特許第5767139号(P5767139)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767139
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】砂型造型装置及び砂型の造型方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 15/02 20060101AFI20150730BHJP
   B22C 15/24 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   B22C15/02
   B22C15/24 C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-43583(P2012-43583)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-180300(P2013-180300A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】内田 一正
(72)【発明者】
【氏名】前川 工
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 浩庸
(72)【発明者】
【氏名】光武 正臣
(72)【発明者】
【氏名】中根 寿夫
(72)【発明者】
【氏名】須田 智和
(72)【発明者】
【氏名】善甫 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕介
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/089984(WO,A1)
【文献】 特開2007−160354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 11/00−25/00
B22C 5/00−5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂を貯留する砂槽と、前記砂槽内の砂を撹拌する撹拌手段と、前記砂槽に設けられて前記砂槽を金型のキャビティに接続する充填ノズルと、前記砂槽内の砂を加圧して前記充填ノズルを通して前記金型のキャビティに充填する加圧手段とを備えた砂型造型装置において、
砂を前記金型のキャビティに充填した後、前記充填ノズルに挿入して前記充填ノズル内の砂を前記砂槽内に押込む押込み棒と
前記充填ノズルに挿入した前記押込み棒の先端部からエアを吹出して、前記砂槽内の砂を撹拌するエア吹出し手段と、を備えていることを特徴とする砂型造型装置。
【請求項2】
砂は、発泡砂であることを特徴とする請求項に記載の砂型造型装置。
【請求項3】
砂槽内で砂を撹拌し、前記砂槽内の砂を加圧して、前記砂槽に設けられた充填ノズルを通して金型のキャビティに充填する砂型の造型方法において、
砂を前記金型のキャビティに充填した後、押込み棒を前記充填ノズルに挿入して前記充填ノズル内の砂を前記砂槽内に押込み
前記充填ノズルに挿入した前記押込み棒の先端部からエアを吹出して砂を撹拌することを特徴とする砂型の造型方法。
【請求項4】
砂は、発泡砂であることを特徴とする請求項に記載の砂型の造型方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型に砂を充填し固化させて砂中子等の砂型を造型する砂型造型装置及び砂型の造型方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンのシリンダブロックやシリンヘッド等を鋳造する際、ウォータジャケットや吸排気ポート等の中空部を形成するために崩壊性の砂中子(砂型)が用いられる。砂中子は、例えば、熱可塑性樹脂で被覆したシェル砂を砂吹込み装置のノズルから圧縮空気によって金型に吹込み、キャビティ内に充填し、加熱して固めることによって所定の形状に形成される。
【0003】
これに対して、例えば特許文献1に記載されているように、水、水溶性バインダーを骨材と共に撹拌して発泡させた発泡砂を用いて中子等の砂型の造型を行う技術がある。このように、発泡砂を金型のキャビティに充填して造型を行う場合、発泡砂の加熱、硬化の過程で水分の蒸発及び気泡の熱膨張により、キャビティの内圧が高まるため、造型品は、表層部に水溶性バインダー及び骨材が集積して緻密で強度の高い硬化層が形成される一方、内部に密度が低く脆い脆弱部が形成される。このため、発泡砂により造型された中子は、鋳造時には、中子として充分な強度を確保しつつ、鋳造後は、崩壊性に優れ、鋳造品から容易に取除くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4441916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発泡砂を用いて砂型を造型する場合、次のような問題がある。
