特許第5767172号(P5767172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767172
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】油井管継手の気密性評価試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/08 20060101AFI20150730BHJP
   G01N 3/18 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   G01M3/08
   G01N3/18
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-155470(P2012-155470)
(22)【出願日】2012年7月11日
(65)【公開番号】特開2014-16306(P2014-16306A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2014年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄住金テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089462
【弁理士】
【氏名又は名称】溝上 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100116344
【弁理士】
【氏名又は名称】岩原 義則
(74)【代理人】
【識別番号】100129827
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 進
(72)【発明者】
【氏名】安藤 吉則
(72)【発明者】
【氏名】高野 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】中村 匡志
(72)【発明者】
【氏名】宇土 直樹
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−275634(JP,A)
【文献】 特開昭61−139738(JP,A)
【文献】 特開平07−092049(JP,A)
【文献】 特開平06−132230(JP,A)
【文献】 特開昭62−206429(JP,A)
【文献】 米国特許第6026675(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/08
G01N 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状の供試体に圧縮及び引張の軸力を付与する機構と、前記供試体の温度を任意に設定する加熱・冷却機構と、を備えた油井管継手の気密性試験装置であって、
前記加熱・冷却機構は、前記供試体の被加熱部を外周部より誘導加熱する構成で、この誘導加熱した前記被加熱部における鉛直方向上部の一部分を冷却する局所冷却装置を備えたものであることを特徴とする油井管継手の気密性評価試験装置。
【請求項2】
さらに、前記供試体の内部に内圧を負荷する機構を備えたことを特徴とする請求項1に記載の油井管継手の気密性評価試験装置。
【請求項3】
前記局所冷却装置は、前記供試体に接触する導管内に冷却媒体を循環させることにより構成したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の油井管継手の気密性評価試験装置。
【請求項4】
連続的に測定した供試体の前記被加熱部における鉛直方向上部及び鉛直方向下部の温度に基づき、鉛直方向上部の温度と鉛直方向下部の温度の差が所定の範囲内となるように前記局所冷却装置を制御する制御用コンピュータをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の油井管継手の気密性評価試験装置。
【請求項5】
前記加熱・冷却機構は、供試体の前記被加熱部を鉛直方向の上方から冷却媒体を吹き付けることにより行う冷却装置を更に備えたものであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の油井管継手の気密性評価試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内圧を負荷した状態での油井管継手の気密性評価試験を、円周方向の偏熱を抑制して実施することができる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、温度・軸力・内圧についてサーマルウェル状況をシミュレートし、油井管継手に実使用で生じるものと同一の繰り返し歪みを与えて気密性の評価試験を行う装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、油井管継手のガス漏れ試験装置において、高温・高圧雰囲気から急冷状態でのガスリーク特性を測定する際に、試験時間の迅速化のために、液体窒素を用いて冷却する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、幅が異なる複数種類のコイル導体を組み合わせる際に、絶縁材の厚さで規定される隣接するコイル導体間の間隔を調整することで、パイプなどの被加熱物を長手方向に均一加熱する誘導加熱技術が開示されている。
【0005】
前記特許文献1,2に記載された試験を行う際に、例えば特許文献3で開示されたような誘導加熱装置を用いて供試体を自己発熱させて加熱する場合、環状炉等を使用する場合に比べて加熱、均熱に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0006】
