(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお実施の形態を説明するための全図において同一部には原則として同一符号を付しその繰り返しの説明は省略する。また図面では特徴をわかりやすく示すため、断面ハッチングは適宜省略し、主要な構成要素を強調して示し、寸法比率などは実際とは異なる場合がある。
【0026】
<概要等>
本実施の形態は、画面にカラー動画像を表示可能な液晶表示装置(LCD)及びそれを搭載する電子機器に適用した場合を説明する。
図1〜
図9では、前提を含め基本的な実施の形態を説明する。それに基づき
図10〜
図15では実施の形態1、
図16〜
図19では実施の形態2を説明する。
図20〜
図30では更に好適な特性の条件について説明する。
【0027】
本実施の形態の液晶パネル1は、
図2のように基本的には横電界モードであるが、例えば
図4(B),
図10,
図12等に示すように、スリット50Aの延在方向(X)と平行方向にアンチパラレル配向のラビング処理を施した新方式(従来のFFS方式とは異なる高速横電界モード)である。この高速横電界モードの詳細については後述する。本実施の形態の液晶パネル1は、この高速横電界モードに対応した、上下電極(31,32)により形成される開口部(スリットともいう)50A等を有する構造である。この開口部50Aは、複数の横(X)方向のスリットSを有する櫛歯形状である。そして、更に本実施の形態の液晶パネル1は、画素の開口部(スリット)50Aにおける縦(Y)方向の端部(A1等)を、BM22(遮光膜)における幅が大きい方(横BM部22A)によって隠す構成となっている。これは、スリット50Aの端部(A1等)においては、上述の高速横電界モードで期待される高速な応答などは実現されず、従来のFFSモードと同程度の応答速度などとなっていたためである。即ち、BM22でスリット50Aの端部(A1等)を隠すことで、画素の端部の領域(
図4(B)のQ2)の特性(スリット50Aの端部では従来のFFS方式と同程度の応答速度などとなってしまうという第2の特性)を抑え、画素の内部の領域(Q1)の特性(高速横電界モードにより高速な応答速度などを実現する第1の特性)に均一化する。
【0028】
[電子機器・液晶表示装置]
図1は、本実施の形態の表示装置である液晶表示装置100、及びそれを搭載して成る電子機器200のブロック構成を示す。本電子機器200は、液晶表示装置(言い換えるとLCDモジュール)100、制御部201、記憶部202、入力部203、出力部204、及び表示I/F(インタフェース)部205、等を含んで成る構成である。制御部201は、例えばCPU,ROM,RAM、及びそれらの上で動作するプログラム等で構成される。例えばCPUはROMからRAMへロードしたプログラムに従う演算処理により電子機器200の制御処理を行う。記憶部502は、一次メモリや二次メモリ、及びそれらに格納される映像データなどを含むデータ情報などで構成される。入力部203は、ボタン等の入力装置及びそのI/F処理部で構成される。出力部204は、表示装置以外の出力装置及びそのI/F処理部で構成される。表示I/F部205は、液晶表示装置100を接続し、そのI/F処理を行う。その他図示しない通信I/F部や電源部などを有する。
【0029】
液晶表示装置(LCDモジュール)100は、液晶パネル1と、主駆動制御を行うLCDドライバ101(言い換えるとLCDコントローラ)と、液晶パネル1の各電極線を駆動する各ドライバ(ゲートドライバ111、データドライバ112、上下電極ドライバ113)とを有する構成である。各ドライバは、例えばICチップを搭載したフレキシブルプリント回路基板や、液晶パネル1のガラス基板上の回路などで実装される。なお各ドライバを適宜統合や分離した形態としてもよい。
【0030】
制御部201は、例えば外部から映像信号を入力、あるいは内部で映像信号を生成する。制御部201から表示I/F部205を介して映像信号や制御指示情報をLCDドライバ101へ与える。LCDドライバ101は、各ドライバ(111〜113)へ映像/画像データや例えばタイミング信号などの制御信号を与えて制御する。ゲートドライバ111は、制御に従い、液晶パネル1のゲート線(GL)群に走査信号を与える。データドライバ112は、制御に従い、液晶パネル1のデータ線(DL)群にデータ信号を与える。上下電極ドライバ113は、制御に従い、液晶パネル1の上電極31及び下電極32(
図2)に対して、対応する電圧信号(即ち画素電極PIXに対する画素電圧、共通電極COMに対する共通電圧)を与える。
【0031】
電子機器500の例としては、テレビジョン装置(言い換えると液晶TV装置)、PC用ディスプレイ、デジタルカメラ/ビデオカメラ、ノートPC、スマートフォンなどの携帯電話機やタブレットなどの携帯端末、カーナビのディスプレイ等、各種適用可能である。例えば液晶TV装置やPC用ディスプレイの場合、LCDモジュール100に前面のフィルターガラス等を加え筐体で保持した構造となる。例えばデジタルカメラやビデオカメラの場合、ファインダ/モニタ等の表示部をLCDモジュール100で構成する。例えばノートPCの場合、画面部をLCDモジュール100で構成する。例えば携帯電話機の場合、画面部をLCDモジュール100で構成する。
【0032】
[液晶パネル−断面]
図2に、
図1の液晶パネル1の基本構造として、画素のY−Z方向の断面の概要構成を示している。本液晶パネル1は、大きくは、第1の基板であるアレイ基板10と、第2の基板であるCF基板20(対向基板ともいう)と、それらの間に挟持・封止される液晶層30とを有する構成である。なお
図2は概要構成であり、絶縁膜、配向膜、偏光板、バックライト、その他の公知要素については図示省略している。
【0033】
アレイ基板10は、視線に対して背面側の構造及びガラス基板11を含んで成る基板構造体である。Z方向で、ガラス基板11上に、下電極32、誘電体膜33、上電極31が積層されている。詳細にはゲート線やTFT部なども有するが後述する。図示のように上電極31と下電極32との対向面における電極部(ここでは上電極31)の重なりの有無があり、この平面視(X−Y)での形状によりスリットSを含む開口部(
図3,
図4等の50)が形成される。この開口部を含む上下電極(31,32)の電極層上で、液晶層30の液晶の配向が基板面内方向(X−Y)で制御される方式(即ち横電界モード)である。
【0034】
上下電極(31,32)は、一方が画素電極(PIXとする)、他方が共通電極(COMとする)である。上下電極(31,32)は、液晶層30でフリンジ電界を形成するための電極部である。これらの組合せの構成例については各種可能であり、後述
図9でまとめている。共通電極COMは、複数画素領域(例えば画面)の全体にわたって基本的にベタ層で形成され、共通電圧の印加により画素に拠らず共通電位に制御される。画素電極PIXは、画素ごとに矩形などの層で構成され、画素ごとの電圧が供給され、画素ごとの電位に制御される。上下電極(31,32)は、ITO(Indium-Tin-Oxide)などの可視光透過性及び導電性を有する材料(言い換えると透明電極)で構成される。なお共通電極COMは、全面ベタ層ではなく複数のブロックなどで構成される場合はそれらが共通電極線で接続される構成となる。
【0035】
CF基板20は、視線に対して前面側の構造及びガラス基板21を含んで成る基板構造体である。例えば、Z方向で、ガラス基板21上、内面側(液晶層30に近い側を指す)に、BM22、及びCF23などの層が形成される。なお
図2ではBM22及びCF23を同層にしているが別層でもよい。BM22及びCF23上(内面側)には、図示しない平坦化・保護層としての機能を有するオーバーコート層などを設けてもよい。またCF基板20の前面側には、偏光板の他、静電防止層などを設けてもよい。
【0036】
