特許第5767111号(P5767111)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767111
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】ポリエーテルポリオール用粘度低下剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/40 20060101AFI20150730BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20150730BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20150730BHJP
   B29K 75/00 20060101ALN20150730BHJP
【FI】
   C08G18/40
   C08K5/103
   B29C45/00
   B29K75:00
【請求項の数】23
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-524394(P2011-524394)
(86)(22)【出願日】2009年8月28日
(65)【公表番号】特表2012-500882(P2012-500882A)
(43)【公表日】2012年1月12日
(86)【国際出願番号】EP2009061122
(87)【国際公開番号】WO2010023271
(87)【国際公開日】20100304
【審査請求日】2012年8月24日
(31)【優先権主張番号】102008044706.4
(32)【優先日】2008年8月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509339049
【氏名又は名称】エメリー オレオケミカルズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ダウテ ピーター
(72)【発明者】
【氏名】バートニック ベルンハルト
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−176251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/40
B29C 45/00
C08K 5/103
B29K 75:00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンの調製のためのプロセスであって、
i)少なくとも1つのポリイソシアネートを含む成分Aを与える工程と、
ii)少なくとも1つのポリエーテルポリオール、またはポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの混合物を含む成分Bを与える工程であって、
前記ポリエーテルポリオールが、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリシリトールおよび糖アルコールからなる群から選択されるひとつと、アルキレンオキシドとの反応から調製され、
2〜6個のOH基を有するポリオールおよび〜C−モノカルボン酸または〜C−モノカルボン酸誘導体から調製される粘度低下剤を含む、
工程と、
iii)前記成分Aを前記成分Bと接触させて、ポリウレタンを形成する工程と、
を含み、
前記工程iii)は反応射出成形プロセスとして実施される、
プロセス。
【請求項2】
前記成分Aおよび前記成分Bは、計量することにより混合チャンバーの中へと運搬され、前記混合チャンバーの中で混合されてポリウレタン反応混合物を与え、次いで前記ポリウレタン反応混合物がノズルの溝を通って金型の空洞へと排出される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記空洞への前記ポリウレタン反応混合物の排出は、5bar(0.5MPa)未満の圧力下で実施される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記空洞は15cm未満の容積を有する、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記アルキレンオキシドはエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記糖アルコールは、分子中に少なくとも3個のヒドロキシル基を有するアルコールである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ポリエーテルポリオールは、3〜8の官能性を有する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ポリエーテルポリオールは、50mg KOH/g〜1,200mg KOH/gの範囲のヒドロキシル価を有する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ポリエステルポリオールは、多官能性アルコールと多官能性カルボン酸との縮合によって得ることができる、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記多官能性アルコールは2〜12個の炭素原子を有するジオールである、請求項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記多官能性カルボン酸は、2〜12個の炭素原子を有する多官能性カルボン酸である、請求9または請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記ポリエステルポリオールは、50mg KOH/g〜1,200mg KOH/gの範囲のヒドロキシル価を有する、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記ポリエステルポリオールは、20mg KOH/g〜500mg KOH/gの範囲のヒドロキシル価を有する、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記成分Bは、前記ポリエーテルポリオールまたは前記ポリエーテルポリオールよび前記ポリエステルポリオールの混合物を前記粘度低下剤と混合することにより得ることができる、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ポリエーテルポリオールは、少なくとも500mPasの、25℃でブルックフィールド法によって測定された粘度を有する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記ポリエステルポリオールは、少なくとも1,000mPasの、25℃でブルックフィールド法によって測定された粘度を有する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
前記成分Bは、前記成分Bの総重量に基づき0.1〜30重量%の範囲の量で前記粘度低下剤を含む、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記成分Bは、前記成分Bの総重量に基づき5〜15重量%の範囲の量で前記粘度低下剤を含む、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記粘度低下剤の調製のために用いられるポリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトールおよびジペンタエリスリトールからなる群から選択されるポリオールである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
