコードされ、該抗体は、BLySにより誘導されるB細胞増殖、又はBLySにより誘導されるIgG1産生を阻害し、インビトロ又はインビボでB細胞を
減少させるという機能特性の少なくとも1つを示す。
【0073】
様々な実施の形態において、本抗体は、上記の1つ若しくはそれ以上の、2つ若しくはそれ以上の、又は3つの機能特性の示すことができる。本抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体とすることができる。好ましくは、本抗体は完全なヒトIgG1抗体である。
【0074】
他の実施形態では、V
H及び/又はV
Lのアミノ酸配列は、上記の配列と50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一とすることができる。他の実施形態では、V
H及び/又はV
Lのアミノ酸配列は、1、2、3、4又は5以上のアミノ酸位置におけるアミノ酸置換を除いて同一であり得る。それぞれ配列番号50〜56及び配列番号43〜49のV
H及びV
L領域と高度の同一性(すなわち80%又はそれ以上)を有するV
H及びV
L領域を有する抗体は、それぞれ配列番号64〜70及び57〜63によってコードされる核酸分子を突然変異誘発(例えば、部位特異的突然変異誘発又はPCR介在性突然変異誘発)させ、続いて、ここで説明する機能アッセイを使用して、コードする変換抗体について、保持された機能(つまり、上記の機能)を試験することによって得ることができる。
【0075】
他の実施形態では、完全長の重鎖及び/又は完全長の軽鎖アミノ酸配列は、上記の配列と50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であることができる。配列番号75〜78のいずれかの完全長の重鎖及び配列番号71〜74のいずれかの完全長の軽鎖とそれぞれ高い(すなわち80%又はそれ以上)の同一性を有する完全長の重鎖及び完全長の軽鎖を有する抗体は、それぞれ配列番号79〜82、配列番号83〜86にコードされた核酸分子を突然変異誘発(例えば、部位特異的突然変異誘発又はPCR介在性突然変異誘発)させ、続いて、ここで説明する機能アッセイを使用して、コードする変換抗体について、保持された機能(すなわち、上記の機能)を試験することによって得ることができる。
【0076】
他の実施形態では、完全長の重鎖及び/又は完全長の軽鎖のヌクレオチド配列は、上記の配列と、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であることができる。
【0077】
他の実施形態では、重鎖及び/又は軽鎖の可変領域のヌクレオチド配列は、上記の配列と、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であることができる。
【0078】
本明細書においては、2つの配列間の%同一性は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数、及びそれぞれのギャップの長さを考慮に入れた、配列で共有される同じ位置の数の関数(すなわち、%同一性 = 同じ位置の# /合計の#の位置 × 100)である。配列間の比較及び2つの配列の%同一性の決定は、以下で述べるように、数学的なアルゴリズムを使用して行うことができる。
【0079】
2つのアミノ酸配列の間の%同一性は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているイー・マイヤー(E. Meyers)とダブルユー・ミラー(W. Miller)のアルゴリズム(Comput. Appl. Biosci., 4:11-17, 1988)を使用し、PAM120重み残基テーブル(PAM120 weight residue table)、ギャップ長のペナルティ12、及びギャップペナルティー4を使用することにより決定することができる。さらに、2つのアミノ酸配列の間の%同一性は、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで利用可能)のGAPプログラムに組み込まれてきたニードルマン(Needleman)とワンチ(Wunsch)(J. Mol, Biol. 48:444-453, 1970)のアルゴリズムを使用し、ブロッサム62マトリックス又はPAM250マトリックスのいずれかを用い、ギャップ重みを16、14、12、10、8、6、又は4、長さ重みを1、2、3、4、5、又は6とすることによって決定することができる。
【0080】
保存的な変更をもつ抗体
特定の実施態様において、本発明の抗体は、CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む重鎖可変領域とCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域を有し、ここで、該CDR配列の1又は複数は、本明細書に記載の抗体に基づく特定のアミノ酸配列、又はその保存的な変更を有し、該抗体は、本発明の抗BAFFR抗体の所望の機能特性を保持する。従って、本発明は、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む重鎖可変領域、及びCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域からなる、単離組換え抗体、又はその抗原結合部分を含む機能性タンパク質を提供し、ここで、該重鎖可変領域CDR1のアミノ酸配列は、配列番号1〜7及びその保存的な変更からなる群から選択され、該重鎖可変領域CDR2のアミノ酸配列は、配列番号8〜14及びその保存的な変更からなる群から選択され、該重鎖可変領域CDR3のアミノ酸配列は、配列番号15〜21、及びその保存的な変更からなる群から選択され、該軽鎖可変領域CDR1のアミノ酸配列は、配列番号22〜28、及びその保存的な変更からなる群から選択され、該軽鎖可変領域CDR2のアミノ酸配列は、配列番号29〜35、及びその保存的な変更からなる群から選択され、該軽鎖可変領域CDR3のアミノ酸配列は、配列番号36〜42、及びその保存的な変更からなる群から選択され、該抗体は、BAFFRに特異的に結合し、該抗体は、BLySにより誘導されるB細胞増殖、又はBLySにより誘導されるIgG1産生を阻害し、インビトロ又はインビボでB細胞を
減少させるという機能特性の少なくとも1つを示す。
【0081】
様々な実施の形態において、該抗体は、上記の1つ若しくはそれ以上の、2つ若しくはそれ以上の、又は3つの機能特性の示すことができる。このような抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体とすることができる。
【0082】
他の実施形態では、本発明の抗体は、哺乳動物細胞での発現に最適化され、完全長の重鎖配列及び完全長の軽鎖配列を有し、ここで、これら1又は複数の配列は、ここに記載の抗体に基づく特定のアミノ酸配列又はその保存的な変更を有し、該抗体は、本発明の抗BAFFR抗体の所望の機能特性を保持する。従って、本発明は、完全長の重鎖及び完全長の軽鎖からなり、哺乳動物細胞での発現に最適化された単離モノクローナル抗体を提供し、ここで、完全長の重鎖は、配列番号75〜78、及びその保存的な変更の群から選択されるアミノ酸配列を有し、完全長の軽鎖は、配列番号71〜74、及びその保存的な変更の群から選択されるアミノ酸配列を有し、該抗体は、BAFFRに特異的に結合し、該抗体は、BLySにより誘導されるB細胞増殖、又はBLySにより誘導されるIgG1産生を阻害し、インビトロ又はインビボでB細胞を
減少させるという機能特性の少なくとも1つを示す。
【0083】
様々な実施の形態において、該抗体は、1つ以上の、2つは以上、又は3つ以上の前述の機能特性を示すことができる。このような抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体とすることができる。
【0084】
本明細書においては、「保存的な配列変更」という用語は、アミノ酸の変更であって、該アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に顕著に影響を与えないか、又は変化させない変更を意味することが意図されている。このような保存的な変更には、アミノ酸の置換、追加及び削除が含まれる。変更は、部位特異的突然変異誘発及びPCR介在性突然変異誘発などの本技術分野で知られている標準的な技術によって、本発明の抗体に導入することができる。
【0085】
保存的なアミノ酸置換は、アミノ酸残基が、同様の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されるものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、本技術分野で定義されてきた。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β-分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。したがって、本発明の抗体のCDR領域内の1又は複数のアミノ酸残基は、同じ側鎖のファミリーからの他のアミノ酸残基に置換することができ、該変換抗体は、ここに記載の機能アッセイを使用して保持する機能を試験することができる。
【0086】
本発明の抗BAFFR抗体と同じエピトープに結合する抗体
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の本発明の多様な特異的抗BAFFR抗体が結合するのと同じエピトープに結合する抗体を提供する。BLySにより誘導される効果をブロックすることができ実施例に記載のすべての抗体は、同じBAFFRのエピトープに高い親和性で結合し、該エピトープは、配列番号88のアミノ酸の間を含む。
【0087】
さらなる抗体は、したがって、標準的なBAFFRの結合アッセイにおける他の本発明の抗体とクロス競合する(例えば、統計的に有意に競合的に結合を阻害する)能力に基づいて同定することができる。本発明の抗体のヒトBAFFRへの結合を阻害する試験抗体の能力は、該試験抗体が、前記抗体のヒトBAFFRへの結合と競合することができることを示しており、このような抗体は、理論に縛られないが、競合する抗体として、ヒトBAFFRにおける同じ又は関連する(例えば、構造的又は空間的に近似する)エピトープに結合する。したがって、本発明の別の態様は、配列によって本明細書に記載されている抗体と同じ抗原に結合し、それと競合する抗体を提供する。特定の実施態様において、ヒトBAFFR上における本発明の抗体と同じエピトープに結合する抗体は、ヒト組換え抗体である。このようなヒト組換え抗体は、実施例に記載のように調製及び単離することができる。
【0088】
改変及び変更抗体
本発明の抗体は、変更抗体を設計する出発材料として、ここに示されるV
H及び/又はV
L配列の1又は複数を有する抗体を使用することにより調製することができ、該変更抗体は、出発抗体とは別の機能特性を有していてもよい。抗体は、一方又は両方の可変領域(すなわち、V
H及び/又はV
L)内、例えば、1又は複数のCDR領域及び/又は1又は複数のフレームワーク領域内の1又は複数の残基を変更することによって設計することができる。これに加えて、又は代えて、抗体は、定常領域内の1又は複数の残基を変更して改変して、例えば、該抗体の1又は複数のエフェクター機能を変更することができる。
【0089】
実行することができる可変領域改変の1つのタイプは、CDR接合である。抗体は、6つの重鎖及び軽鎖の相補性決定領域(CDR)にあるアミノ酸残基を介して、主に標的抗原と相互作用する。この理由から、CDRの内のアミノ酸配列は、CDRの外側の配列よりも、個々の抗体間でより多様である。CDR配列は、ほとんどの抗体抗原の相互作用の原因となるので、異なる特性を有する異なる抗体からのフレームワーク配列を接合した、特定の天然に存在する抗体からのCDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、特定の天然に存在する抗体の特性を模した組換え抗体を発現することが可能である(例えば、Riechmann, L. et al., 1998 Nature 332:323-327; Jones, P. et al., 1986 Nature 321 :522-525; Queen, C. et al., 1989 Proc. Natl. Acad. See. U.S.A. 86:10029-10033; ウィンター(winter)による米国特許第5,225,539, クイーン(Queen)らによる米国特許第5,530,101 ; 5,585,089; 5,693,762及び 6,180,370を参照のこと)。
【0090】
したがって、本発明の別の実施形態は、それぞれ配列番号1〜7からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列、配列番号8〜14からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2の配列、及び配列番号15〜21からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む重鎖可変領域、並びにそれぞれ配列番号22〜28からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列、配列番号29〜35からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2の配列、及び配列番号36〜42からなる群から選択されるアミノ酸配列からなるCDR3の配列を有する軽鎖可変領域を含む単離モノクローナル抗BAFFR抗体、又はその抗原結合部分を含む機能性タンパク質に関する。従って、このような抗体は、モノクローナル抗体のV
HとV
LのCDR配列を含むにもかかわらず、これらの抗体とは異なるフレームワーク配列を含むことができる。
【0091】
このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系列抗体遺伝子配列を含む公共DNAデータベース又は公開された参考文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系配列データベース(インターネットにおいてwww.mrc- cpe.cam.ac.uk/vbaseで入手可能)で見出すことができ、同様に、文献(Kabat, E. A., et al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242; Tomlinson, I. M., et al., 1992 J. fol. Biol. 227:776-798; and Cox, J. P. L. et al., 1994 Eur. J Immunol. 24:827-836.)においても見出すことができる。
【0092】
本発明の抗体に使用されるフレームワーク配列の例としては、本発明の選択された抗体によって使用されるフレームワーク配列に、例えば、本発明のモノクローナル抗体によって使用されるコンセンサス配列及び/又はフレームワーク配列に構造的に類似するものが挙げられる。V
HのCDR1、2及び3の配列、及びV
LのCDR1、2及び3の配列は、フレームワーク配列が由来する生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子に見出されるものと同一の配列を持つフレームワーク領域に接合することができ、あるいは、該CDR配列は、生殖細胞系列配列と比較して1又は複数の突然変異が含まれているフレームワーク領域に接合することができる。例えば、特定の例においてはフレームワーク領域内の残基を変異させることが、抗体の抗原結合能を維持、又はを向上させることに有益であることが見出されてきた(例えば、クイーン(Queen)らによる米国特許第5530101、5585089、5693762、及び6180370を参照)。
【0093】
別のタイプの可変領域の変更は、V
H及び/又はV
LのCDR1、CDR2及び/又はCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させ、これにより目的の抗体の1又は複数の結合特性(例えば、親和性)を向上させることであり、これは、「親和性成熟」として知られる。部位特異的突然変異誘発又はPCR介在性突然変異誘発は、変異及び抗体結合の効果、又はその他の目的の機能特性を導入するために実行することができ、ここに記載し実施例で示すインビトロ又はインビボのアッセイにおいて評価することができる。前述したような保存的な変更を導入することができる。該変更は、アミノ酸置換、追加又は削除であることができる。さらに、典型的には、CDR領域内のわずか1、2、3、4、5個の残基が変更されている。
【0094】
したがって、別の実施形態では、本発明は、配列番号1〜7からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号1〜7と比較して1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は追加を有するアミノ酸配列からなるV
HのCDR1領域;
配列番号8〜14からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号8〜14と比較して1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は追加を有するアミノ酸配列を有するV
HのCDR2領域;
配列番号15〜21からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号15〜21と比較して1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は追加を有するアミノ酸配列を有するV
HのCDR3領域;
配列番号22〜28からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号22〜28と比較して1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は追加を有するアミノ酸配列を有するV
LのCDR1領域;
配列番号29〜35からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号29〜35と比較して1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は追加を有するアミノ酸配列を有するV
LのCDR2の領域;、及び
配列番号36〜42からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号36〜42と比較して1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は追加を有するアミノ酸配列を有するV
LのCDR3の領域を有する重鎖可変領域からなる単離抗BAFFRモノクローナル抗体、又はその抗原結合部分を含む機能性タンパク質を提供する。
【0095】
代替のフレームワークや足場への抗原結合ドメインの接合
