【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された車両の常用ブレーキ用のブレーキペダル装置10を説明する図で、(a) は全体の斜視図、(b) は図示しないブレーキブースタのオペレーティングロッドをペダルアーム12に連結するためのクレビス14の斜視図、(c) はそのクレビス14をペダルアーム12に取り付けるためのクレビスピン16にβクリップ18が取り付けられた状態の斜視図、(d) はペダルアーム12の左側面に固設されたストッパプレート20の斜視図、(e) はクレビスピン16を介してクレビス14をペダルアーム12に組み付ける際にペダルアーム12に装着して用いられる組付補助クリップ22の斜視図である。
図2は、組付補助クリップ22が装着された部分を、
図1と反対側から見て拡大して示した斜視図で、
図3は
図2における III−III 矢視断面を拡大して示した断面図、
図4は
図2におけるIV−IV矢視断面を拡大して示した断面図である。上記クレビス14は連結部材で、クレビスピン16は連結ピンで、βクリップ18は抜止め部材で、組付補助クリップ22は連結ピン組付補助具である。
【0026】
このブレーキペダル装置10は、支持軸30の軸心まわりに揺動可能にブラケット32に配設される操作ペダル34を備えている。操作ペダル34は、1枚の金属板材にて構成されているペダルアーム12を備えており、そのペダルアーム12の上端部において支持軸30に揺動可能に支持されているとともに、ペダルアーム12の下端部には運転者によって踏込み操作されるペダルシート36が一体的に固定されている。クレビス14はU字形状を成していて、一対の側板部40、42を備えているとともに、その側板部40、42にはそれぞれ連結穴41、43が設けられており、
図3から明らかなように一対の側板部40、42がペダルアーム12の両側に位置する状態で、クレビスピン16により前記支持軸30の軸心と平行な軸心まわりに相対回動可能にペダルアーム12に連結される。ペダルアーム12には連結穴44が設けられており、クレビスピン16は、クレビス14の一方の側板部40の連結穴41、ペダルアーム12の連結穴44、およびクレビス14の他方の側板部42の連結穴43を順次挿通させられて、クレビス14をペダルアーム12に連結している。連結穴41、43、44は略同じ径寸法の円形穴である。
【0027】
クレビスピン16は、上記連結穴41、43、44よりも小径の円柱形状の軸部46と、連結穴41、43、44よりも大径の頭部48とを同軸上に一体に備えており、軸部46の先端側(頭部48と反対側)から前記連結穴41、44、43内に挿し通される。軸部46の先端部分の予め定められた装着位置、すなわち連結穴43から突き出す部分には、前記βクリップ18を装着するためのクリップ取付穴50が軸心と直交するように貫通して設けられており、このクリップ取付穴50にβクリップ18が取り付けられることにより、クレビスピン16が頭部48側へ抜け出すことが防止される。これにより、クレビス14がクレビスピン16を介してペダルアーム12に適切に組み付けられる。
【0028】
ペダルアーム12の一方の側面であって連結穴44よりも少し下方の位置には、前記ストッパプレート20が溶接等により一体的に固設されている。このストッパプレート20は長手板状の金属プレートで、長手方向の一端部がペダルアーム12から車両前側へ突き出すように設けられている。また、その前端部(一端部)には略直角に折り曲げられた当接部52が設けられており、その当接部52が前記ブラケット32に当接させられることにより、ペダルアーム12が踏込み方向へ所定角度以上回動することが阻止される。これにより、ペダルアーム12がクレビス14を介してブレーキブースタ等に連結される前に、ペダルアーム12が踏込み方向へ過大に回動してストロークセンサなどを損傷することが防止される。
【0029】
前記組付補助クリップ22は、ペダルアーム12にクレビスピン16を介してクレビス14を連結する際に、正規のクレビスピン16に比較して長さ寸法が大きい他のクレビスピン54(