前記モノカルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、および酪酸からなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項21】
前記粘度低下剤はグリセロールトリアセテートまたはグリセロールトリプロピオネートである、請求項1から請求項20のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項22】
請求項1から請求項21のいずれか1項に記載のプロセスによって得られるポリウレタン。
【請求項23】
ポリウレタンの調製のための反応射出成形プロセスにおける、請求項1のii)で定義される成分Bの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンの調製のためのプロセス、このプロセスにより得られるポリウレタン、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの混合物を含むポリオール成分、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの混合物を含むポリオール成分の調製のためのプロセス、このプロセスにより得られるポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの混合物を含むポリオール成分、このポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの混合物を含むポリオール成分の使用、ならびにポリオールエステルの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは、かなり以前から知られており、そしていくつかの例で記載されている。ポリウレタンの調製のために用いられる出発の成分の性質に依存して、それらは発泡したプラスチックまたは発泡していないプラスチックの形態で存在することができる。このプラスチックが発泡状である場合、この場合は、これは、例えばスポーツシューズの靴底または上で眠るためのマットレスの製造のために適切な持続的に弾性の柔軟性のあるフォーム(発泡体)の形態にあることができるし、または例えばアセンブリフォーム(Montageschaum)として用いることができる硬質フォームの形態にあることができる。ポリウレタンの可能な用途の概観は、例えば、非特許文献1に与えられる。
【0003】
ポリウレタンの調製もまた先行技術から十分に知られている。これは、ポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)および、特に、ジフェニルメタンジイソシアネートおよび高次の同族体ポリフェニレン−ポリメチレンポリイソシアネートの混合物(粗製MDI)(これが本発明では通常用いられる)と、イソシアネート基と反応性である少なくとも2つの水素原子を有する化合物との反応によって簡便に実施される。硬質ポリウレタンフォームの製造および用途の広範囲の概観は、例えば、R.Vieweg博士およびA.Hoechtlen博士によって刊行された非特許文献2、Guenter Oertel博士によって刊行された非特許文献3、ならびにGuenter Oertel博士によって刊行された非特許文献4の中に見出すことができる。
【0004】
ポリオール、特にポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールは、硬質フォームの製造および柔軟性のあるフォームの製造の両方において、イソシアネート基と反応性である少なくとも2つの水素原子を有する化合物として用いられることがしばしばあり、このポリエーテルポリオールは、アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドと、例えば、水、アミンまたはアルコールなどのスターター分子との反応によって得ることができ、他方で、ポリエステルポリオールは、多官能性アルコールと多官能性カルボン酸との縮合によって簡便に得られる。ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの調製のためのプロセスは、例えば特許文献1に記載されている。しかしながら、このようにして得られるポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールは、概して非常に高い粘度を有し、そのため、それらはポリイソシアネートと非常にわずかにしか混合することができない。しかしながら、ポリオール成分およびポリイソシアネート成分が互いに十分均一に混合することができなければ、これはまた、得られたポリウレタンにとっても不都合を有する。
【0005】
ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールに基づくポリウレタンの調製のための先行技術から公知のプロセスのさらなる不都合は、ポリオール成分をポリイソシアネート成分と混合することによって得られる反応混合物もまた比較的高い粘度を有し、このため、とりわけ小体積の空洞が充填される必要がある場合には、いわゆる反応射出成形プロセス(略して「RIMプロセス」)でのその使用が困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/084054(A)号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Reinhard Leppkes、「Polyurethane − Werkstoff mit vielen Gesichtern」、第5版、Verlag Moderne Industrie、2003年
【非特許文献2】R.ViewegおよびA.Hoechtlen、「Kunststoff−Handbuch、第7巻、Polyurethane」、第1版、1966年、Carl Hanser Verlag、ミュンヘン、ウィーン
【非特許文献3】Guenter Oertel、「Kunststoff−Handbuch、第7巻、Polyurethane」、第2版、1983年、Carl Hanser Verlag、ミュンヘン、ウィーン
【非特許文献4】Guenter Oertel、「Kunststoff−Handbuch、第7巻、Polyurethane」、第3版、1993年、Carl Hanser Verlag、ミュンヘン、ウィーン
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ポリイソシアネートおよびポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールからのポリウレタンの調製に関連した先行技術から生じる不都合を克服するという目的に基づいていた。
【0009】
特に、本発明は、これらのポリイソシアネート成分およびポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオール成分が互いとより容易に混合することができるための、ポリイソシアネートおよびポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールに基づくポリウレタンの調製のためのプロセスを提供するという目的に基づいていた。
【0010】
