(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0017】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による車両の全体構成図である。
図1を参照して、車両100は、蓄電装置10と、システムメインリレーSMR1,SMR2と、駆動装置であるPCU(Power Control Unit)20と、モータジェネレータMG1,MG2と、エンジン40と、動力分割装置42と、駆動輪44と、制御装置(以下、ECU(Electronic Control Unit)とも称する)30と、電気負荷28と、電力変換装置50と、端子75と、リレーRY1,RY2とを含む。
【0018】
蓄電装置10は、充放電可能に構成された電力貯蔵要素である。蓄電装置10は、たとえば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池あるいは鉛蓄電池などの二次電池や、電気二重層キャパシタなどの蓄電素子を含んで構成される。
【0019】
蓄電装置10の正極端および負極端は、システムメインリレーSMR1,SMR2を介して、モータジェネレータMG1,MG2を駆動するためのPCU20に接続される。そして、蓄電装置10は、車両100の駆動力を発生させるための電力をPCU20に供給する。また、蓄電装置10は、モータジェネレータMG1,MG2で発電された電力を蓄電する。さらに、蓄電装置10は、電力変換装置50によって変換された電気機器70からの電力によって充電される。また、蓄電装置10は、放電した電力を電力変換装置50によって変換して電気機器70に供給する。以下では、蓄電装置10の電力の電気機器70への放電を「外部放電」とも称する。
【0020】
システムメインリレーSMR1,SMR2は、蓄電装置10とPCU20とを結ぶ正極線PL1および負極線NLにそれぞれ接続される。そして、システムメインリレーSMR1,SMR2は、ECU30からの制御信号SE1に基づいて、蓄電装置10とPCU20との間での電力の供給と遮断とを切替える。
【0021】
システムメインリレーSMR1,SMR2は、車両100の走行時に、蓄電装置10の電力によってPCU20および電気負荷28を動作させるために閉成される。
【0022】
PCU20は、コンバータ22と、インバータ21−1,21−2と、コンデンサC1,C2とを含む。
【0023】
コンバータ22は、ECU30からの制御信号PWCに基づいて、電力線対PL1,NLと電力線対PL2,NLとの間で電力変換を行なう。
【0024】
インバータ21−1,21−2は、互いに並列して電力線対PL2,NLに接続される。インバータ21−1は、ECU30からの信号PWI1に基づいてモータジェネレータMG1を駆動する。インバータ21−2は、ECU30からの信号PWI2に基づいてモータジェネレータMG2を駆動する。
【0025】
モータジェネレータMG1,MG2は、交流電動機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機である。モータジェネレータMG1,MG2は、動力分割装置42に連結される。動力分割装置42は遊星歯車(図示しない)を含む。遊星歯車は、いずれも図示しないが、サンギヤと、ピニオンギヤと、キャリアと、リングギヤとを含む。ピニオンギヤは、サンギヤおよびリングギヤと係合する。キャリアは、ピニオンギヤを自転可能に支持するとともに、エンジン40のクランクシャフト(図示せず)に連結される。サンギヤは、モータジェネレータMG1の回転軸に連結される。リングギヤは、モータジェネレータMG2の回転軸および駆動輪44に連結される。この動力分割装置42によって、エンジン40が発生する動力は、駆動輪44へ伝達される経路の動力と、モータジェネレータMG1へ伝達される経路の動力とに分割される。
【0026】
そして、モータジェネレータMG1は、動力分割装置42によって分割されたエンジン40の動力を用いて発電する。たとえば、蓄電装置10の充電状態を示すSOC(State Of Charge)が低下すると、エンジン40が始動されてモータジェネレータMG1により発電が行なわれる。そして、その発電された電力が蓄電装置10へ供給される。
【0027】
