特許第5767140号(P5767140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5767140フォトマスク、パターン転写方法、及びペリクル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767140
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】フォトマスク、パターン転写方法、及びペリクル
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/30 20120101AFI20150730BHJP
   G03F 1/00 20120101ALI20150730BHJP
   G03F 1/54 20120101ALI20150730BHJP
   G03F 1/62 20120101ALI20150730BHJP
【FI】
   G03F1/30
   G03F1/00 Z
   G03F1/54
   G03F1/62
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-45124(P2012-45124)
(22)【出願日】2012年3月1日
(65)【公開番号】特開2012-194554(P2012-194554A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2014年3月20日
(31)【優先権主張番号】特願2011-46017(P2011-46017)
(32)【優先日】2011年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113343
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 武史
(72)【発明者】
【氏名】山口 昇
(72)【発明者】
【氏名】吉川 裕
(72)【発明者】
【氏名】菅原 浩幸
【審査官】 赤尾 隼人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−284376(JP,A)
【文献】 特開2002−148783(JP,A)
【文献】 特開平01−093744(JP,A)
【文献】 特開平07−297110(JP,A)
【文献】 特開昭63−121054(JP,A)
【文献】 特開2007−250959(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/094197(WO,A1)
【文献】 特開2000−321753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00−1/86
G03F 7/20
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のピーク波長を含む波長域を有する露光光を照射して、パターン転写を行うためのフォトマスクであって、
前記フォトマスクは、透明基板と、
前記透明基板上に形成された転写パターンと、
波長選択手段とを有し、
前記波長選択手段は、前記フォトマスクに照射する露光光に含まれる、所定波長の光を反射することにより、前記所定波長の光透過量を低減するとともに、
前記波長選択手段は、500nm〜650nmの範囲のいずれかの波長における透過率が70%以上であることを特徴とするフォトマスク。
【請求項2】
前記波長選択手段は、互いに異なる屈折率を有する複数の誘電体層が積層された誘電体多層膜で構成されることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスク。
【請求項3】
前記所定波長がg線(436nm)又はh線(405nm)を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトマスク。
【請求項4】
前記波長選択手段は、i線(365nm)の透過率が60%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフォトマスク。
【請求項5】
前記波長選択手段は、h線及びg線の反射率がそれぞれ70%以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のフォトマスク。
【請求項6】
前記波長選択手段は、前記透明基板の、前記転写パターンが形成された面とは反対側の面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のフォトマスク。
【請求項7】
前記フォトマスクは、前記転写パターンが形成された側のフォトマスク表面に装着されたペリクルを有し、
前記波長選択手段は、前記ペリクルに備えられていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のフォトマスク。
【請求項8】
前記フォトマスクが位相シフトマスクであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のフォトマスク。
【請求項9】
前記フォトマスクが位相シフトマスクであり、かつ、前記転写パターンは、少なくとも透光部と位相調整部とを有し、前記透光部を透過する光の位相と前記位相調整部を透過する光の位相との差は、i線の光において、180度±10度であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のフォトマスク。
【請求項10】
前記フォトマスクが位相シフトマスクであり、かつ、前記転写パターンは、遮光部、透光部、及び位相調整部を有し、前記位相調整部は、前記透明基板を所定深さに掘り込んで形成されたものであることを特徴とする請求項9に記載のフォトマスク。
【請求項11】
複数のピーク波長を含む露光光を用いる露光装置と、請求項1乃至10のいずれかに記載のフォトマスクを用いて、被転写体上へのパターン転写を行うことを特徴とするパターン転写方法。
【請求項12】
複数のピーク波長を含む波長域を有する露光光を用いて、パターン転写を行うための転写パターンを有するフォトマスクに装着されるペリクルであって、
ペリクルフレームと、
前記ペリクルフレームに貼着されたペリクル膜と、
波長選択手段とを有し、
前記波長選択手段は、前記フォトマスクに照射する露光光に含まれる、所定波長の光を反射することにより、前記所定波長の光透過量を低減するとともに、
