(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の光学ガラスは、質量%で、B
2O
3成分を5.0%以上40.0%以下、Ln
2O
3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)を質量和で15.0%以上60.0%以下、及びNb
2O
5成分を0%超50.0%以下含有し、部分分散比(θg,F)がアッベ数(νd)との間で、νd≦31の範囲において(−0.00162×νd+0.63822)≦(θg,F)≦(−0.00275×νd+0.68125)の関係を満たし、νd>31の範囲において(−0.00162×νd+0.63822)≦(θg,F)≦(−0.00162×νd+0.64622)の関係を満たす。La
2O
3成分等の希土類成分及びNb
2O
5成分に、必要に応じてZrO
2成分を併用し、これらの含有量を所定の範囲内にすることによって、ガラスの高屈折率化が図られる。それとともに、Nb
2O
5成分を用い、その含有量を所定の範囲内にすることによって、ガラスの高分散化(低アッベ数化)が図られる。それとともに、La
2O
3成分等の希土類成分及びNb
2O
5成分に、必要に応じてZrO
2成分を併用し、これらの含有量を所定の範囲内にすることによって、ガラスの部分分散比(θg,F)がアッベ数(ν
d)との間で所望の関係を有する。それとともに、B
2O
3成分及びLa
2O
3成分を併用し、これらの含有量を所定の範囲内にすることによって、ガラスの安定性が高められながらも、ガラスの着色が低減される。このため、屈折率(n
d)が所望の範囲内にありながら、アッベ数(ν
d)が小さく、部分分散比(θg,F)が小さく、且つ可視光に対する透明性が高い光学ガラスと、これを用いたプリフォーム及び光学素子を得ることができる。
【0037】
以下、本発明の光学ガラスの実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の趣旨を限定するものではない。
【0038】
[ガラス成分]
本発明の光学ガラスを構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。本明細書中で特に断りがない場合、各成分の含有量は、全て酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量%で表示されるものとする。ここで、「酸化物換算組成」とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が熔融時に全て分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の総質量を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
【0039】
<必須成分、任意成分について>
B
2O
3成分は、ガラス形成酸化物として欠かすことの出来ない必須成分である。
特に、B
2O
3成分を5.0%以上含有することで、ガラスの耐失透性を高め、且つ分散を小さくできる。また、これによりガラスの比重を小さくでき、且つ再加熱による失透及び着色を低減できる。従って、B
2O
3成分の含有量は、好ましくは5.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは13.0%、さらに好ましくは14.0%、さらに好ましくは17.0%を下限とする。
一方、B
2O
3成分の含有量を55.0%以下にすることで、より大きな屈折率を得易くし、且つ部分分散比を低くできる。従って、B
2O
3成分の含有量は、好ましくは40.0%、より好ましくは35.0%、さらに好ましくは30.0%、さらに好ましくは25.0%を上限とする。
B
2O
3成分は、原料としてH
3BO
3、Na
2B
4O
7、Na
2B
4O
7・10H
2O、BPO
4等を用いることができる。
【0040】
Ln
2O
3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(質量和)は、15.0%以上60.0%以下にする。
特に、この和を15.0%以上にすることで、ガラスの屈折率が高められながらも、アッベ数や部分分散比が低くなる。そのため、所望の高い屈折率を有し、且つ、部分分散比とアッベ数との間で所望の関係を有するガラスを得易くできる。従って、Ln
2O
3成分の質量和は、好ましくは15.0%、より好ましくは18.0%、さらに好ましくは21.0%、さらに好ましくは26.0%、さらに好ましくは29.0%を下限とする。
一方で、この和を60.0%以下にすることで、ガラスの液相温度が低くなるため、ガラスの耐失透性を高められる。従って、Ln
2O
3成分の質量和は、好ましくは60.0%を上限とし、より好ましくは52.0%未満、さらに好ましくは45.0%未満、さらに好ましくは40.0%未満とする。
【0041】
Nb
2O
5成分は、0%超含有することで、ガラスの屈折率を高め、アッベ数を低くし、ガラスの比重を小さくし、且つ部分分散比を低くできる必須成分である。従って、Nb
2O
5成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%超、さらに好ましくは5.0%超、さらに好ましくは8.0%超、さらに好ましくは11.0%超、さらに好ましくは15.0%超、さらに好ましくは17.0%超とする。