一方、モータジェネレータMG2は、蓄電装置10から供給される電力およびモータジェネレータMG1により発電された電力の少なくとも一方を用いて駆動力を発生する。モータジェネレータMG2の駆動力は、駆動輪44に伝達される。なお、車両の制動時には、車両の運動エネルギが駆動輪44からモータジェネレータMG2に伝達され、モータジェネレータMG2が駆動されることによってモータジェネレータMG2が発電機として作動する。これにより、モータジェネレータMG2は、車両の運動エネルギを電力に変換して回収する回生ブレーキとして作動する。
【0028】
コンデンサC1は、正極線PL1および負極線NLの間に設けられ、正極線PL1および負極線NL間の電圧変動を減少させる。また、コンデンサC2は、正極線PL2および負極線NLの間に設けられ、正極線PL2および負極線NL間の電圧変動を減少させる。
【0029】
電気負荷28は、DC/DCコンバータ23と、補機負荷25と、電動エアコン26とを含む。なお、電気負荷28は、上記構成に限定されず、他の電力を消費する機器を含んでいてもよい。
【0030】
DC/DCコンバータ23は、正極線PL1と負極線NLとに接続される。DC/DCコンバータ23は、蓄電装置10から供給される直流電圧を電圧変換する。そして、DC/DCコンバータ23は、電力線対P1,N1を経由して、補機負荷25およびECU30に電源電流を供給するとともに、補機用バッテリ24に充電電流を供給する。システムメインリレーSMR1,SMR2が開放され、DC/DCコンバータ23が電圧変換動作を中止しているときには、補機用バッテリ24から補機負荷25およびECU30に対して電力の供給が行なわれる。
【0031】
電動エアコン26は、正極線PL1と負極線NLとに接続される。電動エアコン26は、ECU30からの制御信号PWECに基づいて、車両100の室内を空調する。車両システム起動前に予め車室内を空調するプレ空調が実行される場合は、システムメインリレーSMR1,SMR2が閉成され、蓄電装置10または電気機器70から電動エアコン26に電力が供給される。
【0032】
電力変換装置50は、リレーRY1,RY2を介して、蓄電装置10の正極端および負極端に接続される。また、電力変換装置50は、電力線ACL1,ACL2により、車両100に設けられた端子75に接続される。端子75には、車両外部の電気機器70が接続される。電気機器70は、電力を供給する外部電源であってもよく、電力を消費する電気負荷であってもよい。電力変換装置50は、電気機器70から電力を供給される場合に、電気機器70からの電力を蓄電装置10へ伝送して蓄電装置10を充電させる。一方、電力変換装置50は、電気機器70へ電力を供給する場合に、蓄電装置10からの電力を電気機器70へ伝送して蓄電装置10を放電させる。具体的には、電力変換装置50は、電気機器70からの交流電力を直流電力に変換して蓄電装置10を充電する。また、電力変換装置50は、蓄電装置10が放電した直流電力を交流電力に変換して電気機器70へ供給する。
【0033】
端子75は、電力線ACL1,ACL2により、電力変換装置50に接続されている。端子75には、車両外部の電気機器70が接続される。
【0034】
リレーRY1,RY2は、ECU30からの制御信号SE2に基づいて、蓄電装置10と電力変換装置50との間での電力の供給と遮断とを切替える。リレーRY1,RY2は、車両走行時に、開放される。一方、リレーRY1,RY2は、電気機器70との接続時に、閉成される。
【0035】
ECU30は、いずれも
図1には図示しないがCPU(Central Processing Unit)、記憶装置および入出力バッファを含み、各センサ等からの信号の入力や各機器への制御信号の出力を行なうとともに、車両100および各機器の制御を行なう。なお、これらの制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で構築して処理することも可能である。
【0036】
ECU30は、PCU20、電力変換装置50およびDC/DCコンバータ23などを駆動するための制御信号を生成して出力する。また、ECU30は、システムメインリレーSMR1,SMR2およびリレーRY1〜RY4を制御するための制御信号SE1〜SE4を出力する。
【0037】
