特許第5767121号(P5767121)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5767121ブレーキング機構の改良およびそれに関する改善
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767121
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】ブレーキング機構の改良およびそれに関する改善
(51)【国際特許分類】
   H02K 49/02 20060101AFI20150730BHJP
   H02K 49/10 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   H02K49/02 B
   H02K49/10 B
【請求項の数】12
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2011-553971(P2011-553971)
(86)(22)【出願日】2010年1月29日
(65)【公表番号】特表2012-520655(P2012-520655A)
(43)【公表日】2012年9月6日
(86)【国際出願番号】NZ2010000011
(87)【国際公開番号】WO2010104405
(87)【国際公開日】20100916
【審査請求日】2013年1月9日
(31)【優先権主張番号】575464
(32)【優先日】2009年3月10日
(33)【優先権主張国】NZ
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515073551
【氏名又は名称】エディ・カーレント・リミテッド・パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ジェームズ・アリントン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・カール・ディール
(72)【発明者】
【氏名】ブルース・ジョン・ロバートソン
【審査官】 田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−316272(JP,A)
【文献】 特開2001−017041(JP,A)
【文献】 特開平10−098868(JP,A)
【文献】 特開平11−315662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 49/00−51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
渦電流ブレーキング機構であって、
前記渦電流ブレーキング機構は、
回転軸の周囲で回転可能なロータと、
前記ロータとともに回転するために前記ロータに連結された少なくとも1つの導電部材であって、前記ロータに対して枢軸回転可能に取り付けられており、かつピボット軸の周囲で枢軸回転するよう構成されている導電部材と、
付勢デバイスであって、前記ピボット軸から離間されたポイントにおいて前記少なくとも1つの導電部材に対して取り付けられており、かつ前記ピボット軸から離間された位置において前記ロータに取り付けられている、付勢デバイスと、
前記導電部材の回転平面に少なくとも部分的に直交して延在する磁界を印加するよう構成された、少なくとも1つのマグネットと、
を含み、
前記ロータの回転時に、前記導電部材が、前記回転軸から印加磁界へ向かって少なくとも部分的に半径方向に移動するよう構成されており、かつ、前記導電部材の移動時に前記ロータの回転速度が一定となるように、前記付勢デバイスは、前記印加磁界へ向かう導電部材の移動とは反対向きの付勢力を提供することを特徴とする渦電流ブレーキング機構。
【請求項2】
前記マグネットは、前記ロータが回転する時に、前記ロータの角速度とは異なる角速度で回転するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の渦電流ブレーキング機構。
【請求項3】
前記マグネットは、前記ロータの回転方向に対して実質的に対向する方向において、前記ロータとともに回転するために、前記ロータに連結されていることを特徴とする請求項2に記載の渦電流ブレーキング機構。
【請求項4】
前記ロータは、スプールに巻き付けられたラインに対して連結されており、かつ、前記スプールとともに回転するよう構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキング機構。
【請求項5】
前記導電部材は、前記ロータに対して枢軸回転可能に取り付けられており、かつ、前記ロータの回転時に前記印加磁界へと少なくとも部分的に半径方向に移動するよう、ピボット軸の周囲で枢軸回転するよう構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキング機構。
【請求項6】
付勢デバイスが、前記導電部材に取り付けられており、かつロータの回転から生じる前記導電部材の動作に対抗する付勢力を提供するようなポジションにおいて前記ロータに取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキング機構。
【請求項7】
前記導電部材の半径方向動作の範囲を制限するためにストッパーが設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキング機構。
【請求項8】
前記ブレーキング機構は、前記ロータと同心の略円形マグネットアレイ状に配置された複数の永久磁石を含んでいることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキング機構。
【請求項9】
前記マグネットアレイは、前記ロータの片側に設けられており、かつその他方の側には強磁性プレートが配置されていることを特徴とする請求項8に記載の渦電流ブレーキング機構。
【請求項10】
前記磁界は、前記導電部材の回転平面に対して実質的に直交するよう延在していることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキング機構。
【請求項11】
ライン繰り出しデバイスであって、
前記ライン繰り出しデバイスは、
ブレーキング機構であって、
回転軸の周囲で回転可能なロータと、
前記ロータとともに回転するために前記ロータに連結された少なくとも1つの導電部材であって、前記ロータに対して枢軸回転可能に取り付けられており、かつピボット軸の周囲で枢軸回転するよう構成されている導電部材と、
付勢デバイスであって、前記ピボット軸から離間されたポイントにおいて前記少なくとも1つの導電部材に対して取り付けられており、かつ前記ピボット軸から離間された位置において前記ロータに取り付けられている、付勢デバイスと、
前記導電部材の回転平面に少なくとも部分的に直交するよう延在する磁界を印加するよう構成された少なくとも1つのマグネットと、を有する、ブレーキング機構と、
ラインのスプールと、
を含み、
前記ロータの回転時に、前記導電部材が、印加磁界内へ向かって前記回転軸から少なくとも部分的に半径方向に移動するよう構成されており、かつ、前記ラインのスプールは、前記ロータおよび/または前記導電部材に対して、それらとともに回転するために、連結されており、かつ、前記導電部材の移動時に前記ロータの回転速度が一定となるように、前記付勢デバイスは、前記印加磁界へ向かう導電部材の移動とは反対向きの付勢力を提供することを特徴とするライン繰り出しデバイス。
【請求項12】
前記ロータおよび/またはスプールは、前記スプールからのラインの伸長に対して、付勢された引き戻し機構を含み、前記引き戻し機構は、前記ラインに付与された張力があらかじめ決められたレベル以下となったときに、前記ラインを引き戻すよう構成されていることを特徴とする請求項11に記載のライン繰り出しデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキング機構の改良およびそれに関連する改善に関し、より詳細には、改良された過電流ブレーキング機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
過電流ブレーキングシステムは、非接触ブレーキを提供し、かつブレーキ面同士の間に摩擦接触が生じないように従来の摩擦ブレーキより優れた著しい利点をもたらすため幅広い用途に使用されている。
【0003】
過電流ブレーキは、導電体が磁界を通過するまたは磁界が導電体を通過した場合に相対運動が導電体に電流「過剰に」発生させるという原理に基づいて機能する。過剰な電流は続いて、印加磁界の作用に対する磁界を誘起する。それゆえ過電流ブレーキは、この磁界内での導電体動作においてブレーキの機能を果たすよう対向磁界を利用する。過電流磁界の強さ、ひいてはその反力は、以下のいくつかの要因に左右される。
−印加磁界の強さ
−前記導電体を通る磁束
−導電体の形状寸法および磁界の形状寸法、例えばサイズや物理的分離
−導電体の導電率
−導電体と磁界との間の相対速度
【0004】
それゆえ異なるブレーキング力は、1つ以上の上記パラメータを変更することによって得られる。
【0005】