一方で、Nb
2O
5成分の含有量を50.0%以下にすることで、Nb
2O
5成分の過剰な含有によるガラスの耐失透性の悪化を抑え、且つ、ガラスの可視光に対する透過率の低下を抑えることができる。従って、Nb
2O
5成分の含有量は、好ましくは50.0%、より好ましくは45.0%、さらに好ましくは40.0%、さらに好ましくは37.0%を上限とする。
Nb
2O
5成分は、原料としてNb
2O
5等を用いることができる。
【0042】
ZrO
2成分は、0%超含有する場合に、ガラスの耐失透性を高めつつ、屈折率を高め、且つ部分分散比を低くできる任意成分である。また、これによりガラスの再加熱による失透や着色を低減できる。従って、ZrO
2成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%超、さらに好ましくは2.1%、さらに好ましくは3.7%を下限としてもよい。
一方で、ZrO
2成分の含有量を15.0%以下にすることで、逆に耐失透性が悪化する。従って、ZrO
2成分の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは12.0%、さらに好ましくは9.0%を上限とする。
ZrO
2成分は、原料としてZrO
2、ZrF
4等を用いることができる。
【0043】
La
2O
3成分は、10.0%以上含有することで、ガラスの高屈折率及び高分散を図りながらも、比重を小さくし、且つ部分分散比を小さくできる成分である。従って、La
2O
3成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは13.0%、さらに好ましくは16.0%、さらに好ましくは18.0%、さらに好ましくは20.0%、さらに好ましくは23.0%、さらに好ましくは26.0%、さらに好ましくは29.0%を下限とする。
特に、La
2O
3成分の含有量を60.0%以下にすることで、ガラスの安定性を高めて失透を低減し、且つアッベ数の上昇を抑えることができる。また、これにより再加熱による失透及び着色を低減できる。従って、La
2O
3成分の含有量は、好ましくは60.0%、より好ましくは50.0%、さらに好ましくは40.0を上限とする。
La
2O
3成分は、原料としてLa
2O
3、La(NO
3)
3・XH
2O(Xは任意の整数)等を用いることができる。
【0044】
Y
2O
3成分、Gd
2O
3成分、Yb
2O
3成分及びLu
2O
3成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められる任意成分である。
一方で、Y
2O
3成分、Gd
2O
3成分、Yb
2O
3成分及びLu
2O
3成分の各々の含有量を低減することで、ガラスの耐失透性を高めることができ、且つガラスのアッベ数を高まり難くできる。特に、Gd
2O
3成分、Yb
2O
3成分及びLu
2O
3成分の各々の含有量を低減することで、ガラスの材料コストを低減できる。
このうち、Y
2O
3成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、さらに好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
また、Gd
2O
3成分の含有量は、好ましくは30.0%、より好ましくは20.0%を上限とし、さらに好ましくは14.0%未満、さらに好ましくは10.0%未満とする。
また、Yb
2O
3成分及びLu
2O
3成分の含有量は、それぞれ好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは1.0%を上限とし、さらに好ましくは0.5%未満とする。
Y
2O
3成分、Gd
2O
3成分、Yb
2O
3成分及びLu
2O
3成分は、原料としてGd
2O
3、GdF
3、Y
2O
3、YF
3、Yb
2O
3、Lu
2O
3等を用いることができる。
【0045】
Ln
2O
3成分の合計含有量に対するLa
2O
3成分の含有量の比率(質量比)は、0.5以上が好ましい。これにより、希土類元素の中でも部分分散比を小さくする作用の強いLa
2O
3成分の含有量が相対的に増加するため、所望の高い耐失透性を得ながらも、部分分散比を小さくできる。従って、質量比La
2O
3/Ln
2O
3は、好ましくは0.5、より好ましくは0.8、さらに好ましくは0.93を下限とする。なお、この比率の上限は特に限定されず、1.0であってもよい。
【0046】
Nb
2O
5成分、ZrO
2成分及びLa
2O
3成分の含有量の和(質量和)は、30.0%以上が好ましい。これにより、ガラスの部分分散比を下げる成分が増加するため、より部分分散比の低い光学ガラスを得ることができる。従って、質量和(Nb
2O
5+ZrO
2+La
2O
3)は、好ましくは30.0%、より好ましくは40.0%、さらに好ましくは47.0%、さらに好ましくは53.0%、さらに好ましくは57.0%を下限とする。
一方で、これら成分の質量和は、安定なガラスが得られる限り限定されないが、例えば85.0%以下にすることで、ガラスの溶解性や耐失透性を高めることができる。従って、質量和(Nb