発泡砂による造型工程においては、発泡砂を砂槽から充填ノズルを通して加熱された金型のキャビティ内に充填した後、砂槽は、金型から分離され、適宜、骨材、水、水溶性バインダーが補充、撹拌されて、次の充填工程に備える。このとき、充填ノズル内に残留した発泡砂は、金型からの熱の伝達により加熱され、水分が蒸発して固化が始まっている。この状態で、砂槽に発泡砂が補充され、撹拌が行われても、充填ノズル内の発泡砂は、充分に撹拌することができない。その後、次の充填工程で砂槽の発泡砂を金型のキャビティに充填する際、充填ノズル内の固化が進んだ発泡砂が金型のキャビティ内に充填されることになる。固化が進んだ発泡砂は、流動性に劣るため、キャビティの末端まで充填され難く、充填不良の原因となる。
【0006】
なお、発泡砂以外の砂であっても、水溶性のバインダーを用いた湿砂等の、加熱により固化し、砂槽から金型のキャビティに充填した後、充填ノズル内に砂が残留するような場合、同様の問題を生じることになる。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みて成されたものであり、砂槽から充填ノズルを通して砂を金型のキャビティ内に充填する際、充填ノズル内に砂が残留して固化するのを防止するようにした砂型造型装置及び砂型の造型方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、砂を貯留する砂槽と、前記砂槽内の砂を撹拌する撹拌手段と、前記砂槽に設けられて前記砂槽を金型のキャビティに接続する充填ノズルと、前記砂槽内の砂を加圧して前記充填ノズルを通して前記金型のキャビティに充填する加圧手段とを備えた砂型造型装置において、
砂を前記金型のキャビティに充填した後、前記充填ノズルに挿入して前記充填ノズル内の砂を前記砂槽内に押込む押込み棒を備えていることを特徴とする。
また、本発明は、砂槽内で砂を撹拌し、前記砂槽内の砂を加圧して、前記砂槽に設けられた充填ノズルを通して金型のキャビティに充填する砂型の造型方法において、
砂を前記金型のキャビティに充填した後、押込み棒を前記充填ノズルに挿入して前記充填ノズル内の砂を前記砂槽内に押込むことを特徴とする
【0009】
(発明の態様)
以下に、本発明において特許請求が可能と認識される発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の(2)、(5)、(7)及び(8)の内容が請求項1乃至にそれぞれ対応する。
(1)砂を貯留する砂槽と、前記砂槽内の砂を撹拌する撹拌手段と、前記砂槽に設けられて前記砂槽を金型のキャビティに接続する充填ノズルと、前記砂槽内の砂を加圧して前記充填ノズルを通して前記金型のキャビティに充填する加圧手段とを備えた砂型造型装置において、
砂を前記金型のキャビティに充填した後、前記充填ノズルに挿入して前記充填ノズル内の砂を前記砂槽内に押込む押込み棒を備えていることを特徴とする砂型造型装置。
充填ノズル内に残留した砂は、押込み棒によって砂槽内に押し込むことにより、撹拌手段により再度撹拌することができるので、砂の固化を防止して、金型のキャビティへの円滑な充填が可能になる。
(2)(1)の構成において、前記充填ノズルに挿入した前記押込み棒の先端部からエアを吹出して、前記砂槽内の砂を撹拌するエア吹出し手段を備えていることを特徴とする砂型造型装置。
撹拌手段によって撹拌し難い充填ノズル近傍の砂をエアの吹出しにより撹拌することができ、砂の撹拌を促進することができる。
(3)(2)の構成において、前記エア吹出手段のエアの吹出口は、砂の粒子が侵入しない大きさに形成されていることを特徴とする砂型造型装置。
エアの吹出口への砂の侵入を確実に防止する。
(4)(3)の構成において、前記吹出口は、スリット状であることを特徴とする砂型造型装置。
(5)(1)乃至(4)の構成において、砂は、発泡砂であることを特徴とする砂型造型装置。
(6)砂槽内で砂を撹拌し、前記砂槽内の砂を加圧して、前記砂槽に設けられた充填ノズルを通して金型のキャビティに充填する砂型の造型方法において、
砂を前記金型のキャビティに充填した後、押込み棒を前記充填ノズルに挿入して前記充填ノズル内の砂を前記砂槽内に押込むことを特徴とする砂型の造型方法。
(7)(6)の構成において、前記充填ノズルに挿入した前記押込み棒の先端部からエアを吹出して砂を撹拌することを特徴とする砂型の造型方法。
(8)(6)又は(7)の構成において、砂は、発泡砂であることを特徴とする砂型の造型方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る砂型造型装置及び砂型の造型方法によれば、砂槽から充填ノズルを通して砂を金型のキャビティ内に充填する際、充填ノズル内に砂が残留して固化するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る砂型造型装置による発泡砂の撹拌及び金型のキャビティへの充填工程を示す概略図である。
図2図1に示す砂型造型装置の要部を拡大して示す概略縦断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る砂型造型装置の要部を拡大して示す概略縦断面図である。