多種多様な抗体/免疫グロブリンのフレームワーク又は足場は、結果として生じるポリペプチドがBAFFRに特異的に結合する少なくとも1つの結合領域を含む限りにおいて、広く使用することができる。このようなフレームワークや足場は、ヒト免疫グロブリンの5つの主要イディオタイプ、又はその断片(例えば、ここで他の場所で開示されているもの)を含み、他の動物種の免疫グロブリン、好ましくはヒト化の側面を有するものを含む。ラクダ科において同定されるような単一重鎖抗体は、この点で特に重要である。新規のフレームワーク、足場及び断片は、当業者によって、発見され、開発され続けている。
【0096】
一つの側面において、本発明は、本発明のCDRを接合することができる非免疫グロブリンの足場を使用した非免疫グロブリンベースの抗体を生成することに関する。既知の又は将来の非免疫グロブリンのフレームワーク及び足場は、配列番号87の標的タンパク質に特異的な結合領域を含む限り、使用することができる。このような化合物は、ここでは「標的特異的な結合領域を含むポリペプチド」として知られる。非免疫グロブリンのフレームワークの例は、さらに以下のセクションで説明される(ラクダ抗体、及び非抗体足場)。
【0097】
ラクダ抗体
リャマ種(アルパカ(Lama paccos)、ラマ(Lama glama)及びラマビクーニャ(Lama vicugna))のような新世界のメンバーを含むラクダ及びヒトコブラクダ(フタコブラクダ及びヒトコブラクダ)ファミリーのメンバーから得られた抗体タンパク質は、サイズ、構造の複雑性及び被験者への抗原性に関して、特徴づけられてきた。この哺乳類ファミリーからの天然に見出される特定のIgG抗体は、軽鎖がなく、そのため、他の動物からの抗体における2つの重鎖、及び2つの軽鎖を有する典型的な四鎖四次構造とは構造的に異なっている。PCT/EP93/02214を参照(WO94/04678、1994年3月3公開)。
【0098】
V
HHとして識別される小さな単一の可変ドメインであるラクダ抗体の領域は、標的への高い親和性を有する小さな蛋白質を得るための遺伝子工学によって得ることができ、「ラクダナノボディ(camelid nanobody)」として知られる低分子量の抗体由来のタンパク質が得られる。米国特許第5759808(1998年6月2日発行);及び文献(Stijlemans, B. et al., 2004 J Biol Chem 279: 1256-1261 ;Dumoulin, M. et al., 2003 Nature 424: 783-788; Pleschberger, M. et al. 2003 Bioconjugate Chem 14: 440-448; Cortez-Retamozo, V. et al. 2002 lnt J Cancer 89: 456-62; 及びLauwereys, M. et al. 1998 EMBO J 17: 3512-3520.)を参照。ラクダ抗体及び抗体断片の改変ライブラリは、例えば、アブリンクス(Ablynx)、ゲント(Ghent)、ベルギー(Belgium)において、市販されている。他の非ヒト起源の抗体と同様に、ラクダ抗体のアミノ酸配列は、組換え変更して、ヒトの配列とより類似する配列を取得することができる。すなわち、ナノボディは「ヒト化」することができる。このようにラクダ抗体のヒトへの天然の低抗原性は、さらに低減させることができる。
【0099】
ラクダナノボディは、ヒトIgG分子の約10分の1の分子量を有し、該タンパク質はわずか数ナノメートルの物理的な直径を有する。サイズが小さいことの1つの結果として、ラクダナノボディは、大きな抗体タンパク質には機能的に見えない抗原部位に結合することができる。すなわち、ラクダナノボディは、古典的な免疫学的手法を使用するのでは検出できない抗原を検出する試薬として、及び可能性のある治療剤として有用である。このようにサイズが小さい別の帰結として、ラクダナノボディは、標的タンパク質の溝や狭い溝内における特定の部位に結合する結果として、阻害を行うことができ、それゆえ、古典的な抗体のものよりも、古典的な低分子薬の機能に、より密接に類似した能力を発揮することができる。
【0100】
低分子量であり小型のサイズであることの結果、さらに、ラクダナノボディは、非常に、熱安定性を有し、極端なpH及びタンパク質分解消化に安定であり、低抗原性である。もう一つの結果として、ラクダナノボディは、循環系から組織へ容易に移動し、血液脳関門さえ通過し、神経組織に影響を与える疾患を治療できる。ナノボディは、さらに血液脳関門を通過する薬物輸送を促進することができる。2004年8月19日公開の米国特許出願20040161738を参照。これらの特徴は、ヒトへの低抗原性とあいまって、卓越した治療法としての可能性を示す。また、これらの分子は、大腸菌などの原核細胞で完全に発現し、バクテリオファージとの融合タンパク質として発現し、機能させることができる。
【0101】
従って、本発明の特徴は、BAFFRに対して高い親和性を有するラクダ抗体又はナノボディである。ここでの特定の実施形態では、ラクダ抗体又はナノボディは、ラクダ科の動物において天然に生産される。すなわち、BAFFR又はそのペプチド断片で免疫したラクダ科動物から、他の抗体について本明細書に記載される技術を使用して生産される。あるいは、抗BAFFRのラクダナノボディは設計される。すなわち、実施例で説明するように、標的としてBAFFRを用いるパニング法を使用して、適切に突然変異を誘発させたラクダナノボディタンパク質をディスプレイするファージのライブラリなどから選択することにより生成される。1つの実施形態では、本開示の抗体はラクダ化されており、すなわちラクダ科のフレームワークと本明細書に記載のV
HのCDR1、CDR2及び/又はCDR3領域を有する。改変ナノボディは、さらにレシピエント対象において45分から2週間の半減期を持つように遺伝子工学によってカスタマイズすることができる。特定の実施態様では、ラクダ抗体又はナノボディは、例えばPCT/EP93/02214に記載のように、本発明のヒト抗体の重鎖又は軽鎖のCDRの配列を、ナノボディ又は単一ドメイン抗体のフレームワークの配列に接合することによって得られる。
【0102】
非抗体の足場
既知の非免疫グロブリンのフレームワークや足場には、アドネクチン(フィブロネクチン)(コンパウンドセラピューティクス社、ウォルサム、マサチューセッツ州)、アンキリン(モレキュラーパートナーズAG、チューリッヒ、スイス)、ドメイン抗体(ドマンティス社(ケンブリッジ、マサチューセッツ)およびアブリンクスnv(ズワインナールデ、ベルギー))、リポカリン(アンティカリン)(ピエリスポテオラボAG、フライジング、ドイツ)、小モジュラー免疫医薬品(トルビオン製薬社、シアトル、ワシントン州)、マキシボディ(アヴィディア社(マウンテンビュー、カリフォルニア))、プロテインA(アフィボディAG、スウェーデン)、アフィリン(γ-クリスタリン又はユビキチン)(サイルプロテインズGmbH、ハレ、ドイツ)、及びプロテインエピトープミミックス(ポリファー社、アルシュヴィル、スイス)が含まれ、これらに限定されない。
【0103】
(i)フィブロネクチン足場
フィブロネクチンの足場は、好ましくは、フィブロネクチンタイプIIIドメイン(例えば、フィブロネクチンIII型の10番目のモジュール(10 Fn3ドメイン))に基づく。フィブロネクチンタイプIIIドメインは、互いにパックしタンパク質のコアを形成する2つのβシートの間に分布している7又は8個のβストランドを有し、そしてさらに、互いにβストランドを接続し溶媒にさらされているさらなるループ(CDRに類似する)を含む。βシートのサンドイッチの各エッジには、少なくとも3つのこのようなループが存在し、そこにおいて、該エッジは、βストランドの方向と垂直なタンパク質の境界となっている(米国6818418)。
【0104】
全体の折りたたみは、ラクダ及びラマIgGにおける全抗原認識ユニットを含む重鎖の可変領域である最小の機能的な抗体断片に密接に関連しているが、これらのフィブロネクチンベースの足場は、免疫グロブリンではない。この構造のため、該非免疫グロブリン抗体は、性質及び親和性において、抗体のものと類似する抗原結合特性を模倣する。これらの足場は、インビボでの抗体の親和性成熟のプロセスに類似する過程であるインビトロでのループのランダム化及びシャッフル法において使用することができる。これらのフィブロネクチンに基づく分子は、標準的なクローニング技術を用いて分子のループ領域を本発明のCDRに置換することができる足場として使用することができる。
【0105】
(ii)アンキリン−分子パートナー
該技術は、異なる標的への結合に使用することができる可変領域を支えるための足場として、アンキリンに由来する繰り返しモジュールを有するタンパク質を使用することに基づく。アンキリン繰り返しモジュールは、2つの逆平行α-ヘリックス及び1つのβ-ターンから成る33のアミノ酸ポリペプチドである。可変領域の結合は、主にリボソームディスプレイを使用して最適化される。
【0106】
(iii) マキシボディ/アヴィマー−アヴィディア
アヴィマーは、LRP-1などの天然A−ドメインを含むタンパク質に由来する。これらのドメインは、天然においてタンパク質間相互作用に用いられ、ヒトでは、250種以上のタンパク質が構造的にA−ドメインに基づいている。アヴィマーは、アミノ酸リンカーを介して接続される多数の異なる「A-ドメイン」モノマー(2-10)から構成される。アヴィマーは、例えば、20040175756、20050053973、20050048512及び20060008844に記載の方法を使用して、標的抗原に結合することができるように作製することができる。
【0107】
(vi) プロテインA−アフィボディ
アフィボディ(登録商標)親和性リガンドは、プロテインAのIgG結合ドメインのいずれかの足場に基づく3つのヘリックスバンドルから構成される小さく単純なタンパク質である。プロテインAは、黄色ブドウ球菌の表面タンパク質である。この足場ドメインは、58個のアミノ酸で構成され、そのうち13が、多数のリガンド変異体を有するアフィボディ(登録商標)ライブラリを生成するようにランダム化される(例えば、米国5,831,012参照)。アフィボディ(登録商標)分子は、抗体を模倣し、150kDaである抗体の分子量との比較において、6kDaの分子量を有する。サイズが小さいにもかかわらず、アフィボディ分子の結合部位は、抗体のそれと類似する。
【0108】
(v) アンティカリン−(ピエリス)
アンティカリン(登録商標)は、ピエリスプロテオラボAGによって開発された製品である。これらは、化学的感受性又は不溶性の化合物の生理的輸送又は保管に通常は関与している小型で堅牢なタンパク質の広範なグループであるリポカリンに由来する。いくつかの天然のリポカリンは、ヒトの組織や体液に現れる。
【0109】
該タンパク質の構造は、剛性フレームワーク上に超可変ループを有する点で、免疫グロブリンに似ている。しかし、抗体又はそれらの組換え断片とは対照的に、リポカリンは、160〜180アミノ酸残基を持つ単一のポリペプチド鎖で構成され、単一の免疫グロブリンドメインよりもわずかに大きい。
【0110】
結合ポケットを構成する4つのループのセットは、顕著な構造可塑性を示し、様々な側鎖を許容する。したがって、結合部位は、高い親和性と特異性で形状の異なる所定の標的分子を認識するように、独自の過程で再形成することができる。
【0111】
リポカリンファミリーの1つのタンパク質であるモンシロチョウヨトウガ(Pieris Brassicae)のビリン結合タンパク質(BBP)は、4つのループのセットを変異させることによってアンティカリンの開発に使用されてきた。「アンティカリン」を記述する特許出願の一例としては、PCT公開公報WO199916873が挙げられる。
【0112】
(vi)アフィリン−サイルプロテインズ
アフィリン(商標)分子は、タンパク質及び小分子に対する特異的親和性のために設計された小さな非免疫グロブリンタンパク質である。新アフィリン(商標)分子は、いずれも異なるヒト由来足場タンパク質に基づくライブラリーである2つのライブラリから非常に迅速に選択することができる。
【0113】
アフィリン(商標)分子は、免疫グロブリンタンパク質との構造相同性を示さない。サイルプロテインズは、2つのアフィリン(商標)足場を使用する。一つは、人間の眼球の水晶体の構造タンパク質であるγ-クリスタリンであり、他方は「ユビキチン」スーパーファミリータンパク質である。いずれのヒト足場も、非常に小さく、高い温度安定性を示し、pH変化及び変性剤にほぼ耐性である。この高安定性は、主にタンパク質の拡張βシート構造による。γ-クリスタリン由来のタンパク質の例は、WO200104144に記載され、「ユビキチン様」タンパク質の例は、WO2004106368に記載されている。
【0114】
(vii) プロテインエピトープミミックス(PEM)
PEMは、タンパク質のβ-ヘアピン二次構造を模倣する中サイズの環状ペプチド様分子(分子量1〜2kDa)であり、該主要二次構造は、タンパク質間相互作用に関与する。
【0115】
フレームワーク又はFc改変
本発明の改変抗体には、例えば、抗体の特性を改善するためにV
H及び/又はV
L内のフレームワーク残基に変更がされたものが含まれる。通常、このようなフレームワーク変更は、抗体の免疫原性を減少させるためになされる。例えば、1つのアプローチは、対応する生殖細胞系列配列に1又は複数のフレームワーク残基を「復帰突然変異」することである。より具体的には、体細胞突然変異を経た抗体は、抗体が由来する生殖細胞系列配列とは異なるフレームワーク残基を含むことができる。このような残基は、抗体が由来する生殖細胞系列配列と、抗体フレームワーク配列を比較することにより同定することができる。フレームワーク領域の配列を生殖細胞系列構成に戻すためには、体細胞突然変異は、例えば、部位特異的突然変異誘発又はPCR介在性突然変異誘発によって、生殖細胞系列配列に「復帰突然変異」することができる。このような「復帰突然変異」抗体もまた、本発明に包含されることが意図されている。
【0116】
別のタイプのフレームワーク変更は、フレームワーク領域内若しくは1若しくは複数のCDR領域内の1又は複数の残基の変異であって、T細胞-エピトープを除去しそれにより抗体の潜在的な免疫原性を減少させる変異に関係する。このアプローチは、また「脱免疫化」と呼ばれ、カー(Carr)らによる米国特許公開第20030153043号により詳細に記載されている。
【0117】
フレームワーク又はCDR領域内に行われた変更に加えて又はその代わりに、本発明の抗体は、典型的には血清半減期、補体結合反応、Fc受容体結合、及び/又は抗原依存性細胞傷害などの1又は複数の抗体の機能特性を変更するFc領域内における変更を含むように設計することができる。さらに、本発明の抗体は、抗体の1又は複数の機能特性を再度変えるために、化学的に変更し(例えば、1又は複数の化学部分が抗体に取り付けられる)、又はその糖鎖を変えて変更してもよい。これらの実施形態の各々は、以下でさらに詳細に説明されている。Fc領域の残基の番号は、カバット(Kabat)のEUインデックスのものである。
【0118】
一つの実施形態では、CH1ヒンジ領域は、ヒンジ領域中のシステイン残基の数が変更されるように(例えば、増加又は減少されるように)変更される。このアプローチは、ボドマー(Bodmer)らの米国特許第5,677,425号にさらに記載されている。CH1のヒンジ領域のシステイン残基の数は、例えば、又は軽鎖と重鎖の集合を容易にし、又は抗体の安定性を増加若しくは減少させるように、変更される。
【0119】
別の実施形態では、抗体のFcヒンジ領域は、抗体の生物学的半減期を減少させるように変異される。より具体的には、1又は複数のアミノ酸変異は、抗体が天然のFcヒンジドメインSpA結合に関連してブドウ球菌プロテインA(SpA)結合を損なうように、Fcヒンジ断片のCH2-CH3ドメイン接合領域に導入される。この方法は、ワード(Ward)らによる米国特許第6165745により詳細に記載されている。
【0120】
別の実施形態では、抗体は、その生物学的半減期を増大させるために変更される。様々な方法が可能である。例えば、ワード(Ward)による米国特許第6277375に記載のとおり、次の1又は複数の変異を導入することができる:T252L、T254S、T256F。また、生物学的半減期を高めるために、抗体は、プレスタ(Presta)らによる米国特許第5,869,046号及び第6,121,022号に記載のとおり、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから得られるサルベージ受容体結合エピトープを含むように、CH1又はCL領域内において変更することができる。
【0121】
他の実施形態では、少なくとも1のアミノ酸残基を別のアミノ酸残基に置き換え、抗体のエフェクター機能を変更することによって、Fc領域は変更される。例えば、その抗体がエフェクターリガンドへの変更した親和性を有するが親抗体の抗原結合能を保持するように、1又は複数のアミノ酸を異なるアミノ酸残基に置換することができる。親和性が変更されたエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体又は補体のC1コンポーネントであり得る。この方法は、いずれもウィンター(Winter)らによる米国特許第5624821及び5648260に詳細に記載されている。
【0122】
別の実施形態では、抗体が変更されたC1q結合性及び/又は減少若しくは廃止された補体依存性細胞傷害(CDC)を有するように、アミノ酸残基から選択される1又は複数のアミノ酸を異なるアミノ酸残基に置換することができる。この方法は、イドゥソジー(Idusogie)らによる米国特許第6194551により詳細に記載されている。
【0123】
別の実施形態では、1又は複数のアミノ酸残基が、補体に結合する抗体の能力を変更するように変更される。この方法は、ボドマー(Bodmer)らによるPCT公開WO94/29351にさらに記載されている。
【0124】
さらに別の態様において、Fc領域は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を仲介する抗体の能力を高めるために、及び/又はFcγ受容体に対する抗体の親和性を高めるために、1又は複数のアミノ酸を変更することによって変更される。このアプローチは、プレスタ(Presta)によるPCT公開公報WO 00/42072に詳しく記載されている。また、ヒトIgG1におけるFcγRl、FcγRII、FcγRIII及びFcRnとの結合部位は、マッピングされ、結合が改善された変異体(variants)が開示されている(Shields, R. L. et al., 2001 J. Biol. Chen. 276:6591-6604を参照)。
【0125】
さらに別の実施形態では、抗体のグリコシル化が変更される。例えば、非グリコシル化抗体(すなわち、該抗体は糖鎖を欠く)の作製が可能である。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を高めるために変更することができる。このような糖質の変更は、例えば、抗体の配列内の糖鎖の1又は複数の部位を変更することによって達成することができる。例えば、1又は複数の可変領域フレームワークのグリコシル化部位の除去を引き起こす結果、その部位におけるグリコシル化を除去する1又は複数のアミノ酸置換が可能である。このような非グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を高めることがある。このような方法は、コウ(Co)らによる米国特許第5714350号及び第6350861号で詳細に記載されている。