BM22は、遮光膜(黒膜ともいう)であり、画素間のクロストークを低減し、遮光性(光吸収性ないし低透過性)の材料、例えばCrなどの金属材料や、各色のカラーフィルタの重ね合わせ等で構成される。BM22は、画素を区画する格子状に形成される。CF23は、画素配列に応じて配置されるカラーフィルタであり、例えばR,G,Bの3色の各層で構成される(後述
図8)。なお本実施の形態ではBM22はCF基板20側に形成されるが、他の形態としてBM22がアレイ基板10側(上下電極(31,32)の電極層よりも上側)に形成されてもよい。
【0037】
液晶層30は、上下の基板(10,20)間で配向膜を介してネマティック液晶が封止された層である。液晶パネル1の額縁部などで封止材により上下の基板(10,20)間が接続され内部に液晶が封止される。液晶層30は、配向膜に対して所定のラビング処理(後述)が施されることで、液晶が所定の初期配向状態となる。
【0038】
ドライバ側(
図1)からの上下電極(31,32)に対する電圧印加により、誘電体膜33を介した上下電極(31,32)間に、画素の液晶の透過率の変調に応じた所定の電位差を与える。当該電位差により、液晶層30における画素の開口部(50)の付近においてフリンジ電界を発生させ、液晶分子を主に基板面内方向(X,Y方向)で回転させるように配向状態を制御する。
【0039】
アレイ基板10の背面側及びCF基板20の前面側にはそれぞれ偏光板が配置され、透過光の偏光状態が制御される。上下の偏光板の透過軸は直交の関係(ノーマリブラック構成)であり、一方はラビング方向(後述)と同じである。
【0040】
アレイ基板10の背面側にはバックライト等が配置され、図示しないバックライト制御用のドライバから、LCD制御に合わせて、バックライト照明状態などが制御される。バックライトからの出射光をもとに液晶パネル1で画素状態に応じて透過及び偏光が制御されることで前面側の画面に画像が形成される。
【0041】
[ラビング方向]
液晶層30の液晶は、高速横電界モードに対応した所定の初期配向性を持つように、液晶層30の上下の配向膜(第1、第2の配向膜)において所定のラビング方向にラビング処理が施される。アレイ基板10側の電極層(31,32)と液晶層30との間の第1の配向膜では、スリットS等の延在のX方向と概略平行方向である第1のラビング方向にラビング処理される(
図3(B),
図4(B)のRub、図示の左から右への方向)。CF基板20側の液晶層30との間の第2の配向膜は、第1の配向膜の第1のラビング方向とは逆方向である第2のラビング方向にラビング処理される。このアンチパラレル配向により高速横電界モードが構成される。これにより、液晶層30の液晶の初期配向状態として、第1のラビング方向(Rub)に沿って液晶分子の長軸が並ぶ。
【0042】
液晶層30の液晶は、例えば負の誘電率異方性を持つネマティック液晶から成る。この場合、ラビング方向(Rub)は、上記のように、スリットS等の延在のX方向と平行とする。なお正の誘電率異方性を持つネマティック液晶を用いる場合は、ラビング方向(Rub)を直交方向(Y)と平行とする。なお上記ラビング方向(Rub)は、スリットS等のX方向と完全に平行には限らず、ある程度までの角度(例えば1度)は許容される。
【0043】
[製造方法]
液晶パネル1の製造方法は例えば以下のプロセスとなる。なお構成A(
図9)の場合とする。アレイ基板10側では、ガラス基板11上に、ゲート線、データ線、及びTFT部などの層を形成する。その上に平坦化層としての機能を持つ絶縁膜を形成する。絶縁膜はポリイミドや酸化シリコン等の材料で構成される。絶縁膜上に、ITOのフォトエッチング等によるパターニングによる下電極32(画素電極PIX)を形成する。画素電極PIXの厚さは例えば500〜1500Åである。下電極32の上に、誘電体膜33を全面ベタ層で形成する。誘電体膜33は、絶縁性及び保護性を持ち、例えば窒化シリコンや酸化シリコン等の材料で構成され、プラズマCVD法などで形成される。誘電体膜33の厚さは例えば100〜1000Åである。誘電体膜33上に、ITOによる上電極31(共通電極COM)を形成する。例えば、スパッタ法、エッチング等により、スリット(開口部)を持つベタ層による共通電極COMを形成する。共通電極COMの厚さは例えば100〜1000Åである。上電極31上には、所定のラビング方向のラビング処理による第1の配向膜が形成される。配向膜は、ポリイミド等の高分子材料にラビング処理を施したもので構成される。
【0044】
CF基板20側では、ガラス基板21上に、CF23やBM22の層を形成し、その上にオーバーコート層などを形成し、その上に所定のラビング方向のラビング処理による第2の配向膜を形成する。上記アレイ基板10とCF基板20を対向させ、その間に液晶を注入し、額縁部で封止することで、液晶層30を形成する。液晶パネル1の背面側には偏光板やバックライトなどが取り付けられ、前面側には偏光板などが取り付けられる。液晶パネル1の額縁部の電極端には各ドライバ(
図1)が接続され、液晶表示装置100が構成される。
【0045】
[画素(構成B,構成β)]
図3は、
図9の構成B,構成βの場合で、画素の電極及び開口部などのX−Y平面の構成を示し、スリット端部の特性などについて説明する。構成Bは、上電極31が画素電極PIXで下電極32が共通電極COMの場合、構成βは、片側櫛歯形状の場合である。
図3(A)は、従来のFFS方式で存在する縦方向スリットを持つ場合、
図3(B)は、本実施の形態の横方向スリット(S)を持つ場合を示す。なお構成βの方が構成αよりも簡素な形状なので先に説明する。
【0046】
図3(A)で、401は、上電極(画素電極PIX)の電極部を示す。Z方向で対向する下電極(共通電極COM)はベタ層であるため図示省略する。402は、401の領域に対応した概略画素領域を示す。400は、上下電極により形成されるスリット(言い換えると開口部)の領域であり、電極部401の外側の領域であり、上電極(PIX)部分が重ならず下電極(COM)部分のみの領域である。なお画素電極の形や櫛歯の数などは画素設計に応じて調整される。
図3(A)では
図3(B)と対比してわかりやすいように横長としているが、縦長の画素にする場合は縦長の形状になる。
【0047】
Sは、個別の縦(Y)方向のスリット(言い換えると開口、間隙など)である。なお400は画素全体でのスリット(開口部)を指すものとし、複数の個別のスリットSを含んでいる。S1,S2は、複数の同一形状のスリットSのうちX方向で左右の最外のスリットである。各スリットSは、一方端(図示上側)が電極部401により閉じられ他方端(図示下側)が開口されてつながっている。E1,E2,E3は電極部401のうちのY方向に延在する突出部(言い換えると櫛歯)である。ここでは櫛歯は矩形の場合である。X方向で隣接する櫛歯の対によりスリットSが形成されている。Ewは、電極部401のうち、幅が広い突出部であって言い換えると画素電極端部を示している。a0は画素(401,Ew)の端の線である。a1は、スリット端部(最外スリットS1の端部)のスリット端SEの線である。S2,b1(SE)も同様である。
【0048】
a1(SE),b1(SE)付近を境に、R1は、画素内部領域であり、前述の第1の特性が確保される領域である。R2は、R1(SE)の外側の画素端部領域であり、R1の第1の特性とは異なる、相対的に応答が低速な前述の第2の特性となる領域である。
【0049】
なお
図3(A)では、アレイ基板側のラビング方向(Rub)は、縦(Y)方向のスリットSの閉じた先端側へ向かう方向(図示の下から上)となる。
【0050】
図3(B)は、
図3(A)を右に90度回転させた構成に概略相当する(画素電極の詳細などは除く)。50Bは、構成Bの場合の、上下電極(401,402)により形成される画素全体での開口部(スリット)の領域を示す。401は上電極31(PIX)に対応し、402は下電極32(COM)のうちの概略画素領域に対応する。なお403は、後述のTFT部43(それに接続されるコンタクト受け44)との接続部の例を示す。なおL0はスリットSの長さである。