本発明は、さらには、従来のプロセスによって先行技術から得ることができる対応するポリウレタンと比べて改善された製品特性を有するポリウレタンが得られうるための、ポリイソシアネートおよびポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールに基づくポリウレタンの調製のためのプロセスを提供するという目的に基づいていた。
【0011】
本発明はまた、特に小体積の成型品または小体積のセクションを含む成形品の製造のためにも適切な、ポリイソシアネートおよびポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールに基づくポリウレタンの調製のためのプロセスを提供するという目的に基づいていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を成し遂げることに対する寄与は、ポリウレタンの調製のためのプロセスであって、
i)少なくとも1つのポリイソシアネートを含むポリイソシアネート成分を与える工程と、
ii)少なくとも1つのポリエーテルポリオール、1つのポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの混合物を含むポリオール成分を与える工程であって、当該ポリオール成分はポリオールおよびモノカルボン酸のポリオールエステルを含む、工程と、
iii)このポリイソシアネート成分をこのポリオール成分と接触させて、ポリウレタンを形成する工程と、
を含むプロセスによってなされる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るプロセスの工程i)では、少なくとも1つのポリイソシアネートを含むポリイソシアネート成分が最初に与えられる。
【0014】
これに関して、可能なポリイソシアネートは、ポリウレタンの調製のために当業者に公知のすべてのポリイソシアネートであり、これは、任意に、少なくとも2つの構造的に異なるポリイソシアネートを含む混合物として用いられてもよい。これに関して、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)またはイソホロンジイソシアネート(IPDI)などの脂肪族イソシアネート、または、好ましくは、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)またはジフェニルメタンジイソシアネートおよびポリメチレン−ポリフェニレンポリイソシアネートの混合物(粗製MDI)などの芳香族イソシアネートのいずれもが使用できる。ウレタン、ウレトジオン(Uretdion)、イソシアヌレート、アロファネート(Allophanat)、ウレトンイミン(Uretonimine)および他の基の組み込みによって変性されているイソシアネート、いわゆる変性イソシアネートを用いることも可能である。
【0015】
ポリイソシアネートプレポリマーは、さらには、ポリイソシアネート成分として用いることもできる。これらのプレポリマーは、先行技術で公知である。このようなポリイソシアネートプレポリマーの調製は、上記のポリイソシアネートを、例えば約80℃の温度で、例えば、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールと、特に下記のポリオール成分と反応させてプレポリマーを得ることによって、それ自体は公知の方法で実施される。ポリオール−ポリイソシアネート比は、一般に、プレポリマーのNCO含有量が8〜25重量%、好ましくは10〜24重量%、特に好ましくは13〜23重量%であるように選択される。
【0016】
このポリイソシアネート成分はまた、任意に、上記のポリイソシアネートに加えて、欧州特許出願公開第0 477 638号明細書に記載される反応性成分のうちの1つ、例えばこの先行技術に記載されるエポキシド成分のうちの1つをも含むことができる(このエポキシドの性質、これらが用いられる量に関して、ならびにそのエポキシド成分によるポリイソシアネート成分の前処理の性質および方法に関しては、欧州特許出願公開第0 477 638号明細書の開示の内容を援用する)。
【0017】
本発明に係るプロセスの工程ii)では、少なくとも1つのポリエーテルポリオール、1つのポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの混合物を含むポリオール成分であって、当該ポリオール成分はポリオールおよびモノカルボン酸のポリオールエステルをこのポリオール成分の粘度低下剤として含むポリオール成分、が与えられる。
【0018】
これに関して、このポリオール成分の調製は、好ましくは、ポリエーテルポリオール成分、ポリエステルポリオール成分またはポリエーテルポリオール成分およびポリエステルポリオール成分の混合物を当該ポリオールエステルと混合することにより、実施される。これに関して、特に、当該ポリエーテルポリオール成分、当該ポリエステルポリオール成分または当該ポリエーテルポリオール成分および当該ポリエステルポリオール成分の混合物が、いずれの場合も当該ポリエーテルポリオール成分、ポリエステルポリオール成分またはポリエーテルポリオール成分およびポリエステルポリオール成分の混合物の総重量に基づき少なくとも50重量%の程度まで、さらにより好ましくは少なくとも60重量%の程度まで、さらに好ましくは少なくとも75重量%の程度まで、さらにいっそうより好ましくは少なくとも95重量%の程度まで、最も好ましくは少なくとも99重量%の程度まで、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの混合物に基づくこと、またはこれからなることが好ましい。
【0019】
これに関して、当該ポリオール成分の調製のために用いられるポリエーテルポリオール成分が、好ましくは、少なくとも500mPas、特に好ましくは少なくとも1,000mPas、最も好ましくは少なくとも2,000mPasの、25℃でブルックフィールド(Brookfield)法によって測定された粘度を有する高粘度ポリエーテルポリオール成分であることが、本発明によればさらに特に好ましく、この25℃でブルックフィールド法によって測定された粘度は、好ましくは500〜12,000mPasの範囲、さらにより好ましくは1,000〜10,000mPasの範囲、最も好ましくは2,000〜8,000mPasの範囲である。ポリエステルポリオール成分が当該ポリオール成分の調製のために用いられる場合、ポリオール成分の調製のために用いられるポリエステルポリオール成分が、同様に、好ましくは少なくとも1,000mPas、特に好ましくは少なくとも2,000mPas、最も好ましくは少なくとも4,000mPasの、25℃でブルックフィールド法によって測定された粘度を有する高粘度ポリエステルポリオール成分であることが本発明によれば特に好ましく、この25℃でブルックフィールド法によって測定された粘度は、好ましくは1,000〜20,000mPasの範囲、さらにより好ましくは2,000〜15,000mPasの範囲、最も好ましくは4,000〜10,000mPasの範囲である。
【0020】
