(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸線方向の先端側に底部が延出して形成される有底筒状のセンサ素子であって、固体電解質から成る固体電解質体と、該固体電解質体の外表面に設けられた外側電極と、を備えるセンサ素子と、
前記センサ素子の後端側の部分を収納すると共に、前記外側電極を含む前記センサ素子の先端側の部分を突出させる主体金具と、
前記主体金具の先端側に配置され、前記主体金具から突出する前記センサ素子の先端側の部分を覆い、導電性材料によって構成されるプロテクタと、
を備えるガスセンサにおいて、
前記主体金具は、自身の内壁面において、径方向内側に突出する第1の係合部を有し、
前記プロテクタは、自身の後端側の端部近傍において、径方向外側に突出する第2の係合部が形成されると共に、前記第2の係合部を前記第1の係合部に係止させつつ、前記主体金具内から先端側に突出するように配置されており、
前記センサ素子は、前記主体金具内で前記第1の係合部と共に前記第2の係合部を挟むように、径方向外側に突出して設けられた第3の係合部であって、表面の少なくとも一部に前記外側電極が形成された第3の係合部を有し、
前記第3の係合部における前記外側電極が形成された領域と前記第2の係合部の双方に接触するように、前記第2の係合部と前記第3の係合部の間において、前記第2の係合部よりも硬度が低く、かつ導電性材料から成る導電性緩衝部材が配置されていることを特徴とする
ガスセンサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにボディアースを行なうガスセンサにおいては、更なる構成の簡素化や小型化、あるいは低コスト化が望まれると共に、ボディアースのための外側電極と主体金具との間の導通の信頼性を確保することが望まれていた。
【0005】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、ボディアースを行なうガスセンサにおいて、外側電極と主体金具の間の導通確保の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実施することが可能である。
【0007】
[適用例1]
軸線方向の先端側に底部が延出して形成される有底筒状のセンサ素子であって、固体電解質から成る固体電解質体と、該固体電解質体の外表面に設けられた外側電極と、を備えるセンサ素子と、
前記センサ素子の後端側の部分を収納すると共に、前記外側電極を含む前記センサ素子の先端側の部分を突出させる主体金具と、
前記主体金具の先端側に配置され、前記主体金具から突出する前記センサ素子の先端側の部分を覆い、導電性材料によって構成されるプロテクタと、
を備えるガスセンサにおいて、
前記主体金具は、自身の内壁面において、径方向内側に突出する第1の係合部を有し、
前記プロテクタは、自身の後端側の端部近傍において、径方向外側に突出する第2の係合部が形成されると共に、前記主体金具内から先端側に突出するように配置されており、
前記センサ素子は、径方向外側に突出して設けられ、表面の少なくとも一部に前記外側電極が形成された第3の係合部を有し、
前記第3の係合部における前記外側電極が形成された領域と前記第2の係合部の双方に接触するように、前記第2の係合部と前記第3の係合部の間において、前記第2の係合部よりも硬度が低く、かつ導電性材料から成る導電性緩衝部材が配置され、
前記外側電極は、前記導電性緩衝部材および前記プロテクタを介して前記主体金具と電気的に接続していることを特徴とする
ガスセンサ。
【0008】
適用例1に記載のガスセンサによれば、主体金具内から先端側に突出するようにプロテクタを配置している。そして、プロテクタの第2の係合部とセンサ素子の第3の係合部との間に、第2の係合部よりも硬度が低い導電性緩衝部材を配置して、導電性緩衝部材および前記プロテクタを介して主体金具と外側電極との間を導通させている。そのため、ボディアースを行なうガスセンサの構成を簡素化、小型化、あるいは低コスト化すると共に、ボディアースの信頼性を高めることができる。
【0009】
[適用例2]
軸線方向の先端側に底部が延出して形成される有底筒状のセンサ素子であって、固体電解質から成る固体電解質体と、該固体電解質体の外表面に設けられた外側電極と、を備えるセンサ素子と、
前記センサ素子の後端側の部分を収納すると共に、前記外側電極を含む前記センサ素子の先端側の部分を突出させる主体金具と、