【0126】
これに加えて又は代えて、変化したグリコシル化タイプを有する抗体、例えば、フコシル残基の量が減っている若しくは無い低フコシル化若しくは非フコシル抗体、又は増加したバイセクティングGlcNAc構造を有する抗体を作ることができる。このような変更されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を高めることが実証されてきた。このような糖質の変更は、例えば、変化したグリコシル化機構を有する宿主細胞内で抗体を発現することによって行うことができる。変化したグリコシル化機構を有する細胞は、当技術分野で述べられてきており、本発明の組換え抗体を発現し、変更されたグリコシル化を有する抗体を生成する宿主細胞として使用することができる。例えば、ハン(Hang)らによるEP 1,176,195は、細胞株において発現する抗体が非フコシル化を示すように又はフコシル残基を欠くように機能的に破壊されたFUT8遺伝子(これは、フコシルトランスフェラーゼをコードする)を有する細胞株について説明する。したがって、ある実施態様においては、本発明の抗体は、低フコシル化又は非フコシル化パターンを示す細胞株における組換え発現によって産生され、例えば、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子の欠損した発現を有する哺乳動物細胞株によって産生される。プレスタ(Presta)によるPCT公開公報WO 03/035835は、フコースをAsn(297)接続糖質に接合する能力が低下し、宿主細胞において発現される抗体の低フコシル化をも引き起こす変異体CHO細胞株であるLecl3細胞を説明する(Shields, R.L. et al., 2002 J. Biol. Chem. 277:26733-26740も参照のこと)。ウマナ(Umana)らによるPCT公開公報WO 99/54342は、改変細胞株において発現する抗体が増大したバイセクティングGlcNac構造を示し抗体の増大したADCC活性を引き起こすような、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)-N アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼII (GnTIII))を発現するように改変された細胞株について説明する(Umana et al., 1999 Nat. Biotech. 17:176-180も参照)。ユリーカセラピュティクスは、さらに、フコシル残基を欠く変化したグリコシル化パターンを有する抗体を産生することができる遺伝学的に改変されたCHO哺乳動物細胞について説明する(
http://www.eurekainc.com/about_us/companyoverview.html)。さらに、本発明の抗体は、哺乳動物様グリコシル化パターンに改変され糖鎖付加パターンとしてフコースを欠く抗体を産生しうる酵母又は糸状菌において産生されうる(例えば、EP1297172B1)。
【0127】
本発明によって意図されている本抗体のもう1つの変更は、ペグ化である。抗体は、例えば、抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を高めるためにペグ化することができる。抗体をペグ化するには、典型的には、その内の1又は複数のPEG基が、抗体又は抗体断片に付着する条件下で、抗体又はその断片を、反応性エステル又はPEGのアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコール(PEG)と反応させる。ペグ化は、反応性ペグ分子(又は類似の反応性水溶性ポリマー)とアシル化反応やアルキル化反応することにより行うことができる。本明細書においては、用語「ポリエチレングリコール」には、他のタンパク質を誘導体化するために用いられてきた任意の形式のPEG、例えば、モノ(C1〜C10)アルコキシ−又はアリールオキシ−ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコールマレイミドが包含されることが意図されている。特定の実施形態では、ペグ化される抗体は、非グリコシル化抗体である。タンパク質のペグ化の方法は、当技術分野で知られており、本発明の抗体に適用することができる。例えば、ニシムラ(Nishimura)らによるEP O 154 316、イシカワ(Ishikawa)らによるEP 0 401 384を参照のこと。
【0128】
本発明によって意図されている本抗体の別の変更は、結果分子の半減期を高めるための、本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域と血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン又はその断片との複合又はタンパク質融合である。このようなアプローチは、例えば、バランス(Ballance)らによるEP0322094に記載されている。
【0129】
別の可能性は、結果分子の半減期を増加させるための、本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域と、ヒト血清アルブミンのような血清タンパク質に結合することができるタンパク質との融合である。このような方法は、ニグレン(Nygren)らによるEP 0 486 525に記載されている。
【0130】
変化した抗体の改変方法
上述のように、本明細書に示すV
H及びV
L配列又は完全長の重鎖及び軽鎖配列を有する抗BAFFR抗体は、完全長の重鎖及び/又は軽鎖配列、V
H及び/又はV
L配列、又はこれらに取り付けられる定常領域を変更することによって、新しい抗BAFFR抗体の作製のために使用することができる。したがって、本発明の別の局面において、ヒトBAFFRへの結合、BAFFRの1又は複数の機能特性(例えば、アンタゴニスト作用、B細胞
減少活性)の阻害などの本発明の抗体の少なくとも1つの機能特性を保持し構造的に関連する抗BAFFR抗体を作製するために、本発明の抗BAFFR抗体の構造上の特性を使用することができる。
【0131】
例えば、本発明の抗体の1又は複数のCDR領域、又はその変異体を既知のフレームワーク領域及び/又は他のCDRと組換え結合して、上述したような付加的で組換え改変された本発明の抗BAFFR抗体を作成することができる。他のタイプの変更には、前のセクションで説明したものが含まれる。改変方法のための出発材料は、ここに記載された1又は複数のV
H及び/又はV
L配列、又はその1又は複数のCDR領域である。改変抗体を作製するには、ここで提供される1又は複数のV
H及び/又はV
L配列、又はその1又は複数のCDR領域を有する抗体を実際に調製する(すなわち、タンパク質として発現する)必要はない。むしろ、配列に含まれる情報が、元の配列由来の「第二世代」配列を作製する出発材料として使用され、「第二世代」配列がタンパク質として調製され、発現される。
【0132】
したがって、別の実施形態では、本発明は、配列番号1〜7からなる群から選択されるCDR1配列、配列番号8〜14からなる群から選択されるCDR2配列、及び/又は配列番号15〜21からなる群から選択されるCDR3配列を有する重鎖可変領域抗体配列、並びに配列番号22〜28からなる群から選択されるCDR1配列、配列番号29〜35からなる群から選択されるCDR2配列、及び/又は配列番号36〜42からなる群から選択されるCDR3配列を有する軽鎖可変領域抗体配列から構成される抗BAFFR抗体であって、前記重鎖可変領域抗体配列及び/又は前記軽鎖可変領域抗体配列における少なくとも1つのアミノ酸残基を変換して少なくとも1つの変換抗体配列を作成し、該変換抗体配列をタンパク質として発現される抗体の調製方法を提供する。
【0133】
したがって、別の実施形態では、本発明は、配列番号75〜78からなる群から選択した配列を有する完全長の長鎖抗体配列、及び配列番号71〜74からなる群から選択した配列を有する完全長の軽鎖抗体配列から構成される、哺乳動物細胞での発現に最適化された抗BAFFR抗体であって、前記完全長の重鎖抗体配列及び/又は前記完全長の軽鎖抗体配列における少なくとも1つのアミノ酸残基を変換して少なくとも1つの変換抗体配列を作成し、該変換抗体配列をタンパク質として発現される抗体の調製方法を提供する。
【0134】
変換抗体配列は、配列番号15〜21及び配列番号36〜42からなる群から選択される固定されたCDR3配列又はUS20050255552に記載されるような最小必須結合決定基、並びにCDR1及びCDR2配列における多様性を有する抗体ライブラリをスクリーニングすることによっても調製することができる。該スクリーニングは、ファージディスプレイ技術など、抗体ライブラリから抗体をスクリーニングするための任意の適切なスクリーニング技術によって行うことができる。
【0135】
標準的な分子生物学的手法が、変換抗体配列の調製及び発現に用いることができる。変換抗体配列にコードされる抗体は、ここで述べた抗BAFFR抗体の機能特性の1、いくつか又はすべてを保持するものであり、ここで該機能特性には、ヒトBAFFRへの特異的な結合;及び/又はBLySにより誘導されるB細胞の増殖、若しくはBLySにより誘導されるB若しくはBLySにより誘導されるIgG1の産生の阻害;及び/又はインビトロ又はインビボでヒトB細胞を
減少させることが含まれ、これらに限定されない。
【0136】
変換抗体は、1若しくはそれ以上、2若しくはそれ以上、又は3若しくはそれ以上の上述の機能特性を示すことができる。
【0137】
変換抗体の機能特性は、当該分野で利用可能な、及び/又はここで説明される標準的なアッセイ、例えば、実施例で説明されるもの(例えば、ELISA)を使用して評価することができる。
【0138】
本発明の抗体を改変する方法の特定の実施形態において、抗BAFFR抗体をコードする配列の全部又は一部においてランダムに又は選択的に変異を導入することができ、得られた変更された抗BAFFR抗体は、結合活性について、及び/又はここで述べられる他の機能特性についてスクリーニングすることができる。変異方法は、当技術分野において説明されてきた。例えば、ショート(Short)によるPCT公開WO02/092780は、飽和変異法、合成ライゲーションアセンブリ又はそれらの組み合わせを使用して抗体変異を作製し及びスクリーニングする方法について記載している。また、ラザール(Lazar)らによるPCT公開WO 03/074679は、抗体の物理化学的特性を最適化するための計算スクリーニング方法を使用する方法について記載する。
【0139】
本発明の抗体をコードする核酸分子
本発明のもう一つの側面は、本発明の抗体をコードする核酸分子に関する。哺乳動物細胞での発現に最適化された完全長の軽鎖のヌクレオチド配列の例は、配列番号83〜86に示されている。哺乳動物細胞での発現に最適化された完全長の重鎖のヌクレオチド配列の例は、配列番号79〜82に示されている。
【0140】
核酸は、全細胞中、細胞溶解物中に存在してもよく、あるいは部分的に精製され又は実質的に純粋な形態の核酸であってもよい。核酸は、他の細胞成分又は他の汚染物質から、例えば他の細胞核酸やタンパク質から精製されるとき、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動及び他の当技術分野で周知の技術を含む標準的な技術によって「単離され」又は「実質的に純粋にされる」。F. Ausubel, et al., ed. 1987 Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New Yorkを参照。本発明の核酸は、例えば、DNA又はRNAであってよく、イントロン配列が含まれていてもいなくてもよい。ある実施態様においては、核酸は、cDNA分子である。核酸は、ファージディスプレイベクターなどのベクター、又は組換えプラスミドベクターの中に存在していてもよい。
【0141】
本発明の核酸は、標準的な分子生物学の技術を使用して取得することができる。ハイブリドーマ(例えば、以下でさらに説明するヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスから調製されたハイブリドーマ)で発現される抗体については、ハイブリドーマによって作られる抗体の重鎖及び軽鎖をコードするcDNAは、標準的なPCR増幅又はcDNAのクローニング技術によって得ることができる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリから得られる(例えば、ファージディスプレイ技術を使用する)抗体については、抗体をコードする核酸は、ライブラリのメンバーである様々なファージクローンから回収することができる。
【0142】
いったんV
HとV
Lの部分をコードするDNA断片が得られると、これらの断片は、例えば、可変領域の遺伝子を完全長の抗体鎖遺伝子に、Fab断片遺伝子に、又はscFv遺伝子に変換するなど、標準的な組換えDNA技術によってさらに操作することができる。これらの操作では、V
L又はV
HをコードするDNA断片は、別のDNA分子に、あるいは抗体の定常領域などのような別のタンパク質をコードする断片に、あるいは柔軟性のあるリンカーに、作動可能なように連結される。この文脈で使用される用語「作動可能なように連結される」とは、2つのDNA断片が、例えば、2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるように、又はタンパク質が所望のプロモーターの制御下に発現されるように、機能的に結合されることを意味することが意図されている。
【0143】
V
H領域をコードする単離DNAは、V
HをコードするDNAと重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3)をコードする別のDNA分子とを作動可能なように連結することにより、完全長の重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で知られており(例えば、Kabat, E. A., el al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照)、これらの領域を包括するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE値、IgM又はIgD定常領域であり得る。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域はIgG1アイソタイプから選択される。Fab断片重鎖遺伝子については、V
HをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に、作動可能なように連結することができる。
【0144】
V
L領域をコードする単離DNAは、V
LをコードするDNAと軽鎖定常領域C
Lをコードする別のDNA分子とを作動可能なように連結することにより、完全長の軽鎖遺伝子に(Fab軽鎖遺伝子と同様に)に変換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で知られており(例えば、Kabat, E. A., et al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照)、これらの領域を包括するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。軽鎖定常領域はカッパ又はラムダ定常領域であってもよい。
【0145】
scFv遺伝子を作製するためには、V
H及びV
L配列が、柔軟性のあるリンカーによって結合したV
H及びV
L領域とともに、連続した一本鎖タンパク質として発現することができるように、V
H及びV
LをコードするDNA断片が、柔軟性のあるリンカーをコードする、例えば、アミノ酸配列(Gly
4 -Ser)
3をコードする別の断片に、作動可能なように連結される(例えば、Bird et al., 1988 Science 242:423-426; Huston et at., 1988 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; McCafferty et al., 1990 Nature 348:552-554を参照)。
【0146】
本発明のモノクローナル抗体の産生
モノクローナル抗体(mAbs)は、例えば、コーラー(Kohler)及びミルスタイン(Milstein)(1975 Nature 256:495.)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術などの従来のモノクローナル抗体法を含む様々な技術で製造することができる。モノクローナル抗体を産生するためには多くの技術、例えばBリンパ球のウイルス又は発癌性形質転換を用いることができる。
【0147】
ハイブリドーマを調製するための動物系のひとつは、マウス系である。マウスのハイブリドーマ産生は、十分に確立された手法である。免疫付与プロトコル及び融合のための免疫脾細胞を分離するための技術は、当該技術分野で知られている。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)及び融合手法もまた知られている。
【0148】
本発明のキメラ又はヒト化抗体は、上記のように調製されるマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて調製することができる。重鎖及び軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAは、標準的な分子生物学の技術を使用して非マウス(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含むように設計した目的のマウスハイブリドーマから得ることができる。例えば、キメラ抗体を作製するために、マウス可変領域は、当該技術分野で知られている方法を用いてヒト定常領域に接続させることができる(例えば、キャビリー(Cabilly)らによるU.S. Patent No. 4,816,567を参照)。ヒト化抗体を生成するために、マウスCDR領域は、当技術分野で知られている方法を用いてヒトのフレームワークに挿入することができる。例えば、ウィンター(Winter)による米国特許第5225539号, クイーン(Queen)らによる米国特許第5530101号、第5585089号、第5693762号、第6180370号を参照。
【0149】
特定の実施形態では、本発明の抗体はヒトモノクローナル抗体である。BAFFRに対するこのようなヒトモノクローナル抗体は、マウスの免疫システムではなくヒトの免疫システムの一部を持つトランスジェニック又はトランス染色体マウスを使用して生成することができる。これらのトランスジェニックマウス及びトランス染色体マウスは、HuMAbマウス及びKMマウスとここでそれぞれ称されるマウスを含み、ここでは「ヒトIgマウス」と総称される。