2O
5+ZrO
2+La
2O
3)は、好ましくは85.0%、より好ましくは80.0%、さらに好ましくは75.0%を上限とする。
【0047】
TiO
2成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高めつつ、アッベ数を低くし、耐失透性を改善できる任意成分である。
一方で、TiO
2成分の含有量を20.0%以下にすることで、ガラスの着色を低減でき、可視短波長(500nm以下)の光に対するガラスの内部透過率を高めることができる。また、これにより部分分散比の上昇を抑えることができる。従って、TiO
2成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、さらに好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%、さらに好ましくは4.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
TiO
2成分は、原料としてTiO
2等を用いることができる。
【0048】
Nb
2O
5成分の含有量に対するTiO
2成分の含有量の比率(質量比)は、1.00以下が好ましい。これにより、屈折率を高めてアッベ数を低くする作用の強い成分の中でも、部分分散比を高めるTiO
2成分の含有量が、部分分散比を下げるNb
2O
5成分の含有量に相対して減少するため、所望の高い屈折率を実現しながらも、より低い部分分散比を有する光学ガラスを得易くできる。また、これによりガラスを着色するTiO
2成分の含有量が減少するため、可視光を透過させる用途に好ましく用いられる光学ガラスを得ることができる。従って、質量比(TiO
2/Nb
2O
5)は、好ましくは1.00、より好ましくは0.50、さらに好ましくは0.30、さらに好ましくは0.15を上限とする。一方で、この質量比の下限は特に限定されず、0であってもよい。
【0049】
WO
3成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高めてアッベ数を低くでき、且つガラスの耐失透性を高められる任意成分である。従って、WO
3成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.3%、さらに好ましくは0.5%を下限としてもよい。
一方で、WO
3成分の含有量を20.0%以下にすることで、ガラスの部分分散比の上昇を抑え、且つガラスの可視光に対する透過率を低下し難くできる。また、これにより再加熱による失透及び着色を低減できる。従って、WO
3成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、さらに好ましくは10.0%を上限とする。
WO
3成分は、原料としてWO
3等を用いることができる。
【0050】
TiO
2成分及びWO
3成分の質量和は、20.0%以下が好ましい。これにより、ガラスの部分分散比の上昇を抑え、且つガラスの可視光に対する透過率を低下し難くできる。従って、質量和(TiO
2+WO
3)は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、さらに好ましくは9.8%を上限とする。
【0051】
ZrO
2成分及びB
2O
3成分の含有量の和に対する、TiO
2成分及びWO
3成分の含有量の和の比率は、1.00以下が好ましい。これにより、より可視光に対する透過率の高い光学ガラスを得易くできる。従って、質量比(TiO
2+WO
3)/(ZrO
2+B
2O
3)は、好ましくは1.00、より好ましくは0.65、さらに好ましくは0.40を上限とする。
【0052】
Nb
2O
5の含有量に対するWO
3の含有量の比率(質量比)は、0.50以下が好ましい。これにより、Nb
2O
5の含有量が増加することで安定なガラスを得られながらも、部分分散比を高め且つガラスを着色するWO
3の含有量が低減されるため、より部分分散比が小さく着色の少ない光学ガラスを得られる。従って、質量比(WO
3/Nb
2O
5)は、好ましくは0.50、より好ましくは0.45、さらに好ましくは0.40を上限とする。
【0053】
MgO成分、CaO成分、SrO成分及びBaO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率や熔融性、失透性を調整できる任意成分である。
特に、MgO成分やCaO成分の含有量を各々10.0%以下にすること、若しくは、SrO成分やBaO成分の含有量を各々20.0%以下にすることで、これらの成分による屈折率の低下や失透を低減でき、且つ、部分分散比の上昇を抑えることができる。
従って、MgO成分及びCaO成分の各々の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
また、SrO成分及びBaO成分の各々の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは6.0%を上限とする。
これらの成分は、原料としてMgCO
3、MgF
2、CaCO
3、CaF
2、Sr(NO
3)
2、SrF
2、BaCO
3、Ba(NO
3)
2、BaF
2等を用いることができる。
