(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記完了状態判定手段は、前記エンジン回転数が所定値以上になったことを条件として、再始動が完了したと判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
前記制御量は、車輪ブレーキ内のブレーキ液圧を調圧可能な比例電磁弁に供給する電流値であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施形態]
次に、本発明の第1の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、車両用ブレーキ液圧制御装置100は、車両CRの各車輪Wに付与する制動力(ブレーキ液圧)を適宜制御するためのものであり、油路(液圧路)や各種部品が設けられた液圧ユニット10と、液圧ユニット10内の各種部品を適宜制御するための制御部20とを主に備えている。
【0017】
また、この車両用ブレーキ液圧制御装置100の制御部20には、車輪Wの車輪速度を検出する車輪速センサ91と、ブレーキペダルBPの踏込・解除(ON・OFF)を検出するブレーキペダルセンサ92と、エンジンの制御を行うためのECU(Engine Control Unit)93が接続されている。各センサ91,92の検出結果やECU93の情報は、制御部20に出力される。
【0018】
制御部20は、例えば、CPU、RAM、ROMおよび入出力回路を備えており、車輪速センサ91、ブレーキペダルセンサ92、ECU93からの入力と、ROMに記憶されたプログラムやデータに基づいて各演算処理を行うことによって、制御を実行する。また、ホイールシリンダHは、マスタシリンダMCおよび車両用ブレーキ液圧制御装置100により発生されたブレーキ液圧を各車輪Wに設けられた車輪ブレーキFR,FL,RR,RLの作動力に変換する液圧装置であり、それぞれ配管を介して車両用ブレーキ液圧制御装置100の液圧ユニット10に接続されている。
【0019】
図2に示すように、車両用ブレーキ液圧制御装置100の液圧ユニット10は、運転者がブレーキペダルBPに加える踏力に応じたブレーキ液圧を発生する液圧源であるマスタシリンダMCと、車輪ブレーキFR,FL,RR,RLとの間に配置されている。液圧ユニット10は、ブレーキ液が流通する油路を有する基体であるポンプボディ10a、油路上に複数配置された入口弁1、出口弁2などから構成されている。マスタシリンダMCの二つの出力ポートM1,M2は、ポンプボディ10aの入口ポート121に接続され、ポンプボディ10aの出口ポート122が、各車輪ブレーキFR,FL,RR,RLに接続されている。そして、通常時はポンプボディ10a内の入口ポート121から出口ポート122までが連通した油路となっていることで、ブレーキペダルBPの踏力が各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに伝達されるようになっている。
【0020】
ここで、出力ポートM1から始まる油路は、前輪左側の車輪ブレーキFLと後輪右側の車輪ブレーキRRに通じており、出力ポートM2から始まる油路は、前輪右側の車輪ブレーキFRと後輪左側の車輪ブレーキRLに通じている。なお、以下では、出力ポートM1から始まる油路を「第一系統」と称し、出力ポートM2から始まる油路を「第二系統」と称する。
【0021】
液圧ユニット10には、その第一系統に各車輪ブレーキFL,RRに対応して二つの制御弁手段Vが設けられており、同様に、その第二系統に各車輪ブレーキRL,FRに対応して二つの制御弁手段Vが設けられている。また、この液圧ユニット10には、第一系統および第二系統のそれぞれに、リザーバ3、ポンプ4、オリフィス5a、調圧弁(レギュレータ)R、吸入弁7が設けられている。また、液圧ユニット10には、第一系統のポンプ4と第二系統のポンプ4とを駆動するための共通のモータ9が設けられている。このモータ9は、回転数制御可能なモータであり、本実施形態では、デューティ制御により回転数制御が行われる。また、本実施形態では、第二系統にのみ圧力センサ8が設けられている。
【0022】
なお、以下では、マスタシリンダMCの出力ポートM1,M2から各調圧弁Rに至る油路を「出力液圧路A1」と称し、第一系統の調圧弁Rから車輪ブレーキFL,RRに至る油路および第二系統の調圧弁Rから車輪ブレーキRL,FRに至る油路をそれぞれ「車輪液圧路B」と称する。また、出力液圧路A1からポンプ4に至る油路を「吸入液圧路C」と称し、ポンプ4から車輪液圧路Bに至る油路を「吐出液圧路D」と称し、さらに、車輪液圧路Bから吸入液圧路Cに至る油路を「開放路E」と称する。