【0150】
HuMAbマウス(登録商標)(メダレックス社)は、内因性μ及びκ鎖遺伝子座を不活性化する標的変異とともに、非再配列ヒト重鎖(μ及びγ)並びにκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座を含む(例えば、Lonberg, et al., 1994 Nature 368(6474): 856-859を参照)。したがって、該マウスは、マウスIgM又はκの低減した発現を示し、免疫応答において、導入されたヒト重鎖及び軽鎖トランス遺伝子は、クラススイッチング及び体細胞突然変異を経て、高親和性ヒトIgGκモノクローナルを産生する(上のLonberg, N. et al., 1994の文献; Lonberg, N., 1994 実験薬理学ハンドブック113:49-101におけるレビュー; Lonberg, N. and Huszar, D., 1995 Intern. Rev. Immunol.13: 65-93, 及びHarding, F. and Lonberg, N., 1995 Ann. N. Y. Acad. Sci. 764:536-546)。HuMAbマウスの調製及び使用、並びにこのようなマウスにより担持されるゲノム修飾は、さらに、Taylor, L. et al., 1992 Nucleic Acids Research 20:6287-6295; Chen, J. et at., 1993 International Immunology 5: 647-656; Tuaillon et al., 1993 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:3720-3724; Choi et al., 1993 Nature Genetics 4:117-123; Chen, J. et al., 1993 EMBO J. 12: 821-830; Tuaillon et al., 1994 J. Immunol. 152:2912-2920; Taylor, L. et al., 1994 International Immunology 579-591; 及びFishwild, D. et al., 1996 Nature Biotechnology 14: 845-851に説明されている。さらに、ロンバーグ(Lonberg)及びケイ(Kay)による米国特許第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,789,650号、第5,877,397号、第5,661,016号、第5,814,318号、第5,874,299号、及び第5,770,429号;スラニ(Surani)らによる米国特許第5,545,807号;ロンバーグ(Lonberg)及びケイ(Kay)によるPCT公開WO 92103918、WO 93/12227、WO 94/25585、WO 97113852、WO 98/24884及びWO 99/45962; 及びコーマン(Korman)らによるPCT公開WO 01/14424を参照。
【0151】
別の実施形態では、本発明のヒト抗体は、トランス遺伝子及びトランス染色体にヒト免疫グロブリン配列を有するマウス、例えば、ヒト重鎖トランス遺伝子及びヒト軽鎖トランス染色体を有するマウスを使用して得ることができる。ここでは「KMマウス」と称するこのようなマウスは、イシダ(lshida)らによるPCT公開WO 02/43478に詳細に記載されている。
【0152】
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する別のトランスジェニック動物システムが、当該分野で利用可能であり、本発明の抗BAFFR抗体を得るために使用することができる。例えば、ゼノマウス(アブジェニクス社)と呼ばれる別の遺伝子組換えシステムが、利用可能である。このようなマウスは、例えば、クハーラパティ(Kucherlapati)らによる米国特許第5,939,598、6,075,181、6,114,598、6,150,584 及び6,162,963に記載されている。
【0153】
また、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する別のトランス染色体動物のシステムが、当該分野で利用可能であり、本発明の抗BAFFR抗体を得るために使用することができる。例えば、ヒト重鎖トランス染色体及びヒト軽鎖トランス染色体の両方を有し、「TCマウス」と称されるマウスが使用可能であり、このようなマウスは文献に記載されている(Tomizuka et al., 2000 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:722-727)。さらに、ヒト重鎖及び軽鎖トランス染色体を有するウシが、当該技術分野において説明されており(Kuroiwa et al., 2002 Nature Biotechnology 20:889-894)、本発明の抗BAFFR抗体を得るために使用することができる。
【0154】
本発明のヒト組換え抗体は、ファージディスプレイ法を用いてヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリをスクリーニングすることによっても調製することができる。ヒト抗体を単離するためのこのようなファージディスプレイ法は、当該技術分野において確立されており、又は下記の実施例で説明する。例えば、ラドナー(Ladner)らによる米国特許第5,223,409号、第5,403,484号、及び第5,571,698号、ダウアー(Dower)らによる米国特許第5,427,908号及び第5,580,717号、マックカファーティ(McCafferty)らによる米国特許第5,969,108号及び第6,172,197号、並びに、グリフィス(Griffiths)らによる米国特許第5,885,793号、第6,521,404号、第6,544,731号、第6,555,313号、第6,582,915号及び第6,593,081号を参照。
【0155】
本発明のヒトモノクローナル抗体は、ヒト抗体応答が免疫付与に応じて発生することができるようにヒト免疫細胞が再構成されているSCIDマウスを使用して調製することができる。このようなマウスは、例えば、ウィルソン(Wilson)らによる米国特許第5,476,996号及び第5,698,767号に記載されている。
【0156】
ヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの産生
本発明のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを産生するために、免疫マウスからの脾細胞及び/又はリンパ節細胞を単離し、マウス骨髄腫細胞株などの適当な不死化細胞株に融合することができる。得られたハイブリドーマは、抗原特異的な抗体の産生についてスクリーニングすることができる。例えば、免疫マウスからの脾臓リンパ球の単一の細胞懸濁液は、50%のPEG存在下で、6分の1の数のP3X63-Ag8.653非分泌性のマウス骨髄腫細胞(ATCC、CRL 1580)に融合させることができる。細胞を約2×145平底マイクロタイタープレートに播種し、続いて20%の胎児クローン血清、18%の"653"調製培地、5%のオリゲン(IGEN)、4mMのL-グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、5mMのHEPES、0:055mMの2-メルカプトエタノール、50units/mlのペニシリン、50mg/mlのストレプトマイシン、50mg/mlのゲンタマイシン及び1×HAT(シグマ;該HATは、融合の24時間後に追加される)を含む選択培地で2週間インキュベートする。約2週間後、HATがHTに置き換えられた培地で細胞を培養することができる。個々のウェルは、ヒトモノクローナルIgM及びIgG抗体についてELISA法によってスクリーニングすることができる。大規模なハイブリドーマの増殖が生じた後、通常10〜14日後に培地を観察することができる。抗体を分泌するハイブリドーマを再度播種し、再度スクリーニングすることができ、まだヒトIgG陽性の場合には、限界希釈法によって、モノクローナル抗体を少なくとも2回サブクローニングすることができる。安定したサブクローンは、その後、インビトロで培養し、特性評価のための組織培養培地中に少量の抗体を生成することができる。
【0157】
ヒトモノクローナル抗体を精製するために、選択されたハイブリドーマをモノクローナル抗体精製用2リットルスピナー-フラスコで培養されることができる。上清を濾過し、収集した後、プロテインA-セファロース(ファルマシア、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)でのアフィニティークロマトグラフィーに付す。純度を保証するために、溶出されたIgGをゲル電気泳動及び高速液体クロマトグラフィーによって確認することができる。緩衝液をPBSに交換してよく、1.43吸光係数を用いたOD
280によって濃度を測定することができる。モノクローナル抗体を分注し、−80℃で保存できる。
【0158】
モノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの産生
本発明の抗体は、例えば、当技術分野でよく知られているように(例えば、Morrison, S. (1985) Science 229:1202)組換えDNA技術と遺伝子導入法を組み合わせて使用して、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて製造することができる。
【0159】
例えば、抗体、又はその抗体断片を発現させるために、部分又は完全長の軽鎖及び重鎖をコードするDNAは、標準的な分子生物学的技術(例えば、PCR増幅、目的の抗体を発現するハイブリドーマを用いたcDNAクローニング)によって得ることができ、該DNAは、遺伝子が転写及び翻訳制御配列に作動可能に連結されるように発現ベクターに挿入することができる。この文脈では、「作動可能に連結されている」という用語は、ベクター内の転写及び翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写及び翻訳を調節する目的の機能を果たすように、抗体遺伝子がベクターに連結されていることを意味することが意図されている。発現ベクター及び発現制御配列は、使用される発現宿主細胞に適合するように選択される。抗体の軽鎖遺伝子及び抗体の重鎖遺伝子は、別のベクターに挿入され、又は、より一般的には、両方の遺伝子を同じ発現ベクターに挿入することができる。抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片及びベクターにおける相補的な制限酵素認識部位の連結、又は制限酵素認識部位が存在しない場合、平滑末端連結)によって発現ベクターに挿入される。ここで記載する抗体の軽鎖及び重鎖可変領域は、V
Hセグメントが作動可能にベクター中のCHのセグメントに連結され、V
Lセグメントが作動可能にベクター中のCLのセグメントに連結されるように、既に所望のアイソタイプの重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をコードする発現ベクターに挿入することによって、任意の抗体アイソタイプの完全長の抗体遺伝子の作製に用いることができる。加えて又は代えて、該組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで接続されているように、抗体鎖遺伝子をベクターにクローン化してもよい。該シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫タンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
【0160】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する制御配列を有する。用語「制御配列」は、抗体鎖遺伝子の転写又は翻訳を制御する、プロモーター、エンハンサー、及びその他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化信号)を含むことが意図されている。このような制御配列は、例えば、ゲッデル(Goeddel)(Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA 1990)において記載されている。制御配列の選択を含む発現ベクターのデザインは、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルのような要因に依存しうることが当業者によって容易に理解されるであろう。哺乳動物宿主細胞発現の制御配列には、サイトメガロ・ウイルス(CMV)、シミアンウイルス40 (SV40)、アデノウイルス及びポリオーマ・ウイルス由来のプロモーター及び/又はエンハンサー(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))のような、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指揮するウイルス性エレメントが含まれる。これに代えて、ユビキチンプロモーター又はP-グロビンプロモーターのような非ウイルス性制御配列が用いられうる。さらに、SV40初期プロモーター、及びヒトT細胞白血病ウイルスタイプ1の長い末端反復からの配列を含む、SRaプロモーターシステムのような異なる起源からの配列から構成される制御エレメントが用いられうる(Takebe, Y. et al., 1988 Mol. Cell. Biol. 8:466-472)。
【0161】
抗体鎖遺伝子及び制御配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞のベクターの複製を制御する配列(例えば、複製起点)及び選択マーカー遺伝子などのような追加の配列を有してよい。該選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば、アクセル(Axel)らによる米国特許第4399216号、第4634665号及び第5179017号を参照)。例えば、典型的には、選択マーカー遺伝子は、G418、ハイグロマイシン又はメトトレキサートなどの薬剤に対する耐性を、ベクターが導入された宿主細胞に付与する。選択マーカー遺伝子には、(メトトレキサート選択/増幅でのdhfr宿主細胞での使用のための)ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子、及び(G418選択のための)ネオ遺伝子が含まれる。
【0162】
軽鎖及び重鎖の発現のために、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターが、標準的な技術によって宿主細胞に導入される。様々な形態における「導入」という用語は、外来性DNAを原核生物又は真核生物宿主細胞へ導入するのに一般的に使用される様々な技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどの技術を包含することが意図されている。原核生物又は真核生物のいずれかの宿主細胞において本発明の抗体を発現させることは、理論的に可能である。このような真核細胞、特に哺乳動物細胞は、原核細胞よりも、適切に折り畳まれ免疫学的に活性な抗体を構築し分泌しやすいので、真核細胞内、特定の哺乳動物宿主細胞内における抗体の発現は、注目される。抗体遺伝子の原核生物での発現は、活性のある抗体を高収率で生産するには効果があがらないことが報告されている(Boss, M. A. and Wood, C. R., 1985 Immunology Today 6:12-13)。
【0163】
本発明の組換え抗体を発現するための哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(DHFR選択マーカー(例えば、RJ. Kaufman and P.A. Sharp, 1982 MoI. Biol. 159:601 -621に説明されている)を用いるdhfrCHO細胞(Urlaub and Chasin, 1980 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に説明されている)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞を含む)が含まれる。特に、NSOの骨髄腫細胞で使用するためには、別の発現システムは、WO 87/04462、WO 89/01036 及び EP 338,841に示されるGSの遺伝子発現システムである。一実施形態では、本発明の組換え抗体を発現する哺乳動物宿主細胞にはFUT8遺伝子発現に欠損がある哺乳動物細胞株が含まれ、これは例えば、US6,946,292B2に記載されている。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入された場合、抗体は、宿主細胞中の抗体の発現、又は宿主細胞が培養されている培養培地中への抗体の分泌を可能にする十分な一定の期間、宿主細胞を培養することによって、生成される。抗体は、標準的なタンパク質精製法を使用して、培養培地から回収することができる。
【0164】
免疫抱合体
別の側面において、本発明は、細胞毒素、薬物(例えば、免疫抑制剤)又は放射性毒素のような治療的部分に抱合された、抗BAFFR抗体又はその断片を取りあげる。このような抱合体は、ここでは、「免疫抱合体」と呼ばれる。1又は複数の細胞毒素を含む免疫抱合体は、「免疫毒素」と呼ばれる。細胞毒素又は細胞毒性薬には、細胞に有毒な(例えば、破壊する)任意の薬剤が含まれる。例には、タクソン、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、t.コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン、並びにそのアナログ又はホモログが含まれる。治療剤には、例えば、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アブレーション剤(例えば、メクロルエタミン、チオエパクロラキシンブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシスジクロロヂアミン白金(II)(DDP)シスプラチン、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC))、及び抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン))も含まれる。
【0165】
本発明の抗体と抱合することができる治療的細胞毒素の他の例としては、デュオカルマイシン、カリチアマイシン、メイタンシンとアウリスタチン、及びそれらの誘導体が挙げられる。カリチアマイシン抗体抱合体の一例は、商業的に入手可能である(マイロターグTm; ワイス−アイエルスト)。
【0166】