より明瞭にしかつ冗長な記述を避けるために、本明細書では部材を回転させるためのブレーキング/妨害トルクを必要とする用途に関して、本発明が有する特定の用途に関連するオートビレイシステムに関して詳細に述べる。ただし本明細書で参照されるオートビレイシステムは、過電流ブレーキングシステムに関して多くの用途があることが当業者に明らかであるように、制限されるものであると見なされるべきではない。
【0006】
磁界に対するロータが回転する速度(角速度)は本明細書では「回転速度」と称し、あるいは簡便には「速度」と称する。
【0007】
回転プレートタイプの過電流ブレーキングシステムは通常、常時性導電ディスクを使用しており、このディスクは、ディスクの片側または両側に配置されたマグネットによって印加される磁界に直交する平面で回転するよう構成されている。過電流および対応する磁界は、ディスクが磁界に対して回転させられたときに発生する。それゆえブレーキングトルクは、回転するディスクに対して作用する。導電体とマグネットとの間のより高い相対速度はより大きなブレーキングトルクを生じるようになり、回転速度は有効に制限されるようになる。
【0008】
ブレーキングトルクは、閾値的な「特性速度」に到達するまでは速度のみに線形的に比例する。この特性速度を超えると、ブレーキングトルクは、速度に応じて、さらなる速度の増加を伴う低減が始まる前に非線形となりかつピークに達する。この特性は、従来のディスクタイプの過電流ブレーキングシステムの回転速度対ブレーキングトルクの近似プロットが図示される図1に示されている。この特性速度は、ディスクの温度、材料、磁気透過率、および構造に左右されるディスクの低効率に依存する。
【0009】
上記特性速度下で作動する通常の過電流ディスクシステムのブレーキングトルクは、以下の関係式でおおむね規定される。
【0010】
【数1】
【0011】
ここで、ブレーキングトルクTは以下のそれぞれに比例する。
A −磁界に交差する導電体表面積
−印加磁界強さの二乗
d −ディスクの厚さ
−回転軸から磁界内の導電体までの半径(距離)の二乗
ω −回転速度
【0012】
それゆえ、ブレーキングトルクの非線形な応答は、磁界強さBおよび/または回転中心までの距離Rを変更することによって得られる。
【0013】
磁界は、永久磁石および/または電磁石によって提供できる。磁界の強さは、磁力および磁気回路の構成、つまりシステムに使用される材料およびその構成要素の空間は位置に左右される。
【0014】
永久磁石システムに関して、磁気回路の変更(例えばA,dまたはRにおける変更)することは、ブレーキングトルクを変化させるのに最も効果的な方法である。それゆえ通常の過電流ブレーキングシステムでは、Rを最大化するためにディスクの周縁部に向けてマグネットを配置する。
【0015】
共通の磁気回路構造体が、各マグネットの裏側のスチール基材とともにディスクの片側または両側に配置された永久磁石を利用している。このスチールプレートは、マグネットのための構造支持体が提供されると同時に磁界強さを高めるために提供される。
【0016】
クライミング、懸垂降下などにはクライマーの下降量を制御するためにオートビレイデバイスが使用されている。オートビレイは、また、クライマーがラインに張力を保持するよう上昇する場合に自動でラインを引き戻し、ラインに生じるたるみを防ぐものである。
【0017】
現在のオートビレイシステムは、通常、上昇率を制御するために摩擦ブレーキまたは液圧ダンピング機構を使用する。摩擦ブレーキは、過電流ブレーキと比較すると、摩擦接触が実質的な発熱、磨耗および関連する安全性の問題を伴うという欠点を明らかに有する。液圧ダンピング機構は、高価であり、かつ漏れ、圧力に弱く、また較正の問題がある。
【0018】
典型的なオートビレイシステムは、小さくコンパクトなデバイスで十分なブレーキング力を提供するとともに、最小摩擦および対応する磨耗を伴う一定のあるいは制御された降下量を提供する。
【0019】
従来技術においてはさまざまな過電流ブレーキングシステムがたくさん存在する。しかしながら、オートビレイ、または、付与されるトルクが変化可能である場合に一定の回転速度が要求される他の用途に適した従来システムは存在しない。
【0020】
典型的な従来のプレートタイプのブレーキングシステムは、さまざまな磁気回路構造体を使用し、かつ賛否両論の付随物を有する。典型的な従来のデバイスの一例を後述する。
【0021】
他の従来のプレートタイプの過電流ブレーキングデバイスがSugimotoによる特許文献1に開示されている。このデバイスは、ロータよりも相対的に高い回転速度でディスクを回転させるために、オーバードライブギア装置を介してロータに連結された導電ディスクを備えている。このロータは、中からラインが繰り出されるスプールを含む。一連の永久磁石が、回転軸に対して半径方向に回転しかつそれから離間されたディスクの平面に平行に延在する鉄製プレートに取り付けられている。これらマグネットは、回転中にディスクに過電流を生じ、対応する磁界およびブレーキング作用をもたらすことが明らかである。このSugimotoのシステムは、また、ディスクに過電流によって発生した熱の放出を支援するためにラジエータファンを含む。ロータの回転は、回転速度(ω)が増大するよう力が増大するとともに、減速していく。オーバードライブ装置は、ロータに直接連結されたディスクに比べて増大された減速力を提供し、ゆえに、Sugimotoのデバイスにおいては、上記トルクの関係は、以下の式に相似する。
【0022】
【数2】
【0023】
ここで、kは、オーバードライブギア比である。
【0024】
上記Sugimotoのデバイスが単純なプレートタイプのシステムに比べてより効果的なものである一方で、それは、付与されるブレーキング力を調節することができず、かつ、ブレーキング力を、つまりディスクと磁界との間の相対速度の増大によって、改良するためのオーバードライブ機構を信頼することができない。オーバードライブ機構は、コスト、複雑さ、サイズ、磨耗具合、増大された発熱量ならびに故障の可能性を増加させる。
【0025】
さらに、このロータの回転速度は、付与トルクとともにさらに変化するものである。
【0026】
Sugimotoのデバイスは、回転速度の変化によってより小さなデバイスに対してより大きなブレーキ効果を提供している。だが、このギア機構は、サイズの制限、ひいては小型化の可能性の範囲の制限を生じる。それゆえSugimotoのデバイスは、頻繁にかつ/または持続的な使用時においても安全で信頼性のある動作を伴うコンパクトなデバイスであることが要求されるオートビレイには望ましくない。
【0027】
Sugimotoのデバイスと同様のデバイスが、Bergesおよび他による特許文献2に開示されている。このBergesおよび他は、ロータが十分な回転速度に到達した際に過電流ブレーキングシステムと係合する遠心クラッチを備えるプレートタイプの過電流ブレーキングシステムを開示した。
【0028】
なお、SugimotoのデバイスもBergesおよび他によるデバイスも、オーバードライブギア比または磁力をばらばらにしたり変更したりすることなくブレーキング効果を調節することができないことに留意されたい。それゆえ、これらデバイスは、異なる付与トルクを調整することが必要とされる用途においては不便であることが明らかである。
【0029】
さまざまなブレーキングシステムを提供するという試みが行われてきており、その例示的なデバイスが、Muramatsuによる特許文献3、Imanishiおよび他による特許文献4、Reiserによる特許文献5およびGersemskyおよび他による特許文献6に開示されている。
【0030】
Muramatsuのデバイスは、マグネットアレイに対して手動で調節可能なポジションに回転ディスクを有しており、そのため、ディスクによって交差される磁界の面積(A)を変更するための手段が提供される。Muramatsuのデバイスは、得られるブレーキ効果および最大ブレーキングトルクを変更するために調節されてもよいが、依然としてディスクのサイズおよびマグネットの強さによって制限が掛けられており、それゆえ、より小さなサイズのものが有利とされる場合、例えばオートビレイデバイスには適切なものではない。さらにMuramatsuのデバイスは手動で変更しなければならない。
【0031】
Ishimatsuおよび他によって開示されたデバイスはMuramatsuによって開示されたものと同様の原理で作動する。しかしながら、磁界によって交差されるディスク領域の変化の変わりに、Ishimatsuおよび他によるシステムは、分離具合およびディスクが交差する磁界磁束を低減または増加させるために、アレイを軸方向に離れるようにあるいはディスクへ向けて移動させるために、線形デバイスに取り付けられたマグネットアレイを使用する。Muramatsuのデバイスと同様に、Ishimatsuおよび他のブレーキング作用は、さまざまな付与トルクを調整するために自動的には調整できない。
【0032】