図3(B)のような上下電極(31,32)及び開口部50Bの構成は、LCDに適用した場合、スリット端SEを境に、R1の領域は、本実施の形態の新方式(高速横電界モード)に対応した高速な応答性などを持つ前述の第1の特性となる。しかし、R2の領域は、相対的に低速な応答性などを持つ前述の第2の特性となる。詳しくは、R1に比べR2の領域では、電圧印加時の応答速度が遅いだけでなく、輝度カーブ及び配向安定性などが異なる。またR1とR2では初期配向状態が異なるので、R2では配向異常による表示上の乱れが起きる可能性もある。
【0051】
そこで、本実施の形態(後述の実施の形態2)では、R2の領域を、BM22(横BM部22A)で重ねて隠す候補の領域とする。即ちR2の領域を太い幅の横BM部22Aにより隠すような画素構成とする。これにより画素において応答速度などの特性を向上及び均一化した新方式(高速横電界モード)を実現できる。応答性だけでなく、輝度カーブや配向安定性も均一化でき、表示品質を向上できる。
【0052】
図3(B)のように、横(X)方向のスリットSを持つ開口部50Bの構成とすることで、後述(
図8)のように幅が大きい横BM部22Aによる画素端部領域(R2)の遮光がしやすく、効率的な画素構成が実現できる。例えば画素の表示に有効な領域を広くとることができる。なお比較として
図3(A)で画素の左右の端部の領域(R2)をBM22(縦BM部22B)により隠す場合、画素の表示に有効な領域を広くとることができず、非効率的な画素構成になるデメリットがある。
【0053】
上記のように画素の両端のR2領域に対応するスリット端部が画素間にくる場合に、R1,R2の特性の違い(例えば当該特性の違いから生じる漏れ光)を効率的に隠すことができるように、
図3(B)のようにX方向のスリットSを持つ開口部50Bを横BM部22Aの構成に合わせて配置する構成である(後述
図16等)。
【0054】
[画素(構成A,構成α)]
図4は、
図9の構成A,構成αの場合で、画素の電極及び開口部などのX−Y平面の構成を示し、スリット端部の特性などについて説明する。構成Aは、上電極31が共通電極COMで下電極32が画素電極PIXの場合、構成αは、両側櫛歯形状の場合である。
図4(A)は、縦方向スリットを持つ場合、
図4(B)は、本実施の形態の横方向スリット(S)を持つ場合を示す。
【0055】
図4(A)で、501は、上電極(COM)の電極部を示す。502は、下電極(PIX)の矩形の領域を示し、概略画素領域に対応する。500は、上下電極(501,502)により形成される画素全体での開口部(スリット)の領域を示し、電極部501の外側の領域であり、上電極(COM)部分が重ならず下電極(PIX)部分のみの領域である。503(Ka)は、電極部501のうち上側へ長く延在する突出部(櫛歯)、504(Kb)は、下側へ長く延在する突出部(櫛歯)である。ここでは櫛歯は矩形の場合である。X方向で隣接する櫛歯の対により個別のスリット(Sa,Sb)が形成されている。508は、横(X)方向に延在する電極部であり、複数の突出部(Ka,Kb)の一方端側を接続している。このようにX方向の軸(508)を中心に上下の両側に櫛歯(Ka,Kb)が互い違いに出る両側櫛歯形状である。
【0056】
505(Sa)は、開口部500のうち、上側へ長く延在する個別の縦(Y)方向のスリット、506(Sb)は、下側へ長く延在する個別の縦(Y)方向のスリットである。507は、横(X)方向に延在するスリット(連通開口部ともいう)であり、複数のスリット(Sa,Sb)の一方端側を接続している。各スリット(Sa,Sb)は、一方端が電極部501により閉じられ他方端が開口されて連通開口部507につながっている。このようにX方向の軸(507)を中心に上下の両側にスリット(Sa,Sb)が互い違いに出る両側櫛歯形状である。
【0057】
A1は、画素の開口部500のX方向での左右の端部の領域であり、A1を境に、前述同様に、特性の異なる領域になる。
図4(A)では、アレイ基板側のラビング方向(Rub)は、縦(Y)方向のスリットと同じ平行方向(図示の上から下)である。
【0058】
図4(B)は、
図4(A)を左に90度回転させた構成に概略相当する(画素電極の詳細などは除く)。50Aは、構成Aの場合の、上下電極(31(COM),32(PIX))により形成される画素全体での開口部(スリット)の領域であり、上電極31(COM)の外側の領域であり、上電極31(COM)部分が重ならず下電極32(PIX)部分のみの領域である。なお開口部50(50A,50B)は、画素領域のうちの表示に有効な領域といった意味ではなく、平面視(X−Y)において上下電極(31,32)の重なりで上電極31部分が無いことで下電極32部分のみが開口して存在する領域のことを指している。53(Ka)は、電極部(31)のうち左側へ長く延在する突出部(櫛歯)、54(Kb)は、右側へ長く延在する突出部(櫛歯)である。Y方向で隣接する櫛歯の対により個別のスリットS(Sa,Sb)が形成されている。58は、上電極31のうち、縦(Y)方向に延在する電極部であり、複数の突出部(Ka,Kb)の一方端側を接続している。即ち上電極31(COM)は、Y方向の軸(58)に対して左右の両側に櫛歯(Ka,Kb)が互い違いに突出する両側櫛歯形状である。
【0059】
55(Sa)は、開口部50Aのうち、左側へ長く延在する個別のX方向のスリット、56(Sb)は、右側へ長く延在する個別のX方向のスリットである。57は、縦(Y)方向に延在するスリット(連通開口部ともいう)であり、複数のスリットS(Sa,Sb)の一方端側を接続し、連続的な開口を形成している。各スリットSは、一方端が電極部(31)により閉じられ他方端が開口されて連通開口部57につながっている。
【0060】
開口部50Aにおいて、X方向位置が同じであるY方向の列に配置される複数のスリットSは、左右の端の位置が揃っており同じ形状であり、Y方向で一定のピッチで並んでいる。X方向で隣接する列のスリットS群は、Y方向の連通開口部(縦方向スリット)57を軸に、その左右の両側に、スリットSがY方向で互い違いにずれて配置される両側櫛歯形状である。このずれは、スリットSのY方向のピッチの1/2分である(後述
図23)。この互い違いの両側櫛歯形状は、概略的にはスリットSと突出部(電極部)とが千鳥状に配置された構造とも言える。
【0061】
スリット端SEは、画素の上下電極(31,32)による開口部(スリット)50の構成においてY方向で最も外側に存在するスリット(最外スリットと称す)の外側の辺(線)を示す。SEは、ここでは下電極32(PIX)の矩形の辺に対応する。端部(スリット端部ともいう)A1は、画素の開口部50AのY方向での上下の端部の領域であり、スリット端SEの線を中心に含んだ付近の領域である。
【0062】
図4(B)では、アレイ基板10側のラビング方向(Rub)は、横(X)方向のスリットSの構造に対応した、X方向と平行方向(図示の左から右)である。なおL0は開口部50AのX方向のスリット(Sa,Sb及び57の幅を含む)のトータルのX方向の長さである。L1,L2は左右の各スリット(Sa,Sb)の長さである。
【0063】
図4(B)のような上下電極(31,32)及び開口部50Aの構成は、LCDに適用した場合、前述同様に、A1(SE)を境に、その内外の画素内部領域Q1と画素端部領域Q2では、応答速度などの特性が異なってくる。Q1の領域は、新方式(高速横電界モード)に対応した高速な応答性などを持つ前述の第1の特性となる。しかしQ2の領域は、前述の第2の特性(スリットの端部では従来のFFS方式と同程度の応答速度などとなってしまうという第2の特性)となる。理由の1つは上下電極(31,32)などの形状・有無が異なるためである。詳しくは、Q1に比べQ2の領域では、電圧印加時の応答速度が遅いだけでなく、輝度カーブ及び配向安定性などが異なってくる。またQ1とQ2では初期配向状態が異なるので、Q2では配向異常による表示上の乱れが起きる可能性もある。