ところで、油井管継手評価における国際規格であるISO 13679(2002)では、135℃又は180℃において供試体の上部と下部のばらつきが±15℃以内であることが規定されている。
【0007】
しかしながら、例えば高圧ガスを充填して内圧を負荷した状態で、供試体を180℃まで誘導加熱して試験した場合、図5(b)に示すように、供試体の上部と下部の温度の平均値が目標温度である180℃に達した時点において、供試体の鉛直方向の上部の温度が下部の温度よりも50℃も高くなった。また、供試体の上部と下部の温度の平均値が目標温度である180℃に達した時点から90分以上経過した後も前記温度差は15℃以内にならなかった。
【0008】
また、内圧を付加しない状態で、前記と同じ試験を行った場合は、図6(b)に示すように、供試体の上部と下部の温度の平均値が目標温度である180℃に達した時点においては、前記温度差は15℃以内でありISO 13679の基準を満たしていたが、その後、前記温度差は徐々に増加し、供試体の上部と下部の温度の平均値が目標温度である180℃に達した時点から30分経過後には15℃より大きくなり、前記基準を満たさなくなった。
【0009】
これは、誘導加熱による供試体の自己発熱により生じた熱が供試体内部を伝わって供試体上部へ伝熱することにより下部との間で偏熱が発生したものと考えられる。また、高圧ガスを充填して内圧を負荷した状態では、前記に加えて、前記自己発熱が高圧ガスに伝わって供試体の内部で高圧ガスの対流が発生し、加熱された高圧ガスが上部へ移動して鉛直方向の上部を高温となすことも要因となると考えられる。
【0010】
しかるに、前記特許文献1〜3には、このような供試体を誘導加熱した場合に、供試体の円周方向に生じる偏熱についての考慮はおろか示唆する記載もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭61−275634号公報
【特許文献2】実開昭63−105840号公報
【特許文献3】特開平08−171982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする問題点は、従来の油井管継手の気密性評価試験装置は、何れのものも、供試体を誘導加熱した場合に、供試体の円周方向に生じる偏熱について考慮されていなかったという点である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
供試体を誘導加熱した場合に、供試体の円周方向に生じる偏熱を抑制するために、
例えば、略円筒状の供試体に圧縮及び引張の軸力を付与する機構と、前記供試体の内部に内圧を負荷する機構と、前記供試体の温度を任意に設定する加熱・冷却機構と、を備えた油井管継手の気密性評価試験装置であって、
前記加熱・冷却機構は、前記供試体の被加熱部を外周部より誘導加熱する構成で、この誘導加熱した前記被加熱部における鉛直方向上部の一部分を冷却する局所冷却装置を備えたものであることを最も主要な特徴としている。
【0014】
上記構成の本発明装置では、外周部から誘導加熱した供試体の被加熱部における鉛直方向上部の一部分を局所的に冷却する局所冷却装置を設けるので、内圧を負荷した状態で誘導加熱した供試体に発生する円周方向の偏熱を抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、供試体の被加熱部における鉛直方向上部の一部分を局所的に冷却する局所冷却装置を備えることで、誘導加熱した供試体に発生する周方向の偏熱を抑制することが可能となる。従って、油井管継手の気密性の評価試験を行う場合でも、高精度な評価試験を行うことができる。併せて、供試体の加熱を誘導加熱により行うので、加熱や均熱に要する時間を短縮することができ、試験効率が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は本発明の油井管継手の気密性評価試験装置を構成する加熱・冷却機構の概略構成を示した模式図、(b)は(a)図のA−A断面図である。
図2】本発明の油井管継手の気密性評価試験装置全体の概略構成を示した模式図である。
図3】本発明の油井管継手の気密性評価試験装置を構成する局所冷却装置の供試体への取り付け位置を説明する供試体の横断面方向から見た図である。
図4】本発明の油井管継手の気密性評価試験装置を構成する加熱・冷却機構と局所冷却装置の供試体への取り付け状態を説明する供試体の軸方向から見た図である。
図5】(a)は本発明の油井管継手の気密性評価試験装置を使用した場合の内圧を負荷した供試体の鉛直方向上下の温度差、(b)は局所冷却装置を有さない従来の油井管継手の気密性評価試験装置を使用した場合の(a)図と同様の図である。
図6】内圧を負荷しない状態での図5と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、誘導加熱した際に発生する供試体の円周方向に生じる偏熱を抑制するという目的を、外周部から誘導加熱した供試体の被加熱部における鉛直方向上部の一部分を局所冷却する局所冷却装置を備えることで実現した。特に、内圧を負荷した状態で誘導加熱した供試体に発生する円周方向の偏熱抑制に有効である。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施するための実施例を、添付図面を用いて説明する。
図1は本発明の油井管継手の気密性評価試験装置を構成する加熱・冷却機構の概略構成を示した模式図、図2は本発明の油井管継手の気密性評価試験装置全体の概略構成を示した模式図である。
【0019】
図1及び図2において、1は油井管2a,2bの端部同士を油井管継手3で接合した、略円筒状の供試体であり、カップリングタイプ、インテグラルタイプの何れの油井管継手の気密性評価試験にも適用可能である。本発明の油井管継手の気密性評価試験装置は、その軸方向が水平になるように、前記供試体1の両端部をフレーム4の内部に設置した取り付け部4a,4bに固定した状態で試験を行うもので、以下の機構を備えている。