Imanishiおよび他のデバイスの自動的なバージョンのデバイスは、Reiserによる特許文献5に開示されており、かつマグネットアレイと導電ディスクとの間にあるスプリングとともに導電ディスクに連結されたラインスプールはマグネットアレイの上に配置されている。このラインがスプールから引き出されるように、スプリングに掛かる重量は減少し、そしてスプリングは伸長して、ディスクとマグネットとの間の空間を広げ、それにより、ラインが引き出された時のブレーキング効果が低減される。このスプリングは、ラインが巻き取られる場合にスプールの回転速度が一定となるように較正される。Reiserのシステムは、構成要素の静的支持およびスプールでの重量の変化に左右されるものであり、したがって、オートビレイシステムには適していない。さらに、Reiserのデバイスのブレーキング効果は、回転速度および磁界強さによってのみ変化するが、付与トルクによっては変化しない。
【0033】
ホイストのためのブレーキがGersemskyおよび他による特許文献6に開示されており、これは回転導電ディスクに対してマグネットのポジションを変化させる磁気回路を使用する。マグネットは、枢軸アームの自由端に対して、枢軸アームの自由端に取り付けられたスプリングとともに、取り付けられており、かつディスクに隣接した固定ポイントに対して取り付けられている。ディスクが回転すると、生じた過電流が、回転を阻止するようディスクにブレーキング効果をもたらす。ブレーキングトルクを増大させるよう半径方向外側にマグネットを動かすようアームを枢軸回転させるブレーキング効果によって、反力がマグネットに作用する。スプリングは押圧しかつこの反力に対向し、それによって、ディスクにはブレーキング効果がもたらされる。ディスクの回転の反転は、対向方向にマグネットを向ける対向する反力を生じ、続いてスプリングが伸長して、ブレーキング効果を付与するよう反力に対向するようになる。それゆえ、Gersemskyおよび他によるシステムは、ディスクの回転方向に関係なく十分なブレーキ効果を提供する。またマグネットの半径方向動作は、相対速度を増加するようブレーキング効果を増大させる。
【0034】
Gersemskyおよび他によるシステムは、その目的を達成すると同時に、付与されるブレーキングトルクがマグネットの(回転速度および回転軸に対する半径に比例する)相対速度のみに左右されるようにその適応性が制限される。さらにオートビレイシステムは、通常、一方向にのみブレーキを掛けることを要求し、それゆえ、Gersemskyおよび他によるシステムのような総合的なブレーキングシステムが適切であるとは言えない。
【0035】
したがって、幅広い付与荷重またはトルクにわたってロータの回転速度を限定できる過電流ブレーキング機構を提供することは有利となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】米国特許第4,567,963号明細書
【特許文献2】米国特許第5,342,000号明細書
【特許文献3】米国特許第4,612,469号明細書
【特許文献4】欧州特許第1,480,320号明細書
【特許文献5】米国特許第3,721,394号明細書
【特許文献6】米国特許第6,460,828号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
本発明の目的は、上記問題を解決すること、つまり、少なくとも、有用な選択肢を人々に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本明細書で引用された他の特許出願のすべての参照によってこれらは本明細書に組み込まれる。この参照を構成する従来技術には何の許可も必要ではない。この参照についての述べられている事項はその著作者の考えを記すものであり、かつ出願人は引用される文献の正確さおよび適合性の正当性の説明を要求する資格を保持している。いくつかの従来技術文献が本明細書で参照されているが、ニュージーランドまたは他の国において、この参照は、これら参照文献が従来公知の常識的な知識の一部を形成する許可を与えるものではない。
【0039】
「備える」との語が、その範囲の変化内で排他的なあるいは包括的な意味のいずれかに起因するものであってもよいことが知られている。本明細書の目的のために、他の注釈がない限りは「備える」との語は、包括的な意味を有するべきである。つまり、挙げられた構成要素のみを直接的に参照することのみではなく、他の特定されていない構成要素または要素を含む包括的な意味を選択するようになっている。この理論は、方法または構成における1つ以上のステップに関連して「備えられている」または「備えている」との語が使用される場合でも、同様に使用される。
【0040】
本発明のさらなる対応および利点は、例示としてのみ用いられて付与される確かな説明から明らかになる。
【0041】
本発明の第一の態様によれば、過電流ブレーキング機構であって、
この過電流ブレーキング機構は、
−回転軸の周囲で回転可能なロータと、
−ロータとともに回転するためにロータに連結された少なくとも1つの導電部材と、
−導電部材の回転平面に少なくとも部分的に直交するよう広がる磁界を印加させるよう構成された、少なくとも1つのマグネットと、
を含み、
ロータの回転時に、導電部材が、回転軸から印加磁界へ向かって少なくとも半径方向に移動するよう構成されている、過電流ブレーキング機構を提供する。
【0042】
一般に、印加磁界を通る導電部材の移動は、導電部材が磁界に交差するときに導電部材に過電流を発生させる。
【0043】
明確にしかつ冗長な説明を避けるために、本明細書ではロータに連結された導電部材に関連するものである。なお、「反対の」構成も可能でありかつそれは本発明の範囲内のものである。この「反対の」構成は、ロータに連結されたマグネットを有していてもよく、かつ導電部材が磁界に交差するよう導電部材へ向かって移動するよう構成されていてもよい。
【0044】
明確にしかつ冗長な説明を避けるために、本発明は、本明細書ではオートビレイのためのブレーキング機構に関して記載されており、そのため、本発明は特定の用途を有していてもよい。なお、本発明は他の回転ブレーキング用途にまたは減速用途に使用されてもよく、それゆえ本明細書ではオートビレイを単なる例示として参照しているが、これに制限されるものではないことは明らかである。
【0045】
また、本発明は、カムまたはチェーン駆動機構などの線形デバイスにロータを連結することによる線形ブレーキング用途に使用されてもよいことが明らかである。
【0046】
本明細書を参照すると導電部材の「半径方向」動作は、ロータおよび/または導電部材の回転軸へ向かうあるいはそれから離れた方向への構成要素を伴う移動を含むことを意味すると理解されるべきであり、かつ、線形的なまたは比線形的な半径方向動作の両方を含むよう解釈されるべきである。
【0047】
本明細書を参照すると、「外側」半径方向移動は回転軸から離れる方向への移動を意味しており、同様に「内側」は回転軸へ向かう方向を意味している。
【0048】
本明細書を参照すると、ロータに「連結された」導電部材は、導電部材がロータとともに回転するよう直接的なまたは間接的な手段であることを理解されたい。また、連結が機械的なものである必要はないことも明らかである。
【0049】
明確にするために、マグネットによって印加される磁界は、本明細書では、「印加」磁界と称し、かつ導電部材における過電流によって生じる磁界は「反応」磁界と称する。
【0050】
好ましい実施形態においては、導電部材に生じた過電流が印加磁界に対向する反応磁界を生じる。それゆえ対向する「印加」および「反応」磁界によって生じる反力が導電部材の移動に対向するよう導電部材に伝達される。導電部材がロータに連結されると、ロータの回転は反力によって反対にもなる。
【0051】
本明細書で使用されているように、「ブレーキ」および「ブレーキング」は、それぞれ、対象物の移動に対向する力を付与するために装置または工程に関連するものである。
【0052】
本明細書で使用されているように、「ロータ」との語は、なんらかの回転要素に関するものであり、かつドライブシャフト、軸、ギア、ネジ、ディスク、ホイール、はめ歯、またはその組み合わせ、あるいは他の回転部材を含んでもよい。
【0053】
本明細書で使用されているように、「導電部材」との語は、電気的に伝導性のあるものに関し、好ましくは非強磁性部材に関するものである。
【0054】
本明細書で使用されているように、「マグネット」との語は、磁界を生じることができる磁石またはデバイスを意味しており、かつ電磁石、「永久」磁石、「一時」磁石、磁化された強磁性材料、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0055】
好ましくは、導電部材は、回転軸から磁界へと向けて少なくとも部分的に半径方向に移動するよう構成されている。
【0056】
好ましくは、導電部材は、回転軸の周囲でロータとともに回転する。
【0057】
導電部材は必ずしも直接的にロータに接続される必要はなく、中間ギアまたは他の連結体を介して接続されていてもよいことは明白である。そうした実施形態において、導電部材に取り付けられたギアまたは連結体は、「ロータ」またはその一部であると考えることもできる。
【0058】
そうした実施形態において、導電部材は間接的にロータに連結されており、この導電部材が他の軸の周囲で、つまり回転軸に対して平行ではない状態で回転してもよいことは明らかである。
【0059】
さらなる実施形態において、ロータが入力軸の速度とは異なる速度で回転するように、ロータはオーバードライブまたはアンダードライブギアトランスミッション装置を介して入力軸などに連結されてもよい。
【0060】