図4】発泡砂の組成を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1(A)及び(B)に示すように、第1実施形態に係る砂型造型装置1は、造型用の砂である発泡砂Sを金型2のキャビティC内で固めて砂中子Wを造型するものであって、砂中子Wを造型するためのキャビティCを有する金型2と、発泡砂Sを撹拌し金型2のキャビティC内に充填する撹拌充填装置3とを備えている。
【0013】
本実施形態において使用する発泡砂Sは、骨材である砂を水ガラス(ケイ酸ナトリウム)、水及び界面活性剤を含む水溶性無機バインダーと混合し、混練して発泡状態としたものである。発泡砂Sを構成する粒子の状態のイメージを図4に示す。図4(A)は、砂の粒子7の表面に泡8が吸着した状態を示し、図4(B)は、泡8の一部を拡大して示している。図4(B)に示すように、発泡砂Sは、水ガラス水溶液(水を符号10、水ガラスを符号11で示す)の表面を界面活性剤9で覆って泡8を形成し、この泡8が界面活性剤9を介して砂の粒子7の表面に吸着して発泡状態となっており、適度な粘性を有している。ここで、砂に対して、水ガラスのモル比1.0〜3.0、重量比0.4〜3.0%、水の重量比1.5〜5.0%、界面活性剤の重量比0.003〜2.0%程度とすることにより、適度な粘性を有する発泡砂Sを得ることができる。
【0014】
図1(A)及び(B)に示すように、金型2は、水平方向のパーティングラインPを有する上型2Aと下型2Bとを備え、上型2Aと下型2Bとを型締めしてキャビティCを形成する。金型2には、キャビティCと撹拌充填装置3の砂槽12に取付けられた充填ノズル13が接続される充填口5が設けられている。充填口5は、造型された砂中子Wの離型性を考慮して抜き勾配が設けられて、下型2B側に向って拡開するテーパ状に形成されている。金型2は、150℃〜300℃程度に加熱され、キャビティCに充填された発泡砂Sの水分を蒸発させて発泡砂Sを固化させる。その後、金型2を開いて造型された砂中子Wを取出す。
【0015】
図1(A)及び(B)に示すように、撹拌充填装置3は、発泡砂Sを貯留する砂槽12と、砂槽12内の発泡砂Sを撹拌する撹拌機構14(撹拌手段)(図1(A)参照)と、砂槽12内の発泡砂Sを加圧する加圧機構15(加圧手段)(図1(B)参照)と、砂槽12の充填ノズル13を閉塞する砂押込み機構16とを備えている。撹拌機構14は、砂槽12に対して進退動可能に設けられた略長方形の回転羽根17を有し、回転羽根17を砂槽12内に挿入してモータ等の駆動源(図示せず)に連結された回転軸18によって回転させることにより、砂槽12内の発泡砂Sを撹拌する。回転羽根17は、砂槽12の寸法、形状等に応じて、1つ又は複数(図示の例では3つ)設けられ、砂槽12の内面に接触することなく、また、回転羽根17どうしが互いに接触することなく、砂槽12内の発泡砂Sを全体にわたって均等に撹拌できるように配置される。撹拌機構14は、加圧機構15を使用する際には、砂槽12内から後退させることができる。
【0016】
図1(B)に示すように、加圧機構15は、砂槽12に対して進退動可能に設けられて砂槽12内に摺動可能に嵌合して発泡砂Sを加圧するピストン19を有している。撹拌充填装置3を金型2上にセットし、ピストン19を油圧又はエアシリンダ等の駆動源(図示せず)によって推進して砂槽12内の発泡砂Sを加圧することにより充填ノズル13を通して金型2のキャビティCに充填する。加圧機構15は、撹拌機構14を使用する際には、砂槽12内から後退させることができる。
【0017】
図1(A)に示すように、砂槽12には、金型2に対向する底部に、金型2の充填口5に接続して砂槽12の内部と金型2のキャビティC5とを連通させる充填ノズル13が取付けられている。充填ノズル13には、砂槽12の内部と充填口5とを連通させる直穴13Aが貫通されている。充填ノズル13と金型2との接続部には、シール部材(図示せず)が介装されて発泡砂の漏れを防止する。充填口5及び充填ノズル13は、金型2のキャビティCの寸法、形状等に応じて、1つ又は複数(図示の例では5つ)設けることができる。
【0018】
図1(C)及び(D)、並びに、図2(A)及び(B)に示すように、砂押込み機構16は、砂槽12の下方に昇降動可能に設けられたプレート20を備えている。プレート20には、砂槽12に取付けられた1つ又は複数の充填ノズル13の直穴13Aにそれぞれ挿入、嵌合される1つ又は複数の円柱状の押込み棒21が立設されている。プレート20は、油圧又はエアシリンダ等の駆動手段(図示せず)により、砂槽12の充填ノズル13に対して進退動可能となっている。そして、図1(D)に示すように、プレート20を上昇させて押込み棒21を充填ノズル13の直穴13Aに挿入することにより、充填ノズル13の直穴13A内の発泡砂Sを砂槽12内に押込むようになっている。押込み棒21は、充填ノズル13の直穴13Aに挿入されたとき、その先端部が砂槽12の内底面とほぼ面一、あるいは、砂槽12の内底面から僅かに突出して、充填ノズル13内の発泡砂Sを全て砂槽12内に押込むことができると共に、砂槽12内で回転する撹拌機構14の回転羽根17に干渉しないようになっている。また、砂押込み機構16は、撹拌充填装置3を金型2にセットする際には、砂槽12から後退させることができる。
