【実施例】
【0015】
図1は、本発明が適用された車両用部材の締結構造を表した断面図である。
図2及び
図3は、
図1の締結構造からボルト締結部10とカラー14とを抜粋して表した図であり、
図2は
図3におけるA−A断面を示す断面図であって、
図3は
図2の下方から見た下面図である。具体的に、
図1から
図3は、樹脂製の部材8の一部を構成し貫通穴12が形成されたボルト締結部10とその貫通穴12内に挿入された金属製の筒状のカラー14とがそのカラー14の内側に挿入されるボルト13によって相手部品15に締結される締結構造を表している。
図2及び
図3では、簡潔な図示とするために、前記ボルト13および相手部品15の図示が省略されているが、その相手部品15は
図2においてボルト締結部10及びカラー14に対し下側に位置し、前記ボルト13は
図2の上方から貫通穴12内に挿入される。すなわち、
図2の矢印AR1は前記ボルト13の挿入方向を表している。そして、第1軸心RC1は、ボルト締結部10の貫通穴12とカラー14と前記ボルト13とに共通する軸心である。なお、
図2及び
図3では、ボルト締結部10は図示されているが、ボルト締結部10を含む樹脂製の部材8全体の形状は不図示となっている。また、
図1から
図3に示す車両用部材の締結構造は、例えば、ブレーキペダルの締結部、シフト操作装置の締結部などに用いることができる。
【0016】
図4及び
図5は、ボルト締結部10を単体で表した図であり、
図4は
図5の上方から見た平面図であって、
図5は
図4におけるB−B断面を示す断面図である。ボルト締結部10は、プラスチックなどの樹脂で構成されており、
図4及び
図5に示すように、第1軸心RC1を中心軸とする円筒形状の円筒部である。ボルト締結部10は、カラー14の内側に挿入される前記ボルト13を介して対向するように貫通穴12の内周面12aから突き出た複数対の突起16a,16b(特に区別しないときは単に、突起16と呼ぶ)を備えている。具体的には、2対の突起16を、第1軸心RC1方向におけるボルト先端側の一端部18に備えている。
【0017】
2対の突起16は何れも、前記ボルト先端側とは反対のボルト基端側に傾斜面20を備えている。その傾斜面20は、突起16の基端から先端にかけて前記ボルト基端側から前記ボルト先端側に傾斜している。また、
図4に示す突起16は何れも、互いに同一の形状を有し、第1軸心RC1に向かって突き出している。また、2対の突起16はそれぞれ、第1軸心RC1まわりにおいて等間隔に配設されている。すなわち、4つの突起16は第1軸心RC1まわりに90度の間隔を有してそれぞれ配設されている。
【0018】
また、
図3から判るように、貫通穴12の内周面12aからの突起16の突出し高さHpj(
図5参照)は、カラー14の肉厚Tc(
図7参照)よりも大きい。そのため、カラー14内に挿入された前記ボルト13はその径方向位置が突起16の先端によって拘束されるので、ボルト締結部10の突起16は、突起16の先端を第1軸心RC1まわりに連ねた内周面を有するボルト穴、すなわち
図3の二点鎖線HL1で表される円形のボルト穴と同等に機能する。
【0019】
図6及び
図7はカラー14を単体で表した図であり、
図6はカラー14の斜視図である。そして、
図7はカラー14を示す三面図であって、(a)図はカラー14を第1軸心RC1方向に見た図であり、(b)図は(a)図においてカラー14を矢印XA方向に見た図であり、(c)図は(a)図においてカラー14を矢印XB方向に見た図である。カラー14は、鉄などの金属製であり、一定の肉厚Tcを有する円筒である。カラー14は、ボルト締結部10の貫通穴12内に挿入された状態で、その貫通穴12の内周面12aにより径方向に拘束され、例えば、カラー14の外径は、カラー14が貫通穴12にすきま嵌めされる程度の寸法とされている。また、カラー14の内径は、そのカラー14の内側に挿入される前記ボルト13の軸径に対して十分に大きい寸法となっている。また、カラー14は前記ボルト13の第1軸心RC1方向の締結力に対してボルト締結部10を補強するためのものであるので、
図2に示すように、カラー14の第1軸心RC1方向の長さは、ボルト締結部10に対して僅かに長くなっている。
【0020】
また、カラー14は、ボルト締結部10の突起16に対応し第1軸心RC1方向に開口して切り欠かれた複数対の切欠22a,22b(特に区別しないときは単に、切欠22と呼ぶ)を備えている。具体的には、2対の切欠22a,22bを、第1軸心RC1方向におけるボルト先端側の一端部24に備えている。そして、その切欠22a,22bは、カラー14がボルト締結部10の貫通穴12内に挿入された状態でボルト締結部10の突起16と干渉しないように切り欠かれている。また、切欠22a,22bの第1軸心RC1方向の深さは、例えば