前記波長選択手段は、500nm〜650nm範囲のいずれかの波長における透過率が70%以上であることを特徴とするペリクル。
【請求項13】
前記波長選択手段は、前記ペリクル膜上に形成された、互いに異なる屈折率を有する複数の誘電体層が積層された誘電体多層膜で構成されることを特徴とする請求項12に記載のペリクル。
【請求項14】
前記所定波長がg線(436nm)又はh線(405nm)を含むことを特徴とする請求項12又は13に記載のペリクル。
【請求項15】
前記波長選択手段は、i線(365nm)の透過率が60%以上であることを特徴とする請求項12乃至14のいずれかに記載のペリクル。
【請求項16】
前記波長選択手段は、g線およびh線の反射率が、それぞれ70%以上であることを特徴とする請求項12乃至15のいずれかに記載のペリクル。
【請求項17】
前記ペリクル膜は、石英ガラスからなることを特徴とする請求項12乃至16のいずれかに記載のペリクル。
【請求項18】
請求項12乃至17のいずれかに記載のペリクルを装着したフォトマスクを用い、複数のピーク波長を含む露光光を用いる露光装置によって、被転写体上のレジスト膜にレジストパターンを転写することを特徴とするパターン転写方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスク、パターン転写方法、及びペリクルに関する。特に、液晶表示パネルに代表される表示装置製造に有利に用いられるフォトマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネル等の製造用の露光装置には露光用光源として超高圧水銀灯が通常使われている。この超高圧水銀灯は、i線(365nm)、h線(405nm)、及びg線(436nm)を含む複数のピーク波長を持つ光源である。この光源を使用して、フォトマスクに形成された転写パターンを被転写体上のレジスト膜に転写し、さらに形成されたレジストパターンをエッチングマスクとして用い被転写体上に予め成膜されていた薄膜などの加工を行う。これら一連のフォトリソグラフィープロセスを用いて、液晶表示パネルが製造される。
【0003】
特許文献1には、露光用マスクが記載されている。ここでは、光源から放射された第1、第2及び第3の波長の光を有する混合波長の光のうち該第1の波長の光をフィルタで吸収させた後に、該フィルタからの透過光について前記第2の波長の光を吸収し、前記第3の波長の光を透過させてレジストに照射し、露光する露光用マスクであって、前記第2の波長の光を吸収するフィルム又は基板が全面にわたって形成されたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4413414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、表示装置における高解像度化が進み、液晶表示パネルに形成される画素の高密度化に伴う画素サイズの微細化が進んでいる。すなわち、表示画質の高品質化に伴い、液晶のスイッチングや配向等の動作を行うための素子の形成においても微細化の必要性が生じている。フォトマスクに形成された転写用パターンを、プロジェクション方式の露光装置を用いて転写する際にも、より解像度の高いパターン転写を実現させる必要性が生じてきている。特に等倍露光を行う露光装置においては縮小露光を行う露光装置に比較し最小解像線幅を小さくすることが難しく、最小解像限界の改善が望まれている。
【0006】
ところで、光学系を用いた時の、パターン解像度(解像可能な最小線幅)と露光波長の関係に関しては、レイリー(Rayleigh)の解像限界を示した以下の式を参考にして考えることが出来る。
F=k1λ/NA
ここで、F:最小線幅、k1:(係数、いわゆるk1ファクター)、λ:露光光波長、NA:被転写体に対する光学系開口率である。
上式から明らかなように、露光光の波長を短くすれば、解像可能な最小線幅が小さくできるということが示されている。
【0007】
上記超高圧水銀灯のような複数のピーク波長を含む(以下、マルチ波長ともいう)露光光源によるパターン転写においては、露光装置の光学系の有する色収差などが原因で、解像度の劣化が生じる場合がある。
このような理由で、露光光の単一波長化もしくは短波長化のために、例えば露光装置に所望の露光光波長を選択的に切り替えることが可能な手段を備えている場合には、露光光を選択し所望の波長の光に切り替えて露光を行うことにより転写パターンの解像度を向上することが可能となる。
【0008】
しかしながら、装置によっては、光学設計上の制限からこれらの機能を付加できない場合や、たとえ設計上は可能であったとしても、機能付加に伴う改造に必要なコストや、改造期間中には長時間装置を停止させなければいけない等の問題があった。一般的に、液晶パネル用の大型基板の製造工程に用いられる露光装置は、そのサイズが非常に大きく、液晶パネルメーカーにとって、こうした装置の改造や条件変更は大きな負荷となることから、露光装置上の変更を極力行わずに、微細化するパターンの解像度を向上させたいという期待がある。
【0009】
一方、上記特許文献1に開示されているような光フィルタをフォトマスクに備えた場合、以下のような問題があった。
露光光が光フィルタに照射された際に、吸収された光によって熱が生じ、フォトマスク温度が上昇することによって、フォトマスクの熱膨張によってパターン転写時の寸法精度に影響を与えるという問題である。
【0010】
本発明は以上の問題を解決する手段を提供するものであり、従来のマルチ波長の露光光源を使用した場合でも、転写パターンの解像度を向上させることが可能なフォトマスク及びその製造方法、パターン転写方法、並びにペリクルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を有する。
(構成1)
複数のピーク波長を含む波長域を有する露光光を照射して、パターン転写を行うためのフォトマスクであって、前記フォトマスクは、透明基板と、前記透明基板上に形成された転写パターンと、波長選択手段とを有し、前記波長選択手段は、前記フォトマスクに照射する露光光に含まれる所定波長を反射することにより、前記所定波長の光透過量を低減することを特徴とするフォトマスク。
【0012】
(構成2)
前記波長選択手段は、互いに異なる屈折率を有する複数の誘電体層が積層された誘電体多層膜で構成されることを特徴とする構成1に記載のフォトマスク。
(構成3)
