特許第5767153号(P5767153)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田鉄工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5767153-連結ピン組付補助具 図000002
  • 特許5767153-連結ピン組付補助具 図000003
  • 特許5767153-連結ピン組付補助具 図000004
  • 特許5767153-連結ピン組付補助具 図000005
  • 特許5767153-連結ピン組付補助具 図000006
  • 特許5767153-連結ピン組付補助具 図000007
  • 特許5767153-連結ピン組付補助具 図000008
  • 特許5767153-連結ピン組付補助具 図000009
  • 特許5767153-連結ピン組付補助具 図000010
  • 特許5767153-連結ピン組付補助具 図000011
  • 特許5767153-連結ピン組付補助具 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767153
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】連結ピン組付補助具
(51)【国際特許分類】
   G05G 1/46 20080401AFI20150730BHJP
   F16B 21/12 20060101ALI20150730BHJP
   G05G 1/50 20080401ALI20150730BHJP
【FI】
   G05G1/46
   F16B21/12 C
   G05G1/50
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-85861(P2012-85861)
(22)【出願日】2012年4月4日
(65)【公開番号】特開2013-218382(P2013-218382A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2014年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】武島 登志郎
(72)【発明者】
【氏名】深津 芳信
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−084415(JP,U)
【文献】 特開2001−233187(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02762651(FR,A1)
【文献】 実開平05−045216(JP,U)
【文献】 特開2009−144772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/46
F16B 21/12
G05G 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダルアームに設けられた連結穴に連結ピンが挿し通されるとともに、該連結ピンが該連結穴から突き出す先端部分の予め定められた装着位置に抜止め部材が装着されることによって該連結ピンが抜け止めされることにより、該ペダルアームに該連結ピンを介して所定の連結部材が連結される際に、正規の連結ピンに比較して長さ寸法が大きいとともに先端から前記装着位置までの寸法が該正規の連結ピンと異なっている他の連結ピンの誤組付を防止する連結ピン組付補助具であって、
前記ペダルアームの前記連結穴の近傍に配設されるとともに、該ペダルアームの側面から突出規制寸法Sだけ離間した位置に当接面が設けられており、
且つ、該突出規制寸法Sは、前記連結穴を挿通させられた前記連結ピンが前記ペダルアームの側面から突き出す突出寸法が該突出規制寸法Sに規制されることにより、前記他の連結ピンが用いられた場合は前記装着位置に前記抜止め部材を装着することが阻害される寸法に定められており、
前記連結穴を挿通させられた前記連結ピンの先端が前記当接面に当接させられることにより、前記突出寸法が前記突出規制寸法Sに規制され、前記他の連結ピンが用いられた場合に前記抜止め部材による抜け止めが阻害される
ことを特徴とする連結ピン組付補助具。
【請求項2】
前記他の連結ピンは、先端から前記装着位置までの寸法が前記正規の連結ピンに比較して大きく、
前記突出規制寸法Sは、前記突出寸法が該突出規制寸法Sに規制されることにより、前記正規の連結ピンが用いられた場合は前記装着位置に前記抜止め部材を装着できる寸法に定められている