前記主体金具の先端側に配置され、前記主体金具から突出する前記センサ素子の先端側の部分を覆い、導電性材料によって構成されるプロテクタと、
を備えるガスセンサにおいて、
前記主体金具は、自身の内壁面において、径方向内側に突出する第1の係合部を有し、
前記プロテクタは、自身の後端側の端部近傍において、径方向外側に突出する第2の係合部が形成されると共に、前記第2の係合部を前記第1の係合部に係止させつつ、前記主体金具内から先端側に突出するように配置されており、
前記センサ素子は、前記主体金具内で前記第1の係合部と共に前記第2の係合部を挟むように、径方向外側に突出して設けられた第3の係合部であって、表面の少なくとも一部に前記外側電極が形成された第3の係合部を有し、
前記第3の係合部における前記外側電極が形成された領域と前記第2の係合部の双方に接触するように、前記第2の係合部と前記第3の係合部の間において、前記第2の係合部よりも硬度が低く、かつ導電性材料から成る導電性緩衝部材が配置されていることを特徴とする
ガスセンサ。
【0010】
適用例2に記載のガスセンサによれば、プロテクタの後端側の端部近傍に設けた第2の係合部を、主体金具20の内壁面に設けた第1の係合部に係合させつつ、主体金具内から先端側に突出するようにプロテクタを配置している。そして、プロテクタの第2の係合部とセンサ素子の第3の係合部との間に、第2の係合部よりも硬度が低い導電性緩衝部材を介在させている。そのため、ボディアースを行なうガスセンサの構成を簡素化、小型化、あるいは低コスト化すると共に、ボディアースの信頼性を高めることができる。
【0011】
[適用例3]
適用例1または2記載のガスセンサであって、前記導電性緩衝部材は、前記軸線方向から見たときに前記プロテクタの後端と重なる領域よりも、径方向外側に突出するように形成されていることを特徴とするガスセンサ。
適用例3に記載のガスセンサによれば、導電性緩衝部材とセンサ素子との接触を安定化させて、ボディアースの信頼性を向上させることができる。
【0012】
[適用例4]
適用例1ないし3いずれか1項に記載のガスセンサであって、前記導電性緩衝部材の硬度は、100〜250Hvであり、前記第2の係合部の硬度は、300〜450Hvであることを特徴とするガスセンサ。
適用例4に記載のガスセンサによれば、センサ素子とプロテクタとの間に、プロテクタの第2の係合部よりも十分に硬度が低い導電性緩衝部材を配置することで、ボディアースの信頼性を確保する効果を高めることができる。
【0013】
本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、ガスセンサの製造方法などの形態で実現することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.ガスセンサの構成:
図1は、本発明に係る実施形態としてのガスセンサ5の構成を表わす断面図である。ガスセンサ5は、
図1に示すように、軸線Oに沿って伸長する細長形状を有している。以下の説明では、軸線O方向であって
図1の下方側を先端側と呼び、
図1の上方側を後端側と呼ぶ。本実施形態のガスセンサ5は、酸素濃度センサであって、例えば、自動車の排気ガス中の酸素濃度を検出するために用いることができる。
図1に示すように、ガスセンサ5は、センサ素子10と、主体金具20と、プロテクタ62と、外筒40と、保護外筒38と、ガスセンサの内部配線の引き回しに係る構造(電極および電極に接続する配線)とを、主要な構成要素として備えている。
【0016】
センサ素子10は、酸化物イオン伝導性(酸素イオン伝導性)の固体電解質体の両面に一対の電極を積層した酸素濃淡電池を構成し、酸素分圧に応じた検出値を出力する公知の酸素センサ素子である。詳細には、センサ素子10は、外径が先端に向かってテーパ状に縮径する有底筒状の固体電解質体11と、固体電解質体11の内表面に形成された内側電極(基準電極)10aと、固体電解質体11の外表面に形成された外側電極(検出電極)10dと、を備えている。そして、センサ素子10の内部空間を基準ガス雰囲気とし、センサ素子10の外表面に被検出ガスを接触させることで、ガスの検知を行う。ガスセンサ5の後端においては、内側電極10aからの検出信号を取り出すためのリード線60が引き出されている。
【0017】