ECU30は、車両走行時に、システムメインリレーSMR1およびSMR2を閉成する一方で、リレーRY1,RY2を開放する。これにより、蓄電装置10の電力を用いて、電気負荷28を含む走行系の各機器を作動させることができる。また、電力変換装置50を含む電力変換系を、蓄電装置10および走行系から完全に切離すことができる。
【0038】
これに対して、ECU30は、外部充電時に、リレーRY1,RY2を閉成する。これにより、電力変換装置50からの電力によって、蓄電装置10を充電することができる。また、ECU30は、外部放電時に、リレーRY1,RY2を閉成する。これにより、蓄電装置10が放電して、電気機器70に電力を供給することができる。一方で、車両停止時であっても、外部充電時および外部放電時以外では、リレーRY1,RY2は開放される。システムメインリレーSMR1,SMR2は、車両状態に応じて、具体的には、ユーザ操作に応答した走行系での電力消費の状態に応じて、閉成または開放される。
【0039】
ECU30は、外部充電時または外部放電時であっても、ユーザ操作または電気負荷28の動作状態(あるいは消費電力)に応じて、システムメインリレーSMR1,SMR2を閉成する。たとえば、電動エアコンの動作が要求されたり、補機負荷25の消費電力が大きくなったときには、システムメインリレーSMR1,SMR2が閉成される。
【0040】
図2は、
図1に示す電力変換装置50の構成例を示す回路図である。
図2を参照して、電力変換装置50は、フィルタ51,57と、第1電力変換部52と、第2電力変換部54と、絶縁トランス55と、第3電力変換部56と、平滑コンデンサC3,C4とを含む。
【0041】
フィルタ51は、正極端子151pおよび負極端子151gと第1電力変換部52との間に接続される。正極端子151pおよび負極端子151gは、端子75を介して、車両外部の電気機器70に接続される。フィルタ57は、正極端子157pおよび負極端子157gと平滑コンデンサC4との間に接続される。正極端子157pおよび負極端子157gは、リレーRY1,RY2を介して、蓄電装置10に接続される。
【0042】
第1電力変換部52は、電力用半導体スイッチング素子Q1〜Q4によって構成されるフルブリッジ回路を有する。本実施の形態では、電力用半導体スイッチング素子(以下、単に「スイッチング素子」とも称する)としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を例示するが、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるいは、電力用バイポーラトランジスタ等、オンオフが制御可能な任意のスイッチング素子を用いることが可能である。スイッチング素子Q1〜Q4に対しては、逆並列ダイオードD1〜D4がそれぞれ配置されている。
【0043】
第2電力変換部54は、スイッチング素子Q7〜Q10によって構成されたフルブリッジ回路を有する。スイッチング素子Q7〜Q10に対しては、逆並列ダイオードD7〜D10がそれぞれ接続されている。
【0044】
絶縁トランス55は、第2電力変換部に接続された一次側と、第3電力変換部に接続された二次側とを有する。絶縁トランス55は、一次側および二次側を電気的に絶縁した上で、電磁誘導によって一次側および二次側の間で電気エネルギを伝達する。
【0045】
第3電力変換部56は、スイッチング素子Q12〜Q15によって構成されたフルブリッジ回路を有する。スイッチング素子Q12〜Q15に対しては、逆並列ダイオードD12〜D15がそれぞれ接続されている。
【0046】
平滑コンデンサC3は、正極線153pおよび負極線153gの間に電気的に接続される。平滑コンデンサC4は、正極線155pおよび負極線155gの間に電気的に接続される。
【0047】
ECU30は、第1電力変換部52と、第2電力変換部54と、第3電力変換部56とを制御する制御信号PWEを電力変換装置50に出力する。
【0048】
電力変換装置50には、リレーRY3,RY4が設けられている。リレーRY3,RY4の開閉はECU30からの制御信号SE3,SE4によって制御される。リレーRY3,RY4は、以下に詳細に説明する、「絶縁型充電モード」および「絶縁型放電モード」での電力変換経路(第1電路)と「非絶縁型充電モード」および「非絶縁型放電モード」での電力変換経路(第2電路)との切換を制御するように配置される。
【0049】