【0064】
そこで、本実施の形態(後述の実施の形態1)では、画素のY方向の端部A1(スリット端SE)付近を境にした、Q2のような領域を対象として、Z方向の上方に後述(
図8等)のBM22(特に横BM部22A)を重ねる配置により、Q2領域を隠して第2の特性を隠す構成である。即ちQ2領域の第2の特性を幅が太い横BM部22Aにより隠すような画素構成とする。これにより各画素においてQ2領域の特性(応答速度、輝度カーブ、及び配向安定性など)を抑え、Q1領域の特性に均一化することができ、表示品質を向上できる。
【0065】
図4(B)のように、横(X)方向のスリットSを持つ開口部50Aの構成とすることで、後述(
図8)のように幅が大きい横BM部22Aにより端部(A1)の領域(Q2)の遮光がしやすく、効率的な画素構成が実現できる。例えば画素の表示に有効な領域を広くとることができる。比較として
図4(A)で左右の端部(A1)の領域を縦BM部22Bにより隠す場合、画素の表示に有効な領域を広くとることができず、非効率的な画素構成になるデメリットがある。
【0066】
なお
図4(B)でスリット(Sa)の長さL1を0にすれば、構成β(
図3)のような片側櫛歯形状となる。また
図4(B)では、開口部50Aが画素ごとに閉じずにY方向の画素ラインにわたって連続的に開口の場合を示しているが、後述のように画素ごとに閉じた形状としてもよい。いずれの構成でも、画素単位の形状でみると、矩形の画素電極PIX等の存在により、スリット端部A1ないしスリット端SEが生じ、その内外の領域で特性の違いが生じる。
【0067】
[液晶配向性]
図5〜
図7を用いて本実施の形態の方式における液晶層30の液晶配向性などについて説明する。
【0068】
図5では、
図4(B)と同様に開口部(スリット)50Aの構成を示す。このような両側櫛歯形状により、X方向における各スリットSの長辺(スリットSの幅方向で対向する一方の側及び他方の側)の近傍領域(F1,F2)は、X方向で概略同じライン上に並んでいる。これらスリットSの長辺の領域(F1,F2)は、基板面内(X,Y)での液晶分子の回転方向として、F1(実線),F2(破線)で示す2種類の回転方向がある。そしてX方向のライン上では同じ回転方向の領域が並んでいる。Y方向では2種類の領域(F1,F2)が交互に配置されている。X方向で隣接する列同士及びX方向ライン上で、液晶回転方向が揃っているので、配向安定性が高い。
【0069】
図6は、
図5の一部拡大で2種類の液晶配向性の領域(F1,F2)を示す。(a)は電圧OFF時及び初期配向状態、(b)は電圧ON時である。701は液晶分子のイメージを示す。F1は、X−Y平面における液晶のツイストないし回転の方向が右回りの領域を示し、F2は左回りの領域を示す。F1,F2は、スリットS(Sa,Sb)の対向する2つの長辺(対応する突出部の長辺)を中心とする近傍領域を示す。例えばある左側のスリット55(Sa)の上側の長辺a1、下側の長辺a2を有する。またそのスリット55(Sa)の右側にある突出部53(Ka)の上側の長辺a3、下側の長辺a4を有する。そしてX方向で長辺a1,a3は概略同じライン上に並び、長辺a2,a4は概略同じライン上に並ぶ。
【0070】
スリットSの一方端の短辺は縦方向スリット57に開口で接続されており、スリットSの各長辺は、縦方向スリット57につながる角部を有する。この角部は、電界制御機能(言い換えると液晶配向を安定化させる機能)を持つ。即ち、各スリットSの長辺(例:a1)では、電極部(58)により閉じられた一方端の角部から、開口される他方端の角部までの線において、液晶の回転方向が同じ(例:F1)になり、配向が安定化する。これはY方向の連通開口部57に対して左右のスリットS(Sa,Sb)で同様である。例えばスリットSaの長辺a1の隣に存在するスリットSbの長辺a3においても、同様に角部の電界制御機能を持つので、当該長辺a3でも液晶の回転方向が同じ(F1)になり、配向が安定化する。またスリットSの他方側の長辺(a2,a4)においては、一方側の長辺(a2,a4)に対して逆の回転方向の領域(F2)となり、配向が安定化する。
【0071】
図6(a)の状態では、各液晶分子は、横(X)方向に長軸が沿って配向している。上下電極(31,32)に対する電圧印加により、(a)から(b)の状態へ遷移する。この際、発生するフリンジ電界により、液晶分子は図示のようにX−Y平面で各方向(右回り、左回り)に回転しながらZ方向へ立ち上がる。なおスリットSのF1,F2の間の領域では回転方向が混在する。
【0072】
そして
図6(b)の状態では、各スリットSの辺(例:a1〜a4)で、X方向ライン上、液晶の配向の状態が概略揃う。よって本方式では、電圧印加時の応答速度が速く(応答時間が短く)、配向安定性が高く、表示品質が高くなる。
【0073】
図7は、
図5のA−A´断面でのZ方向での液晶配向状態を示す。(a)は電圧OFF時及び初期配向状態、(b)は電圧ON時である。(a)では、アレイ基板10におけるラビング方向Rub(左から右)により、800のように所定のプレチルト角によるプレチルト方向で液晶分子が初期配向している。液晶分子は、ラビング方向Rubの進行方向(右)側に対応した長軸の一方端がZ方向で少し上になる。
【0074】
図7(a)から電圧印加により
図7(b)の状態へ遷移する。この際、液晶分子が
図6のように面内(X,Y)で回転しながら
図7のようにZ方向で立ち上がる。
図7(b)で、スリットS(Sa,Sb)上の領域で、a線は連通開口部57の位置に対応する。a線から右側(801)では、プレチルト方向(800)に対応した正の方向に液晶が立ち上がり、左側(802)では、逆の方向に液晶が立ち上がる。即ち、左側の領域(802)の方が右側(801)よりも立ち上がりがしにくく応答性が不利である。
【0075】
これに対応して、
図4(B)のように、本方式では、開口部50Aにおいて左右のスリット(Sa,Sb)の長さ(L1,L2)を変え、L1<L2として、L1部分の割合を低減した構成である。これにより応答の特性を向上できる。
【0076】
[高速横電界モード]
本実施の形態の液晶パネル1に用いられている高速横電界モードについて
図4等を参照しながら説明する。例えば構成Aの場合、共通電極COMは、各画素に跨り画面全体にわたって面状に設けられ、所定の長さの長辺及び所定の幅の短辺を持つ矩形状の開口(スリットS)が、画素電極PIXに対向する位置に複数設けられている(
図4(B)等)。複数の開口(S)は、互いにその延在の方向が同一(
図4(B)ではX方向)で配置されている。本実施の形態では、電圧印加時には開口(S)の幅方向(
図4(B)ではY方向)において対向する長辺の一方の側および他方の側の近傍領域(
図5,
図6のF1,F2)の液晶層30の液晶分子が互いに逆方向の回転でねじれて配向するようになっている。これにより応答速度の特性が改善される。
【0077】
上記開口(S)の長さは例えば10〜60μmであり、40μm未満であることが好ましい。40μm未満とした場合、液晶分子の回転方向が安定化しやすいためである。上記開口(S)の幅は例えば2〜5μmであり、開口(S)のピッチは例えば4〜10μmである。応答速度を高めるためには、開口(S)の幅やピッチはより小さいことが好ましい(これらを考慮した特性については後述
図23等)。
【0078】
同じライン(
図4(B)では縦の列)に配置された複数の開口(S)は、両端の位置が揃った同じ形状であり、隣り合うライン同士では、個々の開口(S)が互い違いにずれて配置されている。ずれの大きさは、例えば
図4(B)ではY方向にピッチの1/2分である。このような互い違いの配置(言い換えると概略千鳥状の配置)により、隣り合うラインの開口(S)同士では、