ポリオール成分またはこのポリオール成分の調製のために用いられるポリエーテルポリオール成分に含有されるポリエーテルポリオールは、好ましくはアルキレンオキシドとスターター分子としての水、アミン、アミノアルコールまたはアルコールとの反応によって得ることができ、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,3−プロピレンオキシド、1,2−または2,3−ブチレンオキシドまたはスチレンオキシドをこのアルキレンオキシドとして用いることができるが、1,2−プロピレンオキシドまたはエチレンオキシドが用いられることが特に好ましい。このアルキレンオキシドは、個々に、交互に連続して、または混合物として使用することができる。エチレンオキシド/プロピレンオキシド混合物を使用することで、例えば、エチレンオキシド/プロピレンオキシド単位のランダム分布を有するポリエーテルポリオールが得られる。しかしながら、プロピレンオキシド末端封鎖(Endcap)またはエチレンオキシド末端封鎖を有するポリエーテルポリオールを標的化された態様で得るために、最初にエチレンオキシド/プロピレンオキシド混合物を用い、次いでその重合の停止の前にプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドだけをさらに使用することも可能である。これに関して、アルキレンオキシド含有量、特に好ましくはエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド含有量が、アルキレンオキシドおよびスターター分子の100重量%に基づき50重量%を超えることが特に好ましい。
【0021】
一般に、これに関して、このポリエーテルポリオールは公知のプロセスによって、例えば1以上のアルキレンオキシド、好ましくは1,2−プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドから、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなど)、またはアルカリ金属アルコラート(ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラートもしくはカリウムエチラートまたはカリウムイソプロピラートなど)を触媒として用い、かつスターター分子を添加したアニオン重合によって、または塩化アンチモン(V)、フッ化ホウ素エーテル錯体などのルイス酸、または漂白土を触媒として用いるカチオン重合によって調製される。
【0022】
当該ポリエーテルポリオールの調製のためのスターター分子としてのアルコールの使用の場合には、このアルコールが、その分子中に少なくとも2つのヒドロキシル基を有する、好ましくは分子中に3〜6個のヒドロキシル基を有するアルコールであることが、本発明によれば好ましい。これに関して、特に好ましい二価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはブタンジオールであり、他方で好ましい三価アルコールとしては、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパンまたはヒマシ油またはペンタエリスリトールが挙げられる。好ましいより多価のアルコールは、特に、糖アルコール、例えばスクロース、グルコースまたはソルビトールである。
【0023】
当該ポリエーテルポリオールの調製のためのスターター分子としてのアミンの使用の場合には、このアミンが、分子中に少なくとも2つの第一級アミノ基を有するアミンであることが、本発明によれば好ましい。言及してもよい適切なアミン系スターター分子の例は、特に、フェニレンジアミン、2,3−トリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、3,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノジフェニルメタン、1,2−エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ブチレンジアミン、1,6−ヘキシレンジアミン、1,8−オクチレンジアミン、ジエチレントリアミンおよびジプロピレントリアミンからなる群から選択されるアミンである。
【0024】
アミノアルコールがスターター分子として用いられる場合、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミンの使用が本発明では特に可能である。
【0025】
好ましくは、本発明に係るプロセスで用いられるポリエーテルポリオールは、好ましくは2〜8、特に好ましくは3〜8の範囲の官能性を有する。このポリエーテルポリオールが、10mg KOH/g〜1,200mg KOH/gの範囲、特に好ましくは50mg KOH/g〜800mg KOH/gの範囲、さらに好ましくは100mg KOH/g〜500mg KOH/gの範囲のヒドロキシル価を有することが、本発明によればさらに好ましい。
【0026】
本発明に係るプロセスで用いられるポリエーテルポリオールは、さらにより好ましくは100〜10,000g/molの範囲、特に好ましくは200〜5,000g/molの範囲、最も好ましくは500〜2,500g/molの範囲の数平均分子量によって特徴付けられる。
【0027】
本発明に係るプロセスで用いられるポリエーテルポリオールは、例えば国際公開第2008/058913(A)号パンフレットに記載されているように、例えば二酸化炭素およびアルキレンオキシドを触媒的に添加してポリエーテル−カーボネートポリオールを形成することにより任意になおさらに変性されてもよい。
【0028】
本発明によれば適切であるポリエーテルポリオール、または当該ポリオール成分の調製に適したポリエーテルポリオール成分の例は、特に、繰り返しのプロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシド単位から構築されているビーエーエスエフ社(BASF AG)のLupranol(登録商標) ブランドのポリエーテルポリオールである。さらなる適切なホモポリエチレンオキシドは、例えば、ビーエーエスエフ社(BASF AG)のPluriol(登録商標) E ブランドであり、他方で適切なホモポリプロピレンオキシドとしては、例えばビーエーエスエフ社(BASF AG)のPluriol(登録商標) Pブランドが挙げられる。エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの適切な混合コポリマーは、例えば、ビーエーエスエフ社(BASF AG)のPluriol(登録商標) PEまたはPluriol(登録商標) RPE ブランドである。例えばRokopol(登録商標) ブランドで販売されているピーシーシー・ロキタ(PCC Rokita SA)、ポーランドの製品もまた、用いることができる。
【0029】
当該ポリオール成分に含有されるポリエステルポリオールまたはこのポリオール成分の調製のために用いられるポリエステルポリオール成分は、好ましくは、多官能性、好ましくは2〜12個の炭素原子、好ましくは2〜6個を有する炭素原子の二官能性アルコールと、2〜12個の炭素原子を有する多官能性カルボン酸との、好ましくはジカルボン酸との縮合によって得ることができる。
【0030】