【0023】
制御弁手段Vは、マスタシリンダMCまたはポンプ4から車輪ブレーキFL,RR,RL,FR(詳細には、ホイールシリンダH)への液圧の行き来を制御する弁であり、ホイールシリンダHの圧力を増加、保持または低下させることができる。そのため、制御弁手段Vは、入口弁1、出口弁2、チェック弁1aを備えて構成されている。
【0024】
入口弁1は、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRとマスタシリンダMCとの間、すなわち車輪液圧路Bに設けられた常開型の比例電磁弁である。そのため、入口弁1に流す駆動電流の値に応じて、入口弁1の上下流の差圧が調整可能となっている。
【0025】
出口弁2は、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRと各リザーバ3との間、すなわち車輪液圧路Bと開放路Eとの間に介設された常閉型の電磁弁である。出口弁2は、通常時に閉塞されているが、車輪Wがロックしそうになったときに制御部20により開放されることで、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに作用するブレーキ液圧を各リザーバ3に逃がす。
【0026】
チェック弁1aは、各入口弁1に並列に接続されている。このチェック弁1aは、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RR側からマスタシリンダMC側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、ブレーキペダルBPからの入力が解除された場合に、入口弁1を閉じた状態にしたときにおいても、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RR側からマスタシリンダMC側へのブレーキ液の流入を許容する。
【0027】
リザーバ3は、開放路Eに設けられており、各出口弁2が開放されることによって逃がされるブレーキ液を一時的に貯留する機能を有している。また、リザーバ3とポンプ4との間には、リザーバ3側からポンプ4側へのブレーキ液の流れのみを許容するチェック弁3aが介設されている。
【0028】
ポンプ4は、出力液圧路A1に通じる吸入液圧路Cと車輪液圧路Bに通じる吐出液圧路Dとの間に介設されており、リザーバ3で貯留されているブレーキ液を吸入して吐出液圧路Dに吐出する機能を有している。これにより、リザーバ3により吸収されたブレーキ液をマスタシリンダMCに戻すことができるとともに、例えばブレーキペダルBPの操作の有無に関わらずブレーキ液圧を発生して、車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに制動力を発生することができる。
なお、ポンプ4によるブレーキ液の吐出量は、モータ9の回転数(デューティ比)に依存している。すなわち、モータ9の回転数(デューティ比)が大きくなると、ポンプ4によるブレーキ液の吐出量も大きくなる。
【0029】
オリフィス5aは、ポンプ4から吐出されたブレーキ液の圧力の脈動を減衰させている。
【0030】
調圧弁Rは、通常時に出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流れを許容するとともに、ポンプ4が発生したブレーキ液圧によりホイールシリンダH側の圧力を増加するときには、この流れを遮断しつつ、車輪液圧路BおよびホイールシリンダH側の圧力を設定値以下に調節する機能を有し、切換弁6およびチェック弁6aを備えて構成されている。
【0031】
切換弁6は、マスタシリンダMCに通じる出力液圧路A1と各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに通じる車輪液圧路Bとの間に介設された常開型の比例電磁弁である。詳細は図示しないが、切換弁6の弁体は、付与される電流に応じた電磁力によって閉弁方向へ付勢されており、車輪液圧路Bの圧力が出力液圧路A1の圧力より所定値(この所定値は、付与される電流による)以上高くなった場合には、車輪液圧路Bから出力液圧路A1へ向けてブレーキ液が逃げることで、車輪液圧路B側の圧力(車輪ブレーキFL,FR,RL,RR内のブレーキ液圧)が所定圧に調整される。すなわち、切換弁6に入力される駆動電流の値(指示電流値)に応じて閉弁力を任意に変更することで、切換弁6の上下流の差圧が調整されて、車輪液圧路Bの圧力を設定値以下に調節可能となっている。