図2の構成例では、リレーRY3は、正極線153pと正極線155pとの間に接続される。リレーRY4は、負極線153gと負極線155gとの間に接続される。これにより、リレーRY3,RY4が開放されると、絶縁トランス55を経由する第1電路を形成することができる。一方、リレーRY3,RY4が閉成されると、絶縁トランス55をバイパスする第2電路を形成することができる。このように、リレーRY3,RY4を設けることで、第1電路と第2電路との切り替えをすることができる。また、リレーRY3が正極線153pと正極線155pとの間に接続され、リレーRY4が負極線153gと負極線155gとの間に接続されることにより、リレーRY3,RY4が閉成されるときに絶縁トランス55に電流が流れない。これにより、電力変換装置50の電力変換効率を高めることができる。
【0050】
図3は、
図1に示すECU30で実行される電力変換装置50の制御を説明するためのフローチャートである。メインルーチンからこのフローチャートの処理ルーチンが、一定時間毎あるいは所定条件を満たすごとに実行される。
【0051】
図3を参照して、まず処理が開始されると、ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU30は、外部充電中であるかどうかを判定する。この処理で肯定的な判断がなされると(S100にてYES)、処理がS110に進められる。一方、S100で否定的な判断がなされると(S100にてNO)、処理がS150に進められる。
【0052】
S110にて、ECU30は、外部充電の充電モードを選択する。具体的には、絶縁型充電が必要な車両状態であるか否かが判定される。たとえば、ECU30は、プレ空調が実行されるためシステムメインリレーSMR1,SMR2を閉成する必要があるときには、S110をYES判定として、絶縁型充電モードを選択する(S120)。一方、ECU30は、プレ空調が実行されないためシステムメインリレーSMR1,SMR2が開放されているときには、S110をNO判定として、非絶縁型充電モードを選択する(S130)。
【0053】
ECU30は、絶縁型充電モードを選択したときには、リレーRY3,RY4を開放する(S122)。これにより、絶縁トランス55を経由する第1電路が形成される。一方、ECU30は、非絶縁型充電モードを選択したときには、リレーRY3,RY4を閉成する(S132)。これにより、絶縁トランス55をバイパスする第2電路が形成される。
【0054】
S150にて、ECU30は、外部放電中であるかどうかを判定する。この処理で肯定的な判断がなされると(S150にてYES)、処理がS160に進められる。
【0055】
S160にて、ECU30は、外部放電の放電モードを選択する。具体的には、絶縁型放電が必要な車両状態であるか否かが判定される。たとえば、ECU30は、プレ空調が実行されるためシステムメインリレーSMR1,SMR2を閉成する必要があるときには、S160をYES判定として、絶縁型放電モードを選択する(S170)。一方、ECU30は、プレ空調が実行されないためシステムメインリレーSMR1,SMR2が開放されているときには、S160をNO判定として、非絶縁型放電モードを選択する(S180)。
【0056】
ECU30は、絶縁型放電モードを選択したときには、リレーRY3,RY4を開放する(S172)。一方、ECU30は、非絶縁型放電モードを選択したときには、リレーRY3,RY4を閉成する(S182)。
【0057】
図4は、この発明の実施の形態1による車両における電力変換装置50の動作を説明するための図表である。
図4および
図2を参照して、絶縁型充電モードでの電力変換装置50の動作を説明する。
【0058】
絶縁型充電モードでは、第1電力変換部52は、電気機器70の交流電圧を直流電圧vdcに変換する。第2電力変換部54は、スイッチング素子Q7〜Q10のオンオフ制御によって、直流電圧vdcを交流電圧に変換して、絶縁トランス55の一次側に出力する。リレーRY3,RY4が開放されるため、第2電力変換部54および第3電力変換部56の間は、電気的に切り離される。第3電力変換部56は、絶縁トランス55の二次側の交流電圧を直流電圧に変換して蓄電装置10に出力する。スイッチング素子Q7〜Q10のオンオフは、蓄電装置10へ入力される直流電流または直流電圧が制御指令値に従うように制御される。
【0059】