前記所定波長がg線(436nm)又はh線(405nm)を含むことを特徴とする構成1又は2に記載のフォトマスク。
【0013】
(構成4)
前記波長選択手段は、i線(365nm)の透過率が60%以上であることを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載のフォトマスク。
(構成5)
前記波長選択手段は、前記h線及び前記g線の反射率がそれぞれ70%以上であることを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載のフォトマスク。
【0014】
(構成6)
前記波長選択手段は、500nm〜650nmの範囲内のいずれかの波長に対する透過率が70%以上であることを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載のフォトマスク。
(構成7)
前記波長選択手段は、前記透明基板の、前記転写パターンが形成された面とは反対側の面に形成されていることを特徴とする構成1乃至6のいずれかに記載のフォトマスク。
【0015】
(構成8)
前記フォトマスクは、前記転写パターンが形成された側のフォトマスク表面に装着されたペリクルを有し、前記波長選択手段は、前記ペリクルに備えられていることを特徴とする構成1乃至7のいずれかに記載のフォトマスク。
(構成9)
前記転写パターンは、少なくとも透光部と位相調整部とを有し、前記透光部を透過する光の位相と前記位相調整部を透過する光の位相との差は、前記i線、前記h線、及び前記g線のいずれかの光において、180度±10度であることを特徴とする構成1乃至8のいずれかに記載のフォトマスク。
【0016】
(構成10)
前記転写パターンは、遮光部、透光部、及び位相調整部を有し、前記位相調整部は、前記透明基板を所定深さに掘り込んで形成されたものであることを特徴とする構成9に記載のフォトマスク。
(構成11)
複数のピーク波長を含む露光光を用いる露光装置と、構成1乃至10のいずれかに記載のフォトマスクを用いて、被転写体上へのパターン転写を行うことを特徴とするパターン転写方法。
【0017】
(構成12)
複数のピーク波長を含む波長域を有する露光光を照射して、パターン転写を行うための転写パターンを有するフォトマスクに装着されるペリクルであって、ペリクルフレームと、前記ペリクルフレームに貼着されたペリクル膜と、波長選択手段とを有し、前記波長選択手段は、前記フォトマスクに照射する露光光に含まれる所定波長を反射することにより、前記所定波長の光透過量を低減することを特徴とするペリクル。
【0018】
(構成13)
前記波長選択手段は、前記ペリクル膜上に形成された、互いに異なる屈折率を有する複数の誘電体層が積層された誘電体多層膜で構成されることを特徴とする構成12に記載のペリクル。
(構成14)
前記所定波長がg線(436nm)又はh線(405nm)を含むことを特徴とする構成12又は13に記載のペリクル。
【0019】
(構成15)
前記波長選択手段は、i線(365nm)の透過率が60%以上であることを特徴とする構成12乃至14のいずれかに記載のペリクル。
(構成16)
前記波長選択手段は、前記g線および前記h線の反射率が、70%以上であることを特徴とする構成12乃至15のいずれかに記載のペリクル。
【0020】
(構成17)
前記波長選択手段は、500nm〜650nm範囲内のいずれかの波長における透過率が70%以上であることを特徴とする構成12乃至16のいずれかに記載のペリクル。
(構成18)
前記ペリクル膜は、石英ガラスからなることを特徴とする構成12乃至17のいずれかに記載のペリクル。
【0021】
(構成19)
構成12乃至18のいずれかに記載のペリクルを装着したフォトマスクを用い、複数のピーク波長を含む露光光を用いる露光装置によって、被転写体上のレジスト膜にレジストパターンを転写することを特徴とするパターン転写方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明のフォトマスクは、転写パターンが形成された領域に照射される露光光のうち所定の波長を反射する波長選択手段を有することにより、前記所定波長の光透過量を低減することで、大型露光装置の改造を必要とせず、フォトマスク上の転写パターンを、従来以上に高い解像度で転写することが可能となる。すなわち、従来の露光光源や露光装置を使用しつつ、異なる波長選択機能をフォトマスクごとに持たせることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のフォトマスクの構成を示す断面図であり、(a)は透明基板の転写パターンの形成面とは反対側に波長選択手段を設けた場合、(b)は転写パターン形成面に波長選択手段を設けた場合、(c)はフォトマスクに装着するペリクルに波長選択手段を設けた場合を示す。
図2】本発明における波長選択手段が誘電体多層膜により形成される場合の構成を示す断面図である。
図3】本発明における波長選択手段による反射率特性の一例を示す図である。
図4】本発明による基板掘り込みタイプのレベンソン型位相シフトマスクの製造工程を示す断面図である。
図5】本発明に係るペリクル装着タイプのレベンソン型位相シフトマスクの断面図である。
図6】実施例1におけるフォトマスクの解像度検証用パターンを示す図である。
図7】実施例1におけるフォトマスクの解像度の検証結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について詳述する。
本発明のフォトマスクは、上記構成1にあるように、複数のピーク波長を含む波長域を有する露光光を用いて、パターン転写を行うためのフォトマスクであって、前記フォトマスクは、透明基板と、前記透明基板上に形成された転写パターンと、波長選択手段とを有する。
【0025】
すなわち、本発明のフォトマスクは、露光装置により、複数のピーク波長を含む光をフォトマスクに照射し、該フォトマスクが備える転写パターンの透過光によって被転写体を露光する為に用いるフォトマスクである。本発明のフォトマスクが有する前記波長選択手段は、前記フォトマスクに照射する露光光に含まれる所定波長を反射することにより、前記所定波長の光透過強度を低減し、結果として光透過量を低減する。つまり、この波長選択手段は、所定波長の透過量を低減するが、この低減は主として光の反射によって行われるのである。
なお、上記ピーク波長とは、光強度がピークを示す波長である。
【0026】