ことを特徴とする請求項1に記載の連結ピン組付補助具。
【請求項3】
所定の弾性を有する合成樹脂材料にて構成されているとともに、前記ペダルアームまたは該ペダルアームに一体的に固設された部材に係止爪を介して着脱可能に取り付けられる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の連結ピン組付補助具。
【請求項4】
断面J字形状を成して前記ペダルアームの前側または後側の端縁に掛け止められる掛止部を有し、該掛止部が該ペダルアームに掛け止められた状態で前記係止爪が係止される
ことを特徴とする請求項3に記載の連結ピン組付補助具。
【請求項5】
前記ペダルアームの側面には、一端部が該ペダルアームから前側へ突き出すように長手板状のプレートが一体的に固設されており、
前記連結ピン組付補助具は、前記プレートに対応する長手形状を成していて該プレートに重ね合わされるように配置されるとともに、
該長手方向の一端部である後端部には前記掛止部が設けられ、前記ペダルアームの後側の端縁に掛け止められる一方、
前記長手方向の他端部であって前記ペダルアームよりも前側へ突き出す前端部は、前記プレートよりも幅寸法が大きくて該プレートの上下に突き出しているとともに、該プレートを挟むように一対の側壁が設けられており、該側壁の先端にそれぞれ内向きに突き出すように前記係止爪が設けられ、該プレートの上下の両端縁にそれぞれ係止される
ことを特徴とする請求項4に記載の連結ピン組付補助具。
【請求項6】
前記係止爪の近傍には、てこの原理で前記連結ピン組付補助具を弾性変形させて該係止爪の係止を解除するための解除用突起が設けられている
ことを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載の連結ピン組付補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペダルアームに連結ピンを介して所定の連結部材を連結する際に、他の連結ピンを誤って組み付けることを防止する連結ピン組付補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペダルアームに設けられた連結穴に連結ピンが挿し通されるとともに、抜止め部材によってその連結ピンが抜け止めされることにより、そのペダルアームにその連結ピンを介して所定の連結部材が連結される連結構造が、例えば車両用操作ペダルのペダルアームにクレビス等を連結する際に広く用いられている。特許文献1〜3に記載の連結構造はその一例で、特許文献1、2では連結ピンの頭部に係合させられるクリップが抜止め部材として用いられており、特許文献3では、連結穴から突き出す連結ピンの先端部分に装着されるβクリップが抜止め部材として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2550744号公報
【特許文献2】特開平11−20635号公報
【特許文献3】特開2008−281076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の連結構造においては、操作ペダルの種類に応じて長さ寸法が異なる複数種類の連結ピンが用いられる組付ラインで、間違った連結ピンを組み付ける可能性があった。そして、短い連結ピンを組み付けるべき操作ペダルに対して長い連結ピンを組み付けた場合、操作ペダルが踏込み操作される際に連結ピンが周辺の部材と干渉する恐れがある。例えば、図10はペダルアーム100に対して正規のクレビスピン(連結ピンに相当)102を用いてクレビス(連結部材に相当)104が連結され、βクリップ(抜止め部材に相当)106によりクレビスピン102が抜け止めされている場合で、周辺部材108と干渉する恐れはない。これに対し、図11は誤って長いクレビスピン110が用いられた場合で、クレビスピン110が軸方向に大きく変位可能であるため、操作ペダルが踏込み操作される際にクレビスピン110が周辺部材108と干渉する可能性がある。