【0032】
チェック弁6aは、各切換弁6に並列に接続されている。このチェック弁6aは、出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流れを許容する一方向弁である。
【0033】
吸入弁7は、吸入液圧路Cに設けられた常閉型の電磁弁であり、吸入液圧路Cを開放する状態および遮断する状態を切り換えるものである。吸入弁7は、例えば、ポンプ4によって各車輪ブレーキFL,FR,RL,RR内の液圧を加圧するときに制御部20の制御により開弁される。
【0034】
圧力センサ8は、出力液圧路A1のブレーキ液圧を検出するものであり、その検出結果は制御部20に入力される。
【0035】
次に、制御部20の詳細について説明する。
図3に示すように、制御部20は、圧力センサ8、車輪速センサ91、ブレーキペダルセンサ92およびECU93から入力された信号(情報)に基づいて、主に調圧弁R(切換弁6)の開閉動作を制御することで、エンジンの停止中においてブレーキ液圧を保持するように構成されている。制御部20は、再始動判定手段21と、完了状態判定手段22と、記憶部23と、液圧保持手段24とを備えている。
【0036】
再始動判定手段21は、車輪速センサ91やECU93からの情報に基づいて、アイドリングストップの状態からエンジンの再始動が行われたか否かを判定する機能を有している。詳しくは、再始動判定手段21は、車輪速センサ91やECU93からの情報に基づいて、アイドリングストップ中でなく、かつ、ECU93からエンジンを再始動するための再始動信号が入力された場合に、エンジンの再始動が行われたと判定する。
【0037】
ここで、アイドリングストップ中であるか否かの判定は、公知の手法で行えばよい。なお、この判定は、例えば、車輪速度やエンジン回転数が所定値以下で、且つ、イグニッションスイッチがON状態である等、車両に基づいて適宜設定されている。
【0038】
そして、再始動判定手段21は、エンジンの再始動が行われたと判定した場合には、そのことを示す再始動判定信号を液圧保持手段24に出力する。
【0039】
完了状態判定手段22は、エンジンの再始動が完了したか否かを判定する機能を有している。具体的に、完了状態判定手段22は、
図5(a)の時刻t7に示すように、エンジン回転数が所定値N1以上になったことを条件として、エンジンの再始動が完了したと判定するように構成されている。
【0040】
ここで、エンジンの再始動時(時刻t5)からエンジン回転数が所定値N1になるまでの時間(時刻t5〜t7間)や、電源電圧が略100%まで回復するまでの時間(時刻t5〜t7間)は、温度条件等に関わらず略一定となっている。そのため、エンジン回転数を見てエンジンの再始動の完了を判定したときには、電源電圧(ECU93や制御部20に電圧を印加する電源の電圧)が正常状態に回復している。
【0041】
なお、本実施形態では、所定値N1を、エンジンの再始動時(時刻t5)に一時的に下がった電源電圧の出力が略100%まで復帰したときのエンジン回転数に設定しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、所定値N1を、一時的に下がった電源電圧の出力が略80%まで復帰したときのエンジン回転数に設定してもよい。
【0042】
そして、
図3に示すように、完了状態判定手段22は、エンジンの再始動が完了したと判定した場合には、そのことを示す完了信号を液圧保持手段24に出力する。
【0043】
記憶部23には、車両CRの停車状態を維持するために必要なブレーキ液圧に対応した第1制御量の一例としての第1電流値I1(
図5(e)参照)と、当該第1電流値よりも大きな第2制御量の一例としての第2電流値I2(
図5(e)参照)とが記憶されている。なお、第2電流値I2は、エンジンの再始動時に一時的に下がる電源電圧の影響によって調圧弁Rに流れる実際の電流値(
図5(e)で破線で示す電流値)が第1電流値I1を下回らないような値であればよく、実験やシミュレーション等によって適宜設定される。
【0044】
液圧保持手段24は、エンジンの再始動が行われたことを条件として第2電流値I2でブレーキ液圧を保持し、再始動が完了したことを条件として第1電流値I1でブレーキ液圧を保持する機能を有している。具体的には、液圧保持手段24は、再始動判定手段21から再始動判定信号が入力されたときには、記憶部23から第2電流値I2を読み込んで、当該第2電流値I2を指示電流値として調圧弁Rを制御する。
【0045】
なお、本実施形態においては、液圧保持手段24は、エンジンがアイドリングストップ中であり、かつ、マスタシリンダ圧(ホイールシリンダ圧)が所定値P1(