図2に示すように、切欠22a,22bの底面26と突起16の傾斜面20とが互いに接触した状態で、第1軸心RC1方向においてカラー14の中央位置がボルト締結部10の貫通穴12の中央位置と一致するように定められている。また、切欠22aは第1軸心RC1まわりの周方向の切欠幅(周方向切欠幅)が第1の切欠幅WAであり、切欠22bは前記周方向切欠幅が第1の切欠幅WAよりも広い第2の切欠幅WBである。そして、前記第1の切欠幅WAは、例えば、カラー14がボルト締結部10に対し第1軸心RC1まわりに回動することを、突起16が切欠22aに嵌め入れられることにより緩やかに拘束できるように、定められている。
【0021】
また、カラー14は、ボルト基端側の他端部28に切欠を備えていなくても差し支えないが、本実施例では、前記一端部24に形成された複数対の切欠22a,22bと同じ複数対の切欠22c,22dが、前記他端部28にも形成されている。具体的には、一対の切欠22cは一対の切欠22aと同一形状であり、一対の切欠22dは一対の切欠22bと同一形状であり、その切欠22cと切欠22dとの相互間隔は切欠22aと切欠22bとの相互間隔と同じである。従って、カラー14は、第1軸心RC1方向に対称的な形状を備えているので、
図2において一端部24を下にしても他端部28を下にしてもボルト締結部10と組合せ可能である。
【0022】
本実施例によれば、樹脂製の部材8の一部を構成し貫通穴12が形成されたボルト締結部10とその貫通穴12内に挿入された金属製の筒状のカラー14とがそのカラー14の内側に挿入されるボルト13によって相手部品15に締結される。そして、ボルト締結部10は、前記ボルト13を介して対向するように貫通穴12の内周面12aから突き出た複数対の突起16a,16bを備え、カラー14は、ボルト締結部10の突起16a,16bに対応し第1軸心RC1方向に開口して切り欠かれた複数対の切欠22a,22bを備えている。従って、貫通穴12の内周面12aからの突起16の突出量Hpj(突出し高さHpj)に応じて前記ボルト13を径方向に拘束できるので、前記特許文献2のようにボルト穴が形成された円筒状部分が金属製カラーの内側に設けられた樹脂製部品と比較して、ボルト締結部10の径方向の外形を小さく抑えることが可能である。そのようにボルト締結部10の径方向の外形を小さく抑えることができれば、例えば設計的な自由度が向上する。また、基本的に複数対の突起16によって前記ボルト13が径方向に拘束される構成であるので、ボルト締結部10の寸法管理は主として複数対の突起16を寸法管理すればよく、前記特許文献2のようにボルト穴が形成された円筒状部分が金属製カラーの内側に設けられた樹脂製部品と比較して、容易に寸法管理ができる。また、前記ボルト13を介して対向する突起16は1対ではなく複数対(具体的には2対)あるので、突起16が1対である場合と比較して、前記ボルト13の径方向におけるボルト締結部10の良好な位置決め性を確保し易く、前記ボルト13と突起16との間に若干の余裕を前記径方向に持たせることにより、前記ボルト13の挿通性を向上させることが可能である。
【0023】
また、本実施例によれば、前記複数対の切欠22は、カラー14の周方向における切欠幅が第1の切欠幅WAである切欠22aと、カラー14の周方向における切欠幅が前記第1の切欠幅WAよりも広い第2の切欠幅WBである切欠22bとを含む。従って、前記第1の切欠幅WAに応じた周方向の突起幅を有する突起212aと前記第2の切欠幅WBに応じた周方向の突起幅を有する突起212bとを備えたボルト締結部210(
図10参照)と、前記第1の切欠幅WAに応じた周方向の突起幅を有する突起16だけを備えたボルト締結部10との何れに対しても、共通のカラー14を用いることが可能である。
【0024】
また、本実施例によれば、貫通穴12の内周面12aからの前記複数対の突起16の突出し高さHpjは、カラー14の肉厚Tcよりも大きい。従って、前記ボルト13の径方向位置を、前記複数対の突起16の先端位置によって拘束することが可能である。
【0025】
また、本実施例によれば、前記複数対の突起16a,16bに対応する前記複数対の切欠22a,22bは、カラー14の軸方向(第1軸心RC1方向)における一端部24に形成されており、そのカラー14の一端部24に形成された複数対の切欠22a,22bと同じ複数対の切欠22c,22dが、カラー14の他端部28にも形成されている。従って、カラー14の軸方向の向きに拘らず、そのカラー14をボルト締結部10の貫通穴12内に挿入することが可能であるので、誤組付けを防止でき、組付け作業性を向上させることが可能である。
【0026】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0027】
例えば、前述の実施例において、カラー14の切欠22a,22cは前記周方向切欠幅が第1の切欠幅WAであり、切欠22b,22dは前記周方向切欠幅が第1の切欠幅WAよりも広い第2の切欠幅WBであるが、それらの切欠22a,22b,22c,22dは、前記周方向切欠幅が互いに同一寸法であっても差し支えない。例えば、その周方向切欠幅が第1の切欠幅WAに統一されていても差し支えない。