可能なジカルボン酸は、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸および異性体のナフタレンジカルボン酸である。アジピン酸が用いられることが好ましい。これに関して、このジカルボン酸は、個々に、および互いとの混合物としてのどちらでも使用することができる。この遊離ジカルボン酸の代わりに、対応するジカルボン酸誘導体、例えば1〜4個の炭素原子を有するアルコールのジカルボン酸エステルまたはジカルボン酸無水物などを用いることも可能である。二価および二価よりも多価であるアルコール、特にジオール、の例は、エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2−および1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、グリセロールおよびトリメチロールプロパンである。エタンジオール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールまたは上記のジオールの少なくとも2つの混合物、特に1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールの混合物が使用されることが好ましい。さらには、ラクトン(例えばε−カプロラクトンなど)、またはヒドロキシカルボン酸(例えばω−ヒドロキシカプロン酸およびヒドロキシ安息香酸)からのポリエステルポリオールを用いることができる。ジプロピレングリコールが用いられることが好ましい。
【0031】
適切なポリエステルポリオールの具体例としては、特に、バイエル社(Bayer AG)から入手できるDesmophen(登録商標) ポリエステル、例えばDesmophen(登録商標)650 MPA、Desmophen(登録商標)651 MPA、Desmophen(登録商標)670、Desmophen(登録商標)670 BAおよびDesmophen(登録商標)680Xが挙げられる。
【0032】
当該ポリエステルアルコールのヒドロキシル価は、好ましくは20〜500mg KOH/g、特に好ましくは40〜100mg KOH/gの範囲にある。
【0033】
ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールまたはこのポリエーテルポリオールおよびこのポリエステルポリオールの混合物を含むポリオール成分が、ポリオールおよびモノカルボン酸のポリオールエステルを含むことが、この場合、本発明によれば好ましい。驚くべきことに、特に短鎖モノカルボン酸のポリオールエステルが、高粘度ポリエーテルポリオールのための粘度低下剤として用いることができ、これらのポリオールエステルはポリウレタン形成に悪影響を及ぼさないということが、実際に見出された。本発明に係るプロセスでは、用いられる好ましくは高粘度ポリエーテルポリオール成分、用いられる好ましい高粘度ポリエステルポリオール成分またはこのポリエーテルポリオール成分およびポリエステルポリオール成分の好ましい高粘度混合物は、このポリオール成分の粘度を低下させるために、最初に好ましくは単純な混合により、当該ポリオールエステルと接触させられる。この後にのみこのようにして得られるポリオール成分は、さらなる成分(ポリイソシアネート成分および任意にイソシアネート基と反応性である少なくとも2つの水素原子を有するさらなる化合物、ならびに任意にさらなる添加剤)と接触させられ、ポリウレタンが形成される。しかしながら、さらなる添加剤、特に充填剤をこのポリオール成分にすでに加え、このようにして得られるさらにより粘性が高いポリオール成分をポリオールエステルと混合することも考えられる。
【0034】
本発明に係るプロセスの好ましい実施形態によれば、このポリオール成分は、いずれの場合も当該ポリオール成分の総重量に基づき、0.1〜30重量%の範囲、特に好ましくは1〜20重量%の範囲、最も好ましくは5〜15重量%の範囲の量のポリオールエステルを含む。
【0035】
本発明に係るプロセスにおいて好ましくは粘度低下剤として用いられるポリオールエステルは、好ましくは、モノカルボン酸またはモノカルボン酸誘導体とポリオールとの反応によって得ることができる。これに関して、用語「モノカルボン酸誘導体」は、ポリオールとの反応においてこのモノカルボン酸の対応するポリオールエステルへと導くモノカルボン酸のすべての誘導体を包含する。特に、用語「モノカルボン酸誘導体」は、モノカルボン酸の酸塩化物およびモノカルボン酸の酸無水物を包含する。これらの誘導体は、好ましくは、モノカルボン酸と比べてカルボン酸基の高められた反応性を有し、そのため、ポリオールとの反応の際にエステル形成が促進される。
【0036】
ポリオールエステルの調製のために用いられるポリオールは、好ましくは2〜6個のOH基を有するポリオールであり、これは、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトールおよびジペンタエリスリトールからなる群から選択することができ、グリセロールの使用が特に好ましい。ポリエステルの調製のために用いられるモノカルボン酸は、好ましくはC−〜C−モノカルボン酸、またはC−〜C−モノカルボン酸の誘導体、例えばC−〜C−モノカルボン酸の酸塩化物もしくは酸無水物、特に好ましくはC−〜C−モノカルボン酸、またはC−〜C−モノカルボン酸の誘導体、例えばC−〜C−モノカルボン酸の酸塩化物もしくは酸無水物である。言及されてもよい適切なモノカルボン酸の例は、特に、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸および2−エチルヘキサン酸からなる群から選択されるモノカルボン酸であり、酢酸もしくはその誘導体またはプロピオン酸もしくはその誘導体の使用が特に好ましい。ポリオールエステルとしてのグリセロールトリアセテートの使用は、本発明によれば特に好ましい。
【0037】
エステル化反応によるポリオールおよびモノカルボン酸からまたはポリオールおよびモノカルボン酸の誘導体からのポリオールエステルの調製は、十分に当業者に公知である。好ましくは、これに関して、モノカルボン酸またはモノカルボン酸の誘導体は、ポリオールのすべてのOH基がエステル化されるような量でポリオールと反応される。しかしながら、ポリオールのOH基の一部のみがエステル化されるような量でモノカルボン酸を用いることも考えられる。
【0038】
本発明に係るプロセスの好ましい実施形態によれば、これは、イソシアネート基と反応性である少なくとも2つの水素原子を有するさらなる化合物を与えるというさらなる工程iv)を含むことができ、この工程iv)は工程iii)の前に実施される。原則として、イソシアネート基と反応性である少なくとも2つの水素原子を有し、かつポリウレタンの調製に関連して公知であるすべての化合物を、イソシアネート基と反応性である少なくとも2つの水素原子を有するさらなる化合物として用いることができる。特に、低粘度ポリエステルポリオールまたは任意に低粘度ポリエーテルポリオールは、本発明において可能であり、これらの低粘度ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールは、好ましくは500mPas未満、特に好ましくは250mPas未満、さらにより好ましくは100mPas未満、さらに好ましくは50mPas未満の、25℃でブルックフィールド法によって測定された粘度を有する。
【0039】
本発明に係るプロセスのさらに好ましい実施形態によれば、これは、工程i)、ii)および任意にiv)で与えられた成分とは異なるさらなる添加剤を与えるというさらなる工程v)をも含むことができ、この工程v)もまた工程iii)の前に実施される。これに関して、ポリウレタンの調製について当業者に公知のすべての添加剤が、さらなる添加剤として用いることができる。これらのさらなる添加剤は、特に、鎖延長剤および/または架橋剤、触媒、離型剤、可塑剤、細孔調整剤(Porenregler)、静真菌作用または静菌作用を有する物質、染料、色素、発泡剤、安定剤、充填剤または防炎剤を挙げることができる。添加剤の量は、好ましくは、いずれの場合も工程i)、ii)ならびに任意にiv)および/またはv)で与えられる成分の総重量に基づき25重量%未満、さらにより好ましくは20重量%未満、最も好ましくは15重量%未満である。充填剤がさらなる添加剤として用いられる場合、さらなる添加剤の量は著しく高くてもよく、ある状況下では工程i)、ii)ならびに任意にiv)および/またはv)で与えられる成分の総重量に基づき最高70重量%であってもよい。