図5(d)の時刻t4参照)以下となった場合にも、記憶部23から第2電流値I2を読み込んで、当該第2電流値I2を指示電流値として調圧弁Rを制御するようになっている(
図5(e)の時刻t4参照)。ここで、アイドリングストップ中において、調圧弁Rに電流が流れていないときには、マスタシリンダ圧とホイールシリンダ圧は、略同じであるので、液圧保持手段24は、マスタシリンダ圧が所定値P1以下になったか否かを判定することで、実質、ホイールシリンダ圧が所定値P1以下になったか否かを判定している。
【0046】
また、液圧保持手段24は、完了状態判定手段22から完了信号が入力されたときには、記憶部23から第1電流値I1を読み込んで、当該第1電流値I1を指示電流値として調圧弁Rを制御する。さらに、液圧保持手段24は、完了状態判定手段22から完了信号が入力されている際には、エンジン回転数に基づいてエンジンの駆動力が安定したか否かを判定し、安定した場合には、指示電流値を第1電流値I1から漸減させるようになっている。なお、エンジンの駆動力が安定したか否かの判定方法としては、例えば、エンジン回転数の単位時間当たりの変化量が所定値以下となったか否かを判定する方法や、トルクコンバーターの出力が一定値以上になったか否かを判定する方法が挙げられる。
【0047】
次に、制御部20の動作を、
図4のフローチャートを参照して詳細に説明する。制御部20は、
図4のフローチャートを繰り返し実行している。
【0048】
図4に示す制御では、制御部20は、まず、アイドリングストップ中であるか否かを判定する(S1)。ステップS1において、アイドリングストップ中であると判定した場合には(Yes)、制御部20は、マスタシリンダ圧が所定値P1以下であるか否かを判断する(S2)。
【0049】
ステップS2において、マスタシリンダ圧が所定値P1よりも高い場合には(No)、制御部20は、調圧弁Rに電流を流さずにOFF状態(開状態)として、そのまま本制御を終了する。ステップS2において、マスタシリンダ圧が所定値P1以下である場合には(Yes)、制御部20は、指示電流値を第2電流値I2に設定する(S4)。
【0050】
ステップS4の後、制御部20は、エンジン回転数が所定値N1以上か否かを判定する(S5)。ステップS5において、エンジン回転数が所定値N1未満である場合には(No)、制御部20は、ステップS4で設定した指示電流値(第2電流値I2)で調圧弁Rを制御する(S9)。
【0051】
ステップS5において、エンジン回転数が所定値N1以上である場合には(Yes)、制御部20は、エンジンの駆動力が安定したか否かを判定する(S6)。ステップS6において、駆動力が安定していない場合には(No)、制御部20は、指示電流値を第1電流値I1に切り替えて(S7)、この指示電流値で調圧弁Rを制御する(S9)。
【0052】
ステップS6において、エンジンの駆動力が安定した場合には(Yes)、制御部20は、指示電流値を前回値から所定量下げた値に設定し(S8)、この指示電流値で調圧弁Rを制御する(S9)。
【0053】
また、ステップS1において、アイドリングストップ中ではない場合には(No)、制御部20は、再始動時か否か(再始動が開始された時点か否か)を判定する(S11)。ステップS11において、再始動時である場合には(Yes)、制御部20は、指示電流値を第2電流値I2に設定する(S4)。
【0054】
ステップS11において、再始動時でない場合には(No)、制御部20は、調圧弁Rが駆動中であるか否かを判定する(S10)。ステップS10において、調圧弁Rが駆動中である場合には(Yes)、ステップS4の処理に進む。ステップS10において、調圧弁Rが駆動中でない場合には(No)、制御部20は、そのまま本制御を終了する。
【0055】
次に、エンジンがアイドリングストップ中の状態から再始動された場合における調圧弁Rへの指示電流値の設定の一例について
図5を参照して説明する。
【0056】
図5(c)に示すように、運転者がブレーキペダルBPを踏むことによって車両CRを停車させた後、アイドリングストップの条件が揃うと、エンジンが自動停止して、
図5(a)に示すように、エンジン回転数がゼロになる(時刻t2)。その後、アイドリングストップ中において運転者がブレーキペダルBPを踏む力を弱めると、
図5(d)に示すように、ホイールシリンダ圧(マスタシリンダ圧)が徐々に下がっていく(時刻t3〜t4間)。
【0057】
そして、時刻t4においてホイールシリンダ圧(マスタシリンダ圧)が所定値P1になると、