本発明の波長選択手段は、前記露光光の波長域のうちの、所定波長に対して選択的に高い反射率をもつことによって、相対的に他の波長域の光透過量を上記所定波長よりも高くすることのできる光学フィルタであることができる。更に、本発明の波長選択手段は、該所定波長の光の透過量を、主として、反射によって、低減するものである。ここで、「主として反射による」とは、光の吸収による透過量の低減よりも、光の反射による透過量の低減の度合いが大きいものである。
【0027】
たとえば、所定波長は、h線、g線を含むことができる。これによって、選択的に他の波長域(以下、選択波長域ともいう)の光透過強度が、上記所定波長の透過強度と比べて相対的に高くなる。選択波長域は、i線を含むことが好ましく、例えば波長365±10nmの範囲とすることができる。本発明の波長選択手段は、i線、h線、g線を含む露光光を用いたとき、選択波長域(好ましくは、i線を含み、h線、g線を含まない波長域)において、所定波長(たとえば、h線又はg線)よりも、高い透過率を示すことができる。好ましくは、本発明の波長選択手段は、使用する露光装置の露光光に含まれる、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)のうち、i線の反射率が、h線、g線のいずれより低く、i線の透過率が、h線、g線のいずれより高いものである。
【0028】
本発明で言う波長選択手段は、好ましくは、露光光波長域のうち、選択波長域において、透過率(入射強度に対する、透過強度の割合)が、60%以上である。例えば、該波長域に含まれる選択波長(たとえばi線)において透過率が、60%以上であることができる。より好ましくは、70%以上である。
また、露光光波長域のうち、上記所定波長(例えばh線、g線)における透過率は、40%以下であることが好ましい。さらには20%以下であることが好ましい。
【0029】
更に、本発明の波長選択手段は、上記露光光波長域のうち、所定波長の透過率の低減が、主として光の反射によって行われる。「主として光の反射による」とは、上記のとおり、光の吸収による透過量の低減よりも、光の反射による透過量の低減の度合いが大きいものである。例えば、この波長域での反射率が70%以上であることができる。
また、選択波長域に含まれる選択波長として、i線を選び、上記所定波長における反射率(たとえば、h線、g線の反射率)は70%以上であることができる。即ち、本発明の波長選択手段は、主として、光を反射することによって、露光光の波長域のうち、ある波長域の光を、他の波長より減衰するような、光学フィルタであることができる。
【0030】
なお、波長選択手段が、露光光に対して、反射以外の成分として透過する成分や吸収される成分を有している場合を以下に説明する。
ここで、波長選択手段に照射される露光光の量を100%とした時に、波長選択手段によって反射される量を百分率で示したものを反射率(R%)、波長選択手段によって吸収される量を百分率で示したものを吸収率(D%)、波長選択手段を透過する量を百分率で示したものを(T%)とする。その際、R、D、Tそれぞれの値を合計したものは、波長選択手段に照射された露光光の量の100(%)となる。
【0031】
本発明の波長選択手段は、所定波長について、照射された露光光のうち、主として光の反射によって、透過量を低減しているが「主として光の反射による」とは、反射率と透過率と吸収率に関する上記の条件を満たす場合において、反射率は吸収率よりも大きい(R>D)ことを意味する。
【0032】
更に、本発明の波長選択手段による光の透過量の低減は、透過率Tで透過した露光光が、被転写体のレジスト膜への露光に寄与しない程度の露光量(あるいは強度)であることが好ましく、透過率は、40%以下であることが望ましい。さらには、20%以下であることが望ましい。波長選択手段によって反射される露光光は、例えば波長選択手段に照射される露光光の強度を100%とした時に、反射率が70%以上であることが望ましい。さらには反射率が90%以上であることが望ましい。このとき、波長選択手段はそれ自身による露光光の吸収が少ない材料を用いることが望ましく、例えば、吸収率は10%以下であることが望ましい。さらには吸収率が5%以下であることが望ましい。反射率R(%)、透過率(T%)、吸収率(D%)は以下のようにして、所望の波長ごとに求めることができる。
【0033】
反射率R(%)の測定は、分光光度計を用いて行うことができる。
また、透過率(T%)の測定は、例えば反射率測定と同様に分光光度計を用いて測定することができる。
【0034】
また、吸収率(D%)は、例えば波長選択手段に照射される露光光を100%とした時に、上記反射率(R%)及び透過率(T%)から以下の関係式(1)により求めることが出来る。
吸収率(D%)=100%−反射率(R%)−透過率(T%) (1)
【0035】
液晶表示パネル製造用の露光装置は、露光1回あたりの転写面積を広くすることで、露光時間を短縮し、製造タクトを有利にしている。このとき、露光倍率はフォトマスク上に形成されたパターンに対して等倍であり、縮小露光を行う場合に比べ、最小解像線幅は大きく、3〜4μm程度が限界とされている。しかしながら、近年の製品スペックを実現するためには、少しでも解像線幅を小さくすることが要求されてきている。例えば、最小解像線幅を2〜3μm、又はそれ以下に出来るだけで、液晶表示パネルの設計自由度が飛躍的に拡大し、既存の設備や現状のプロセスを使い、高性能、高機能な液晶表示パネルの製造を行うことが出来るからである。
【0036】
液晶表示パネル製造時のフォトリソグラフィー製造工程では、露光光源として超高圧水銀灯を使用し、超高圧水銀灯から照射されるi線、h線、g線をレジストを感光させる露光光として主に使用する。そのような複数のピーク波長を含む露光光のうち、最も短い波長を用いて露光を行うことによって、転写パターンの解像度を向上することが出来る。また、いずれか単一の波長のみを用いて露光を行うことによって、露光装置の光学系が有する色収差の影響が減少し、転写パターンの解像度の向上が可能となる。また、使用されるフォトマスクが位相シフトマスクの場合、単一波長の光を使うことによって、位相シフト効果を有効に使うことが出来、さらに単一波長をより短い波長から選択した場合、より転写パターンの解像度の向上が可能となる。
【0037】
したがって、このような波長選択機能を有する波長選択手段をフォトマスクに設けることによって、露光光の透過率が異なる二種類の領域によって転写パターンが構成されているフォトマスク(バイナリフォトマスクなど)や露光光の透過率が3種類以上の領域によって転写パターンが構成されている多階調フォトマスクだけではなく、位相シフトマスクにおいても、容易にかつ低コストで転写パターンの解像度向上を実現することができる。