図5,
図6のように同じ方向に回転する液晶分子が近くなる。2種類の回転方向(右,左)の領域(F1,F2)がそれぞれ概略同じライン上に整列する。画面内では2種類の回転方向の領域(F1,F2)のラインがY方向で交互に配置される形となる。このような配置により画面における配向が安定化する。
【0079】
上記共通電極COMには、同じライン(縦の列)において幅方向で隣り合って配置される複数の開口(S)同士を接続する連通開口部57を有する。連通開口部57は、隣り合うラインで互い違いに配置される複数の開口(S)同士を、それぞれ一方端の短辺が開口となる形で連結する。1つの開口(S)における幅方向で対向する2つの長辺は、それぞれ、一方端は電極部(58)により閉じられた角部となり、他方端は連通開口部57に開かれた角部となる。
【0080】
1つの開口(S)における幅方向で対向する2つの長辺は、連通開口部57との交点に2つの角部を有する。これら角部は、電界制御部としての機能を有する。この電界制御部である角部は、開口(S)の長辺の延在方向において、一方端の閉じた角部から他方端の開いた角部までの近傍領域において、液晶分子の回転方向を同一にし、配向を安定化する。上記のように連通開口部57を設けた互い違いの櫛歯形状の開口部50により、個々の開口(S)に電界制御部としての角部を設けることで、配向安定性を高めている。
【0081】
なお連通開口部57を設けない形状(例えば各開口(S)が島状に独立する形状など)も可能であるが、連通開口部57を設けることで製造の容易性が上がる。連通開口部57を設けない形状とする場合、配向安定性を高くする場合は、開口(S)の長辺を短めにするとよい(例えば20μm以下)。
【0082】
配向膜(第1、第2の配向膜)は、液晶層30の液晶分子を、上記電極及び開口の形状に対応した所定の方向に配向させるように、各開口(S)の延在方向(X方向)と概略平行方向に、アンチパラレル配向のラビング処理が施される。即ち第1の配向膜は前述のラビング方向Rubで、第2の配向膜はその逆方向で、ラビング処理が施される。
【0083】
これにより、液晶層30の液晶は、
図6(a)のように電圧印加前、初期配向状態では、開口(S)の幅方向で対向する各長辺において、開口(S)上の液晶分子の長軸が略同一方向(X)を向いて配向する。
図6(b)のように電圧印加時には、開口(S)の幅方向で対向する長辺の一方の側および他方の側の近傍領域(F1,F2)における液晶分子は、互いに逆方向に回転して配向する。開口(S)の長辺の一方の側の近傍領域(F1)では、閉じた角部から開いた角部まで、液晶分子が右回りに回転して配向し、他方の側の近傍領域(F2)では、閉じた角部から開いた角部まで、液晶分子が左回りに回転して配向する。対応してZ方向では
図7(a)から(b)のように液晶分子の長軸が立ち上がるように配向する。また開口(S)の対向する長辺における中間の領域では、それぞれの方向(右,左)に回転する液晶分子が混在する。上記のように、上下電極(31,32)の電極層(開口部50を含む)上の液晶層30の液晶分子は、各回転方向(右,左)の領域(F1,F2)に分けられた形で配向が制御される。したがって電圧印加時の応答速度が高速となる。
【0084】
[画素・BM構成]
次に、
図8は、液晶パネル1における画素(セルともいう)及びBM22等のX−Y平面の構成例を示す。BM22(22A,22B)の幅などについて説明する。本実施の形態では、BM22は、X方向に並行する横BM部22Aと、Y方向に並行する縦BM部22Bとから成る。
【0085】
アレイ基板10側に、X方向に並行するゲート線41(GL)と、Y方向に並行するデータ線42(DL)との交差による画素(サブ画素ともいう)の領域が構成される。901は主な画素電極PIXに対応した概略画素領域、言い換えるとBM22部分を除く画素の開口の領域を示し、縦長の矩形の場合である。画素配列としてRGBの3色のストライプ配列の場合を示す。CF23は、液晶層30の透過光を色分離する層であり、本例では、画素の設計に応じて、Y方向の画素ラインごとにR(赤),G(緑),B(青)に色分けされた層である23r,23g,23bで構成される。なお他の画素配列として、デルタ配列、ダイアゴナル配列、レクタングル配列なども可能である。またRGBの3色に限らず、1色、2色、4色などの構成も可能である。
【0086】
ゲート線41とデータ線42との交差付近位置(本例では画素左上)にはTFT部43が配置されている。TFT部43は、TFT素子を含んで成り、ソース端子にデータ線42が接続され、ゲート端子にゲート線41が接続され、ドレイン端子に接続部(コンタクト受け等という)44を介して画素電極PIXが接続される。接続部(コンタクト受け)44の上に、画素電極PIXの一部が重なって接続される。
【0087】
BM22(22A,22B)は、ゲート線41、データ線42、TFT部43等の部分を平面視(X−Y)で隠すようにそれらの上に重なって配置される。横BM部22Aは、X方向のゲート線41上及びTFT部43上に重なる配置である。縦BM部22Bは、Y方向のデータ線42上に重なる配置である。そのため、横BM部22Aの幅(h1)は、縦BM部22Bの幅(h2)よりも太くなっている(h1>h2)。特にTFT部43を隠す必要や、所定のサイズ・比率等の画素(901)を構成する必要から、上記のように幅が異なるBM22(22A,22B)の構成となる。
【0088】
このような画素及びBM22の構成に応じて、本方式では、前述
図3,
図4等のように横(X)方向のスリットSを持つ開口部50の構造とし、かつ、各画素のY方向上下のスリット端部(
図4(B)のA1等)を、幅が大きい方の横BM部22Aによって隠す構成である。
【0089】
なお他の画素構成、例えば縦BM部22Bの方が幅が大きい構造の場合、それに応じて、縦(Y)方向のスリットを持つ開口部の構造とし、かつ各画素のX方向左右のスリット端部を縦BM部22Bにより隠す構成、なども可能である。
【0090】
[上下電極構成]
図9は、上下電極(31,32)に関する構成例をまとめている。なおRGBの3画素分の概略形状を示す。ラビング方向Rub及びスリット方向はX方向である。実施の形態1では構成A及び構成α、実施の形態2では構成B及び構成βを採る。
【0091】
構成Aは、上電極31(31A)が共通電極COMであり、下電極32(32A)が画素電極PIXである。上電極31A(COM)の形状は、複数画素領域などの全面でのベタ層を基本として画素ごとに開口(50A)を有する形状である。下電極31B(PIX)の形状は、画素ごとに矩形であり、格子状などで規則的に配置され、また上端側にコンタクト受け44との接続部となる張り出し部(1001)を持つ。
【0092】
構成Bは、上電極31(31B)が画素電極PIXであり、下電極32(32B)が共通電極COMである。上電極31B(PIX)の形状は、画素ごとに矩形を基本としてスリット(50B)を有する形状であり、また上端側にコンタクト受け44との接続部(1001)を持つ。下電極32B(COM)の形状は、複数画素領域などの全面でのベタ層であり、接続部(1001)の位置に対応して画素ごとに導通孔(1002)を持つ。
【0093】
また、上下電極(31,32)及びスリット(開口部)50の形状として、構成αは、横(X)方向スリットS(特に台形)による両側櫛歯形状であり、構成βは、横(X)方向スリットS(特に矩形)による片側櫛歯形状である。構成α(両側櫛歯形状)は、
図4,
図10等で示す。構成β(片側櫛歯形状)は、
図3,
図16等で示す。
【0094】
上記形態に限らず詳しくは各種の組合せの形態が可能である。例えば、構成Aの上電極31A(COM)の開口の形状を片側櫛歯形状にしてもよいし、構成Bの上電極31B(PIX)の形状を両側櫛歯形状にしてもよい。構成αの櫛歯を矩形にしてもよいし、構成βの櫛歯を台形にしてもよい。
【0095】
<実施の形態1>
次に、