図2は、センサ素子10の外観を表わす説明図である。センサ素子10には、軸線O方向の中ほどにおいて、外周方向に張り出した(突出した)鍔部12が形成されている。鍔部12よりも先端側には、先端側に向かって次第に縮径されて先端部が閉塞された有底部13が形成されている。また、センサ素子10において、鍔部12よりも後端側には、後端に開口を有する略中空円筒状の基体部18が形成されている。
【0018】
外側電極10dは、有底部13の先端側の一部の外表面を覆うように形成された電極部10bと、電極部10bと電気的に接続された外部リード部10cとを備えている。外部リード部10cは、縦リード部14と、リングリード部15と、を備えている。リングリード部15は、鍔部12の先端側の面(鍔部12において有底部13側に設けられた段差部)において、センサ素子10の周方向に延出して環状に形成されている。縦リード部14は、電極部10bの後端とリングリード部15とを接続するように、軸線O方向に線状に延出して形成されている。なお、電極部10bは、電極部10bを保護するための図示しない電極保護層に覆われている。
【0019】
既述したように、センサ素子10の内表面には内側電極10aが設けられている。有底円筒状の固体電解質体11の内部には、筒孔10eが形成されており(
図1参照)、内側電極10aは、後端近傍を除く筒孔10eの内表面全体を覆うように形成されている。
【0020】
センサ素子10が備える固体電解質体11は、例えば酸化イットリウム(Y
2O
3)を添加した酸化ジルコニウム(ZrO
2)、すなわちイットリア安定化ジルコニアによって構成することができる。あるいは、酸化カルシウム(CaO)や酸化マグネシウム(MgO)、酸化セリウム(CeO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)等から選択される酸化物を添加した安定化ジルコニア等の、他の固体電解質によってセンサ素子10を構成しても良い。
【0021】
内側電極10aおよび電極部10bは、白金(Pt)や白金合金等の、貴金属あるいは貴金属合金によって形成されることが好ましい。内側電極10aおよび電極部10bは、例えば、無電解めっき等のめっき法により形成することができる。また、固体電解質体11を例えばイットリアを含有するジルコニア粉末等の固体電解質粉末から成る成形体を焼成して製造する場合には、外部リード部10cは、上記成形体の外表面に貴金属ペーストを用いて所定のパターンで印刷を行なうことにより、成形体の焼成と同時に形成することができる。
【0022】
図1に戻り、ガスセンサ5は、センサ素子10を取り囲んでセンサ素子の先端部を露出させる金属(例えばステンレス鋼)製の主体金具20を備えている。主体金具20の内表面には、先端方向に向かって内径が縮径する段部20bが設けられている。また、主体金具20の中央付近には、取り付け工具を係合させるために、径方向外側に突出した多角形状の鍔部20cが設けられている。さらに、鍔部20cよりも先端側の外表面には、雄ねじ部20dが形成されている。主体金具20の雄ねじ部20dを、例えば自動二輪(オートバイ)の排気管のネジ孔に取付けて、センサ素子10の先端を排気管内に配置することにより、ガスセンサ5を用いて被検出ガス(排気ガス)中の酸素濃度の検知が可能になる。ガスセンサ5において、鍔部20cの先端側の面と雄ねじ部20dの後端との間の段部には、さらに、ガスセンサ5を排気管に取付けた際のガス抜けを防止するガスケット29が嵌挿される。
【0023】
また、ガスセンサ5は、主体金具20の先端から突出するプロテクタ62を備えている。プロテクタ62は、軸線O方向の先端側に底部が延出して形成される有底筒状の金属製部材であり、主体金具20から突出するセンサ素子10の先端部を覆っている。また、プロテクタ62の後端部には、後端側ほど拡径するように径方向外側に向かって屈曲された屈曲部63が形成されている。
【0024】
さらに、ガスセンサ5は、プロテクタ62の上記後端部と接して配置される導電性緩衝部材50を備えている。導電性緩衝部材50は、環状に形成された薄板状金属部材である。
【0025】
ガスセンサ5内においては、プロテクタ62の後端部に設けられた屈曲部63および導電性緩衝部材50が、センサ素子10の鍔部12の先端側の面と、主体金具20の段部20bとの間に挟まれることによって、プロテクタ62が固定されている。主体金具20にセンサ素子10を組み付ける際には、まず、主体金具20の後端側から、プロテクタ62を主体金具20内に挿入し、プロテクタ62の屈曲部63を、主体金具20の段部20bに当接させる。その後、さらに、導電性緩衝部材50を、主体金具20の後端側から主体金具20内に挿入し、プロテクタ62の屈曲部63に当接させる。そして、主体金具20の後端側から、センサ素子10をさらに挿入し、鍔部12の先端側の面を導電性緩衝部材50に当接させる。