【0038】
図1は、本発明のフォトマスク(2階調フォトマスク)の構成を示す断面図であり、(a)は透明基板の転写パターンの形成面とは反対側に波長選択手段を設けた場合、(b)は転写パターン形成面に波長選択手段を設けた場合、(c)はフォトマスクに装着するペリクルに波長選択手段を設けた場合をそれぞれ示している。透明基板1上に転写パターン2が形成されており、さらに本発明による波長選択手段3がそれぞれ所定位置に形成されている。
【0039】
フォトマスクに直接波長選択手段を設ける場合、例えば後述するような誘電体多層膜から構成される波長選択手段をフォトマスクの転写パターンが形成されている面(フォトマスク表面)に設ける(図1(b)の場合)、または、その反対側の面(フォトマスク裏面)に設ける(図1(a)の場合)ことができる。フォトマスクの転写パターン形成面は、パターンを形成する膜の膜厚による凹凸が生じているため、誘電体多層膜の成膜の行いやすさ、膜厚変動や段差による光学性能の制御への影響を考慮すると、フォトマスクの裏面に成膜することが有利である。これは、バイナリフォトマスクや、多階調フォトマスクの別を問わず当てはまる。更に、該フォトマスクが位相シフトマスクの場合、位相調整部として、透明基板の掘りこみ部をもつ場合があり、この段差により誘電体多層膜の膜厚が変動し、光学特性も変動してしまうことを避けるためにも、フォトマスク裏面側の成膜が好ましい。他方、波長選択手段をフォトマスクの透明基板の裏面に形成した場合には、露光時に、フォトマスク裏面はデフォーカスされているため、誘電体多層膜に仮に欠陥が生じた場合であっても転写されないため好適である。
【0040】
一方、本発明の波長選択手段を、フォトマスクに装着されるペリクルに備えるものとすることができる。ペリクルに、特定の波長を選択して透過させることの出来る機能を持たせるためには、例えば、ペリクル膜に波長選択機能をもたせるか、ペリクル膜(以下、ペリクル基体ともいう)上に波長選択機能を有する物質を薄膜として形成することができる。そのうち、基体上に波長選択機能を有する物質を形成する方法においては、露光光などの強力な光の照射のもとで、基体あるいは基体上に形成させた物質が、光吸収により温度上昇することを抑止することが望まれる。従って、反射によって所定波長の透過を低減させる本発明が有利である。
また、ペリクル膜として従来から使用されている、ニトロセルロースや酢酸セルロースなどを含む有機材料を基体とし、その表面に波長選択機能を有する物質を薄膜として形成することができる。
【0041】
更に、図1(c)に示すように、ペリクルフレーム5に取り付けるペリクル膜4(基体)にガラス材料を使用し、このペリクル膜4上に後述する誘電体多層膜から構成される波長選択手段3を形成することができる。この場合、上記有機材料に比べ、選択波長の光透過率や、光直進性、耐性などの点で有利である。波長選択手段3はペリクル膜4の表裏どちらにも形成することができる。ペリクル膜4を構成するガラス材料としては、露光光の波長域のうち短波長側(たとえばi線)に対する透過率の高い石英ガラスを用いることが好適である。
【0042】
ペリクルに本発明の波長選択手段を設ける場合に、より有利な点として、直接フォトマスクに加工を行わないため、波長選択手段の脱着が可能なことが挙げられる。それによって、1つのフォトマスクに対して、波長選択手段の有無の変更や、光学特性の異なるものとの入れ替えが可能となる。また、ペリクルは、洗浄等によって必要な清浄度が得られたフォトマスクに装着して使用するため、ペリクル装着後のフォトマスクに対して洗浄等の処理を行うことはない。したがって、波長選択手段に対して、洗浄などによる、物理的・化学的な負荷を与えることが無い点で有利である。
【0043】
また、本発明の誘電体多層膜の積層面は露光光の照射方向に垂直となる面に対し、誘電多層膜全面の傾きの分布として、−5°以上+5°以下となることが望ましい。
さらには、−2.5°以上+2.5°以下となることが望ましい。これは誘電体多層膜の傾きが上記範囲内のときに、分光特性の分布が実質的に抑止されより良好なパターン転写特性が得られるためである。
【0044】
また、誘電体多層膜をペリクル膜上に形成した場合も同様である。さらに、ペリクルにおいては、重力の影響がありその姿勢によってペリクル膜のたわみの状態が変化する。したがって、本発明のペリクルを装着したフォトマスクを使用して露光装置による露光を行う際は、フォトマスクを露光装置に設置した際のペリクルのたわみの最大値が、露光光の照射方向に垂直となる面に対し、−5°以上+5°以下となることが望ましい。さらには、−2.5°以上+2.5°以下となることが望ましい。
【0045】
本発明の波長選択手段は、互いに異なる屈折率を有する複数の誘電体層が積層された誘電体多層膜で構成される。 誘電体多層膜は、例えばある波長より長波長側だけを透過したり、反射したりすることができる。また特定の波長だけ透過させることもできる。
ここで、複数とは、二層以上の任意の数をいう。例えば、互いに異なる屈折率を有する2種類の層が、交互に積層された誘電体多層膜を用いることができる。又は、互いに異なる屈折率を有する3種類の層を、一定の配列順に従って積層しても良い。
【0046】
図2は、本発明における波長選択手段が誘電体多層膜により形成される場合の構成例を示す断面図である。
本発明では、前述のとおり、前記パターン転写に用いる露光光の波長域のうち、所定波長の透過率を反射によって低減させ、それによって光透過率特性を調整することが可能な材料を用いる。例えば図2に示すように、波長選択手段として、基体31(フォトマスクの透明基板又はペリクル膜など)上に、それぞれ異なる屈折率を有する2種の誘電体材料(高屈折率材料32とそれより屈折率が低い低屈折率材料33)を交互に多層積層した誘電体多層膜を使用することが出来る。i線、h線、g線を含む紫外域に使用可能な誘電体材料として、高屈折率材料には、例えばNb(五酸化ニオブ)、ZrO(酸化ジルコニウム)などが、低屈折率材料には、例えばSiOなどが使用できる。本発明に用いる誘電体多層膜としては、紫外域の吸収率が10%以下であり、かつ紫外域に高い耐性を有するものが好ましい。
【0047】