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、正規の連結ピンに比較して長さ寸法が大きい連結ピンが誤って用いられ、そのまま組付が行われることが防止されるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、ペダルアームに設けられた連結穴に連結ピンが挿し通されるとともに、その連結ピンがその連結穴から突き出す先端部分の予め定められた装着位置に抜止め部材が装着されることによってその連結ピンが抜け止めされることにより、そのペダルアームにその連結ピンを介して所定の連結部材が連結される際に、正規の連結ピンに比較して長さ寸法が大きいとともに先端から前記装着位置までの寸法がその正規の連結ピンと異なっている他の連結ピンの誤組付を防止する連結ピン組付補助具であって、(a) 前記ペダルアームの前記連結穴の近傍に配設されるとともに、そのペダルアームの側面から突出規制寸法Sだけ離間した位置に当接面が設けられており、且つ、(b) その突出規制寸法Sは、前記連結穴を挿通させられた前記連結ピンが前記ペダルアームの側面から突き出す突出寸法がその突出規制寸法Sに規制されることにより、前記他の連結ピンが用いられた場合は前記装着位置に前記抜止め部材を装着することが阻害される寸法に定められており、(c) 前記連結穴を挿通させられた前記連結ピンの先端が前記当接面に当接させられることにより、前記突出寸法が前記突出規制寸法Sに規制され、前記他の連結ピンが用いられた場合に前記抜止め部材による抜け止めが阻害されることを特徴とする。
【0007】
第2発明は、第1発明の連結ピン組付補助具において、(a) 前記他の連結ピンは、先端から前記装着位置までの寸法が前記正規の連結ピンに比較して大きく、(b) 前記突出規制寸法Sは、前記突出寸法がその突出規制寸法Sに規制されることにより、前記正規の連結ピンが用いられた場合は前記装着位置に前記抜止め部材を装着できる寸法に定められていることを特徴とする。
【0008】
第3発明は、第1発明または第2発明の連結ピン組付補助具において、所定の弾性を有する合成樹脂材料にて構成されているとともに、前記ペダルアームまたはそのペダルアームに一体的に固設された部材に係止爪を介して着脱可能に取り付けられることを特徴とする。
【0009】
第4発明は、第3発明の連結ピン組付補助具において、断面J字形状を成して前記ペダルアームの前側または後側の端縁に掛け止められる掛止部を有し、その掛止部がそのペダルアームに掛け止められた状態で前記係止爪が係止されることを特徴とする。
【0010】
第5発明は、第4発明の連結ピン組付補助具において、(a) 前記ペダルアームの側面には、一端部がそのペダルアームから前側へ突き出すように長手板状のプレートが一体的に固設されており、(b) 前記連結ピン組付補助具は、前記プレートに対応する長手形状を成していてそのプレートに重ね合わされるように配置されるとともに、(c) その長手方向の一端部である後端部には前記掛止部が設けられ、前記ペダルアームの後側の端縁に掛け止められる一方、(d) 前記長手方向の他端部であって前記ペダルアームよりも前側へ突き出す前端部は、前記プレートよりも幅寸法が大きくてそのプレートの上下に突き出しているとともに、そのプレートを挟むように一対の側壁が設けられており、その側壁の先端にそれぞれ内向きに突き出すように前記係止爪が設けられ、そのプレートの上下の両端縁にそれぞれ係止されることを特徴とする。
【0011】
第6発明は、第3発明〜第5発明の何れかの連結ピン組付補助具において、前記係止爪の近傍には、てこの原理で前記連結ピン組付補助具を弾性変形させてその係止爪の係止を解除するための解除用突起が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このような連結ピン組付補助具をペダルアームに配設して連結ピンの組付を行えば、連結穴を挿通させられた連結ピンの先端が当接面に当接させられることにより、その連結ピンがペダルアームの側面から突き出す突出寸法が突出規制寸法Sに規制され、長さ寸法が大きい他の連結ピンが用いられた場合に抜止め部材による抜け止めが阻害される。すなわち、他の連結ピンの先端から抜止め部材の装着位置までの寸法は正規の連結ピンと異なっており、突出規制寸法Sは、突出寸法がその突出規制寸法Sに規制されることにより、他の連結ピンが用いられた場合は装着位置に抜止め部材を装着することが阻害される寸法に定められているため、他の連結ピンが誤って用いられた場合は、その連結ピンに対して抜止め部材を装着できなくなる。このため、抜止め部材による抜け止めが適切に行われるか否かによって、他の連結ピンを用いた誤った組付か否かが判別され、その誤組付が防止される。
【0014】