【0054】
ZnO成分は、0%超含有する場合に、ガラス転移点を下げ、ガラス原料の熔解温度を下げられる任意成分である。従って、ZnO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%、さらに好ましくは3.0%、さらに好ましくは3.5%、さらに好ましくは4.5%、さらに好ましくは5.6%を下限としてもよい。
一方で、ZnO成分の含有量を30.0%以下にすることで、ガラスの失透を低減でき、ガラスの比重を小さくし、且つ、部分分散比の上昇を抑えることができる。従って、ZnO成分の含有量は、好ましくは30.0%、より好ましくは20.0%、さらに好ましくは15.0%、さらに好ましくは14.0%を上限とする。
ZnO成分は、原料としてZnO、ZnF
2等を用いることができる。
【0055】
ZnO成分の含有量に対するB
2O
3成分の含有量の比率(質量比)は、0.01以上が好ましい。これにより、ガラスの部分分散比をより低くできる。従って、質量比(ZnO/B
2O
3)は、好ましくは0.01、より好ましくは0.10、さらに好ましくは0.18を下限とする。
一方で、質量比(ZnO/B
2O
3)の上限は、ZnO成分及びB
2O
3成分の含有量の範囲から求められる値であってもよいが、例えば1.00、具体的には0.80、より具体的には0.70を上限としてもよい。
【0056】
RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選択される1種以上)の含有量の合計(質量和)は、30.0%以下が好ましい。これにより、RO成分の過剰な含有による、ガラスの屈折率の低下や耐失透性の低下、部分分散比の上昇を抑えられる。従って、RO成分の質量和は、好ましくは30.0%、より好ましくは20.0%、さらに好ましくは14.0%を上限とする。
【0057】
SiO
2成分は、0%超含有する場合に、熔融ガラスの粘度を高め、安定なガラス形成を促し、失透(結晶物の発生)を低減できる任意成分である。
一方で、SiO
2成分の含有量を20.0%以下にすることで、ガラスの部分分散比を低くし、ガラス転移点の上昇を抑え、ガラスの比重を小さくし、且つ本発明が目的とする高屈折率を得易くできる。従って、SiO
2成分の含有量は、好ましくは20.0%とし、より好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは6.0%未満、さらに好ましくは4.0%未満、さらに好ましくは2.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満とする。
SiO
2成分は、原料としてSiO
2、K
2SiF
6、Na
2SiF
6等を用いることができる。
【0058】
B
2O
3成分の含有量に対するSiO
2成分の含有量の比率は、1.00未満が好ましい。これにより、ガラスの比重を大きくするSiO
2成分の含有量に相対して、比重を小さくするB
2O
3成分の含有量が増加するため、高い耐失透性を有しながらも、より比重の小さい光学ガラスを得られる。従って、質量比(SiO
2/B
2O
3)は、好ましくは1.00未満、より好ましくは0.50未満、さらに好ましくは0.30未満とする。
【0059】
Li
2O成分、Na
2O成分及びK
2O成分は、0%超含有する場合に、ガラスの熔融性を改善し、且つガラス転移点を低くできる任意成分である。このうち、Li
2O成分は、ガラスの部分分散比を低くする成分でもある。また、Na
2O成分及びK
2O成分は、ガラスの耐失透性を高められる成分でもある。
一方で、Li
2O成分、Na
2O成分及びK
2O成分の各々の含有量を低減することで、ガラスの屈折率を低下し難くし、且つ、耐失透性を高められる。
従って、Li
2O成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
また、Na
2O成分の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
また、K
2O成の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
Li
2O成分、Na
2O成分及びK
2O成分は、原料としてLi
2CO
3、LiNO
3、LiF、Na
2CO
3、NaNO
3、NaF、Na
2SiF
6、K
2CO
3、KNO
3、KF、KHF
2、K
2SiF
6等を用いることができる。
【0060】
Rn
2O成分(式中、RnはLi、Na、K、Csからなる群より選択される1種以上)の合計量は、20.0%以下が好ましい。これにより、ガラスの屈折率を低下し難くし、ガラス形成時の失透を低減できる。また、これにより再加熱による失透及び着色を低減できる。従って、Rn
2O成分の含有量の質量和は、好ましくは20.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
【0061】
P
2O
5成分は、0%超含有する場合に、耐失透性を高められる任意成分である。
一方で、P
2O
5成分の含有量を20.0%以下にすることで、ガラスの化学的耐久性、特に耐水性の低下を抑えることができる。従って、P
2O
5成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