このような誘電体多層膜から構成される波長選択手段は、積層した誘電体材料の屈折率が異なることによって、誘電体膜層の境界でフレネル反射が生じ、各誘電体膜層の屈折率、厚さを適切な値に調整することで、多層に積層したそれぞれの境界で生じるフレネル反射波同士を相互に強め合うような干渉状態にすると反射鏡として機能する。したがって、誘電体多層膜はフレネル反射を利用しており、光の吸収が極めて低いものとすることができるため、光の吸収により光透過率特性を調整する従来の光学フィルターの問題を解決することが出来る。
【0048】
この誘電体多層膜を形成する各誘電体膜層の膜厚や積層数は、反射によって透過率を減少させたい波長域と反射率などのパラメータから、シミュレーションによって求めることができ、光学設計の自由度が高いため本発明に有利に用いることが出来る。
また、誘電体多層膜における低屈折率材料と高屈折率材料の積層方法としては、いくつかの低屈折率材料と高屈折率材料とを組み合わせたものを1単位として、その1単位を繰り返し積層した構成を含むことができる。組み合わせの単位が複数存在し、それらを一定の序列で積層し構成してもよい。
誘電体材料は真空蒸着やスパッタなどの成膜方法によって基体上に積層させることが可能である。
【0049】
例えば、i線の透過率を維持しつつ、h線とg線を含む所定波長の反射率を高めることにより透過率を低減する場合(図3の反射率特性曲線を参照)、h線の反射率が高い誘電体多層膜と、g線の反射率が高い誘電体多層膜とを積層することで、i線の透過率が相対的に高い誘電体多層膜とすることが出来る。または、h線とg線の両方を含む領域に高い反射率をもつ誘電体多層膜を構成し、i線の透過率を相対的に高めることができる。このように透過させたくない波長領域の光を反射するように誘電体多層膜を構成することで、さまざまな光学特性を有する波長選択手段を構成することが出来るので、誘電体多層膜は本発明の波長選択手段として好適である。
【0050】
なお、液晶表示パネル等の製造に使用する露光装置においては、露光光は1度の露光時間を可能な限り短くし、製品の加工タクトを短くするために、照射領域の単位面積あたりの光照射エネルギーが非常に大きくなるように設計されており、波長選択手段に光吸収の大きい材料を用いた場合に、吸収された光は熱に変換され、露光光の照射により波長選択手段の温度が上昇する。このためフォトマスクの温度が上昇すると、転写パターンの精度が劣化しやすい。
露光装置には、フォトマスクの温度をコントロールするための冷却装置が備えられているが、波長選択手段の光学特性によって光吸収量が変わり、発生する熱の量も変化する。こうしたことを考慮すると、所定波長の反射によって、露光光の透過率を低減する本発明のフォトマスクは、発熱が小さい為、非常に有利である。
【0051】
本発明の波長選択手段において、選択波長(例えばi線)の透過率が60%以上であることが好ましい。所望する波長領域の透過率が60%以上であれば、レジスト露光に必要なエネルギーが確保できるので、露光時間の増加により生じるタクトタイムの増加を防ぐことが出来る。また、波長選択手段のフォトマスク面内の透過率ばらつきは、±10%以下となることが望ましい。さらには±5%以下であることが望ましく、よりさらには±1%以下となることが望ましい。透過率ばらつきを上記範囲とすることで、透過する露光光の面内分布が均一になるため、転写パターン精度も均一になるためである。
【0052】
本発明の波長選択手段においては、所定波長光(例えばh線やg線)を反射させるが、この場合の反射率は、70%以上であることが好ましい。さらには、反射率が90%以上であることが好ましい。反射率がこの範囲の場合、波長選択手段を透過する露光光が減衰し、上記所定波長の光によってもレジストの感光が生じる恐れがなくなり、本発明の効果が好ましく得られるからである。また、波長選択手段のフォトマスク面内の反射率ばらつきは、±10%以下となることが望ましい
【0053】
なお、出荷直前のフォトマスクに対し、パターン面に欠陥が生じていないかを確認するために、欠陥検査を行う。この欠陥検査にはパターン面をCCDなどで撮像する欠陥検査や、光学顕微鏡を用いた目視検査などがある。欠陥検査装置では、検査光として可視光領域の光を用いることが便利である。また、欠陥検査装置に使われるオートフォーカス手段として、ヘリウムネオンレーザー(633nm)や半導体レーザーなどの可視光レーザーなどを使用する。したがって、このような光学的欠陥検査に支障がないように、本発明の波長選択手段は、上記露光光の波長領域外の、検査に用いる光波長に、ある程度の透過率をもつことが好ましい。例えば、可視光領域の一部に光透過性を有することが望ましい。例えば、500nm〜650nmの波長領域の何れかの波長において透過率が70%以上であることが望ましい。より望ましくは上記の波長領域において、検査光もしくはオートフォーカスに使用する可視光の透過率が70%以上であることが好適である。このような透過率特性を有するように波長選択手段を設計すると、波長選択手段を形成した本発明のフォトマスクの欠陥検査を精度良く実施することができ、完成したフォトマスクの品質を保証できる。
この場合、露光光の波長域として500nm以下のものを使用することが好ましい。
【0054】
本発明は、遮光部と透光部からなる転写パターンを有するいわゆるバイナリフォトマスクや、遮光部と透光部と半透光部等の露光光に対する透過率の異なる複数の領域からなる転写パターンを有することにより、被転写体上のレジストに段差形状を形成する多階調フォトマスクなどに好適である
【0055】
また、本発明は、位相シフト効果を有するフォトマスク(位相シフトマスク)にも好適である。位相シフト効果を有するフォトマスクにおいては、その露光時に使用される露光光の性質が、転写されるパターンの精度に大きく影響を与える。本発明の波長選択手段を用いれば、転写に寄与する波長域を限定することができるため、位相シフト効果による解像度の向上の効果が得られる。
【0056】
光の位相を制御することにより、解像度や焦点深度を改善し、転写特性を向上させた位相シフトマスクは、透光部と位相調整部とを有し、位相調整部を透過した露光光の位相と、透光部を透過した露光光の位相とが略180度異なるように構成されている。透光部を透過した露光光と、位相調整部を透過した露光光が互いに干渉することにより、解像度や焦点深度を改善することが出来る。本発明が適用される位相シフトマスクとしては、基板に掘り込みを持つレベンソン型位相シフトマスク、クロムレス型位相シフトマスク等が含まれる。このような位相シフトマスクの効果をより高めるためには、本発明の波長選択手段により、パターン転写に寄与する波長域を限定し、パターンのエッジにおいて生じる光の干渉によるコントラスト向上を得ることが有利である。この場合、選択波長は、より短波長光であることが望ましく、例えばg線よりはh線、さらにh線よりもi線を使用することが望ましい。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