【0026】
既述したように、センサ素子10の鍔部12の先端側の面には、リングリード部15が設けられている。そのため、電極部10bは、縦リード部14と、リングリード部15と、プロテクタ62と、導電性緩衝部材50とを介して、主体金具20と導通する。
図1では、プロテクタ62および導電性緩衝部材50を介してリングリード部15と主体金具20とが導通する様子を、矢印Aによって模式的に表わしている。外側電極10dと主体金具20との間の導通に係る構成については、後にさらに詳しく説明する。なお、主体金具20の段部20bが、特許請求の範囲の「第1の係合部」に相当する。また、プロテクタ62の屈曲部63が、特許請求の範囲の「第2の係合部」に相当する。また、センサ素子10の鍔部12が、特許請求の範囲の「第3の係合部」に相当する。
【0027】
なお、プロテクタ62には、排気ガスをプロテクタ62の内部に取り込むための複数の孔部64が形成されている。この複数の孔部64からプロテクタ62内に流入した排気ガスは、被検出ガスとして外側電極10dに供給される。
【0028】
また、センサ素子10の鍔部12よりも後端側の部分と、主体金具20との間の空隙には、滑石粉末が圧縮充填された粉体充填部31が配置されており、センサ素子10と主体金具20の隙間がシールされている。そして、粉体充填部31の後端側には、筒状の絶縁部材(セラミックスリーブ)32が配置されている。
【0029】
一方、主体金具20の後端部には、金属製で筒状の外筒40が接合されて、センサ素子10の後端部を覆っている。外筒40は、例えば、SUS430、SUS304、SUS304L、SUS310S、SUS316、SUS316L等のステンレス鋼で形成することができる。主体金具20の後端部の内表面と、外筒40の先端部の外表面との間には、例えばステンレス鋼により形成される金属リング33が配置されている。そして、外筒40の先端部が主体金具20の後端部にて加締められることにより、主体金具20と外筒40とが固定されている。上記加締めを行なうことにより、鍔部20cの後端側に、屈曲部20aが形成されている。主体金具20の後端部に屈曲部20aを形成することにより、絶縁部材32が先端側に押し付けられて粉体充填部31を押し潰し、絶縁部材32および粉体充填部31が加締め固定されるとともに、センサ素子10と主体金具20の隙間がシールされる。
【0030】
外筒40の内側には、略円筒形状で絶縁性のセパレータ34が配置されている。セパレータ34には、セパレータ34を軸線O方向に貫通し、リード線60が挿通される挿通孔35が形成されている。リード線60は、接続端子70と接続している。接続端子70は、センサ出力を外部に取り出すための部材であり、内側電極10aと接続するように配置されている。
【0031】
外筒40の内側には、さらに、セパレータ34の後端に接して、略円柱状のグロメット36が配置されている。グロメット36には、軸線Oに沿って、リード線60が挿通される挿通孔が形成されている。グロメット36は、例えば、シリコンゴムやフッ素ゴム等のゴム材料によって形成することができる。
【0032】
外筒40の側面のうち、グロメット36が配置される位置よりも先端側の位置には、複数の第1通気孔41が周方向に並んで開口している。そして、外筒40の後端部の径方向外側には、第1通気孔41を覆うように、環状の通気性のフィルタ37が被せられ、さらに、フィルタ37を径方向外側から金属製筒状の保護外筒38が囲んでいる。この保護外筒38は、例えば、SUS430、SUS304、SUS304L、SUS310S、SUS316、SUS316L等のステンレス鋼によって形成することができる。保護外筒38の側面には、複数の第2通気孔39が周方向に並んで開口している。その結果、保護外筒38の第2通気孔39と、フィルタ37と、外筒40の第1通気孔41とを介して、外筒40内部、さらにはセンサ素子10の内側電極10aへと、外気を導入可能になっている。なお、第2通気孔39の先端側と後端側で外筒40及び保護外筒38を加締めることで、外筒40と保護外筒38の間にフィルタ37を保持している。フィルタ37は、例えばフッ素系樹脂等の撥水性樹脂の多孔質構造体によって構成することができ、撥水性を有しているため外部の水を通さずにセンサ素子10の内部空間に基準ガス(大気)を導入可能となっている。