図5(e)に示すように、指示電流値が第2電流値I2(所定値P1に対応した第1電流値I1よりも高い値)に設定され、この指示電流値で調圧弁Rが制御される。これにより、
図5(d)に示すように、ホイールシリンダ圧が所定値P1に確実に保持される。
【0058】
その後、エンジンが再始動されると(時刻t5)、
図5(b)に示すように、電源電圧が一時的に下がる。この再始動の際には、
図5(e)に示すように、指示電流値は第2電流値I2に設定されたままであるので、電源電圧の一時的な落ち込みにより図に破線で示すように実際の電流値が下がっても、この電流値が第1電流値I1よりも低くなるのを抑えることができる。
【0059】
これにより、
図5(d)に示すように、エンジンの再始動時において、電源電圧が下がった場合であっても、ホイールシリンダ圧が所定値P1に確実に保持される。その後、
図5(a)に示すように、エンジン回転数が所定値N1になると(時刻t7)、
図5(e)に示すように、指示電流値が第2電流値I2から第1電流値I1に切り替えられる。
【0060】
これにより、エンジン回転数が所定値N1になったとき、すなわち電源電圧が正常状態に回復したときには、第2電流値I2よりも小さな第1電流値I1に切り替えるので、大きな第2電流値I2のまま調圧弁Rの制御を継続することによる調圧弁Rの発熱や負荷を軽減することができる。なお、このように第2電流値I2よりも小さな第1電流値I1に切り替えたときには、電源電圧が正常状態に回復しているので、
図5(d)に示すように、ホイールシリンダ圧が所定値P1に確実に保持される。
【0061】
その後は、
図5(a)に示すように、エンジンの駆動力(エンジン回転数)が安定すると(時刻t8)、
図5(e)に示すように、指示電流値を漸減していき、これに伴い、
図5(d)に示すように、ホイールシリンダ圧を漸減していく。
【0062】
以上、本実施形態では、前述した効果に加え、以下のような効果を得ることができる。
エンジン回転数に基づいて再始動の判定を行うことで、適切に再始動が完了したか否かを判定することができる。つまり、例えば電源電圧の電圧値に基づいて再始動の完了の判定を行う場合には電源電圧が他の要因で変動して誤判定するおそれがあるが、エンジン回転数に基づいて再始動の判定を行うことで、誤判定を防止することができる。
【0063】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態は、前記した第1の実施形態に係る制御部20の一部を変更したものであるため、第1の実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略することとする。
【0064】
図6に示すように、第2の実施形態に係る制御部20Aは、第1の実施形態と同様の再始動判定手段21および完了状態判定手段22を有する他、第1の実施形態とは多少異なる記憶部23Aおよび液圧保持手段24Aを有している。
【0065】
記憶部23Aには、第1の実施形態と同様の第1電流値I1および第2電流値I2が記憶されている他、第1電流値I1よりも大きく、第2電流値I2よりも小さな第3電流値I3(
図8(e)参照)がさらに記憶されている。なお、第3電流値I3は、エンジントルクが立ち上がった時点(電源電圧が略100%まで回復していない時点)において調圧弁Rに流れる実際の電流値が第1電流値I1を下回らないような値であればよく、実験やシミュレーション等によって適宜設定される。
【0066】
液圧保持手段24Aは、エンジンが再始動してからエンジントルクが立ち上がる前には、第2電流値I2でブレーキ液圧(ホイールシリンダ圧)を保持し、エンジントルクが立ち上がったことを条件として第2電流値I2から第3電流値I3に切り替え、再始動が完了したことを条件として第3電流値I3から第1電流値I1に切り替えるように構成されている。具体的には、液圧保持手段24Aは、再始動判定手段21から再始動信号が入力されているときには、記憶部23Aから第2電流値I2を読み込んで、当該第2電流値I2を指示電流値として調圧弁Rを制御する。
【0067】
また、液圧保持手段24Aは、ECU93から入力されるエンジントルクが所定値T1(
図8(f)参照)以上になったか否か(立ち上がったか否か)を判定し、所定値T1以上になった場合には、記憶部23Aから第3電流値I3を読み込んで、当該第3電流値I3を指示電流値として調圧弁Rを制御する。
【0068】
ここで、エンジンの再始動時(時刻t5)からエンジントルクが立ち上がるまでの時間(時刻t5〜t6間)や、電源電圧がある程度(略50%)回復するまでの時間(時刻t5〜t6間)は、温度条件等に関わらず略一定となっている。そのため、エンジントルクの立ち上がりを見ることで、電源電圧がある程度回復したか否かを判断することが可能となっている。