ここでは、本発明のフォトマスクの具体的な実施例として、基板掘り込みを有するレベンソン型位相シフトマスクについて説明する。
図4は、上記レベンソン型位相シフトマスクの製造工程を示す断面図である。この製造工程に従って説明する。
透明基板として、サイズ1220mm×1400mm、厚さ13mmの石英基板10を用い、この基板上に遮光膜11(Cr膜を100nm、その上に低反射層として10nmの酸化クロム層)の形成されたマスクブランクを用意し、スピンコートもしくはCAPコーターなどの方法を用いて遮光膜11上にポジ型レジストを1000nmの厚さで塗布し、第1レジスト膜12を形成する(図4(a))。
【0058】
次に、上記第1レジスト膜12に対して、レーザー描画機により所定の描画露光を行い、スプレー方式等の手法により第1レジスト膜12にKOH等の無機アルカリ水溶液やTMAH(Tetra Methyl Anmonium Hydroxide)水溶液等の現像液を供給して現像を行い、遮光部と位相シフト部の完成予定領域を覆う第1レジストパターン12aを形成する(図4(b))。
次に、上記第1レジストパターン12aをマスクとして、硝酸セリウムアンモンと過塩素酸の混合溶液などのエッチング剤で、遮光膜11をエッチングして、遮光膜パターン11aを形成する(図4(c))。その後、残存する第1レジストパターン12aをレジスト剥離液等を使用して除去する(図4(d))。
【0059】
次に、遮光膜パターン11aの形成された基板上の全面に、再びスピンコーターやCAPコーターなどの方法で、上記と同じ材料の第2レジスト膜12を1000nmの厚さで形成する(図4(e))。
次に、上記第2レジスト膜12に対して、レーザー描画機により所定の描画露光を行い、スプレー方式等の手法によりレジスト膜に現像液を供給し現像を行い、位相シフト部を除く領域を覆う第2レジストパターン12bを形成する(図4(f))。
【0060】
次に、上記第2レジストパターン12bをマスクとして遮光膜11aをエッチングして、位相シフト部形成予定領域の遮光膜パターンを除去する(図4(g))。続いて、第2レジストパターン12bと、第2レジストパターン12bをマスクとしてエッチングした遮光膜とをマスクとして、フッ酸などを含むエッチング剤を用いた基板のエッチングによって基板10を掘り込み、透光部を透過する露光光に対して実質上180度の位相シフト量を有する深さになるまでエッチングを行い、位相シフト部10aを形成させる(図4(h))。その後、残存する第2レジストパターン12bをレジスト剥離液などを用いて除去しパターンを完成させる(図4(i))。
【0061】
次に、本発明の波長選択手段を形成する。
具体的には、フォトマスクの裏面(パターン形成面とは反対側の面)に、スパッタ法を用いて、高屈折率材料(Nbを使用)と低屈屈折率材料(SiOを使用)を交互に成膜し、誘電体多層膜を形成する。堆積膜厚と層数は、反射させたい波長領域に基づき決定した。具体的には40nmから80nmの膜厚範囲の高屈折率材料と低屈折率材料を組み合わせ、交互に22層積層することで、h線およびそれよりも長波長の光を反射させることにより、この波長域の透過率を低減した。これにより、i線の透過率が、h線、g線に比べて相対的に大きくなった。
こうして、本発明の一実施例であるレベンソン型の位相シフトマスクを完成させた(図4(j))。
【0062】
本実施例では、誘電体多層膜からなる波長選択手段の形成は、フォトマスクのパターン形成面とは異なる面(フォトマスク裏面)に行った。
また、図5に示すように、本発明では、波長選択手段として、ペリクルにその機能を備えたものを使用することが出来る。例えばペリクルフレーム15に取り付けられた1mm厚の石英ガラス14をペリクル膜(基体)とし、その表面に上記誘電体多層膜と同じ設計の波長選択手段13を同様の方法で形成したペリクルを用意し、上記パターンの完成したフォトマスク(図4(i))上に貼り付けることで、本発明に係るペリクル付きのフォトマスクを完成させた。
【0063】
次に、上記のようにして完成させたフォトマスク(図4(j))を用いて、解像度の検証を行った。上記フォトマスクは、図6に示すように、解像度検証用パターンとして以下のパターンを有している。
すなわち、遮光部(A)を挟んで、位相シフト量が0度の透光部(B)と位相シフト量が180度の位相シフト部(C)が交互に配列された、レベンソン型位相シフトパターンのラインアンドスペースパターンとした。このラインアンドスペースパターンは、隣り合った遮光部Aと位相シフト部Cとの中心線間の距離と、および隣り合った遮光部Aと透光部Bとの中心線間の距離とが同一であり、かつ遮光部A、透光部B、位相シフト部Cの各パターンの幅も上記中心線間の距離の値と同じになるように配列してある。ここで、上記中心線間の距離は、1.5μmから3.0μmの範囲で0.1μm刻みに、複数種のサイズのラインアンドスペースパターンの組がそれぞれ形成されている。例えば、上記中心線間の距離が、2.0μmのものを、2.0μmラインアンドスペースパターンと呼ぶことができる。
【0064】
フォトマスク上のパターンと同じサイズで被転写体上にパターンを形成するために以下の条件を設定した。
レジスト膜がエッチングマスクとして現像後に残膜する領域と、現像後に完全にレジスト膜が除去される領域の両方が存在するための被露光条件として、フォトマスクを透過して被転写体に照射される露光光は、フォトマスクを透過した露光光の透過率において、残膜させる領域の最小透過率は11%以下を満たし、かつ除去される領域の透過率は40%以上を満たすこととした(なお、ここでは被転写体上のレジストはポジレジストを使用する)。以上の条件を満たさない場合は、実際のフォトマスクを使用した露光時に、フォトマスク面内に生じる線幅のばらつきや露光光の照度ムラなどのばらつきの影響が顕著に現れるようになり、安定したパターニングを行うことが難しくなる(図7参照)。
【0065】