P
2O
5成分は、原料としてAl(PO
3)
3、Ca(PO
3)
2、Ba(PO
3)
2、BPO
4、H
3PO
4等を用いることができる。
【0062】
GeO
2成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、且つ耐失透性を高められる任意成分である。
特に、GeO
2成分の含有量を10.0%以下にすることで、高価なGeO
2成分の使用量が低減されるため、ガラスの材料コストを低減できる。従って、GeO
2成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%を上限とし、さらに好ましくは3.0%未満とし、さらに好ましくは1.5%を上限とする。
GeO
2成分は、原料としてGeO
2等を用いることができる。
【0063】
Ta
2O
5成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高めつつ部分分散比を下げ、且つガラスの耐失透性を高められる任意成分である。
一方で、Ta
2O
5成分の含有量を15.0%以下にすることで、希少鉱物資源であるTa
2O
5成分の使用量が減るとともに、ガラスがより低温で溶解し易くなるため、ガラスの材料コストや生産コストを低減できる。また、比重のより小さい光学ガラスを得易くできる。従って、Ta
2O
5成分の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%、さらに好ましくは1.0%を上限とする。特に、ガラスの材料コストをより低減できる観点では、Ta
2O
5成分を含有しないことが最も好ましい。
Ta
2O
5成分は、原料としてTa
2O
5等を用いることができる。
【0064】
Bi
2O
3成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高めてアッベ数を低くし、且つガラス転移点を低くできる任意成分である。
一方で、Bi
2O
3成分の含有量を15.0%以下にすることで、ガラスの着色や部分分散比の上昇を抑え、且つ耐失透性の低下を抑えることができる。従って、Bi
2O
3成分の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
Bi
2O
3成分は、原料としてBi
2O
3等を用いることができる。
【0065】
TeO
2成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を上げて部分分散比を低くし、且つガラス転移点を低くする任意成分である。
一方で、TeO
2成分の含有量を20.0%以下にすることで、ガラスの着色を低減し、ガラスの可視光に対する透過率を高めることができる。また、これによりガラスの材料コストを低減できる。従って、TeO
2成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、さらに好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
TeO
2成分は、原料としてTeO
2等を用いることができる。
【0066】
Al
2O
3成分及びGa
2O
3成分は、0%超含有する場合に、ガラスの化学的耐久性を高め、且つ耐失透性を向上できる任意成分である。
一方で、Al
2O
3成分及びGa
2O
3成分の各々の含有量を20.0%以下にすることで、これらの過剰な含有によるガラスの耐失透性の低下を抑えられる。従って、Al
2O
3成分及びGa
2O
3成分の各々の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、さらに好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
Al
2O
3成分及びGa
2O
3成分は、原料としてAl
2O
3、Al(OH)
3、AlF
3、Ga
2O
3、Ga(OH)
3等を用いることができる。
【0067】
SnO
2成分は、0%超含有する場合に、熔融ガラスの酸化を低減して清澄し、且つガラスの可視光透過率を高められる任意成分である。
一方で、SnO
2成分の含有量を3.0%以下にすることで、熔融ガラスの還元によるガラスの着色や、ガラスの失透を低減できる。また、SnO
2成分と熔解設備(特にPt等の貴金属)の合金化が低減されるため、熔解設備の長寿命化を図れる。従って、SnO
2成分の含有量は、好ましくは3.0%、より好ましくは2.0%、さらに好ましくは1.0%を上限とする。
SnO
2成分は、原料としてSnO、SnO
2、SnF
2、SnF
4等を用いることができる。
【0068】
Sb
2O
3成分は、0%超含有する場合に、熔融ガラスを脱泡できる任意成分である。
一方で、Sb
2O
3量が多すぎると、可視光領域の短波長領域における透過率が悪くなる。従って、Sb
2O
3成分の含有量は、好ましくは3.0%、より好ましくは2.0%、さらに好ましくは1.0%を上限とする。
Sb
2O
3成分は、原料としてSb
2O
3、Sb
2O
5、Na
2H
2Sb
2O
7・5H
2O等を用いることができる。
【0069】
なお、ガラスを清澄し脱泡する成分は、上記のSb
2O