【0028】
また、前述の実施例において、
図3に示すように、ボルト締結部10の突起16a,16bの突出し高さHpjはカラー14の肉厚Tcよりも大きいが、前記突出し高さHpjがカラー14の肉厚Tc以下であっても差し支えない。例えば、その突出し高さHpjがカラー14の肉厚Tc以下であるボルト締結部110を表した図が
図8として示されている。その
図8は、前記ボルト締結部110を単体で表した図であって、
図4に相当するボルト締結部110の平面図である。また、
図8のボルト締結部110がカラー14と組み合わされた状態を表す図が
図9として示されている。その
図9は、ボルト締結部110とカラー14とが組み合わされた締結構造を表した図であって、
図3に相当する下面図である。ボルト締結部110は2対の突起112a,112bを備えており、その突起112a,112bは、前記突出し高さHpjがカラー14の肉厚Tc以下であることを除き、
図4の突起16a,16bと同じである。このボルト締結部110とカラー14とが組み合わされた締結構造では、
図9に示すように、カラー14内に挿入された前記ボルト13はカラー14の内径によって径方向に拘束されるので、カラー14の内周面が、
図3の二点鎖線HL1で表される円よりも大径である
図9の二点鎖線HL2で表される円形のボルト穴と同等に機能する。
【0029】
また、前述の実施例において、
図4に示すように、ボルト締結部10の突起16a,16bは何れも同じ形状を有しているが、互いに異なる形状であっても差し支えない。例えば、一対の突起212aと別の一対の突起212bとが互いに異なる形状であるボルト締結部210を表した図が
図10として示されている。その
図10は、前記ボルト締結部210を単体で表した図であって、
図4に相当するボルト締結部210の平面図である。また、
図10のボルト締結部210がカラー14と組み合わされた状態を表す図が
図11として示されている。その
図11は、ボルト締結部210とカラー14とが組み合わされた締結構造を表した図であって、
図3に相当する下面図である。ボルト締結部210は1対の突起212aとその突起212aとは形状が異なる1対の突起212bとを備えている。その突起212aは突起16aと同様にカラー14の切欠22aに嵌め入れられる。突起212aは、前記突出し高さHpjを除き、突起16aと同じである。具体的に突起212aの突出し高さHpjは、突起16aよりも小さく且つカラー14の肉厚Tcよりも大きくなっている。また、ボルト締結部210の突起212bは、突起16bと同様にカラー14の切欠22bに嵌め入れられる。突起212bは、第1軸心RC1まわりの周方向の突起幅を除き、突起16bと同じである。具体的に突起212bの前記突起幅は、前記第2の切欠幅WBに応じた大きさ、例えば突起212bを切欠22bに隙間嵌めで嵌め入れることができる程度の大きさになっている。このボルト締結部210とカラー14とが組み合わされた締結構造では、
図11に示すように、カラー14内に挿入された前記ボルト13は突起212a,212bのそれぞれの先端によって径方向に拘束されるので、ボルト締結部210の突起212a,212bは、突起212a,212bの先端を第1軸心RC1まわりに連ねた内周面を有するボルト穴、すなわち
図11の二点鎖線HL3で表される長円形のボルト穴と同等に機能する。
図3、
図9、
図11を比較すれば判るように、ボルト締結部10,110,210の外形を変えることなく突起16,112,212の形状や大きさを適宜変更することにより、共通のカラー14を用いつつ、円形または長円形などの異なる形状又は大きさのボルト穴を再現することが可能である。
【0030】
また、前述の実施例において、ボルト締結部10は突起16を一端部18に備えているが、突起16は、その一端部18以外の箇所、例えば他端部28に配設されていても差し支えない。また、複数対の突起16は、第1軸心RC1方向に互いにずれた位置にそれぞれ配設されていても差し支えない。
【0031】
また、前述の実施例の
図4において、突起16は2対設けられているが、3対以上設けられていても差し支えない。また、切欠22の数についても同様である。
【0032】
また、前述の実施例において、ボルト締結部10およびカラー14は円筒形状をなしているが、円筒形状以外の形状も考え得る。
【0033】
また、前述の実施例において、カラー14の第1軸心RC1に垂直な断面形状は閉じた円環状であるが、カラー14は筒状であればよく、例えば、カラー14の上記断面形状が、1箇所で局所的に開いた環状、すなわちC字形状であっても差し支えない。
【0034】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。