図10〜
図15を用いて、実施の形態1の液晶表示装置100及び液晶パネル1について説明する。実施の形態1は、
図9の通り、構成A(上電極31Aが共通電極COM、下電極32Aが画素電極PIX)、及び構成α(両側櫛歯形状)である。
【0096】
[構成A,α−平面]
図10は、実施の形態1の液晶パネル1(1A)における画素及びBM22等のX−Y平面の構造を示す。RGB3画素分を示す。これは、
図8の構成に、構成αのような電極形状(
図12等)を適用した構成である。特に、幅(h1)が太い横BM部22Aにより、各画素で開口部50AのY方向のスリット端部(その少なくとも一部)を隠す構成である。詳しくは
図12以下で説明する。
【0097】
下電極32A(画素電極PIX)は、上端側の張り出し部1101でコンタクト受け44と接続される。下電極32A(PIX)及び上電極31A(COM)による開口部50Aは、両側櫛歯形状であり、概略的には
図4(B)の矩形を台形に変えたものに相当する。上電極31A(COM)による横(X)方向の台形状の複数のスリットSが下電極32A(PIX)の矩形の面上に設けられる。下電極32A(PIX)の平面における上電極31A(COM)が重ならない部分が開口部50Aとなる。
【0098】
本方式では、開口部50AのスリットSの方向(X)に対して、平行方向に延在する横BM部22Aと、垂直方向に延在する縦BM部22Bとで、横BM部22Aの方が縦BM部22Bよりも幅が太い構成である(h1>h2)。言い換えると、幅(h1)が太い横BM部22Aの方向(X)に合わせるように、開口部50のスリットSの方向を設計している。そして、画素ごとに開口部(スリット)50のスリット端部(
図12のA1,A2)を、幅(h1)が太い横BM部22Aにより隠す構成である。これにより前述(
図4(B))のような画素端部領域Q2の第2の特性を抑え、画素内部領域Q1の第1の特性に均一化する。なおX方向のスリットSに対する横BM部22Aの延在の方向は、必ずしも同一方向に限らず、ある程度まで斜めになってもよい。例えばスリットS/櫛歯の台形の傾きに合わせてもよい。
【0099】
[構成A−断面]
図11は、実施の形態1の液晶パネル1(1A)における画素及びBM22等のX−Z断面の構造を示す。
図10のA−A´断面に相当する。アレイ基板10は、下側から、ガラス基板11上に、ゲート線41(非図示)、データ線42(1201)、TFT部43、下電極32A(PIX)、誘電体膜33、上電極31A(COM)、その他の絶縁膜12などが形成される。絶縁膜12による平坦化された層上に下電極32A(PIX)の層が形成され、平坦な誘電体膜33上に上電極31A(COM)の層が形成される。共通電極COMの面と画素電極PIXの面は、誘電体膜33を介して平行に対向する。
【0100】
TFT部43は、例えば、ゲート電極、ゲート絶縁膜、半導体膜、及びソース・ドレイン電極を含むTFT素子で構成される。1201は、TFT部43の端子に接続されるデータ線42ないしそれに接続される画素電極PIXの線を示す。1202は、Z方向、上下層(1201,32A)の導通部である。なおTFT素子はボトムゲート型・トップゲート型のいずれでもよい。半導体膜は、アモルファスシリコン、酸化物半導体、有機半導体のいずれで構成されてもよい。
【0101】
[遮光構成例(1)]
図12は、
図10の1画素分のみに対応して、横BM部22Aによる第1の遮光の構成例を示す。画素のスリット(開口部)50Aにおいて、Y方向の上下のスリット端部の領域A1,A2を有する。SEはスリット端である。第1の遮光の構成例では、上側のスリット端部A1のSE線よりも上側の張り出し部1101を含む領域を、横BM部22Aにより隠した構成である。また下側のスリット端部A2についても同様に、SE線よりも下側を横BM部22Aにより隠した構成である。横BM部22Aの幅h1は特にh1aとする。なおY方向の上下の一方の端部のみ隠した構成としても相応の効果は得られる。
【0102】
個々の櫛歯である突出部及び個々のスリットSは台形状である。K1,K2は、Y方向上側の左右の最外の櫛歯である。なお櫛歯の台形は、画素の内側が短い上辺、外側が長い下辺である。Sa1はY方向上側における左側の最外(Swは除く)のスリット、Sb1は右側の最外(Swは除く)のスリットである。Swは、開口部50のY方向上側の最外の大きなスリット(言い換えると櫛歯K1,K2の外側の大きなスリット)である。Sa1,Sb1から下は同一形状のスリットSとなる。なおスリットSの台形は、画素の内側が長い下辺、外側が短い上辺である。
【0103】
横BM部22Aの幅h1(h1a)は、画素のスリット端SEから外側へ所定距離の幅(後述の幅H)以上となる構成である。即ち、横BM部22Aの幅h1は、ゲート線41やTFT部44を隠すと共に、スリット端SEから外側へ所定距離までの幅(H)の領域を最低限隠すことができる大きさである。この幅h1をより大きくする構成(
図13以下)としてもよい。その分、スリット端部A1等を隠すことになり、画素の開口率は少し下がる代わりに、画素端部領域Q2の第2の特性の影響を低減し、画素の特性の均一性を高めることができる。
【0104】
[遮光構成例(2)]
図13は、第2の遮光の構成例を示す。これは、
図12の構成に対し、横BM部22Aの幅h1をより大きくし(h1b)、スリット端部A1等をより隠すようにした構成である。横BM部22Aの幅h1b(下辺側)は、上側のスリット端SEから少し内側の位置(
図15のa3)までを含んでいる。この位置は、最外スリットSwの付近(右側の最外の櫛歯K1の少し外側)である。同様に、下側のスリット端部A2についても、スリット端SEから少し内側の所定の位置までを隠す構成である。
【0105】
[遮光構成例(3)]
図14は、第3の遮光の構成例を示す。更に横BM部22Aの幅h1を大きくし(h1c)、スリット端部A1等をより隠すようにした構成である。横BM部22Aの幅h1c(下辺側)は、上側のスリット端SEから内側の位置(
図15のa4)までを含んでいる。この位置は、右側の最外の櫛歯K1の中心線付近(左側の最外の櫛歯K2の少し外側)である。同様に、下側のスリット端部A2についても、スリット端SEから内側の所定の位置までを隠す構成である。
【0106】
なおY方向の櫛歯(突出部)の位置をずらして最外の開口(Sw)部分を小さくした構成としてもよい。
【0107】
[補足]
図15は、上記開口部50Aの場合のスリット端SEや遮光の構成例に関する補足を示す。A1はスリット端SEを中心に含んだスリット端部の領域である。A3は最外スリットSw付近の領域である。最小限には、スリット端SE(a1)から所定の幅H(a2)までをBM22で隠すことで、画素端部領域Q2の第2の特性(応答速度、輝度カーブ、及び配向安定性など)を隠す効果がある。そして
図8のような横BM部22Aが存在するので、それに合わせて、横BM部22Aの幅h1を、幅Hを含んだ幅h1aなどにする。これによりBM22を含む効率的な画素構成と共に、画素の特性を均一化・向上することができる。
【0108】
<実施の形態2>
次に、
図16〜
図19を用いて、実施の形態2の液晶表示装置100及び液晶パネル1について説明する。実施の形態2は、
図9の通り、構成B(上電極31Bが画素電極PIX、下電極32Bが共通電極COM)、及び構成β(片側櫛歯形状)である。
【0109】
[構成B,β−平面]
図16は、実施の形態2の液晶パネル1(1B)における画素及びBM22等のX−Y平面の構造を示す。RGB3画素分を示す。これは、
図8の構成に、構成βのような電極形状(
図18等)を適用した構成である。特に、幅(h1)が太い横BM部22Aにより、各画素で開口部50BのY方向のスリット端部(その少なくとも一部)を隠す構成である。
【0110】