第3発明の連結ピン組付補助具は、所定の弾性を有する合成樹脂材料にて構成されており、係止爪を介して着脱可能に取り付けられる場合で、溶接やかしめ加工等の取付加工が不要であり、既存の組付設備に対して大きな変更を必要とすることなく好適に適用できる。また、連結ピンを介して連結部材がペダルアームに連結された後に取り外すことができるため、操作ペダルとして不要な部材がペダルアームに残って邪魔になる恐れがないとともに、連結ピン組付補助具の形状等の設計の自由度が高くなる。
【0015】
第4発明は、断面J字形状の掛止部を備えている場合で、その掛止部がペダルアームの前側または後側の端縁に掛け止められた状態で上記係止爪を係止して取り付ければ良いため、連結ピン組付補助具をワンタッチで簡単にペダルアームに取り付けることができ、組付作業性への影響が少ない。
【0016】
第5発明は、ペダルアームの側面に長手板状のプレートが一体的に固設されている場合で、連結ピン組付補助具は、そのプレートに重ね合わされるように配置され、後端の掛止部がペダルアームの後側の端縁に掛け止められるとともに、前端部にはプレートを挟むように一対の側壁が設けられ、その側壁の先端に設けられた係止爪がプレートの上下の両端縁に係止されるため、連結ピン組付補助具を高い取付強度でペダルアームに取り付けることができる。
【0017】
第6発明は、係止爪の近傍に解除用突起が設けられているため、例えば作業者がその解除用突起を把持し、てこの原理で連結ピン組付補助具を弾性変形させながら係止爪の係止を容易に解除できるため、連結ピンを介して連結部材がペダルアームに連結された後に連結ピン組付補助具をペダルアームから簡単に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】組付補助クリップ(連結ピン組付補助具)を用いてクレビスピンによりクレビスが組み付けられた車両用ブレーキペダル装置を説明する図で、(a) は全体の斜視図、(b) はクレビスの斜視図、(c) はクレビスピンにβクリップが取り付けられた状態の斜視図、(d) はペダルアームの側面に固設されたストッパプレートの斜視図、(e) は本発明の一実施例である組付補助クリップの斜視図である。
図2図1の組付補助クリップが取り付けられた部分を、図1と反対側から見て拡大して示した斜視図である。
図3図2における III−III 矢視断面を拡大して示した断面図である。
図4図2におけるIV−IV矢視断面を拡大して示した断面図である。
図5図1の組付補助クリップの4面図で、(a) は平面図、(b) は左側面図、(c) は正面図、(d) は右側面図である。
図6図5の(c) におけるVI−VI矢視断面を拡大して示した断面図である。
図7図5の(c) における VII−VII 矢視断面を拡大して示した断面図である。
図8図1の組付補助クリップをペダルアームに取り付ける際の手順を説明する斜視図である。
図9図1の組付補助クリップを、解除つまみを用いてペダルアームから取り外す際の方法を説明する断面図である。
図10】正規のクレビスピンによりクレビスがペダルアームに組み付けられた場合の断面図である。
図11】長さ寸法が大きい他のクレビスピンが誤って用いられてクレビスがペダルアームに組み付けられた場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、例えば車両用のブレーキペダル装置やクラッチペダル装置などに好適に適用されるが、車両用以外の操作ペダル装置にも適用され得る。ペダルアームは、例えば1枚の金属板材にて構成されたものが好適に用いられるが、中空のペダルアームや合成樹脂製のペダルアームなどを用いることもできる。連結部材が連結される金属板材等の連結部がペダルアームと別体に構成されて、ぺダルアームに一体的に固設されているものでも良いなど、種々の態様が可能である。
【0020】
連結部材は例えばU字形状のクレビスで、連結ピンとしてのクレビスピンを用いてペダルアームに組み付ける場合に本発明は好適に適用されるが、板状の連結部材をペダルアームの片側の側面部分に連結したり、一対の側壁を有する断面U字形状のペダルアームのその側壁の間に連結したりする場合にも、本発明は適用され得る。抜止め部材としては、連結ピンが連結穴から突き出す先端部分に装着されるスナップリングやβクリップ、抜止めピン等が好適に用いられる。連結ピンは、例えば連結穴よりも大径の頭部を有して構成される。
【0022】
第3発明の連結ピン組付補助具は、所定の弾性を有する合成樹脂材料にて構成されており、係止爪を介して着脱可能に取り付けられるようになっているが、弾性を有する金属材料等の他の弾性材料を用いて構成することもできるし、係止爪を用いることなく溶接等によりペダルアームに一体的に固定されて使用されるようになっていても良い。これ等の連結ピン組付補助具は、連結ピンを介して連結部材がペダルアームに連結された後はペダルアームから取り外すことが望ましいが、ペダル操作に差し支えなければペダルアームに取り付けたままでも良い。