図3参照)を誤って組み付けることを防止するためのもので、クレビスピン16を用いてペダルアーム12にクレビス14を連結する前にペダルアーム12に装着されて用いられる。例えば、クレビスピン16を用いてクレビス14をペダルアーム12に連結するブレーキペダル装置10が、クレビスピン54が用いられる他のブレーキペダル装置と混ざって組付ラインに流される前で、ストッパプレート20がペダルアーム12に固定された直後等に、上記組付補助クリップ22をペダルアーム12に装着しておくことが望ましい。クレビスピン54は、全体の長さ寸法が正規のクレビスピン16よりも大きいだけでなく、先端からクリップ取付穴50までの寸法も正規のクレビスピン16に比較して大きい。
【0030】
図5は、上記組付補助クリップ22を単独で示す4面図で、(a) は平面図、(b) は左側面図、(c) は正面図、(d) は右側面図である。また、
図6は
図5の(c) におけるVI−VI矢視断面を拡大して示した断面図、
図7は
図5の(c) における VII−VII 矢視断面を拡大して示した断面図である。この組付補助クリップ22は、所定の弾性を有するポリプロピレン等の合成樹脂材料にて構成されているとともに、前記ストッパプレート20に対応する長手形状を成しており、そのストッパプレート20に重ね合わされるように配置される。そして、長手方向の一端部である後端部(
図5(a) 、(c) における左端部)には、断面J字形状を成すように180°回曲させられた掛止部60が設けられ、ペダルアーム12の車両後側の端縁に掛け止められるようになっている。この掛止部60は、ペダルアーム12の端縁形状に対応して略直角に折り曲げられた形状を成しているとともに、開口側の内側端縁には傾斜面62が設けられており、その傾斜面62がペダルアーム12と係合させられることにより、掛止部60の開口内にペダルアーム12が円滑に嵌合されて、掛止部60がそのペダルアーム12の後端に掛止される。
【0031】
組付補助クリップ22の幅寸法、すなわち長手方向と直角な車両上下方向の寸法(
図5(c) の上下方向の寸法)は、ストッパプレート20の幅寸法よりも大きいとともに、ペダルアーム12側の面には長手方向に沿って浅い凹溝64が設けられており、ペダルアーム12の側面との間の空間内にストッパプレート20を収容できるようになっている。この凹溝64は、長手方向の他端部である前端縁まで設けられているとともに、ペダルアーム12よりも車両前側へ突き出す前端部の一対の下側壁66および上側壁68はストッパプレート20の反対側まで突き出しており、その突出先端部の相対向する部分にはそれぞれ内向きに突き出すように係止爪70、72が一体に設けられている。そして、これ等の係止爪70、72が、
図4に示すようにストッパプレート20の上下の両端縁に弾性的に係止されることにより、組付補助クリップ22がペダルアーム12に対して着脱可能に取り付けられる。この取付状態において、組付補助クリップ22はペダルアーム12と略平行な姿勢となり、凹溝64の両側の側壁の先端面がペダルアーム12の側面に略密着させられ、殆どガタつくことがないようにペダルアーム12に一体的に装着される。
【0032】
このような組付補助クリップ22は、
図8に示す手順に従ってペダルアーム12にワンタッチで簡単に装着することができる。すなわち、先ず(a) に示すように組付補助クリップ22をストッパプレート20と略平行になる姿勢に保持して、矢印Aで示すようにスライド移動させて車両後方側からペダルアーム12に接近させ、(b) に示すようにペダルアーム12の後端縁を掛止部60内に嵌合させる。その後、ペダルアーム12に掛止部60を掛止(嵌合)した状態で、矢印Bで示すように前端部側をストッパプレート20に接近させるように回動させる。そして、係止爪70、72がストッパプレート20の上下の両端部を乗り越えるように、一対の側壁66、68が上下に拡開するように弾性変形させつつ押圧し、
図8の(c) や前記