【0033】
B.ボディアースに係る構成:
図3は、ガスセンサ5における外側電極10dのボディアースに係る部分を拡大して示す断面模式図である。以下に、外側電極10dのボディアースに係る構成についてさらに説明する。本実施形態では、プロテクタ62の屈曲部63に比べて、導電性緩衝部材50の硬度を低くすることに特徴がある。
【0034】
プロテクタ62は、既述したように、金属(例えばステンレス鋼)によって形成される。具体的には、プロテクタ62は、例えば、SUS430、SUS304、SUS304L、SUS310S、SUS316、SUS316Lから選択される金属によって形成することができる。耐食性の観点から、特に、オーステナイト系のステンレス鋼が望ましい。これらのステンレス鋼は、いずれも、硬度が200Hv程度である。
【0035】
プロテクタ62を形成する際には、屈曲部63は、プロテクタ62となる有底筒状の部材の後端部を絞り加工することによって形成される。ここで、金属製部材は、一般に、絞り加工を行なうと加工硬化を起こして、その硬度が高まる。そのため、プロテクタ62において、屈曲部63は、他の部位よりも硬度が高められている。既述したステンレス鋼によってプロテクタ62を作製する場合には、プロテクタ62の屈曲部63の硬度は、通常、300〜450Hvとなる。例えば、プロテクタ62をSUS310Sにて形成する場合には、絞り加工により形成した屈曲部63の硬度は、300〜410Hvとなる。
【0036】
導電性緩衝部材50も、プロテクタ62と同様に、金属材料、例えば、SUS430、SUS304、SUS304L、SUS310S、SUS316、SUS316Lから選択されるステンレス鋼によって形成することができる。導電性緩衝部材50は、例えば、薄板状の金属板を穴抜き加工して環状に成形することにより形成される。穴抜き加工では、せん断面を含む限られた範囲のみにおいて、加工を施される部材に応力が加えられる。そのため、導電性緩衝部材50は、成形前の部材と同等の、200Hv程度の硬度を示す。例えば、導電性緩衝部材50をSUS430にて形成する場合には、導電性緩衝部材50の硬度は、150〜200Hvとなる。
【0037】
以上のように構成された本実施形態のガスセンサ5によれば、プロテクタ62に屈曲部63(第2の係合部)を形成し、プロテクタ62を後端側から主体金具20へと挿入し、屈曲部63を主体金具20の段部20b(第1の係合部)に係合させて、ボディアースのための導通経路を形成している。このとき、プロテクタ62の屈曲部63とセンサ素子10との間に、屈曲部63よりも硬度が低い導電性緩衝部材50を介在させている。そのため、ボディアースを行なうガスセンサ5の構成を簡素化、小型化、あるいは低コスト化すると共に、ボディアースの信頼性を高めることができる。
【0038】
ここで、セラミックス製のセンサ素子10は、硬度が非常に高く、変形し難い部材である。また、プロテクタ62の屈曲部63は、加工硬化により硬度が高まっており、変形し難い状態となっている。そのため、本実施形態のガスセンサ5とは異なり、導電性緩衝部材50を配置することなくセンサ素子10とプロテクタ62とを直接接触させようとする場合には、成形の精度や組み付け時のずれ等に起因して、両者の接触が点接触になる可能性がある。このような状態となっても、センサ素子10および屈曲部63の硬度が高いため、センサ素子10および屈曲部63において両者の接触面積が増加する方向の変形が起こり難く、センサ素子10と屈曲部63の間の接触面積を十分に確保できなくなる可能性がある。このように、センサ素子10とプロテクタ62との接触面積が十分に確保されないと、センサ素子10およびプロテクタ62を介したボディアースの信頼性が低下して、ガスセンサの性能が低下する可能性がある。また、センサ素子10と屈曲部63の接触面積が小さいと、センサ素子10およびプロテクタ62がガスセンサ内に組み付けられたときに、屈曲部63との接触部位であるセンサ素子10の狭い範囲に応力が集中し、センサ素子10が損傷する可能性がある。センサ素子10が損傷する可能性が高まると、ガスセンサ全体に対する信頼性が低下する。
【0039】