このように、絶縁型充電モードでは、電力変換装置50は、電気的な絶縁を確保して電気エネルギを伝達する絶縁トランスを経由した電力変換経路によって、電気機器70からの電力を蓄電装置10の充電電力に変換する。この結果、電気機器70が蓄電装置10から電気的に絶縁された状態で外部充電が実行できるので、システムメインリレーSMR1,SMR2が閉成されていても、電気負荷28および電気機器70の間で確実に絶縁を確保できる。
【0060】
次に、非絶縁型充電モードでの電力変換装置50の動作を説明する。
非絶縁型充電モードでは、第1電力変換部52は、電気機器70の交流電圧を直流電圧vdcに変換する。リレーRY3,RY4が閉成されるので、正極線153pおよび負極線153gが、絶縁トランス55をバイパスして、正極線155pおよび負極線155gと電気的に接続される。したがって、絶縁トランス55による電気エネルギの伝達は実行されない。そして、第2電力変換部54および第3電力変換部56は、停止される。すなわち、スイッチング素子Q7〜Q10およびスイッチング素子Q12〜Q15がオフに固定される。
【0061】
このように、非絶縁型充電モードでは、電力変換装置50は、絶縁トランス55をバイパスして、電気機器70および蓄電装置10の間が電気的に接続された電力変換経路によって、電気機器70からの電力を蓄電装置10の充電電力に変換する。この結果、絶縁トランス55での損失を生じさせることなく、絶縁型充電モードよりも高効率で外部充電を実行できる。特に、システムメインリレーSMR1,SMR2の開放によって、蓄電装置10および電気負荷28の間の絶縁が確保されている場合には、非絶縁型充電モードを適用することによって、電気負荷28および電気機器70の間での絶縁を確保した上で、外部充電の効率を高めることができる。
【0062】
次に、絶縁型放電モードでの電力変換装置50の動作を説明する。
絶縁型放電モードでは、第3電力変換部56は、スイッチング素子Q12〜Q15のオンオフ制御によって、蓄電装置10の直流電圧を交流電圧に変換して、絶縁トランス55の二次側に出力する。リレーRY3,RY4が開放されるため、第2電力変換部54および第3電力変換部56の間は、電気的に切り離される。第2電力変換部54は、絶縁トランス55の一次側の交流電圧を直流電圧に変換する。第1電力変換部52は、スイッチング素子Q1〜Q4のオンオフ制御によって、正極線153pおよび負極線153gの直流電圧を交流電圧に変換して電気機器70に出力する。スイッチング素子Q12〜Q15のオンオフは、電気機器70へ入力される交流電流または交流電圧が制御指令値に従うように制御される。
【0063】
このように、絶縁型放電モードでは、電力変換装置50は、電気的な絶縁を確保して電気エネルギを伝達する絶縁トランスを経由した電力変換経路によって、蓄電装置10からの電力を電気機器70への供給電力に変換する。この結果、蓄電装置10が電気機器70から電気的に絶縁された状態で外部放電が実行できるので、システムメインリレーSMR1,SMR2が閉成されていても、電気負荷28および電気機器70の間で確実に絶縁を確保できる。
【0064】
次に、非絶縁型放電モードでの電力変換装置50の動作を説明する。
非絶縁型放電モードでは、リレーRY3,RY4が閉成されるので、正極線155pおよび負極線155gが、絶縁トランス55をバイパスして、正極線153pおよび負極線153gと電気的に接続される。したがって、絶縁トランス55による電気エネルギの伝達は実行されない。そして、第2電力変換部54および第3電力変換部56は、停止される。すなわち、スイッチング素子Q7〜Q10およびスイッチング素子Q12〜Q15がオフに固定される。第1電力変換部52は、スイッチング素子Q1〜Q4のオンオフ制御によって、正極線153pおよび負極線153gの直流電圧を交流電圧に変換して電気機器70に出力する。
【0065】
このように、非絶縁型放電モードでは、電力変換装置50は、絶縁トランス55をバイパスして、蓄電装置10および電気機器70の間が電気的に接続された電力変換経路によって、蓄電装置10からの電力を電気機器70への供給電力に変換する。この結果、絶縁トランス55での損失を生じさせることなく、絶縁型放電モードよりも高効率で外部放電を実行できる。特に、システムメインリレーSMR1,SMR2の開放によって、蓄電装置10および電気負荷28の間の絶縁が確保されている場合には、非絶縁型放電モードを適用することによって、電気負荷28および電気機器70の間での絶縁を確保した上で、外部放電の効率を高めることができる。