【0023】
第4発明の断面J字形状とは、端部に略180°回曲させられたU字形状部を備えていることを意味し、ペダルアームの端縁がこのU字形状の内部に嵌合される。U字形状は、半円弧状に回曲している場合だけでなく、コの字形状のように略直角に曲げられた角張ったものでも良い。第5発明のプレートは、例えば連結部材を介してブレーキブースタ等に連結される前にペダルアームが所定角度以上回動することを阻止して、ストロークセンサなどが損傷することを防止するストッパプレートなどで、溶接等によりペダルアームに一体的に固設される。他の発明の実施に際しては、このようなプレートは必ずしも必要なく、ペダルアームそのものに連結ピン組付補助具を取り付けてもよいし、そのペダルアームに一体的に固設された他の部材に連結ピン組付補助具を取り付けても良い。
【0024】
第6発明では、係止爪の近傍に解除用突起が設けられており、作業者がその解除用突起を把持して連結ピン組付補助具を簡単に取り外すことができるが、自動組付機等により解除用突起を利用して連結ピン組付補助具を機械的に取り外すこともできる。この解除用突起は、例えば第5発明のように一対の側壁に係止爪が設けられる場合、何れか一方の側壁の外側面に略垂直に外側へ突き出すように設けられる。なお、係止爪が設けられる一対の側壁の両方に解除用突起を設けることも可能である。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された車両の常用ブレーキ用のブレーキペダル装置10を説明する図で、(a) は全体の斜視図、(b) は図示しないブレーキブースタのオペレーティングロッドをペダルアーム12に連結するためのクレビス14の斜視図、(c) はそのクレビス14をペダルアーム12に取り付けるためのクレビスピン16にβクリップ18が取り付けられた状態の斜視図、(d) はペダルアーム12の左側面に固設されたストッパプレート20の斜視図、(e) はクレビスピン16を介してクレビス14をペダルアーム12に組み付ける際にペダルアーム12に装着して用いられる組付補助クリップ22の斜視図である。図2は、組付補助クリップ22が装着された部分を、図1と反対側から見て拡大して示した斜視図で、図3図2における III−III 矢視断面を拡大して示した断面図、図4図2におけるIV−IV矢視断面を拡大して示した断面図である。上記クレビス14は連結部材で、クレビスピン16は連結ピンで、βクリップ18は抜止め部材で、組付補助クリップ22は連結ピン組付補助具である。
【0026】
このブレーキペダル装置10は、支持軸30の軸心まわりに揺動可能にブラケット32に配設される操作ペダル34を備えている。操作ペダル34は、1枚の金属板材にて構成されているペダルアーム12を備えており、そのペダルアーム12の上端部において支持軸30に揺動可能に支持されているとともに、ペダルアーム12の下端部には運転者によって踏込み操作されるペダルシート36が一体的に固定されている。クレビス14はU字形状を成していて、一対の側板部40、42を備えているとともに、その側板部40、42にはそれぞれ連結穴41、43が設けられており、図3から明らかなように一対の側板部40、42がペダルアーム12の両側に位置する状態で、クレビスピン16により前記支持軸30の軸心と平行な軸心まわりに相対回動可能にペダルアーム12に連結される。ペダルアーム12には連結穴44が設けられており、クレビスピン16は、クレビス14の一方の側板部40の連結穴41、ペダルアーム12の連結穴44、およびクレビス14の他方の側板部42の連結穴43を順次挿通させられて、クレビス14をペダルアーム12に連結している。連結穴41、43、44は略同じ径寸法の円形穴である。
【0027】
クレビスピン16は、上記連結穴41、43、44よりも小径の円柱形状の軸部46と、連結穴41、43、44よりも大径の頭部48とを同軸上に一体に備えており、軸部46の先端側(頭部48と反対側)から前記連結穴41、44、43内に挿し通される。軸部46の先端部分の予め定められた装着位置、すなわち連結穴43から突き出す部分には、前記βクリップ18を装着するためのクリップ取付穴50が軸心と直交するように貫通して設けられており、このクリップ取付穴50にβクリップ18が取り付けられることにより、クレビスピン16が頭部48側へ抜け出すことが防止される。これにより、クレビス14がクレビスピン16を介してペダルアーム12に適切に組み付けられる。