好ましくは、ロータは、ラインのスプールに連結されており、かつスプールとともに回転するために構成されている。それゆえ、スプールからのラインの繰り出し量または引き戻し量は、ブレーキング機構とともにロータの回転速度を制御することによって制御できる。
【0061】
好ましくは、ブレーキング機構は、複数の電気的な伝導部材を含む(本明細書では簡単に導電部材と称する)。
【0062】
ブレーキング効果は、印加磁界を通って移動する導電部材の数を増やすことによって増加される。なお、導電部材の数およびサイズは、その用途のサイズおよび重量制限によって限定される。ゆえに、例えばオートビレイへの利用においては、好ましくは三つの導電部材が設けられる。
【0063】
好ましくは、導電部材は、ロータの回転時に印加磁界へと少なくとも部分的に半径方向に移動するように、ロータに枢軸可能に取り付けられており、かつ回転軸の周囲で枢軸回転するよう構成されている。
【0064】
好ましくは、導電部材は、回転軸に対して偏心したポイントにおいて、ロータに枢軸可能に取り付けられている。
【0065】
好ましくは、導電部材は、ピボット軸および回転軸に対して偏心した質量中心(質量の重心)を有している。それゆえ、導電部材は、ピボット連結部を介したロータによってかつ質量中心に中心がある導電部材に作用する遠心作用によって導電部材に付与されるトルクを生じるように、枢軸回転するようになる。遠心作用の強さは、回転速度および付与トルクに左右される。それゆえ、導電部材は、付与トルクをもたらすのと同様に、回転速度に応じた速さで半径方向に移動するようになる。
【0066】
他の実施形態において、質量中心(重心)は、ピボット軸に位置していてもよい。例えば、導電部材は、ピボット軸の周囲での均等な質量分散を伴うカウンタバランス構造を備える形状になされてもよい。そうした実施形態は、ピボット軸の周囲での直接的な半径方向の力の伝達を提供し、それ自体はピボット軸の周囲のアーム運動に作用しない。それゆえ、この実施形態におけるブレーキ応答は、アーム質量に作用する半径方向の力には左右されない。
【0067】
導電部材は、その用途のために適切な形状になされてもよいことは明らかである。導電部材の形状は、磁界内へ半径方向に移動した場合に導電部材によって交差される磁界の領域、過電流、発生する反応磁界、ひいては対応するブレーキングトルクを決定する。導電部材の形状は、その用途に要求されるブレーキングトルク特性を変更するよう、変更されてもよい。
【0068】
好ましくは、例えばスプリングまたは他の付勢部材/機構である付勢デバイスの一端は、ピボット軸に対して離れたポイントにある導電部材に取り付けられており、かつ、その他端は、ロータの回転から生じる導電部材の半径方向の移動に対抗する付勢力を提供するポジションにおいてロータに取り付けられている。それゆえ、付勢デバイスの較正は、導電部材の半径方向の移動量を、ひいては印加磁界に交差する導電部材の領域制御するための手段を提供する。印加磁界を通る移動時に導電部材に付与されるブレーキング力は、付勢デバイスを介して、かつ/またはロータの導電部材の取り付けを通じて、ロータに付与されてもよい。
【0069】
好ましくは、付勢デバイスは、付与される付勢デバイスの付勢力のレベルを選択的に増大し/減少できる較正機構を含む。そうした較正機構は、例えば、付与される付勢デバイスの付勢力の調整のために、スプリングの収縮/伸長を可逆的に可能にする張力スクリューによって、提供されてもよい。そうした張力スクリューは、付勢デバイスを調整するかまたはそれを取り替えるために取り外すことを要求せず、迅速かつ容易なブレーキング機構の較正に有用であることが示される。オートビレイへの使用においては、そうした迅速な較正は、要求される最大回転速度を変更することが必要とされたときに重要となることが明らかとなる。
【0070】
付勢デバイスが、各用途の要求に応じて印加磁界へ向かってまたはそれから離れて導電部材を付勢するよう構成されてもよいことは明らかである。例えば(加速を防ぐために)付与トルクの増加に伴いブレーキングトルクを増加させることが要求される用途において、付勢デバイスは、印加磁界から半径方向に向けて導電部材を付勢することが好ましい。
【0071】
代替実施形態において(付与トルクとともにブレーキングトルクを減少させることを要求する用途において)、付勢デバイスは、印加磁界へ向けて導電部材を半径方向に移動させるために導電部材に対して不勢力を提供するべく、導電部材に対してかつロータに対して取り付けられている。導電部材は、例えば付勢部材取り付け具に対してピボット軸の対向する側にカウンタウェイトを設けるかまたは質量中心を配置することによって、回転時に半径方向内側に移動するよう構成されている。そうした実施形態は、例えば、中間ポイントの周囲で枢軸回転可能なレバーの一端に導電部材を設けることによって達成できる。そのレバーの他端は、ロータの回転時に遠心作用下で外側に動くよう構成されたカウンタウェイトを有する。導電部材、代替的にはカウンタウェイトは、印加磁界へ向けて導電要素を付勢するよう付勢デバイスを介してロータに取り付けられていてもよい。それゆえ、ロータが回転するとき、レバーは、導電部材に対して付与される付勢力およびブレーキングトルクに対して磁界から離れるよう導電部材を枢軸回転させる。
【0072】
好ましくは、付勢デバイスは、ブレーキが掛けられるように回転方向に偏心したピボット軸から離間されたポジションにおいて、ロータに取り付けられている。
【0073】
代替実施形態において、付勢デバイスは、前記ロータの一端に取り付けられたねじりバネまたは同等物として設けられてもよく、かつその他端においては、ピボット軸の周囲にある導電部材が取り付けられており、そのねじりバネは、(用途に応じて)磁界へ向けてまたは磁界から離れるように、導電部材の枢軸回転に対向するよう構成されている。
【0074】
上記スプリングは、好ましくは印加磁界を交差する導電部材の最大および最小領域のそれぞれとともに、最大スプリング長と最小スプリング長との間で導電部材の枢軸移動範囲の限定を形成する。
【0075】
また枢軸範囲は、好ましくは、ブレーキングトルクが対向方向でない一回転方向だけに付与されることを確実なものとするようピボット軸の一側に構成されている。そうした「一方向」構成は、上昇時にラインにおけるブレーキング作用を有することが望まれないオートビレイへの用途に有用である。なぜなら、これはライン引き戻し機構に対向しかつラインにゆるみを潜在的に形成するからである。
【0076】
導電部材が磁界へ向けて移動する割合が、導電部材に作用する付与トルク、「スプリング」付勢力および反応遠心力に左右される、つまり付与トルクおよび付勢力に対向する(回転速度および導電部材の質量に左右される)遠心力の成分が、スプリング付勢力より大きくなる場合に、導電部材は磁界へ向かって移動するようになる。スプリングが伸長すると、スプリング「付勢力」または復帰力Fsが以下の式におおむね基づいて増大する。
【0077】
【数3】
【0078】
ここで、kは、バネ定数であり、かつxは平衡点からの広がりである。一同導電部材が磁界内に存在すると、過電流反力は、付与トルクおよび遠心力によって引き起こされる枢軸回転に付加されるようになり、したがってスプリング付勢力は3つの力すべてに対向し、それゆえ、復帰力がピボット軸の周囲で導電部材に付与されるトルクと等しくなるまで、スプリングは伸長する。
【0079】
好ましくは、ブレーキング機構は、ロータから偏心して、略円形または弧状のマグネットアレイ状に配置された複数の永久磁石を含む。
【0080】
代替実施形態において、ブレーキング機構は、例えばその略中央に回転軸がある四角形状または三角形状などの線形アレイ状に配置された複数の永久磁石を含んでもよい。
【0081】
好ましくは、二つの上記アレイは、導電部材の回転平面の両側に設けられる。各アレイの磁石は、実質的に互いに対向する反対の極を有する。したがって、磁界は、好ましくは導電部材の回転平面に実質的に直交する方向において、磁界は対向するマグネットの反極(N極およびS極)の間に延在するよう形成されている。
【0082】
代替実施形態においては、ひとつのアレイがロータの片側に設けられてもよく、その他側にはスチール製のまたは強磁性のプレートが配置されている。なお、そうした「片側」配置されたマグネットアレイは、両側に配置されたアレイに比べて弱い磁界を提供し得ることは明らかだ。
【0083】
さらなる実施形態において、導電部材の片側または両側に設けられたマグネットアレイは、導電部材の方向に磁界を集中させるために、ハルバッハ(halbach)様式であるいは同様の構成で配置されている。
【0084】
好ましくは、マグネットアレイは、導電部材に対して反対の方向である「外側」においてマグネットの表面に取り付けられたスチールまたは他の強磁性材料の基材を備えている。
【0085】
さらに他の実施形態において、マグネットは、導電部材の半径方向動作が導電部材を印加磁界に交差するようにさせるよう、ロータおよび導電部材を取り囲むよう形状付けられた単一のマグネットとして設けられてもよい。
【0086】
生じる過電流作用のために、導電部材が磁界に交差しかつ磁界に対して移動しなければならないことは明らかである。例示として、これは、以下のa)およびb)によって達成される。
a)適所にマグネットを固定し、かつロータおよび導電部材を、導電部材が磁界に交差しかつ磁界と通って移動するようあるいはその反対となるよう、回転させる。