これに対して、本実施形態のガスセンサ5では、センサ素子10とプロテクタ62との間に、プロテクタ62の屈曲部63よりも硬度が低い導電性緩衝部材50を配置している。そのため、センサ素子10の鍔部12およびプロテクタ62の屈曲部63の形状に応じて導電性緩衝部材50が変形することにより、センサ素子10および屈曲部63の表面において、ボディアースのための接触面積を、より広く確保することができる。その結果、ガスセンサ5におけるボディアースの信頼性を高め、センサ性能を向上させることができる。また、センサ素子10とプロテクタ62との間に、硬度がより低い導電性緩衝部材50を介在させることにより、ガスセンサ5内で、センサ素子10に加えられる応力を鍔部12で分散させて、センサ素子10の耐久性を高めることができる。
【0040】
なお、本実施形態のガスセンサ5のように、後端側から主体金具20内にプロテクタ62を挿入し、主体金具20から先端側へとプロテクタ62を突出させることにより、ガスセンサ5の構成を簡素化、小型化、あるいは低コスト化できるのは、以下の理由による。すなわち、プロテクタ62を加締めにより主体金具20に固定する場合には、加締め部において固定のための更なる部材を設ける必要があるが、本実施形態では、プロテクタ62を主体金具20内に嵌め込んで固定するため、部材点数の増加を抑えることができる。そのため、ガスセンサ5の構成の簡素化および低コスト化が可能になる。また、本実施形態のように、プロテクタ62を主体金具20内に嵌め込んで固定する場合には、加締めや溶接によりプロテクタ62を主体金具20に固定する場合に比べて、固定のための動作を簡素化することができる。そのため、低コスト化を図ることができる。
【0041】
また、加締めや溶接によってプロテクタを主体金具に固定する場合には、主体金具20をステンレス鋼よりも安価な鉄にて作製すると、加締めや溶接の工程において主体金具とプロテクタとの繋ぎ目が高温になって、主体金具を構成する鉄が劣化する可能性がある。これに対して、本実施形態のように、嵌め込みによりプロテクタ62を主体金具20に固定する場合には、昇温に起因する鉄の劣化を抑制できるため、劣化を抑えつつ主体金具20の材料として鉄を選択可能になる。そのため、低コスト化を図ることができる。
【0042】
さらに、主体金具へのプロテクタの固定を加締めや溶接により行なう場合には、プロテクタにおいて、主体金具先端との境界近傍の所定の範囲が、加締めや溶接のために利用される。既述したように、プロテクタ62には、排気ガスをプロテクタ62の内部に取り込むための複数の孔部64が形成されているが、上記した加締めや溶接のために利用される領域には、孔部64を形成することができない。そのため、充分量の排気ガスを外側電極10dに供給するために孔部64の大きさを確保するには、軸線O方向の先端側へとプロテクタ62をより長く形成する必要が生じる。これに対して、本実施形態のように嵌め込みによってプロテクタ62を主体金具20に固定するならば、プロテクタ62において、主体金具20の先端との境界近傍を含めたより広い範囲に孔部64を設けることができるため、プロテクタ62およびガスセンサ5全体を小型化することができる。
【0043】
また、本実施形態のガスセンサ5では、導電性緩衝部材50は、軸線O方向から見たときにプロテクタ62の後端と重なる領域よりも、径方向外側に突出するように形成されている。
図3は、軸線O方向に垂直な向きから見た様子を表わすが、
図3では、導電性緩衝部材50が、軸線O方向から見たときにプロテクタ62の後端と重なる領域よりも、径方向外側に、長さαだけ突出する様子が示されている。ここで、主体金具20の内側では、先端側に向かって急激に縮径して段部20bが形成される部位(段部20bの後端部)が、曲面部65となっている(
図3参照)。そのため、屈曲部63の後端と曲面部65とが干渉して、プロテクタ62の先端側への突出量が不十分とならないように、屈曲部63が後端側に延出する長さは、十分に抑えられている。本実施形態のように、軸線O方向から見たときにプロテクタ62の後端と重なる領域よりも、径方向外側に突出するように、導電性緩衝部材50を形成することで、導電性緩衝部材50とセンサ素子10との接触面積をより大きく確保することができる。そのため、導電性緩衝部材50とセンサ素子10との接触を安定化させて、ボディアースの信頼性を向上させることができる。このとき、センサ素子10において、リングリード部15が、導電性緩衝部材50の後端と重なる位置まで後端側へと延出して形成されていれば、ボディアースの信頼性をさらに高めることができる。
【0044】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0045】
C1.変形例1(構成材料に係る変形):