【0066】
このように、実施の形態1による車両では、絶縁トランス55を介した電力変換経路による絶縁性能を確保した外部充電(絶縁型充電モード)および外部放電(絶縁型放電モード)と、絶縁トランス55をバイパスした電力変換経路による高効率を優先した外部充電(非絶縁型充電モード)および外部放電(非絶縁型放電モード)とを選択的に適用できる。
【0067】
特に、プレ空調が実行される場合に、絶縁トランス55を介した電力変換経路によって、蓄電装置10または電気機器70から電動エアコン26に電力を供給してもよい。これにより、プレ空調時に車両ボデーと外部電源のアースとの間の絶縁性を確保することができる。
【0068】
また、蓄電装置10および電気負荷28の間の電気的接続を制御するシステムメインリレーSMR1,SMR2の開閉に連動して、絶縁型充電モードおよび非絶縁型充電モードを切換えてもよい。これにより、電気負荷28と電気機器70との間の絶縁を確保した上で、高効率の外部充電および外部放電を実行できるようになる。
【0069】
[実施の形態2]
図5は、この発明の実施の形態2による車両における電力変換装置50Aの構成例を示す回路図である。
【0070】
図5を
図2と比較して、実施の形態2による電力変換装置50Aにおける、昇圧回路53および第3電力変換部56Aの構成が
図2の構成(実施の形態1)と異なる。
【0071】
電力変換装置50Aでは、第1電力変換部52と平滑コンデンサC3との間に昇圧回路53が設けられている。昇圧回路53は、インダクタL1と、スイッチング素子Q5および逆並列ダイオードD5と、スイッチング素子Q6および逆並列ダイオードD6とを含む。
【0072】
インダクタL1は、第1電力変換部52の正極端およびノードN1の間に接続される。
スイッチング素子Q5は、ノードN1および負極線153gの間に接続される。スイッチング素子Q5に対しては、逆並列ダイオードD5が設けられる。スイッチング素子Q6は、ノードN1および正極線153pの間に接続される。スイッチング素子Q6に対しては、逆並列ダイオードD6が設けられる。
【0073】
第1電力変換部52と昇圧回路53と平滑コンデンサC3とは、AC−DC変換の力率を改善するためのPFC(Power Factor Correction)回路58を構成する。
【0074】
図6は、
図5に示すPFC回路58の外部充電時の動作を説明するための波形図である。
【0075】
図6を参照して、電気機器70からの電源電圧vacは、所定周波数(以下、「電源周波数」と称する)の交流電圧である。PFC回路58では、インダクタL1の電流iLが、スイッチング素子Q5のオン期間には増加する一方で、スイッチング素子Q5のオフ期間には減少する。したがって、電流iLを検出するための図示しない電流センサの出力に基づくスイッチング素子Q5のオンオフ制御により、インダクタL1の電流iLを目標電流iL*に合致させることができる。
【0076】
ここで、目標電流iL*を、電源電圧vacと同位相の交流電流の絶対値に設定すると、電源電流iacおよび電源電圧vacが同位相となるように、電流iLを制御できる。これにより、電源電流iacおよび電源電圧vacの積で示される瞬時電力VAが常に正値となるので、瞬時電力VAの平均値である有効電力が大きくなる。すなわち、電気機器70から供給される電力の力率を1に近付けることができる。
【0077】
平滑コンデンサC3は、ダイオードD6を経由して供給される電流により充電される。また、平滑コンデンサC3から放電される電流は、第2電力変換部54へ供給されて蓄電装置10の充電に用いられる。これらの充放電により、平滑コンデンサC3の電圧、すなわち直流電圧vdcは、電源周波数の2倍の周波数で変動することになる。
【0078】
ここで、電流iLの積分値は、平滑コンデンサC3へ供給される電荷に相当するので、目標電流iL*の大きさ(振幅)iLAに応じて、直流電圧vdcを制御することができる。すなわち、PFC回路58は、スイッチング素子Q5のオンオフによる電流iLの制御に伴って、電圧指令値vdc*に従って直流電圧vdcを制御することができる。
【0079】
再び
図5を参照して、第3電力変換部56Aは、スイッチング素子Q12〜Q15および逆並列ダイオードD12〜D15と、インダクタL2と、スイッチング素子Q11および逆並列ダイオードD11とを含む。