【0019】
次に、砂型造型装置1により、砂中子Wを造型する工程について説明する。
先ず、事前に金型2を加熱しておく、次に、図1(A)を参照して、充填ノズル13を砂押込み機構16の押込み棒21によって閉塞した砂槽12内に、骨材である砂、水ガラス(ケイ酸ナトリウム)、水及び界面活性剤を投入し、撹拌機構14の回転羽根17を挿入して回転させ、撹拌、混練することにより発泡砂Sを生成する。
【0020】
図2(A)を参照して、砂槽12から撹拌機構14及び砂押込み機構16を後退させる。このとき、砂槽12内の発泡砂Sは、適度な粘性を有しているので、充填ノズル13から押込み棒21を引抜いても自然に落下することなく、砂槽12内で保持される。上型2Aと下型2Bとを型締めしてキャビティCを形成した金型2に砂槽12をセットし、充填ノズル13を金型2の充填口5に接続する。また、砂槽12に加圧機構15をセットする。そして、加圧機構15を作動させてピストン19により砂槽12内の発泡砂Sを加圧し、充填ノズル13を通して、加熱された金型2のキャビティCに充填する。
【0021】
発泡砂Sを金型2のキャビティCに充填した後、加圧機構15を作動させてピストン19を上昇させる。そして、砂槽12を金型2から上昇させる。このとき、図1(C)及び図2(A)に示すように、砂槽12内及び充填ノズル13の直穴13内に残った発泡砂Sは、その粘性により、自然に落下することなく保持される。充填ノズル13の直穴13A内の発泡砂Sは、金型2からの熱の伝達によって加熱されて、ある程度水分が蒸発して固化し始めている。砂押込み機構16のプレート20を砂槽12の下方にセットし、上昇させて、図1(D)及び図2(B)に示すように、押込み棒21を充填ノズル13の直穴13Aに挿入して、直穴13A内の発泡砂Sを砂槽12内に押込む。
【0022】
そして、図1(A)を参照して、砂槽12に、適宜、発泡砂Sの原料となる砂、水ガラス、水及び界面活性剤を補充し、撹拌機構14をセットして回転羽根17を回転させ、撹拌、混練して発泡砂Sを生成する。このとき、充填ノズル13の直穴13A内で固化し始めた発泡砂Sは、砂槽12内で再度、撹拌、混練されることにより、均一な発泡砂Sとなり、次の充填工程で金型2のキャビティC内に円滑に充填することができる。
【0023】
金型2のキャビティC内に充填された発泡砂Sは、金型2の加熱により水分が蒸発して固化する。そして、金型2を開いて固化した砂中子Wを離型する。
【0024】
次に本発明の第2実施形態について、図3を参照して説明する。なお、以下の説明において、要部である砂押込み機構16の一部のみを図示し、上記第1実施形態に対して、同様の部分には同じ参照符号を用いて異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0025】
図3に示すように、本実施形態では、砂押込み機構16の押込み棒21は、中空で内部にエア通路21Aが形成されている。エア通路21Aは、一端部が押込み棒21の先端部に開口し、他端部は、プレート20の内部に形成された通路23を介して、圧縮空気の供給源であるエア源24に接続されている。エア源24として、各種エアツール等に圧縮エアを供給する工場設備であるエア配管をプレート20の通路23に接続してもよい。押込み棒21のエア通路21Aの先端開口部には、通気ノズル22(エア吹出し手段)が設けられている。通気ノズル22は、エア通路21Aから砂槽12内にエアを吹出す複数のスリット状の吹出口を有するスリットベントとすることができる。スリット状の吹出口は、砂槽12内の発泡砂Sの粒子が侵入しない程度の大きさとなっている。
【0026】
そして、上述のように発泡砂Sを金型2のキャビティCに充填した後、金型2から引離された砂槽12の充填ノズル13に、砂押込み機構16の押込み棒21を挿入し、充填ノズル13内の発泡砂Sを砂槽12内に押込む。その後、エア源24から圧縮エア供給して、通気ノズル22から砂槽12内にエアを吹出す。これにより、撹拌機構14の回転羽根17がとどき難い充填ノズル13の近傍の発泡砂Sをエアの吹出しにより撹拌することができ、また、回転羽根17に向って移動させて回転羽根17による撹拌を促進することができる。その結果、砂槽12内の発泡砂Sを全体にわたって均等に撹拌、混練することができ、金型2のキャビティCに円滑に充填することができる。
【0027】
なお、上記第1及び第2実施形態では、一例として、発泡砂Sを用いて砂中子Wを造型する場合について説明しているが、本発明は、発泡砂以外の砂であっても、水溶性のバインダーを用いた湿砂等の、加熱により固化し、砂槽から金型のキャビティに充填した後、充填ノズル内に残留するような砂を用いて造型を行う場合にも同様に適用することができる。これにより、充填ノズル内での砂の固化を防止して、金型のキャビティへの砂の円滑な充填が可能になる。
【符号の説明】
【0028】
1…砂型造型装置、2…金型、12…砂槽、13…充填ノズル、14…撹拌機構(撹拌手段)、15…加圧機構(加圧手段)、21…押込み棒、C…キャビティ、S…発泡砂(砂)
図1
図2
図3
図4