【0028】
ペダルアーム12の一方の側面であって連結穴44よりも少し下方の位置には、前記ストッパプレート20が溶接等により一体的に固設されている。このストッパプレート20は長手板状の金属プレートで、長手方向の一端部がペダルアーム12から車両前側へ突き出すように設けられている。また、その前端部(一端部)には略直角に折り曲げられた当接部52が設けられており、その当接部52が前記ブラケット32に当接させられることにより、ペダルアーム12が踏込み方向へ所定角度以上回動することが阻止される。これにより、ペダルアーム12がクレビス14を介してブレーキブースタ等に連結される前に、ペダルアーム12が踏込み方向へ過大に回動してストロークセンサなどを損傷することが防止される。
【0029】
前記組付補助クリップ22は、ペダルアーム12にクレビスピン16を介してクレビス14を連結する際に、正規のクレビスピン16に比較して長さ寸法が大きい他のクレビスピン54(図3参照)を誤って組み付けることを防止するためのもので、クレビスピン16を用いてペダルアーム12にクレビス14を連結する前にペダルアーム12に装着されて用いられる。例えば、クレビスピン16を用いてクレビス14をペダルアーム12に連結するブレーキペダル装置10が、クレビスピン54が用いられる他のブレーキペダル装置と混ざって組付ラインに流される前で、ストッパプレート20がペダルアーム12に固定された直後等に、上記組付補助クリップ22をペダルアーム12に装着しておくことが望ましい。クレビスピン54は、全体の長さ寸法が正規のクレビスピン16よりも大きいだけでなく、先端からクリップ取付穴50までの寸法も正規のクレビスピン16に比較して大きい。
【0030】
図5は、上記組付補助クリップ22を単独で示す4面図で、(a) は平面図、(b) は左側面図、(c) は正面図、(d) は右側面図である。また、図6図5の(c) におけるVI−VI矢視断面を拡大して示した断面図、図7図5の(c) における VII−VII 矢視断面を拡大して示した断面図である。この組付補助クリップ22は、所定の弾性を有するポリプロピレン等の合成樹脂材料にて構成されているとともに、前記ストッパプレート20に対応する長手形状を成しており、そのストッパプレート20に重ね合わされるように配置される。そして、長手方向の一端部である後端部(図5(a) 、(c) における左端部)には、断面J字形状を成すように180°回曲させられた掛止部60が設けられ、ペダルアーム12の車両後側の端縁に掛け止められるようになっている。この掛止部60は、ペダルアーム12の端縁形状に対応して略直角に折り曲げられた形状を成しているとともに、開口側の内側端縁には傾斜面62が設けられており、その傾斜面62がペダルアーム12と係合させられることにより、掛止部60の開口内にペダルアーム12が円滑に嵌合されて、掛止部60がそのペダルアーム12の後端に掛止される。
【0031】
組付補助クリップ22の幅寸法、すなわち長手方向と直角な車両上下方向の寸法(図5(c) の上下方向の寸法)は、ストッパプレート20の幅寸法よりも大きいとともに、ペダルアーム12側の面には長手方向に沿って浅い凹溝64が設けられており、ペダルアーム12の側面との間の空間内にストッパプレート20を収容できるようになっている。この凹溝64は、長手方向の他端部である前端縁まで設けられているとともに、ペダルアーム12よりも車両前側へ突き出す前端部の一対の下側壁66および上側壁68はストッパプレート20の反対側まで突き出しており、その突出先端部の相対向する部分にはそれぞれ内向きに突き出すように係止爪70、72が一体に設けられている。そして、これ等の係止爪70、72が、図4に示すようにストッパプレート20の上下の両端縁に弾性的に係止されることにより、組付補助クリップ22がペダルアーム12に対して着脱可能に取り付けられる。この取付状態において、組付補助クリップ22はペダルアーム12と略平行な姿勢となり、凹溝64の両側の側壁の先端面がペダルアーム12の側面に略密着させられ、殆どガタつくことがないようにペダルアーム12に一体的に装着される。
【0032】