細胞毒素は、本技術分野で利用可能なリンカーを使用して、本発明の抗体に抱合させることができる。抗体に毒素を抱合させるために使用されているリンカーの種類の例には、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィド及びペプチド含有リンカーが含まれるが、これらに限定されない。例えば、リソソーム区画内における低pHでの切断に影響を受けやすい、又はカテプシン(例えば、カテプシンB、C、D)のような腫瘍組織で優先的に発現するプロテアーゼなどのプロテアーゼによる切断に影響を受けやすいリンカーを選択することができる。
【0167】
細胞毒素のタイプ、リンカー及び治療薬を抗体に抱合させるための方法のさらなる説明については、文献(Saito, G. et al., 2003 Adv. Drug DeNv. Rev. 55:199-215; Trail, P.A. et al., 2003 Cancer Immunol. Immunother. 52:328-337; Payne, G., 2003 Cancer Cell 3:207-212; Allen, T.M., 2002 Nat. Rev. Cancer 2:750-763; Pastan, I. and Kreitman, R. J., 2002 Curr. Opin. Investig. Drugs 3:1089-1091 ; Senter, P. D. and Springer, CJ. , 2001 Adv. Drug DeNv. Rev. 53:247-264.)も参照。
【0168】
本発明の抗体は、また、放射性同位体に抱合され、放射性免疫抱合体とも称される細胞傷害性放射性医薬品を産生することができる。診断又は治療に使用する抗体に抱合させることができる放射性同位体の例には、ヨウ素
l31、インジウム
111、イットリウム
90、及びルテチウム
177が含まれるが、これらに限定されない。放射性免疫抱合体を調製するための方法は、当該技術分野で確立されている。放射性免疫抱合体の例は、ゼヴァリン(商標)(DECファーマスーティカルズ)及びベキサール(商標)(コリクサファーマスーティカルズ)を含め市販されており、同様の方法は、本発明の抗体を用いて放射性免疫抱合体を調製するために使用することができる。
【0169】
本発明の抗体抱合体は、既知の生物学的応答を変更するために使用でき、薬物部分は、古典的な化学治療剤に限定解釈されない。例えば、薬物部分は、所望の生物学的活性を有するタンパク質又はポリペプチドであってもよい。このようなタンパク質には、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、ジフテリア毒素などのような酵素活性毒素、又はその活性フラグメント;腫瘍壊死因子やインターフェロン-γなどのタンパク質;又はリンホカイン、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)、又は他の成長因子などの生物学的応答修飾物質などが含まれる。
【0170】
このような治療部分を抗体に抱合する技術は、よく知られており、例えば、文献(ライシュフェルド(Reisfeld)ら編集、モノクローナル抗体及び癌治療 pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985)における、アモン(Amon)らによる 「癌治療における薬物の免疫ターゲティングのためのモノクローナル抗体」; ロビンソン(Robinson)ら編集、コントロールド薬物輸送(第2版) pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987)における、ヘルストーム(Hellstrom)らによる「薬物輸送のための抗体」;ピンチェラ(Pinchera)ら、モノクローナル抗体'84 生物学的及び治療的適用pp. 475-506 (1985)における、トロープ(Thorpe)による、「癌治療における細胞毒性薬の抗体輸送:レビュー」;ボールドウィン(Baldwin)ら編集 癌検出及び治療のためのモノクローナル抗体 pp. 303-16 (Academic Press 1985)における、「癌治療における放射線標識抗体の治療的使用の分析、結果、及び将来的展望」、及びトロープ(Thorpe)らによる「抗体毒素抱合体の調製及び細胞毒性特性」Inmunol. Rev., 62:1 19-58 (1982))を参照。
【0171】
二重特異性分子
別の局面において、本発明は、本発明の抗BAFFR抗体又はその断片を含む二重特異性又は多重特異性分子を特徴とする。本発明の抗体又はその抗原結合領域は、誘導体化され、又は別の機能性分子、例えば他のペプチドやタンパク質(例えば、別の抗体又は受容体のリガンド)に連結されて、少なくとも2つの異なる結合部位又は標的分子に結合する二重特異性分子を産生することができる。本発明の抗体は、実際には、誘導体化され、又は1以上の他の機能分子に連結され、2以上の異なる結合部位及び/又は標的分子に結合する多重特異性分子を産生することができる。このような多重特異性分子は、ここで使用される「二重特異性分子」という用語に包含されることが意図されている。本発明の二重特異性分子を作製するには、本発明の抗体は、別の抗体、抗体断片、ペプチド又は結合模倣体などのような1又は複数の他の結合分子に、二重特異性分子となるように機能的に結合することができる(例えば、化学結合、遺伝子融合、非共有結合又はその他の方法による)。
【0172】
したがって、本発明には、少なくとも1つのBAFFRへの第1結合特異性及び第2の標的エピトープへの第2結合特異性を含む二重特異性分子が含まれる。例えば、第2の標的エピトープは、第1の標的エピトープとは異なる別のBAFFRのエピトープである。もう一つの例は、少なくとも1つのBAFFRへの第1結合特異性、及びCD20内のエピトープへの第2結合特異性を含む二重特異性分子である。
【0173】
また、二重特異性分子が多重特異性である本発明において、該分子は、第1及び第2の標的エピトープに加えて、さらに第3の結合特異性を有することができる。
【0174】
1つの実施形態では、本発明の二重特異性分子は、その結合特異性として、少なくとも一つの抗体、又は例えばFab、Fab'、F(ab')
2、Fv、又は一本鎖Fvを含むその抗体断片を含む。抗体は、軽鎖若しくは重鎖二量体、又はラドナー(Ladner)らによる米国特許第4,946,778号(その内容を参照によって明示的に組み込む)に記載のFv又は一本鎖構築物などのような、その任意の最小限の断片であってもよい。
【0175】
本発明の二重特異性分子中に使用することができる他の抗体には、マウス、キメラ及びヒト化モノクローナル抗体がある。
【0176】
本発明の二重特異性分子は、当技術分野で知られている方法を使用して、構成結合特異性を抱合することにより調製することができる。例えば、二重特異性分子の各結合特異性は、別々に生成して、その後互いに結合することができる。結合特異性がタンパク質又はペプチドの場合、様々なカップリング又は架橋剤が共有抱合に使用することができる。架橋剤の例としては、プロテインA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセテート(SATA)、5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)、及びスルフォスクシニミジル 4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-l-カルボキシラート(スルホ-SMCC)が挙げられる(例えば、Karpovsky et al., 1984 J. Exp. Med. 160:1686; Liu, MA et al., 1985 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648を参照のこと)。他の方法としては、文献(Paulus, 1985 Behring Ins. Mitt. No. 78,118-132; Brennan et al., 1985 Science 229:81-83, 及びGlennie et al., 1987 J. Immunol. 139: 2367-2375)に説明されるものが挙げられる。抱合剤は、SATA及びスルホ-SMCCであり、いずれも、ピエリスケミカル社(ロックフォード、イリノイ)から入手できる。
【0177】
結合特異性が抗体である場合、それらは、2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合により抱合することができる。特定の実施態様においては、該ヒンジ領域は、抱合前に、奇数の、例えば、1つのスルフヒドリル残基を含むように変更される。
【0178】
あるいは、両方の結合特異性が、同じベクターにコードされ、同じ宿主細胞内で発現され構築され得る。この方法は、二重特異性分子がmAb×mAb、mAb×Fab、Fab×F(ab')
2 又はリガンド×Fab融合タンパク質である場合に特に有用である。本発明の二重特異性分子は、1つの単一鎖抗体及び結合決定基を含む一本鎖分子、又は2つの結合決定基を含む一本鎖二重特異性分子であることができる。二重特異性分子は、少なくとも2つの単鎖分子を含むことができる。二重特異性分子を調製するための方法は、例えば、米国特許第5260203号、米国特許第5455030号、米国特許第4881175号、米国特許第5132405号、米国特許第5091513号、米国特許第5476786号、米国特許第5013653号、米特許番号5258498号、及び米国特許第5482858号に記載されている。
【0179】
特定の標的への二重特異性分子の結合は、例えば、酵素免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(REA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば、成長阻害)、又はウェスタンブロットアッセイによって確認することができる。これらのアッセイの各々は、一般的には、目的の複合体に特異的な標識試薬(例えば、抗体)を用いることによって、特定の目的のタンパク質抗体複合体の存在を検出する。
【0180】
多価抗体
別の局面において、本発明は、BAFFRに結合する本発明の抗体の少なくとも2つの同一又は異なる抗原結合部分を含む多価抗体を提供する。1つの実施形態では、該多価抗体は、抗体の少なくとも2つ、3つ又は4つの抗原結合部分を提供する。抗原結合部分は、タンパク質融合又は共有若しくは非共有結合を介して互いに接続されることができる。 また、二重特異性分子の結合の方法については記載してきた。4価化合物は、例えば、本発明の抗体の定常領域に(例えば、Fc又はヒンジ領域に)結合する抗体に、本発明の抗体の抗体を架橋することにより得ることができる。
【0181】
医薬組成物
別の局面において、本発明における、モノクローナル抗体の1又は組み合わせ、又はそれらの抗原結合部位を含み、医薬的に許容される担体とともに処方される医薬組成物などの組成物を、本発明は提供する。このような組成物は、本発明の抗体の1若しくは(例えば、異なるものの2又はそれ以上の)組み合わせ、又は免疫複合体若しくは二重特異性分子を含むことができる。例えば、本発明の医薬組成物は、標的抗原上の異なるエピトープに結合する抗体、又は相補的な活性を有する抗体の組み合わせを含むことができる。
【0182】
本発明の医薬組成物は、また、併用療法において投与されること、すなわち、他の薬剤と組み合わせることもできる。例えば、該併用療法は、少なくとも1つの他の抗炎症又は別の化学療法剤、例えば、細胞傷害性剤、抗癌剤又は抗増殖剤と組み合わせて本発明の抗BAFFR抗体を含むことができる。併用療法で使用することができる治療剤の例は、以下の本発明の抗体の使用のセクションで、より詳細に説明されている。
【0183】
ここにおいては、「医薬的に許容される担体」には、任意及びすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤、並びに生理学的に適合性がある同様のものが含まれる。該担体は、筋肉内、皮下、経口、脊髄静脈又は表皮投与(例えば、注射又は注入による)に適しているべきである。投与の経路に応じて、活性化合物は、すなわち、抗体、免疫抱合体、又は二重特異性分子は、化合物を不活性化しうる酸の作用及び他の天然の条件から該化合物を保護する素材で被覆することができる。
【0184】
本発明の医薬化合物は、1又は複数の医薬的に許容される塩を含むことができる。「医薬的に許容される塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、あらゆる不要な毒物学的影響を与えない塩を意味する(例えば、Berge, S. M., et al., 1977 J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照)。このような塩の例には、酸付加塩及び塩基付加塩が含まれる。酸付加塩には、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素、リンなどの無毒性の無機酸に由来するもの、脂肪族モノ及びジ-カルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸などの無毒性の有機酸に由来するものが含まれる。塩基付加塩には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属に由来するもの、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどの無毒性の有機アミンに由来するものが含まれる。本発明の医薬組成物は、また、医薬的に許容される抗酸化物質を含むことができる。医薬的に許容される抗酸化物質の例には、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性酸化防止剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなどの油溶性酸化防止剤;クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤が含まれる。
【0185】
本発明の医薬組成物に用いることができる適当な水性及び非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適当な混合物、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが含まれる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料を用いることにより、分散液の場合に必要な粒子サイズを維持することにより、及び界面活性剤を使用することにより、維持することができる。
【0186】
これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などのアジュバントを含むことができる。微生物の存在の防止は、上記の滅菌の手順、並びに様々な抗菌剤及び抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等)の含有の両方によって確保することができる。組成物には、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含むようにすることも望ましいことがある。また、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどのような吸収遅延剤を含めることによって、注射可能薬フォームの持続的吸収がもたらされうる。
【0187】
薬学的に許容される担体には、滅菌注射液又は分散液の即時調製用の滅菌水溶液又は分散液及び滅菌粉末が含まれる。このような媒体と医薬的に活性な物質の薬剤の使用は、当該技術分野で知られている。いずれかの従来の媒体又は薬剤が活性化合物と適合性でない場合を除き、本発明の医薬組成物において、それらを使用することが意図される。補助的な活性化合物もまた、組成物に組み込むことができる。
【0188】
治療用組成物は、通常は、滅菌状態であって、製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならない。該組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、その他の高薬物濃度に適した規則構造として処方することができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)及びそれらの適当な混合物を含有する溶媒又は分散媒であることができる。例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合に必要な粒子サイズを維持することにより、及び界面活性剤の使用によって、適切な流動性を維持することができる。多くの場合、例えば砂糖、マンニトールなどの多価アルコール、ソルビトール又は塩化ナトリウムなどの等張化剤を組成物中に含めることができる。例えばモノステアリン酸塩及びゼラチンなどのような吸収遅延剤を組成物に含めることによって、注射可能な組成物の持続的な吸収がもたらされうる。
【0189】
安定なタンパク質(例えば、抗体)製剤の開発に関するレビューは、文献(Cleland et al. (1993) Crit. Reviews. Ther. Drug Carrier Systems 10(4):307-377 、Wei Wang (1999) Int. J. Pharmaceutics 185:129-88)に見出すことができる。さらなる抗体の製剤についての説明は、例えば、ドアティ(Daugherty)と and マーズニィ(Mrsny)(2006) 先端薬物輸送レビュー58: 686-706; 米国6171586; 米国4618486; 米国20060286103; WO06044908; WO07095337; WO04016286; Colandene et al. (2007) J. Pharm. Sci 96:1598-1608; Schulman (2001) Am. J. Respir. Crit. Care Med. 164:S6-S11、その他の既知の参考文献に見出すことができる。
【0190】
皮内又は皮下での適用に使用される溶液又は懸濁液は、一般的には、次の1又は複数の化合物を含む:注射用蒸留水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒のような無菌希釈液;ベンジルアルコール又はメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩などの緩衝剤;及び塩化ナトリウム又はデキストロースのような張度の調整のための薬剤。pHは、塩酸や水酸化ナトリウムなどのような酸又は塩基で調整することができる。このような製剤は、ガラスやプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器、又は複数回投与バイアルに封入することができる。
【0191】