図4に示すように係止爪70、72をストッパプレート20の上下の両端縁に係止させることにより装着作業が終了する。
【0033】
ここで、
図6から明らかなように上側壁68の肉厚は下側壁66の肉厚よりも小さく、且つ係止爪72の引っ掛かり寸法(内側への突出寸法)は係止爪70の引っ掛かり寸法よりも大きいため、上記ストッパプレート20への装着作業時には、肉厚が薄くて比較的剛性が低い上側壁68が主として上方へ拡開するように弾性変形させられる。また、係止爪70、72が完全にストッパプレート20に係止された状態では、下側壁66は比較的剛性が高いとともに、上側壁68の係止爪72は引っ掛かり寸法が大きいことから、それ等の係止爪70、72の係止状態が適切に維持され、ペダルアーム12に対する組付補助クリップ22の取付強度が十分に確保される。
【0034】
上記下側壁66の外側面には、略垂直に下方へ突き出すように板状の解除つまみ74が一体に突設されており、
図9に示すようにして組付補助クリップ22をペダルアーム12から簡単に取り外すことができる。すなわち、(a) に示すように、解除つまみ74を把持して矢印Cで示すようにストッパプレート20から離間する側へ回転させるように変位させると、組付補助クリップ22は、(b) に示すようにてこの原理で背面側の背部76等が撓み変形させられ、下側の係止爪70がストッパプレート20から外れる。具体的には、係止爪70とストッパプレート20との係止部が支点、解除つまみ74の把持部が力点、背部76等が作用点として機能し、てこの原理で背部76等が撓み変形させられることにより、係止爪70とストッパプレート20との係止が解除される。そして、(c) に示すように少しだけ上方へ持ち上げて上側の係止爪72をストッパプレート20から外した後、矢印D方向へ移動させるとともに車両後方側へスライドさせて前記掛止部60の掛止を解除することにより、組付補助クリップ22をペダルアーム12から取り外すことができる。解除つまみ74は解除用突起に相当する。
【0035】
一方、上記組付補助クリップ22には、長手方向において前記掛止部60に近接する側の部分であってペダルアーム12と反対の背面側に、突出規制突部80が上方へ突き出すように一体に設けられている。突出規制突部80は、
図3に示されるように、組付補助クリップ22がペダルアーム12に装着された状態で前記連結穴44に達する位置まで突き出しているとともに、ペダルアーム12の側面から所定の突出規制寸法Sだけ離間した位置に当接面82が設けられている。言い換えれば、
図5の(a) に示すように、前記凹溝64の両側の側壁の開口側の端面から突出規制寸法Sだけ離間した位置に当接面82が設けられている。この当接面82はペダルアーム12の側面と略平行であり、
図3に示すようにクレビスピン16が組み付けられる際に、その先端が当接面82に当接させられることにより、そのクレビスピン16がペダルアーム12の側面から突き出す突出寸法が上記突出規制寸法Sに規制される。
【0036】
上記突出規制寸法Sは、正規のクレビスピン16が用いられた場合は前記クリップ取付穴50にβクリップ18を装着できるが、他のクレビスピン54が用いられた場合は、そのクリップ取付穴50にβクリップ18を装着することが阻害される寸法に定められている。具体的には、
図3から明らかなように、正規のクレビスピン16の場合は、クリップ取付穴50が側板部42に設けられた連結穴43から突き出し、そのクリップ取付穴50にβクリップ18を装着できるのに対し、他のクレビスピン54の場合は、クリップ取付穴50が側板部42の連結穴43から突き出すことができず、そのクリップ取付穴50にβクリップ18を装着することができないように、突出規制寸法Sが定められる。
【0037】
したがって、この組付補助クリップ22をペダルアーム12に装着した状態で、クレビスピン16を用いてクレビス14をペダルアーム12に連結する組付作業を行えば、βクリップ18を装着できるか否かによって他のクレビスピン54を用いた誤った組付を確実に防止することができる。クレビスピン16を用いてクレビス14をペダルアーム12に連結するとともに、そのクレビスピン16のクリップ取付穴50にβクリップ18を装着する組付作業が適切に終了したら、前記