【0080】
インダクタL2は、スイッチング素子Q12〜Q15および逆並列ダイオードD12〜D15と平滑コンデンサC4との間に接続される。
【0081】
スイッチング素子Q11は、リレーRY3とスイッチング素子Q12〜Q15および逆並列ダイオードD12〜D15との間に接続される。スイッチング素子Q11に対しては、逆並列ダイオードD11が設けられる。
【0082】
以上の構成により、第3電力変換部は、第2正極線および第2負極線の間の電圧を蓄電装置の電圧以上の電圧に昇圧可能なチョッパ回路を形成する。
【0083】
実施の形態2の車両においても、絶縁型充電モードおよび非絶縁型充電モードと絶縁型放電モードおよび非絶縁型放電モードとの選択が、
図3のS100−S182と同様に実行される。
【0084】
図7は、この発明の実施の形態2による車両における電力変換装置50Aの動作を説明するための図表である。
図7および
図5を参照して、絶縁型充電モードでの電力変換装置50Aの動作を説明する。
【0085】
絶縁型充電モードでは、PFC回路58は、電気機器70の交流電圧を直流電圧vdcに変換する。第2電力変換部54は、スイッチング素子Q7〜Q10のオンオフ制御によって、直流電圧vdcを交流電圧に変換して、絶縁トランス55の一次側に出力する。リレーRY3,RY4が開放されるため、第2電力変換部54および第3電力変換部56Aの間は、電気的に切り離される。第3電力変換部56Aは、絶縁トランス55の二次側の交流電圧を直流電圧に変換して蓄電装置10に出力する。スイッチング素子Q7〜Q10のオンオフは、蓄電装置10へ入力される直流電流または直流電圧が制御指令値に従うように制御される。
【0086】
次に、非絶縁型充電モードでの電力変換装置50Aの動作を説明する。
非絶縁型充電モードでは、PFC回路58は、電気機器70の交流電圧を直流電圧vdcに変換する。リレーRY3,RY4が閉成されるので、正極線153pおよび負極線153gが、絶縁トランス55をバイパスして、正極線155pおよび負極線155gと電気的に接続される。したがって、絶縁トランス55による電気エネルギの伝達は実行されない。そして、第2電力変換部54は、停止される。すなわち、スイッチング素子Q7〜Q10がオフに固定される。第3電力変換部56Aは、スイッチング素子Q11を上アームとし、スイッチング素子Q12〜Q15を下アームとする非絶縁型チョッパ回路として動作する。たとえば、スイッチング素子Q11およびスイッチング素子Q12〜Q15を所定のスイッチング周期に従って相補にオンオフするとともに、これらのオンオフ比(デューティ比)を制御することによって蓄電装置10へ入力される直流電流または直流電圧が制御指令値に従うように制御される。
【0087】
このように、絶縁型充電モードおよび非絶縁型充電モードでは、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0088】
さらに、昇圧回路53を設けることにより、第1電力変換部52と昇圧回路53と平滑コンデンサC3とは、PFC回路58を構成する。これにより、AC−DC変換の力率を改善することができる。
【0089】
次に、絶縁型放電モードでの電力変換装置50Aの動作を説明する。
絶縁型放電モードでは、第3電力変換部56Aは、スイッチング素子Q12〜Q15のオンオフ制御によって、蓄電装置10の直流電圧を交流電圧に変換して、絶縁トランス55の二次側に出力する。リレーRY3,RY4が開放されるため、第2電力変換部54および第3電力変換部56の間は、電気的に切り離される。第2電力変換部54は、絶縁トランス55の一次側の交流電圧を直流電圧に変換する。PFC回路58は、スイッチング素子Q1〜Q4,Q6のオンオフ制御によって、正極線153pおよび負極線153gの直流電圧を交流電圧に変換して電気機器70に出力する。すなわち、PFC回路58は、スイッチング素子Q5をオフとし、スイッチング素子Q6をスイッチングする。このとき、スイッチング素子Q6のスイッチングのデューティ比を制御することで、正弦波を全波整流した電圧波形を生成できる。そして、上記全波整流した電圧が0Vになる度に、スイッチング素子Q1,Q4のオンオフとスイッチング素子Q2,Q3のオンオフとを交互に切替える。ここで、スイッチング素子Q1はスイッチング素子Q4と同期してスイッチングし、スイッチング素子Q2はスイッチング素子Q3と同期してスイッチングする。スイッチング素子Q12〜Q15のオンオフは、電気機器へ入力される交流電流または交流電圧が制御指令値に従うように制御される。