b)導電部材とマグネットの両方を異なる角速度で回転させる。例えばロータおよび導電部材はマグネットと同じ方向に、だがより大きな角速度で回転するよう構成されてもよい。あるいはマグネットは、導電部材の方向に対向する方向に回転するよう構成されてもよい。
【0087】
したがって、1つの好ましい実施形態においては、マグネットは、マグネットがロータとともに回転しないように適所に固定されており、ロータおよび導電部材は、導電部材が磁界に交差しかつ磁界と通って移動するように、マグネットに対して回転可能である。
【0088】
「固定」との語がこの実施形態において、例えばモータステータと同様に、ロータに対して静止状態にされたマグネットを意味するよう使用されていることは明らかである。それゆえ「固定」との語は、ハウジング、上部構造または他の対象物に対して適所に固定されているマグネットを意味するよう解釈されるべきものではない。
【0089】
好ましい実施形態において、マグネットは、ロータの回転時にロータの角速度とは異なる角速度で回転するよう構成されている。
【0090】
ロータに対するマグネットの回転は、ロータが回転するときに、相対角速度を、ひいてはブレーキングトルクの強さを変更するための機構を提供する。マグネットは、ブレーキングトルクを低減させるためにロータと同じ方向に、あるいはブレーキングトルクを増大させるためにロータの方向に対向する方向に回転してもよい。
【0091】
好ましい実施形態において、マグネットは、ロータの方向に実質的に対向する方向においてロータとともに回転するためにロータに連結されている。
【0092】
好ましい実施形態において、ロータは連結トランスミッションを介してマグネットに連結されている。
【0093】
好ましい実施形態において、連結トランスミッションは、マグネットに接続されかつ連結トランスミッションを介してロータに連結されたドラムを付与トルクが駆動する場合に、マグネットに対するロータ(および導電部材)の相対角速度を変化させるために使用されてもよい。代替実施形態において装置は他の方法で丸くされてもよい。
【0094】
本明細書を通して連結トランスミッションを参照すると、連結トランスミッションに連結される二つの物品の間で力を伝達するために使用される機構を意味するよう理解されたい。連結トランスミッションは、機械的または流体ギアトランスミッション、またはチェーンドライブまたは摩擦連結、あるいは従来公知である他のトランスミッションであってもよい。
【0095】
例えば、ギアトランスミッションは、ロータの方向とは反対の方向に回転するよう構成されてもよく、それによって、導電部材とマグネットとの間の相対速度が潜在的に乗算される。
【0096】
それゆえ、このブレーキング機構は、著しく材料またはサイズを増加することなく、導電部材とマグネットとの間の相対速度を増大することによって増大されるブレーキング作用を得ることができる。
【0097】
他の実施形態において、ロータは、チェーンドライブまたは摩擦連結を含むさまざまな手段によってマグネットに連結されていてもよい。
【0098】
さらなる実施形態において、ストッパーが、導電部材の半径方向動作を制限するために設けられてもよい。
【0099】
好ましくは、ストッパーは、中断される最大磁界のポジションまで導電部材の半径方向の移動を制限するよる配置されている。そうしたストッパーは、導電部材が磁界内にあると同時に、ロータに対して導電部材を効果的に「固定する」ことによってロータに対して、導電部材に付与されるブレーキングトルクを伝達することに利用される。
【0100】
さらに、そうしたストッパーを提供することによって、付勢デバイスが破損したり、外れたり、または他の方法で損なわれる場合に、導電部材がロータに対してブレーキングトルク(好ましくは最大の)を依然として付与することを確実とするために、「安全な」特徴部が提供される。そうしたストッパーが設けられていない場合には、導電部材は、磁界から外れて移動でき、かつ、もはやブレーキングトルクを付与することはない。
【0101】
代替実施形態において、ストッパーは、付勢されたラチェット機構の一部として提供されてもよい。導電部材は、進行的な半径方向ポジションに対して、ひいては進行的なブレーキングトルクに対して、付勢力とは反対方向に移動する。
【0102】
本発明の他の態様によれば、以下の構成、つまり、
−回転軸周囲で回転するロータと、
−ロータとともに回転するためにロータに連結された少なくとも1つの電気的伝導部材と、
−導電部材に少なくとも部分的に直交して延在する磁界を印加するよう構成された少なくとも1つのマグネットと、
を含み、
ロータの回転時に、導電部材が印加磁界へ向けてロータから半径方向外側に移動されるよう構成されており、それによって、印加磁界を通る導電部材の動作が、導電部材が磁界に交差するときに、導電部材に過電流を生じるようになっている、過電流ブレーキング機構が提供される。
【0103】
好ましくは、磁界は主に導電部材の回転平面に対して実質的に直交して延在する。
【0104】
好ましくは、複数のマグネットおよび導電部材が設けられており、各導電部材は1つ以上のマグネットによって印加される磁界へと可逆的な移動ができるようになっている。
【0105】
好ましくは、導電部材は、ロータの回転に応じて回転軸から半径方向トラックに沿ってロータに対して移動するよう構成されている。
【0106】
好ましくは、導電部材は、連結されたロータによってもたらされる半径方向の加速の結果として、磁界内へ移動するよう構成されており、それゆえ導電部材はロータに対して半径方向外側に移動するようになっている。
【0107】
好ましくは、スプリングまたは同等の付勢部材/機構などの付勢デバイスは、導電部材の外側半径方向移動に対向する付勢力を提供するために、導電部材にかつロータに取り付けられている。したがって、付勢デバイスの較正は、導電部材の半径方向移動の量を、ひいては磁界に交差する導電部材の領域を制御するための手段を提供する。
【0108】
この「線形的な」実施形態は、ロータの回転方向とは関係なく作動するブレーキング機構を提供する。
【0109】
「線形的な」かつ「枢軸回転する(つまり導電部材の枢軸回転を伴う)」両方の実施形態に適用されるブレーキングトルクの較正は、付勢力のレベルを変更することにより変化されかつ較正することができ、それによって、特定のブレーキングトルク特性を要求する用途に応じた効果的な手段が提供できるようになる。
【0110】
本発明に基づく過電流ブレーキング機構は、ロータの回転速度を付与トルクの範囲(「作動範囲」)にわたって一定となるよう構成されてもよい。前記付与トルクはロータに回転が引き起こされるときにロータに作用する力である。この一定の回転速度は、導電体が磁界とより多く交差するときに誘起された過電流から生じたブレーキングトルクの等しくかつ反対の増加によって(作動範囲内での)バランスの取れた付与トルクの増加が原因となって生じる。
【0111】
ロータが最初に回転し始めた場合には、本発明に基づく過電流ブレーキング機構は、付与トルクとともに実質的に線形に回転速度が増大する従来のデバイスのように作動する。この状態は、ロータとともに回転するようロータに連結された電気伝導体がマグネットの印加磁界内に進入するまで続く。磁界を通る導電体の動きは、導電体に過電流をもたらし(それは磁界を通る動作に対向する)、それにより導電体の作動にブレーキング力がもたらされる。ブレーキング力の大きさは、導電体が磁界に交差する大きさおよび磁界の強さを含むいくつかの要因に左右される。
【0112】
本発明に基づく過電流ブレーキング機構は、磁界の強さ、導電体の構成および付勢機構は、すべて、ロータに付与されるトルクの増大がトルクの所望の作動範囲にわたるブレーキングトルクの等しいが対向する増加によってバランスがとれ、それによって作動範囲にわたってロータの一定の回転速度を生じるように、選択されてもよい。
【0113】
多少の付与トルクにおいて、導電体は、本発明の特定の実施形態では利用可能な磁界の最大領域に交差してもよい。このトルクでは、ブレーキング力もまた最大となる。それゆえ付与トルクがさらに増大されると、回転速度は再び付与トルクの増加に対応して実質的に線形となる。
【0114】
本発明の他の態様によれば、ライン繰り出しデバイスであって、
−実質的に上述されたブレーキング機構と、
−ロータとともに回転するべくロータおよび/または導電部材に連結されたラインのスプールと、
を含むライン繰り出しデバイスが提供される。
【0115】
このライン繰り出しデバイスはオートビレイであることが好ましい。
【0116】
好ましくは、ロータおよび/またはスプールは、スプールからのラインの伸長に対向するための付勢復帰機構を含む。この復帰機構は、ラインに作用する張力が所定のレベル以下となったときに、ラインを引き戻すよう構成されている。
【0117】
本明細書で使用されているように、「ライン」との語は、なんらかのケーブル、ロープ、ストリング、チェーン、ワイヤ、ストラップまたは他の弾性材料からなる長さのあるものを意味する。
【0118】
本発明の他の態様によれば、対象物の回転にブレーキを掛ける方法であって、
−ロータとともに回転させるべく対象物に導電部材を連結させるステップと、
−回転導電部材の回転平面に対して少なくとも部分的に直交するよう広がる磁界を印加させるよう構成された少なくとも1つのマグネットを提供するステップと、