このような組付補助クリップ22は、図8に示す手順に従ってペダルアーム12にワンタッチで簡単に装着することができる。すなわち、先ず(a) に示すように組付補助クリップ22をストッパプレート20と略平行になる姿勢に保持して、矢印Aで示すようにスライド移動させて車両後方側からペダルアーム12に接近させ、(b) に示すようにペダルアーム12の後端縁を掛止部60内に嵌合させる。その後、ペダルアーム12に掛止部60を掛止(嵌合)した状態で、矢印Bで示すように前端部側をストッパプレート20に接近させるように回動させる。そして、係止爪70、72がストッパプレート20の上下の両端部を乗り越えるように、一対の側壁66、68が上下に拡開するように弾性変形させつつ押圧し、図8の(c) や前記図4に示すように係止爪70、72をストッパプレート20の上下の両端縁に係止させることにより装着作業が終了する。
【0033】
ここで、図6から明らかなように上側壁68の肉厚は下側壁66の肉厚よりも小さく、且つ係止爪72の引っ掛かり寸法(内側への突出寸法)は係止爪70の引っ掛かり寸法よりも大きいため、上記ストッパプレート20への装着作業時には、肉厚が薄くて比較的剛性が低い上側壁68が主として上方へ拡開するように弾性変形させられる。また、係止爪70、72が完全にストッパプレート20に係止された状態では、下側壁66は比較的剛性が高いとともに、上側壁68の係止爪72は引っ掛かり寸法が大きいことから、それ等の係止爪70、72の係止状態が適切に維持され、ペダルアーム12に対する組付補助クリップ22の取付強度が十分に確保される。
【0034】
上記下側壁66の外側面には、略垂直に下方へ突き出すように板状の解除つまみ74が一体に突設されており、図9に示すようにして組付補助クリップ22をペダルアーム12から簡単に取り外すことができる。すなわち、(a) に示すように、解除つまみ74を把持して矢印Cで示すようにストッパプレート20から離間する側へ回転させるように変位させると、組付補助クリップ22は、(b) に示すようにてこの原理で背面側の背部76等が撓み変形させられ、下側の係止爪70がストッパプレート20から外れる。具体的には、係止爪70とストッパプレート20との係止部が支点、解除つまみ74の把持部が力点、背部76等が作用点として機能し、てこの原理で背部76等が撓み変形させられることにより、係止爪70とストッパプレート20との係止が解除される。そして、(c) に示すように少しだけ上方へ持ち上げて上側の係止爪72をストッパプレート20から外した後、矢印D方向へ移動させるとともに車両後方側へスライドさせて前記掛止部60の掛止を解除することにより、組付補助クリップ22をペダルアーム12から取り外すことができる。解除つまみ74は解除用突起に相当する。
【0035】
一方、上記組付補助クリップ22には、長手方向において前記掛止部60に近接する側の部分であってペダルアーム12と反対の背面側に、突出規制突部80が上方へ突き出すように一体に設けられている。突出規制突部80は、図3に示されるように、組付補助クリップ22がペダルアーム12に装着された状態で前記連結穴44に達する位置まで突き出しているとともに、ペダルアーム12の側面から所定の突出規制寸法Sだけ離間した位置に当接面82が設けられている。言い換えれば、図5の(a) に示すように、前記凹溝64の両側の側壁の開口側の端面から突出規制寸法Sだけ離間した位置に当接面82が設けられている。この当接面82はペダルアーム12の側面と略平行であり、図3に示すようにクレビスピン16が組み付けられる際に、その先端が当接面82に当接させられることにより、そのクレビスピン16がペダルアーム12の側面から突き出す突出寸法が上記突出規制寸法Sに規制される。
【0036】
上記突出規制寸法Sは、正規のクレビスピン16が用いられた場合は前記クリップ取付穴50にβクリップ18を装着できるが、他のクレビスピン54が用いられた場合は、そのクリップ取付穴50にβクリップ18を装着することが阻害される寸法に定められている。具体的には、図3から明らかなように、正規のクレビスピン16の場合は、クリップ取付穴50が側板部42に設けられた連結穴43から突き出し、そのクリップ取付穴50にβクリップ18を装着できるのに対し、他のクレビスピン54の場合は、クリップ取付穴50が側板部42の連結穴43から突き出すことができず、そのクリップ取付穴50にβクリップ18を装着することができないように、突出規制寸法Sが定められる。
【0037】
したがって、この組付補助クリップ22をペダルアーム12に装着した状態で、クレビスピン16を用いてクレビス14をペダルアーム12に連結する組付作業を行えば、βクリップ18を装着できるか否かによって他のクレビスピン54を用いた誤った組付を確実に防止することができる。クレビスピン16を用いてクレビス14をペダルアーム12に連結するとともに、そのクレビスピン16のクリップ取付穴50にβクリップ18を装着する組付作業が適切に終了したら、前記図9に示すように解除つまみ74を把持して組付補助クリップ22をペダルアーム12から取り外せば良い。