滅菌注射溶液は、必要な量、適当な溶媒中で、上で列挙した成分の1又は組み合わせに本発明の抗体を組み込み、続いて、必要に応じて、精密ろ過滅菌を行うことにより調製(prepared)することができる。一般的に、分散液は、基本的な分散媒、及び上記の列挙されたものからの必要な他の成分を含む滅菌賦形剤に活性化合物を組み込むことにより調製される。滅菌注射液の調製のための無菌粉末の場合には、調製の方法は、真空乾燥、及び凍結乾燥(凍結乾燥)であり、予め滅菌ろ過処理した溶液から、有効成分及び任意の付加的な所望の成分の粉末が得られる。
【0192】
治療上有効量の本発明の抗体が、例えば、静脈内、皮膚又は皮下注射などによって投与される場合、結合剤は、発熱物質を含まない、非経口的に投与可能な水溶液形態である。このような非経口的に許容されるタンパク質溶液の調製は、当該技術分野の範囲で、pH、等張性、安定性などに配慮して行うことができる。静脈内、皮膚、又は皮下注射の医薬組成物は、当技術分野で知られているように、結合剤に加えて、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、ブドウ糖注射液、ブドウ糖及び塩化ナトリウム注射液、乳酸リンゲル液、又は他の賦形剤などの等張賦形剤を含むのが好ましい。本発明の医薬組成物は、当業者に知られている安定剤、防腐剤、緩衝剤、酸化防止剤、又は他の添加剤をも含むことができる。
【0193】
単回投与形態を調製するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、治療される対象及び投与の特定の様式に依存して変化する。単回投与形態を調製するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、一般的には、治療効果を生成する組成物の量になる。一般的にはこの量は、医薬的に許容される担体と組み合わせて、百パーセントのうち、有効成分約0.01%〜約99%、有効成分の約0.1〜約70%、又は約1%〜約30%の範囲にある。
【0194】
投薬計画は、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するために調整される。例えば、単回のボーラス投与が可能であり、ある時間にわたる数回に分けての分割投与が可能であり、あるいは投与量を治療状況の緊急性が示すとおりに比例的に低減又は増加させることができる。これは、投与の容易化及び投薬量の均一化のための単位用量形態での非経口組成物を処方するのに特に有利である。ここで用いられる単位用量形態は、治療される対象者にとって単一用量として適した物理的に別個の単位を意味し、各単位には、必要な医薬担体と会合して所望の治療効果を生むように計算された所定量の活性化合物が含まれる。本発明の単位用量形態のための仕様は、活性化合物の特有の特性、達成されるべき具体的な治療効果、及びこのような活性化合物を配合する技術に内在する、個体における処置感度についての限界によって、直接に決定され、又は直接に依存する。
【0195】
抗体の投与には、投与量は、投与を受けるものの体重につき、約0.0001〜100 mg/kg、より通常には、0.01〜5 mg/kgの範囲である。例えば、投与量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重、10mg/kg体重、又は1〜10mg/kg体重の範囲内とすることができる。典型的な処置計画では、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、月に1回、3ヶ月に1回、3〜6ヶ月に1回の投与が行われる。本発明の抗BAFFR抗体の投与計画には、次の投与スケジュールを用いた所与の抗体での静脈内投与による1mg/kg体重、又は3mg/kg体重が含まれる。すなわち、6用量を4週間ごと、続いて3ヶ月ごと;3週間ごと;一度、3mg/kg体重で、続いて3週間ごとに1mg/kg体重。
【0196】
いくつかの方法では、投与される各抗体の投与量が示される範囲内となる場合には、異なる結合特異性を持つ2つ又はそれ以上のモノクローナル抗体が同時に投与される。抗体は、通常、複数回投与される。単一の投与の間の間隔は、例えば、毎週、毎月、3ヶ月毎又は毎年とすることができる。間隔は、患者の標的抗原に対する抗体の血中濃度の測定によって示されるように不規則にすることもできる。いくつかの方法では、投与量は、血漿抗体濃度を約1〜1000μg/mlとするように調整され、また、いくつかの方法では、25〜300μg/mlとするように調整される。
【0197】
また、抗体は、低頻度での投与が必要な場合には、徐放性製剤として投与することができる。投与量と頻度は、患者における抗体の半減期によって異なる。一般的には、ヒト抗体は、最も長い半減期を示し、これに、ヒト化抗体、キメラ抗体及びヒト抗体が続く。投与量と投与頻度は、治療が予防的であるか又は治療的であるかによって異なることができる。予防的適用では、比較的低用量が、長期間にわたって比較的まれな間隔で投与される。一部の患者は、生涯にわたって治療を受け続ける。治療的適用では、病気の進行が低減又は終了するまで、又は患者が病気の症状の部分的又は完全な改善を示すまで比較的短い間隔で比較的大量に投与することが、ときに必要となる。その後、患者は予防計画で投与を受けることができる。本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者への毒性がなく、特定の患者、組成物及び投与方法にとって望ましい治療応答を達成するために効果的な量の有効成分を得るように、変化させることができる。選択される投与量レベルは、使用される本発明の特定の組成物、又はそのエステル、塩又はアミドの活性、投与経路、投与時間、用いられる特定の化合物の排泄率、治療の期間、用いられる特定の組成物と組み合わせて用いられる他の薬物、化合物及び/又は物質、年齢、性別、体重、状態、全身の健康状態や患者の以前の病歴などの医療分野で知られている要因を含む様々な薬物動態学的要因に依存する。
【0198】
「治療的に有効な用量」の本発明の抗BAFFR抗体は、病気の症状の重症度を軽減し、病状の出ない頻度及び期間を増やし、又は病気の苦痛による機能障害や身体障害を予防することができる。
【0199】
本発明の組成物は、1又は複数の当技術分野で知られた種類の方法を利用して、1又は複数の経路で投与されることができる。当業者に理解されるように、投与の経路及び/又は方法は、目的の結果に応じて異なる。本発明の抗体の投与経路には、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄、又は例えば注射又は注入などの他の経口投与経路が含まれる。ここで使用される「非経口投与」という語句は、経腸及び局所投与以外の通常は注入による投与方法を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮、気管腹腔内、皮内、関節内、被膜下、くも膜下出血、髄腔内、硬膜外皮下及び幹内の注射及び注入を含むが、これらに限定されない。
【0200】
また、本発明の抗体は、例えば、鼻、経口、経膣、直腸、舌下又は局所的のような局所、表皮、又は粘膜の投与経路のような非経口投与以外の経路で投与されることができる。
【0201】
活性化合物は、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤などのような迅速なリリースから化合物を保護する担体とともに調製されることができる。生分解性、生体適合性ポリマーは、用いられることができ、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などが挙げられる。このような製剤の調製のための多くの方法が、特許を付与され、又は当業者に広く知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照。
【0202】
治療用組成物は、当該技術分野で知られている医療機器で投与することができる。例えば、一つの実施形態では、本発明の治療用組成物は、無針皮下注射装置で投与することができる。このような装置としては、米国特許第5,399,163、5,383,851、5,312,335、5,064,413、4,941,880、4,790,824又は4,596,556に示された装置が挙げられる。本発明に有用であってよく知られるインプラントの例としては、制御された速度で薬物を分配するための埋め込み型マイクロ注入ポンプ(これは米国特許第4487603に示される); 皮膚を通して薬剤を投与するための治療装置(これは米国特許第4486194に示される);正確な注入速度で薬物を輸送するための薬剤注入ポンプ(これは米国特許第4447233に示される);連続薬物送達のための可変流量埋め込み型注入装置(これは米国特許第4447224に示される);マルチチャンバーコンパートメントを有する浸透薬物送達システム(これは米国特許第4439196に示される);及び浸透薬物送達システム(これは米国特許第4475196に示される)が挙げられる。他の多くのこのようなインプラント、輸送システム、及びモジュールが、当業者に知られている。
【0203】
特定の実施態様において、本発明のヒトモノクローナル抗体は、インビボでの適切な分配を確保するために処方されることができる。例えば、血液脳関門(BBB)は、多くの高親水性の化合物を除外する。本発明の治療化合物が、(必要に応じて)確実にBBBを越えるように、例えば、本発明の治療化合物は、リポソームに配合されることができる。リポソームの製造方法については、例えば、米国特許第4,522,811、5,374,548及び5,399,331を参照。リポソームは、特定の細胞や臓器に選択的に輸送される1又は複数の部分を含むことができ、これにより標的薬物送達が向上する(例えば、V.V. Ranade, 1989 J. Cline Pharmacol. 29:685を参照)。典型的な標的部分には、葉酸又はビオチン(例えば、ロー(Low)らによる米国特許5,416,016を参照)、マンノシド(Umezawa et al., 1988 Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038)、抗体(P. G. Bloeman et al., 1995 FEBS Lett. 357:140; M. Owais et al., 1995 Antimicrob. Agents Chemother. 39:180)、サーファクタントプロテインA受容体(surfactant protein A receptor)(Briscoe et al., 1995 Am. J. Physiol.1233:134)、P120(Schreier et al., 1994 J. Biol. Chem. 269:9090); K. Keinanen; M. L. Laukkanen, 1994 FEBSLett. 346:123; JJ. Killion; IJ. Fidler, 1994 lmrnunomethods 4:273.)が挙げられる。
【0204】
本発明の使用及び方法
本発明の抗体はインビトロ及びインビボで診断及び治療の効用を持つ。例えば、これらの分子は、様々な疾患の治療、予防又は診断のために、例えばインビトロ又はインビボで培養細胞に投与されることができ、例えばインビボで治療対象に投与されることができる。本明細書中で使用される用語「治療対象」には、ヒト及び非ヒト動物が含まれることが意図されている。非ヒト動物には、例えば、ヒト以外の霊長類、ヒツジ、犬、猫、牛、馬、鶏、両生類、爬虫類などの哺乳類及び非哺乳類などのすべての脊椎動物が含まれる。
【0205】
該方法は、BAFFR関連疾患、及び/又は全身性エリテマトーデスや関節リウマチなどの自己免疫疾患の治療、予防、又は診断に特に適している。
【0206】
また、本発明は、治療的に有効量の本発明の抗体を含む組成物を投与することによって、動物におけるB細胞を
減少させる、好ましくはヒトB細胞を
減少又は破壊させる方法をも提供する。ここで使用されるように、「BAFFR関連疾患」には、異常BLySレベルに関連する又は特徴づけられる病気、及び/又はB細胞を
減少又は破壊することで治療することができる疾患又は病気が含まれる。これらには、炎症状態、アレルギー、アレルギー症状、過敏性反応、自己免疫疾患、重症感染症、臓器又は組織移植拒絶反応が含まれる。これらには、さらに、B細胞腫瘍が含まれる。
【0207】
例えば、本発明の抗体は、同種移植拒絶又は異種移植拒絶反応を含む心臓、肺、複合心肺、肝臓、腎臓、膵臓、皮膚又は角膜移植の被提供者の治療のために、及び骨髄移植、臓器移植関連動脈硬化のような移植片対宿主病の予防のために使用することができる。
【0208】
本発明の抗体は、自己免疫疾患及び炎症状態、特に、骨量の低下に関連する炎症状態及びリウマチ疾患、炎症性痛覚、強直性脊椎炎を含む血清反応陰性脊椎関節炎、ライター症候群、反応性関節炎、乾癬性関節炎及び腸疾患関節炎を含む関節炎(例えば、関節リウマチ、関節炎クロニカプログレディエンテ、及び変形性関節炎)及びリウマチ疾患、過敏症(いずれも気道過敏性皮膚過敏症を含む)及びアレルギーなどのような自己免疫要素を含む病因の炎症状態の治療、予防、又は改善に有用である。本発明の抗体が用いられうる特定の自己免疫疾患には、自己免疫性血液疾患(例えば、溶血性貧血、再生不良性貧血、純赤血球貧血や特発性血小板減少症を含む)、後天性血友病A、寒冷凝集素病、クリオグロブリン血症、血栓性血小板減少性紫斑病、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、炎症性筋疾患、多発性軟骨炎、硬皮症、抗好中球細胞質抗体関連血管炎、IgM抗体介在神経障害、眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群、ウェゲナー肉芽腫症、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、乾癬、スティーブンジョンソン症候群、尋常性天疱瘡、落葉性天疱瘡、特発性スプルー、自己免疫性炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群を含む)、内分泌眼症、バセドウ病、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、視神経脊髄炎、原発性胆汁性肝硬変、若年性糖尿病(糖尿病I型)、ぶどう膜炎(汎はもちろん、中間部、前部、後部も)、乾性角結膜炎及び春季カタル、間質性肺線維症、乾癬性関節炎及び糸球体腎炎(ネフローゼ症候群がある、ない、例えば、特発性ネフローゼ症候群又は微小変化性腎症を含む)、腫瘍、皮膚や角膜の炎症性疾患、筋炎、骨インプラントの緩み、動脈硬化症、糖尿病、及び脂質異常症などの代謝異常が含まれる。
【0209】
本発明の抗体は、喘息、気管支炎、じん肺、肺気腫、及び気道における他の閉塞性又は炎症性疾患の治療、予防、又は改善にも有用である。
【0210】
本発明の抗体は、変形性関節症、骨粗しょう症、及びその他の炎症性関節炎、並びに加齢に伴う骨の損失及び特定の歯周病を含む一般的な骨の損失を含む骨代謝疾患の治療に有用である。
【0211】
ヒト末梢血リンパ球及びヒトB細胞株へのBAFFRの結合は、BAFFRポリペプチドによって媒介されるので、本発明の抗体は、また、B細胞腫瘍の診断又は治療に有用でありうる。このような疾患及び病気の例としては、小リンパ球性リンパ腫、リンパ形質細胞様リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、びまん性大細胞リンパ腫、及びバーキットリンパ腫などのB細胞性非ホジキンリンパ腫;前駆Bリンパ芽球性白血病;及びB細胞慢性リンパ性白血病、並びに多発性骨髄腫が挙げられるが、これらに限定されない。他のB細胞腫瘍も、本発明の範囲内に包含される。
【0212】
本発明の抗体は、単独の有効成分として、又は例えば、他の薬剤のアジュバントとして、又は他の薬剤(例えば、上記の疾患の治療又は予防のための、例えば免疫抑制剤、免疫調整剤、他の抗炎症剤、他の細胞毒性薬若しくは抗がん剤)との組み合わせで投与されうる。例えば、本発明の抗体は、以下のものとの組み合わせで使用されうる。DMARD、例:金塩、スルファサラジン、抗マラリア、メトトレキサート、D-ペニシラミン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、シクロスポリンA、タクロリムス、シロリムス、ミノサイクリン、レフルノミド、グロココルチコイド; カルシニューリン阻害剤、例:シクロスポリンA又はFK 506;リンパ球再循環のモジュレーター、例:FTY720及びFTY720アナログ; mTOR阻害剤、例:ラパマイシン、40-O-(2-ヒドロキシエチル)-ラパマイシン、CCI779、ABT578、AP23573又はTAFA-93;免疫抑制特性を有するアスコマイシン、例:ABT-281、ASM981など;コルチコステロイド;シクロホスファミド; アザチオプリン;メトトレキサート;ミゾリビン;ミコフェノール酸;ミコフェノール酸モフェチル; 15-デオキシスペルグアリン又は免疫抑制相同体、アナログ又はその誘導体; 免疫抑制モノクローナル抗体、例:白血球受容体に対するモノクローナル抗体、例:MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD11a、CD25、CD28、CD40、CD45、CD52、CD58、CD80、CD86、又はそれらのリガンド; 他の免疫調節化合物、例:CTLA4の細胞外ドメイン又はその変異体の少なくとも一部を有する組換え結合分子、例:非CTLA4タンパク質配列に結合されたCTLA4の少なくとも細胞外部分又はその変異体、例:CTLA4Ig(ATCC 68629受託)又はその変異体、例:LEA29Y;接着分子阻害剤、例:LFA-1アンタゴニスト、ICAM-1又は3アンタゴニスト、VCAM-4アンタゴニスト又はVLA-4アンタゴニスト;又は化学療法剤、例:パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、ドキソルビシン又は5-フルオロウラシル;抗TNF剤、例:TNFに対するモノクローナル抗体、例:インフリキシマブ、アダリムマブ、CDP870、又はTNF-RI又はTNF-IIに対する受容体構築物、例:エタネルセプト、PEG-TNF-RI;炎症性サイトカイン遮断薬、IL-1遮断薬、例:アナキンラ又はIL-1トラップ、AAL160、ACZ 885、IL-6遮断薬;ケモカイン遮断薬、例:プロテアーゼ阻害薬又は活性剤、例:メタロプロテアーゼ、抗IL4抗体、抗IL-15抗体、抗IL-6抗体、抗IL-21抗体、抗IL-12抗体、抗p40抗体、抗IL-17抗体、抗CD20抗体、非ステロイド性抗炎症薬、例:アスピリン又は抗感染剤(一覧は前述の薬剤に限定されない)。
【0213】
前述によると、本発明は、さらに別の態様で次のものを提供する。すなわち、本発明は、治療的に有効量のBAFFRアンタゴニスト(例えば、本発明の抗体、及び少なくとも1つの第二の製剤原料)の(例えば、併用して又は引き続き行われる)同時投与を含み上で定義される方法を提供する。ここで、該第二の製剤原料は、例えば、前記の免疫抑制/免疫調節、抗炎症化学療法的又は抗感染症薬である。
【0214】
又は、治療的に有効量のa)BAFFR拮抗薬、(例えば、本発明の抗体)、及びb)前記の免疫抑制/免疫調節、抗炎症化学療法的又は抗感染症薬から選ばれる少なくとも1つの第二の製剤原料の治療的な組み合わせ、例えば、キットが提供される。キットは、その投与のための指示を含むことができる。
【0215】