−対象物の回転時に磁界内へ向けて移動されるよう導電部材を構成するステップと、
を含むこと方法が提供される。
【0119】
本発明の他の態様によれば、さらに以下のステップを含む、実質的に上述された対象物の回転にブレーキを掛ける方法が提供される。
−対象物が回転し、そして導電部材が磁界内へと移動し、それによって導電部材に過電流が生じるステップ。
【0120】
したがって、本発明は、
・付与トルクの範囲にわたって一定のレベルまで速度を制限する;
・コンパクトな装置を使用して十分なブレーキングトルクを作用させられる;
・オートディセンダー/オートビレイに使用するための過電流ブレーキが提供される;
という、1つ以上の利用可能な過電流ブレーキング機構を提供することによって従来技術に対して著しい利点を提供できる。
【0121】
それゆえ本発明は、速度制御に関する、かつ/または、例えば速度制御などを用いるいくつかの用途におけるブレーキングに関する特定の用途が見出されることは明らかだ。一例として以下の用途を挙げる。
・ウインド、流体および他の回転タービンにおけるロータ;
・ローイング機械、エピサイクロイド練習装置などのエクササイズ装置;
・ローラーコースターおよびアミューズメント用の乗り物;
・エレベータおよびエスカレータシステム;
・緊急用下降部および火災避難用デバイス;
・コンベヤシステム;
・工場生産設備における回転デバイス;
・例えば配送路(シュート)における(つまり片側に下ろされるアイテムの下降量を制御するための)コンベヤベルトまたはブレーキングデバイスなどの材料取扱いデバイス;
・例えば回転するサインの回転速度の制御における、動くディスプレイ標識;
・例えばブレーキにおけるエネルギーの消散を通じた衝撃の弱化をもたらすためにシステムに連結されたブレーキであってもよい、ロードサイド・セーフティーシステム;
【0122】
実際に、本発明は回転ブレーキおよび/または速度制限システムに使用されてもよい。
【0123】
本発明のさらなる態様および利点は、添付の図面を参照した例示としてのみ与えられた以下の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
図1】典型的な従来の過電流ブレーキング機構のトルク対速度のプロットを示す。
図2a】ロータが静止状態の、本発明の1つの好ましい実施形態に基づく過電流ブレーキング機構の概略平面図である。
図2b】ロータが中程度のブレーキングトルク下で回転した状態の、図2aの過電流ブレーキング機構の概略平面図である。
図2c】ロータが最大ブレーキングトルク下で回転した状態の、図2aおよび図2bの過電流ブレーキング機構の概略平面図である。
図3図2の過電流ブレーキング機構の一部の概略側面図である。
図4図2および図3に示された過電流ブレーキング機構に対して代替的な構成のものの一部の概略側面図である。
図5a】トルクが最初にロータに付与された時の、つまり「スタートアップ」状態の、図2および図3に示される過電流ブレーキング機構の示力図である。
図5b】付与トルクが増大された時の、図2および図3に示された過電流ブレーキング機構の示力図である。
図5c】一定の付与トルクがブレーキングトルクによって調和させられた時の、つまり「定常状態」にある時の、図2および図3に示された過電流ブレーキング機構の示力図である。
図5d】最大ブレーキングトルク時の、図2および図3に示された過電流ブレーキング機構の示力図である。
図5e】付与トルクが減少していく時の、図2および図3に示された過電流ブレーキング機構の示力図である。
図6図2図3および図5のブレーキング機構とともに使用されるロータのトルク対速度のプロットを示す。
図7図2図3および図5のブレーキング機構とともに使用されるロータの速度対トルクのプロットを示す。
図8図2図3および図5のブレーキング機構の代替的な構成のトルク対速度のプロットを示す。
図9図2図3および図5のブレーキング機構の代替的な構成のトルク対速度のさらに他のプロットを示す。
図10a】本発明の第2の好ましい実施形態に基づく過電流ブレーキング機構の概略平面図である。
図10b図10aに示されたブレーキング機構の一部の拡大図である。
図11】本発明の他の実施形態に基づく過電流ブレーキング機構の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0125】
図1には、磁界内で回転するよう構成された導電ディスクを利用した代表的な従来技術における過電流ブレーキ機構に関するトルク対速度のプロットを示す。ディスクが回転しかつ各磁界には対立する印加磁界(applied magnetic field)が発生するときに、ディスクに過電流が発生する。対立する印加磁界は、磁界を通してディスクの移動に対する反力をもたらす。
【0126】
ディスクに適用されたブレーキングトルクの大きさは磁界強さおよび回転速度に依存しており、それゆえ、速度が増大すると、ブレーキングトルクもまた増大される。このシステムは、付与トルクに応じて一定のレベルまでに速度を制限するようになる。しかしながら、ブレーキングトルクひいては平衡速度だけは、さらなる速度の増大が小さくなり始める前にブレーキングトルクが非線形的なものとなりかつピークとなる閾値的な“特性速度”(S)に到達させられるまで、(図1に示されるように)所定の操作範囲内の速度に線形的に比例する。
【0127】
それゆえ従来のシステムは、前記特性速度に到達するまで、付与トルクに対応した線形的な速度調整においてのみ有効となる。そのため、これら従来のシステムは、オートビレイ(auto belay)または幅広い付与トルクにわたって一定の速度を保持することが望まれる他の用途には適していない。
【0128】
図2a〜図2c、図3および図5a〜図5eには、おおまかに矢印1で示された本発明の好ましい一実施形態に基づく過電流ブレーキング機構を示す。明確にするために図5a〜図5eにおいては1つの導電部材3のみがロータ2に取り付けられている。
【0129】
ブレーキング機構1は、オートビレイデバイス(図示せず)の一部を形成するラインスプール(図示せず)に連結されている。ラインスプールは、ブレーキング機構1のロータ2に連結されており、そのため、ロータ2とともに回転するようになっている。ライン23がスプールから使用者のハーネスへと延在している。ロータ2は、ラインテンション(および付与トルク)が減少される場合に、つまり使用者がクライミング中に上へ上がる場合に、スプールからのライン23の延伸に逆らうためにそして自動的にライン23を引き込むために付勢された引き戻し機構を有する。
【0130】
ゆえに、スプールから引き出されるラインの量は、ブレーキング機構1を伴うロータ2の回転速度を制御することによって調整される。
【0131】
ブレーキング機構1は、回転軸Xの周囲で回転可能なロータ2と、ロータ2に連結されたピボットアーム3の形態で提供された3つの導電部材とを含む。アーム3は、回転軸Xに対して偏心したポイント8においてロータ2に回動可能に取り付けられている。
【0132】
複数のマグネット4が設けられており、それらは回転軸Xに対して適所に固定されている。マグネット4はアーム3およびロータ2の回転平面の両側に二つの円状アレイ(配列)5を形成する(図2では片側しか図示せず)。
【0133】
図3には、アーム3の回転平面のいずれか一方に配置されたマグネット4が示されている。
【0134】
各マグネットアレイ5は、ロータ2と同軸となるよう配置されており、かつアームの回転平面に直交して延在する磁界を生じる。
【0135】
二つのマグネットアレイ5のマグネットは、互いに実質的に相反する反極を有する。ゆえに、ロータ2およびアーム3の回転平面に直交する方向において、マグネット4の反極(S極に対するN極)同士の間に延在する磁界6が形成される。
【0136】
スチールまたは他の強磁性基材7(図3に図示される)がアーム3の両面において、各マグネットアレイ5の外面に取り付けられている。このスチール基材7は磁界6を補強すると同時に潜在的にマグネット4を衝撃ダメージから保護することに役立つ。
【0137】
図2aから図2cに段階的に示されるように、(例えばクライマーが上昇することによって)接線方向力FAppがロータ2に付与されたとき、ロータ2は回転し、そしてアーム3はピボットポイント8の周囲で回動するようになる。付与される力FAppがロータ2を加速させるよう、アーム3は動作させられかつ印加磁界6に交わるようになる。印加磁界6を通るアーム3の作動(例えば回転)は、アーム3における過電流を誘発し、それは続いて印加磁界6に対する反応磁界を引き起こす。
【0138】
アーム3は、マグネットアレイ5の形状に合致する弧状外縁部10を有し、それにより、アーム3のサイズおよび重量が最小となる一方で、磁界6の最大領域が交差するようになる。これらアーム3は、ロータが静止状態にあるときに、互いに嵌合するような形状とされている。つまり、各導電部材3の「後方」は次の導電部材3の「前方」と当接するような形状となっている。当然のことながら、本明細書においてロータが「静止状態」にあるとはロータが磁界6に対して回転も移動もしない状態を意味している。
【0139】