【0090】
次に、非絶縁型放電モードでの電力変換装置50Aの動作を説明する。
非絶縁型放電モードでは、リレーRY3,RY4が閉成されるので、正極線155pおよび負極線155gが、絶縁トランス55をバイパスして、正極線153pおよび負極線153gと電気的に接続される。したがって、絶縁トランス55による電気エネルギの伝達は実行されない。第3電力変換部56Aは、スイッチング素子Q11を上アームとし、スイッチング素子Q12〜Q15を下アームとする非絶縁型チョッパ回路として動作する。たとえば、スイッチング素子Q11およびスイッチング素子Q12〜Q15を所定のスイッチング周期に従って相補にオンオフするとともに、これらのオンオフ比(デューティ比)を制御することによって蓄電装置10の電圧を所望の電圧に制御することができる。第2電力変換部54は、動作を停止する。すなわち、スイッチング素子Q7〜Q10がオフに固定される。PFC回路58は、正極線153pおよび負極線153gの間の交流電圧を直流電圧に変換して電気機器70に出力する。
【0091】
このように、絶縁型放電モードおよび非絶縁型放電モードでは、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0092】
さらに、第3電力変換部56Aは、スイッチング素子Q12〜Q15および逆並列ダイオードD12〜D15と、インダクタL2と、スイッチング素子Q11および逆並列ダイオードD11とを含む。これにより、第3電力変換部は、第2正極線および第2負極線の間の電圧を蓄電装置の電圧以上の電圧に昇圧可能である。
【0093】
このように、実施の形態2による車両では、実施の形態1と同様に、絶縁トランス55を介した電力変換経路による絶縁性能を確保した外部充電(絶縁型充電モード)および外部放電(絶縁型放電モード)と、絶縁トランス55をバイパスした電力変換経路による高効率を優先した外部充電(非絶縁型充電モード)および外部放電(非絶縁型放電モード)とを選択的に適用できる。さらに、実施の形態2による車両では、蓄電装置10および電気機器70の電圧を昇圧することが可能である。
【0094】
なお、上記の実施の形態においては、動力分割装置42によりエンジン40の動力を駆動輪44とモータジェネレータMG1,MG2とに分割して伝達可能なシリーズ/パラレル型のハイブリッド車両について説明したが、この発明は、その他の形式のハイブリッド車両にも適用可能である。すなわち、たとえば、モータジェネレータMG1を駆動するためにのみエンジン40を用い、モータジェネレータMG2でのみ車両の駆動力を発生する、いわゆるシリーズ型のハイブリッド車両や、エンジン40が生成した運動エネルギーのうち回生エネルギーのみが電気エネルギーとして回収されるハイブリッド車両、エンジンを主動力として必要に応じてモータがアシストするモータアシスト型のハイブリッド車両などにもこの発明は適用可能である。
【0095】
また、上記の実施の形態では、モータジェネレータMG1,MG2とエンジン40とを搭載したハイブリッド車を用いて説明したが、本発明は、ハイブリッド車に限定されず、電気自動車や燃料電池車などに適用してもよい。
【0096】
なお、上記において、リレーRY3,RY4は、この発明における「第1開閉器」の一実施例に対応し、システムメインリレーSMR1,SMR2は、この発明における「第2開閉器」の一実施例に対応する。また、リレーRY3は、この発明における「第1開閉素子」の一実施例に対応し、リレーRY4は、この発明における「第2開閉素子」の一実施例に対応する。また、正極線153pは、この発明における「第1正極線」の一実施例に対応し、負極線153gは、この発明における「第1負極線」の一実施例に対応する。また、正極線155pは、この発明における「第2正極線」の一実施例に対応し、負極線155gは、この発明における「第2負極線」の一実施例に対応する。また、電動エアコン26は、この発明における「空調機器」の一実施例に対応する。
【0097】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。