下電極32B(COM)は、全面ベタ層である。上電極31B(PIX)は、画素ごとの矩形を基本として、左側に矩形のスリットSが設けられた形状である。上電極31B(PIX)による横(X)方向の矩形の複数の突出部(櫛歯)により形成される複数のスリットSが下電極32B(COM)の面上に設けられる。上電極31B(PIX)は、上端側の一部(接続部1001)で、TFT部43からのコンタクト受け44に接続されている。下電極32B(COM)の平面における上電極31B(PIX)が重ならない部分が開口部50Bとなる。
【0111】
本方式は、
図10(実施の形態1)の場合と同様に、画素ごとに、開口部(スリット)50BのY方向のスリット端部(
図18のA1,A2)を、幅(h1)が太い横BM部22Aにより隠す構成である。これにより前述(
図3(B))のような画素端部領域R2の第2の特性を抑え、画素内部領域R1の第1の特性に均一化する。
【0112】
[構成B−断面]
図17は、実施の形態2の液晶パネル1(1B)における画素及びBM22等のX−Z断面の構造を示す。
図16のB−B´断面に相当する。アレイ基板10は、下側から、ガラス基板11上に、ゲート線41(非図示)、データ線42(1801)、TFT部43(非図示)、下電極32B(COM)、誘電体膜33、上電極31B(PIX)、その他の絶縁膜12などが形成される。絶縁膜12による平坦化された層上に下電極32B(COM)の層が形成され、平坦な誘電体膜33上に上電極31B(PIX)の層が形成される。
【0113】
1801は、TFT部43の端子に接続されるデータ線42ないしそれに接続される画素電極PIXの線を示す。1802は、Z方向、上下層(1801,31B)の導通部である。1803は、下電極32B(COM)に設けられる導通孔(1002)の部分である。
【0114】
[遮光構成例]
図18は、
図16の1画素分のみに対応して、横BM部22Aによる遮光の構成例を示す。なおこの画素電極PIXの形状などは
図3(B)と同様である。画素のスリット(開口部)50Bにおいて、Y方向の上下のスリット端部の領域A1,A2を有する。SEはスリット端の線である。本遮光の構成例では、上側のスリット端部A1のSE線よりも上側の前述の突出部Ewを含む領域を、横BM部22Aにより隠した構成である。また下側のスリット端部A2についても同様に、SE線よりも下側を横BM部22Aにより隠した構成である。横BM部22Aの幅h1は特にh1dとする。なおY方向の上下の一方のスリット端部のみ隠した構成としても相応の効果は得られる。
【0115】
[補足]
図19は、上記開口部50Bの場合のスリット端SEや遮光の構成例に関する補足を示す。前記
図3と対応した内容である。Ewは画素電極PIXの上端部の幅広の突出部であり接続部1001を有する部分である。E1は、Y方向上の最外(Ewを除く)の櫛歯である突出部である。S1はY方向上の最外のスリットである。a0は画素電極PIXの端部の辺である。a1はスリット端SEである。最小限には、スリット端SE(a1)から所定の幅H(a2)までをBM22で隠すことで、画素端部領域R2の第2の特性(応答速度、輝度カーブ、及び配向安定性など)を隠す効果がある。そして
図8のような横BM部22Aが存在するので、それに合わせて、横BM部22Aの幅を、幅Hを含んだ幅h1dにする。これによりBM22を含む効率的な画素構成と共に、画素の特性を均一化・向上することができる。その他、実施の形態1の場合と同様に、遮光の幅(h1)をより大きくとった構成としてもよい。
【0116】
[特性]
次に、
図20〜
図30を用いて、上述した本実施の形態の液晶表示装置100の方式における好適な画素(セル)の設計の特性、条件及び具体的な値などについて説明する。なお
図30に代表的な特性についてまとめて示している。なお実施の形態1の場合で説明するが、実施の形態1,2で同様に適用可能である。
【0117】
[特性(1)−遮光幅]
図20〜
図22を用いて、前述の画素のスリット端部付近を隠すBM22(横BM部22A)の幅(h1)の特性について説明する。前述の最小限の遮光の幅H(スリット端SEから外側への所定距離)の条件として、H≧セル厚d×5/3μm、h1>Hとなる。
【0118】
図20に、当該遮光の条件を模擬(シミュレーション)計算するためのモデルとなる画素構成例(構成Cとする)を示す。この構成Cは、上電極が共通電極COM、下電極が画素電極PIXであり、片側櫛歯形状であり、スリット及び櫛歯が台形の場合である。2100は概略画素領域、2101は電極部(COM)、2102は背面側の画素電極PIXの矩形、50Cは開口部(スリット)である。y1は、Y方向の画素端部(開口部50Cの開口の端部)、y2は、画素電極PIXの辺、即ち前述のスリット端SEに相当する線である。なお本構成Cの模擬計算結果をもとに構成A,B等について容易に条件を導出可能である。
【0119】
図21に、
図20のモデル(構成C)をもとに面内輝度分布を計算した結果を示す。白色は輝度が高いことを示す。図示のように、スリット端部(y2)よりも内側の領域2201(前記R1,Q1に相当)では、各スリットSに対応した輝度(白)の横長の領域が縦に整然と並び、均一性が高く表示上の乱れが無い。一方、スリット端部(y2)よりも外側の領域2202(前記R2,Q2に相当)では、領域2201とは特性が異なり、均一性が低い。
【0120】
図22に、
図21のC−C´断面の明るさ分布を示す。Y方向位置に応じた透過率の分布の形で示す。図示のように、スリット端部(y2)よりも内側の範囲2301では、概ね一定の明るさ(透過率)の分布となる。y2よりも外側の範囲2302では、明るさ(透過率)が減衰する。よって、y2よりも外側の範囲2302を含めてBM22で隠す構成とする。また更に、y3からy2までの範囲2303に明るさの低下ないし乱れがみられる。よって更にこの範囲2303も含めBM22で隠す構成としてもよい。
【0121】
上記結果に基づき、画素のY方向のスリット端SEからある程度の距離までの部分をBM22で隠すことが望ましい。この距離を幅Hとする。横BM部22Aの幅h1は、この幅Hを含むようにする(h1>H)。セル厚をd(
図27)とする。明るさの広がる部分(y2よりも外側の領域)はセル厚dに比例する。幅Hは、スリット端SEから、d×5/3μm以上とすることが望ましい。例えばd=3.0μmであり、その場合、H≧d×5/3μm=5μmとなる。
【0122】
[特性(2)−スリットピッチ]
図23,
図24を用いて、上下電極(31,32)の形状におけるスリットSのピッチ(p)等の特性について説明する。
図23は構成A,αの開口部50Aの一部拡大を示す。まずX方向のトータルのスリット長L0は、例えば10〜60μm、特に40μm未満、例えば20μmなどが好適である。L0を短くすれば液晶の配向安定性が高くなり、逆に長くすれば輝度が高くなる。左右のスリットS(Sa,Sb)のスリット長L1,L2については、前述のようにラビング方向Rubに合わせてL1<L2が好適である(なお
図23ではL1=L2の場合)。スリットSの短辺の方の幅(p−w2)は、例えば2〜5μmとし、細い方が、応答速度が高くなる。
【0123】
pは、複数のスリットSのY方向のピッチである。Wは、縦方向スリット(連通開口部)57のX方向の幅である。D1は、縦方向の電極部(58)のX方向の幅である。w1は、櫛歯(突出部)Ka,Kbの台形の上辺の幅、w2は下辺の幅である。x0はスリットSの一方端である閉じられた側の上辺、櫛歯の下辺、及び電極部(58)の両辺のX方向位置、x1はスリットSの他方端である開いた側の下辺、櫛歯の上辺、及び連通開口部57の両辺のX方向位置である。θは、櫛歯(Ka,Kb)の台形におけるX方向と斜辺との成す角度であり、スリットSの斜辺の角度にも対応する。
【0124】