アーム3がピボットポイント8の周囲で枢軸回転すると、各アーム3の徐々に大きくなる部分が磁界6へ向かって移動し、そして磁界6と交差する。アーム3はまた、図2aに示される集中ポジションにおいてはできる限り小さな空間を占めるように前記アーム3が互いにフィットするような形状になされている。それにより、図2および図2cに示されるように磁界6内にあるときに潜在的なブレーキングトルクが最大化される一方で、ブレーキング機構1の要求されるサイズが最小化される。
【0140】
スプリング12の形態の付勢デバイスが設けられており、これは、ピボットポイント8に対して離間されたポイント13においてアーム3に対して、かつブレーキが掛けられる回転方向R(つまり図2における時計方向)においてピボット軸8から離間されたポイント14においてロータ2に対して取り付けられている。それにより、スプリング12は、アーム3の枢軸(それにより半径方向における)動作に対する付勢力が提供される。スプリング12の強さは、磁界6へ向かうアーム3の移動を、ひいてはブレーキング機構1の特性を制御するよう変更できる。
【0141】
アーム3の枢軸動作範囲は、1つの区域に対するスプリング12によって制限される。それにより、一方向への回転時にアーム3が磁界6へ向けてのみ移動させられることが確実となる。そうした「一方向性」の構造体は、
ライン収縮機構に対立しかつライン23に潜在的なたるみを形成し得るように上昇時にライン23上でのブレーキング効果を有することが望まれないオートビレイでの使用において有用である。
【0142】
安全ストッパー(図示せず)が、ロータ2に取り付けられており、かつアーム3の枢軸移動する範囲を制限するためにアーム3と係合する。このストッパーは、アーム3に取り付きえられた突出部(図示せず)と、ロータ2に固定された剛性スロット(図示せず)との間のスライディング係合によって形成される。突出部はスロット内で自由にスライドするが、アーム3の移動範囲を制限するスロットの広がりによって限定されている。したがってストッパー(図示せず)は、仮にスプリング12が破損したり外れたりまたは他の何らかの故障が生じた場合にアーム3がロータ2に対してブレーキングトルク(好ましくは最大の)を続けて付与することを確実なものとするために、「安全性のある」特徴部を提供する。またストッパーは、突出部がスロットの広がりへ到達した場合には、ロータ2に対するブレーキングトルクの伝達における補助にもなる。
【0143】
アーム3は、アーム3がピボット8に対して偏心した質量中心を有するような1つのロータ軸Xに対して、かつ、ロータ2が回転する場合にアーム3が半径方向に外側へ向かって移動しかつピボットポイント8の周囲でアーム3が枢軸動作するようなこれらロータ軸Xに対して、偏心した状態で取り付けられている。
【0144】
オートビレイへの適用において、(例えば人間による)荷重によってロータ2を周囲に巻かれたあるいはスプールに接続されたライン23に張力が作用させられる。それにより、回転を引き起こすようロータ2にトルクが付与される。このトルクは以下の数式で示される。
【数4】
【0145】
印加磁界6はアーム3における過電流を誘起し、かつ反応磁界が印加磁界6に対して生じるようになる。それゆえ印加磁界と反応磁界との間に抵抗力が、磁界6を通るアーム3の移動に対する反力FEDDYをもたらす。図5aないし図5eは、各アーム3に作用する力を示す部分的な概略図である。より詳細には図5aないし図5eには1つのみのアーム3が示されている。
【0146】
当然のことながら、図5a〜図5eの示力図は、アーム3に作用する多くの、かつ、さまざまな動力の正確でありかつ詳細な解析を示すものではない。ゆえに、示されている力は単純にかつ見やすいようにのみ示されている。示力図5a〜5eは、質量中心9において近接する合力の概略を示すために主力が付与されたボックスが含まれる。当然、これら力のみが示されており、かつ力線は正確な長さまたは方向のものでなくともよい。
【0147】
図5aには、初期の「スタートアップ」状態にある過電流ブレーキング機構1の示力図を示す。ここでは接線方向に付与された力FAppのみがあり、かつスプリング12が伸張されていない。力FAPPがロータに対して接線方向に付与されると、トルク力TAppがロータに付与され、そして停止状態から加速される。この力FAppの成分(力FApp(8)およびFApp(13))はそれぞれピボットポイント8およびスプリング接続部13を介してアーム3に付与される。
【0148】
もちろん、他の構成においては、1つ以上のアームは、スタートアップ段階において少なくともアームの一部が磁界と交差するように形状付けられかつそのように配置されていてもよい。それゆえ過電流ブレーキ効果は、ロータが回転し始めるとすぐに作用するようになる。
【0149】
また、アーム3がロータ2に接続されていると、回転時に、アーム3は求心性の加速下で回転軸Xの方へ向かって加速する。求心力は、接続部8,13を介して本体に作用する。Fcpは、アーム3の求心力に対するアーム3における質量中心9によって加えられる力である。
【0150】
またアーム3は、動作の変化に対する慣性を有する。この解析のために、この慣性は、アームの質量および質量中心9の周囲で作用する慣性モーメントに関連する。
【0151】
図5a〜図5eに示される力を適切な式をもって以下の表に詳述する。もちろん、これら式および力はおおよそのものでありかつ単なる表示である。
【0152】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0153】
図5aに示されるスタートアップ状態において、力FApp(8)およびFApp(13)からなる合成力Fは、アーム3の質量中心9上におおむね作用する。質量中心9、RFApp(8)およびRFApp(13)からの力FApp(8)およびFApp(13)のオフセットは、それぞれ、アーム3の質量中心8の周囲にモーメントMを生じる。そのため、力Fは、半径方向において外側にアームを加速させるように作用し、かつ、Mはアームをロータ2の回転方向と同じ回転方向に加速させるように作用する。
【0154】
アーム3は、ピボットポイント8では固定されているが、接続部13にはしっかりとは固定されていない。
【0155】
アーム3が合成力Fによって外側方向へ加速されたとき、アームは、ロータに対して反時計方向においてピボットポイント8の周囲で回動し、そしてスプリング12が伸張し、それによりスプリング付勢力Fおよび付与される力FApp(13)が増大される。のFにおける増大に伴い、TAppの大きなトルクが、スプリング12を介してアーム3に伝達され、ピボットポイント8を介して付与されるFApp(8)力が低減される。質量中心9に作用する合成力Fは、その方向を時計方向へ変化させる。
【0156】
付与されるFの方向が軸Xから質量中心9までの半径方向ラインの前方へ移動するよう、その力は、時計方向にアーム3を加速させる。図5bには、ロータ2を加速させかつアーム3に関連付けられた付与される力FAppが示されている。アーム3は、図5aに示されているものよりも大きな角度変位で枢軸回転し、ここで磁界6と交差する。ロータ2およびアーム3は、回転軸Xの周囲で利得角速度を有し、かつアーム3は、求心加速度下で回転軸Xの方へ加速する。質量中心9はアーム3に対して求心力Fcpを作用させる。
【0157】
また、アーム3が磁界を通って移動するように回転力に対して過電流ブレーキング力FEDDYが付与される。
【0158】
力FApp(8)、FApp(13)、FcpおよびFEDDYの合成力Fは、アーム3を回転軸Xからさらに外側へ加速させるために質量中心8上に作用する。ピボット8の周囲で生じたアーム3の反時計方向回転は、接続部13および接続部14の間の距離を増大させ、それにより、スプリング12が伸張される。スプリング12の伸張は、スプリング付勢力Fを増大され、かつ接続部13に付与されるFApp(13)が対応して増大される。
【0159】
ロータ2は加速し続けるようになり、かつスプリング12によってアーム3に作用する力FApp(13)が、FおよびMがゼロまで低減されるようにアームに作用する力のバランスがとれるほど十分大きくなるまで、アーム3は反時計方向への枢軸回転をし続ける。このポイントにおいて、ピボット8および接続部14を経たFEDDYの伝達を介してロータに付与されるブレーキングトルクTは、付与されるトルクTAppと等しく、したがって、角加速度はゼロに等しくなり、かつロータ2は一定速度で回転するようになる。続いて図5cに示されるような安定した状態にある平衡ポジションに到達する。
【0160】
ロータ2に付与されるブレーキングトルクTに寄与する変数は、スプリング12および質量中心9の適切な較正によって制御できるようになり、したがって、ブレーキング機構1は、特定の用途に応じてブレーキングトルクTに対する実質的な制御を提供できる。
【0161】
付与されるトルクTAppにおけるなんらかの変化は、アーム3の半径方向の変位ならびに磁界6によって付与されるブレーキングトルクTEDDYおよび合成力Fにおける釣り合った増加をもたらす。ただし、得られる最大ブレーキングトルクTが機構1の物理パラメータによって限定されることは当然である。
【0162】