【0040】
400g/mol未満の分子量を有する、好ましくは60〜300g/molの範囲の分子量を有するジオールおよび/またはトリオールが、通常、鎖延長剤および/または架橋剤として用いられる。2〜14個、好ましくは4〜10個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式および/または芳香環を含む脂肪族ジオール、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,10−デカンジオール、o−、m−およびp−ジヒドロキシシクロヘキサン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよび、好ましくは、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよびビス−(2−ヒドロキシエチル)−ヒドロキノンなど、ならびにトリオール、1,2,4−および1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、グリセロールおよびトリメチロールプロパンなどが、例えば可能である。
【0041】
触媒は、例えば、硬質ポリウレタンフォームの製造において、イソシアヌレート基の組み込みを促進するために用いられる。カルボン酸金属塩、特に酢酸カリウムおよびその溶液は、イソシアヌレート触媒として好都合に用いられる。ポリウレタンの調製のために使用することができるさらなる触媒は、先行技術から公知の活性化剤、例えば、第三級アミン、スズ化合物またはチタン化合物などである。
【0042】
発泡剤は、ポリウレタンフォームを製造しようとする場合に用いられる。ギ酸を含有する発泡剤が発泡剤として用いられることが好ましい。これは、単独の発泡剤としてまたは水および/もしくは物理的発泡剤との混合物で、用いることができる。好ましくは、化炭化水素、クロロフルオロカーボン(CFC)、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)またはヒドロフルオロカーボン(HFC)などのハロゲン炭化水素、ならびに他の化合物、例えば、ペルフルオロ化されたアルカン(ペルフルオロヘキサンなど)、およびエーテル、エステル、ケトンおよびアセタールまたはこれらの混合物が、物理的発泡剤として使用される。これに関して、例えば、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンまたは1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンおよびこれらの混合物などのヒドロフルオロカーボンが特に好ましい。例えば、ペンタンの異性体および誘導体などの炭化水素は、さらにより好ましく、物理的発泡剤として用いることができる。
【0043】
可能性のある安定剤は、特に、整泡剤、酸化防止剤、UV安定剤または加水分解安定剤である。これらの安定剤の選択は、一方で組成物の主成分に、ならびに他方で施用条件および予想されるポリウレタンに対するストレスに依存する。ポリウレタンが主鎖がポリエーテル単位で構成されている場合、任意にUV安定剤と組み合わせて酸化防止剤が、たいてい必要である。これらのものの例は、市販の、立体障害の大きいフェノールおよび/またはチオエーテルおよび/もしくは置換ベンゾトリアゾールまたはHALS(「ヒンダードアミン光安定剤」)タイプの立体障害の大きいアミンである。ポリウレタンの主鎖の基本構成成分がポリエステル単位から構成される場合、加水分解安定剤、例えばカルボジイミドタイプの加水分解安定剤が用いられることが好ましい。
【0044】
表面活性物質、すなわち、出発物質の均質化を助けるのに役立ちかつ任意にポリウレタンのセル構造を調節するのにも適している化合物は、さらに、安定剤として用いることができる。例えば、硫酸化ヒマシ油または脂肪酸のナトリウム塩および脂肪酸とアミンとの塩などの乳化剤に言及することができる。
【0045】
発泡のあいだ均一なセル構造の形成を促進する物質は、整泡剤と呼ばれる。言及することができる適切な整泡剤の例は、特に、シロキサン/オキシアルキレンコポリマーおよび他のオルガノポリシロキサンなどのシリコーン含有整泡剤である。脂肪アルコール、オキソアルコール、脂肪アミン、アルキルフェノール類、ジアルキルフェノール類、アルキルクレゾール類、アルキルレゾルシノール類、ナフトール、アルキルナフトール類、ナフチルアミン、アニリン、アルキルアニリン類、トルイジン、ビスフェノールA、アルキル化されたビスフェノールAおよびポリビニルアルコールのアルコキシ化生成物、ならびにさらには、ホルムアルデヒドおよびアルキルフェノール類の縮合生成物、ホルムアルデヒドおよびジアルキルフェノール類の縮合生成物、ホルムアルデヒドおよびアルキルクレゾール類の縮合生成物、ホルムアルデヒドおよびアルキルレゾルシノール類の縮合生成物、ホルムアルデヒドおよびアニリンの縮合生成物、ホルムアルデヒドおよびトルイジンの縮合生成物、ホルムアルデヒドおよびナフトールの縮合生成物、ホルムアルデヒドおよびアルキルナフトール類の縮合生成物ならびにホルムアルデヒドおよびビスフェノールAの縮合生成物またはこれらのうちの2以上の混合物のアルコキシ化生成物もまた、整泡剤として用いることができる。
【0046】
先行技術から公知の防炎剤は、一般に防炎剤として使用することができる。適切な防炎剤は、例えば、臭素化されたエーテル、臭素化されたアルコール(例えば、ジブロモネオペンチルアルコール、トリブロモネオペンチルアルコールおよびPHT−4−ジオールなど)、ならびに塩素化リン酸エステル、(例えば、リン酸トリス−(2−クロロエチル)、リン酸トリス−(2−クロロイソプロピル)(TCPP)、リン酸トリス−(1,3−ジクロロイソプロピル)、リン酸トリス−(2,3−ジブロモプロピル)およびテトラキス−(2−クロロエチル)−エチレンジホスフェートなど)、またはこれらの混合物である。すでに言及したハロゲン置換ホスフェートに加えて、赤リン、赤リンを含有する調剤、膨張性黒鉛(膨張黒鉛)、酸化アルミニウム水和物、三酸化アンチモン、酸化ヒ素、ポリリン酸アンモニウムおよび硫酸カルシウムなどの無機防炎剤、もしくはシアヌル酸誘導体(メラミンなど)、または少なくとも2つの防炎剤の混合物(ポリリン酸アンモニウムおよびメラミン、および任意にデンプンなど)が、本発明に従って調製されるポリウレタンを難燃性にするために使用することができる。
【0047】
用いることができる離型剤は、例えば、独国特許出願公開第1 953 637(A)号明細書、独国特許出願公開第2 121 670(A)号明細書、独国特許出願公開第2 431 968(A)号明細書に、または独国特許出願公開第24 04 310(A)号明細書に記載されている離型剤である。好ましい離型剤は、少なくとも12個の脂肪族炭素原子を有する脂肪酸と2以上の炭素原子を有する第一級のモノアミン、ジアミンまたはポリアミン、または少なくとも1つの第一級、第二級または第三級のアミノ基を有するアミドまたはエステル基を含有するアミンとの、少なくとも25個の脂肪族炭素原子を含有する塩、少なくとも5のヒドロキシルまたは酸価を有する、一官能性および/または多官能性カルボン酸と多官能性アルコールとの、COOHおよび/もしくはOH基を含有する飽和ならびに/または不飽和のエステル、リシノール酸および長鎖脂肪酸のエステル様の反応生成物、カルボン酸および第三級アミンの塩、ならびに天然および/または合成の油、脂肪またはワックスである。