また、被転写体のプロセス条件として、現像によって、実際にフォトマスクを通して露光されたレジスト膜の領域(上記露光における透過率40%以上の領域)よりも、オーバー現像によりこの領域は拡大し、その拡大量は片エッジにつき0.2μmとなる。また、この拡大した領域はエッチングによって、さらに片エッジにつき0.25μm被転写体に形成される線幅が大きくなる場合を想定した。すなわち、露光された領域の幅に対して、現像とエッチングを経ることによって両エッジで (0.2×2+0.25×2)=0.9μm拡大することになる。
【0066】
また、本実施例のフォトマスクを使用して被転写体にパターニングをする際の露光光の光学条件を、NA=0.083、σ=0.9、露光光波長強度比を、本実施例の波長選択手段を設けた場合、g/h/i=0/0/100、縮小露光倍率=1.0とし、フォトマスクの遮光部Aの透過率を0%、透光部Bの透過率を100%かつ位相シフト量を0度、位相シフト部Cの透過率を100%かつ位相シフト量を180度とした。
以上の条件から、上記フォトマスクにおける、1.5μmから3.0μmのラインアンドスペースパターンについて、透過光の光強度曲線を得て、0.1μm刻みにプロットした。このとき、フォトマスクを透過した露光光をCCD(撮像素子)を備えた撮像手段によってとらえ、得られた画像情報から、光強度曲線を得た。実際の露光装置の露光光と結像光学系に光学特性を近似させた、検査光と検査光学系を装備し、この検査光学系を通った検査光をフォトマスクに照射することで、実際の露光装置で転写した時と同等の転写像を、CCD等の撮像手段に結像し取得できるシミュレータを用いた。
このように取得した光強度曲線により、上記パターン形成条件を満たすものとして、2.0μmラインアンドスペースパターンを抽出することができた。
【0067】
この2.0μmラインアンドスペースパターンの透過率曲線(図7参照)によると、被転写体においてレジストを残膜させたい領域の最小透過率は10%であり、レジストを除去したい領域の透過率は40%以上であり、レジストの残膜と完全除去が両立する条件を満たしている。また、上記透過率が40%以上の領域の幅は1.1μmであるので、上記に述べたように現像プロセスとエッチングプロセスによって、実際に露光された領域よりも線幅として0.9μm拡大し、この露光された領域は最終的には被転写体上で2.0μmの線幅となる。
【0068】
以上のことから、本実施例のフォトマスクに形成した2.0μmラインアンドスペースパターンによって、被転写体上に2.0μmラインアンドスペースパターンを形成できることが、透過率曲線を元にシミュレーションで確認された。
なお、本発明による他の実施例として、遮光膜パターンを有していない基板掘り込みタイプの位相シフトマスク(クロムレス型)を作製し、本実施例と同様にして解像度の検証を行った結果、解像度の向上効果があることを確認できた。
【0069】
(比較例1)
本発明における波長選択手段を設けていないフォトマスク(図4(i)を参照)について、同様の解像度の検証を行った。なお、露光光波長強度比g/h/i=34.8/32.1/33.1とし、他は上記実施例と同様にして、2.0μmラインアンドスペースパターンの透過率曲線を求めた(図7中の黒丸のプロットを参照)。
その結果、レジスト膜がエッチングマスクとして現像後に残膜する領域と、現像後に完全にレジストが除去される領域の両方が存在するための被露光条件(フォトマスクを透過した露光光の透過率が残膜させる領域の最小透過率は11%以下、かつ除去される領域の透過率は40%以上)を満たすことが出来ず、フォトマスクに形成した2.0μmラインアンドスペースパターンによって被転写体上には2.0μmラインアンドスペースパターン形成をすることが出来ないことが分かった。
【0070】
(実施例2)
実施例1と同様の誘電体多層膜からなる波長選択手段をフォトマスク裏面に形成した図1(a)に示すようなバイナリフォトマスクを作製し、実施例1と同様にしてラインアンドスペースパターンによる転写パターンの解像度評価を行った。その結果、線幅2.8μmのパターンを転写することが、透過率曲線を元にシミュレーションで確認された。
【0071】
(比較例2)
上記波長選択手段を設けていないこと以外は実施例2と同様にして作製した2階調フォトマスクについて、実施例1と同様にして転写パターンの解像度評価を行った。その結果、3.0μm未満のパターンが未解像となることが、透過率曲線を元にシミュレーションで確認された。
以上の実施例2、比較例2の結果から、本発明により転写可能な線幅として7%程度の縮小効果が認められた。
【0072】
以上から明らかなとおり、本発明における波長選択手段は、露光光波長のうち必要な波長域を透過する一方、所定の波長域では、透過率を低減する(光をカットする)。光のカットは主として光の反射により行うので、光吸収による熱の発生が抑えられ、フォトマスクやペリクル膜の温度が上昇することによる転写パターンの寸法変化や材料劣化を抑止することが出来る。
また、本発明の波長選択手段として、適切な誘電体多層膜を適用することで、露光光波長から所望の波長域を選択的にカットするなどの、光学設計の自由度がある。更に、検査に必要な波長域(例えば500nm〜650nmの範囲)での光透過を確保する波長選択手段を選択すれば、フォトマスクの製造や管理に有利である。
【0073】
本発明の波長選択手段を、フォトマスクに装着するペリクルに備える場合には、フォトマスクへの波長選択機能を後から付加できる利便性や、取り外し、交換の利便が得られる。
また、本発明のフォトマスクは、波長選択機能を持つ露光装置を使用するか否かに関わらず、複数の露光装置間で同じフォトマスクによる、同じ転写パターンを転写することが可能となる。
【0074】
以上から明らかなとおり、複数のピーク波長を含んだ露光光を有する露光装置を用いてパターンの転写を行う際、本発明によれば、従来の方法に比べより高い解像度を実現するパターン転写が可能となり、例えば、液晶表示パネルに使用されるITO膜等の導電性膜のパターニングによって形成された、微細なラインアンドスペースパターンを有する電極部分を形成する際に好適である。または、液晶表示パネルに使用されるTFTにおいて、トランジスタ部分のチャネルのように細線幅の解像を必要とするパターン形成に好適である。
【符号の説明】
【0075】
1 透明基板
2 転写パターン
3 波長選択手段
4 ペリクル膜
5 ペリクルフレーム
10 透明基板
11 遮光膜
12 レジスト膜
13 波長選択手段
14 ペリクル膜
15 ペリクルフレーム
31 基体
32 高屈折率材料
33 低屈折率材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7