3成分に限定されるものではなく、ガラス製造の分野における公知の清澄剤、脱泡剤或いはそれらの組み合わせを用いることができる。
【0070】
<含有すべきでない成分について>
次に、本発明の光学ガラスに含有すべきでない成分、及び含有することが好ましくない成分について説明する。
【0071】
他の成分を本願発明のガラスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加できる。ただし、Ti、Zr、Nb、W、La、Gd、Y、Yb、Luを除く、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等の各遷移金属成分は、それぞれを単独又は複合して少量含有した場合でもガラスが着色し、可視域の特定の波長に吸収を生じる性質があるため、特に可視領域の波長を使用する光学ガラスにおいては、実質的に含まないことが好ましい。
【0072】
また、PbO等の鉛化合物及びAs
2O
3等の砒素化合物は、環境負荷が高い成分であるため、実質的に含有しないこと、すなわち、不可避な混入を除いて一切含有しないことが望ましい。
【0073】
さらに、Th、Cd、Tl、Os、Be、及びSeの各成分は、近年有害な化学物資として使用を控える傾向にあり、ガラスの製造工程のみならず、加工工程、及び製品化後の処分に至るまで環境対策上の措置が必要とされる。従って、環境上の影響を重視する場合には、これらを実質的に含有しないことが好ましい。
【0074】
本発明のガラス組成物は、その組成が酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量%で表されているため直接的にモル%の記載に表せるものではないが、本発明において要求される諸特性を満たすガラス組成物中に存在する各成分のモル%表示による組成は、酸化物換算組成で概ね以下の値をとる。
B
2O
3成分 10.0〜70.0モル%及び
Nb
2O
5成分 0モル%超〜40.0モル%
La
2O
3成分 5.0〜30.0モル%
並びに
ZrO
2成分 0〜20.0モル%
Gd
2O
3成分 0〜15.0モル%
Y
2O
3成分 0〜15.0モル%
Yb
2O
3成分 0〜5.0モル%
Lu
2O
3成分 0〜5.0モル%
TiO
2成分 0〜35.0モル%
WO
3成分 0〜15.0モル%
MgO成分 0〜30.0モル%
CaO成分 0〜20.0モル%
SrO成分 0〜30.0モル%
BaO成分 0〜30.0モル%
ZnO成分 0〜60.0モル%
SiO
2成分 0〜50.0モル%
Li
2O成分 0〜50.0モル%
Na
2O成分 0〜35.0モル%
K
2O成分 0〜20.0モル%
P
2O
5成分 0〜30.0モル%
GeO
2成分 0〜20.0モル%
Ta
2O
5成分 0〜5.0モル%
Bi
2O
3成分 0〜5.0モル%
TeO
2成分 0〜20.0モル%
Al
2O
3成分 0〜40.0モル%
Ga
2O
3成分 0〜10.0モル%
SnO
2成分 0〜1.0モル%
Sb
2O
3成分 0〜2.0モル%
【0075】
[製造方法]
本発明の光学ガラスは、例えば以下のように作製される。すなわち、上記原料を各成分が所定の含有量の範囲内になるように均一に混合し、作製した混合物を白金坩堝、石英坩堝又はアルミナ坩堝に投入して粗溶融した後、金坩堝、白金坩堝、白金合金坩堝又はイリジウム坩堝に入れて1100〜1500℃の温度範囲で2〜5時間熔融し、攪拌均質化して泡切れ等を行った後、1000〜1300℃の温度に下げてから仕上げ攪拌を行って脈理を除去し、金型に鋳込んで徐冷することにより作製される。
【0076】
<物性>
本発明の光学ガラスは、所定の屈折率及び分散(アッベ数)を有することが好ましい。より具体的には、本発明の光学ガラスの屈折率(n
d)は、好ましくは1.80、より好ましくは1.83、さらに好ましくは1.85、さらに好ましくは1.88を下限とする。一方、本発明の光学ガラスの屈折率(n
d)の上限は、好ましくは2.00、より好ましくは1.98、さらに好ましくは1.96であってもよい。また、本発明の光学ガラスのアッベ数(ν
d)は、好ましくは40、より好ましくは38、さらに好ましくは34を上限とする。一方、本発明の光学ガラスのアッベ数(ν
d)の下限は、好ましくは20、より好ましくは23、さらに好ましくは26であってもよい。これらにより、光学設計の自由度が広がり、さらに素子の薄型化を図っても大きな光の屈折量を得ることができる。
【0077】
また、本発明の光学ガラスは、低い部分分散比(θg,F)を有する。より具体的には、本発明の光学ガラスの部分分散比(θg,F)は、アッベ数(ν
d)との間で、ν
d≦31の範囲において(−0.00162×νd+0.63822)≦(θg,F)≦(−0.00275×νd+0.68125)の関係を満たし、且つ、ν
d>31の範囲において(−0.00162×νd+0.63822)≦(θg,F)≦(−0.00162×νd+0.64622)の関係を満たす。これにより、ノーマルラインに近付けられた部分分散比(θg,F)を有する光学ガラスが得られるため、この光学ガラスから形成される光学素子の色収差を低減できる。ここで、ν
d≦31における光学ガラスの部分分散比(θg,F)の下限は、好ましくは(−0.00162×νd+0.63822)、より好ましくは(−0.00162×νd+0.63922)、さらに好ましくは(−0.00162×νd+0.64022)である。一方で、ν