【0048】
例として言及されかつ用いられることが好ましいこれらの離型剤に加えて、原則として、それ自体公知の先行技術の他の離型剤もまた、単独で、または例として言及された好ましい離型剤との混合物として本発明に係るプロセスで用いることができる。さらに適切である離型剤としては、例えば、独国特許出願公開第23 07589(A)号明細書に係る脂肪酸エステルおよびポリイソシアネートの反応生成物、独国特許出願公開第23 56 692(A)号明細書に係る反応性水素原子を含有するポリシロキサンとモノイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートとの反応生成物、独国特許出願公開第23 63 452(A)号明細書に係るヒドロキシメチル基を含有するポリシロキサンとモノカルボン酸および/またはポリカルボン酸とのエステル、ならびに独国特許出願公開第24 27 273(A)号明細書または独国特許出願公開第24 31 968(A)号明細書に係るアミノ基を含有するポリシロキサンおよび脂肪酸の塩が挙げられる。
【0049】
例として言及してもよい充填剤、特に強化作用を有する充填剤は、ケイ酸塩鉱物、例えばアンチゴライト、蛇紋石、普通角閃石、角閃石、クリソタイルおよびタルクなどの層状ケイ酸塩、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン類および酸化鉄類などの金属酸化物、胡粉および重晶石などの金属塩、およびフタロシアニン錯体およびガラス粉などの無機色素である。
【0050】
本発明に係るプロセスの工程iii)では、ポリイソシアネート成分が、ここで、任意に工程v)で与えられたさらなる添加剤および任意に工程iv)で与えられたイソシアネート基と反応性である少なくとも2つの水素原子を有するさらなる化合物の存在下で、当該ポリオール成分と接触させられ、ポリウレタンが形成され、この接触させることは、好ましくは工程i)、ii)、任意にiv)および任意にv)で与えられた成分を密接に混合することにより実施される。工程i)、ii)、任意にiv)および任意にv)で与えられた成分を混合することが、60℃未満、特に好ましくは40℃未満の温度で実施されることがさらに好ましい。
【0051】
工程i)、ii)、任意にiv)および任意にv)で与えられた個々の成分を接触させることの厳格な種類および方法は、本発明のプロセスにとっては重要ではなく(当該ポリオール成分の調製のために用いられる当該ポリエーテルポリオール成分、ポリエステルポリオール成分またはポリエーテルポリオール成分およびポリエステルポリオール成分の混合物が、当該ポリオール成分の粘度を低下させる目的で最初に当該ポリオールエステルと混合されるという条件を除いて)、特に、発泡したポリウレタンが製造されることになるかまたは発泡していないポリウレタンが製造されることになるかどうかに依存する。ポリウレタンの調製のために使用されるプロセスのための出発物質の概観は、例えばKunststoffhandbuch、第7巻、「Polyurethane」、Carl−Hanser−Verlag ミュンヘン ウィーン、第1版 1966年、第2版 1983年および第3版 1993年に見出すことができる。しかしながら、原則として、それら成分は、公知の混合装置を用いてワンショットプロセスまたはプレポリマープロセスによって連続的にまたは不連続的に接触させることができる。
【0052】
ポリウレタンフォームの工業生産では、ポリオール成分、さらなる添加剤および任意にイソシアネート基と反応性である少なくとも2つの水素原子を有するさらなる化合物を合わせ、次いでこのようにして得られる混合物をポリイソシアネート成分と混合することが従来的であり、当業者に公知のすべての混合装置がこのために用いられうる。特にポリオール成分および任意にイソシアネート基と反応性である少なくとも2つの水素原子を有するさらなる化合物がポリイソシアネート成分と反応させられる量の厳密な比は、本発明に関しては、目的とするポリウレタンが有するべきである特性に依存する。しかしながら、当該ポリイソシアネート成分および当該ポリオール成分またはポリオール成分およびイソシアネート基と反応性である少なくとも2つの水素原子を有するさらなる化合物の混合物は、従来どおり、イソシアネート指数が50〜500の間であるような量で一緒にされる。本発明に関しては、イソシアネート指数は、イソシアネートと反応性である水素原子に対するイソシアネート基の化学量論比に100を掛けたものを意味すると理解される。
【0053】
しかしながら、本発明に係るプロセスの特に好ましい実施形態によれば、工程iii)は反応射出成形プロセスとして実施される。このようなプロセスでは、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分ならびに任意に工程iv)および/またはv)で与えられるさらなる成分が、計量することにより混合チャンバーの中へと運搬され(個々の成分、特に工程ii)、iv)およびv)で与えられる成分が、混合チャンバーの中へと供給される前にすでに互いに混合されているということも考えられる)、混合チャンバーの中で混合されてポリウレタン反応混合物を与え、次いでこのポリウレタン反応混合物がノズルの溝を通って金型の空洞へと排出されることが好ましい。このようなプロセスは、例えば、独国特許出願公開第10 2004 006 074(A)号明細書に記載されている。
【0054】
これに関して、5bar(0.5MPa)未満、さらにより好ましくは4bar(0.4MPa)未満、さらに好ましくは2bar(0.2MPa)未満、さらにいっそうより好ましくは1bar(0.1MPa)未満の圧力下で、最も好ましくは大気圧下で、空洞へのポリウレタン反応混合物の排出を実施することが特に有利であるということが明確になる場合がある。
【0055】
成分工程i)、ii)、任意にiv)および任意にv)で与えられる成分を接触させることにより工程iii)で得られる反応混合物の比較的低粘度のため、これはまた、小さい総容積の空洞へと、または小さいセクション容積の定められたセクションを含む空洞へと射出することができる。これに関して、特に空洞が、15cm未満、さらにより好ましくは10cm未満、最も好ましくは5cm未満の総容積を有することが好ましい。
【0056】
上述の目的を成し遂げることに対する寄与は、上記のプロセスによって得ることができるポリウレタンによってもなされる。好ましくは、このポリウレタンはポリウレタンの成形品である。
【0057】
上述の目的を成し遂げることに対するさらなる寄与は、ポリオールおよびモノカルボン酸のポリオールエステルを粘度低下剤として含む、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの混合物を含むポリオール成分によってなされ、本発明に係るポリウレタンの調製のためのプロセスに関連して好ましい成分としてまたは好ましいポリエーテルポリオールもしくはポリエステルポリオールもしくはポリオールエステルとして上にすでに記載された成分または化合物は、当該ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの混合物を含むポリオール成分として、ならびにポリオールエステルとして好ましい。本発明に係るポリオール成分の特定の実施形態によれば、これは、いずれの場合も当該ポリオール成分の総重量に基づき、0.1〜30重量%の範囲、特に好ましくは1〜20重量%の範囲、最も好ましくは5〜15重量%の範囲の量のポリオールエステルを含む。
【0058】