図5dには、最大磁界がアーム3によって交差されている、最大半径方向変位のポイントにあるアーム3が示される。ブレーキングトルクTは、付与トルクTAppに等しい。しかしながら、付与トルクTAppのさらなる増大が、スプリングがその最大限度まで伸張されかつアーム3が安全ストッパー(図示せず)と接触するように、アーム3を半径方向外側へ移動させることはない。そのためブレーキングトルクTは、さらに増大することはない。ゆえに、付与トルクTAppのさらなる増大はロータ2を加速させるようになる。
【0163】
図5eには、ブレーキング機構1における付与トルクTAppの減少状態が示されている。
【0164】
Appが減少させられると、FApp(8)における釣り合った減少は、スプリング付勢力Fは一時的に変化しない一方で、付与トルクTAppとバランスが取れるようにさせられる。力FApp(8)、FApp(13)、FcpおよびFEDDYによる合成力Fは、回転軸Xの方へ向かって内側にアーム3を加速させるように質量中心9上に作用する。ピボット8の周囲に生じたアーム3の時計方向回転は、接続部13および接続部14の間の距離を低減させる。スプリング12の伸張において生じた減少は、スプリング付勢力FおよびFApp(13)の低減をもたらす。同時に、過電流ブレーキングトルクTEDDYにおける低減に対応して、磁界6によって交差されるアーム3の領域の低減が生じる。
【0165】
質量中心9の加速におけるゼロまでの対応する低下およびそれにより平衡状態となるシステムと関連して、Fの大きさがゼロとなるようアーム3に作用する力のバランスが取れるようになるまで、アーム3は、ピボット8の周囲で時計方向に回転し続ける。この点において、ピボット8および接続部14を介した過電流ブレーキング力FEDDYの伝達によって発生するブレーキングトルクTは、付与トルクTAppとバランスがとれるようになり、それにより、ロータ2の加速はゼロとなる。
【0166】
それゆえ、ブレーキングトルクTが付与トルクTに対して比例して増大しかつこれら両方の力が付与トルクの「作動範囲」の全範囲にわたって等しくなるよう保たれることを確実なものとするために、回転速度は、スプリング付勢力Fを調節することによって制限できる。
【0167】
上述したように、反力FEDDYの大きさは、以下の各項目に左右される。
・アーム3によって交差される磁界6の領域;
・アーム3によって交差される磁界6の強さ;
・アーム3の抵抗率;および、
・磁界6に対するアーム3の相対速度。
【0168】
図2〜5に示されるブレーキング機構1は、印加磁界6へのアーム3の半径方向移動における変動によって、交差される印加磁界6の領域とアーム3と回転軸Xとの間の距離Rとの両方において自動的な変化を提供する。ゆえに作動範囲において、付与トルクTAppの変動は、ロータ2に作用するブレーキングトルクTにおける同等の変動をもたらす。
【0169】
当然のことながら、得られる最大ブレーキングトルクは、機構の物理的制限、例えばマグネットのサイズおよび強さ、アーム3のサイズ、厚さおよび導電性に依存するようになる。さらに、アーム3が回転速度を制限するほど十分なブレーキングトルクを作用させる以前においては、ロータ2は最小付与トルクを、ひいては最小回転加速度および回転速度を経験しなければならない。
【0170】
ブレーキング機構1は、これら最大付与トルクと最小付与トルクとの間の作動範囲内で速度を制限する。作動範囲を示すブレーキング機構1の速度プロファイルが図6および図7に図示されている。
【0171】
図6および図7から明らかなように、質量中心9に作用する合成力Fがアーム3を磁界6の外側へと加速させかつ反応ブレーキング力FEDDYが付与されるまでは、速度は初期においては付与トルクTAppとともに増大する。続いて反応ブレーキングトルクTは、付与トルクTAppと等しくなる。それによって、ブレーキングトルクTによって連続的に整合させられる付与トルクTAppが原因となる加速が生じないように、回転速度は一定の値まで制限される。磁界の最大領域が交差し、それにより発生した磁界反力Fが速度のみに比例する上限に達するまで、付与トルクTAppの増大はブレーキングトルクTの増大によって整合させられる。上限に達した後は、速度プロファイルは、速度のみとともにブレーキングトルクTを変化させる従来のデバイスと相似する。
【0172】
付与トルクに応じたさまざまな速度は、スプリング付勢力を変更することによって得られる。代替的な速度プロファイルの一例を図8および図9に示す。図8に示されるプロファイルは、磁界交差時に付与されるブレーキングトルクが作動範囲内にわたって付与トルクTよりも大きくなるように、図6および図7に示される実施形態のものに比べて相対的に「弱い」スプリング(つまり小さな復帰力およびばね定数のもの)を提供することによって得られる。それゆえ回転速度は、付与トルクTAppがブレーキングトルクTを超えるまで、付与トルクTAppの増大とともに減少する。
【0173】
あるいは、図9に示されるように、付与トルクTが作動範囲内にわたってブレーキングトルクTを超えるように、相対的に「強い」スプリング(つまり大きな復帰付勢力およびばね定数のもの)が使用されてもよい。それゆえ回転速度は、ブレーキングトルクTが付与トルクTAppを超えるまで付与トルクTAppの増大とともに線形的に増大する。
【0174】
したがって、本発明は、当然のことながら、スプリング12の調整または変更によって簡単に用途の要求に応じて速度を順応させるよう変更されてもよい。
【0175】
図10には、本発明の他の実施形態に基づく、プレート103の形態で提供されたアームを備えるブレーキング機構100を示す。プレート103は、ロータ102にも受けられたトラック101に沿って半径方向に移動できる。プレート103はこれらプレートがロータおよびトラック101とともに回転するように、トラック101を介してロータ102に連結されている。スプリング112は、伸張されたときに、回転軸Xへ向かってプレート102を付勢するように付勢力Fを作用させる。
【0176】
トルクTAppは、プレート103に接線方向の力FAppを付与し、かつスプリングは求心力Fcpを付与する。回転軸Xへ向かうスプリング112の求心加速度は、スプリング112が伸張している間に磁界106を半径方向外側に移動するプレート103に生じる。それゆえ、付与されるブレーキング力Fは、プレート103の接線方向速度およびスプリング付勢力Fに比例して変化する。
【0177】
図2図5のブレーキング機構1と比較すると、このブレーキング機構100は、プレート103の移動が回転速度に比例するがブレーキング機構1における付与トルクに対しても比例するように、前記速度に対する設定制限を提供しない。
【0178】
この「線形的な」実施形態のマグネットアレイ(図示せず)は、図2および3に示される第一の好ましい「枢軸タイプ」の実施形態に示される構成を同様の構成で設けられている。
【0179】
プレート103が何らかのロータ回転下(つまり主に求心効作用下)で半径方向外側に移動する際には、この「線形的な」実施形態は、ロータ102の回転方向とは無関係に作動するブレーキング機構100を提供する。
【0180】
ブレーキング機構100が回転方向に関係なくブレーキング作用を提供するとはいえ、ブレーキングトルクは、付与トルクではなく、回転速度(ひいたは求心加速度)とともにだけ変化する。この速度は、ブレーキングトルクが付与トルクと等しくなるときに制限のみされるものであり、それゆえ、(例えばより重量のある人による)より大きな付与トルクは、対応する「より軽い」人に比べて、より高い平衡速度で限定される速度をもたらすようになる。したがって、このブレーキング機構100は、図2図5に示されるブレーキング機構1の制御のレベルを提供しない。
【0181】
ブレーキング機構の他の実施形態は図11において矢印201でおおよそ示されている。この実施形態においては、マグネット(204)のアレイがクレードル(220)に取り付けられている。枢軸可動するよう取り付けられた導電要素(203)を有するロータ(220)は、回転軸(X)の周囲での回転のために軸(205)に取り付けられている。
【0182】
クレードル(220)は、回転軸(X)の周囲で回転するよう構成され、かつギアトランスミッション(230)によって回転軸に接続されている。図11に示された構成において、ギアトランスミッション(230)は、クレードル(220)(マグネットアレイ(204)を含む)がロータ(および導電要素(203))とは半体方向に回転し、それによってマグネットアレイ(204)に対するロータ(202)および導電部材(203)の相対角速度が増大するよう構成されている。ブレーキング機構のそうした構成は増大されたブレーキング効果を達成してもよい。
【0183】
本発明の態様について単なる例示を用いて説明したが、当然のことながら、特許請求の範囲の記載の範囲から外れない限りにおいてはなんらかの変更および追加がなされてもよい。
【符号の説明】
【0184】
1,100,201 ブレーキング機構
2,102,202 ロータ
3,203 導電部材
4,204 マグネット
5,204 マグネットアレイ
6 磁界
7 強磁性の基材
8 偏心ポイント
9 質量中心
10 弧状外縁部
12 スプリング
13,14 接続ポイント
23 ライン
101 トラック
103 プレート
205 軸
220 クレードル
230 ギアトランスミッション
図1
図2a)】
図2b)】
図2c)】
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図6
図7
図8
図9
図10