d≦31における光学ガラスの部分分散比(θg,F)の上限は、好ましくは(−0.00275×νd+0.68125)、より好ましくは(−0.00275×νd+0.68025)、さらに好ましくは(−0.00275×νd+0.67925)である。また、ν
d>31における光学ガラスの部分分散比(θg,F)の下限は、好ましくは(−0.00162×νd+0.63822)、より好ましくは(−0.00162×νd+0.63922)、さらに好ましくは(−0.00162×νd+0.64022)である。一方で、ν
d>31における光学ガラスの部分分散比(θg,F)の上限は、好ましくは(−0.00162×νd+0.64622)、より好ましくは(−0.00162×νd+0.64522)、さらに好ましくは(−0.00162×νd+0.64422)である。なお、特にアッベ数(ν
d)が小さい領域では、一般的なガラスの部分分散比(θg,F)はノーマルラインよりも高い値にあり、一般的なガラスの部分分散比(θg,F)とアッベ数(ν
d)の関係は曲線で表される。しかしながら、この曲線の近似が困難であるため、本発明では、一般的なガラスよりも部分分散比(θg,F)が低いことを、ν
d=31を境に異なった傾きを有する直線を用いて表した。
【0078】
また、本発明の光学ガラスは、着色が少ないことが好ましい。特に、本発明の光学ガラスは、ガラスの透過率で表すと、厚み10mmのサンプルで分光透過率70%を示す波長(λ
70)が500nm以下であり、より好ましくは470nm以下であり、さらに好ましくは450nm以下であり、さらに好ましくは430nm以下である。また、本発明の光学ガラスは、厚み10mmのサンプルで分光透過率5%を示す波長(λ
5)が420nm以下であり、より好ましくは400nm以下であり、さらに好ましくは380nm以下である。これにより、ガラスの吸収端が紫外領域の近傍に位置するようになり、可視域におけるガラスの透明性が高められるため、この光学ガラスをレンズ等の光学素子の材料として好ましく用いることができる。
【0079】
また、本発明の光学ガラスは、比重が小さいことが好ましい。より具体的には、本発明の光学ガラスの比重は5.00[g/cm
3]以下であることが好ましい。これにより、光学素子やそれを用いた光学機器の質量が低減されるため、光学機器の軽量化に寄与できる。従って、本発明の光学ガラスの比重は、好ましくは5.00、より好ましくは4.90、好ましくは4.80を上限とする。なお、本発明の光学ガラスの比重は、概ね3.00以上、より詳細には3.50以上、さらに詳細には4.00以上であることが多い。なお、本発明の光学ガラスの比重は、日本光学硝子工業会規格JOGIS05−1975「光学ガラスの比重の測定方法」に基づいて測定することができる。
【0080】
また、本発明の光学ガラスは、プレス成形性が良好であることが好ましい。すなわち、本発明の光学ガラスは、再加熱試験(イ)後の試験片の波長587.56nmの光線(d線)の透過率を、再加熱試験前の試験片のd線の透過率で除した値が、0.95以上であることが好ましい。また、再加熱試験(イ)前の試験片の透過率が70%となる波長であるλ
70と、再加熱試験後の試験片のλ
70との差が20nm以下であることが好ましい。これにより、リヒートプレス加工を想定した再加熱試験によっても失透及び着色が起こり難くなることで、ガラスの光線透過率が失われ難くなるため、ガラスに対してリヒートプレス加工に代表される再加熱処理を行い易くできる。すなわち、複雑な形状の光学素子をプレス成形で作製できるため、製造コストが安く、且つ生産性の良い光学素子製造を実現できる。
【0081】
ここで、再加熱試験(イ)後の試験片の波長587.56nmの光線(d線)の透過率を、再加熱試験(イ)前の試験片のd線の透過率で除した値は、好ましくは0.95、より好ましくは0.96、さらに好ましくは0.97を下限とする。また、再加熱試験(イ)前の試験片のλ
70と再加熱試験(イ)後の試験片のλ
70との差は、好ましくは20nm、より好ましくは18nm、さらに好ましくは16nmを上限とする。
【0082】
なお、再加熱試験(イ)は、試験片15mm×15mm×30mmを再加熱し、室温から150分で各試料の転移温度(Tg)より80℃高い温度まで昇温し、前記光学ガラスのガラス転移温度(Tg)よりも80℃高い温度で30分間保温し、その後常温まで自然冷却し、試験片の対向する2面を厚み10mmに研磨した後に目視観察することにより行うことができる。
【0083】
[プリフォーム及び光学素子]
作製された光学ガラスから、例えばリヒートプレス成形や精密プレス成形等のモールドプレス成形の手段を用いて、ガラス成形体を作製できる。すなわち、光学ガラスからモールドプレス成形用のプリフォームを作製し、このプリフォームに対してリヒートプレス成形を行った後で研磨加工を行ってガラス成形体を作製したり、例えば研磨加工を行って作製したプリフォームに対して精密プレス成形を行ってガラス成形体を作製したりできる。なお、ガラス成形体を作製する手段は、これらの手段に限定されない。
【0084】