【0069】
そして、第2の実施形態では、このように電源電圧がある程度回復した場合に、指示電流値を第2電流値I2から、これよりも小さな第3電流値I3に切り替えるので、第1の実施形態に比べ、調圧弁Rの発熱や負荷をより抑えることが可能となっている。
【0070】
さらに、液圧保持手段24Aは、完了状態判定手段22から完了信号が入力されたときには、記憶部23Aから第1電流値I1を読み込んで、当該第1電流値I1を指示電流値として調圧弁Rを制御する。なお、液圧保持手段24Aのアイドリングストップ中の制御や、指示電流値を第1電流値I1から漸減させる制御は、第1の実施形態と同様となっている。
【0071】
具体的に、第2実施形態に係る制御部20Aは、
図7に示すフローチャートに従って制御を実行する。
図7に示すフローチャートは、
図4に示すフローチャートに新たな処理(S21,S22)を加えたものなので、
図4のフローチャートと同じ処理については説明を省略することとする。
【0072】
制御部20は、ステップS4で指示電流値を第2電流値に設定した後、エンジントルクが所定値T1以上であるか否かを判定する(S21)。ステップS21において、エンジントルクが所定値T1未満である場合には(No)、制御部20は、ステップS4で設定した第2電流値で調圧弁Rを制御する(S9)。
【0073】
また、ステップS21において、エンジントルクが所定値T1以上である場合には(Yes)、制御部20は、エンジン回転数が所定値N1以上であるか否かを判定する(S5)。ステップS5において、エンジン回転数が所定値N1未満である場合には(No)、指示電流値を第3電流値I3に切り替えて(S22)、この第3電流値I3で調圧弁Rを制御する(S9)。
【0074】
次に、エンジンがアイドリングストップ中の状態から再始動された場合における調圧弁Rへの指示電流値の設定の一例について
図8を参照して説明する。なお、
図8の例は、
図5の例とは異なり、アイドリングストップ中において運転者によるブレーキペダルBPの踏込量が維持された場合についての例を示す。
【0075】
アイドリングストップ中(時刻t2〜t5間)において、運転者によるブレーキペダルBPの踏込量が維持されている場合には、
図8(d)に示すように、ホイールシリンダ圧が所定値P1以上の値を保つため、
図8(e)に示すように、調圧弁Rの指示電流値はゼロとなる。そして、時刻t5において、エンジンが再始動されると、
図8(e)に示すように、調圧弁Rの指示電流値が第2電流値I2に設定される。
【0076】
これにより、エンジンの再始動時に電源電圧が一時的に下がっても、指示電流値が第2電流値I2となることで、第1の実施形態と同様に、ホイールシリンダ圧を確実に所定値P1以上に保持することができる。その後、
図8(f)に示すように、エンジントルクが所定値T1以上になると(時刻t6)、指示電流値が第3電流値I3に切り替わるので、調圧弁Rの発熱等を抑えることができる。
【0077】
また、時刻t6において、指示電流値を第1電流値I1まで下げないので、仮に電源電圧の回復が遅れて実際の電流値が指示電流値よりも小さな値になったとしても、第1電流値I1よりも大きな第3電流値I3によって、実際の電流値が第1電流値I1よりも下回るのを抑えることができる。
【0078】
その後は、第1の実施形態と同様に、
図8(a)に示すように、エンジン回転数が所定値N1以上になったときに(時刻t7)、
図8(e)に示すように、指示電流値が第1電流値I1に切り替わる。
【0079】
なお、本発明は前記各実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記各実施形態では、エンジン回転数が所定値N1以上になったことを条件としてエンジンの再始動が完了したと判定したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、電源電圧の電圧値が所定値以上になったことを条件としてエンジンの再始動が完了したと判定してもよいし、エンジンの再始動が行われた時点から所定時間が経過したことを条件としてエンジンの再始動が完了したと判定してもよい。
【0080】
前記各実施形態では、制御量として、調圧弁Rに供給する電流値を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、アイドリングストップ中において電動ブースタでブレーキ液圧を保持する場合には、当該電動ブースタに供給する電流値などであってもよい。