図9に示すように解除つまみ74を把持して組付補助クリップ22をペダルアーム12から取り外せば良い。
【0038】
このように、組付補助クリップ22をペダルアーム12に装着した状態で、クレビスピン16を用いてクレビス14をペダルアーム12に連結する組付作業を行えば、連結穴41、44、43を挿通させられたクレビスピン16の先端が当接面82に当接させられることにより、そのクレビスピン16がペダルアーム12の側面から突き出す突出寸法が突出規制寸法Sに規制され、長さ寸法が大きい他のクレビスピン54が用いられた場合にはβクリップ18による抜止めが阻害される。具体的には、βクリップ18をクリップ取付穴50に装着できなくなる。したがって、βクリップ18を装着できるか否かによって、他のクレビスピン54を用いた誤った組付か否か容易に判別でき、その誤組付を確実に防止することができる。
【0039】
また、本実施例は、クレビスピン16の先端部分に設けられたクリップ取付穴50にβクリップ18が装着されることによりクレビスピン16が抜け止めされる場合で、他のクレビスピン54の先端からクリップ取付穴50までの寸法は正規のクレビスピン16に比較して大きい。そして、前記突出規制寸法Sは、正規のクレビスピン16が用いられた場合はクリップ取付穴50にβクリップ18を装着できるが、他のクレビスピン54が用いられた場合はクリップ取付穴50にβクリップ18を装着することができない寸法に定められている。このため、その他のクレビスピン54が誤って用いられた場合は、そのクレビスピン54に対してβクリップ18を装着できなくなり、そのクレビスピン54の誤組付が確実に防止される。
【0040】
また、本実施例の組付補助クリップ22は、所定の弾性を有する合成樹脂材料にて構成されており、一対の係止爪70、72を介して着脱可能に取り付けられるようになっているため、溶接やかしめ加工等の取付加工が不要であり、既存の組付設備に対して大きな変更を必要とすることなく好適に適用できる。また、クレビスピン16を介してクレビス14をペダルアーム12に連結した後に取り外すことができるため、操作ペダル34として不要な部材がペダルアーム12に残って邪魔になる恐れがないとともに、組付補助クリップ22の形状等の設計の自由度が高くなる。
【0041】
また、本実施例の組付補助クリップ22は、断面J字形状の掛止部60を備えており、
図8に示すように、その掛止部60をペダルアーム12の後側の端縁に掛け止めた状態で係止爪70、72をストッパプレート20に係止して取り付ければ良いため、組付補助クリップ22をワンタッチで簡単にペダルアーム12に取り付けることができ、組付作業性への影響が少ない。
【0042】
また、本実施例では、ペダルアーム12の側面に長手板状のストッパプレート20が一体的に固設されており、組付補助クリップ22は、そのストッパプレート20に重ね合わされるように配置され、後端の掛止部60がペダルアーム12の後側の端縁に掛け止められるとともに、前端部にはストッパプレート20を挟むように一対の側壁66、68が設けられ、その側壁66、68の先端に設けられた係止爪70、72がストッパプレート20の上下の両端縁に係止されるため、組付補助クリップ22を高い取付強度でペダルアーム12に取り付けることができる。
【0043】
また、本実施例の組付補助クリップ22は、係止爪70が設けられた下側壁66の外側面に解除つまみ74が突設されているため、作業者がその解除つまみ74を把持し、てこの原理で組付補助クリップ22を弾性変形させながら係止爪70、72の係止を容易に解除できるため、クレビスピン16を介してクレビス14がペダルアーム12に連結された後に組付補助クリップ22をペダルアーム12から簡単に取り外すことができる。
【0044】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。