実施形態のガスセンサ5では、プロテクタ62は、導電性緩衝部材50と同様の硬度を示すステンレス鋼によって形成し、加工硬化によって硬度が高められた屈曲部63に比べて、導電性緩衝部材50の硬度が低くなる構成となっている。これに対して、プロテクタ62全体を、導電性緩衝部材50を構成する金属に比べて硬度がより高い金属により形成しても良い。
【0046】
また、実施形態のガスセンサ5では、プロテクタ62および導電性緩衝部材50をステンレス鋼により形成したが、十分な剛性と耐食性を有するならば、異なる材料により形成しても良い。プロテクタ62の屈曲部63に比べて導電性緩衝部材50の硬度を低くすることで、実施形態と同様の効果を奏することができる。導電性緩衝部材50の硬度は、例えば100〜250Hvとすることができ、屈曲部63硬度は、例えば300〜450Hvとすることができる。
【0047】
より具体的には、導電性緩衝部材50は、例えば、冷間圧延鋼板であって、硬度が130〜150Hvとなる鉄材であるSPCCによって形成することができる。また、導電性緩衝部材50は、樹脂やセラミックなどの芯材を金属で被覆することによって形成しても良い。導電性緩衝部材50全体として、屈曲部63よりも硬度が低く、ボディアースを実現するための十分な導電性を有していれば良い。
【0048】
C2.変形例2(外側電極に係る変形):
実施形態では、外側電極10dは、電極部10b、縦リード部14、およびリングリード部15を備え、リングリード部15において、導電性緩衝部材50と接触することとしたが、異なる構成としてもよい。例えば、外側電極において、電極部10bとリングリード部15とを分離して設けることなく、
図2でリングリード部15を設けた位置まで電極部10bを伸長して形成し、電極部10bとリングリード部15とを一体化しても良い。
【0049】
実施形態では、リングリード部15を、センサ素子10の周方向全体に連続して形成したが、異なる構成としても良い。例えば、リングリード部15は、センサ素子10の外周に沿って、センサ素子10の外表面の全周ではなく一部に伸長する形状としても良い。あるいは、リングリード部15の形状は、センサ素子10の周方向に帯状に伸長する形状以外の形状としても良く、プロテクタ62の後端部と接して、ボディアース可能となる形状であればよい。
【0050】
その他、縦リード部14を基体部18まで伸張した構成としてもよい。この場合、センサ素子10の鍔部12の先端側の面において、縦リード部14とプロテクタ62の屈曲部63との接触面積が狭くなるため、ボディアースの信頼性が低くなる虞がある。しかしながら、本実施形態のごとく導電性緩衝部材50を配置することで、当該導電性緩衝部材50が変形することによりボディアースのための接触面積を、広く確保することができる。その結果、ガスセンサ5におけるボディアースの信頼性を高め、センサ性能を向上させることができる。
【0051】
C3.変形例3(ガスセンサ全体に係る変形):
実施形態のガスセンサ5では、プロテクタ62の後端部の屈曲部63が主体金具20の段部20bに係合しているが、異なる構成としてもよい。例えば、プロテクタ62を主体金具20内に挿入して組み付ける際に、プロテクタ62の屈曲部63が主体金具20の段部20bに当接するまでプロテクタ62を押し込むのではなく、屈曲部63と段部20bとは離間していてもよい。屈曲部63以外の箇所でプロテクタ62が主体金具20に接していてもよく、プロテクタ62の屈曲部63とセンサ素子10の鍔部12の間に導電性緩衝部材50が配置されて、外側電極10dが導電性緩衝部材50およびプロテクタ62を介して主体金具20と電気的に接続していればよい。これにより、実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0052】
C4.変形例4(ガスセンサ全体に係る変形):
実施形態のガスセンサ5は、被検出ガス(排気ガス)の熱を利用してセンサ素子10を活性化するヒータレスのセンサとしたが、異なる構成としても良い。具体的には、センサ素子10の筒孔10e内にヒータを配置して、センサ素子10を加熱することとしても良い。
【0053】
また、実施形態では、ガスセンサは酸素濃度センサとしたが、異なる構成としても良い。イオン伝導性を有する固体電解質の両面に積層された一対の電極を有し、各電極上の特定ガス成分の濃度差(分圧差)により起電力を生じる濃淡電池を備えるセンサであれば、本願発明を適用することにより、同様の効果が得られる。