【0038】
このように、組付補助クリップ22をペダルアーム12に装着した状態で、クレビスピン16を用いてクレビス14をペダルアーム12に連結する組付作業を行えば、連結穴41、44、43を挿通させられたクレビスピン16の先端が当接面82に当接させられることにより、そのクレビスピン16がペダルアーム12の側面から突き出す突出寸法が突出規制寸法Sに規制され、長さ寸法が大きい他のクレビスピン54が用いられた場合にはβクリップ18による抜止めが阻害される。具体的には、βクリップ18をクリップ取付穴50に装着できなくなる。したがって、βクリップ18を装着できるか否かによって、他のクレビスピン54を用いた誤った組付か否か容易に判別でき、その誤組付を確実に防止することができる。
【0039】
また、本実施例は、クレビスピン16の先端部分に設けられたクリップ取付穴50にβクリップ18が装着されることによりクレビスピン16が抜け止めされる場合で、他のクレビスピン54の先端からクリップ取付穴50までの寸法は正規のクレビスピン16に比較して大きい。そして、前記突出規制寸法Sは、正規のクレビスピン16が用いられた場合はクリップ取付穴50にβクリップ18を装着できるが、他のクレビスピン54が用いられた場合はクリップ取付穴50にβクリップ18を装着することができない寸法に定められている。このため、その他のクレビスピン54が誤って用いられた場合は、そのクレビスピン54に対してβクリップ18を装着できなくなり、そのクレビスピン54の誤組付が確実に防止される。
【0040】
また、本実施例の組付補助クリップ22は、所定の弾性を有する合成樹脂材料にて構成されており、一対の係止爪70、72を介して着脱可能に取り付けられるようになっているため、溶接やかしめ加工等の取付加工が不要であり、既存の組付設備に対して大きな変更を必要とすることなく好適に適用できる。また、クレビスピン16を介してクレビス14をペダルアーム12に連結した後に取り外すことができるため、操作ペダル34として不要な部材がペダルアーム12に残って邪魔になる恐れがないとともに、組付補助クリップ22の形状等の設計の自由度が高くなる。
【0041】
また、本実施例の組付補助クリップ22は、断面J字形状の掛止部60を備えており、図8に示すように、その掛止部60をペダルアーム12の後側の端縁に掛け止めた状態で係止爪70、72をストッパプレート20に係止して取り付ければ良いため、組付補助クリップ22をワンタッチで簡単にペダルアーム12に取り付けることができ、組付作業性への影響が少ない。
【0042】
また、本実施例では、ペダルアーム12の側面に長手板状のストッパプレート20が一体的に固設されており、組付補助クリップ22は、そのストッパプレート20に重ね合わされるように配置され、後端の掛止部60がペダルアーム12の後側の端縁に掛け止められるとともに、前端部にはストッパプレート20を挟むように一対の側壁66、68が設けられ、その側壁66、68の先端に設けられた係止爪70、72がストッパプレート20の上下の両端縁に係止されるため、組付補助クリップ22を高い取付強度でペダルアーム12に取り付けることができる。
【0043】
また、本実施例の組付補助クリップ22は、係止爪70が設けられた下側壁66の外側面に解除つまみ74が突設されているため、作業者がその解除つまみ74を把持し、てこの原理で組付補助クリップ22を弾性変形させながら係止爪70、72の係止を容易に解除できるため、クレビスピン16を介してクレビス14がペダルアーム12に連結された後に組付補助クリップ22をペダルアーム12から簡単に取り外すことができる。
【0044】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0045】
12:ペダルアーム 14:クレビス(連結部材) 16:クレビスピン(正規の連結ピン) 18:βクリップ(抜止め部材) 20:ストッパプレート(プレート) 22:組付補助クリップ(連結ピン組付補助具) 44:連結穴 50:クリップ取付穴(装着位置) 54:クレビスピン(他の連結ピン) 60:掛止部 66:下側壁 68:上側壁 70、72:係止爪 74:解除つまみ(解除用突起) 82:当接面 S:突出規制寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11