図24は、スリットピッチ(p)に関する模擬結果の応答速度特性のグラフを示す。ピッチ(p)に対する応答時間(T)を示す。菱形(◆)の点(ton25)は、温度25℃での電圧ON時(OFF状態→ON状態)の応答時間(秒)、三角(△)の点(ton0)は、温度0℃での電圧ON時(OFF状態→ON状態)の応答時間(秒)である。T=1は従来のFFS方式の応答時間を1とした場合である。この結果から、スリットピッチ(p)は、長くなると応答速度が遅くなることがわかる。よって従来FFS方式よりも応答性を向上できる条件として、p<9μmとなる。
【0125】
[特性(3)−櫛歯角度]
図25を用いて、
図23の形状における櫛歯(台形)の角度θなどの特性について説明する。
図25は、当該櫛歯形状に関する模擬の結果の表を示す。右側スリットSbのスリット長L2と角度θとの組合せで配向安定性を判定した。なお配向安定性として、表示上(平面視)の輝度分布の品質(均一性など)を判定した。二重丸(◎)は安定、バツ(×)は不安定、三角(△)は安定/不安定でばらつくものを示す。この実験の結果、角度θと配向安定性とに関係性があることがわかった。即ち、角度θに応じて、前記
図5,
図6等で示した配向の特性(液晶分子の回転方向がライン上で揃うこと等)に影響する。上記の安定(◎)の結果をもとに、角度θの条件は、θ>0.5度となる。
【0126】
なお液晶パネル1の製造上の誤差によりラビング方向(Rub)がX方向(0度)から少しずれる場合、上記櫛歯の台形の傾斜(角度θ)により、そのずれを許容して配向安定性を維持できる効果がある。
【0127】
[特性(4)−縦スリット幅]
図26を用いて、
図23の形状における縦方向スリット(連通開口部)57の幅Wなどの特性について説明する。
図26は、縦方向スリット57の幅Wに関する模擬結果(縦方向スリット57付近の明るさ)のグラフを示す。
図21の分布、及び
図23のA−A´線に対応するグラフである。x1の線は、
図23の左側のスリット(Sa)及び櫛歯(Kb)の開口側の端部の線である。2701は、x1よりも左の櫛歯(Kb)の領域、2702は、x1より右の縦方向スリット57(幅W)の領域である。x1付近を境に、2702の領域では明るさ(透過率)が0(黒)に近付く。例えばx1から右に3.5μm以上の位置では殆ど0となる。よって幅Wは短い方がよい。本結果から、縦方向スリット57の幅Wの条件は、例えばW≦7μm、特にW≦4μmが好適である。
【0128】
なお、縦方向スリット57の幅W≦0とした構成も可能である。即ち、W=0の場合、開口部50Aで複数の櫛歯(突出部)の先端がY方向の一列に並び、先端同士はY方向で間隙を持ち複数のスリットSが連通開口される形状となる。更にW<0の場合、複数の各々の櫛歯(突出部)の先端がX方向で隣のスリットSの中に入る形状、言い換えると互い違いに食い込む形状となる。
【0129】
[特性(5)−リタデーション]
図27,
図28を用いて、液晶層30におけるΔnd(リタデーションR=Δn×d)の特性について説明する。
図27は、リタデーションR(Δnd)に関して、(a)はセル厚d及び屈折率差Δnを示し、(b)はセル厚dとR(Δnd)の関係を示す。
【0130】
リタデーションR(Δnd)は、複屈折性(屈折率異方性ともいう)を持つ液晶層30を光が透過する際の位相差を表す。R=Δn×dとする。R(Δnd)=mλ(m:整数,λ:光波長)で透過光の強度が最大となる。dはセル厚であり、
図27(a)のように液晶層30のZ方向長さである。Δnは液晶層30の液晶の屈折率差であり、Δn=(ne−no)である。ネマティック液晶の屈折率(ne,no)として、neは異常光屈折率(液晶分子長軸方向に平行な屈折率)、noは常光屈折率(液晶分子長軸方向に垂直な屈折率)である。
【0131】
本方式では、他の多くの液晶モードとは異なり、セル厚dに応じて最適なR(Δnd)が異なる。この関係は、
図27(b)のように、セル厚dをx、R(Δnd)をyとして、関数:y=0.11xで示される。
【0132】
図28は、模擬結果としてR(Δnd)に応じた明るさ(透過率)のグラフを示す。四角(■)の点はd=2.9μmの場合、菱形(◆)の点はd=2.5μmの場合である。例えば画素の色(CF23)等により最大透過率よりも暗いR(Δnd)を採用する。これを鑑み、本方式では、明るさ(輝度)が80%程度のA線以上のR(Δnd)値を採用する。即ち、好適なR(Δnd)の条件は、R(Δnd)≧0.11×dとなる。例えばd=2.5μmの場合はR≧0.275μm、d=2.9μmの場合はR≧0.319μmとなる。このR条件に従い液晶層30の液晶のΔn及びセル厚dが決定される。
【0133】
[特性(6)−弾性定数]
図29を用いて、本方式の液晶層30の液晶の弾性の特性について説明する。
図29は、模擬結果として、液晶の弾性定数(特にK22)に応じた時間と明るさの関係のグラフを示す。本方式の液晶層30の液晶分子(ネマティック液晶)の弾性定数Kとして、特にツイスト弾性定数:K22とする。K22は、液晶分子がX−Y平面内で回転(ツイスト)する際の弾性定数に相当する。
【0134】
図29では、各弾性定数K22の値に応じて、時間(ミリ秒)に対する明るさの関係のグラフを示す。時間は、前述の電圧OFF→ON時の明るさ(透過率)の遷移に要する応答時間、言い換えると液晶分子の回転に要する時間である。明るさは最大を1として規格化している。3001は、弾性定数K22>7.2の場合の曲線群である。3002は、K22=7.2の場合の曲線である。
【0135】
本方式では、液晶の弾性エネルギーの積極的な利用により応答の高速化を実現する。特に
図5,
図6等のようにX−Y平面内での液晶の回転を利用する。そのため本方式では弾性定数K(特にK22)が極力大きい方がよい。弾性定数K22が小さすぎる場合は、好ましくない挙動が起きる。例えば3002のようにK22=7.2の場合、応答速度が遅いことがわかる。したがって本方式では、
図29から、好適な弾性定数K22の条件として、K22>7.2を採用する。
【0136】
<効果等>
以上説明したように、各実施の形態の液晶表示装置100等によれば、視野角の広さや開口率の高さ等に加え、従来のFFS方式などに比べて、応答速度や表示品質などを向上することができる。新方式(高速横電界モード)の液晶表示装置100などを提供できる。画素における応答速度、明るさ、配向安定性などを向上でき、画素の特性の均一化により、表示品質の向上などが実現できる。
【0137】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば上下電極(31,32)による開口部50の形状などに関して以下のような各種の変形例が可能である。
【0138】
(1) スリットS及び櫛歯の形状は、矩形、台形、三角形など、各種可能である。例えば
図23で櫛歯の上辺の幅w1を0として三角形としてもよい。
【0139】
(2) 構成αで、左右のスリットS/櫛歯は、互い違いの配置に限らず、Y方向の位置を揃えた配置でもよい。また互い違いの配置のずれはスリットピッチ(p)の1/2に限らなくてもよい。また、Y方向のスリット(57)/電極部(58)に対するX方向の左右のスリットS/櫛歯の長さだけでなくY方向の幅やピッチ等を異ならせてもよい。
【0140】
(3) 開口部50のスリットSの方向は、X方向(例えばゲート線41及び横BM部22Aの延在方向)を0度としたとき、少し角度(例えば5度)を設けて斜めにしてもよい。またこの角度を2種類以上設け、画素内で混在させてもよい。
【0141】
(4) スリットS及び櫛歯の形状に応じて、遮光する横BM部22A側の形状を変えてもよい。例えば単純な一定幅のラインではなく画素ごとに幅(h1)を変えてもよい。例えば画素のスリットS及び櫛歯の矩形/台形のY方向位置に合わせて幅(h1)を変えてもよい。例えば櫛歯の台形の斜辺に合わせて横BM部22Aの幅(辺)を斜めに沿う形状にしてもよい。また例えば構成αで画素の左右の最外の櫛歯のY方向位置に合わせて2種類の幅(h1)を設けてもよい。例えば
図15の右側スリット部分ではa3位置までの幅、左側スリット部分ではa4位置までの幅といったようにしてもよい。