【0020】
フレーム4に取り付けた前記供試体1に圧縮及び引張の軸力を付与する機構である例えば油圧シリンダ5が、フレーム4の一方端部に設けられている。また、カードル7内のガス(例えばN2+He等の不活性ガスや空気)を圧縮機9で昇圧し、高圧配管6を介して前記供試体1の内部に導くことで、前記供試体1の内部に大気圧以上の内圧を負荷する内圧負荷機構が設けられている。
【0021】
そして、本発明では、前記供試体1の加熱・冷却機構における加熱を、前記供試体1を構成する油井管継手3の外周部を含む所定範囲(例えば50〜500mm)にのみ、チューブ状で電気的に絶縁された構造の誘導加熱コイル8を配置することで、供試体1を外周部から高周波誘導加熱するようにしている。
【0022】
この際、供試体1の内部に鋼やアルミニウムの中実金属製の中子を設置しておけば、供試体1の内部に充填する高圧ガス10の容量が少なくて済む。
【0023】
このような供試体1の自己発熱を利用する高周波誘導加熱とすることで、供試体1の全体を加熱する必要がなくなるので、加熱に使用するエネルギーを低下させることが可能になる。また、環状炉を使用する場合は加熱に30分程度かかっていたものが、高周波誘導加熱の場合は20分程度で加熱することができ、加熱、均熱時間を短縮できる。
【0024】
なお、供試体1は、炭素鋼、フェライト系ステンレス鋼などの強磁性体が望ましい。常磁性体では、誘導加熱で得られる熱量が強磁性体に比べて少なくなり、加熱効率が劣るからである。
【0025】
加えて、加熱に環状炉を用いる場合は空冷でしか冷却することができなかったので冷却に60分程度の時間を要していたが、誘導加熱の場合は、低温の冷却水、液体窒素などの液体を供試体1に直接吹き付ける構成の冷却装置11を採用することが可能になる。従って、加熱・冷却機構として、当該冷却装置11を更に備えさせることにより、環状炉に比べて冷却時間を大幅に短縮できる。
【0026】
しかしながら、誘導加熱により供試体1は自己発熱し、その熱が供試体1の内部に伝わり、供試体1の鉛直方向の上部へ伝熱するために、鉛直方向の上部が高温となり、下部との間で偏熱が発生する。
【0027】
特に、高圧ガスで内圧を負荷する場合は、誘導加熱により自己発熱した熱が、界面では熱伝達率が増加して熱が伝わりやすい前記高圧ガス10に移動する。供試体1の内部は高圧ガス10の対流が発生しており、加熱された高圧ガス10は上部へ移動して鉛直方向の上部が高温となり、下部との間で発生する偏熱が大きくなる。
【0028】
一方、誘導加熱は材料の自己発熱を利用して加熱するものであるため、低温部の集中的な加熱は不可能である。
【0029】
そこで、本発明では、前記誘導加熱コイル8を用いて誘導加熱した前記供試体1の被加熱部における鉛直方向上部に、鉛直方向上部の一部分のみを冷却する接触式の局所冷却装置12を更に設置している。
【0030】
この局所冷却装置12は、供試体1の軸中心を通る鉛直線から円周方向に等分に広がる角度θが30°〜180°の範囲をカバーでき(図3参照)、軸方向の範囲L1は誘導加熱コイル8の設置範囲L2の25%〜100%をカバーする必要がある(図4参照)。なお、図4中のL3は誘導加熱コイル8による加熱範囲を示す。
【0031】
この局所冷却装置12は、例えば蛇腹状の導管に冷却水などの冷却媒体を循環させる構造のものを採用する。導管の材質は、銅など常磁性体である必要がある。また、この局所冷却装置12に供給する冷却媒体の温度は、0℃〜目標とする温度の50%の温度(目標温度が180℃の場合は90℃)とする。
【0032】
上記本発明では、供試体1の鉛直方向上面及び下面の少なくとも2箇所に、温度測定用の熱電対13を貼付するなどして、供試体1の鉛直方向上部と下部の温度を連続的に測定しながら供試体1を誘導加熱することが望ましい。
【0033】
そして、前記熱電対13によって測定した供試体1の鉛直方向の上部と下部の表面温度と、目標温度(135℃〜360℃)、目標加熱速度を元に、制御用コンピュータ14を用いて加熱・冷却機構、局所冷却装置12を連続的に制御して、内圧付与機構により所定の内圧を負荷した供試体1を周方向に偏熱なく加熱する。
【0034】
このように加熱・冷却機構、内圧付与機構、局所冷却装置12を用い、必要に応じて所定の内圧を負荷した供試体1を所定の温度への加熱に併せて、油圧シリンダ5を作動して圧縮及び引張の軸力を付与し、供試体1の継手部分における気密性評価試験を実施する。なお、気密性評価試験に際し、供試体1に付与するのは圧縮及び引張の軸力だけでなく、曲げモーメントを付与して行っても良い。
【0035】
ちなみに、供試体を180℃となるまで誘導加熱する際に、本発明の油井管継手の気密性評価試験装置の局所冷却装置12に4℃の冷却水を供給して循環させた場合、内圧を負荷した状態(図5(a))、内圧を負荷しない状態(図6(a))の何れも、供試体の鉛直方向の上部と下部の温度差は4℃以内に改善された。
【0036】
本発明は上記した例に限らないことは勿論であり、請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0037】
例えば、上記の例では、内圧負荷機構を備えた気密性評価試験装置で、内圧を負荷して油井管継手の気密性を評価する場合について説明したが、内圧を負荷しないで油井管継手の気密性を評価しても良い。また、内圧を負荷しないで油井管継手の気密性を評価する場合は、内圧負荷機構を備えない気密性評価試験装置を使用しても良いことは言うまでもない。
【0038】
また、上記の例では、加熱・冷却機構に冷却装置11を備えたものを示しているが、冷却装置11を備えないものでも良い。
【符号の説明】
【0039】
1 供試体
8 誘導加熱コイル
10 高圧ガス
11 冷却装置
12 局所冷却装置
13 熱電対
14 制御用コンピュータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6