本発明の抗体が他の免疫抑制/免疫調節、抗炎症化学療法的又は抗感染症薬と組み合わせて投与される場合には、当然、同時投与される組み合わせの化合物は、用いられる共同薬物の種類によって異なり(例えば、共同薬物が、DMARD、抗TNF、IL-1遮断薬又はその他であるかによって異なり)、用いられる特定の薬剤によって異なり、治療を受ける病気などによって異なる。
【0216】
1つの特定の態様において、本発明の抗体は、他のB細胞破壊薬剤と、すなわち、例えば、リツキシマブなどの、ADCC活性を有しCD20を標的とする抗体と、組み合わせて投与されることができる。
【0217】
他の実施形態では、本発明の抗体は、SLE又はRAに罹患しBLySの異常血清濃度を示す患者の間で選択される患者集団のみに投与される。他の実施形態では、本発明の抗体は、抗BLySの処置に反応する患者のグループの間で選択される患者集団のみに投与される。抗BLySの処置に対する反応の可能性が増加している患者を識別するバイオマーカーは、以下のいずれかでもよく、これらに限られない。すなわち、血清BLyS濃度の上昇、特定のB細胞サブセットの濃度の上昇、特定の種類の自己抗体の存在又は不存在。
【0218】
1つの実施形態では、本発明の抗体は、BAFFRの濃度、又はBAFFRを含む細胞の濃度を検出するために使用することができる。これは、例えば、(インビトロでのサンプルなどの)サンプル及びコントロールサンプルを、抗体及びBAFFRの間での複合体の形成を可能とする条件下で、抗BAFFR抗体に接触させることにより行うことができる。抗体及びBAFFRの間で形成された任意の複合体が、検出され、サンプルとコントロールについて比較される。例えば、ELISA法及びフローサイトメトリーアッセイなどの当技術分野でよく知られている標準的な検出方法が、本発明の組成物を用いて行うことができる。
【0219】
従って、一態様において、本発明は、抗体又はその部分とBAFFRの間の複合体の形成を可能にする条件下で、BAFFRに特異的に結合する本発明の抗体、又はそれらの抗原結合部位にサンプル及びコントロールサンプルを接触させることを含む、サンプルにおけるBAFFR(例えば、ヒトBAFFR抗原)の存在を検出する方法、又はBAFFRの量の測定方法を提供する。複合体の形成が次に検出され、コントロールサンプルと比較したサンプル間の複合体形成の違いは、サンプルにおけるBAFFRの存在を示す。
【0220】
本発明の組成物(例えば、抗体、ヒト抗体、及び二重特異性分子)、及び使用説明書からなるキットも、本発明の範囲に含まれる。キットは、さらに、少なくとも1つの追加試薬、又は本発明の1又は複数の付加的な抗体(例えば、第一抗体とは離れた標的抗原上のエピトープに結合する相補的活性を有する抗体)を含むことができる。キットには、典型的には、キットの内容の使用目的を示すラベルが含まれる。ラベルという用語には、それ以外の場合はキットに付属した若しくは付けられた又は他にキットに付随した任意の文章、記録材料が含まれる。キットは、さらに、患者が上記のように定義されている抗BAFFR抗体の処置に反応するグループに属しているかどうかの診断のためのツールを含むことができる。
【0221】
十分に説明されてきた本発明は、さらに次の実施例及び特許請求の範囲で説明されるが、これは、例示であり、さらに限定的なものを意味するものではない。
【実施例】
【0222】
実験部分
【0223】
1.スクリーニングアッセイ
【0224】
最初のパニングのFACSスクリーニング
ファージディスプレイのスクリーニングなどの第一次スクリーニングからBAFFR結合Fab抗体を検出するために、及び/又はELISA陽性クローンの第二次スクリーニング過程のために、大腸菌クローンの溶解物は、FACSで以下のようにスクリーニングされる。それぞれの細胞株(親細胞又はBAFFRでトランスフェクトされた細胞)を計数し、PBS/ 3% FCS/ 0.02% NaN
3 (FACS緩衝液)中で2x10
7 cells/mlとなるように調製する。96ウェル丸底板で、100μlFACS緩衝液の最終量で2x10
5個の細胞を35μlのFab含有1細菌溶解物と混合し、シェーカーで4℃で1時間インキュベートする。次いで、細胞をFACSの緩衝液で1回洗浄し、FACS緩衝液に1:200に希釈されたフィコエリスリン標識ヤギ抗ヒトIgG第二抗体中に、再懸濁する。シェーカー上で4℃で1時間インキュベーションした後、細胞を再度FACS緩衝液で洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁し、細胞表面の結合を、例えば、FACSアレイ装置 (ベクトン・ディッキンソン)での細胞の蛍光強度によって測定する。
【0225】
Fc捕捉ELISA
ファージディスプレイからの濃縮クローンにおけるBAFFR結合Fab抗体を識別するために、選択された大腸菌クローンの細胞溶解物が、Fc捕捉ELISAセットで次のようにスクリーニングされる。マキシソープ384ウェルのプレートをPBSに希釈された20μg/mlのヤギ抗ヒトIgGのFcで4℃で一晩被覆する。翌日、プレートを洗浄し、5%MTBSTでブロッキングし、5μg/mlのBAFFR:Fc(アレクシス)で室温で1時間インキュベートする。並行して、Fabを含む細菌溶解物を最終濃度2.5%の粉ミルクでブロッキングする。次に、あらかじめブロッキングした細菌溶解物をプレート上の捕捉BAFFR:Fcに加える。続いて、0.5%MPBSTで1:5000希釈されたFab特異的アルカリホスファターゼ結合標識ヤギ抗ヒトIgGとのインキュベートによって、BAFFR:Fc結合Fabを検出し、続いて、AttoPhos蛍光基質(ロシュ・ダイアグノスティックス)の添加を行う。テカンスペクトラフルオロプレートリーダーで430nmの励起で、535nmの蛍光発光を記録する。
【0226】
Fab捕捉ELISA
ファージディスプレイからのBAFFR結合Fab抗体を検出するために、選択された大腸菌クローンの細菌溶解液が、Fab捕捉ELISAセットでスクリーニングされる。マキシソープ384ウェルプレートを、PBSで1:1000に希釈したヒツジ抗ヒトIgG、Fd断片特異的抗体で、4℃で一晩被覆する。翌日、プレートを洗浄し、TBS/0.05% Tween/5% 粉ミルク (5% MTBST)で、室温で1時間ブロッキングする。並行して、Fabを含む細菌溶解物を最終濃度2.5%の粉ミルクでブロッキングする。その後、前もってブロッキングした細菌溶解物を、プレート上に固定された捕捉抗体に加える。続いて、捕捉されたHuCAL(登録商標)-Fab断片を1μg/ml ビオチン化BAFFR:Fc (PBSTで希釈)に結合させ(これは、アルカリフォスファターゼ(Zymax)に抱合させたストレプトアビジンとインキュベートすることにより最終的に検出される)、2.5% MPBSTで1:3000希釈し、続いて、AttoPhos蛍光基質(ロシュ・ダイアグノスティックス)を加える。テカンスペクトラフルオロプレートリーダーで430nmの励起で、535nmの蛍光発光を記録する。
【0227】
BAFFR-BLyS結合ELISA
直接に阻害抗体を識別するには、FLAGタグ付きのFabを、BAFFR-BLyS結合ELISAでスクリーニングする。マキシソープ96ウェルプレートを、PBSにおける1μg/ml hsBLySで4℃で一晩被覆する。翌日、プレートは洗浄され、室温で少なくとも1時間、PBS/ 2% BSAでブロッキングする。並行して、Fabを含む細菌溶解物を、最終濃度2.5%のBSAでブロッキングする。あらかじめブロッキングされた細胞溶解物を5μg/ml モノクローナル抗FLAG M2抗体で30分間インキュベートして、架橋による阻害活性を増大させ、続いて、10ng/ml ビオチン化BAFFR:Fc (PBS/ 2% BSAで希釈)を加え、もう30分間室温でわずかに振盪する。あらかじめインキュベートされた細胞溶解物/bio-BAFFR:Fc混合物を、プレートに結合したhsBLySに加える。室温での30分及び洗浄後、BLyS結合bio-BAFFR:Fcを、PBS/2.5% BSAで1:3000に希釈したアルカリフォスファターゼ(Zymax)に結合したストレプトアビジンとのインキュベート、これに続く、AttoPhos蛍光基質(ロシュ・ダイアグノスティックス)の添加によって、検出する。テカンスペクトラフルオロプレートリーダーで430nm励起で535nmの蛍光発光が記録する。
【0228】
細菌溶解物の代わりに精製したFabが使用される場合には、抗FLAG架橋ステップは省略する。
【0229】
成熟後のFACSスクリーニング:
第二の成熟:
成熟からのバインダーのスクリーニングには、FACS分析は、次のように変えて行われることができる。大腸菌クローンから選ばれる細菌溶解物は、最大シグナルが飽和を下回るまで希釈する。細胞溶解物は、Raji細胞への結合を分析する。96ウェルあたりの5x10
4細胞は、100μlの異なる希釈細菌溶解物と混合する。細胞結合Fabの検出は前述のように実行する。クローンは、そのシグナルの強さに応じてランク付けすることができる。
【0230】
2.スクリーニングアッセイから特定した抗体の親和性の測定
バイオベリスを使用してkDを測定する溶液平衡滴定(SET)法
溶液中の親和性の測定は、基本的には、文献(Friquet et al. (1985) J. Immunol. Meth. 77, 305-319 and Haenel et al. (2005) Anal. Biochem. 339, 182-184)記載のように行うことができる。SET法の感度と精度の向上のために、該方法は、古典的なELISA法からECLベースのバイオベリス技術に移行する。1mg/mlヤギ抗ヒト(Fab)
2又はヤギ抗マウスIgG、Fc断片特異的抗体(ディアノヴァ)は、製造元の使用説明書によると、BV-タグ(商標)HS-エステル(バイオベリスヨーロッパ, ウィットニー, オックスフォードシャー州, 英国)で標識した。実験は、ポリプロピレンマイクロタイタープレート、及び0.5%BSA及び0.02% Tween20をアッセイ緩衝液として追加したPBS pH7.4中で行う。ラベルなしのBAFFR:FCを、2nシリーズに希釈する。抗体のないウェルを、Smax値の測定のために用いた。100pMのFab(75μlの最終容量における最終濃度)の添加後、混合物が室温で2時間インキュベートした。続いて、0.25μg/ml ビオチン化BAFFR:Fc抗原及びBVタグ標識検出抗体で被覆した、抗ヒトFabについては1:4000、抗マウスIgGについては1:2000の最終希釈度の、25μlのダイナビーズ(0.4mg/ml M-280 ストレプトアビジン, ダイナル, ハンブルク)の混合物を、各ウェルに追加した。室温でのエッペンドルフシェーカー(700rpm)での30分間のインキュベートの後、電気化学シグナルを、M-384 シリーズ(登録商標)ワークステーション (バイオベリスヨーロッパ)を使用して検出する。
【0231】
直接被覆抗原におけるビアコアK
Dの測定
速度定数k
on及びk
offは、ビアコア3000装置(ビアコア, ウプサラ,スウェーデン)を用いて、Fc-捕捉BAFFR:Fc、又は共有結合固定BAFFR:Fc (アレクシス)又はBAFFR (ペプロテック)のいずれかへのFabのそれぞれの結合の連続希釈法で測定する。抗原又は抗Fc補足抗体の共有結合固定には、標準的なEDC-NHSアミン結合化学を使用する。反応速度測定は、PBS (136mM NaCl, 2.7mM KCl, 10mM Na
2HPO
4, 1.76mM KH
2PO
4 pH7.4)で、20μl/minの流速で、1.5〜500nMの範囲の濃度のFabを用いて行った。各濃度の射出時間は、1分であり、続いて、3又は15分の解離フェーズを行う。再生のために、グリシン/HCI pH 1.5の2回の射出を適用する。すべてのセンサーグラムは、BIA評価ソフトウェア3.1(ビアコア)を使用して取り付ける。
【0232】
10%ヒト血清の存在下での親和性の測定のため、反応速度測定は、解凍後のタンパク質凝集体を除去するため使用に先立って滅菌フィルター(孔径1.2及び0.2μm)処理した10%ヒト血清を含むPBSにおいて行う。
【0233】
BAFFR-BLyS結合アッセイでのIC
50値の測定(競合FACS)
BAFFR-BLyS結合アッセイは、内因性BAFFRを発現するRaji細胞を使用して行う。BAFFR特異的Fabは、40〜0.001nMの範囲の最終希釈で使用する。希薄Fabは、96ウェルのプレートで、ウェルごとに5x10
4 Raji細胞と、シェーカー上で1時間、4℃でインキュベートする。次に、ビオチン化hsBLySを、最終濃度25ng/mlで添加し、細胞を4℃で30分間シェーカー上でインキュベートする。細胞を、FACS緩衝液で2回洗浄し、FACS緩衝液に1:200に希釈したフィコエリスリン標識ストレプトアビジン(ディアノヴァ)に再懸濁する。染色は、シェーカー上で4℃で1時間行う。最後に、細胞を、FACS緩衝液で2回洗浄しFACS緩衝液に再懸濁し、細胞表面BAFFRへのBLyS結合を、FACSアレイ装置(ベクトン・ディッキンソン)で蛍光フローサイトメトリーによって検出する。
【0234】
BAFFR.Fc-BLyS結合アッセイでのIC
50値の測定(競合ELISA)
96ウェルのマキシソーププレートを、ヒト可溶性BLySで4℃で一晩被覆する。被覆の後、細胞を、PBS/0.05% Tween20 (PBST)で4回洗浄し、続いて、1%ウシ血清アルブミンを含むPBSTで、1時間37℃でブロッキングし、そして、PBSTで4回洗浄する。20ng/mlのビオチン化ヒトBAFFR:Fc融合タンパク質(アクソラ)を加え、抗BAFFR抗体濃度を増加させるとともに、37℃で1時間捕捉した。別の回の洗浄の後、エクストラビジン−アルカリホスファターゼ(シグマ)をウェルに添加し、37℃で30分間インキュベートした。結合したホスファターゼは、ジエタノールアミン(シグマ)にp-ニトロフェニルリン酸塩を含む溶液を加えることにより、検出した。およそ20分後に、等量の2N水酸化ナトリウムで呈色反応を停止し、プレートリーダー(スペクトラマックス190, モレキュラーデヴァイス)で405nmの吸光度を測定した。
【0235】
BAFFRペプチド(miniBR3)-BLyS結合アッセイでのIC
50値の測定(競合ELISA)
96ウェルのマキシソーププレートをヒト可溶性BLySで4℃で一晩被覆する。被覆の後、ウェルを、PBS/0.05% Tween20 (PBST)で4回洗浄し、続いて、1%ウシ血清アルブミンを含むPBSTで1時間37℃でブロッキングし、続いて、PBSTで4回洗浄する。20ng/mlのビオチン化BAFFR由来ペプチド(miniBR3、PiCHEM社、オーストリア)を加え、抗BAFFR抗体の濃度を増加させるとともに、37℃で1時間捕捉した。別の回の洗浄の後、エクストラビジン−アルカリホスファターゼ(シグマ)をウェルに添加し、37℃で30分間インキュベートした。ジエタノールアミン(シグマ)にp-ニトロフェニルリン酸塩を含む溶液を追加することによって、結合したホスファターゼを検出した。およそ20分後に、等量の2N水酸化ナトリウムで呈色反応を停止し、プレートリーダー(スペクトラマックス190, モレキュラーデヴァイス)で405nmの吸光度を測定した。
【0236】
カニクイザルBAFFRへの交差反応性の解析
FabのカニクイザルBAFFRへの交差反応性は、カニクイザルのBAFFRを導入したHEK293T細胞におけるFACS滴定分析で試験する。最終候補Fabは、177nM〜0.001nMの範囲の希釈で使用する。希薄したFabを、96ウェルのプレートでウェルごとに5x10
4細胞と4℃で1時間、シェーカー上でインキュベートする。次に、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、FACS緩衝液に1:200に希釈したフィコエリトリン結合ヤギ抗ヒトIgG(ディアノヴァ)に再懸濁する。染色は、シェーカー上で4℃で1時間行う。最後に、細胞はFACS緩衝液で2回洗浄し、Fab結合は、FACSアレイ装置(ベクトン・ディッキンソン)で蛍光フローサイトメトリーによって検出する。
【0237】
BCMA及びTACIとの交差反応の解析
【0238】
FACS
FabのBCMAへの交差反応性は、BCMAを導入したHEK293T細胞におけるFACS滴定分析で試験し、Fabは、高nM又はμMからpMの範囲の最終濃度で用いる。細胞の染色及びFab結合の検出は、記載したように行う。
【0239】
Elisa
384ウェル マキシソーププレートは、ヤギ抗ヒトIgG、Fcγ断片特異的捕捉抗体で4℃で一晩被覆する。被覆の後、ウェルは、PBS/0.05% Tween20 (PBST)で2回洗浄し、次に、5%粉ミルクを含むPBSTで1時間、室温でブロッキングし、続いて、PBSTでの2回の洗浄を行う。組換えBCMA及びTACI Fc融合タンパク質を加え、室温で1時間捕獲した。次に、精製し及び希釈したBAFFR特異的Fabを加え、室温で1時間インキュベートする。Fabの検出には、Fab特異的アルカリ性ホスファターゼ(AP)結合ヤギ抗ヒトIgGを加え、プレートは、室温で1時間インキュベートする。各インキュベーション工程の後、ウェルはPBSTで5回洗浄する。AP複合体の検出には、製造元の指示に従ってAttoPhos(ロシュ)を使用する。蛍光は、テカンスペクトラフルオロプレートリーダーを用いて測定する。
【0240】
3.細胞ベースの機能アッセイ
BLySにより誘導されるヒトB細胞増殖の共刺激
手つかずのBリンパ球は、MACSのB細胞分離キットII (ミルテニーバイオテク)を用いて、他の細胞タイプを
減少させることによって、末梢血単核細胞から精製する。B細胞の増殖の誘導のために、1x10
5細胞を含む100μlを、5つの丸底96ウェルプレートにそれぞれ播種した。抗ヒトIgM抗体と結合した0.35パーセント(vol/vol)ビーズとともに、3ng/mlの濃度でヒト可溶性BLySを加えた。その阻害強度を測定するために、異なる濃度の抗BAFFR抗体を異なる濃度で追加した。抗BAFFR抗体のアゴニスト特性の測定のために、細胞は、抗ヒトIgM抗体と結合した0.35%(vol/vol)のビーズ、及び増加濃度の抗BAFFR抗体(追加的なBLySの追加がない)で誘導した。その後、細胞は3日間培養した。最後の12時間に、1μCi/ウェルのトリチウムチミジンを追加した。細胞は、フィルターに収集し、細胞関連放射能を、シンチレーションカウンターで定量化した。
【0241】
BLySにより誘導されるヒトB細胞のIgG1生産の共刺激
手つかずのBリンパ球は、MACSのB細胞分離キットII (ミルテニーバイオテク)を用いて、他のタイプの細胞を
減少させることによって、末梢血単核細胞から精製した。IgG1合成を誘導するために、1x10
5細胞を含む100μlを、5つの丸底96ウェルプレートにそれぞれ播種し、100ng/mLのヒトIL-21(ペプロテック社)とともに、3ng/mlヒト可溶性BLySで刺激した。それらの阻害強度を測定するために、抗BAFFR抗体を異なる濃度で追加した。抗BAFFR抗体のアゴニスト特性の測定のために、細胞は、100ng/mLのヒトIL-21、及び増加濃度の抗BAFFR抗体(追加的なBLySの追加がない)で誘導した。細胞は、9日間培養し、上清を採取した。細胞培養上清内においてIgG1は、酵素結合免疫吸着法(ELISA)によって測定した。
【0242】