上述の目的を成し遂げることに対するさらなる寄与は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの混合物を含むポリオール成分の調製のためのプロセスであって、ポリエーテルポリオール成分、ポリエステルポリオール成分またはポリエーテルポリオール成分およびポリエステルポリオール成分の混合物が好ましくは混合によってポリオールおよびモノカルボン酸のポリオールエステルと接触させられるプロセスによってもなされる。ここでも、ポリウレタンの調製のための本発明に係るプロセスに関連して好ましいポリエーテルポリオールもしくはポリエステルポリオールとして、またはポリオールエステルとしてすでに言及した成分または化合物は、当該ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの混合物を含むポリオール成分として、ならびにポリオールエステルとして好ましい。当該ポリオール成分の調製のための本発明に係るプロセスの特定の実施形態によれば、用いられるポリエーテルポリオール成分は、好ましくは、少なくとも500mPas、特に好ましくは少なくとも1,000mPas、最も好ましくは少なくとも2,000mPasの、25℃でブルックフィールド法によって測定された粘度を有する高粘度ポリエーテルポリオール成分であり、この25℃でブルックフィールド法によって測定された粘度は、好ましくは500〜12,000mPasの範囲、さらにより好ましくは1,000〜10,000mPasの範囲、最も好ましくは2,000〜8,000mPasの範囲にある。ポリエステルポリオール成分が用いられる場合、用いられるポリエステルポリオール成分は、好ましくは、少なくとも1,000mPas、特に好ましくは少なくとも2,000mPas、最も好ましくは少なくとも4,000mPasの、25℃でブルックフィールド法によって測定された粘度を有する高粘度ポリエステルポリオール成分であり、この25℃でブルックフィールド法によって測定された粘度は、好ましくは1,000〜20,000mPasの範囲、さらにより好ましくは2,000〜15,000mPasの範囲、最も好ましくは4,000〜10,000mPasの範囲にある。
【0059】
当該ポリエーテルポリオール成分、ポリエステルポリオール成分または当該ポリエーテルポリオール成分および当該ポリエステルポリオール成分の混合物が、いずれの場合も当該ポリエーテルポリオール成分、ポリエステルポリオール成分またはポリエーテルポリオール成分およびポリエステルポリオール成分の混合物の総重量に基づき少なくとも50重量%の程度まで、さらにより好ましくは少なくとも60重量%の程度まで、さらに好ましくは少なくとも75重量%の程度まで、さらにいっそうより好ましくは少なくとも95重量%の程度まで、最も好ましくは少なくとも99重量%の程度まで、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの混合物に基づくこと、またはこれからなることもまた好ましい。
【0060】
ポリオール成分の調製のための本発明に係るプロセスに関連して、いずれの場合も用いられるポリエーテルポリオール成分、用いられるポリエステルポリオール成分または用いられるポリエーテルポリオール成分およびポリエステルポリオール成分の混合物ならびに用いられるポリオールエステルの総重量に基づき、0.1〜30重量%の範囲、特に好ましくは1〜20重量%の範囲、最も好ましくは5〜15重量%の範囲の量で、当該ポリオールエステルが、ポリエーテルポリオール成分、ポリエステルポリオール成分または当該ポリエーテルポリオール成分および当該ポリエステルポリオール成分の混合物と接触させられることがさらに好ましい。
【0061】
上述の目的を成し遂げることに対する寄与は、さらには、上記のプロセスによって得ることができる、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの混合物を含むポリオール成分によってなされる。上述の目的を成し遂げることに対する寄与は、さらに、ポリウレタンの調製のためのプロセスにおける、好ましくは、上で記載した反応射出成形プロセスにおける、本発明に係るポリオール成分、またはポリオール成分の調製のための本発明に係るプロセスによって得ることができるポリオール成分の使用によってなされる。
【0062】
上述の目的を成し遂げることに対するさらなる寄与は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの混合物を含むポリオール成分のための粘度低下剤としての、ポリオールおよびモノカルボン酸のポリオールエステルの使用によってなされ、ここでもポリウレタンの調製のための本発明に係るプロセスに関連して好ましい化合物または成分として上にすでに記載された化合物または成分は、ポリオールエステルとして、ポリエーテルポリオールとして、ポリエステルポリオールとしておよびポリオール成分として好ましい。
【0063】
本発明は、これより、限定を意図しない実施例を用いてより詳細に説明される。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
(ポリエーテルポリオールに基づく本発明に係るポリオール成分の調製)
10重量%のグリセロールトリアセテート(コグニスオレオケミカルズ社(Cognis Oleochemicals GmbH)、ドイツから入手できる)を90gの、ソルビトールおよびエチレンオキシド/プロピレンオキシドのポリエーテルポリオール(商標名Rokopol(登録商標) 551(粘度:3,600mPas)でピーシーシー・ロキタ(PCC Rokita SA)、ポーランドから入手できる)に加える。このようにして得られるポリオール成分の粘度は1,640mPasであった。
【0065】
(実施例2)
(本発明に係るさらなるポリオール成分の調製)
10重量%のグリセロールトリプロピオネートを、90gの、ソルビトールおよびエチレンオキシド/プロピレンオキシドのポリエーテルポリオール(商標名Rokopol(登録商標) 551(粘度:3,600mPas)でピーシーシー・ロキタ(PCC Rokita SA)、ポーランドから入手できる)に加える。このようにして得られるポリオール成分の粘度は1,450mPasであった。
【0066】
(実施例3)
(ポリウレタンの調製)
実施例1および実施例2で得たポリオール成分に基づいて、ならびに、比較例として、ポリオールエステルが加えられていないRokopol(登録商標) 551製品に基づいてポリウレタンを調製した。以下の成分をここでは調製した。
【表1】
【0067】
これら2成分AおよびBを121の指数で互いに混合し、次いでこの混合物を発泡させた。ここで、成分Aと実施例1および実施例2で得たポリオール成分とは、純粋なRokopol(登録商標) 551製品を用いて調製した成分Aよりもかなり良好に成分Bと混合させることができるということが見出された。
【0068】
(実施例4)
(ポリエステルポリオールに基づく本発明に係るポリオール成分の調製)
10重量%のグリセロールトリアセテートをポリエステルポリオール Edenol(登録商標) 1230(粘度:3,840mPas)に加えた。このようにして得られるポリオール成分の粘度は2,317mPasであった。
【0069】
同様に、このポリオール成分を用いて実施例3に従ってポリウレタンを調製した。ここでも、グリセロールトリアセテートが加えられているEdenol(登録商標)1230製品を含有する成分Aは、純粋なEdenol(登録商標)1230製品を有する対応する成分Aよりもかなり良好に成分Bと混合させることができるということが見出された。