このようにして作製されるガラス成形体は、様々な光学素子に有用であるが、その中でも特に、レンズやプリズム等の光学素子の用途に用いることが好ましい。これにより、光学素子が設けられる光学系の透過光における、色収差による色のにじみが低減される。そのため、この光学素子をカメラに用いた場合は撮影対象物をより正確に表現でき、この光学素子をプロジェクタに用いた場合は所望の映像をより高精彩に投影できる。
【実施例】
【0085】
本発明の実施例(No.1〜No.62)及び比較例(No.A〜No.E)の組成、並びに、屈折率(n
d)、アッベ数(ν
d)、部分分散比(θg,F)、分光透過率が5%及び70%を示す波長(λ
5、λ
70)を表1〜表9に示す。なお、以下の実施例はあくまで例示の目的であり、これらの実施例のみ限定されるものではない。
【0086】
本発明の実施例及び比較例のガラスは、いずれも各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、弗化物、水酸化物、メタ燐酸化合物等の通常の光学ガラスに使用される高純度の原料を選定し、表に示した各実施例及び比較例の組成の割合になるように秤量して均一に混合した後、白金坩堝に投入し、ガラス組成の熔融難易度に応じて電気炉で1100〜1400℃の温度範囲で3〜5時間溶解し、攪拌均質化して泡切れ等を行った後、1000〜1300℃に温度を下げて攪拌均質化してから金型に鋳込み、徐冷してガラスを作製した。
【0087】
実施例及び比較例のガラスの屈折率(n
d)、アッベ数(ν
d)及び部分分散比(θg,F)は、日本光学硝子工業会規格JOGIS01―2003に基づいて測定した。そして、求められたアッベ数(ν
d)及び部分分散比(θg,F)の値について、関係式(θg,F)=−a×ν
d+bにおける、傾きaが0.00162及び0.00275のときの切片bを求めた。なお、本測定に用いたガラスは、徐冷降温速度を−25℃/hrとして、徐冷炉にて処理を行ったものを用いた。
【0088】
実施例及び比較例のガラスの透過率は、日本光学硝子工業会規格JOGIS02に準じて測定した。なお、本発明においては、ガラスの透過率を測定することで、ガラスの着色の有無と程度を求めた。具体的には、厚さ10±0.1mmの対面平行研磨品をJISZ8722に準じ、200〜800nmの分光透過率を測定し、λ
5(透過率5%時の波長)及びλ
70(透過率70%時の波長)を求めた。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
【表5】
【0094】
【表6】
【0095】
【表7】
【0096】
【表8】
【0097】
【表9】
【0098】
本発明の実施例の光学ガラスは、ν
d≦31のものは部分分散比(θg,F)が(−0.00275×νd+0.68125)以下、より詳細には(−0.00275×νd+0.67840)以下であった。また、ν
d>31のものは、部分分散比(θg,F)が(−0.00162×νd+0.64622)以下、より詳細には(−0.00162×νd+0.64280)以下であった。その反面で、本発明の実施例の光学ガラスは、部分分散比(θg,F)が(−0.00162×νd+0.63822)以上、より詳細には(−0.00162×νd+0.64050)以上であった。すなわち、本願の実施例のガラスについての部分分散比(θg,F)とアッベ数(ν
d)の関係は、
図2に示されるようになった。そのため、実施例の光学ガラスは、部分分散比(θg,F)が所望の範囲内にあることがわかった。
一方、本発明の比較例(No.A、No.C〜No.E)のガラスは、ν
d>31であり、且つ部分分散比(θg,F)が(−0.00162×νd+0.64622)を超えていた。また、本発明の比較例(No.B)のガラスは、ν
d≦31であり、且つ部分分散比(θg,F)が(−0.00275×νd+0.68125)を超えていた。
従って、本発明の実施例の光学ガラスは、比較例のガラスに比べ、アッベ数(ν
d)との関係式において部分分散比(θg,F)が小さいことが明らかになった。
【0099】
また、本発明の実施例の光学ガラスは、いずれも屈折率(n
d)が1.80以上、より詳細には1.90以上であるとともに、この屈折率(n
d)は2.00以下、より詳細には1.96以下であり、所望の範囲内であった。
【0100】
また、本発明の実施例の光学ガラスは、いずれもアッベ数(ν
d)が20以上、より詳細には28以上であるとともに、このアッベ数(ν
d)は40以下、より詳細には33以下であり、所望の範囲内であった。
【0101】
また、本発明の実施例の光学ガラスは、λ
70(透過率70%時の波長)がいずれも500nm以下、より詳細には422nm以下であった。また、本発明の実施例の光学ガラスは、λ
5(透過率5%時の波長)がいずれも420nm以下、より詳細には370nm以下であった。このため、本発明の実施例の光学ガラスは、可視光に対する透過率が高く着色し難いことが明らかになった。
【0102】
従って、本発明の実施例の光学ガラスは、屈折率(n
d)及びアッベ数(ν
d)が所望の範囲内にありながら、可視光に対する透過率が高く、且つ色収差が小さいことが明らかになった。
【0103】
以上、本発明を例示の目的で詳細に説明したが、本実施例はあくまで例示の目的のみであって、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を当業者により成し得ることが理解されよう。