抗体依存性細胞傷害試験(ADCC)
手つかずのBリンパ球は、MACSのB細胞分離キットII(ミルテニーバイオテク)を用いて、他のタイプの細胞を除去することによって、末梢血単核細胞(PBMC)から精製する。同様に、自己ナチュラルキラー(NK)細胞は、MACSヒトNK細胞分離キット(ミルテニーバイオテク)を用いてAutoMACsデバイスにおけるネガティブデプリーションによって、PBMCから精製した。10Oμlにおける増加濃度の抗BAFFR抗体は、V字型96ウェルプレート(コーニング)で20分間、50μlの培養培地で1x10
4のB細胞とインキュベートした。次に、1x10
5のNK細胞を含有する50μlを加え、37℃で4時間インキュベートした。細胞をスピンダウンし、上清の150μlを除去した。細胞を再懸濁し、10μlの1:100希釈の7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD, ベクトン・ディッキンソン)を加えた。細胞の数は、FACSキャリバー測定器(ベクトン・ディッキンソン)によって数えた。7-AAD陽性細胞のデータ解析は、セルクエストプロソフトウェア(ベクトン・ディッキンソン)を用いて行った。
【0243】
4.インビボ機能アッセイ
インビボB細胞
減少アッセイ
抗BAFFR抗体のB細胞数の
減少効果は、次のように評価する。
a)血リンパ球のコンパートメント内のB細胞の相対数は、全血又は単離末梢血の単核細胞(PBMC)をB細胞及びT細胞表面マーカー(それぞれCD3及びCD19)に特異的な蛍光標識抗体によって染色することによって測定する。CD3及びCD19陽性細胞の相対的な割合は、フローサイトメトリーによって定量化し、B細胞の選択的減少は、B細胞に対するT細胞の比率の増加によって表現することができる。
b)絶対的なB細胞の数は、トゥルーカウントチューブ(Cat # 340334; ベクトン・ディッキンソン、サンノゼ カリフォルニア)と組み合わせて蛍光標識抗CD19抗体を使用するフローサイトメトリーによって、製造元の使用説明書に従って、細胞/血液マイクロリットルとして測定する。
【0244】
CIA動物モデルアッセイ
コラーゲン誘導関節炎(CIA)は、ヒトの疾患の多くの側面を反映すると提案されてきた。CIAは、アジュバント中のコラーゲンタイプIIでの遺伝的感受性系統のマウスの免疫によって誘導し、自己抗体の生成を含む自己免疫反応によって媒介し、タイプIIコラーゲン(CII)の特定の領域に結合する。Bリンパ球及びTリンパ球は、いずれもCIAの病気の発症に重要である。動物モデルでの関節組織構造は、病態生理学的ないくつかの特徴である滑膜過形成、限界浸食、及び軟骨面の破壊などの点で、ヒトの病気と多くの類似点を持っている。
【0245】
0日目にタイプIIコラーゲン(CII)で免疫し、続いて、21日目に追加免疫処理をすると、DBA/1マウスは、通常、関節炎の重篤な症状を呈する。本研究では、マウスは、マウスあたり200ug、毎週二回、腹腔内に、抗BAFFR抗体又はアイソタイプコントロール抗体を、予防養生法(約36日まで日数マイナス10)で処理する。足の膨潤は、疾患の重症度の指標として、実験を通して観察する。膨潤効果を観察した場合には、実験の終了時に微視的解剖を足で実行する。脾臓、血液及びリンパ節におけるB細胞の
減少は、細胞の単離及びFACS分析で評価することができる。抗コラーゲン抗体のELISA法は、抗体価も抑制されるかどうかを調べるために行う。ダネット複数比較試験(ワンウェイアノヴァ)を適用して腫れの統計的に有意な減少を示す場合、抗体は、CIA動物モデルにおいて良好な効能を持っていると推定される。通常、このことは、各グループ内の動物の間で高い再現性で、経時変化での足の膨潤が50%減少することにつながる。
【0246】
例(Examples):
次の表は、本発明の抗体の特定の例の対応するCDRの配列番号を示す。HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、抗体の重鎖のCDR1、CDR2及びCDR3を表し、LCDR1、LCDR2及びLCDR3は、抗体の軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3を表す。
【0247】
【表1】
【0248】
例の詳細な特性評価
FACSによるヒトFab形式の本発明の抗体のEC
50の測定
【0249】
トランスフェクトしたHEK293細胞についてだけでなく、内因性BAFFRを発現するRaji細胞についても、FabのEC
50をFACSのFab滴定によって決定する。
【0250】
【表2】
【0251】
MOR07347のHCDR3における位置110に見出されるグルタミンは、都合がよいと思われるので、この位置は、クロスクローンMOR6743にも導入し、抗体MOR07685となった。この抗体は、MOR06743及びMOR07347の抗体に匹敵するFACS滴定で測定されるEC
50値を示す。
【0252】
BAFFR-BLyS結合アッセイ(FACS)でのFabのIC
50値の測定
【0253】
ヒトFab形式の本発明の抗体のIC
50値は、Raji細胞上のFab滴定によるBAFFR-BLyS結合阻害アッセイ(FACS)によって、測定する。これらの分析の結果を表3に記載する。
【0254】
【表3】
【0255】
BAFFR-BLyS結合アッセイ(ELISA)での抗体のIC
50値の測定
【0256】
ヒトFab及びIgG2形式の本発明の抗体のIC
50値は、BAFFR(BAFFR:Fc融合タンパク質)の細胞外ドメインとヒト可溶性BLySとの間の相互作用を阻害するように抗体を滴定する競合ELISAによって、測定する。BAFFR由来ペプチド(miniBR3)のヒト可溶性BLySアッセイに対する結合を阻害するように本発明の抗体を滴定する同様の競合ELISAによっても、IC
50値は測定する。
【0257】
これらの分析の結果を表4に示す。
【0258】
【表4】
【0259】
BCMA及びTACIに対する交差反応性の分析
【0260】
BCMA及びTACは、BAFFRに関連するタンパク質であり、リガンドBLySに結合することもできる。Fabは、これら2つのタンパク質との不要な交差反応性を試験する。BCMAに対するバインダーの交差反応性は、ELISAで組換えタンパク質において、及びFACS分析で細胞表面抗原において試験する。
【0261】
ELISAでは、Fabは、抗ヒトFc抗体を介してマキシソーププレートに捕捉したBAFFR:Fcについて、400nMから0.005nMに下げて滴定する。 MOR07342及びMOR07346のみ、>100nMの高Fab濃度でBCMAに一定の交差反応性を示す。これに対し、MOR06654、MOR07347、MOR07348、MOR07349は、上の状況では、BCMAに対する結合を示さない。1000倍弁別比は、すべてのFabで満たす。
【0262】
FACSでは、次のFabは、BCMAトランスフェクトHEK293細胞で分析し、1μMから0.005nMに下げて滴定した。MOR06654、MOR06743、MOR07342、MOR07347、MOR7348及びMOR07349。330nMにおいて、MOR07342のみが、バックグラウンドの2倍の上昇した結合シグナルを示す。他のすべての試験したFabは、この濃度ではシグナルを示さない。1μMのFab濃度においては、MOR06654、MOR06743及びMOR07347が、バックグラウンドの3〜4倍の上昇した結合シグナルを示す。MOR07342は、バックグラウンドの20倍以上のシグナルをもって、BCMA-トランスフェクト細胞への結合を示す。MOR007348及びMOR07349は、1μmのFab濃度までBCMAに全く結合しない。
【0263】
機能的B細胞アッセイにおける本発明の抗体の効能
【0264】
BLyS媒介共刺激B細胞増殖アッセイにおける抗体の効能及びアゴニスト作用
【0265】
一次ヒト血液由来B細胞は、抗IgM抗体及びヒト可溶性BLySで刺激し、B細胞増殖を誘導する。本発明の抗体は、BLySの共刺激効果をブロックするように滴定する。抗体のアゴニスト(すなわちBLyS様)効果を測定するために、B細胞は、抗IgM抗体のみで刺激する。BAFFR抗体は、B細胞の増殖の潜在的な向上を測定するために滴定する。これらの分析の結果を、異なるBAFFR抗体形式(ヒトFab、IgG2及びIgG1)について、表5に示す。
【0266】
【表5】
【0267】
BLyS媒介共刺激B細胞IgG1産生アッセイにおける抗体の効能及びアゴニスト作用
【0268】
一次ヒト血液由来B細胞を、IL-21及びヒト可溶性BLySで刺激し、IgG1産生を誘導する。本発明の抗体は、BLySの共刺激効果をブロックするように滴定する。抗体のアゴニスト(すなわちBLyS様)効果を測定するために、B細胞は、IL-21のみで刺激する。抗BAFFR抗体は、IgG1分泌の潜在的な向上を測定するために滴定する。これらの分析結果を表6に示す。
【0269】
【表6】
【0270】
ADCCアッセイでB細胞破壊を引き起こす抗体の効能
増加濃度における抗BAFFR抗体は、破壊反応を誘導するために自己免疫ナチュラルキラー(NK)細胞を追加する前に、一次ヒト血液由来B細胞に結合することができる。4時間後、アポトーシス細胞数をFACSによって計測する。これらの分析の結果を、IgG1とIgG2抗体形式について表7に示す。
【0271】
【表7】
【0272】
例2:CIAのマウスモデルでのインビボ効能
マウスは、完全フロインドアジュバントにおける牛2型コラーゲンで免疫する9、6及び2日前に、200ug/動物のBAFFR抗体(マウスIgG2aに抱合)又はアイソタイプコントロール抗体で処理した。抗体は、実験をとおして(免疫35日後まで)、週に2回200ug/マウスで適用した。マウスは、免疫21日後に、リン酸緩衝生理食塩水中の牛2型コラーゲンで追加免疫した。追加免疫の日以降から、2〜3日おきに膨潤を評価した。
図1に示すように、抗BAFFR抗体は、コントロール抗CSA抗体と比較して顕著に膨潤を減少させた。
【0273】
例3:カニクイザルの末梢B細胞の
減少
【0274】
カニクイザルを、20 mg/kg i.v.の抗ヒトBAFF-Rモノクローナル抗体MOR06654(IgG1/k)で4週間ごとに投与処置した。血液中のB細胞数は、投与前と投与後の異なる時点でFACS解析により測定した。簡単に言えば、血液サンプルを、トゥルーカウントチューブ (BD, cat# 340334)において、蛍光標識抗CD20抗体(抗ヒトCD20-PE, クローン2H7, BD, cat# 555623)又は抗CD40抗体(抗ヒトCD40-APC, クローン5C3 BD, cat# 555591 )とインキュベートした。結果を
図2に示す。
【0275】
B細胞は、処理したサルにおいて、平均して投与前のB細胞数の33%に急速に
減少した(n = 3)。B細胞の減少は、以降の投与で維持又は増加した。B細胞の減少の平均値は、56日目にすなわち最終投与45日後に、85%(n = 3)であった。56日後には、B細胞の数のゆるやかな増加を観察した。
【0276】
結論として、ヒト抗BAFF-Rの抗体による処置は、カニクイザルの末梢B細胞における急速かつ持続的な減少をもたらす。この薬力学的効果は、可逆的であり、循環から抗体を除去した後、通常のB細胞の恒常性の回復をすることができる。
【0277】
例4:非フコシル化抗体でのより強くより持続的なB細胞
減少
第二の実験では、カニクイザルは、MOR06654(IgG1)又は非フコシル化変異体MOR06654Bを単回投与で処置した。MOR06654Bは、ポテリジェント(商標)細胞株 (バイオワ社)を用いて作製した。これらの細胞株は、CHO哺乳動物細胞株であり、フコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子をノックアウトしている。このような細胞株で産生される抗体(MOR06654B)は、フコシル化されていない。今回は、単回投与は、20μg/kg i.v.のみであった。
【0278】
図3に示すように、20μg/kg i.v. MOR06654処置による限界的しかし観察可能な減少を、7日目に観察した(平均減少22%、n = 3)。末梢B細胞の減少は、フコースを欠くMOR06654B抗体では、より顕著でより持続的であった。ここで減少は57%(n = 3)に達し、単回投与後28日目では、まだ約40%である(n = 3)。
【0279】
例5:本発明のBAFFR結合抗体をクロスブロックする抗体のスクリーニング
【0280】
ビアコアクロスブロッキングアッセイ
以下は、抗体又は他の結合剤が、本発明による抗体をクロスブロックする又はクロスブロックできるかどうかを決定するのに適当なビアコアアッセイを一般的に説明する。アッセイは、ここに記載のBAFFR結合剤のいずれかで使用することができることが理解されるであろう。ビアコアの機械(例えばビアコア3000)は、メーカーの推奨に沿って操作する。
【0281】
BAFFRは、例えば、EDC-NHSのアミンカップリングのような日常的に使用されるアミン結合化学の方法によって、例えばCM5ビアコアのチップなどに結合し、BAFFR被覆表面を生成する。結合の測定可能なレベルを得るために、典型的には、BAFFRの200〜800共鳴ユニットを、チップに結合する(この量は、結合の測定可能なレベルを与えるものであり、同時に、使用されている検査試薬の濃度によって容易に飽和化できる)。
【0282】
ビアコアチップにBAFFRを接続する別の方法は、「タグ付け」のバージョンのBAFFRを、例えば、N末端又はC末端HisタグBAFFRを使用することによる。この形式では、抗His抗体は、ビアコアのチップに結合するであろうし、HisタグBAFFRは、チップの表面上を通過し、抗His抗体によって捕獲されるであろう。
【0283】
互いにクロスブロックする能力を評価される2つの抗体は、テスト混合物を作製するのに適した緩衝液内において、化学量論量で、例えば、1対1のモル比で混合する。緩衝液には、典型的には、タンパク質化学で通常使用されている緩衝液、例えば、PBS(136mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na
2HPO
4、1.76mM KH
2PO
4、pH 7.4)を用いることができる。結合サイト基底の濃度を計算する場合、抗体の分子量は、その抗体における標的(すなわちBAFFR)結合サイトの数で割った抗体の総分子量と推測する。
【0284】
試験混合物中の各抗体の濃度は、ビアコアのチップ上に結合されているBAFFR分子上のその抗体の結合部位を確実に飽和させるに十分な高さであるべきである。混合物中の抗体は、(結合基底における)同じモル濃度にあり、(結合サイト基底における)その濃度は、典型的には、1.0mMと1.5mMの間にある。
【0285】
別の抗体を自ら含む別の溶液も調製する。これらの別の溶液に使用する緩衝液は、テスト混合物に使用したものと同じ濃度にある同じ緩衝液にするべきである。
【0286】
テスト混合物は、BAFFR被覆ビアコアチップを通過し、結合を記録する。結合した抗体は、その後、チップを例えば、3OmM塩酸などの酸で約1分間処理することにより、除去する。チップに結合しているBAFFR分子が損傷していないことが重要である。
【0287】
一次抗体の溶液は、単独でその後、BAFFR被覆表面上を通過させ、結合を記録する。その後、チップ結合BAFFRを損傷することなくすべての結合抗体を除去するために、チップは、例えば、前記の酸処理などで処理する。
【0288】
二次抗体の溶液は、単独でそのBAFFR被覆表面上を通過し、結合量を記録する。
【0289】
最大理論結合は、それぞれの抗体の別々のBAFFRへの結合の合計として定義することができる。これは、測定する抗体混合物の実際の結合と比較する。実際の結合が理論的結合のそれよりも低い場合には、2つの抗体は、互いにクロスブロックしている。
【0290】
Elisaベースのクロスブロッキングアッセイ
抗BAFFR抗体又は他のBAFFR結合剤のクロスブロッキングは、ELISAアッセイを使用することによっても検出することができる。
【0291】
ELISAアッセイの一般的な原理には、ELISAプレートのウェルに抗BAFFR抗体を被覆することが含まれる。過剰量の2番目の潜在的にはクロスブロッキングする抗BAFFR抗体を、その後、溶液に加える(すなわち、ELISAプレートには結合されない)。限られた量のBAFFR-Fcを、その後、ウェルに加える。
【0292】
ウェル上に被覆した抗体と溶液中の抗体は、BAFFR分子の限られた数の結合について、競合することとなる。その後、被覆した抗体に結合しなかったBAFFR-Fcを除去するために、また、第二の溶液相の抗体、及び第二の溶液相の抗体とBAFFR-Fcの間で形成した複合体をも除去するために、プレートを洗浄する。結合したBAFFRの量は、適切なBAFFR検出試薬を用いて測定する。被覆した抗体とクロスブロックすることができる溶液中の抗体は、被覆した抗体が第二溶液相抗体の不存在下で結合することができるBAFFR分子の数に関連して被覆した抗体が結合することができるBAFFR分子の数の減少を引き起こすことができる。
【0293】
このアッセイについては、Ab-X及びAB-Yと命名した2つの抗体で以下にさらに詳細に説明する。固定化する抗体としてAb-Xを選ぶ場合には、抗体は、ELISAプレートのウェル上に被覆し、その後、プレートは、適切なブロッキング溶液でブロッキングし、続いて加える試薬の非特異的結合を最小化する。そして、ウェルごとのAb-Y BAFFR結合サイトのモルが、ELISAプレートの被覆の間にウェルごとに用いられたAb-X BAFFR結合サイトのモルと比べて少なくとも10倍の高さになるように、過剰量のAb-Yを、ELISAプレートに加える。その後、ウェルあたりに加えるBAFFR-Fcのモルが、それぞれのウェルの被覆に用いたAb-X BAFFR結合サイトのモルと比較して少なくとも25倍の低さとなるように、BAFFR-Fcを、加える。適切なインキュベーション期間の後、ELISAプレートを洗浄し、被覆抗BAFFR抗体(この場合はAB-X)に特異的に結合するBAFFRの量を測定するために、BAFFR検出試薬を、加える。アッセイのバックグラウンドシグナルは、被覆抗体(この場合はAb-X)、第二液相抗体(この場合はAb-Y)BAFFR緩衝液のみ(すなわちBAFFRなし)及びBAFFR検出試薬でのウェルで得られたシグナルとして定義する。アッセイの陽性コントロールシグナルは、被覆抗体(この場合はAb-X)、第二溶液相抗体緩衝液のみ(すなわち第二液層抗体なし)、BAFFR、及びBAFFR検出試薬でのウェルで得られたシグナルとして定義する。ELISAアッセイは、陽性コントロールシグナルが、バックグラウンドシグナルの少なくとも6倍となるような方法で行う必要がある。
【0294】
被覆抗体に用いる抗体の選択、及び第二(競合)抗体として用いる抗体の選択から引き起こされるあらゆるアーティファクト(例えば、Ab-X 及び Ab-YのBAFFRに対する顕著に異なる親和性)を避けるために、クロスブロッキングアッセイは、2つの形式で実行する必要がある:1)形式1は、Ab-XをELISAプレートに被覆する抗体であり、Ab-Yが溶液中にある競合抗体であるものであり、2)形式2は、Ab-YがELISAプレートに被覆する抗体であり、Ab-Xが溶液中にある競合抗体であるものである。